(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】体外アラーム抑制装置
(51)【国際特許分類】
A61M 1/16 20060101AFI20220613BHJP
A61M 1/36 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
A61M1/16 111
A61M1/36 105
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017065455
(22)【出願日】2017-03-29
【審査請求日】2020-01-16
(32)【優先日】2016-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515143739
【氏名又は名称】ビー.ブラウン アビタム アーゲー
【氏名又は名称原語表記】B. BRAUN AVITUM AG
【住所又は居所原語表記】Schwarzenberger Weg 73-79, 34212 Melsungen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100195327
【氏名又は名称】森 博
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【氏名又は名称】南瀬 透
(72)【発明者】
【氏名】イシュトヴァーン ゴラリッツ
(72)【発明者】
【氏名】ボトント テンイー
(72)【発明者】
【氏名】フランツ テグゼス
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第03/082144(WO,A2)
【文献】国際公開第2009/144522(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0095971(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104826186(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/16
A61M 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
持続的腎代替療法及び/または長期血液透析装置における体外アラーム抑制装置であって、
動脈及び/または静脈の血圧を含む患者の血管アクセス圧をモニターする血管アクセス圧モニタリング手段または制御装置(S30)と、
動脈または静脈の血圧が予め定めたアラーム限界値を越えたときに、アクセス圧アラーム状況を検出するアクセス圧アラーム状況検出手段または制御装置(S30,S50)と、
第一のアクセス圧アラーム状況が検出されたときに(S30)、血液流量及び療法流量を減少させることにより、当該体外アラーム抑制装置をアラーム抑制状態にセットするアラーム抑制状況設定手段または制御装置(S45)と、
予め定められたアラーム抑制状態条件が満足されているか否かを確認するアラーム抑制状態条件検出手段または制御装置(S40)と、
前記アラーム抑制状態条件が満足された後に、アクセス圧アラーム状況がさらに検出されたときに(S50)、当該体外アラーム抑制装置を安全状態に設定する安全状態設定手段または制御装置(S75)と、
を備え、
前記安全状態
は血液ポンプが停止した状態であり、
前記アラーム抑制状態条件は、前記第一のアクセス圧アラームが生成された後に血液ポンプの最小
容量が予め定められた
容量に等しいか、または、予め定められた
容量より大きいことを少なくとも含んでいるものとして構成されている体外アラーム抑制装置。
【請求項2】
前記体外アラーム抑制装置は、
動脈及び/または静脈の血圧を含む患者の血管アクセス圧をモニターする過程(S30)と、
動脈または静脈の血圧が予め定めたアラーム限界値を越えたときに、アクセス圧アラーム状況を検出する過程(S30,S50)と、
第一のアクセス圧アラーム状況が検出されたときに(S30)、血液流量及び療法流量を減少させることにより、当該体外アラーム抑制装置をアラーム抑制状態にセットする過程(S45)と、
予め定められたアラーム抑制状態条件が満足されていることを確認する過程(S40)と、
前記アラーム抑制状態条件が満足された後に、アクセス圧アラーム状況がさらに検出されたときに(S50)、当該体外アラーム抑制装置を安全状態に設定する過程(S75)と、
を備える体外アラーム抑制方法を実行するものであり、
前記安全状態は前記血液ポンプが停止した状態であり、
前記アラーム抑制状態条件は、前記第一のアクセス圧アラーム
状況が検出された後に血液ポンプの最小
容量が予め定められた
容量に等しいか、または、予め定められた
容量より大きいことを少なくとも含んでいることを特徴とする請求項1に記載の体外アラーム抑制装置。
【請求項3】
前記血管アクセス圧は当該装置の予め定められた第一及び第二の作動モードの少なくとも一方においてモニターされ(S30)、前記第一の作動モードは患者をケアするモード(S20)であり、前記第二の作動モードは通常モード(S25)であり、前記患者をケアするモード(S20)は、当該体外アラーム抑制装置の通常モードにおいて適用される通常モードパラメータと比較して、患者にとって、より安全である方向の値に変更された患者ケアモードパラメータにより当該体外アラーム抑制装置を作動させる過程を有しており、前記患者ケアモードパラメータには、減少後の血液ポンプ流量、療法の少なくとも一時的な停止、及び/または、動脈の血圧範囲は変更することなくプレフィルター及び/または静脈の血圧範囲を広げることが含まれる請求項2に記載の体外アラーム抑制装置。
【請求項4】
前記体外アラーム抑制方法は、
前記第一の装置作動モードが選択されたか否かを検出し(S15)、前記第一の装置作動モードが選択された場合には(S15)、前記患者ケアモードパラメータ(S20)を用いて当該体外アラーム抑制装置を作動させる過程と、
前記第一の装置作動モードが選択されなかった場合には(S15)、前記通常
モード(S25)を用いて当該体外アラーム抑制装置を作動させる過程と、をさらに備える請求項3に記載の体外アラーム抑制装置。
【請求項5】
前記第一の装置作動モードは患者ケアモードである請求項4に記載の体外アラーム抑制装置。
【請求項6】
前記体外アラーム抑制方法は、前記患者ケアモードにおいて所定の時間が経過した後に、オペレータに向けたアラームが生成される過程を備え、前記患者ケアモードにおける前記所定の時間は、前記患者ケアモードがオペレータにより選択されなくなるまで、反復して再設定可能である請求項5に記載の体外アラーム抑制装置。
【請求項7】
前記アラーム抑制状態は当該体外アラーム抑制装置の第一のより安全な状態であり、前記アラーム抑制状態は、当該体外アラーム抑制装置の通常モードにおいて適用されるパラメータと比較して、より安全である方向の値に変更されたパラメータにより当該体外アラーム抑制装置を作動させる過程を含むものである請求項
3乃至6の何れか一項に記載の体外アラーム抑制装置。
【請求項8】
動脈または静脈の血圧が予め定められた動脈のアラーム下限値または静脈のアラーム上限値を越えたことが確認されたときに(S30)、自動血圧アラーム抑制モードが実行され(S40,S45)、当該モードにおいては、当該体外アラーム抑制装置の安全状態が、自動的に、かつ、
患者をケアするモードである第一または
通常モードである第二の作動モードが作動しているか否かにかかわらず、設定されるものである請求項3乃至7の何れか一項に記載の体外アラーム抑制装置。
【請求項9】
前記自動血圧アラーム抑制モード(S40)においては、
血液ポンプの流量が所定の時間だけ当初の流量値から最小流量値にまで減少し、
実施中の療法は少なくとも一時的に停止され、
動脈の血圧の限界値は変更されることなく、プレフィルター及び静脈の血圧の限界値が拡大されるものである請求項8に記載の体外アラーム抑制装置。
【請求項10】
前記プレフィルター及び静脈の血圧の限界値は前記第一の作動モードにおける限界値と同じ値まで拡大されるものである請求項9に記載の体外アラーム抑制装置。
【請求項11】
前記自動血圧アラーム抑制モードの間に、前記動脈または静脈の血圧が予め定められた動脈のアラーム下限値または静脈のアラーム上限値を越えていないことが確認されたときに(S50)、前記血液ポンプの流量は、血液流量増大期間内において、前記最小流量値から前記当初の流量値にまで増大される(S55)ものである請求項9または10に記載の体外アラーム抑制装置。
【請求項12】
何れかのアラーム限界値に再度到達したときに、前記自動血圧アラーム抑制モードが繰り返されるものである請求項11に記載の体外アラーム抑制装置。
【請求項13】
予め定められた全モードアクティブ期間が経過したときに、前記自動血圧アラーム抑制モードは自動的に無効になり(S70)、さらに、アラームが生成される請求項8乃至12の何れか一項に記載の体外アラーム抑制装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透析療法及び/または血漿療法などの持続的及び間欠的腎臓療法及び/または体外血液処理を行う装置に関し、特に、それらの装置における体外アラーム抑制に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでの血液透析システムは、持続的限外濾過(SCUF)、持続的静脈-静脈血液濾過(CVVH)、持続的静脈-静脈血液透析(CVVHD)あるいは持続的静脈-静脈血液透析濾過(CVVHDF)などの血液療法を実行するものとして設計されている。
これらの持続的腎代替療法はCRRTと呼ばれ、水分過負荷の患者や腎臓に対するサポートが必要な患者から無駄な代謝や過剰な水分を除去するものとして使用されている。
すなわち、CRRTは透析の一態様であって、急性腎障害(AKI)を起こして集中治療室に入れられた重病の入院患者を処置するためのものである。
時間をかけて緩慢に進行する慢性の腎臓病とは異なり、AKIは集中治療環境下にある入院患者にしばしば生じることがあり、一般的には、数時間から数日にわたって続く。
慢性の血液透析システムも同様である(HD,HDF,---)。
【0003】
CRRTの分野における既知の装置の一つとして、米国特許第8,298,167号が開示する装置がある。
この装置は、血液ポンプ及び液体ポンプを備える制御装置と、人の手で制御装置上に搭載され、かつ、血液供給用及び液体供給用のチューブを備える置換可能なパネルキットと、交換可能なフィルタカートリッジと、血液ポンプ及び液体ポンプを含む本装置全体を作動させる制御用CPUと、制御装置に作動的に連結されているオペレータ用インタフェーススクリーンを備える相互作用的オペレータ制御システムと、を備えている。
制御用CPUはソフトウェアが組み込まれている一つまたは複数のマイクロプロセッサを備えており、このソフトウェアは、オペレータが入力した指示に応答して、本装置を作動させるとともに、本装置の作動用指示及びオペレータが選択した療法のパラメータの状況を供給する。
相互作用的オペレータ制御システムは、CRRT患者療法の選択、パネルキットの変更、フィルタカートリッジの交換、パネルキットまたはフィルタカートリッジを変更することなく現在実施中の患者療法から他の患者療法への変更などのオペレータの入力を受け入れる。
オペレータ用入力制御パネルは、パネルキットの変更、フィルタカートリッジの交換、患者療法実施中における他の患者療法への変更などのオペレータからの指示を一つ一つ供給する。
相互作用的ユーザ制御システムはグラフィック制御付きのタッチ式スクリーンからなるオペレータ用インタフェースを有しており、これにより、オペレータはシステムの作動方式を選択することができ、さらには、選択したシステム及び患者療法を実施するための指示を受け取ることができるようになっている。
このシステムは、さらに、選択されたある治療を実施中に、その治療を一時的に中断し、後に再開させるという選択を、それを実行するための詳細な指示とともに、オペレータに知らせたりする。
【0004】
CRRTの実施中において、しばしば発生するアラームの一つとして、特に、血液回路(動脈及び静脈)に関して、血圧アラームを発生させることもできる。
この点について、モニタリングした血圧(動脈または静脈における高血圧または低血圧)と比較して血流速度を自動的に適合することや、あるいは、看護婦の余計な仕事を増やしたり腎臓機能を低下させる原因となる血液ポンプの度重なる停止(詰まりの問題)を防止したり、あるいは、患者の治療または浄化モードにおける動脈血圧の抑制を実施したりすることが知られている。
しかしながら、この動脈血圧の抑制は、次々に連続的に起こる血圧の上昇下降に対しては効果的ではなく、さらに、静脈血圧に対してはいまだ使用不可能である。
上述の種類の血液浄化療法の実施中において、患者の動き、短期間の血管の痙攣、または、患者を清潔にする作業中に動脈または静脈の血圧が一時的に変化または上下動することに起因して、血圧アラームが作動することがある。
そのような場合にアラームが鳴ると、オペレータの邪魔をすることになる。
このため、動脈または静脈の血圧の一時的な変化に伴って、あるいは、血液流量の減少によって、アラームが鳴ることを抑制することに対するニーズが存在することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、CRRTの実施中における動脈及び静脈の血圧の一時的な上下動(パルス)または変化に対処することが可能であり、かつ、そのような動脈及び静脈の血圧の一時的な上下動(パルス)または変化の際に頻繁にアラームが作動することの問題を解決することが可能なCRRT用の装置及び/または方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば, 上記の目的は請求項1 に規定される体外アラーム抑制装置により達成される。
本発明の効果的な発展形は従属項により達成される。
体外血液の循環中に、例えば、患者の動きや短時間での血管の痙攣などを原因として、あるいは、血液浄化療法の一環として行われる患者のクリーニングの間に生じる短時間の負の動脈血圧パルスや正の静脈血圧パルスがもたらす過誤アラームに対して、本発明は、体外血圧アラームの数を減少させる制御過程を提供している。この制御過程においては、システムを一時的に安全状態に設定し、さらに、その期間中に血圧スパイクがアラーム限界値に到達する可能性を減らすことによって、患者の安全を適切に維持している。
特別な患者ケアモードを所与の安全ボリューム限界の範囲内において、あるいは、自動的に所与の期間において選択することも可能であり、この所与の期間は繰り返して設定することが可能であり、血圧パルスが安全ボリューム限界の範囲内において次々に生じるようにすることができる。
これにより、この期間内に血圧スパイクが減衰することが可能になり、過誤アラームが抑制される。
本発明の効果としては、次々に生じる血圧パルスの効果的な抑制と、静脈の血圧に対する同様のプロセスとがある。
【0008】
より詳細には、本発明は、持続的腎代替療法及び/または長期血液透析装置における体外アラーム抑制装置であって、動脈及び/または静脈の血圧を含む患者の血管アクセス圧をモニターする血管アクセス圧モニタリング手段または制御装置と、動脈または静脈の血圧が予め定めたアラーム限界値を越えたときに、アクセス圧アラーム状況を検出するアクセス圧アラーム状況検出手段または制御装置と、第一のアクセス圧アラーム状況が検出されたときに、血液流量及び療法流量を減少させることにより、当該体外アラーム抑制装置をアラーム抑制状態にセットするアラーム抑制状況設定手段または制御装置と、予め定められたアラーム抑制状態条件が満足されているか否かを確認するアラーム抑制状態条件検出手段または制御装置と、前記アラーム抑制状態条件が満足された後に、アクセス圧アラーム状況がさらに検出されたときに、当該体外アラーム抑制装置を安全状態に設定する安全状態設定手段または制御装置と、を備え、前記安全状態は前記血液ポンプが停止した状態であり、前記アラーム抑制状態条件は、前記第一のアクセス圧アラームが生成された後に血液ポンプの最小容量が予め定められた容量に等しいか、または、予め定められた容量より大きいことを少なくとも含んでいるものとして構成されている体外アラーム抑制装置を提供する。
本発明に係る体外アラーム抑制装置は、動脈及び/または静脈の血圧を含む患者の血管アクセス圧をモニターする過程と、動脈または静脈の血圧が予め定めたアラーム限界値を越えたときに、アクセス圧アラーム状況を検出する過程と、第一のアクセス圧アラーム状況が検出されたときに、血液流量及び療法流量を減少させることにより、当該体外アラーム抑制装置をアラーム抑制状態にセットする過程と、予め定められたアラーム抑制状態条件が満足されていることを確認する過程と、前記アラーム抑制状態条件が満足された後に、アクセス圧アラーム状況がさらに検出されたときに、当該体外アラーム抑制装置を安全状態に設定する過程と、を備える体外アラーム抑制方法を実行するものであり、前記安全状態は血液ポンプが停止した状態であり、前記アラーム抑制状態条件は、前記第一のアクセス圧アラームが生成された後に血液ポンプの最小容量が予め定められた容量に等しいか、または、予め定められた容量より大きいことを少なくとも含む。
【0009】
前記血管アクセス圧は当該装置の予め定められた第一及び第二の作動モードの少なくとも一方においてモニターされ、前記第一の作動モードは患者をケアするモードであり、前記第二の作動モードは通常モードであることが好ましい。
また、本発明に係る体外アラーム抑制装置が実行する体外アラーム抑制方法は、前記第一の装置作動モードが選択されたか否かを検出する過程を有することが好ましく、前記患者をケアするモードは、当該装置の通常モードにおいて適用される通常モードパラメータと比較して、患者にとって、より安全である方向の値に変更された患者ケアモードパラメータにより当該装置を作動させる過程を有しており、前記第一の装置作動モードが選択された場合には、前記患者ケアモードパラメータを用いて当該装置を作動させ、前記第一の装置作動モードが選択されなかった場合には、前記通常モードを用いて当該装置を作動させることが好ましい。
【0010】
前記第一の装置作動モードは患者ケアモードであることが好ましく、前記患者ケアモードパラメータには、減少後の血液ポンプ流量、療法の少なくとも一時的な停止、及び/または、動脈の血圧範囲は変更することなく、プレフィルタ及び/または静脈の血圧範囲を広げることが含まれる。
本発明に係る体外アラーム抑制装置が実行する体外アラーム抑制方法は、前記患者ケアモードにおいて所定の時間が経過した後に、オペレータに向けたアラームが生成される過程を備えることが好ましく、前記患者ケアモードにおける前記所定の時間は、前記患者ケアモードがオペレータにより選択されなくなるまで、反復して再設定可能であることが好ましい。
【0011】
前記アラーム抑制状態は当該装置の第一のより安全な状態であり、前記アラーム抑制状態は、当該装置の通常モードにおいて適用されるパラメータと比較して、より安全である方向の値に変更されたパラメータにより当該装置を作動させる過程を含むものであることが好ましい。
動脈または静脈の血圧が予め定められた動脈のアラーム下限値または静脈のアラーム上限値を越えたことが確認されたときに、自動血圧アラーム抑制モードが実行され、当該モードにおいては、当該装置の安全状態が、自動的に、かつ、前記第一または第二の作動モードが作動しているか否かにかかわらず、設定されるものであることが好ましい。
【0012】
前記自動血圧アラーム抑制モードにおいては、血液ポンプの流量が所定の時間だけ当初の流量値から最小流量値にまで減少し、実施中の療法は少なくとも一時的に停止され、動脈の血圧の限界値は変更されることなくプレフィルタ及び静脈の血圧の限界値が拡大されるものであることが好ましい。
前記プレフィルタ及び静脈の血圧の限界値は前記第一の作動モードにおける限界値と同じ値まで拡大されるものであることが好ましい。
前記自動血圧アラーム抑制モードの間に、前記動脈または静脈の血圧が予め定められた動脈のアラーム下限値または静脈のアラーム上限値を越えていないことが確認されたときに、前記血液ポンプの流量は、血液流量増大期間内において、前記最小流量値から前記当初の流量値にまで増大されるものであることが好ましい。
【0013】
何れかのアラーム限界値に再度到達したときに、前記自動血圧アラーム抑制モードが繰り返されるものであることが好ましい。
予め定められた全モードアクティブ期間が経過したときに、前記自動血圧アラーム抑制モードは自動的に無効になり、さらに、アラームが生成されることが好ましい。
【0014】
本明細書に記載されている方法及び装置は、持続的腎代替療法(CRRT)のための種々の腎代替療法及び持続的液体処理を実行するのみならず、血液から血漿を分離し、血漿を用いて毒素や過剰な液体を除去したり、あるいは、療法上のアフェレーシスや長期の血液透析を実行するように構成されている。
相互作用的なオペレータ制御にはオペレータ用インタフェースを含ませることができ、このインタフェースを介して装置に対して作動指示、療法の状況及びパラメータを送ることができる。
このインタフェースはタッチ式スクリーンからなるものとすることができる。
ただし、従来のボタンやスイッチを用いる公知のインタフェースを使用することもできる。
入力装置としては、例えば、キーボード、ローラーボール、マウス、音声認証システム、または、ユーザから情報をコンピュータに送信することができる他の装置を用いることができる。
入力装置もディスプレイと連動したタッチ式スクリーンとすることができ、この場合、ユーザは、スクリーンにタッチすることによって、ディスプレイに対して迅速に応答することが可能になる。
ユーザは、キーボードやタッチ式スクリーンなどの入力装置を介して、文章の情報を入力することもできる。
本明細書においては、コンピュータは、指示を受けて、システム内において情報処理を実行する。
指示は、ソフトウェア、ファームウェアまたはハードウェアとして提供され、指示には、システムの各セクションにより処理されるプログラム化されたあらゆる指示が含まれる。
地域ネットワーク(LAN)や広域ネットワーク(WAN)はそれらを介してインターネットにアクセスできるネットワークであり、本システムを構成するコンピュータや同様の装置はそれらに接続されている。
LANは送信制御プロトコル/インターネットプロトコル(TCP/IP)工業規格に適合させることもできる。
以下、好適な実施形態を用いて、さらに、図面を参照して、本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は模式化かつ単純化された図であり、CRRT環境等の下において使用される装置において実行される過誤及び/または体外アラーム抑制プロセスまたは方法の各過程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
一般的に、状況にもよるが、体外血圧アラームの数の減少はオペレータが特別モードを選択することにより実行される。患者のクリーニングまたは移動の場合には、所与の安全ボリューム限界の範囲内において特別モードが選択され、この場合、さらに自動アラーム抑制が設けられる。あるいは、例えば、患者が動いた場合や短時間の血管の痙攣の場合には、所定の時間だけ、自動的に実行される。所定の時間は、安全ボリューム限界の範囲内において、血圧パルスに対して連続して繰り返して設定することができる。
体外アラーム抑制方法またはこの方法を実施するよう構成されている体外アラーム抑制装置として提供されている過誤アラーム抑制プロセスもしくは方法または体外アラーム抑制制御は、少なくとも以下の過程を含むものとして、図示されている。
上述のように、CRRTに適した一般的なCRRT装置はこの分野においては公知であるので、冗長を避けるため、その詳細な説明は行わない。
【0017】
図1に示すように、本発明に係る方法及び/または装置はステップS10から始まり、以下のステップ及び/または構造を備えている。
ステップS15において、オペレータが患者ケアモードまたは患者クリーニングモードを選択したか否かが判定される(「患者ケアが要求されたか?」)。
ステップS15における判定がYESである場合には(ステップS15のYES)、ステップS20に進み、患者ケアまたは安全状態が第一作動モードとして設定される。
この第一作動モードにおいては、血液ポンプの流量を減少させ(「患者ケア・安全状態、血液ポンプ=作動_血液流量減少」)、実施中の療法を停止し(「療法=停止」)、動脈の血圧限界値は変更せずに、プレフィルタ及び静脈の血圧限界値が拡大される(「静脈血圧、プレフィルタ=抑制に対してオープン」)。
アラームによって、所与の時間の後、患者ケアモードが長すぎることがオペレータに知らされる。このアラーム及び/または時間は再設定可能であるようになっている。
本実施形態によれば、このモードは、例えば、オペレータが選択を解除するまで、継続させることができる。
ステップS15における判定がNOである場合には(ステップS15のNO)、ステップS25に進み、第二作動モードとして、血液ポンプの作動及び実施中の療法が引き続き実行される。血液ポンプの流量は既に、あるいは、当初に設定された流量である(「通常療法実施;血液ポンプ=作動_血液流量は設定済み、療法=実施」)。
ステップS20及びステップS25の後、ステップS30に進む。
【0018】
ステップS30において、アクセス圧アラーム状況があるか否か(アクセス圧アラーム状況が起こっている最中か否か)が判定される。
アクセス圧アラームは、検出されたアクセス圧が動脈血圧下限値より低い場合(AP<AP下限値)、または、静脈血圧上限値より高い場合(VP>VP上限値)に発せられる。
ステップS30における判定がYESである場合には(ステップS30のYES)、ステップS40に進む。
なお、「アクセス圧アラーム」は、動脈血圧が予め定められたアラーム限界値より低い場合及び/または静脈血圧が予め定められたアラーム限界値より高い場合を意味している。
ステップS40は、本システムが患者ケアモード(第一作動モード)中であるか、あるいは、通常作動(第二作動モード)中であるかに関係なく、動脈血圧または静脈血圧が所定のアラーム限界値を越えている場合(動脈血圧が下限値より低いか、または、静脈血圧が上限値より高い場合)を示しており、このステップS40においては、さらにより安全な状態を維持するか、あるいは、安全状態を停止するかが判定される。
【0019】
安全状態が維持される場合には、本プロセスまたは本システムは、ステップS45において、アラーム抑制状態または自動血圧アラーム抑制モードを設定することにより、血液ポンプが血液流量を減少された状態で作動している患者ケア状態(あるいは、患者ケアモード)よりも安全な状態に設定される。アラーム抑制状態または自動血圧アラーム抑制モードにおいては、血液流量は非常に低く設定され、及び/または、血液ポンプの流量は最小流量値まで減少し(血液ポンプ=作動_最小流量値)、療法流量は減少し、療法は停止され(療法=停止)、プレフィルタ及び静脈血圧限界値は拡大され(静脈血圧/プレフィルタ限界値=抑制に対してオープン、すなわち、前述の患者ケアモードと同一の限界値まで拡大される)。動脈血圧限界値は変更されない。
図1に示すように、ステップS30においてアクセス圧アラームの発生が認定された場合には、本プロセスは無条件でステップS40からステップS45に移行する。
【0020】
安全状態を維持するか、あるいは、安全状態を停止するかに関するステップS40における決定は、「アラーム抑制モードにおいてN秒待機するか、あるいは、血液ポンプ最小容量>Xミリリットル(血液ポンプ最小容量+=d(血液ポンプ容量))である場合には、待機を停止する」に対応する決定である。
換言すれば、ステップS40においては、凝固及び過誤アラームに対する血液ポンプの停止を回避するための所定の時間(血液ポンプ最小値の時間)が経過したか否か(血液ポンプ最小値の時間<N秒)、あるいは、血液ポンプの最小容量(血液ポンプ最小容量)が所定の容量(Xミリリットル)より小さいか否かの決定である(血液ポンプ最小値の時間<N秒または血液ポンプ最小容量<Xミリリットル)。
換言すれば、前記所定の時間(血液ポンプ最小値の時間)が経過していないか、あるいは、血液ポンプの最小容量(血液ポンプ最小容量)が前記所定の容量より小さい場合には、本プロセスはステップS40からステップS45の間をループする(ステップS40のYES)。
前記所定の時間(血液ポンプ最小値の時間)が経過したか、あるいは、血液ポンプの最小容量(血液ポンプ最小容量)が前記所定の容量と等しいか、あるいは、前記所定の容量より大きい場合には(ステップS40のNO)、本プロセスはステップS50に進む。
【0021】
ステップS45においては、安全状態は自動的に設定され、血圧スパイクを減少させる。ステップS40において判定がNOである場合(ステップS40のNO)、本プロセスはステップS50に移行する。
ステップS50においては、依然としてアクセス圧アラーム状況が存在するか否か(アクセス圧アラーム状況がいまだに発生しているか否か)が再び判定される。
アクセス圧アラーム状況は、検出されたアクセス圧が動脈血圧下限値(AP<AP下限値)より低いか、あるいは、静脈血圧上限値より高い場合(VP>VP上限値)に発生したものと判定される。
ステップS50における判定がYESである場合には(ステップS50のYES)、本プロセスはステップS60に移行する。
【0022】
ステップS60においては、オペレータに知らせるための血圧アラームが発生する。
発生した血圧アラームは、動脈血圧が低いこと(APLow)または静脈血圧が高いこと(VPHigh)を知らせるものとして構成される(血圧アラーム=APLowまたはVPHigh)。
次いで、本プロセスはステップS65に進み、例えば、一種の停止指示を用いて、血圧アラームに起因してポンプが停止される。
次のステップS75においては、本装置は安全状態に設定され、血液ポンプが停止され(血液ポンプ=停止)、実施中の療法は停止され(療法=停止)、血液ポンプ最小容量はゼロに設定される(BP最小容量=0)。
その後、本プロセスはステップS80において終了する。
ステップS50における判定がNOである場合には(ステップS50のNO)、本プロセスはステップS55に移行する。
ステップS55においては、自動血圧アラーム抑制モードが作動中のときに、血圧がアラーム範囲内にはない場合には、血液ポンプの流量は当初の、あるいは、以前に設定された血液流量まで増加される(「通常流量」または「減少した血液流量値での作動」を設定)。
【0023】
血液流量が増加する前述の期間内に再びアラーム限界値に到達したときには、本プロセスはステップS15、次いで、ステップS30に戻り、自動血圧アラーム抑制モードが繰り返される。
この繰り返しは基本的にはステップS70を介して行われる。
ステップS70においては、プロセス実行条件が満足されているか否かの判定が行われる。
本実施形態においては、自動血圧アラーム抑制モードの作動制限時間に到達するまでは、プロセス実行条件によって、本プロセスは常にステップS15に戻るようになっている。
ステップS70からステップS15に戻ると、上述の自動血圧アラーム抑制モードが繰り返されるか、あるいは、ステップS30においてアクセス圧アラームが存在しない場合には(ステップS30のNO)、ループを行う。すなわち、ステップS35に進み、前回の抑制期間が終了している場合には、血液ポンプの最小容量を再設定し、次いで、ステップS70に進む。
この場合、ステップS15において要求された患者ケアを行うことなく、さらに、ステップS30においてアクセス圧アラームを発生させることなく、自動血圧アラーム抑制モードが停止され、さらに、血液ポンプ及び療法は当初の流量で続行される。
【0024】
前述のプロセス実行条件に関しては、本装置及び本方法は、自動血圧アラーム抑制モードの全期間、すなわち、自動血圧アラーム抑制モードが作動している全期間を限定し、突発的に生じる血液不足に対する対策として、送られる血液量を非臨界的な範囲(BP最小容量)内に維持するように構成することが可能である。
作動期間の限界値に到達すると、本装置及び本方法は、自動血圧アラーム抑制モードを停止し、それに対応するアラーム(血圧アラーム)を生成するものとして構成することも可能である。
本実施形態においては、例えば、自動血圧アラーム抑制モードの作動期間が限界値に到達したことがステップS70において認定されると(アクセス圧アラーム状況が各プロセス実行時において、過度に頻繁に生じたり、あるいは、定期的に生じたりすることを意味する)(ステップS70のNO)、本プロセスはステップS75に移行し、本装置は安全状態に設定される。すなわち、血液ポンプは停止され(血液ポンプ=停止)、実施中の療法は停止され(療法=停止)、血液ポンプの最小容量はゼロに設定される(BP最小容量=0)。
その後、本プロセスはステップS80において終了する。
【0025】
本明細書に開示した本発明は、通常のプログラミング技術または工業技術を用いてソフトウェア、ファームウェア、ハードウェアまたはそれらの組み合わせを製作することにより、方法、装置または工業製品として実現させることができる。
「工業製品」とは、ハードウェアやコンピュータが読み取り可能な媒体(光学的記憶装置、揮発性または非揮発性記憶装置など)において実現されているコードまたはロジックを指す。
そのようなハードウェアとしては、フィールドプログラム可能なゲートアレイ(FPGAs)、アプリケーション特定集積回路(ASICs)、複合プログラム可能なロジック装置(CPLDs)、プログラム可能なロジックアレイ(PLAs)、マイクロプロセッサ、あるいは、他の同様な処理装置などがあるが、これらには限定されない。
システム全体や制御環境に対する特定の指示、例えば、ステップS10以前の各ステップやステップS80以降の各ステップは示されていないが、それらの指示による作動は、当業者には理解可能であるように、本明細書に記述した本システムの範囲内のものである。
図面に示され、あるいは、本明細書において述べられた特定のテキスト、シーケンス及びプロセスの内容は単なる例示であり、本発明の装置、システム及びその作動はそれによって限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0026】
従って、理解可能であるように、本発明は本明細書に記述された実施形態及びその変形例に限定されるものではなく、実施形態、変形例及び均等物の少なくとも一部の組み合わせなど当業者が想到し得るものは全て本発明の範囲に含まれる。