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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】蒸解促進剤及びパルプの製造方法
(51)【国際特許分類】
   D21C 3/02 20060101AFI20220613BHJP
【FI】
D21C3/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017194249
(22)【出願日】2017-10-04
(65)【公開番号】P2019065434
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000226161
【氏名又は名称】日華化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 多加志
(72)【発明者】
【氏名】山田 理生
(72)【発明者】
【氏名】豊原 治彦
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-091960(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103774480(CN,A)
【文献】特開2001-064888(JP,A)
【文献】特開昭57-112486(JP,A)
【文献】特開昭54-100332(JP,A)
【文献】特開昭63-309689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B1/00-D21J7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される化合物を含有し、
前記化合物の使用量が木材の乾燥重量に対して0.001質量%以上1質量%以下であることを特徴とする蒸解促進剤。
【化1】
(R は炭素数8~22のアルキル基、炭素数8~22のヒドロキシアルキル基、炭素数8~22のアルケニル基、炭素数8~22のヒドロキシアルケニル基であり 、R 、R はそれぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1のヒドロキシアルキル基、炭素数2~4のアルケニル基、炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基、ベンジル基、グリシジル基、又は下記一般式(2)で示される基であって、A Oは炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、Yは水素又はアシル基であり、nはA Oの繰り返し単位の数で1~6の整数であり、、R、Rの炭素数1のヒドロキシアルキル基の数と炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基の数とnの数との総和が1~6の整数である。Xは下記一般式(3)で示される化合物のMを除したアニオンを除く、対イオンである。)
【化2】
[R―O-(AO)―]PO(―OM3―k 一般式(3)
(R6は炭素数4~24の直鎖、分岐または環状の脂肪族1価炭化水素基;A3は炭素数3または4のアルキレン基;rは平均が0~15となる0または1以上の整数;kは1または2の整数;M2は一価の陽イオンを示す。)
【請求項2】
前記一般式(1)で示され、下記の組成を備えた合物を含有することを特徴とする請求項1に記載された蒸解促進剤。
(R は炭素数12~18のアルケニル基であり、R 、R 、R はそれぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基、又は前記一般式(2)で示される基であって、A Oは炭素数2~3のアルキレンオキシ基であり、Yは水素であり、nはA Oの繰り返し単位の数で1~4の整数であり、R 、R 、R のnの数との総和が1~4の整数である。X は前記一般式(3)で示される化合物のM を除したアニオンを除く、対イオンである。
【請求項3】
パルプの製造における蒸解工程において、請求項1又は2に記載された蒸解促進剤を用いることを特徴とするパルプの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸解促進剤及びパルプの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木材などの植物からパルプを製造するには、一般にアルカリや亜硫酸塩など使って、蒸解処理を行う。この蒸解処理により不要なリグニン成分や天然樹脂成分などを溶解や分散を行って除去し、パルプを製造する。
【0003】
しかしながら、木材などの天然資源は環境問題などから乱伐が規制され、また木材の価格も高くなっているのが現状である。そのため、原木原単位辺りのパルプの生産量を増加し、品質の高いパルプ製品を生産することが重要になってきている。
【0004】
これらの課題を解決する方法として、例えば、特許文献1では、リグノセルロース物質をアルカリ性薬液または亜硫酸塩を含む薬液で処理してパルプ化する蒸解工程において、アルカリ性薬液または亜硫酸塩を含む薬液からなる蒸解液に、ヒドロキシアントラセンまたはヒドロキシアントラセン誘導体を蒸解助剤として添加して、アルカリ法または亜硫酸塩法によりリグノセルロース物質の蒸解を行うことを特徴とするパルプの製造方法が提示されている。
【0005】
また、特許文献2では、水酸化ナトリウム及び硫化ナトリウムを含む黒液中でパルプ原料の蒸解を行うクラフト蒸解法において、前記黒液中に架橋型カチオンポリマー、直鎖型カチオンポリマー及びカチオン化でんぷんの少なくとも1種が含まれているカチオン性高分子化合物を添加することを特徴とするクラフト蒸解法が提示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭53-74101号公報
【文献】特開2014-1488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらヒドロキシアントラセンまたはヒドロキシアントラセン誘導体やカチオン性高分子化合物を蒸解工程に添加しても、蒸解促進効果は十分とはいえないことが判明した。
【0008】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、木材の蒸解を促進して高い効率でパルプを生産できる蒸解促進剤及びパルプの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、木材の蒸解を促進して高い効率でパルプを生産できる蒸解促進剤及びパルプの製造方法を見出した。
【0010】
即ち、本発明の蒸解促進剤は、下記一般式(1)で示される化合物を含有することを特徴とする。
【0011】
【化1】
【0012】
(R、R、R、Rは、それぞれ独立に、炭素数1~22のアルキル基、炭素数1のヒドロキシアルキル基、炭素数5~22のヒドロキシアルキル基、炭素数2~22のアルケニル基、炭素2~22のヒドロキシアルケニル基、ベンジル基、グリシジル基、又は下記一般式(2)で示される基であって、AOは炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、Yは水素又はアシル基であり、nはAOの繰り返し単位の数で1~40の整数であり、R、R、R、Rにおいて炭素数1のヒドロキシアルキル基の数と炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基の数とnの数との総和が0~40の整数である。Xは対イオンである。)
【0013】
【化2】
【0014】
本発明のパルプの製造方法は、パルプの製造における蒸解工程において、請求項1に記載された蒸解促進剤を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、木材の蒸解を促進して高い効率でパルプを生産できる蒸解促進剤及びパルプの製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0017】
(実施形態)
本実施形態の蒸解促進剤は、下記一般式(1)で示される化合物を含む。これらは1種又は2種以上を使用することができる。
【0018】
【化3】
【0019】
(R、R、R、Rは、それぞれ独立に、炭素数1~22のアルキル基、炭素数1のヒドロキシアルキル基、炭素数5~22のヒドロキシアルキル基、炭素数2~22のアルケニル基、炭素2~22のヒドロキシアルケニル基、ベンジル基、グリシジル基、又は下記一般式(2)で示される基であって、AOは炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、Yは水素又はアシル基であり、nはAOの繰り返し単位の数で1~40の整数であり、R、R、R、Rにおいて炭素数1のヒドロキシアルキル基の数と炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基の数とnの数との総和が0~40の整数である。Xは対イオンである。)
【0020】
【化4】
【0021】
なお、本発明の蒸解促進剤によって上記目的が達成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。
【0022】
すなわち、一般式(1)の化合物は比較的低分子のカチオン化合物であるため、アルカリ塩や亜硫酸塩を有する水相と木材の樹脂相の両相の行き来が可能となる。その結果、アルカリ塩や亜硫酸塩を木材の樹脂相に運び、接触機会を向上させることで樹脂成分の分解反応を促進すると考えている。一方、高分子のカチオン化合物では前記両層の移動がし難いためアルカリ塩や亜硫酸塩を木材の樹脂相に運ぶことが難しく、樹脂成分の分解反応を促進できないと考えている。
【0023】
本実施形態の蒸解促進剤は、蒸解の促進効果の観点から、一般式(1)中、Rは、炭素数5~22のアルキル基、炭素数5~22のヒドロキシアルキル基、炭素数5~22のアルケニル基、炭素数5~22のヒドロキシアルケニル基であり、R、R、Rは、それぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1のヒドロキシアルキル基、炭素数2~4のアルケニル基、炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基、ベンジル基、グリシジル基、又は前記一般式(2)で示される基であって、nは1~20の整数であり、R、R、Rの炭素数1のヒドロキシアルキル基の数と炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基の数とnの数との総和が0~20の整数である。Xは対イオンであることが好ましい。
【0024】
さらに、本実施形態の蒸解促進剤は、一般式(1)中、Rは、炭素数8~22のアルキル基、炭素数8~22のヒドロキシアルキル基、炭素数8~22のアルケニル基、炭素数8~22のヒドロキシアルケニル基であり、R、R、Rは、それぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1のヒドロキシアルキル基、炭素数2~4のアルケニル基、炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基、ベンジル基、グリシジル基、又は前記一般式(2)で示される基であって、nは1~6の整数であり、R、R、Rの炭素数1のヒドロキシアルキル基の数と炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基の数と、nの数との総和が、0~6の整数である。Xは対イオンであることがより好ましい。
【0025】
一般式(1)の化合物の製造方法は、特に限定するものではなく、公知の製造方法で得られる。
【0026】
一般式(1)の化合物は、水や有機溶剤に溶解や乳化あるいは分散させてもよい。前記有機溶剤の種類としては、特に限定されるものではないが、メタノール、エタノール、プロパノールなどの炭素数1~6の低級アルコール;前記低級アルコールのアルキレンオキシド付加物;エチレングルコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール;3-メチル-3-メトキシブタノールなどが挙げられる。
【0027】
また、一般式(1)で示される化合物は蒸解促進剤として製剤化するためや、木材への浸透性や洗浄性などを付与するために、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、一般式(1)化合物以外のカチオン界面活性剤、両性界面活性剤、鉱物油、有機溶剤、オレンジオイルなどの天然溶剤、アルカリ剤など配合して使用できる。蒸解後の洗浄効率を向上させるため、消泡剤、洗浄剤などを配合して使用できる。
【0028】
また、公知の蒸解促進剤を配合して使用できる。例えばアントラキノン系誘導体やポリサルファイト系化合物などが挙げられ、例えばアントラキノンなど水溶性ジヒドロキシアントラセン化合物などが挙げられ、代表的には1,4-ジヒドロー9,10-ジヒドロキシアントラセンのナトリウム塩が挙げられる。
【0029】
本発明の蒸解促進剤は、蒸解促進効果とコストの観点から、蒸解促進剤を基準に一般式(1)の化合物が1質量%以上100質量%以下含有されていることが好ましく、10質量%以上100質量%以下がより好ましく、20質量%以上100質量%以下が特に好ましい。
【0030】
パルプの製造方法は、一般的に木材に熱や圧力などの物理処理やアルカリ剤などの化学処理を行ってパルプ化する蒸解工程、得られた粗パルプを洗浄する工程、洗浄したパルプを漂泊する工程などが含まれるが、本発明のパルプの製造方法は、蒸解工程で前記一般式(1)で示される化合物を含む蒸解促進剤を用いることを特徴とする。
【0031】
本発明のパルプの製造方法に使われる原料は、木材(針葉樹、広葉樹)または非木材が挙げられる。非木材の具体例としては、わら、バカス、ヨシ、ケナフ、クワ、竹、草本類、雑草等がある。
【0032】
本発明の蒸解促進剤が適応できる蒸解方法としては、特に限定されないが、例えばアルカリ蒸解方法や亜硫酸塩蒸解方法が挙げられ、アルカリ蒸解方法としては、クラフト法、ソーダ法、炭酸ソーダ法、ポリサルファイド法等が挙げられる。また、亜硫酸塩蒸解方法としては、アルカリ性亜硫酸塩法、中性亜硫酸塩法、重亜硫酸塩法等が挙げられる。
【0033】
蒸解設備は連続式またはバッチ式のいずれでもよい。さらに、蒸解システムとして、MCC(修正蒸解法)、ITC(全缶等温蒸解法)、Lo-solids(釜内固形分の低減)、BLI(黒液を浸透段に使用)などの蒸解法にも適用できる。
【0034】
本発明のパルプの製造方法における蒸解促進剤の添加時期及び方法は、パルプ化する蒸解工程を含むそれ以前の工程が好ましく、具体的には、一般式(1)の化合物を含む蒸解促進剤を蒸解前や蒸解工程中に蒸解釜に直接添加する方法、蒸解前の木材チップに吹きかける方法、蒸解設備が連続式の場合、循環する黒液に添加する方法が挙げられる。
【0035】
本発明の蒸解促進剤は、そのまま使用してもよいが、水や有機溶剤に溶解や乳化あるいは分散させて使用することができる。前記有機溶剤の種類としては、特に限定されるものではないが、メタノール、エタノール、プロパノールなどの炭素数1~6の低級アルコール;前記低級アルコールのアルキレンオキシド付加物;エチレングルコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール;3-メチル-3-メトキシブタノールなどが挙げられる。
【0036】
また、蒸解促進剤は、木材への浸透性や洗浄性などを付与するために、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、一般式(1)化合物以外のカチオン界面活性剤、両性界面活性剤、鉱物油、有機溶剤、オレンジオイルなどの天然溶剤、アルカリ剤など併用して使用できる。蒸解後の洗浄効率を向上させるため、消泡剤、洗浄剤などを併用して使用できる。
【0037】
また、公知の蒸解促進剤を併用して使用できる。例えばアントラキノン系誘導体やポリサルファイト系化合物などが挙げられ、例えばアントラキノンなど水溶性ジヒドロキシアントラセン化合物などが挙げられ、代表的には1,4-ジヒドロー9,10-ジヒドロキシアントラセンのナトリウム塩が挙げられる。
【0038】
本発明の蒸解促進剤の使用量は、分解効果、コストの観点から、木材など原料の乾燥重量に対して一般式(1)化合物の濃度として0.0001質量%以上10質量%以下が好ましく、0.001質量%以上1質量%以下がより好ましく、0.005質量%以上0.5質量%以下が特に好ましい。
【0039】
また、水溶性ジヒドロキシアントラセン化合物を併用する場合、水溶性ジヒドロキシアントラセン化合物の使用量は、分解効果、コストの観点から、木材など原料の乾燥重量に対して0.0001質量%以上10質量%以下が好ましく、0.001質量%以上1質量%以下がより好ましく、0.005質量%以上0.5質量%以下が特に好ましい。
【0040】
蒸解の処理温度としては、目的のパルプ製品によって異なり限定されるものではないが、50~300℃が好ましく、80~250℃がより好ましい。
【0041】
蒸解の処理圧としては、目的のパルプ製品によって異なり限定されるものではないが、常圧~10MPaが好ましく、常圧~5Mpaがより好ましい。
【実施例
【0042】
以下実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0043】
<一般式(1)の化合物>
実施例に用いた一般式(1)及び比較例の化合物を下記表1、2に示す。
【0044】
【化5】
【0045】
表1においてR~Rの置換基としてのEO及び POは、それぞれ、エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基を示し、数字は付加モル数を示す。また表中で、例えば化合物No.(E2)のようにRとRの項目をまたいで(EO)4Hという記載がある場合は、RとRに合計で4モルのエチレンオキシドを付加したということを表す。また、No.(E4)のようにRとRの項目をまたいで〔(EO)(PO)〕Hという表記がある場合はRとRに合計でEO4モル、PO2モルをランダムで付加したことを表す。また、No.(E6)のようにRとRとRの項目をまたいで(PO)/(EO)10Hという表記がある場合はRとRとRに合計でPO5モル、EO10モルをブロックで付加したことを表す。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
(実施例1)
105℃×10時間乾燥したL材の木材チップを50g、苛性ソーダ15g、水135g、及び一般式(1)の化合物(E1)0.005g(0.01質量%対木材チップ)をミニカラー(MINI COLOR テクサム技研製)のポットに仕込み155℃×3時間蒸解を行った。冷却後、ケミスタラーにて木材を十分にほぐした後、No.2ろ紙にてろ過洗浄を繰り返し、ろ液の色がなくなるまで洗浄した。洗浄して得られたろ過残渣のパルプと木材片の混合物を6/1000インチのフラットスクリーン(熊谷理機製)に通した(6カット)。フラットスクリーンを通らなかった未蒸解の木材片を回収し、105℃×10時間で乾燥後、重量を測定し「フラットスクリーンで回収した木材片量(g)」とし、木材片の残留率(%)を下記式によって算出した。
【0050】
木材片の残留率(%)=[フラットスクリーンで回収した木材片量(g)/蒸解した木材チップ(50g)]×100
【0051】
一方フラットスクリーンを通った液は200メッシュ金網に通して200メッシュ金網を通らなかったパルプを回収し、105℃×10時間で乾燥後、重量を測定し「200メッシュ金網で回収したパルプ量(g)」とした。パルプの歩留まり率(%)を記式によって算出した。木材片の残留率は10%以下を合格とし、パルプの歩留まり率は40%以上を合格とした。結果を表4に示す。
【0052】
パルプの歩留まり率(%)=[200メッシュ金網で回収したパルプ量(g)/蒸解した木材チップ(50g)]×100
【0053】
(実施例2~13)
一般式(1)の化合物の種類及び使用量を表4に示した化合物及び使用量に変えたほかは、実施例1と同じ処理を行い、木材片の残留率及びパルプの歩留まり率を求めた。結果を表4に示す。
【0054】
(実施例14)
表4に示した通り、化合物(E1)の使用量、及び、さらに化合物(E11)を表4に示した使用量で添加したほかは、実施例1と同じ処理を行い、木材片の残留率及びパルプの歩留まり率を求めた。なお、化合物(E11)0.05質量%/木材チップとは、表2から換算すると、1,4-ジヒドロー9,10-ジヒドロキシアントラセンのナトリウム塩として0.01質量%/木材チップを意味する。結果を表4に示す。
【0055】
(実施例15~17)
化合物(E1)及び化合物(E11)を表4に示した使用量で添加したほかは、実施例14と同じ処理を行い、木材片の残留率及びパルプの歩留まり率を求めた。結果を表4に示す。
【0056】
【表4】
【0057】
(比較例1)
一般式(1)の化合物を添加しないほかは、実施例1と同じ処理を行い、木材片の残留率及びパルプの歩留まり率を求めた。結果を表5に示す。
【0058】
(比較例2~10)
一般式(1)の化合物を表5に示した比較例の化合物及び使用量に変えたほかは、実施例1と同じ処理を行い、木材片の残留率及びパルプの歩留まり率を求めた。結果を表5に示す。
【0059】
【表5】
【0060】
(実施例18)
105℃×10時間乾燥したN材の木材チップを50g、硫化ナトリウム5g、苛性ソーダ10g、水135g、及び一般式(1)の化合物(E1)0.025g(0.05質量%対木材チップ)をミニカラー(MINI COLOR テクサム技研製)のポットに仕込み155℃×3時間蒸解を行った。冷却後、ケミスタラーにて木材を十分にほぐした後、No.2ろ紙にてろ過洗浄を繰り返し、ろ液の色がなくなるまで洗浄した。洗浄して得られたろ過残渣のパルプと木材片の混合物を6/1000インチのフラットスクリーン(熊谷理機製)に通した(6カット)。フラットスクリーンを通らなかった未蒸解の木材片を回収し、105℃×10時間で乾燥後、重量を測定し「フラットスクリーンで回収した木材片量(g)」とし、木材片の残留率(%)を前記式によって算出した。
【0061】
一方フラットスクリーンを通った液は200メッシュ金網を通して200メッシュ金網を通らなかったパルプを回収し、105℃×10時間で乾燥後、重量を測定し「200メッシュ金網で回収したパルプ量(g)」とした。パルプの歩留まり率(%)を前記式によって算出した。木材片の残留率は10%以下を合格とし、パルプの歩留まり率は40%以上を合格とした。結果を表6に示す。
【0062】
(実施例19~30)
一般式(1)の化合物の種類及び使用量を表6に示した化合物及び使用量に変えたほかは、実施例18と同じ処理を行い、木材片の残留率及びパルプの歩留まり率を求めた。結果を表6に示す。
【0063】
(実施例31)
表6に示した通り、化合物(E2)の使用量、及び、さらに化合物(E11)を表6に示した使用量で添加したほかは、実施例18と同じ処理を行い、木材片の残留率及びパルプの歩留まり率を求めた。なお、化合物(E11)0.05質量%/木材チップとは、表2から換算すると、1,4-ジヒドロー9,10-ジヒドロキシアントラセンのナトリウム塩として0.01質量%/木材チップを意味する。結果を表6に示す。
【0064】
(実施例32~34)
一般式(1)の化合物の種類及び使用量を表6に示した化合物及び使用量に変え且つ化合物(E11)を表6に示した使用量で添加したほかは、実施例31と同じ処理を行い、木材片の残留率及びパルプの歩留まり率を求めた。結果を表6に示す。
【0065】
【表6】
【0066】
(比較例11)
一般式(1)の化合物を添加しないほかは、実施例18と同じ処理を行い、木材片の残留率及びパルプの歩留まり率を求めた。結果を表7に示す。
【0067】
(比較例12~20)
一般式(1)の化合物を表7に示した比較例の化合物及び使用量に変えたほかは、実施例18と同じ処理を行い、木材片の残留率及びパルプの歩留まり率を求めた。結果を表7に示す。
【0068】
【表7】
【0069】
(その他の実施形態)
上述の実施形態は本願発明の例示であって、本願発明はこれらの例に限定されず、これらの例に周知技術や慣用技術、公知技術を組み合わせたり、一部置き換えたりしてもよい。また当業者であれば容易に思いつく改変発明も本願発明に含まれる。