(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】センサ
(51)【国際特許分類】
G01N 27/06 20060101AFI20220613BHJP
G01N 27/00 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
G01N27/06 A
G01N27/00 L
(21)【出願番号】P 2017224585
(22)【出願日】2017-11-22
【審査請求日】2020-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【氏名又は名称】村越 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100140822
【氏名又は名称】今村 光広
(72)【発明者】
【氏名】中村 江児
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 和彦
(72)【発明者】
【氏名】原田 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】藤井 俊秀
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-014518(JP,A)
【文献】実開昭62-034355(JP,U)
【文献】特開平09-318574(JP,A)
【文献】特開2017-032352(JP,A)
【文献】特開2012-013639(JP,A)
【文献】特開2008-107150(JP,A)
【文献】特開2002-310967(JP,A)
【文献】特許第5813268(JP,B1)
【文献】特開2012-078130(JP,A)
【文献】特開2017-173052(JP,A)
【文献】特開平05-142175(JP,A)
【文献】特開2012-180921(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02682732(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16N 29/00
G01N 27/00 - G01N 27/24
G01N 33/00 - G01N 33/46
G01V 1/00 - G01V 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械装置に取り付けられるセンサであって、
第1の電極と、
第2の電極と、
該第1の電極と該第2の電極との間に印加される電圧により
、前記機械装置から発生し該電極間
に集積した導体物質による前記第1の電極と前記第2の電極との間の電気抵抗の変化を検知する検知手段と、
を備え、
前記第1の電極又は前記第2の電極のいずれかの電極は、他方の電極に螺合して取付けられ、該いずれかの電極と該他方の電極との間にばね部材が設けられており、前記第1の電極又は前記第2の電極のいずれかの電極と前記他方の電極との間の螺合状態を緩めることにより前記ばね部材により該ばね部材の延伸方向に該いずれかの電極を移動させることで、前記第1の電極と前記第2の電極との間の距離が調整可能となるように構成されたセンサ。
【請求項2】
機械装置に取り付けられるセンサであって、
円筒形状の第1の電極と、
前記第1の電極の径方向の内側において前記第1の電極に固定された第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に印加される電圧により、前記機械装置から発生し前記第1の電極と前記第2の電極との間に集積した導体物質による前記第1の電極と前記第2の電極との間の電気抵抗の変化を検知する検知手段と、
を備え、
前記第1の電極は、径方向の寸法が互いに異なる複数の候補電極の中から選択され、
前記第2の電極は、前記複数の候補電極のいずれにも固定可能に構成されており、
前記複数の候補電極のうちのどの候補電極に固定されるかに応じて、前記第1の電極と前記第2の電極との間の距離が調整可能となるように構成されたセンサ。
【請求項3】
磁石をさらに備え、
前記磁石の磁力により、前記導体物質を前記第1の電極と前記第2の電極との間に集積させるように構成された、請求項1
又は2に記載のセンサ。
【請求項4】
前記第1の電極又は前記第2の電極の少なくともいずれかの電極の、他方の電極と対向する側をテーパ状に形成した、請求項1に記載のセンサ。
【請求項5】
前記第1の電極又は前記第2の電極の少なくともいずれかの電極の、他方の電極と対向する端部であって、前記導体物質の浸入方向でみて手前側の端部が面取りされている、請求項
1から4までのいずれか1項に記載のセンサ。
【請求項6】
フランジ部を備える、
前記機械装置を収容するための機構であって、
前記センサはケースに取り付けられ、該ケースは前記フランジ部に気密に固定された、請求項1から
5までのいずれか1項に記載のセンサが取り付けられた機構。
【請求項7】
前記ケースの、少なくとも前記フランジ部との接触部分が絶縁部材により形成された、請求項
6に記載の機構。
【請求項8】
前記センサは、前記フランジ部に着脱可能に固定される、請求項
6又は7に記載の機構。
【請求項9】
前記ケースの、前記フランジ部と接触する端面が該フランジ部の端面と螺合するようにして固定される、請求項
8に記載の機構。
【請求項10】
前記
機械装置は、減速機である、請求項
6から9までのいずれか1項に記載の機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
減速機等の機械装置は、通常潤滑油が貯められたハウジング内に収容され、歯車や軸受等の機械部品の損傷を防止するようにしている。このような機械装置の運転時に機械部品が摩耗すると摩耗粉(主に鉄粉などの導体物質)が当該潤滑油内に混入することとなる。
【0003】
一般に、機械部品の摩耗が進んで故障率曲線(バスタブ曲線)における摩耗故障期に入ると、潤滑油への摩耗粉(導体物質)の発生量が増加することが知られている。このような機械部品の予防保全を的確に行うためには、摩耗粉(導体物質)の発生量の増加を適切に検知することが欠かせない。
【0004】
特許文献1は、オイル内の金属粉量を検知するセンサについて開示している。特許文献1に記載のセンサは、永久磁石を有するセンサヘッド部と、センサヘッド部の先端面に設けられたカップ状電極と、センサヘッド部の外周面に並べて配置された複数の棒状導電体とを備えている。永久磁石によって磁場が印加される棒状導電体とカップ状電極の対向する端面間(検知領域)に摩耗粉が集積して導電体が短絡すると、センサの出力が変化することを利用して、オイルの汚れ具合を検知可能とすることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、機械装置といっても小型のものから大型のものまで様々な寸法を備え、当該装置内の機械部品のサイズも異なることから、運転時に発生する摩耗粉(導体物質)の発生量も機械装置により異なる。特許文献1のようなセンサでは、機械部品の予防保全を行うにあたり、対象となる機械装置毎の設計・開発を要し、種々の大きさの機械装置に汎用的に対応することが困難であるという問題があった。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、同じセンサにより、機械装置の寸法に依存せず、摩耗粉(導体物質)の量を適切に検知可能ならしめることで、機械部品の予防保全のために汎用的に利用可能なセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係るセンサは、第1の電極と、第2の電極と、を含み、該第1の電極と該第2の電極との間に電圧を印加し、導体物質を該電極間に集積して、該電極間の電気抵抗の変化を検知するセンサであって、当該第1の電極と当該第2の電極との間の距離を調整可能としたことを特徴とする。
【0009】
本発明の一実施形態に係るセンサは、当該第1の電極又は当該第2の電極の少なくともいずれかの電極を交換可能に構成されている。
【0010】
本発明の一実施形態に係るセンサは、当該第1の電極又は当該第2の電極の少なくともいずれかの電極を異なる寸法の電極と交換可能とし、当該第1の電極と当該第2の電極との間の距離を調整可能に構成されている。
【0011】
本発明の一実施形態に係るセンサは、当該第1の電極又は当該第2の電極の少なくともいずれかの電極の、他方の電極と対向する側をテーパ状に形成されている。
【0012】
本発明の一実施形態に係るセンサは、当該第1の電極又は当該第2の電極のいずれかの電極は、他方の電極に螺合して取付けられ、該いずれかの電極と該他の電極との間にばね部材が設けられている。
【0013】
本発明の一実施形態に係るセンサは、当該第1の電極又は当該第2の電極のいずれかの電極と当該他方の電極との間の螺合状態を緩めると、当該ばね部材により該ばね部材の延伸方向に該いずれかの電極が移動するように構成される。
【0014】
本発明の一実施形態に係るセンサは、当該第1の電極又は当該第2の電極の少なくともいずれかの電極の、他方の電極と対向する端部であって、当該導体物質の浸入方向でみて手前側の端部が面取りされている。
【0015】
本発明の一実施形態に係るセンサは、樹脂材が、当該電極間の当該導体物質の集積する領域以外の領域に埋設されている。
【0016】
本発明の一実施形態に係る機構は、フランジ部を備え、装置を収容するものであり、センサがケースに取り付けられ、該ケースは当該フランジ部に気密に固定され、上述の実施形態に係るセンサが取り付けられている。
【0017】
本発明の一実施形態に係る機構は、当該ケースの、少なくとも当該フランジ部との接触部分が絶縁部材により形成されている。
【0018】
本発明の一実施形態に係る機構は、当該センサが、当該フランジ部に着脱可能に固定されている。
【0019】
本発明の一実施形態に係る機構は、当該ケースの、当該フランジ部と接触する端面が該フランジ部の端面と螺合するようにして固定されている。
【0020】
本発明の一実施形態に係る機構における装置は、減速機である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一実施形態のセンサによれば、機械装置の寸法に依存せず、摩耗粉(導体物質)の量を適切に検知可能となり、機械部品の予防保全のために汎用的に利用可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る機構1の側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るセンサ5の上面図及び断面図である。
【
図3】本発明の実施例1に係るセンサの構成を示す図である。
【
図4】本発明の実施例2に係るセンサの構成を示す図である。
【
図5】本発明の実施例3に係るセンサの構成を示す図である。
【
図6】本発明の実施例4に係るセンサの構成を示す図である。
【
図7】本発明の実施例5に係るセンサの構成を示す図である。
【
図8】本発明の実施例6に係るセンサの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。以下においては、本発明の一実施形態における装置として、減速機を例に取り説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る機構1の側面図である。
図2に示されるように、機構1は、フランジ3を備え、該フランジ3に減速機2の少なくとも一部が収容されている。
【0025】
フランジ3は減速機2を収容する収容部材であり、また、サーボモータ4がフランジ3に取り付けられる。フランジ3は、中空部(空間S)を有する略筒状の部材である。フランジ3の軸方向両端の開口部は、それぞれ減速機2及びサーボモータ4により塞がれ、密閉された空間Sが形成される。空間S内には潤滑油が充填され、フランジ3はオイルバスとしても機能する。
【0026】
減速機2は、フランジ3に取り付けられたケース12と、サーボモータ4の出力軸13に接続された入力軸14と、出力軸15を備えている。入力軸14及び出力軸15は、ケース12に対して回転軸AX周りに回転可能に支持されている。ケース12は、フランジ3に気密に設けられる。
【0027】
サーボモータ4の出力は、入力軸14を介して減速機2に入力され、減速機2によって減速された後、出力軸15を介して出力側装置A1に伝達される。
【0028】
減速機2の歯車機構が収容されるケース12内の空間は、フランジ3内の空間Sと連絡している。減速機2が作動すると、ケース12内の歯車機構の回転に伴い、ケース12内の空間とフランジ3内の空間Sとの間で潤滑油の循環が生じる。この潤滑油の循環により、減速機2の内部で発生した摩耗粉(以下、導体物質という)がフランジ3内の空間Sに排出される。
【0029】
空間S内には、潤滑油中に浮遊する導体物質の増加を検知するためのセンサ5が支持部材16に取り付けられている。センサ5は、磁石によって導体物質を電極間のギャップ部に集積させて、電極間の電気抵抗の変化によって潤滑油中の摩耗粉の量を検知するセンサである。センサ5には、複数のバリエーションが考えられる。
図2ないし
図6を参照して、センサ5の種々の実施形態の一部を説明する。ここで、センサ5は、ケース12内に配置するよう構成してもよく、その他機構1内の任意の場所に適宜配置することができる。
【0030】
図2は、本発明の一実施形態におけるセンサ5の構成を示す図である。
図2(a)~(c)は、それぞれ、センサ5の上面図、当該上面図のA-A線における断面図を示す。
【0031】
図2に示されるように、センサ5は、中心電極(第1の電極)6、永久磁石7、箱状電極(第2の電極)8、ネジ部材9及び樹脂材10を備えている。図示のように、中心電極(第1の電極)6及び永久磁石7は、ネジ部材9により箱状電極(第2の電極)8に固定されている。なお、
図1に示す信号線41が箱状電極8に接続され、また、信号線42が中心電極6に接続されている。なお、永久磁石7を用いず、中心電極6を、当該磁石と電極とを兼ねるように構成してもよい。
【0032】
箱状電極8は、例えば、鉄やフェライト、ケイ素鋼等の導電性を有する磁性材料によって形成された磁性体の部材である。箱状電極8は、略円筒状に構成されるが、その軸方向における一端側(
図2の断面図における下側)の開口部が底部8aで塞がれ、上面に開口部を有する、円筒箱状に構成される。なお、箱状電極8の形状は、上面のみ開口した直方体形状や下面が塞がれた多角管形状などの電極でもよい。
【0033】
箱状電極8の中空部には、非磁性体(絶縁体)である樹脂材10が配置されている。このようにして、中心電極(第1の電極)6及び永久磁石7は、これらの少なくとも一部が、当該樹脂材の中央領域に埋め込まれるようにして形成される。
【0034】
すなわち、箱状電極8は、永久磁石7及び箱状電極8の少なくとも一部が埋設された樹脂材10を取り囲うようにして配置されている。なお、永久磁石7及び中心電極6の形状は、円柱状に限らず、直方体状や多角柱状など、他の形状としてもよい。
【0035】
図2の各断面図に示すように、中心電極6の外形は、箱状電極8の内周よりも小さく形成されている。そのため、中心電極6と箱状電極8との間には、中心電極6の全周に亘って(中心電極を取り囲う位置に)、樹脂材10の上部にギャップ部GAが形成されている。言い換えると、中心電極6と箱状電極8は、樹脂材10上部のギャップ部GAを中心に対向するように配置されている。
【0036】
中心電極6、箱状電極8の各電極には、出力ライン(
図1の信号線41、42)が接続されている。なお、図示のように、中心電極6の下部等に永久磁石7を取り付けられていてもよいし、そうでなくても構わない。また、永久磁石7を取り付ける場合、当該永久磁石7は磁石や電磁石で構成されるが、磁石を銅などの非磁性体で被覆しこの被覆層に信号線41、または信号線42を接続するように構成してもよい。
【0037】
出力ラインの出力端は、センサ5の抵抗値をモニタして、導体物質の電極間への集積による抵抗値の変動に基づき、機械部品の故障予知を行うセンサ駆動回路(図示しない)と接続されている。センサ駆動回路は、中心電極6と箱状電極8との間の電気抵抗の変化を検知する検知手段の例である。検知手段は、中心電極6と箱状電極8との間の電気抵抗の低下を検知するように構成されてもよい。この検知手段として、市販の絶縁抵抗計を用いることができる。一定量を超える導体物質がギャップ部GAに集積すると、電圧が印加される中心電極6と箱状電極8との間の電気抵抗が低下して、出力ラインの出力レベルが変化する。センサ駆動回路は、この電気抵抗の低下を検知することで、機械部品の故障予知を可能とする。また、電気抵抗の低下には、非通電と電通によるオンオフ信号も含まれ、非通電と通電の2つの状態で検知(以下、「デジタル検知」と言う)するようにしてもよい。
【0038】
センサ駆動回路は、有線又は無線により、マニピュレータ等の上位制御装置に接続されている。
図1の回路基板43は、出力ラインの出力(センサ40Aの出力)を上位制御装置に常時送信してもよく、また、省電力化のため、上位制御装置に間欠的(所定の時間間隔毎)に送信してもよい。
【0039】
上位制御装置は、回路基板43より受け取った出力ラインの出力レベルの変化を検知すると、所定の報知手段(表示装置や音声出力装置)により、例えば、減速機2のメンテナンスを促す警告を発するように構成することができる。
【0040】
永久磁石8は着磁され、所定の方向に磁束経路φAが形成される。特に、中心電極6の周囲のギャップ部GAに強い磁束が流れる。永久磁石7の磁力により、ギャップ部GAには、機械部品の導体物質(例えば、潤滑油へ混入した機械部品の導体物質)が吸着される。
【0041】
ここで、機械部品の摩耗が進んで故障率曲線(バスタブ曲線)における摩耗故障期に入ると、導体物質の発生量が増加するが、この発生量は装置のサイズにより大きく異なる。一般に、大きな装置であればある程、より大きなないしはより多くの機械部品を備えるため、より多くの導体物質が発生することとなる。そのため、大きな装置では、機械部品の摩耗が進み摩耗故障期に入るまでにより多くの導体物質を発生させる。
【0042】
このことから、故障率曲線の異なる装置に対して、同じギャップGAを有するセンサを単純に用いてしまうと、様々なサイズの装置の機械部品の予防保全を的確に行うことができない。しかしながら、本発明の一実施形態におけるセンサ5は、
図2(a)、(b)、(c)に示すように、異なるギャップGA長さ(X1、X2、X3)を有するように構成され得るため、対象とする装置のサイズに応じて適切なギャップGA長さを備えたセンサ5を選択することで、当該装置の故障率曲線に合わせた予防保全を行うことができる。
【0043】
具体的には、本発明の一実施形態におけるセンサ5は、図示のように、異なる径方向寸法を有する箱状電極8に対して、中心電極6や永久磁石7をネジ9により固定することで、対象装置のサイズに合わせた適切なギャップGA長さを形成するセンサ5を構成することが可能となる。
【0044】
また、本発明の一実施形態におけるセンサ5は、異なる径方向寸法を有する中心電極6や永久磁石7を箱状電極8に対してネジ9により固定するようにしてもよい。これにより、対象装置のサイズに合わせた適切なギャップGA長さを形成するセンサ5を構成することが可能となる。
【0045】
次に、本発明の一実施形態におけるセンサ5を
図3に示す。
図3(a)は、それぞれ上面図、A-A断面図を示す。
図3(b)は、別の状態のA-A断面図を示す。
【0046】
図3(a)に示されるように、センサ5は、中心電極(第1の電極)6、永久磁石7、箱状電極(第2の電極)8、バネ部材11、ネジ部材9及び樹脂材10を備えている。図示のように、中心電極(第1の電極)6と永久磁石7との間にバネ部材11が挿入され、これらがネジ部材9により箱状電極(第2の電極)8に螺合して固定されている。なお、図示しないが、
図1に示す信号線41が箱状電極8に接続され、また、信号線42が中心電極6に接続されている。なお、永久磁石7を用いず、中心電極6を、当該磁石と電極とを兼ねるように構成してもよい。
【0047】
箱状電極8は、例えば、鉄やフェライト、ケイ素鋼等の導電性を有する磁性材料によって形成された磁性体の部材である。箱状電極8は、略円筒状に構成されるが、その軸方向における一端側(
図3(a)の断面図における下側)の開口部が底部8aで塞がれ、上面に開口部を有する、円筒箱状に構成される。なお、箱状電極8の形状は、上面のみ開口した直方体形状や下面が塞がれた多角管形状などの電極でもよい。
【0048】
箱状電極8の中空部には、非磁性体(絶縁体)である樹脂材10が配置されている。このようにして、中心電極(第1の電極)6及び永久磁石7は、これらの少なくとも一部が、当該樹脂材の中央領域に埋め込まれるようにして形成される。
【0049】
すなわち、箱状電極8は、永久磁石7及び箱状電極8の少なくとも一部が埋設された樹脂材10を取り囲うようにして配置されている。なお、永久磁石7及び中心電極6の形状は、円柱状に限らず、直方体状や多角柱状など、他の形状としてもよい。
【0050】
図3の各A-A断面図に示すように、中心電極6の外形は、箱状電極8の内周よりも小さくかつ紙面の下方向にテーパするように形成されている。また、箱状電極8の端部の中心電極6と対向する側は、紙面の上方向にテーパするように形成されている。そのため、中心電極6と箱状電極8との間には、中心電極6の全周に亘って(中心電極を取り囲う位置に)、樹脂材10の上部にギャップ部GAが形成されている。言い換えると、中心電極6と箱状電極8は、樹脂材10上部のギャップ部GAを中心に対向するように配置されている。
【0051】
中心電極6、箱状電極8の各電極には、図示しない出力ライン(信号線41、42)が接続されている。なお、図示のように、中心電極6の下部等に永久磁石7を取り付けられていてもよいし、そうでなくても構わない。また、永久磁石7を取り付ける場合、当該永久磁石7は磁石や電磁石で構成されるが、磁石を銅などの非磁性体で被覆しこの被覆層に信号線41、42を接続するように構成してもよい。その他の特徴は、
図2に示す実施形態と概ね共通する。
【0052】
前述のように、機械部品の摩耗が進んで故障率曲線(バスタブ曲線)における摩耗故障期に入ると、導体物質の発生量が増加するが、この発生量は装置のサイズにより大きく異なる。一般に、大きな装置であればある程、より大きなないしはより多くの機械部品を備えるため、より多くの導体物質が発生することとなる。そのため、大きな装置では、機械部品の摩耗が進み摩耗故障期に入るまでにより多くの導体物質を発生させる。
【0053】
このことから、故障率曲線の異なる装置に対して、同じギャップGAを有するセンサを単純に用いてしまうと、様々なサイズの装置の機械部品の予防保全を的確に行うことができない。しかしながら、本発明の一実施形態におけるセンサ5は、
図3(a)と3(b)とで、異なるギャップGA長さX1、X2を有するように構成され得るため、対象とする装置のサイズに応じて適切なギャップGA長さを備えたセンサ5を選択することで、当該装置の故障率曲線に合わせた予防保全を行うことができる。
【0054】
具体的には、本発明の一実施形態におけるセンサ5は、
図3(a)に示すように、箱状電極8に対して、中心電極6や永久磁石7をネジ9により固定された状態から、
図3(b)に示すように、ネジ9の螺合状態を緩めることでバネ部材11が紙面の上方向へ延伸し、これにより中心電極6を同方向へ移動させる。このようにして、
図3(a)におけるセンサ5のギャップGA長さX1が、
図3(b)に示すように、センサ5のギャップGA長さX2となり、より大きなギャップ空間を形成することができる。
【0055】
次に、
図4、5に本発明の他の実施形態のセンサ5の上面図、A-A断面図を示す。以下、特に、
図2、3に示すセンサ5との相違部分に焦点を絞って説明する。
【0056】
本発明の他の実施形態におけるセンサ5は、
図4に示されるように、中心電極(第1の電極)6、永久磁石7、箱状電極(第2の電極)8、ネジ部材9及び樹脂材10を備えている。
図2、3におけるセンサ5と同様、中心電極(第1の電極)6及び永久磁石7は、ネジ部材9により箱状電極(第2の電極)8に固定されている。
【0057】
図示の例では、中心電極6の、箱状電極8と対向する端部であって、紙面の上下方向(導体物質の浸入方向)でみて上側(当該浸入方向手前側)の端部が面取りされている。また、図示の例では、箱状電極8の、中心電極6と対向する端部であって、紙面の上下方向(導体物質の浸入方向)でみて上側(当該浸入方向手前側)の端部が面取りされている。図示のようにいずれの端部を面取りしてもよいし、どちらか一方の端部を面取りするように構成してもよい。
【0058】
センサ5のギャップGAは、円周状に窪んだ形状であるため、センサ5を機器1内や減速機2の潤滑材に挿入した際に、表面張力の影響などで当該ギャップGAに気泡が残留しやすく、導体物質の集積を阻害するという問題があったが、上記のように当該端部を面取りすることで、ギャップGAに気泡が残留しにくくなり、その結果導体物質の集積を円滑に行うことが可能となる。
【0059】
図5に示すように、本発明の他の実施形態におけるセンサ5は、中心電極(第1の電極)6、永久磁石7、箱状電極(第2の電極)8、ネジ部材9及び樹脂材10を備えている。
図2、3におけるセンサ5と同様、中心電極(第1の電極)6及び永久磁石7は、ネジ部材9により箱状電極(第2の電極)8に固定されている。
【0060】
図示の例では、樹脂材が、前記電極間の前記導体物質の集積のための最低限の領域を残して当該領域以外の領域に埋設されている。その結果、センサ5のギャップGAの断面形状の深さは浅く形成されることとなる。
【0061】
センサ5のギャップGAは、円周状に窪んだ形状であるため、センサ5を機器1内や減速機2の潤滑材に挿入した際に、表面張力の影響などで当該ギャップGAに気泡が残留しやすく、導体物質の集積を阻害するという問題があったが、上記のようにギャップGAを浅く形成することで、ギャップGAに気泡が残留しにくくなり、その結果導体物質の集積を円滑に行うことが可能となる。
【0062】
次に、本発明の一実施形態におけるセンサは、センサ自身から潤滑剤が漏れないように構成することが要求される。
図6、7は、そのような構成を説明するための断面図である。
図6に示すように、センサ5は、中心電極(第1の電極)6、永久磁石7、箱状電極(第2の電極)8、樹脂材10を備え、これらをシール部材(ケース)17で周囲を取り囲むようにして構成されている。
【0063】
図示のように、中心電極(第1の電極)6、永久磁石7及び箱状電極(第2の電極)8は樹脂材10を介して固定されている。これらを取り囲むように形成されるシール部材17は、強度確保のため、内部の芯金18と、当該芯金18を包囲するように形成される絶縁部材19(例えば、ゴム部材)とで構成される。図示の例では、シール部材17は箱状に形成されている。
【0064】
箱状電極8の底部8aの中央領域及びシール部材17の底部中央領域には導線を通すための開口を備えている。導線の種類は、例えば、同軸ケーブル44を使用し、中心電極6の端面に半田付けして接続され、箱状電極8の底部8aには同軸ケーブル44のシールド45により接続される。このようにして、中心電極6、永久磁石7、箱状電極8、同軸ケーブル44は、樹脂材10により封止される。
【0065】
図7は、このようにして構成されたセンサ5が、装置(例えば、減速機20)を収容するフランジ部3への取り付けられた状態を示す。図示のように、減速機20が収容されたフランジ部3の壁に開口部を形成し、当該開口部にセンサ5が取り付けられたシール部材17がセンサ5と共に挿入され、箱状のシール部材17の端面がフランジ部3の係止部23と接触するようにして取り付けられる。
【0066】
シール部材17の外側は、絶縁部材19で構成されるため、当該センサ5のフランジ部3への取付けにより、センサ5は周囲から絶縁されるように構成することができる。このようにして、センサ5をシール部材17と共に機器1のフランジ部3へ容易に取り付けることができるだけでなく、絶縁用の部材を別途用意する必要もない。
【0067】
図7に示すようなセンサ5の固定方法により、センサ5を設置する箇所からの潤滑剤の漏れを防止することができ、かつ減速機20やフランジ部3から電気的に絶縁されるように構成することができる。
【0068】
次に、
図8は、
図7に示すセンサのその他の固定方法を示す。図示のように、センサ5が取り付けられたシール部材17は、機器1のフランジ部3に着脱可能に固定されている。具体的には、当該シール部材17の、フランジ部3と接触する端面が、該フランジ部3の開口部端面に螺合するようにして固定される。このように、シール部材17の外周面がネジのように構成されることで、センサ5をシール部材17と共に機器1のフランジ部3へ容易に取り付けることができる。
【0069】
また、
図8に示すようなセンサ5の固定方法により、センサ5を設置する箇所からの潤滑剤の漏れを防止することができ、かつ減速機20やフランジ部3から電気的に絶縁されるように構成してもよい。
【0070】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施形態は、上記に説明したものに限定されず、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば、明細書中に例示的に明示される実施形態等又は自明な実施形態等を適宜組み合わせた内容も本願の実施形態に含まれる。
【符号の説明】
【0071】
1 機構
2 減速機
3 フランジ部
4 サーボモータ
5 センサ
6 中心電極
7 永久磁石
8 箱状電極
9 ネジ部材
10 樹脂材
11 バネ部材
12 ケース
13 出力軸
14 入力軸
15 出力軸
16 支持部材
17 シール部材(ケース)
18 芯金
19 絶縁部材
23 係止部
41 信号線
42 信号線
43 回路基板
44 同軸ケーブル
45 シールド