(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】組換えTNK-TPA(テネクテプラーゼ)の単離及び商業生産のための新規精製方法
(51)【国際特許分類】
C07K 1/16 20060101AFI20220613BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
C07K1/16
C12N15/09 Z
(21)【出願番号】P 2017521506
(86)(22)【出願日】2015-10-19
(86)【国際出願番号】 IN2015050137
(87)【国際公開番号】W WO2016063299
(87)【国際公開日】2016-04-28
【審査請求日】2018-10-19
(31)【優先権主張番号】2343/MUM/2014
(32)【優先日】2014-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517012305
【氏名又は名称】ジェンノヴァ バイオファーマシューティカルズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラグーワンシ、アルジュン
(72)【発明者】
【氏名】シン クマール、シュラワン
(72)【発明者】
【氏名】クマール、アンキット
(72)【発明者】
【氏名】サフー ランジャン、ミヒール
(72)【発明者】
【氏名】シン、サンジェイ
【審査官】飯室 里美
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-509229(JP,A)
【文献】特表2013-501075(JP,A)
【文献】国際公開第2012/066569(WO,A1)
【文献】特表2002-542787(JP,A)
【文献】特表2010-502629(JP,A)
【文献】特表2014-502608(JP,A)
【文献】国際公開第2011/015922(WO,A1)
【文献】MAHESHWARI KM ら,IN1807/MUM/2006 ,2008年
【文献】Sanchez C et al.,Design of a recombinant tissue plasminogen activator production plant TECHNICAL CHARACTERISTICS OF THE PROCESS,Biotechnology final project, 2013, Universitat, Autonoma de Barcelona.,2013年
【文献】Behrouz R,Intravenous tenecteplase in acute ischemic stroke: an updated review,J Neurol,2013年,261(6),1069-1072
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
C12N 15/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
TNK-tPAの単離及び精製方法であって、
(i)CHO細胞培養から得られた無細胞回収物を、TNK-tPAを捕捉するために親和性クロマトグラフィーIに供し、部分的に精製したTNK-tPAを含有する溶出液を得る工程であって、
該親和性クロマトグラフィーIは、固定相として、Blue Sepharose
(登録商標) 6 FFと、移動相として、リン酸緩衝液、尿素及び塩化ナトリウムの混合物とを含む、工程、
(ii)工程(i)の前記溶出液を、TNK-tPAの追加精製のために親和性クロマトグラフィーIIに供し、TNK-tPAを主に含有する溶出液を得る工程であって、
該親和性クロマトグラフィーIIは、固定相として、Lysine Hyper D
(登録商標)と、移動相として、酢酸ナトリウム緩衝液、尿素及びイプシロン-アミノカプロン酸(EACA)の混合物とを含む、工程、
(iii)工程(ii)の溶出液のウイルス不活化により、ウイルス不活化試料を得る工程であって、
該ウイルス不活化は、低pH及び化学的不活化により実施され、該化学的不活化は、尿素の存在下、カプリル酸ナトリウムで試料を処理して行う、工程、
(iv)工程(iii)の前記ウイルス不活化試料を、追加精製のために更なる親和性クロマトグラフィーIIIに供し、高度に精製されたTNK-tPAを主に含有する溶出液を得る工程であって、
該親和性クロマトグラフィーIIIは、固定相として、Ceramic Hydroxy Apatite(CHT
(登録商標))と、移動相として、リン酸緩衝液、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸水和物(MES-水和物)、塩化ナトリウム及び尿素との混合物とを含む、工程、
(v)工程(iv)の前記溶出液を、陽イオン交換クロマトグラフィーに供し、高度に精製されたTNK-tPAの調製物を含有する溶出液を得る工程であって、
該陽イオン交換クロマトグラフィーは、固定相として、Fractogel
(登録商標) SO
3と、移動相として、L-アルギニン、O-リン酸及びポリソルベート-20の混合物とを含む、工程、
(vi)工程(v)の前記溶出液を、存在するウイルスを除去するためウイルス減少濾過に供する工程であって、
該ウイルス濾過工程が、15~20nmのサイズを有するポリエーテルスルホン(PES)ナノフィルターで行われる、工程、
(vii)工程(vi)の前記試料を接線流濾過により濃縮してTNK-tPAを得る工程、を含む、方法。
【請求項2】
工程(i)において、
前記リン酸緩衝液が20~40mMの範囲で存在し、前記塩化ナトリウムが1.5~2Mの範囲で存在し、尿素が2~3Mの範囲内で存在し、
前記移動相のpHが、7.2~7.4の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(ii)において、
前記酢酸ナトリウムが5~15mMの範囲で存在し、尿素が2~3Mの範囲で存在し、EACAが0.1~0.2Mの範囲内で存在し、
前記親和性クロマトグラフィーの移動相のpHが4.5~5の範囲である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程(iii)において、
前記カプリル酸ナトリウムが、0.01%~0.07%(w/v)の範囲で存在し、
前記尿素の濃度が、2~3Mの範囲であり、
前記ウイルス不活化が、40~80分間の期間、前記試料を保持することによって行われ、
20~30℃の範囲の温度で前記試料を保持し、
前記pHが4.3~4.7の範囲である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
工程(iv)において、
前記リン酸緩衝液が、5~15mMの範囲で存在し、前記MES-水和物が2~20mMの範囲で存在し、前記尿素が1~3Mの範囲で存在し、前記塩化ナトリウムが0.1~0.5Mの範囲で存在し、
前記移動相のpHが、6~9の範囲であり、
前記親和性クロマトグラフィーの溶出が、直線塩勾配により、塩化ナトリウムの濃度が0.1~1.0M塩化ナトリウムの範囲である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程(v)において、
前記L-アルギニンが、250~350mMの範囲で存在し、O-リン酸が、0.6%~0.8%の範囲で存在し、ポリソルベート-20が、0.04~0.05%の範囲で存在し、
前記移動相のpHが7.3~7.5の範囲である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程(vi)において、
前記フィルターが限外濾過膜であり、
前記限外濾過膜がPESであり、
前記限外濾過膜のサイズが5~30kDaの範囲である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記濃縮物がTNK-tPA保持物である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
周期的向流クロマトグラフィーが、工程(i)における親和性クロマトグラフィーに使用される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
インラインコンディショニングアプローチが、工程(i)における親和性クロマトグラフィー、工程(ii)における親和性クロマトグラフィー、工程(iv)における親和性クロマトグラフィー及び工程(v)における陽イオン交換クロマトグラフィー用の緩衝液及び負荷調製に使用される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳類細胞、より具体的にはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞からの組織プラスミノーゲン活性化因子(TNK-tPA)の単離、精製及び生産の新規方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テネクテプラーゼ(TNK-tPA)は、17個のジスルフィド架橋を有し、約67kDaの分子量を有する、天然のヒト組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)において6個のアミノ酸置換を有するセリンプロテアーゼファミリーの組換え糖タンパク質である。TNK-tPAの開発において、天然のt-PAでなされた修飾は、ともにクリングル1ドメイン内におけるスレオニン103のアスパラギンによる置換、アスパラギン117のグルタミンによる置換、ならびにプロテアーゼドメインにおける296~299位のリジン、ヒスチジン、及び2つのアルギニンのテトラアラニンアミノ酸による置換を含み、得られるタンパク質を、フィブリン特異性が高く、血漿半減期がより長くなるようにし、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤-1(PAI-1)による分解に対する感受性を天然のt-PAと比較して80%低下させる。
【0003】
TNK-TPA中のTNKは、修飾されたt-PA分子の部位、すなわちT103、N117、及びKHRR 296-299を指す。TNK-tPAの上記修飾は、より大きなフィブリン特異性が、より迅速かつ完全な血餅溶解を可能にし、出血合併症の減少をもたらし、長い寿命が、より少ない全身線溶を伴う単一ボーラス用量を可能にし、以前の血餅摘出薬から出血の合併症がより少なくなるため、より良好な治療コンプライアンスを有する、急性心筋梗塞の治療のための改善された治療剤としてその用途を提供する。
【0004】
TNK-tPAの機構は、腸内プラスミノーゲンをプラスミンに選択的に変換する血栓(血餅)のフィブリン成分へのTNK-tPAの結合で開始され、結果として生じるプラスミンは、その非常に特異的な性質のために、フィブリノーゲンを保存し、全身プラスミノーゲン活性化を最小限に抑えながら、閉塞動脈の血栓のマトリックスを分解する。
【0005】
心筋梗塞患者に見られるTNK-tPAの利点、及び急性虚血性脳卒中(AIS)の文脈中での動物研究の前向きな結果は、TNK-tPAが、AISのためにUSFDAによって承認された唯一の薬剤であるアルテプラーゼよりも安全で効果的な治療法であることを証明し得ることを示唆している。過去数年間に、いくつかの臨床試験がAISにおけるTNK-tPAの使用を評価し、TNK-tPAがアルテプラーゼよりも優れた薬理学的プロファイルを有することを証明し、発症後4.5時間以内に報告する患者において、AISを治療する上で効果的かつ安全な治療選択肢となり得ることも示唆された。最近、TNK-tPAが肺塞栓症の患者の治療に考慮されており、いくつかの臨床試験が有望な結果を示した。いくつかの適応症におけるTNK-tPAの完全で決定的な様相を評価するために、多数の臨床試験が未だ行われている。
【0006】
ここ数年、バッチ、流加バッチ、半フィードバッチ、及び灌流バイオリアクタープロセスによって組換え糖タンパク質の開発及び製造が行われ、これらのタンパク質の精製のために、吸着及びイオン交換クロマトグラフィーが主に採用された。
【0007】
t-PA及びその変異体では、例えば、免疫親和性による精製(抗tPAヤギポリクローナル抗体)イオン交換、エタノール沈殿、逆相クロマトグラフィー、シリカまたは陰イオン交換クロマトグラフィー、例えばジエチルアミノエチル、硫酸アンモニウム沈殿、セファデックス-G-75等、特定の精製プロトコルが先行技術で知られている。
【0008】
TNK-t-PAの精製方法のいくつかは、国際公開第2011/015922号を含む先行技術に列挙されており、一連のイオン交換クロマトグラフィー工程、免疫親和性クロマトグラフィー、及び限外濾過/血液透析濾過工程が、TNK-tPAの精製に使用される、精製方法が記載されている。国際公開第2012/066569A号は、疎水性相互作用クロマトグラフィーの使用に主に惹きつけられた精製方法を記載している。
【0009】
先行技術で使用される免疫親和性クロマトグラフィーは、TNK-tPAの商業的製造に適した技術ではない。それは、多くの規制上の懸案を提起するだけでなく、免疫親和性クロマトグラフィー媒体のコストも、調製のためのモノクローナル抗体の使用のために、従来のクロマトグラフィーマトリックスと比較して非常に高い。TNK-tPA精製の特定の先行技術に記載された疎水性相互作用クロマトグラフィーでは、有機溶媒であり、タンパク質の凝集及び変性を誘導することが知られ、先行技術の欠点の1つと考えられる、イソプロピルアルコール(IPA)をその方法において使用する。TNK-tPAは非常に不安定な分子であるため、タンパク質の変性を引き起こす可能性があるため、精製方法におけるIPAの使用は避けるべきである。さらに、商業規模でIPAを大量に使用するには、IPAのリサイクルが必要であり、この場合も、追加のエネルギー消費と溶媒回収ユニットなどの余分な投資が求められる。
【0010】
したがって、上記の方法のいずれも、商業規模でTNK-tPA原薬を一貫して生産し、必要な全ての仕様を満たすことができる効率的で、拡張性があり、堅牢な精製溶液を提供することができない。
【0011】
したがって、TNK-tPAの精製のための効果的かつ商業的に実行可能な方法が必要とされている。
【0012】
発明の目的
本発明の目的は、サイズ排除クロマトグラフィーで測定して60%以上の収率及び95%超の純度をもたらす、TNK-tPAの生産のための、効率的で、堅牢で、拡張性があり、商業的に実行可能な精製方法を開発することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、組織プラスミノーゲン活性化因子及びその変異体、より具体的にはTNK-tPAをCHO細胞から単離及び精製する新規方法に関し、工業的に適用可能で、簡単で、費用対効果が高く、堅牢で、高効率なTNK-tPA精製方法を記載する。
【0014】
本発明のTNK-tPAの単離及び精製方法であって、
(i)CHO細胞培養から得られた無細胞回収物を、TNK-tPAを捕捉するために親和性クロマトグラフィーに供し、部分的に精製したTNK-tPAを含有する溶出液を得る工程、
(ii)工程(i)の溶出液を、TNK-tPAの追加精製のために親和性クロマトグラフィーに供し、TNK-tPAを主に含有する溶出液を得る工程、
(iii)工程(ii)の溶出液のウイルス不活化により、ウイルス不活化試料を得る工程、
(iv)工程(iii)のウイルス不活化試料を、追加精製のために更なる親和性クロマトグラフィーに供し、高度に精製されたTNK-tPAを主に含有する溶出液を得る工程、
(v)工程(iv)の溶出液を、陽イオン交換クロマトグラフィーに供し、高度に精製されたTNK-tPAの調製物を含有する溶出液を得る工程、
(vi)工程(v)の溶出液を、存在するウイルスを除去するためウイルス減少濾過に供する工程、
(vii)工程(vi)の試料を濃縮してTNK-tPAを得る工程、を含み、該方法の収率は60%超であり、得られたTNK-tPAの純度がサイズ排除クロマトグラフィーで測定して95%超である、方法。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】最初のピークが不純物を表し、2番目のピークがTNK-tPAを含有する溶出液に対応する親和性I精製クロマトグラムを描写する。
【
図2】レーン番号5、6、及び7が洗浄画分(それぞれ1、2、及び3)を示し、レーン9がTNK-tPAを含有する溶出液に対応する、親和性I精製のSDS PAGE(銀染色)プロファイルを描写する。
【
図3】UV 280ピークがTNK-tPAを含有する溶出液に対応する、親和性II精製クロマトグラムを描写する。
【
図4】9番目のレーンがTNK-tPAを含有する溶出液に対応する、親和性II精製のSDS PAGE(銀染色)プロファイルを描写する。
【
図5】親和性III精製のクロマトグラムを描写し、UV 280ピーク(第1)がTNK-tPAを含有する溶出液に対応する。
【
図6】9番目のレーンがTNK-tPAを含む溶出液に対応する、親和性III精製のSDS PAGE(銀染色)プロファイルを描写する。
【
図7】陽イオン交換精製クロマトグラムを描写し、UV 280ピークがTNK-tPAを含有する溶出液に対応する。
【
図8】5番目のレーンがTNK-tPAを含む溶出液に対応する、陽イオン交換精製のSDS PAGE(銀染色)プロファイルを描写する。
【
図9】本発明に記載の工程及びイノベーター製品(Metalyse)を用いて精製後に得られた原薬の還元SDS-PAGE(銀染色)プロファイルを描写する。
【
図10】本発明に記載の工程及びイノベーター製品(Metalyse)を用いて精製後に得られた原薬の非還元SDS PAGE(銀染色)プロファイルを描写する。
【
図11】本発明に記載の工程を用いて精製後に得られた原薬のペプチドマップクロマトグラムが、イノベーター製品(Metalyse)に類似することを描写する。
【
図12】本発明に記載の工程を用いて精製後に得られた原薬のイムノブロッティングが、イノベーター製品(Metalyse)に類似することを描写する。
【
図13】親和性I(Blue Sepahrose FF)の漏出曲線をバッチモードで描写する。
【
図14】(a)カラムA-負荷領域の最初のカラム、(b)カラムB-負荷領域の第2カラム、(c)カラムC-負荷領域の第3カラム、(d)完全なPCCを示す相互に重ね合わされたカラムクロマトグラムについて、2サイクルにわたるPCCのクロマトグラムを描写する。UVは280nmで測定された。実行は、XK16-5ml Blue Sepharose Fast Flowで行った。
【
図15】最初のカラム(カラムA)を過負荷しカラムBで捕捉したクロマトグラムを描写し、UVは280nmで測定した。実行は、XK16-5ml Blue Sepharose Fast Flowで行った。
【
図16】3番目のカラム(カラムC)からのクロマトグラムを描写し、全てのポスト負荷洗浄を示す。洗浄ステップの影響は、A-洗浄1、B-洗浄2、C-洗浄3、D-溶出、E-再生1、F-再生2、G-再生3、H-再生4で示される。UVは280nmで測定した。実行は、XK16-5ml Blue Sepharose Fast Flowで行った。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、組織プラスミノーゲン活性化因子及びその変異体、より具体的にはTNK-tPAを単離及び精製する新規方法に関する。無細胞回収物は、バイオリアクターで培養された細胞から得られる。本発明の明細書で使用される記号及び略語の一覧は、以下の表Aに列挙されている。
【表1】
【0017】
本発明は、組織プラスミノーゲン活性化因子及びその変異体、より具体的にはTNK-tPAをCHO細胞から単離及び精製する新規方法に関し、工業的に適用可能で、簡単で、費用対効果が高く、堅牢で、高効率なTNK-tPA精製方法を記載する。
【0018】
本発明のTNK-tPAの単離及び精製方法であって、
(i)CHO細胞培養から得られた無細胞回収物を、TNK-tPAを捕捉するために親和性クロマトグラフィーに供し、部分的に精製したTNK-tPAを含有する溶出液を得る工程、
(ii)工程(i)の溶出液を、TNK-tPAの追加精製のために親和性クロマトグラフィーに供し、TNK-tPAを主に含有する溶出液を得る工程、
(iii)工程(ii)の溶出液のウイルス不活化により、ウイルス不活化試料を得る工程、
(iv)工程(iii)のウイルス不活化試料を、追加精製のために更なる親和性クロマトグラフィーに供し、高度に精製されたTNK-tPAを主に含有する溶出液を得る工程、
(v)工程(iv)の溶出液を、陽イオン交換クロマトグラフィーに供し、高度に精製されたTNK-tPAの調製物を含有する溶出液を得る工程、
(vi)工程(v)の溶出液を、存在するウイルスを除去するためウイルス減少濾過に供する工程、
(vii)工程(vi)の試料を濃縮してTNK-tPAを得る工程、を含み、該方法の収率は60%超であり、得られたTNK-tPAの純度がサイズ排除クロマトグラフィーで測定して95%超である、方法。
【0019】
本発明の方法は、以下の工程を例証することにより説明することができる:
【0020】
(i)CHO細胞培養から得られた無細胞回収物を、TNK-tPAを捕捉するために親和性クロマトグラフィーに供し、部分的に精製したTNK-tPAを含有する溶出液を得る工程。
TNK-tPAを含有する無細胞回収物は、灌流技術に基づくCHO細胞による発酵系から得ることができる。TNK-tPAを含有する回収物を0.2μで濾過し、滅菌容器に集め、さらなる使用まで2~8℃で保存する。TNK-tPAを含有する無細胞回収物を親和性クロマトグラフィーに供する。親和性クロマトグラフィーの固定相は、Blue Sepharose 6 fast flow、Lysine Hyper D、Ceramic Hydroxy Apatite(CHT)を含む群から選択することができ、好ましくは固定相がBlue Sepharose 6 FFである。カラムは、リン酸緩衝液、塩化ナトリウム、及びポリソルベート20、またはそれらの混合物を含む緩衝液を使用することによって平衡化され得る。捕捉工程(親和性クロマトグラフィー)のために使用される溶出緩衝液または移動相は、リン酸緩衝液、尿素、及び塩化ナトリウムから選択される個々または組み合わせであり得る。より好ましくは、溶出緩衝液または移動相を組み合わせて使用する。使用される緩衝液中のリン酸ナトリウムの濃度は、好ましくは20~50mMのリン酸ナトリウム、より好ましくは20~40mMである。緩衝液中に使用される塩化ナトリウムの濃度は、1~2.5MのNaCl、より好ましくは1.5~2Mである。緩衝液中の尿素濃度は、1~4モルの範囲、好ましくは2~3モルの範囲である。溶出緩衝液または移動相のpHは、7~8の範囲、好ましくは7~7.6の範囲、より好ましくは7.2~7.4の範囲に維持することができる。
【0021】
哺乳動物細胞で産生される産物からの宿主細胞タンパク質の除去は、常に困難な作業である。本発明において、本発明の捕捉クロマトグラフィーとして最適化された工程は、精製TNK-tPA調製物中のHCPの最終濃度を100ppm未満にするのに役立つ、対数0.8~1.5、より具体的には対数1.0の範囲で、宿主細胞タンパク質を選択的に除去する。
【0022】
宿主細胞タンパク質(HCP)が減少するだけでなく、アルブミン、ゲンタマイシン、メトトレキセート(MTX)等の方法関連不純物もまた、本発明に記載の捕捉クロマトグラフィーによって効果的に除去される。
【0023】
(ii)工程(i)の溶出液を、TNK-tPAの追加精製のために親和性クロマトグラフィーに供し、TNK-tPAを主に含有する溶出液を得る工程。
工程(i)の溶出液は親和性クロマトグラフィーに供してもよい。固定相またはカラム材料は、Blue Sepharose 6 fast flow、Lysine Hyper D、Ceramic Hydroxy Apatite(CHT)等を含む群から選択することができ、好ましくは固定相はLysine Hyper Dである。親和性クロマトグラフィー工程で使用される平衡緩衝液は、リン酸緩衝液、塩化ナトリウム、及びポリソルベートから選択される個々または組み合わせであってもよい。より好ましくは、平衡緩衝液を組み合わせて使用する。
【0024】
カラムは、酢酸ナトリウム、尿素、及びイプシロン-アミノカプロン酸(EACA)から選択される、個々または組み合わせを含む群から選択される溶出緩衝液または移動相によって溶出することができる。親和性クロマトグラフィー溶出緩衝液のpHは、pH3.5~6、好ましくは4~5、より好ましくは4.5~5の範囲で行うことができる。
【0025】
中間精製のために使用されるクロマトグラフィーマトリックスは、親和性IIクロマトグラフィー工程が、Blue Sepharose 6 fast flow、Lysine Hyper D、及びCeramic Hydroxy Apatite(CHT)を含む群から選択することができ、好ましくは使用されるクロマトグラフィーマトリックスはLysine Hyper Dである。
【0026】
親和性クロマトグラフィー工程で使用される溶出緩衝液は、pH4.0~5.0を有する5~25mMの酢酸ナトリウム、1~4Mの尿素、0.1~0.4MのEACAであり得る。溶出緩衝液中の酢酸ナトリウムの濃度は5~25mM、好ましくは5~15mMの範囲である。緩衝液中のEACAの濃度は0.1~0.4mM、好ましくは0.1~0.2Mの範囲である。尿素の濃度は緩衝液中で1~4M、好ましくは2~3Mの範囲である。
【0027】
この工程において酸性pHでEACAを使用することによる溶出緩衝液の本発明の利点は、最も適切な条件を提供することである。本明細書に記載の本発明の方法は、ウイルス不活化に最も適しており、取り扱い及び材料消費を数倍減少させる。本発明で使用される親和性クロマトグラフィーにより、ウイルスクリアランスで対数減少約2~4、及び宿主細胞タンパク質(HCP)の対数減少1~1.5が達成される。本発明で使用される親和性クロマトグラフィーによって、平均して、XMuLVで対数減少1.69、及びPRVで対数減少4.30が達成される。
【0028】
(iii)工程(ii)の溶出液のウイルス不活化により、ウイルス不活化試料を得る工程、
工程(ii)から得られる溶出液のウイルス不活化は、熱処理(低温殺菌、凍結乾燥/乾熱)、照射、紫外線(UV)、高静水圧、低pHインキュベーション、化学的及び溶媒/界面活性剤処理等の、任意の方法によって実施されてもよい。化学的不活化またはウイルス不活化は、コール酸ナトリウム、トリトン、ベータ-プロピオラクトン、トリ(n-ブチル)ホスフェート(TNBP)、及びカプリル酸ナトリウムを含む群から選択される化学物質で試料を処理することによって行われ、好ましくは尿素の存在下で低pHでカプリル酸ナトリウムで試料を処理する。化学薬品/洗剤の濃度は、0.001%~0.10w/v%の範囲、好ましくは0.01%~0.07%(w/v)、より好ましくは0.05%である。尿素の濃度は、1~4Mの範囲、好ましくは2~3Mである。ウイルス活性化はまた、15~45℃の温度範囲で、より好ましくは20~30℃の範囲で、40~180分、より好ましくは40~80分の期間、試料をインキュベートすることによって行ってもよい。
【0029】
一般に、低pHは、精製方法におけるウイルス不活化の選択肢であり、最も広く使用されている方法である。低pHはエンベロープを有するウイルスを不活化することが知られているが、高耐性非エンベロープウイルスを不活化することはできない。pHは4.0~4.7の範囲、より好ましくは4.3~4.7の範囲である。
【0030】
本発明に記載のウイルス不活化緩衝液の組成は、エンベロープ及び非エンベロープウイルスの両方を効率的に不活化することができるような方法で最適化される。本発明の化学物質/界面活性剤、尿素、EACA、及び低pHの使用は、エンベロープ及び非エンベロープウイルスに対して致命的な条件とし、その組み合わせを高耐性ウイルスを不活化するための最適な選択肢にする。本発明の低pH及び化学的不活化によって、平均して、XMuLVで対数減少5.65、及びPRVで対数減少5.38が達成される。
【0031】
(iv)工程(iii)のウイルス不活化試料を更なる親和性クロマトグラフィーに供し、TNK-tPAを含有する溶出液を得る工程、
工程(iii)のウイルス不活化試料は、更なる親和性クロマトグラフィーに供されてもよい。親和性クロマトグラフィーの固定相またはカラム材料は、Blue Sepharose 6 fast flow、Lysine Hyper D、及びCeramic Hydroxy Apatite(CHT)等の群から選択することができ、好ましくは使用される固定相またはクロマトグラフィーマトリックスはCeramic Hydroxy Apatite(CHT)である。固定相またはカラムは、リン酸緩衝液、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸水和物(MES-水和物)、塩化ナトリウム、及び尿素から選択される個々または組み合わせを含む群から選択される移動相または緩衝液によって溶出することができる。親和性クロマトグラフィー溶出緩衝液のpHは、pH範囲が6~9、好ましくは6~8、より好ましくは6~7で行うことができる。
【0032】
親和性クロマトグラフィー工程で使用される移動相または溶出緩衝液は、5~50mMリン酸緩衝液、好ましくは5~15mMの範囲であり得る。尿素の濃度は、緩衝液中で1~4Mの範囲、好ましくは1~3Mの範囲で使用される。使用されるMES-水和物の濃度は、緩衝液中で2~20mMであり得る。溶出は塩の濃度を上げることによって行うことができる。この溶出の塩は、塩化カリウム、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム、及び硫酸アンモニウムの群から選択することができ、好ましくは塩が塩化ナトリウムであり、塩化ナトリウムの濃度が0.1~1.0M塩化ナトリウムの範囲である。溶出型は、直線、段階、または両方の組み合わせでもよく、好ましくは、使用される溶出が直線塩勾配である。
【0033】
本発明で使用される親和性クロマトグラフィー(マルチモードクロマトグラフィー)は、痕跡量の不純物、具体的には宿主細胞DNA(HCD)、宿主細胞タンパク質(HCP)、及びウイルス不純物があればそれを除去するためにある。本発明で述べた親和性IIIクロマトグラフィーを用いて、ウイルスクリアランスで対数減少およそ2~4、及びHCPの対数減少0.5~1が達成される。本発明で用いられる親和性クロマトグラフィーにより、平均して、XMuLVで対数減少4.23、PRVで対数減少4.06、Reo-3で対数減少3.73、及びMMVで対数減少2.97が達成される。
【0034】
(v)工程(iv)の溶出液を、陽イオン交換クロマトグラフィーに供し、製剤緩衝液中の高度に精製されたTNK-tPAの調製物を含有する溶出液を得る工程、
工程(iv)の溶出液の陽イオン交換クロマトグラフィーは、Fractogel SO3、Fratogel SE Hicap、SP Sepharose FF、CM Sepharose FF等を含む群から選択されるマトリックスまたは固定相を用いて行うことができ、好ましくは使用されるクロマトグラフィーマトリックスまたは固定相は、Fractogel SO3である。陽イオン交換クロマトグラフィーで使用される平衡緩衝液は、リン酸緩衝液、尿素、MES、及び塩化ナトリウムを含む群から選択される個々または組み合わせであってよく、好ましくは平衡緩衝液を組み合わせて使用することができる。
【0035】
陽イオン交換クロマトグラフィーで使用される溶出緩衝液または移動相は、L-アルギニン、O-リン酸、及びポリソルベート-20から選択される個々または組み合わせであってよく、好ましくは溶出緩衝液は組み合わせてまたは混合物として使用される。移動相または溶出緩衝液は、10~350mMの範囲、好ましくは250~350mMの範囲で存在するL-アルギニン、0.5~1%の範囲、好ましくは0.6%~0.8%の範囲で存在するO-リン酸、0.01~0.05%の範囲、好ましくは0.04~0.05%の範囲で存在するポリソルベート-20を含んでいる、陽イオン交換クロマトグラフィーに使用した。陽イオン交換クロマトグラフィー溶出緩衝液または移動相のpHは、7.0~7.5の範囲、好ましくは7.3~7.5の範囲で行うことができる。
【0036】
一般に、イオン交換クロマトグラフィーは、捕捉、中間、及び研磨クロマトグラフィーとして、バルクまたは微量の不純物を除去するために使用される。本発明において、陽イオン交換クロマトグラフィーは、従来使用されていたものとは多少異なって使用される。ここで、以前のクロマトグラフィーの溶出液が陽イオン交換クロマトグラフィーに直接負荷され、アルギニン、オルトリン酸、及びポリソルベート20を含有する最終製剤緩衝液中の高度に精製されたTNK-tPAの調製物を得る。陽イオン交換クロマトグラフィーを異なる方法で使用する利点は、緩衝液交換及び同時濃縮及び精製が単一工程で達成されることである。先行技術では、ゲル濾過クロマトグラフィー及び接線流濾過(TFF)を用いる血液透析濾過のような技術を緩衝液交換に用いる。これらの技術は、効率的であり、緩衝液交換のために最も一般的に使用されるが、標的タンパク質をさらに精製することはできない。ゲル濾過クロマトグラフィーではカラム容量に対して試料の最大30%しか負荷することができない事実により、イオン交換クロマトグラフィーと比較してより大きなカラムサイズが必要とされる。ゲル濾過クロマトグラフィーはまた、緩衝液交換の間に標的タンパク質の希釈を引き起こし、さらにTFFのようないくつかのさらなる濃縮工程を必要とする。血液透析濾過を使用した緩衝液交換は、非常に多量の緩衝液交換を必要とし、大きなサイズのUF/DFユニットを必要とするため、緩衝液換される容量がより多い場合には実現不可能である。従来の緩衝液交換技術の前述の限界を考慮すると、本発明に記載の陽イオン交換クロマトグラフィーは緩衝液交換工程を提供することができ、さらに精製も助ける。本発明のイオン交換クロマトグラフィーを用いて、非エンベロープウイルス、例えばMMVで対数1.21のウイルス減少係数を達成することが可能である。
【0037】
(vi)工程(v)の溶出液を、存在するウイルスを除去するためウイルス減少濾過に供する工程、
ウイルス濾過は、親和性クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、及び接線流濾過工程の後に行うことができ、より好ましくは、ウイルス濾過工程が陽イオン交換クロマトグラフィー後に行われる。この工程のために選択されるナノフィルターは、15nm、20nm、及びそれ以上であり得る。好ましくは、ナノフィルターのサイズは15~20nmである。使用されるナノフィルターは、セルロース、PES、PVDF等で構成されてもよい。より好ましくは、使用されるフィルターはPESである。
【0038】
ウイルス濾過後に実施される濾過は、精密濾過、限外濾過、ナノ濾過、マクロ濾過、接線流濾過等から選択することができる。より好ましくは、濾過は接線流濾過である本発明で使用されるウイルス減少濾過によって、平均して、XMuLVで対数減少4.15、PRVで対数減少3.40、Reo-3で対数減少4.41、MMVで対数減少4.76が達成される。
【0039】
全体的下流プロセスは、XMuLVで対数減少15超、PRVで対数減少17回超、Reo-3で対数減少8超、及びMMVで対数減少8超を提供する。
【0040】
TNK t-PAの方法における最も有害な汚染物質はCHO細胞由来レトロウイルスであり、XMuLVはCHO細胞の非C型レトロウイルスであり、XMuLVについて対数減少15超が得られることが、ウイルスの安全性の点で最も重要であり、高い保証を与える。
【0041】
(vii)TNK-tPAを得るために、工程(vi)の試料を濃縮する。
工程(vii)で得られた濾液を、精密濾過、限外濾過、ナノ濾過、精密濾過、及び接線流濾過を含む群から選択される濾過方法に供し、好ましくは濾過方法は接線流濾過である。この工程のために選択された限外濾過膜は、5、10、30、または50kDaであり得る。好ましくは、使用される限外濾過膜は5~30kDaの範囲であり、より好ましくは、使用される限外濾過膜のサイズは10kDaである。使用される限外濾過膜は、セルロース、PES、PVDF等で構成されていてもよい。より好ましくは、使用されるフィルターはPESである。TNK-tPA保持物の濃度は、1.0±0.4mg/ml~7.0±0.4mg/mlの範囲であり得る。より好ましくは、TNK-tPAの濃度は、1.0±0.4mg/ml~6.0±0.4mg/mlの範囲であり得る。最も好ましくは、TNK-tPAの濃度は5.5±0.4mg/mlである。
【0042】
TNK-tPA原薬(テネクテプラーゼ)は、好ましくは、PES、PVDF、及びセルロースからなる0.2μの殺菌グレードのフィルターを用いてTFF保持物を滅菌濾過することによって得ることができる。より好ましくは、滅菌フィルターはPESからなる。
【0043】
本発明はまた、バッチ親和性Iクロマトグラフィーが、周期的向流クロマトグラフィー(PCC)を用いて連続モードで操作されてもよい方法を開示する。PCCの使用は、例えばバッファ消費量の削減、生産性の向上、定常状態の操作、及びより優れた方法制御等、追加の利点を提供する。。
【0044】
本発明は、600L/時の最大流速を有する5つのポンプに基づくカスタマイズされたAKTAプロセス系によるインラインバッファー及びクロマトグラフィー負荷調節兼調製の使用をその範囲内に含む。該活性は、例1~4で述べた親和性I、II、III、及びIECクロマトグラフィー工程の、緩衝液及びクロマトグラフィー負荷調製の、フローフィードバックまたはpH-フローフィードバックモードの制御によって行うことができる。
【0045】
本発明の方法は、増加した収率及び純度でTNK-tPAの精製生成物を生じる。本発明の方法によって得られたTNK-tPAの属性は、表Bに詳細に記載されている。
【表2】
【0046】
一実施形態では、本発明の方法は、スケールダウンされた精製方法を使用して評価されるような、潜在的な不定剤としてウイルスを除去または不活化することができる。XMuLV、PRV、Reo-3、及びMMVについて得られた高い対数クリアランス値は、検出されないか、または生産方法にアクセスし得る可能性のある任意の不定ウイルスが、 本発明で述べた高性能な精製方法の間、除去/不活化され、したがって、患者の安全性に対する全体的なリスクを低減するという、非常に良い保証を提供する。
【0047】
ウイルス安全性のより高い保証に加えて、TNK-tPAの精製方法における前述の改善は、より高い収量のTNK-tPA調製のためのヒトの介入の減少、資本及び操作上の支出の低減の点でも有益である。
【0048】
一実施形態では、本発明は、急性心筋梗塞及び急性虚血性脳卒中のための薬学的に許容される賦形剤を含む液体非経口静注製剤中に本発明の方法から得られたTNK-tPA保持物を含む薬学的組成物を提供する。
【0049】
一実施形態では、本発明の薬学的組成物は、以下を含む。
【表3】
【0050】
別の実施形態において、本発明は、急性心筋梗塞及び急性虚血性脳卒中のための液体非経口静注製剤における単離及び調製されたTNK-tPAの使用を提供する。
【0051】
本発明は、以下の例に関して本明細書中で以下に詳細に記載されるが、これらの例は単に例証のために提供され、決して本発明の範囲を限定することを意図しない。当業者に明らかであり得る任意の実施形態は、本発明の範囲内にあるとみなされる。
【0052】
例-1
TNK-tPAを含有する無細胞回収物をBlue Sepharose FFを充填した親和性クロマトグラフィーカラムに供する。負荷前に、カラムを平衡緩衝液の5カラム容量(CV)で平衡化する。カラムが飽和するまで負荷を停止する。カラムの負荷容量は、1~2mg/mlの範囲のカラムの動的結合容量(DBC)に基づいて決定される。負荷後、緩やかな結合方法及び生成物関連不純物が平衡洗浄で洗い流されるまで、カラムを平衡緩衝液で洗浄する。宿主細胞タンパク質をさらに除去するために、尿素、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム、及びポリソルベート20からなる別の洗浄緩衝液を使用する。
【0053】
カラム洗浄後、20~50mMのリン酸ナトリウム、1~2MのNaCl、2~3Mの尿素、及び0.04~0.1%のポリソルベート20を含有する溶出緩衝液を用いてTNK-tPAを溶出する。親和性I溶出液を0.2μmフィルターで濾過する。試料を採取し、純度プロファイル及び一本鎖/二本鎖含有量を知るために、還元及び非還元SDS PAGEにより分析する。当業者は最終的なTNK-tPA薬物物質中の一本鎖/二本鎖組成物の重要性を理解することができる。
【0054】
本発明は、大型の混合タンク内で混合することなく、清澄化回収物を直接捕捉するために有利である。
【0055】
例-2
親和性Iクロマトグラフィー溶出液を、pH7.2で、20~50mMのリン酸ナトリウム、0.04~0.1%のポリソルベート20を含有する親和性II希釈液または親和性クロマトグラフィー平衡緩衝液で希釈して、15ms/cm未満まで導電率を減少させる。希釈した試料を0.2μフィルターを用いて清澄化し、親和性IIクロマトグラフィーに負荷する。カラムを平衡化緩衝液で洗浄して、UV280吸光度をベースラインにする。カラムをさらに洗浄して、pH7.2で、20~50mMのリン酸ナトリウム、1~3MのNaCl、0.04~0.1%のポリソルベート20を含有する洗浄緩衝液で、方法及び生成物関連不純物を除去する。精製したTNK-tPAを回収し、pH4.0~5.0で、5~25mMの酢酸ナトリウム、1~4Mの尿素、0.1~0.4MのEACAからなる溶出緩衝液を通過させることにより、カラムから溶出する。負荷、フロースルー、洗浄、及び溶出を含む全てのクロマトグラフィー試料を、以下の分析方法を使用して分析した。
純度及び一本鎖/二本鎖含有量に関するSDS PAGE(還元/非還元)。
凝集体含有量のサイズ排除高性能クロマトグラフィー(SEC-HPLC)。
血餅溶解アッセイによって測定したTNK-tPA含有量。
Bradford及びUV280nmによる総タンパク質。
ELISAを用いたHCP含有量(Cygnus第3世代キット)。
【0056】
親和性クロマトグラフィーは、方法及び生成物関連不純物を除去するために最適化される。この工程における溶出の方法は、それがウイルス不活化工程を補完するように最適化され、組成物は溶出緩衝液の条件、例えば、尿素、EACA、及び低pHが、ウイルス不活化に則して最適化される。親和性IIクロマトグラフィー工程の後、ウイルスクリアランスで対数減少約2~4、及び宿主細胞タンパク質(HCP)の対数減少1.0~1.5が達成される。
【0057】
他の利点は、中性pHでのL-アルギニン及びEACAにも関わらず、溶出緩衝液中の親和性クロマトグラフィー-IIにおける酸性pHでのEACAの使用である。精製工程におけるこの特定の変化は、L-アルギニンのコストを低減する上で有益であり、ウイルス不活化の最適条件も提供する。したがって、同じ工程がTNK-tPA溶出に有利であるばかりでなく、ウイルス不活化に最適であり、時間の経過とともに作業負荷及び材料消費を減少させると言える。
【0058】
例-3
親和性クロマトグラフィーの溶出は、カプリル酸ナトリウムを用いて低pH及び化学的不活化に供される。混合物を20~25℃で60分間インキュベートする。ウイルス不活化工程では、使用されるカプリル酸ナトリウムは、大きな混合容器の必要性を排除する、非常に少ない量である。先行技術では、捕捉クロマトグラフィー前に存在するウイルスを不活化するためにカプリル酸ナトリウムが使用され、容量が比較的多く、したがってカプリル酸ナトリウムの必要量もまた多かった。本発明において、カプリル酸ナトリウムは第2のクロマトグラフィー工程の後に添加され、取り扱われる容量が少なく、したがってカプリル酸ナトリウムの量が少なくてすみ、取り扱うための容器がはるかに小さい。それとは別に、中性またはアルカリ性のpHと比較して、pH4.5でのカプリル酸ナトリウムの使用は、この方法においてより有効で強力なウイルス不活化を提供する。
【0059】
ウイルス不活化後、溶液をリン酸緩衝液を用いて希釈して、親和性クロマトグラフィー(混合モードクロマトグラフィー)にかけ、痕跡量の不純物、特にHCD、HCP、及びウイルス不純物があればそれを除去する。親和性クロマトグラフィーにより、ウイルスクリアランスで対数減少約2~4、及びHCPクリアランスで対数減少0.5~1が達成される。先行技術では、組織プラスミノーゲン活性化因子精製のために同じセラミックヒドロキシアパタイトが記載されているが、方法のどれもが不純物、例えばHCP、DNA、及びウイルスを除去する能力を記載していない。そのような不純物の除去の重要性は、これらの不純物の量が最終製品(ウイルス量を除く)で試験され、最終原薬放出仕様の一部であるという事実によって明らかである。負荷、フロースルー、洗浄、及び溶出を含む全てのクロマトグラフィー試料を、以下の分析方法を使用して分析する。
純度及び一本鎖/二本鎖含有量に関するSDS PAGE(還元/非還元)。
凝集体含有量のサイズ排除高性能クロマトグラフィー(SEC-HPLC)。
血餅溶解アッセイによって測定したTNK-tPA含有量。
Bradford及びUV280nmによる総タンパク質。
ELISAを用いたHCP含有量(Cygnus第3世代キット)。
【0060】
例-4
調節なしの親和性クロマトグラフィー溶出液は、標的タンパク質の濃縮及び緩衝液交換のために陽イオン交換クロマトグラフィーに直接負荷される。陽イオン交換クロマトグラフィーは、フィード調節のための煩雑な希釈工程を避けるように最適化され、したがって、親和性III溶出液を陽イオン交換クロマトグラフィーに直接負荷することができる。TNK-tPAは、55mg/mlのL-アルギニン、17mg/mlのオルトリン酸、0.43mg/mlのポリソルベート20、及びpH7.4を含む溶出緩衝液を通過させることによってカラムから回収される。陽イオン交換クロマトグラフィー溶出液をウイルス除去のための濾過に供し、得られた濾液を接線流濾過(TFF)系を用いてさらに濃縮して、最終薬剤物質濃度を達成する。濃縮後、TFF保持物を滅菌濾過し、さらなる使用のために-20℃に保つ。本発明の精製方法によって製造された原薬は、SDS PAGE、ウエスタンブロット、N末端配列分析、及びペプチドマップによる同一性及び純度のチェックを含む、従来技術及び妥当性のある分析手順によって完全に分析されるが、これに限定されない。
ELISAを用いたHCP測定、
血餅溶解アッセイを用いた生物活性及びTNK-tPA定量、
qPCRを用いた宿主細胞DNAの定量、
LAL試験を用いたエンドトキシン定量、
サイズ排除HPLCを用いた凝集体及び一本鎖/二本鎖含有量、
アルギニン含有量及び浸透圧、
シアル酸、中性糖、I型及びII型糖化分析、
社内で開発した方法を用いた、方法関連不純物、例えばゲンタマイシン、MTX、尿素、カプリル酸ナトリウム、及びEACAの分析。
【0061】
イノベーター製品との広範な分析及び生物物理学的比較の後、本発明に記載された方法によって精製された製品は、60%超の全方法収率でイノベーター製品と非常に類似したTNK-tPA製品を生成すると結論付けることができる。
【0062】
例5:
親和性I工程のための周期的向流クロマトグラフィー(PCC)は、灌流に基づくバイオリアクターからのTNK-tPAを含有する細胞培養上清で行われた。バッチモードでは、親和性Iクロマトグラフィー媒体の動的結合能力を評価し、漏出分析から得られた情報に基づいて、XK16-5ml BLUE SEPAHROSE FFで、3カラムPCCを実験した。クロマトグラフィー緩衝液組成物は、例1に述べたものと同じとした。
【0063】
例6:
必要な緩衝液、希釈液のpH及びイオン強度を制御した液体混合物の調製方法、及び/またはTNK-tPA下流プロセスのための最大流速600L/時を有する、5ポンプに基づくカスタマイズされたAKTAプロセス系による、クロマトグラフィー負荷の調節。定義された製法を有する上記の系で調製された液体混合物は、例1~4で述べたような異なるクロマトグラフィー段階でのTNK-tPAの精製に適する。