(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】ドアスイッチ検査装置、および乗場ドアスイッチの異常状態の検出方法
(51)【国際特許分類】
B66B 5/00 20060101AFI20220613BHJP
B66B 5/02 20060101ALI20220613BHJP
B66B 13/22 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
B66B5/00 D
B66B5/02 X
B66B13/22 A
(21)【出願番号】P 2018006056
(22)【出願日】2018-01-18
【審査請求日】2021-01-06
(32)【優先日】2017-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591020353
【氏名又は名称】オーチス エレベータ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Otis Elevator Company
【住所又は居所原語表記】One Carrier Place,Farmington,Connecticut,U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】山田 敦
(72)【発明者】
【氏名】関 久徳
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-002764(JP,A)
【文献】特開平01-256489(JP,A)
【文献】特開平03-115082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00
B66B 5/02
B66B 13/14
B66B 13/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータで使用される乗場ドアスイッチの異常状態を検出するためのドアスイッチ検査装置であって、複数の乗場ドアスイッチのそれぞれが、各乗場ドアの開閉状態を検出するように各乗場階の対応する乗場ドアに配設され、前記複数の乗場ドアスイッチのそれぞれが、電源と接地との間で、互いに、そしてドアスイッチリレーのリレーコイルと、直列に接続されており、
すべての前記乗場ドアスイッチの閉状態においてそれぞれの乗場ドアスイッチの電圧値を検出するために、それぞれの乗場ドアスイッチの接地側に接続された複数の電圧検出ユニットと、
乗場ドアスイッチの異常状態を検出するために、前記複数の電圧検出ユニットに接続されたスイッチ接点監視ユニットと、
を備え、
前記スイッチ接点監視ユニットが、すべての階に関して、乗場階及び隣接する上階から得られる2つの電圧値の電圧差を計算し、前記電圧差を閾値電圧と比較し、前記電圧差が前記閾値電圧を超える場合に、その乗場階の前記乗場ドアスイッチの異常状態を検出するように構成された、ドアスイッチ検査装置。
【請求項2】
最上階の前記乗場ドアスイッチの前記異常状態が、前記最上階から得られる前記電圧値と電源電圧との電圧差を計算して、前記電圧差を前記閾値電圧と比較することによって判定される、請求項1に記載のドアスイッチ検査装置。
【請求項3】
前記複数の電圧検出ユニットのそれぞれが、各乗場階に配設されるホールステーションに含まれる、請求項1に記載のドアスイッチ検査装置。
【請求項4】
前記スイッチ接点監視ユニットが、エレベータシステムのメインコントローラに含まれる、請求項1に記載のドアスイッチ検査装置。
【請求項5】
前記閾値電圧が、建物の階数、印加される電源電圧、及び前記ドアスイッチリレーの抵抗値に基づいてあらかじめ決定される、請求項1に記載のドアスイッチ検査装置。
【請求項6】
前記電圧値が、前記電圧検出ユニットによって検出されるアナログ入力電圧である、請求項1に記載のドアスイッチ検査装置。
【請求項7】
前記電圧差が前記閾値電圧を超える場合、前記スイッチ接点監視ユニットが、その乗場階の前記乗場ドアスイッチのスイッチ接点を検査するように警告を送信する、請求項1に記載のドアスイッチ検査装置。
【請求項8】
エレベータの乗場ドアスイッチの異常状態の検出方法であって、複数の乗場ドアスイッチのそれぞれが、各乗場ドアの開閉状態を検出するために、各乗場階の対応する乗場ドアに配設され、前記複数の乗場ドアスイッチのそれぞれが、電源と接地との間で、互いに、そしてドアスイッチリレーのリレーコイルと、直列に接続されており、
すべての前記乗場ドアスイッチの閉状態において、すべての階に関して各乗場ドアスイッチの電圧値を得ることと、
すべての階に関して、乗場階及び隣接する上階から得られる2つの電圧値の電圧差を計算することと、
前記電圧差を閾値電圧と比較することと、
前記電圧差が前記閾値電圧を超える場合に、その乗場階の乗場ドアスイッチの異常状態を検出することと、
を備えた、乗場ドアスイッチの異常状態の検出方法。
【請求項9】
前記電圧値を得ることが、各乗場ドアスイッチの接地側から前記電圧値を得ることをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記電圧差を計算することが、最上階から得られる電圧値と電源電圧との電圧差を計算することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記閾値電圧が、建物の階数、印加される電源電圧、及び前記ドアスイッチリレーの抵抗値に基づいてあらかじめ決定される、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記電圧値がアナログ入力電圧である、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記電圧差が前記閾値電圧を超える場合、その乗場階の乗場ドアスイッチのスイッチ接点を検査するように警告を送信するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、エレベータシステムに関する。特に、本発明は、エレベータで使用されるドアスイッチの異常状態の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エレベータシステムは、それぞれの乗場階の乗場ドアに取り付けられる複数のドアインターロックを含む。これらのドアインターロックは、エレベータかごドアがそれぞれの乗場階へのエレベータかごの到着時に開くときに、エレベータかごドアと機械的に連動することによって解放されるように構成される。このような構成によって、乗場階の乗場ドアが外側から誤って開けられることを防止できるだけでなく、たとえ乗場ドアが開けられたとしても、エレベータかごの作動を適切に中断することができ、それによって、不測の事態を前もって回避することができる。
【0003】
このようなドアインターロックには通常、ドアインターロックのロック状態及びアンロック状態を検出するための乗場ドアスイッチが設けられ、乗場ドアスイッチのスイッチ接点は、ドアインターロックの開閉とともに開閉される。各乗場ドアスイッチは、互いに、そしてドア閉検出リレーのリレーコイルと、直列に接続される。ドア閉検出リレーは、すべての乗場ドアスイッチが閉じられたときのみ、ドア閉検出リレーのリレー接点が閉じられ、続いて、エレベータかごを適切に作動させるために、すべてのドアスイッチの閉状態を示す信号がエレベータ制御装置に送信されるように構成される。
【0004】
他方で、このような乗場ドアスイッチでは、スイッチ接点への埃の付着、接点の腐食、経年劣化などのために接触不良が発生することがあることが知られている。定期検査が行われる場合、保守要員は、すべてのドアインターロックを(さらに乗場ドアスイッチも)手作業で検査しなければならない。特に、エレベータシステムが高層ビルに取り付けられるとき、確認するドアインターロックの数は増加して、検査により多くの時間がかかり、そのため、保守要員の負担が増加するという欠点がある。
【0005】
さらにまた、たとえ接触不良が乗場ドアスイッチの1つにのみ存在するとしても、すべてのドアインターロックを(したがって、すべての乗場ドアスイッチも)調査する必要があるだけでなく、特定のドアインターロック自体が異常状態にあるのか、あるいは、乗場ドアスイッチが接触不良を起こしているのか、をも識別する必要がある。このような場合、エレベータシステム全体の復旧にさらに多くの時間を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、乗場ドアスイッチの異常状態を検出するだけでなく、電気的接触不良がどの乗場ドアスイッチで発生しているのかを故障より前に識別することも可能なドアスイッチ検査装置を提供する必要性が、当該技術分野において存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの態様によると、エレベータで使用される乗場ドアスイッチの異常状態を検出するためのドアスイッチ検査装置が開示される。複数の乗場ドアスイッチのそれぞれは、乗場ドアの開閉状態を検出するために、各乗場階の対応する乗場ドアに配設される。複数の乗場ドアスイッチのそれぞれは、電源と接地との間で、互いに、そしてドアスイッチリレーのリレーコイルと、直列に接続される。ドアスイッチ検査装置は、すべての乗場ドアスイッチの閉状態においてそれぞれの乗場ドアスイッチの電圧値を検出するために、それぞれの乗場ドアスイッチの接地側に接続された複数の電圧検出ユニットと、乗場ドアスイッチの異常状態を検出するために、複数の電圧検出ユニットに接続されたスイッチ接点監視ユニットと、を含む。
【0008】
本発明によるスイッチ接点監視ユニットは、すべての階に関して、乗場階及び隣接する上階から得られる2つの電圧値の電圧差を計算し、電圧差を閾値電圧と比較し、電圧差が閾値電圧を超えた場合にその乗場階の乗場ドアスイッチの異常状態を検出するように構成される。
【0009】
いくつかの実施形態において、最上階の乗場ドアスイッチの異常状態は、最上階から得られる電圧値と電源電圧との電圧差を計算し、電圧差を閾値電圧と比較することによって判定される。
【0010】
いくつかの実施形態において、複数の電圧検出ユニットのそれぞれは、各乗場階に配設されるホールステーションに含まれる。
【0011】
いくつかの実施形態において、スイッチ接点監視ユニットは、エレベータシステムのメインコントローラに含まれる。
【0012】
いくつかの実施形態において、閾値電圧は、建物の階数、印加される電源電圧、及びドアスイッチリレーの抵抗値に基づいてあらかじめ決定される。
【0013】
いくつかの実施形態において、電圧値は、電圧検出ユニットによって検出されるアナログ入力電圧である。
【0014】
いくつかの実施形態において、電圧差が閾値電圧を超える場合、スイッチ接点監視ユニットは、その乗場階の乗場ドアスイッチのスイッチ接点を検査するように警告を送信する。
【0015】
本発明の別の態様によると、エレベータの乗場ドアスイッチの異常状態の検出方法が開示される。複数の乗場ドアスイッチのそれぞれは、乗場ドアの開閉状態を検出するために、各乗場階の対応する乗場ドアに配設される。複数の乗場ドアスイッチのそれぞれは、電源と接地との間で、互いに、そしてドアスイッチリレーのリレーコイルと、直列に接続される。エレベータの乗場ドアスイッチの異常状態の検出方法は、すべての乗場ドアスイッチの閉状態において、すべての階に関して各乗場ドアスイッチの電圧値を得ることと、すべての階に関して、乗場階及び隣接する上階から得られる2つの電圧値の電圧差を計算することと、電圧差を閾値電圧と比較することと、電圧差が閾値電圧を超える場合に、その乗場階の乗場ドアスイッチの異常状態を検出することと、を含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、電圧値を得ることは、各乗場ドアスイッチの接地側から電圧値を得ることをさらに含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、電圧差を計算することは、最上階から得られる電圧値と電源電圧との電圧差を計算することをさらに含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、閾値電圧は、建物の階数、印加される電源電圧、及びドアスイッチリレーの抵抗値に基づいてあらかじめ決定される。
【0019】
いくつかの実施形態において、電圧値はアナログ入力電圧である。
【0020】
いくつかの実施形態において、この方法は、電圧差が閾値電圧を超える場合、その乗場階の乗場ドアスイッチのスイッチ接点を検査するように警告を送信することをさらに含む。
【0021】
本開示のこれら及び他の態様は、以下の説明及び以下のように簡潔に記すことができる添付図面からより容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】各乗場階の乗場ドアに取り付けられる、本発明によるドアインターロックの1つの可能な配置を示す概略図である。
【
図2】乗場ドアスイッチの異常状態を検出するために、本発明に従ってそれぞれの乗場階の乗場ドアに取り付けられる乗場ドアスイッチの電圧監視配線図である。
【
図3】各乗場階に配設される対応する乗場ドアスイッチの各スイッチ接点での電圧値を検出するフロー図である。
【
図4】乗場ドアスイッチの接点での異常状態を判定するフロー図である。
【
図5】本発明の検出アルゴリズムを使用して、異常状態を有する乗場ドアスイッチを検出する例示的な方法を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、各乗場階の乗場ドアに取り付けられる、本発明によるドアインターロック1の実施例を示す。1つの実施例において、各ドアインターロック1は、一組の二重ドア(図示せず)の一方側の上部に枢動可能に取り付けられるラッチ部材2と、ラッチ係合されるときに対応するラッチ部材2を受けるための、ラッチ部材2に近接して二重ドアの他方側に取り付けられる受部3とを含む。
図1(A)に示されるように、ラッチ部材2は、ドアが閉まると受部3と係合し、それによって、エレベータかごが乗場にないような場合に、乗場ドアが外側から故意に開けられることを防止する。
【0024】
他方で、
図1(B)に示されるように、エレベータかごが乗場に到着して、かごドアが開くとき、ラッチ部材2は、かごドア(図示せず)と機械的に連動することによって受部3から分離し、それによって、ドアインターロック1は解放される。
【0025】
さらにまた、各ドアインターロック1は、対応する乗場ドアスイッチ4を備える。一例として、乗場ドアスイッチ4は、板ばね上に取り付けられたばね接点6をそれぞれ有する2つのスイッチ接点5、5と、スイッチ接点5、5に対して付勢されるときに、2つのスイッチ接点5、5を電気的に接続すなわち「ブリッジ」するように構成される橋絡接点7とを含む。
図1に示されるように、2つのスイッチ接点5、5は、たとえば、受部3上に取り付けられ、橋絡接点7は、エレベータドアが閉じる際に、ラッチ部材2がラッチ係合するときに、2つのスイッチ接点5、5をブリッジングするように、ラッチ部材2上に取り付けられる。特に、乗場ドアスイッチ4は、エレベータドアが閉じているとき(
図1A)は、2つのスイッチ接点5、5は橋絡接点7を介して互いに電気的に接続してONに設定され、ドアが開いているとき(
図1B)は、2つのスイッチ接点5、5はラッチ部材2の解放に応じて橋絡接点7から解放されてOFFに設定されるように構成される。
【0026】
それぞれの乗場階の乗場ドア上に配設される乗場ドアスイッチ4は、後で説明されるように、メインコントローラ9に電気的に接続されるドア閉検出リレー8に対して、互いに直列に接続される。メインコントローラ9がすべての乗場ドアスイッチ4がドア閉検出リレー8に対して閉じられていることを検出したとき(すなわち、すべての乗場ドアスイッチがONであるとき)のみ、メインコントローラ9はエレベータかごを作動させるように構成される。
【0027】
本発明の構造は、
図1に関して上記のようなドアインターロックに限定されないが、本発明は、本明細書で説明されるドアスイッチ監視装置を実装可能な任意のドアインターロックを含んでもよいことは理解されるべきである。乗場ドアスイッチは上記のようなばね接点に限定されないが、任意の周知の種類の乗場ドアスイッチを含んでもよいことも理解されるべきである。
【0028】
図2は、スイッチ接点5、5と橋絡接点7との間の異常状態を検出するために、本発明に従ってそれぞれの乗場階の乗場ドアに取り付けられる乗場ドアスイッチ4の電圧監視配線図を図示する。
図2に示されるように、それぞれの乗場階の乗場ドアに配設される乗場ドアスイッチ(DS)4は、電源(たとえば、DC48V)と接地との間で互いに直列に接続され、ドア閉検出リレー8は、最下乗場階のドアスイッチ4と接地との間に設けられる。ドア閉検出リレー8は、リレーコイル8a及びリレー接点8bを有し、各乗場ドアスイッチ4は、ドア閉検出リレー8のリレーコイル8aに対して、互いに直列に接続される。
【0029】
ここで、ドア閉検出リレー8のリレー接点8bは、メインコントローラ9に電気的に接続され、すべての乗場ドアスイッチ4の閉状態の検出に応答して閉じられるように設定される。その後、リレー接点8bは、エレベータかごを作動させるために、すべての乗場ドアスイッチ4の閉状態検出信号を示す信号をメインコントローラ9に送信する。他方で、エレベータかごが乗場階で停止して、対応する乗場ドアスイッチ4が開くと、ドア閉検出リレー8のリレー接点8bはそれに応じて開き、メインコントローラ9は、ドア閉検出リレー8からすべての乗場ドアスイッチ4の閉状態検出を受信するまで、エレベータかごの作動を停止させる。
【0030】
次に、乗場ドアスイッチ4に接続される乗場ドアスイッチ電圧監視配線11を説明する。
【0031】
ホールステーションA、B、C、...、Nはそれぞれの乗場階で、それぞれのドアスイッチ(
図2のDS)に接続される。
図2に示されるように、各ドアスイッチ4の接地側から引かれたアナログ電圧入力ライン12は、対応するホールステーションA、B、C、...、Nに接続される。ホールステーションA、B、C、...、Nは、制御ライン13を介してメインコントローラ9に接続される。各ホールステーションA、B、C、...、Nは、各乗場階に配置される各乗場ドアスイッチの対応するスイッチ接点での電圧値(アナログ入力電圧)を取得し、要求に応答してメインコントローラ9に電圧値を送信するように構成される。
【0032】
ここで、メインコントローラ9には一般に、エレベータかごの配車、群管理制御、エレベータ安全制御などの制御回路が設けられ、後述するような乗場ドアスイッチの接触不良を検出する、本発明による異常状態検出アルゴリズムを実行するためのドアスイッチ接点監視回路も設けられる。
【0033】
それぞれの乗場階に設けられるホールステーションA、B、C、...、Nは一般に、それぞれのホール呼出しボタンを有し、本発明による乗場ドアスイッチ4のそれぞれのスイッチ接点の電圧値の検出に加えて、ホール呼出しをメインコントローラ9に送信するように構成される。
【0034】
図3は、各乗場階に配設される対応する乗場ドアスイッチ4の各スイッチ接点での電圧値(アナログ入力電圧)を検出するフロー
図100を図示する。このアルゴリズムにおいて、動作は、
図2に示されるドア閉検出リレー8の状態を確認することから開始される。ステップ101では、ドア閉検出リレー8が、すべての乗場ドアスイッチ4が閉じたこと(すなわち、すべてのドアスイッチ4がON)を検出すると、すべての乗場ドアスイッチ4の閉状態検出信号がメインコントローラ9に送信されて、対応する乗場ドアスイッチ4の各スイッチ接点での電圧値の検出を開始し、続いて、カウント値「X」を1に設定し(X=1)(ステップ102)、次いで、ステップ103に進む。「X」は建物の階数を意味しないが、ホールステーションならびに乗場ドアスイッチの数に対応することに注目すべきである。たとえば、このアルゴリズムが地上8階、地下2階の建物に対して実行される場合、建物のホールステーションの総数(すなわち、乗場ドアスイッチの総数)Nは10であり、各値(「X=1、2、...、N」)はそれぞれ、8階、7階、...、及び地下2階の乗場ドアスイッチに対応する。換言すれば、「X=1、2、...、N」は、最上階から最下階までに配設されるホールステーションA、B、C、...、Nに、それぞれ対応する。
【0035】
ステップ103では、メインコントローラ9は、乗場ドアスイッチ4の入力電圧(ADI X)を取得するために、ホールステーションXに要求を送信する。このアルゴリズム100から得られる入力電圧値(ADI X)は、メモリ(図示せず)に記憶され、次いで、ステップ104に進む。
【0036】
その後、メインコントローラ9は、カウント値「X」が「N」に到達したか確認する(ステップ104)。カウント値「X」が「N」に到達していない場合、すなわち、メインコントローラがすべてのホールステーションA、B、...、Nからの入力電圧値を取得していない場合、アルゴリズムはカウント「X」を1ずつ増やし(ステップ105)、ステップに103に戻り、プロセスを繰り返す。このループは、乗場ドアスイッチ4のすべての入力電圧値が得られるまで続く。
【0037】
カウント値「X」が「N」に到達すると(ステップ104)、メインコントローラ9は次いで、乗場ドアスイッチ4の接点での異常状態を判定する
図4のアルゴリズムに進む。
【0038】
図4は、乗場ドアスイッチ4の接点での異常状態の検出アルゴリズムのフロー
図200を図示する。ステップ201では、動作は、カウント値「X」をゼロ(0)に設定し、電源電圧(ADI(0))を設定(たとえば、DC48Vに設定)することから開始され、ステップ202に進む。ステップ202では、最上階及び電源電圧から得られる電圧値の電圧差が計算される(Diff=ADI(1)-ADI(0))。ステップ202の電圧(ADI(X))は、ホールステーションXによって検出される対応する乗場ドアスイッチ4の電圧値を表すことに留意されたい。各電圧値は、
図3に示されるアルゴリズム100から得られ、ここで、X=1、2、...、Nは、最上階から最下階までに配設されるホールステーションA、B、C、...、Nに、それぞれ対応する。
【0039】
ステップ203では、ステップ202で得られた最上階及び電源電圧からの電圧値の電圧差が閾値と比較される。閾値は、建物の階数、印加される電源電圧、リレーの抵抗値などを考慮することによって設定できる所定の電圧値である。電圧差が閾値より小さい場合、ホールステーションAによって検出される最上階のドアスイッチ4のスイッチ接点の状態が、通常状態であると判定され、次いで、ステップ205に進む。電圧差が閾値を超える場合、メインコントローラ9は、最上階のドアスイッチ4のスイッチ接点で異常状態が発生したと判定し(ステップ204)、メインコントローラ9は、最上階のドアスイッチ4のスイッチ接点を検査するために、警告を保守要員にさらに送信してもよく、続いて、ステップ205に進む。警告信号は、インターネット、固定回線などを含むがこれらに限定されない、従来技術で知られている任意の手段を介して、保守要員または建物管理会社に送信されてもよいことは理解されるべきである。
【0040】
ステップ205では、メインコントローラは、カウント値「X」が「N」に到達したか確認する。カウント値「X」が「N」に到達していない場合、アルゴリズムはカウント「X」を1ずつ増やし(ステップ206)、ステップに202に戻り、プロセスを繰り返す。次いで、上階及び隣接する下階から得られる2つの電圧値の電圧差(Diff=ADI(X+1)-ADI(X))が得られて、その後、閾値電圧値と比較される。このループは、上階及び隣接する下階から得られる2つの電圧値の電圧差が、すべての階に対して判定されるまで続き、任意の階のドアスイッチ4の任意のスイッチ接点で異常状態が発生したかどうか分かる。電圧差を閾値電圧値と比較することによって、任意のドアスイッチ4の両端の異常な電圧降下を容易に検出することができる。この電圧降下は一般に、ドアスイッチ4のスイッチ接点で観測される抵抗の増加によって引き起こされ、それは、埃の付着、腐食、経年劣化、または同様のものによって発生する可能性がある。ステップ207の実行後、アルゴリズム200は完了し、ステップ101(
図3)に戻り、プロセスを繰り返す。
【0041】
次に、
図5を参照すると、異常を有する乗場ドアスイッチ4を検出する方法が、
図1~
図4に示された本発明の検出機構を使用して説明される。
【0042】
本発明による検出機構が地上5階建の建物に取り付けられ、3階の乗場ドアスイッチ4で異常状態が発生したと仮定する。本事例においては、ドアスイッチ接点の抵抗値は通常1オーム(Ω)であり、(3階の)異常状態を有するドアスイッチ接点の抵抗値は20オームであると仮定する。電圧差の閾値は2.0Vに設定される。電源電圧はDC48Vであり、リレーコイルの抵抗値は330オームである。ホールステーションA~Eが電圧差を監視するためにアナログ電圧入力ラインA~Eを介して接続されるが、これらの入力ラインのインピーダンスが高いので、これらの電流値は限りなくゼロに近いと考えられる。すなわち、電圧入力ラインA~Eの電流値は無視することができる。
【0043】
図3に関して説明されるように、乗場ドアスイッチ4のそれぞれのスイッチ接点におけるアナログ入力電圧は、メインコントローラ9からの要求に応答して、ホールステーションA、B、C、D、及びEによって得られて、これらの電圧値は、
図5(B)に示される表の第1の行に示される。すべての階の乗場ドアスイッチ4の電圧値が得られた後に、上階及び隣接する下階から得られた2つの電圧値の電圧差が、
図4に示されるアルゴリズムを実行することによって続いて計算される。これらの結果は、
図5(B)の表の第2の行に示される。
【0044】
図5(B)から理解できるように、2.0Vの閾値電圧差を超える電圧差(2.80V)が、電圧入力Cで観測される。すなわち、電圧差Diff=ADI(3)-ADI(2)(
図4に示されるステップ202)が閾値を超えているので、(3階の)第3のドアスイッチ4のスイッチ接点で異常が発生したことが分かる。この電圧降下は一般に、電圧入力ラインBとCとの間で配置される第3のドアスイッチ4のスイッチ接点で観測される抵抗の増加によって引き起こされ、それは、埃の付着、腐食、経年劣化、または同様のものによって発生する可能性がある。
【0045】
本発明は、乗場ドアスイッチのスイッチ接点にわたる異常状態が、乗場ドアスイッチのスイッチ接点にわたる電圧降下値(すなわち、乗場階及び隣接する上階で検出される2つの電圧値の差)と、所定の閾値電圧とを比較することによって検出されることを特徴とする。
【0046】
本発明によると、
図3及び4に関して説明されたような単純な制御アルゴリズムを使用する自動ドアスイッチ検査システムを採用することによって、どの乗場ドアスイッチがスイッチ接点への埃粘着、接点の腐食、経年劣化などに関連する異常状態を有するかを検出することが可能であり、それによって、定期検査が行われるときの保守要員の負担は著しく減少する。
【0047】
特に、本発明によるドアスイッチ検査装置は、既存のメインコントローラ及びホールステーションで実行可能なアルゴリズムを有するので、既存のエレベータシステムに容易に後付け可能でもある。
【0048】
本発明は、図面に図示されたような例示的な実施形態に関して特に示され、そして説明されたが、さまざまな変更が、添付の特許請求の範囲で開示されるような本発明の精神と範囲から逸脱することなく行われてもよいことが当業者によって認識されるであろう。
【符号の説明】
【0049】
1…ドアインターロック
2…ラッチ部材
3…受部
4…乗場ドアスイッチ
5…スイッチ接点
6…ばね接点
7…橋絡接点
8…ドア閉検出リレー
9…メインコントローラ
11…乗場ドアスイッチ電圧監視配線
12…アナログ電圧入力ライン
13…制御ライン