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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】X線コンピュータ断層撮影装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20220613BHJP
   H05G 1/00 20060101ALI20220613BHJP
   H05G 1/32 20060101ALI20220613BHJP
   H05G 1/34 20060101ALI20220613BHJP
   H05G 1/52 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
A61B6/03 320C
A61B6/03 330A
H05G1/00 E
H05G1/32 A
H05G1/34
H05G1/52 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018014906
(22)【出願日】2018-01-31
(65)【公開番号】P2018126506
(43)【公開日】2018-08-16
【審査請求日】2020-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2017019391
(32)【優先日】2017-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】平山 洋志
(72)【発明者】
【氏名】原田 早苗
(72)【発明者】
【氏名】水野 竹規
(72)【発明者】
【氏名】唐橋 昌宏
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-005018(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0020938(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/03
H05G 1/00
H05G 1/32
H05G 1/34
H05G 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子を放出する陰極と、前記陰極からの電子を受けてX線を発生する陽極と、前記陰極からの電子を偏向する偏向器とを有するX線管と、
前記陰極と前記陽極との間に印加される管電圧を発生する高電圧電源と、
前記X線管に流れる管電流を制御する管電流制御回路と、
複数の管電圧値と複数の管電流値と複数の焦点のサイズとの組合せ毎に、当該サイズの焦点を形成するために前記偏向器に印加する偏向電圧値を関連付けて記憶するテーブル記憶回路と、
前記高電圧電源により前記管電圧が印加されている期間において前記陽極に所定のサイズの焦点を形成するために、前記管電圧の管電圧値と前記X線管に流れる管電流の管電流値と前記所定のサイズとの組合せに関連付けられた偏向電圧値の偏向電圧を前記偏向器に印加することにより、前記陽極に形成される焦点のサイズを制御する焦点サイズ制御回路と、
を具備するX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項2】
時系列で変化する管電圧の設定値を入力し、前記入力された設定値に基づいて前記陰極と前記陽極との間に印加する管電圧を変調する管電圧制御回路を更に備え、
前記焦点サイズ制御回路は、前記入力された設定値と前記X線管に流れる管電流の管電流値と前記所定のサイズとに関連付けられた偏向電圧値の電圧を前記偏向器に印加する、
請求項記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項3】
前記陰極と前記陽極との間に印加された、前記管電圧を検出する検出器を更に備え、
前記焦点サイズ制御回路は、前記検出された管電圧の検出値と前記X線管に流れる管電流の管電流値と前記所定のサイズとに関連付けられた偏向電圧値の電圧を前記偏向器に印加する、
請求項記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項4】
前記テーブル記憶回路は、前記複数の管電圧値と前記複数の管電流値とに、前記所定のサイズとして同一のサイズの焦点を形成するための偏向電圧値を関連付けて記憶する、請求項2記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項5】
前記陰極と前記陽極との間に印加する管電圧を変調する管電圧制御回路と、
前記偏向器に印加する偏向電圧を発生する偏向電圧発生回路と、を更に備え、
前記管電圧制御回路は、前記管電圧値に基づいて前記高電圧電源を制御し、
前記焦点サイズ制御回路は、前記偏向電圧値に基づいて前記偏向電圧発生回路を制御し、
前記偏向電圧発生回路は、前記高電圧電源とは独立の電気系統にて前記偏向電圧を発生する、
請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項6】
前記陰極と前記陽極との間に印加する管電圧を変調する管電圧制御回路を更に備え、
前記焦点サイズ制御回路は、前記管電圧制御回路により前記管電圧が変調されている期間において前記陽極に前記所定のサイズの焦点を形成するために、前記変調された管電圧の管電圧値と前記X線管に流れる管電流の管電流値と前記所定のサイズとに基づく偏向電圧値の偏向電圧を前記偏向器に印加する、
請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項7】
前記複数の焦点のサイズ各々は、縦幅と横幅との組合せであり、
前記焦点サイズ制御回路は、前記縦幅と前記横幅とを個別に制御する、
請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線コンピュータ断層撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線コンピュータ断層撮影装置において被曝量低減のために管電圧変調が求められている。単純に管電圧が変調されると、管電圧による管電流のエミッション特性が変わるため、管電流値及び焦点サイズが変わってしまう。
【0003】
この問題を解決する方法として、例えば、特許文献1は、管電圧を分圧してフォーカス電圧を生成し、生成されたフォーカス電圧により焦点サイズを変調している。フォーカス電極が接地電位を保持し、管電圧とフォーカス電圧とが比例関係にあるから、管電圧に脈動が生じても焦点サイズを安定に保つことができる。
【0004】
しかしながら、管電圧変調のように管電圧値が大きく変動すると、管電圧とフォーカス電圧との比例関係が崩れてしまう。そのため、特許文献1の技術では、管電圧変調を行いながら焦点サイズを任意に制御することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-163098号公報
【文献】特表平11-502357号公報
【文献】特開2003-332098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明が解決しようとする課題は、焦点サイズを任意に制御することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、X線管、高電圧電源及び焦点サイズ制御回路を有する。X線管は、電子を放出する陰極と、前記陰極からの電子を受けてX線を発生する陽極と、前記陰極からの電子を偏向する偏向器とを有する。高電圧電源路は、前記陰極と前記陽極との間に印加される管電圧を発生する。焦点サイズ制御回路は、前記高電圧電源により管電圧が印加されている期間において前記陽極に所定のサイズの焦点を形成するために、前記管電圧の管電圧値と前記所定のサイズとに基づく偏向電圧値の偏向電圧を前記偏向器に印加することにより、前記陽極に形成される焦点のサイズを制御する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の構成を示す図である。
図2図2は、本実施形態に係るX線管とX線高電圧装置とから構成されるX線発生系の構成を示す図である。
図3図3は、図2のX線管の内部の構成を示す図である。
図4図4は、図2のテーブル記憶回路に記憶されるX線管特性値テーブルの一例を示す図である。
図5図5は、本実施形態に係る管電圧変調における管電圧設定値のグラフを示す図である。
図6図6は、本実施形態に係る管電圧変調に伴う焦点サイズと偏向電圧とのグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係わるX線コンピュータ断層撮影装置を説明する。
【0010】
図1は、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、架台10とコンソール100とを有する。例えば、架台10はCT検査室に設置され、コンソール100はCT検査室に隣接する制御室に設置される。架台10とコンソール100とは互いに通信可能に接続されている。架台10は、被検体PをX線でCT撮影するための撮影機構を搭載する。コンソール100は、架台10を制御するコンピュータである。
【0011】
図1に示すように、架台10は、開口が形成された略円筒形状の回転フレーム11を有する。回転フレーム11は、回転部とも呼ばれている。図1に示すように、回転フレーム11には、開口を挟んで対向するように配置されたX線管13とX線検出器15とが取付けられている。回転フレーム11は、アルミ等の金属により円環形状に形成された金属枠である。後述するが、架台10は、アルミ等の金属により形成されたメインフレームを有する。メインフレームは、固定部とも呼ばれている。回転フレーム11は、当該メインフレームにより回転可能に支持されている。
【0012】
X線管13は、X線を発生する。X線管13は、熱電子を発生する陰極、陰極から飛翔する熱電子を受けてX線を発生する陽極を保持する真空管である。X線管13は、高圧ケーブルを介してX線高電圧装置17に接続されている。
【0013】
X線高電圧装置17は、変圧式X線高電圧装置、定電圧型X線高電圧装置、コンデンサ式X線高電圧装置、インバータ式X線高電圧装置等の如何なる形式にも適用可能である。X線高電圧装置17は、例えば、回転フレーム11に取付けられている。X線高電圧装置17は、架台制御回路29による制御に従いX線管13に印加される管電圧、管電流及びX線の焦点サイズを調節する。本実施形態に係るX線高電圧装置17は、X線管13のX線焦点を任意のサイズに調整する。X線高電圧装置17は、X線照射中、管電圧を変調させる管電圧変調を行う。管電圧変調をしている期間において、X線高電圧装置17は、X線管13のX線焦点を任意のサイズに調整することができる。X線管13とX線高電圧装置17との詳細については後述する。
【0014】
図1に示すように、回転フレーム11は、回転駆動装置21からの動力を受けて中心軸Z回りに一定の角速度で回転する。回転駆動装置21としてダイレクトドライブモータやサーボモータ等の任意のモータが用いられる。回転駆動装置21は、例えば、架台10に収容されている。回転駆動装置21は、架台制御回路29からの駆動信号を受けて回転フレーム11を回転させるための動力を発生する。
【0015】
回転フレーム11の開口にはFOVが設定される。回転フレーム11の開口内には寝台23に支持された天板が挿入される。天板には被検体Pが載置される。寝台23は、天板を移動自在に支持する。寝台23には寝台駆動装置25が収容されている。寝台駆動装置25は、架台制御回路29からの駆動信号を受けて天板を前後、昇降及び左右に移動させるための動力を発生する。寝台23は、被検体Pの撮影部位がFOV内に含まれるように天板を位置決めする。
【0016】
X線検出器15は、X線管13から発生されたX線を検出する。具体的には、X線検出器15は、2次元湾曲面上に配列された複数の検出素子を有している。各検出素子は、シンチレータと光電変換素子とを有する。シンチレータは、X線を光子に変換する物質により形成される。シンチレータは、入射X線を、当該入射X線の強度に応じた個数の光子に変換する。光電変換素子は、シンチレータから受けた光子を増幅して電気信号に変換する回路素子である。光電変換素子としては、例えば、光電子増倍管やフォトダイオード等が用いられる。なお、検出素子は、上記の通りX線を光子に変換してから検出する間接変換型でも良いし、X線を直接的に電気信号に変換する直接変換型であっても良い。
【0017】
X線検出器15にはデータ収集回路19が接続されている。データ収集回路19は、架台制御回路29からの指示に従い、X線検出器15により検出されたX線の強度に応じた電気信号をX線検出器15から読み出し、読み出した電気信号を、ビュー期間に亘るX線の線量に応じたデジタル値を有する生データを収集するデータ収集回路19は、例えば、生データを生成可能な回路素子を搭載したASIC(Application Specific Integrated Circuit)により実現される。
【0018】
図1に示すように、架台制御回路29は、コンソール100の演算回路101からの撮影条件に従いX線CT撮影を実行するために、X線高電圧装置17、データ収集回路19、回転駆動装置21及び寝台駆動装置25を同期的に制御する。ハードウェア資源として、架台制御回路29は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の処理装置(プロセッサ)とROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の記憶装置(メモリ)とを有する。また、架台制御回路29は、ASICやフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)、他の複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)により実現されても良い。
【0019】
図1に示すように、コンソール100は、演算回路101、ディスプレイ103、入力インタフェース105及びメモリ107を有する。演算回路101、ディスプレイ103、入力インタフェース105及びメモリ107間のデータ通信は、バス(bus)を介して行われる。
【0020】
演算回路101は、ハードウェア資源として、CPUあるいはMPU、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサを有する。演算回路101は、各種プログラムの実行により前処理機能111、再構成機能113、画像処理機能115及びシステム制御機能117を実現する。なお、前処理機能111、再構成機能113、画像処理機能115及びシステム制御機能117は、一の基板の演算回路101により実装されても良いし、複数の基板の演算回路101により分散して実装されても良い。
【0021】
前処理機能111において演算回路101は、架台10から伝送された生データに対数変換等の前処理を施す。前処理後の生データは、投影データとも呼ばれる。
【0022】
再構成機能113において演算回路101は、前処理後の生データに基づいて被検体Pに関するCT値の空間分布を表現するCT画像を発生する。画像再構成アルゴリズムとしては、FBP(filtered back projection)法や逐次近似再構成法等の既存の画像再構成アルゴリズムが用いられれば良い。
【0023】
画像処理機能115において演算回路101は、再構成機能113により再構成されたCT画像に種々の画像処理を施す。例えば、演算回路101は、当該CT画像にボリュームレンダリングや、サーフェスボリュームレンダリング、画像値投影処理、MPR(Multi-Planer Reconstruction)処理、CPR(Curved MPR)処理等の3次元画像処理を施して表示画像を生成する。
【0024】
システム制御機能117において演算回路101は、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の統括的に制御する。具体的には、演算回路101は、記憶回路107に記憶されている制御プログラムを読み出してメモリ上に展開し、展開された制御プログラムに従ってX線コンピュータ断層撮影装置の各部を制御する。
【0025】
ディスプレイ103は、CT画像等の種々のデータを表示する。ディスプレイ103としては、例えば、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ、又は当技術分野で知られている他の任意のディスプレイが適宜利用可能である。
【0026】
入力インタフェース105は、ユーザからの各種指令を入力する。具体的には、入力インタフェース105は、入力機器を有する。入力機器は、ユーザからの各種指令を受け付ける。入力機器としては、キーボードやマウス、各種スイッチ等が利用可能である。入力インタフェース105は、入力機器からの出力信号をバスを介して演算回路101に供給する。
【0027】
メモリ107は、種々の情報を記憶するRAMやROM、HDD、SSD、集積回路記憶装置等の記憶装置である。また、メモリ107は、CD-ROMドライブやDVDドライブ、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であっても良い。例えば、メモリ107は、本実施形態に係るCT撮影に関する制御プログラム等を記憶する。
【0028】
次に、本実施形態に係るX線管13とX線高電圧装置17とから構成されるX線発生系について説明する。図2は、本実施形態に係るX線管13とX線高電圧装置17とから構成されるX線発生系の構成を示す図である。図2に示すX線管13は、陽極接地型である。本実施形態に係るX線管13は、陽極接地型に限定されず、中性点接地型等の如何なる型にも適用可能である。図3は、X線管13の内部の構成を示す図である。
【0029】
図2及び図3に示すように、X線管13は、陰極131、陽極133、グリッド電極135及び偏向器137を収容している。陰極131は、例えば、細線形状を有するタングステンやニッケル等の金属により形成されるフィラメントを有する。陰極131は、ケーブル等を介してX線高電圧装置17に接続されている。陰極131は、X線高電圧装置17からの陰極電圧の印加及びフィラメント電流の供給を受けて発熱し熱電子を放出する。
【0030】
陽極133は、タングステンやモリブデン等の重金属により形成された円盤形状を有する電極である。陽極133は、図示しない回転子の軸回りの回転に伴い回転する。陰極131と陽極133との間には、X線高電圧装置17により高電圧の管電圧が印加される。陰極131から放出された熱電子は、管電圧の作用により、陽極133に衝突する。陽極133は、熱電子を受けてX線を発生する。陽極133上の熱電子が衝突する範囲は実焦点と呼ばれ、X線検出器側からの見かけの実焦点は実効焦点と呼ばれている。なお、実焦点と実効焦点とを特に区別しない場合、単に焦点と呼ぶことにする。
【0031】
グリッド電極135は、陰極131と陽極133との間に配置される。グリッド電極135には、X線高電圧装置17により、陰極電位に対するグリッド電圧が印加される。グリッド電圧の印加により陰極131から陽極133へ飛翔する熱電子の量が調整される。これにより管電流値が任意の値に制御される。
【0032】
偏向器137は、グリッド電極135と陽極133との間に配置される。偏向器137は電極又はコイルにより実現される。偏向器137には、X線高電圧装置17により偏向電圧が印加される。偏向器137が電極の場合、偏向電圧の印加を受けて偏向器137は、熱電子の飛翔経路に偏向電場を印加する。偏向器137がコイルの場合、偏向電圧の印加を受けて偏向器137は、熱電子の飛翔経路に偏向磁場を印加する。偏向電場又は偏向磁場の印加を受けて、陰極131から陽極133へ飛翔する熱電子の軌道が偏向する。これにより焦点のサイズを調節する。焦点のサイズは、X線検出器15の列方向に関する実効焦点の幅(縦幅)とチャンネル方向に関する実効焦点の幅(横幅)との組合せにより規定される。
【0033】
なお、図2に示すX線管13は、陰極131から順番にグリッド電極135、偏向器137及び陽極133が配置されるとしている。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。例えば、陰極131から偏向器137、グリッド電極135及び陽極133の順番に配置されても良い。
【0034】
図2に示すように、X線高電圧装置17は、高電圧電源31、フィラメント電源33、グリッド電圧発生回路35、偏向電圧発生回路37、管電圧検出回路39、管電流検出回路41、管電圧比較回路43、管電圧制御回路45、管電流比較回路47、グリッド電圧制御回路49、フィラメント制御回路51、焦点サイズ制御回路53及びテーブル記憶回路55を有する。
【0035】
高電圧電源31は、管電圧制御回路45による制御に従い、X線管13に印加される管電圧を発生する。例えば、インバータ式X線高電圧装置の場合、高電圧電源31は、商用電源からの交流電圧を直流電圧に変換するAC/DCコンバータと、AC/DCコンバータの直流電圧を交流電圧に変換するインバータと、インバータからの交流電圧を昇圧する変圧器と、変圧器により昇圧された交流電圧を整流及び平滑して直流高電圧を発生する高圧整流平滑回路とを有する。高圧整流平滑回路からの直流高電圧は管電圧としてX線管13の陰極131と陽極133との間に印加される。
【0036】
フィラメント電源33は、フィラメント制御回路51による制御に従い、陰極131のフィラメントを加熱するためのフィラメント電流を発生する。
【0037】
グリッド電圧発生回路35は、グリッド電圧制御回路49による制御に従い、X線管13の陰極131とグリッド電極135との間にグリッド電圧を印加する。典型的には、陰極131の陰極電位に対しグリッド電圧が印加される。グリッド電圧発生回路35は、高電圧電源31により発生された電圧を降圧する降圧回路により実現されても良いし、高電圧電源31とは独立の電源系統により実現されても良い。
【0038】
偏向電圧発生回路37は、焦点サイズ制御回路53による制御に従い、X線管13の偏向器137に偏向電圧を印加する。偏向電圧発生回路37は、高電圧電源31とは独立の電源系統により実現される。例えば、偏向電圧発生回路37は、商用電源からの交流電圧を直流電圧に変換するAC/DCコンバータと、AC/DCコンバータの直流電圧を交流電圧に変換するインバータと、インバータからの交流電圧を降圧する変圧器と、変圧器により降圧された交流電圧を整流及び平滑して直流電圧を発生する整流平滑回路とを有する。整流平滑回路からの直流電圧は偏向電圧として偏向器137に印加される。
【0039】
管電圧検出回路39は、高電圧電源31とX線管13との間に接続される。管電圧検出回路39は、陰極131と陽極133との間に印加された電圧を管電圧として検出する。検出された管電圧値(以下、管電圧検出値と呼ぶ)の信号(以下、管電圧検出信号と呼ぶ)は、管電圧比較回路43と焦点サイズ制御回路53とに供給される。
【0040】
管電流検出回路41は、高電圧電源31とX線管13との間に接続される。管電流検出回路41は、陰極131から陽極133に熱電子が流れることに起因して流れた電流を管電流として検出する。検出された管電流値(以下、管電流検出値と呼ぶ)の信号(以下、管電流検出信号と呼ぶ)は、管電流比較回路47と焦点サイズ制御回路53とに供給される。
【0041】
管電圧比較回路43は、架台制御回路29からの管電圧の設定値(以下、管電圧設定値と呼ぶ)を示す信号(以下、管電圧設定信号と呼ぶ)と管電圧検出回路39からの管電圧検出信号とを入力する。管電圧比較回路43は、管電圧設定信号から管電圧検出信号を減じることにより、管電圧設定値と管電圧検出値との差分値を示す信号(以下、差分電圧信号と呼ぶ)を生成する。差分電圧信号は、管電圧制御回路45に供給される。
【0042】
管電圧制御回路45は、管電圧検出値と管電圧設定値との比較、すなわち、差分電圧信号に基づいて高電圧電源31を制御する。より詳細には、管電圧制御回路45は、管電圧検出値が管電圧設定値に収束するように高電圧電源31をフィードバック制御する。
【0043】
管電流比較回路47は、架台制御回路29からの管電流の設定値(以下、管電流設定値と呼ぶ)を示す信号(以下、管電流設定信号と呼ぶ)と管電流検出回路41からの管電流検出信号とを入力する。管電流比較回路47は、管電流設定信号から管電流検出信号を減じることにより、管電流設定値と管電流検出値との差分値を示す信号(以下、差分電流信号と呼ぶ)を生成する。差分電流信号は、グリッド電圧制御回路49に供給される。
【0044】
グリッド電圧制御回路49は、管電流検出値と管電流設定値との比較、すなわち、差分電流信号に基づいてグリッド電圧発生回路35を制御する。より詳細には、グリッド電圧制御回路49は、管電流検出値が管電流設定値に収束するようにグリッド電圧発生回路35をフィードバック制御する。
【0045】
フィラメント制御回路51は、架台制御回路29からの、管電圧設定信号と管電流設定信号と焦点サイズ情報とに基づいてフィラメント電流の設定値を示す信号(以下、フィラメント電流設定信号と呼ぶ)を生成し、フィラメント電流設定信号に従いフィラメント電源33を制御する。管電流は、例えば、フィラメント制御回路51によるフィラメント電流の制御により制御される。管電圧変調を行う場合、管電流は、フィラメント制御回路51によるフィラメント電流の制御とグリッド電圧制御回路49によるグリッド電圧の制御とにより制御されると良い。フィラメント電流の制御のみでは管電流を変調管電圧に追従できないため、グリッド電圧の制御により当該追従遅れが補われる。
【0046】
焦点サイズ情報は、入力インタフェース105等により選択された所望の焦点サイズを示す情報である。焦点サイズ情報は、架台制御回路29から供給される。
【0047】
焦点サイズ制御回路52は、高電圧電源31により陰極131と陽極133との間に管電圧が印加されている期間において陽極133に所定のサイズの焦点を形成するために、管電圧の管電圧値と当該所定のサイズとに基づく偏向電圧値の偏向電圧を偏向器137に印加することにより、陽極133に形成される焦点のサイズを制御する。例えば、焦点サイズ制御回路53は、管電圧が変調されている期間において、陽極133に所定のサイズの焦点を形成するために、管電圧の管電圧値にテーブル記憶回路55において関連付けられた偏向電圧値に基づいて、陽極133に形成される焦点のサイズを制御する。具体的には、焦点サイズ制御回路53は、管電圧検出信号、管電流検出信号、管電圧設定値及び管電流設定値を入力する。焦点サイズ制御回路53は、管電圧検出信号が示す管電圧検出値と管電圧設定信号が示す管電圧設定値との少なくとも一方の管電圧値をテーブル記憶回路55に入力し、当該所定のサイズの焦点を形成するために必要な偏向電圧値を決定する。焦点サイズ制御回路53は、管電圧値に加え、管電流検出信号が示す管電流検出値と管電流設定信号が示す管電流設定値との少なくとも一方に基づいて偏向電圧値を決定しても良い。焦点サイズ制御回路53は、決定された偏向電圧値の偏向電圧を偏向器137に印加するために偏向電圧発生回路37を制御する。
【0048】
テーブル記憶回路55は、複数の管電圧値毎に、陽極133に所定のサイズの焦点を形成するために偏向器137に印加する偏向電圧値を関連付けて記憶する。管電流値も考慮して偏向電圧を決定する場合、テーブル記憶回路55は、複数の管電圧値と複数の管電流値との組合せ毎に偏向電圧値を関連付けて記憶する。以下、偏向電圧値は、管電圧値と管電流値とに基づいて決定するものとする。テーブル記憶回路55は、管電圧値と管電流値との組合せと偏向電圧値との関係を、複数の焦点サイズ各々について規定したLUT(Look Up Table)を記憶している。以下、当該LUTをX線管特性値テーブルと呼ぶことにする。
【0049】
図4は、X線管特性値テーブルの一例を示す図である。図4に示すように、X線管特性値テーブルへの入力値と設定焦点サイズ[縦幅mm×横幅mm]との組合せ各々について偏向電圧値が関連付けられている。入力値は、入力管電圧値[kV]と入力管電流値[mA]との組合せにより規定される。入力管電圧値としては管電圧設定値又は管電圧検出値が入力される。入力管電流値としては管電流設定値又は管電流検出値が入力される。入力管電圧値は、例えば、1kVきざみ、入力管電流値は、例えば、1mAきざみで入力される。設定焦点サイズは、ユーザにより入力インタフェース105等を介して設定される。偏向電圧値は、入力管電圧値と入力管電流値との組合せにより規定される負荷がX線管13に加えられている場合において設定焦点サイズを実現するために偏向器137に印加すべき偏向電圧値である。例えば、入力管電圧値”V1”且つ入力管電流値”A11”がX線管13に加えられている場合において設定焦点サイズ”L1×W1”を実現するためには、偏向器137に偏向電圧値”BV111”を印加する必要がある。
【0050】
なお、焦点サイズ制御回路52は、管電圧の印加下において焦点サイズを任意の選択値に調節可能であれば、管電圧制御回路45により管電圧が変調されていない管電圧一定期間において焦点サイズを制御しても良いし、管電圧制御回路45により管電圧が変調されている管電圧変調期間において焦点サイズを制御しても良い。以下、焦点サイズ制御回路52は、管電圧制御回路45により管電圧が変調されている期間において陽極133に所定のサイズの焦点を形成するために、変調された管電圧の管電圧値と当該所定のサイズとに基づく偏向電圧値の偏向電圧を偏向器137に印加することにより、陽極133に形成される焦点のサイズを制御するものとする。
【0051】
次に、管電圧変調における管電流及び焦点サイズの制御に係るX線コンピュータ断層撮影装置の動作例について説明する。
【0052】
図5は、管電圧変調における管電圧設定値のグラフを示す図である。図5のグラフの縦軸は管電圧[kV]に規定され、横軸は時間[sec]に規定される。図5に示すように、管電圧変調においては上限値V1と下限値V9とを交互に繰り返すように管電圧値が周期的に変化する。上限値V1と下限値V9とは如何なる値に設定されても良い。
【0053】
管電圧制御回路45は、図5に示すように上限値V1と下限値V9とを周期的に繰り返すように管電圧値を変化させるために高電圧電源31を制御する。管電圧変調は、例えば、以下の様に行われる。管電圧比較回路43は、X線撮像中、架台制御回路29から、図5に示すような上限値V1と下限値V9とを交互に繰り返す管電圧設定値の波形を入力する。また、管電圧比較回路43は、管電圧検出回路39から、管電圧設定値に対する出力である管電圧検出値を即時的に入力する。管電圧比較回路43は、管電圧変調を行う期間、管電圧設定値と管電圧検出値との差分値(管電圧差分値)を算出し、算出された管電圧差分値を管電圧制御回路45に繰り返しフィードバックする。管電圧制御回路45は、管電圧検出値が管電圧設定値に等しくなるような電圧を陰極131と陽極133との間に印加するように、管電圧差分値に従い高電圧電源31を制御する。これにより、管電圧設定値に従い管電圧変調を行うことが可能になる。
【0054】
次に、管電流制御について説明する。管電圧を変調させると、陰極131のフィラメントのエミッション特性により、陰極131から放出される熱電子の量、すなわち、管電流も変動する。グリッド電圧制御回路49は、陰極電位に対しグリッド電圧を印加することで、陰極131から放出される熱電子量を調節し管電流値を任意に制御する。
【0055】
具体的には、管電流比較回路47は、管電圧変調が行われている期間、管電流設定値と管電流検出値との差分値(管電流差分値)を算出し、算出された管電流差分値をグリッド電圧制御回路49に繰り返しフィードバックする。グリッド電圧制御回路49は、管電流検出値が管電流設定値に等しくなるように、管電流差分値に応じてグリッド電圧発生回路35を繰り返し制御する。グリッド電圧発生回路35は、管電流差分値に応じたグリッド電圧を陰極131とグリッド電極135との間に繰り返し印加する。このように、グリッド電圧を繰り返し調節することにより管電流検出値を管電流設定値に維持することができる。例えば、管電流設定値が時間変動しない一定値である場合、グリッド電圧制御回路49は、管電圧変調の間、管電流値を当該一定値に維持することができる。
【0056】
次に、焦点サイズ制御について説明する。図6は、管電圧変調に伴う焦点寸法と偏向電圧とのグラフを示す図である。焦点寸法は、縦幅と横幅との総称である。焦点寸法は、縦又は横の1方向の寸法である。焦点サイズは、2方向の寸法の組合せである。縦幅と横幅とは焦点サイズ制御回路53により個別に制御される。焦点寸法の変調に連動して焦点サイズが変調される。
【0057】
図6のグラフの左縦軸は焦点寸法[縦幅mm又は横幅mm]に規定され、右縦軸は偏向電圧[V]に規定され、横軸は時間[sec]に規定される。図6の左縦軸は、一次元であるので、2次元の焦点サイズを表すことができない。従って簡単のため左縦軸は焦点寸法に規定される。図6の太線と細線は焦点寸法を示し、点線は偏向電圧を示す。図6の太線に示すように、単純に管電圧変調を行った場合、管電圧変調に伴い焦点寸法が変動し、画質が劣化してしまう。本実施形態に係る焦点サイズ制御回路53は、X線管特性値テーブルを利用して、図6の細線に示すような、管電圧変調に関わらず一定の焦点寸法が維持されるように偏向電圧発生回路37を制御する。
【0058】
焦点サイズ制御方法としては、管電圧検出値及び管電流検出値を利用する方法と、管電圧設定値及び管電流設定値を利用する方法とがある。以下、順番に説明する。
【0059】
管電圧検出値及び管電流検出値を利用する方法において焦点サイズ制御回路53は、X線CT撮像の開始時において架台制御回路29から設定焦点サイズを入力する。設定焦点サイズは、時間経過に伴い変化しない一定値であるとする。例えば、図6に示すように、設定焦点サイズは”L1×W1”等に設定される。X線CT撮像中、管電圧検出回路39から管電圧検出値が、管電流検出回路41から管電流検出値が焦点サイズ制御回路53に繰り返しフィードバックされる。
【0060】
X線CT撮像中、焦点サイズ制御回路53は、所定時間毎に、設定焦点サイズと管電圧検出値と管電流検出値とを検索キーとしてX線管特性値テーブルを検索し、設定焦点サイズと管電圧検出値と管電流検出値との組合せに関連付けられた偏向電圧値を特定する。例えば、図4に示すように、設定焦点サイズ”L1又はW1”、管電圧検出値”V2”、管電流検出値”A21”の場合、偏向電圧値”BV211”が特定される。焦点サイズ制御回路53は、偏向電圧値が特定される毎に、当該特定された偏向電圧値の偏向電圧を偏向器137に印加するように偏向電圧発生回路37を制御する。なお、偏向電圧発生回路37は高電圧電源31とは独立の電源系統により偏向電圧を発生するので、焦点サイズ制御回路53は、管電圧からは独立して偏向電圧を制御することが可能である。従って、X線管特性値テーブルを利用して決定された偏向電圧値の偏向電圧を偏向器137に印加することにより、管電圧を変調する場合においても焦点サイズを設定焦点サイズに維持することが可能になる。
【0061】
管電圧設定値及び管電流設定値を利用する方法において焦点サイズ制御回路53は、X線CT撮像の開始時において架台制御回路29から設定焦点サイズを入力する。焦点サイズ制御回路53は、X線CT撮像中、架台制御回路29から管電圧設定値及び管電流設定値を入力する。管電圧変調に関わる管電圧設定値は、図5に示すように、時間経過に伴い周期的に変化する。管電流設定値及び設定焦点サイズは、時間経過に伴い変化しない一定値であるとする。
【0062】
X線CT撮像中、焦点サイズ制御回路53は、所定時間毎に、設定焦点サイズと管電圧設定値と管電流設定値とを検索キーとしてX線管特性値テーブルを検索し、設定焦点サイズと管電圧設定値と管電流設定値との組合せに関連付けられた偏向電圧値を特定する。焦点サイズ制御回路53は、偏向電圧値が特定される毎に、当該特定された偏向電圧値の偏向電圧を偏向器137に印加するように偏向電圧発生回路37を制御する。従って、X線管特性値テーブルを利用して決定された偏向電圧値の偏向電圧を偏向器137に印加することにより、管電圧を変調する場合においても焦点サイズを設定焦点サイズに維持することが可能になる。
【0063】
管電圧検出値及び管電流検出値を利用する方法と管電圧設定値及び管電流設定値を利用する方法とで使用するX線管特性値テーブルが異なっても良い。すなわち、入力値が管電圧検出値及び管電流検出値である第1X線管特性値テーブルと、入力値が管電圧設定値及び管電流設定値である第2X線管特性値テーブルとが作成され、テーブル記憶回路55に記憶されると良い。この場合、同一の入力値に対し、第1X線管特性値テーブルの偏向電圧値と第2X線管特性値テーブルの偏向電圧値とは異なる値が関連付けられることとなる。応答遅れ等により、管電圧設定値と、当該管電圧の印加に応答して検出された管電圧検出値とが必ずしも一致しないためである。
【0064】
なお、管電圧設定値及び管電流設定値を利用する場合、設定値に対する管電圧や管電流の応答遅れ分を加味した偏向電圧値が、X線管特性値テーブルに登録されると良い。
【0065】
上記実施例において、焦点サイズは管電圧変調時において一定値に保たれるとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。すなわち、設定焦点サイズは、時間経過に伴い第1のサイズと第2のサイズとが周期的に繰り返されても良い。この場合においても焦点サイズ制御回路53は、周期的に繰り返される設定焦点サイズの波形を入力とし、当該設定焦点サイズ、管電圧設定値及び管電流設定値の組合せに基づきX線管特性値テーブルを利用して偏向電圧値を決定することができる。これにより、焦点サイズ制御回路53は、管電圧変調時において焦点サイズを任意値に制御することが可能になる。
【0066】
焦点サイズ制御回路53は、管電圧値と管電流値との組合せに基づき設定焦点サイズを実現するように偏向器137を制御するものとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。例えば、焦点サイズ制御回路53は、管電圧値又は管電流値に基づき設定焦点サイズを実現するように偏向電圧発生回路37を制御するものとした。この場合、X線管特性値テーブルにおいて、設定焦点サイズ各々について管電圧値又は管電流値と偏向電圧値とが関連付けられる。焦点サイズ制御回路53は、管電圧値又は管電流値と設定焦点サイズとの組合せを検索キーとしてX線管特性値テーブルを検索し、当該組合せに関連付けられた偏向電圧値を特定し、特定された偏向電圧値に従い偏向電圧発生回路37を制御することとなる。これにより、管電圧値及び管電流値の何れか一方に基づき焦点サイズを任意に制御することが可能となる。
【0067】
上記実施形態において焦点サイズ制御回路53は、X線管特性値テーブルを利用して偏向電圧値を決定することとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。例えば、焦点サイズ制御回路53は、入力管電圧値と設定焦点サイズとに対応する偏向電圧値、又は入力管電圧値と入力管電流値との組合せと設定焦点サイズとに対応する偏向電圧値を、所定のアルゴリズムに従い計算しても良いし、機械学習等により決定しても良い。
【0068】
上記述べた少なくとも1の実施形態によれば、焦点サイズを任意に制御することが可能になる。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0070】
10…架台、11…回転フレーム、13…X線管、15…X線検出器、17…X線高電圧装置、19…データ収集回路、21…回転駆動装置、23…寝台、25…寝台駆動装置、29…架台制御回路、31…高電圧電源、33…フィラメント電源、35…グリッド電圧発生回路、37…偏向電圧発生回路、39…管電圧検出回路、41…管電流検出回路、43…管電圧比較回路、45…管電圧制御回路、47…管電流比較回路、49…グリッド電圧制御回路、51…フィラメント制御回路、53…焦点サイズ制御回路、55…テーブル記憶回路、100…コンソール、101…演算回路、103…ディスプレイ、105…入力回路、107…記憶回路、111…前処理機能、113…再構成機能、115…画像処理機能、117…システム制御機能、131…陰極、133…陽極、135…グリッド電極、137…偏向器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6