(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】床下換気構造
(51)【国際特許分類】
F24F 7/10 20060101AFI20220613BHJP
E04B 1/70 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
F24F7/10 A
E04B1/70 B
E04B1/70 C
(21)【出願番号】P 2018027828
(22)【出願日】2018-02-20
【審査請求日】2020-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】河口 栞
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-311232(JP,A)
【文献】特開2012-021730(JP,A)
【文献】特開2012-036577(JP,A)
【文献】特開2009-092364(JP,A)
【文献】特開2004-232999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/10
E04B 1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気の吹出口が形成された室を有する建物の基礎の内側に形成された床下空間部と、
前記建物の奥行方向及び該奥行方向と直交する間口方向の少なくとも一方における中央に対する前記吹出口側とは反対側に設けられ
、前記室内を空調する空調手段と、
前記吹出口から前記空調手段までの空気の流通経路における中央よりも前記空調手段側に配置され、前記室内から前記床下空間部へ給気可能とされた給気部と、
を有し、
前記空調手段は、前記室内に配設された上部及び前記床下空間部に配設された下部を備えた室内機と、前記床下空間部に配設されると共に一端部が前記室内機の前記下部に接続され他端部が前記吹出口に接続されたダクトと、を備え、前記上部から前記室内の空気を吸気し且つ前記下部から前記ダクト及び前記吹出口を介して前記室内へ空気を供給する構成とされ、
前記基礎は、前記空調手段の近くに配置された第1壁部と、該第1壁部に比べて前記空調手段から遠くに配置された第2壁部とを有し、
前記第2壁部には、前記床下空間部から外側へ排気する排気部が設けられている、
床下換気構造。
【請求項2】
空気の吹出口が形成された室を有する建物の基礎の内側に形成された床下空間部と、
前記室内を区画する壁体に対する前記吹出口側とは反対側に設けられ
、前記室内を空調する空調手段と、
前記壁体に対する前記空調手段側に配置され、前記室内から前記床下空間部へ給気可能とされた給気部と、
を有し、
前記空調手段は、前記室内に配設された上部及び前記床下空間部に配設された下部を備えた室内機と、前記床下空間部に配設されると共に一端部が前記室内機の前記下部に接続され他端部が前記吹出口に接続されたダクトと、を備え、前記上部から前記室内の空気を吸気し且つ前記下部から前記ダクト及び前記吹出口を介して前記室内へ空気を供給する構成とされ、
前記基礎は、前記空調手段の近くに配置された第1壁部と、該第1壁部に比べて前記空調手段から遠くに配置された第2壁部とを有し、
前記第2壁部には、前記床下空間部から外側へ排気する排気部が設けられている、
床下換気構造。
【請求項3】
前記室は、前記壁体を備えた側壁部に囲まれた収納室を備え、
前記側壁部には開口部が形成され、
前記給気部及び前記室内機の前記上部は、前記収納室に設けられており、
前記吹出口は、前記室において、前記側壁部に対する前記収納室側とは反対側に設けられている、
請求項2に記載の床下換気構造。
【請求項4】
前記第1壁部は、前記建物の玄関の一部を構成する請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の床下換気構造。
【請求項5】
前記給気部は、
第1給気部と、
前記第1給気部と前記排気部とを結ぶ仮想直線上から外れた場所に配置された第2給気部と、
を有する請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の床下換気構造。
【請求項6】
前記第2壁部に対する前記第1壁部側とは反対側には、前記排気部の排気方向から見た場合に少なくとも一部が前記排気部と重なり、且つ前記排気部による排気を可能とする第3壁部が設けられている請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の床下換気構造。
【請求項7】
前記給気部を開放する開放位置及び前記給気部を閉止する閉止位置に移動可能とされた開閉部材と、
前記空調手段の動作開始時には前記開閉部材を前記閉止位置に移動させる制御を行い、前記空調手段の定常動作時には前記開閉部材を前記開放位置に移動させる制御を行う制御手段と、
が設けられた請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の床下換気構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床下換気構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の床下換気システムでは、建物の一階床面に貫通された給気口と、基礎立ち上がり部の排気口に設けられた床下換気扇との間に、高湿空間部が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
給気部を用いて室内の空気を床下空間部に通気させることで床下空間部の換気を行う床下換気構造において、該室内の空調を行う空調手段が設けられたとする。この床下換気構造では、給気部を用いて床下空間部の換気を行う場合に、空調手段から室内へ吹き出された空気のほとんどが給気部を介して床下空間部に通気されてしまうと、室内の空調効率が低下することになる。
【0005】
本発明は、給気部を用いて床下空間部の換気を行う場合に、室内の空調効率が低下するのを抑制することができる床下換気構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様に係る床下換気構造は、空気の吹出口が形成された室を有する建物の基礎の内側に形成された床下空間部と、前記建物の奥行方向及び該奥行方向と直交する間口方向の少なくとも一方における中央に対する前記吹出口側とは反対側に設けられ、前記室内を空調する空調手段と、前記吹出口から前記空調手段までの空気の流通経路における中央よりも前記空調手段側に配置され、前記室内から前記床下空間部へ給気可能とされた給気部と、を有し、前記空調手段は、前記室内に配設された上部及び前記床下空間部に配設された下部を備えた室内機と、前記床下空間部に配設されると共に一端部が前記室内機の前記下部に接続され他端部が前記吹出口に接続されたダクトと、を備え、前記上部から前記室内の空気を吸気し且つ前記下部から前記ダクト及び前記吹出口を介して前記室内へ空気を供給する構成とされ、前記基礎は、前記空調手段の近くに配置された第1壁部と、該第1壁部に比べて前記空調手段から遠くに配置された第2壁部とを有し、前記第2壁部には、前記床下空間部から外側へ排気する排気部が設けられている。
【0007】
第1態様に係る床下換気構造では、空調手段の供給動作によって、空気が吹出口を介して室内へ供給される。そして、室内の空気は、空調手段の吸気動作によって吸気される。このように、空調手段から室内へ供給された空気が空調手段へ戻る流れが形成されることで、室内の空調が行われる。
【0008】
また、給気部が吹出口から空調手段までの空気の流通経路に配置されているために、室内から空調手段に向かう空気の一部が、給気部を通って床下空間部へ供給される。これにより、床下空間部の換気が行われる。ここで、空調手段は、建物の奥行方向及び間口方向の少なくとも一方における中央に対する吹出口側とは反対側に設けられている。さらに、給気部は、吹出口から空調手段までの空気の流通経路における中央よりも空調手段側に配置されている。つまり、空調手段及び給気部は、吹出口から遠く離れた場所に設けられている。これにより、吹出口から室内へ供給された空気が、室内を十分に流されないうちに給気部から床下空間部へ供給されてしまうことが抑制されるので、給気部を用いて床下空間部の換気を行う場合に、室内の空調効率が低下するのを抑制することができる。
さらに、第1態様に係る床下換気構造では、床下空間部から外側へ排気する排気部が、空調手段に近い第1壁部ではなく、空調手段から遠い第2壁部に設けられている。換言すると、排気部は、給気部から遠い場所に設けられている。これにより、排気部が給気部に近い場所に設けられた構成に比べて、給気部から排気部までの空気が流れる経路の長さが長くなり、床下空間部に空気が広がり易くなるので、床下空間部の一部に空気が滞留するのを抑制することができる。
【0009】
第2態様に係る床下換気構造は、空気の吹出口が形成された室を有する建物の基礎の内側に形成された床下空間部と、前記室内を区画する壁体に対する前記吹出口側とは反対側に設けられ、前記室内を空調する空調手段と、前記壁体に対する前記空調手段側に配置され、前記室内から前記床下空間部へ給気可能とされた給気部と、を有し、前記空調手段は、前記室内に配設された上部及び前記床下空間部に配設された下部を備えた室内機と、前記床下空間部に配設されると共に一端部が前記室内機の前記下部に接続され他端部が前記吹出口に接続されたダクトと、を備え、前記上部から前記室内の空気を吸気し且つ前記下部から前記ダクト及び前記吹出口を介して前記室内へ空気を供給する構成とされ、前記基礎は、前記空調手段の近くに配置された第1壁部と、該第1壁部に比べて前記空調手段から遠くに配置された第2壁部とを有し、前記第2壁部には、前記床下空間部から外側へ排気する排気部が設けられている。
【0010】
第2態様に係る床下換気構造では、空調手段の供給動作によって、空気が吹出口を介して室内へ供給される。そして、室内の空気は、空調手段の吸気動作によって吸気される。このように、空調手段から室内へ供給された空気が空調手段へ戻る空気の流れが形成されることで、室内の空調が行われる。
【0011】
また、給気部は、壁体に対する空調手段側(吹出口側とは反対側)に配置されている。そして、室内から空調手段に向かう空気の一部が、給気部を通って床下空間部へ供給される。これにより、床下空間部の換気が行われる。ここで、空調手段及び給気部は、壁体に対する吹出口側とは反対側に設けられている。つまり、空調手段及び給気部は、吹出口から遠く離れた場所に設けられている。これにより、吹出口から室内へ供給された空気が、室内を十分に流されないうちに給気部から床下空間部へ流されてしまうことが抑制されるので、給気部を用いて床下空間部の換気を行う場合に、室内の空調効率が低下するのを抑制することができる。
さらに、第2態様に係る床下換気構造では、排気部は、給気部から遠い場所に設けられている。これにより、排気部が給気部に近い場所に設けられた構成に比べて、給気部から排気部までの空気が流れる経路の長さが長くなり、床下空間部に空気が広がり易くなるので、床下空間部の一部に空気が滞留するのを抑制することができる。
【0012】
第3態様に係る床下換気構造は、前記室は、前記壁体を備えた側壁部に囲まれた収納室を備え、前記側壁部には開口部が形成され、前記給気部及び前記室内機の前記上部は、前記収納室に設けられており、前記吹出口は、前記室において、前記側壁部に対する前記収納室側とは反対側に設けられている。
【0014】
第4態様に係る床下換気構造の前記第1壁部は、前記建物の玄関の一部を構成する。
【0015】
第4態様に係る床下換気構造では、第1壁部が玄関の一部を構成することで、第2壁部が玄関から離れた場所に配置されることになる。換言すると、排気部が玄関から離れた場所に配置されることで、玄関において、排気部を介して床下空間部が視認されなくなるので、玄関の見た目を損なうことを抑制することができる。
【0016】
第5態様に係る床下換気構造の前記給気部は、第1給気部と、前記第1給気部と前記排気部とを結ぶ仮想直線上から外れた場所に配置された第2給気部と、を有する。
【0017】
第5態様に係る床下換気構造では、床下空間部において、第1給気部から排気部へ向かう空気の流れと、第2給気部から排気部へ向かう空気の流れとが生じる。これにより、第1給気部のみを有する構成に比べて、床下空間部において空気が流れる経路が増えるので、床下空間部の一部に空気が滞留するのを抑制することができる。
【0018】
第6態様に係る床下換気構造の前記第2壁部に対する前記第1壁部側とは反対側には、前記排気部の排気方向から見た場合に少なくとも一部が前記排気部と重なり、且つ前記排気部による排気を可能とする第3壁部が設けられている。
【0019】
第6態様に係る床下換気構造では、排気部を建物の外側から見た場合に、第3壁部によって排気部が隠れるので、建物の見た目を損なうことを抑制することができる。
【0020】
第7態様に係る床下換気構造には、前記給気部を開放する開放位置及び前記給気部を閉止する閉止位置に移動可能とされた開閉部材と、前記空調手段の動作開始時には前記開閉部材を前記閉止位置に移動させる制御を行い、前記空調手段の定常動作時には前記開閉部材を前記開放位置に移動させる制御を行う制御手段と、が設けられている。
【0021】
空調手段の動作開始時には、吹出口を介して室内に供給される空気の量が少ない。このため、給気部を介して床下空間部へ一部の空気が供給された場合には、室内の空気の量が減ることになる。ここで、第7態様に係る床下換気構造では、空調手段の動作開始時において、制御手段が開閉部材を閉止位置に移動させる制御を行う。これにより、給気部を介して床下空間部に流れる空気の量が減る。換言すると、室内を流れる空気の量が減ることが抑制されるので、室内の空調効率の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明に係る床下換気構造では、給気部を用いて床下空間部の換気を行う場合に、室内の空調効率が低下するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第1実施形態に係る建物の主要部のレイアウトを示す平面図である。
【
図2】第1実施形態に係る床下空間部を空気が流れる状態を示す説明図である。
【
図3】(A)第1実施形態に係る空調部及び給気部を示す縦断面図であり、(B)第1実施形態に係る給気部の拡大図である。
【
図4】第1実施形態に係る床下換気構造における室内機の動作処理及び換気扇の動作処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】第2実施形態に係る建物の主要部のレイアウトを示す平面図である。
【
図6】(A)第2実施形態に係るポーチを示す縦断面図であり、(B)第2実施形態に係る換気扇が外側壁部で覆われている状態を示す説明図である。
【
図7】第2実施形態に係る床下空間部を空気が流れる状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[第1実施形態]
第1実施形態に係る床下換気構造50の一例について説明する。
【0025】
〔全体構成〕
図1には、第1実施形態の建物10の一階部分が示されている。建物10は、一例として、平面視で矩形状に形成され、二階建てとされており、道路11に面している。以後の説明では、建物10を道路11側から見た場合に、奥行方向をY方向、奥行方向と直交する間口方向をX方向、X方向及びY方向と直交する高さ方向をZ方向と称する。本実施形態では、一例として、Y方向が、建物10の長辺方向に相当している。また、X方向が、建物10の短辺方向に相当している。建物10には、後述する床下換気構造50が適用されている。
【0026】
以後の説明では、建物10のY方向における中央(一点鎖線C1で示す)に対する道路11側を手前側と称し、Y方向における中央に対する道路11側とは反対側を奥側と称する。さらに、建物10のX方向における後述する玄関16が設けられた側を一方側と称し、X方向における中央(一点鎖線C2で示す)に対する一方側とは反対側を他方側と称する。なお、建物10の二階部分についての図示及び説明は省略する。
【0027】
図2に示す建物10は、一例として、後述する基礎14と、Y方向に並んで基礎14上に組み上げられた図示しない複数の建物ユニットとを含んで構成されている。建物ユニットは、図示を省略するが、4本の柱と、互いに平行に配置された長短2組の床大梁及び天井大梁とを有する。
【0028】
図1に示すように、建物10は、外壁18を有する。外壁18は、建物10の内部の生活空間としての室22内と、建物10の外部の空間とを区画している。換言すると、建物10は、室22を有する。外壁18及び室22は、図示しない天井により上側から覆われている。また、建物10は、一例として、玄関16と、フロア部24と、収納室26と、居室28と、台所32と、洗面室34と、浴室36とを含んで構成されている。なお、本実施形態における室22とは、一例として、フロア部24、収納室26、居室28、台所32及び洗面室34のそれぞれを構成する床、天井、側壁及び内部空間を含んでいる。
【0029】
玄関16は、建物10におけるY方向の手前側でかつX方向の一方側に配置されている。玄関16の開閉扉16Aは、道路11側に向けて開放される。玄関16のX方向の他方側には、Y方向に延びるフロア部24が配置されている。フロア部24は、Z方向を厚さ方向としてY方向に延びる床板24Aを有する。床板24A上には、一階部分と二階部分とを繋ぐ階段25が配置されている。なお、本実施形態では、一例として、フロア部24を居室28に含めて説明する。
【0030】
収納室26は、玄関16に対するY方向の奥側で且つフロア部24に対するX方向の一方側に配置されている。また、収納室26は、Z方向を厚さ方向としてX方向に延びる床板27と、床板27の外縁部に立設され空間部を形成する側壁部29とを有する。床板27のX方向の他方側端部には、後述する給気部56が形成されている。また、床板27のX方向の中央部には、Z方向に貫通した貫通孔27Aが形成されている。側壁部29は、外壁18の一部と、側壁31と、側壁33と、側壁35(
図3(A)参照)とを有する。外壁18は、収納室26のX方向の一方側に配置されている。
【0031】
側壁31は、収納室26のY方向の手前側に配置され、X方向に延びると共にZ方向に直立されている。また、側壁31は、玄関16と収納室26とを区画している。側壁33は、壁体の一例であり、収納室26のY方向の奥側に配置され、X方向に延びると共にZ方向に直立されている。また、側壁33は、室22を収納室26と後述する居室28とに区画している。
【0032】
図3(A)に示す側壁35は、収納室26のX方向の他方側に配置され、Y方向に延びると共にZ方向に直立されている。また、側壁35は、フロア部24と収納室26とを区画している。側壁35には、X方向に貫通された開口部37が形成されている。開口部37には、Y方向に移動されることで開口部37を開放及び閉止する扉39が設けられている。
【0033】
図1に示す居室28は、フロア部24及び収納室26に対するY方向の奥側に配置されている。また、居室28は、X-Y面に沿って広がる床板28Aを有する。床板28Aは、後述する基礎14(
図2参照)に対するZ方向の上側に配置されている。居室28におけるX方向の一方側で且つY方向の奥側には、台所32が配置されている。台所32は、床板28Aに連続して広がる床板32Aを有する。
【0034】
洗面室34は、台所32よりもY方向の奥側に配置されている。また、洗面室34は、床板32Aとほぼ同じ高さで配置された床板34Aを有する。浴室36は、洗面室34よりもX方向の他方側に配置されている。台所32と洗面室34とは、壁部44により区画されている。壁部44の一部には開口部44Aが形成されている。開口部44Aには、引違い戸46が設けられている。
【0035】
床板28Aには、Z方向に貫通され空気が吹出し可能とされた吹出口45A及び吹出口45Bが形成されている。吹出口45Aは、一例として、床板28AにおけるY方向の手前側且つX方向の一方側の領域内に形成されている。吹出口45Bは、一例として、床板28AにおけるY方向の奥側且つX方向の他方側の領域内に形成されている。床板34Aには、Z方向に貫通され空気が吹出し可能とされた吹出口45Cが形成されている。換言すると、室22には、吹出口45A、45B、45Cが形成されている。吹出口45A、45B、45Cには、それぞれメッシュ状の部材が設けられている。これにより、吹出口45A、45B、45Cでは、内部への異物の侵入が抑制されると共に通気可能とされている。
【0036】
図2に示す基礎14は、地盤13にコンクリートを打設することにより形成されており、Z方向に直立されている。また、基礎14は、一例として、平面視で基礎14の大部分を構成する第1基礎部14Aと、第1基礎部14Aに対する手前側でかつ一方側に配置された第2基礎部14Bとを有する。第2基礎部14Bは、玄関16の底部を構成している。さらに、基礎14の内側面には、図示しない断熱材が取付けられている。
【0037】
第1基礎部14Aの外縁部には、Z方向に沿って直立する縦壁部63が設けられている。縦壁部63は、第1壁部の一例としての前壁部64と、第2壁部の一例としての後壁部65と、右壁部66と、左壁部67とを有する。
【0038】
前壁部64は、平面視した場合に、基礎14のY方向の手前側でX方向に延びている。具体的には、前壁部64は、平面視でクランク状に形成されており、一方側でX方向に沿って延びる第1縦壁64Aと、他方側でX方向に沿って延びる第2縦壁64Bと、第1縦壁64Aと第2縦壁64Bとを繋ぐ第3縦壁64Cとを有する。第1縦壁64Aは、第2縦壁64Bよりも奥側に配置されている。第3縦壁64Cは、玄関16側の空間と、後述する床下空間部52とを区画している。そして、前壁部64は、玄関16の一部を構成している。
【0039】
後壁部65は、平面視した場合に、基礎14のY方向の奥側でX方向に延びている。また、後壁部65のX方向の中央部には、後壁部65をY方向に貫通する排気口68が形成されている。排気口68が形成されていることによって、後述する床下空間部52から基礎14の外側へ排気可能となっている。
【0040】
第2基礎部52Bの上面の高さは、第1基礎部52Aの上面の高さよりも高い。また、第2基礎部52Bは、一例として、玄関16の「たたき」として用いられている。
【0041】
〔要部構成〕
次に、床下換気構造50について説明する。
【0042】
図2に示す床下換気構造50は、床下空間部52と、空調手段の一例としての空調部54と、給気部56と、排気部の一例としての換気扇58と、開閉部材の一例としての蓋部材62と、制御手段の一例としての制御部60とを有する。
【0043】
<床下空間部>
床下空間部52は、前壁部64、後壁部65、右壁部66及び左壁部67により囲まれた空間部である。換言すると、床下空間部52は、吹出口45A、45B、45Cが形成された室22(
図1参照)を有する建物10の基礎14の内側に形成されている。
【0044】
床下空間部52には、一例として、湿度センサ69A、69Bが設けられている。湿度センサ69Aと湿度センサ69Bは、同様の構成とされており、湿度を測定して、得られた湿度情報を後述する制御部60に送る。湿度センサ69Aは、一例として、床下空間部52におけるX方向及びY方向の中央に配置されている。湿度センサ69Bは、一例として、第2縦壁64B、第3縦壁64C及び左壁部67で囲まれた領域内に配置されている。
【0045】
<空調部>
図1に示す空調部54は、一例として、室内機72と、ダクト74A、74B、74Cと、後述する制御部60と、図示しない室外機とを有する。室内機72は、X方向の一方側で且つY方向における中央に対する吹出口45C側とは反対側に設けられている。また、室内機72は、側壁33に対する吹出口45A側とは反対側に設けられている。
【0046】
(室内機)
図3(A)に示すように、室内機72は、貫通孔27Aに挿入され床下空間部52と収納室26内の空間部とに跨って設置されている。具体的には、室内機72は、略直方体状の筐体73を有しており、床下空間部52に配置される下部72Aと、収納室26内に配置される上部72Bとで構成されている。
【0047】
下部72Aには、送風ユニット76と、チャンバ77とが設けられている。チャンバ77には、ダクト74A、74B、74Cのそれぞれの一端部が接続されている。送風ユニット76は、図示しないファンと、該ファンを回転させるモータとを含んで構成されている。また、送風ユニット76は、ファンの回転によって、上部72B側から吸気し且つチャンバ77を介してダクト74A、74B、74Cに送風するように構成されている。なお、各図において、空気の流れは、符号無しの矢印によって示されている。
【0048】
上部72BのX方向の他方側下部は、床板27に向けて開口されている。送風ユニット76の吸気によって、扉39の下側から床板27に沿って流れた空気の一部は、筐体73の上部72B内に流入されるようになっている。また、筐体73の上部72B内には、熱交換ユニット78が設けられている。熱交換ユニット78は、図示しない複数のフィン及び伝熱管を有する。この伝熱管の内部には、熱媒体が流れている。また、伝熱管は、熱交換ユニット78から図示しない室外機まで延びている。そして、熱交換ユニット78と室外機との間で熱媒体が循環されるようになっている。熱交換ユニット78により冷却又は加熱された空気は、送風ユニット76を介してダクト74A、74B、74Cに送り込まれる。
【0049】
(ダクト)
図1に示すダクト74Aの他端部は、床下空間部52(
図2参照)を通って吹出口45Aに接続されている。ダクト74Bの他端部は、床下空間部52を通って吹出口45Bに接続されている。ダクト74Cの他端部は、床下空間部52を通って吹出口45Cに接続されている。これにより、室内機72が動作された場合に、吹出口45A、吹出口45B及び吹出口45Cから室22へ空気が吹出される。
【0050】
空調部54は、吹出口45A、45B、45Cを介して室22へ空気を供給し且つ室22の空気を吸気することで室22を空調する。空調とは、空気の温度及び湿度の少なくとも一方の値が設定値又は設定値に近い値となるように、空気の温度及び湿度の少なくとも一方を調整することを意味する。本実施形態では、一例として、室22の温度の値が予め設定された設定値に近付くように、空調部54によって空気の温度が調整されるが、空気の湿度を調整してもよい。
【0051】
図2に示すように、空調部54の近くには、前壁部64が配置されている。後壁部65は、前壁部64に比べて空調部54から遠くに配置されている。そして、後壁部65の排気口68には、後述する換気扇58が設けられている。
【0052】
<給気部>
図1に示す給気部56は、床板27に形成された給気口57で構成されており、吹出口45A、45B、45Cから空調部54までの空気の流通経路における中央よりも空調部54側に配置され、室22から床下空間部52(
図2参照)へ給気可能とされている。具体的には、給気部56は、平面視して、吹出口45Aの中央と、室内機72におけるX方向他方側の開口部分(
図3(A)参照)の中央とを結ぶ仮想の曲線を流通経路として、該曲線の中央よりも室内機72側(室内機72の付近)に配置されている。
【0053】
同様に、給気部56は、平面視して、吹出口45B、45Cの中央と、室内機72の他方側の開口部分の中央とをそれぞれ結ぶ仮想の曲線を流通経路と仮定して、該曲線の中央よりも室内機72側(室内機72の付近)に配置されている。また、給気部56は、側壁33に対する空調部54側に配置されている。そして、室22から給気部56(給気口57)を介して床下空間部52へ空気が流れる(供給される)。
【0054】
給気口57は、一例として、平面視でX方向を短手方向としY方向を長手方向とする矩形状に形成されている。また、給気口57には、メッシュ状の部材が設けられている。これにより、給気口57では、内部への異物の侵入が抑制されると共に給気可能とされている。
【0055】
図2に示すように、平面視で、給気口57と排気口68とは、ほぼY方向に沿って並んでいる。なお、床下空間部52において、給気口57と排気口68との間には、一例として、湿度センサ69Aを除いて他の部材が配置されていない。このため、給気口57から流入した空気は、排気口68に向かう直線上の経路だけでなく、右壁部66に近い場所や左壁部67に近い場所を通る曲線上の経路で流通可能となっている。
【0056】
<換気扇>
換気扇58は、Y方向を軸方向として回転するファン58A及び図示しないモータを有しており、ファン58Aの回転によって、床下空間部52から外側へ排気する(床下空間部52を負圧状態とする)。図示しないモータの駆動制御は、後述する制御部60により行われる。なお、換気扇58の動作が停止されている場合であっても、排気口68が開口されていることで、排気口68から外側へ空気が流れる(排気される)ようになっている。
【0057】
<蓋部材>
図3(B)に示す蓋部材62は、給気口57のほとんどを閉止可能となるように形状及び大きさが設定された、平面視で矩形状の板材で構成されている。蓋部材62のX方向の一端部には、Y方向の両外側へ向けて突出された軸部62Aが形成されている。軸部62Aには、図示しないギアが取付けられている。軸部62Aは、床板27の給気口57の縁部のうち、Y方向に対向する縁部で且つ室内機72に近い側の縁部により回動可能に支持されている。蓋部材62は、軸部62Aを中心として回動されることで、給気部56(給気口57)を開放する開放位置及び給気部56を閉止する閉止位置に移動可能とされている。
【0058】
<制御部>
図1に示す制御部60は、制御ユニット60Aと、操作パネル60Bと、モータ60C(
図3(B)参照)とを含んで構成されている。制御ユニット60Aは、一例として、室内機72に設けられている。また、制御ユニット60Aは、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を含むコンピュータとして構成されている。さらに、制御ユニット60Aは、操作パネル60Bと、湿度センサ69A、69B(
図2参照)と、室22の図示しない温度センサとに電気的に接続されている。加えて、制御ユニット60Aには、室内機72の動作、換気扇58(
図2参照)の回転動作及び蓋部材62の開閉動作について、処理プログラム(
図4にフローチャートとして示す処理)が記憶されている。
【0059】
操作パネル60Bは、一例として、壁部44の台所32側に設けられている。また、操作パネル60Bは、室22の居住者によって操作される。操作パネル60Bでは、室22内の温度、換気扇58(
図2参照)を作動させる湿度等が設定可能とされている。
【0060】
図3(B)に示すモータ60Cは、蓋部材62の軸部62Aに取付けられた図示しないギアを回転させる。モータ60Cによる蓋部材62の駆動(回動)の制御は、制御ユニット60Aによって行われる。
【0061】
図1に示す制御ユニット60Aは、室22の図示しない温度センサで検知された温度が、操作パネル60Bで設定された設定温度に近づくように、空調部54を動作させる。具体的には、検知された温度が設定温度よりも低い場合には、温度の高い空気を室22内に吹出させ、検知された温度が設定温度よりも高い場合には、温度の低い空気を室22内に吹出させる。
【0062】
また、制御ユニット60Aは、湿度センサ69A、69B(
図2参照)で測定された湿度が、操作パネル60Bで設定された設定湿度に近づくように、換気扇58(
図2参照)を動作させる制御を行う。具体的には、検知された湿度が設定湿度よりも低い場合には、換気扇58を動作させず又は換気扇58の動作を停止させる。一方、検知された湿度が設定湿度よりも高い場合には、換気扇58を動作させ、床下空間部52(
図2参照)の空気を外側へ排気させる。
【0063】
さらに、制御ユニット60Aは、室内機72(空調部54)の動作開始時には、蓋部材62を既述の閉止位置に移動させる制御を行う。一方、制御ユニット60Aは、室内機72の定常動作時には、蓋部材62を既述の開放位置に移動させる制御を行う。なお、室内機72の動作開始時とは、室内機72の空調動作が開始された開始時点から、ダクト74A、74B、74Cに送り込まれる空気の温度(室22内の温度ではない)が設定温度に到達する直前の時点までの時間を意味する。また、室内機72の定常動作時とは、ダクト74A、74B、74Cに送り込まれる空気の温度が設定温度に到達した到達時点を含み、該到達時点以降で且つ室内機72の動作が停止されるまでの時間を意味する。
【0064】
〔作用〕
次に、第1実施形態の床下換気構造50の作用について
図4のフローチャートを用いて説明する。なお、建物10の各部については、
図1、
図2及び
図3(A)、(B)を参照する。
【0065】
ステップS10では、湿度センサ69A、69Bによって床下空間部52の湿度が測定される。測定された湿度の情報は、制御ユニット60Aに送られる。そして、ステップS12に移行する。
【0066】
ステップS12では、2つの測定された湿度のうち高い方の測定値と、予め設定された設定湿度とが比較される。そして、高い方の測定値が設定湿度以上の場合には、ステップS14に移行する。一方、高い方の測定値が設定湿度よりも低い場合には、ステップS10に移行して、再度、湿度測定が行われる。
【0067】
ステップS14では、換気扇58が作動される。そして、ステップS16に移行する。
【0068】
ステップS16では、室22の図示しない温度センサで検知された温度と、操作パネル60Bで設定された設定温度とが比較されることで、空調部54の作動実施の有無が判断される。検知された温度と設定温度との差が大きい場合(例えば、差が5℃以上の場合)には、ステップS18に移行する。一方、検知された温度と設定温度との差が小さい場合には、空調を実施せずにステップS26に移行する。
【0069】
ステップS18では、室内機72が作動される。検知された温度が設定温度よりも高い場合には、室22内に冷風が供給される。検知された温度が設定温度よりも低い場合には、室22内に温風が供給される。そして、ステップS20に移行する。
【0070】
ステップS20では、室内機72が動作している時間が、定常動作時となったか否かが判断される。判断は、一例として、ダクト74A、74B、74Cに送り込まれる空気の温度が予め設定した温度に到達しているか否かによって判断される。そして、定常動作時と判断された場合には、ステップS22に移行する。一方、定常動作時になっていない(動作開始時)と判断された場合には、ステップS24に移行する。
【0071】
ステップS22では、蓋部材62が開放位置に移動されることで、給気口57が開放される。既に蓋部材62が開放位置にある場合には、そのまま給気口57の開放状態が保持される。そして、ステップS26に移行する。
【0072】
ステップS24では、蓋部材62が閉止位置に移動されることで、給気口57が閉止される。既に蓋部材62が閉止位置にある場合には、そのまま給気口57の閉止状態が保持される。そして、ステップS20に移行する。
【0073】
ステップS26では、湿度センサ69A、69Bによって測定された床下空間部52の湿度が設定湿度以下となったか否かが判断される。床下空間部52の湿度が設定湿度以下となった場合には、ステップS28に移行する。一方、床下空間部52の湿度が設定湿度よりも高い場合には、床下空間部52の湿度が設定湿度以下となるまで待機される。
【0074】
ステップS28では、換気扇58の動作が停止される。そして、ステップS30に移行する。
【0075】
ステップS30では、図示しない温度センサにより測定された室22内の温度が設定温度に到達したか否かに基づいて、空調部54(室内機72)の動作を停止させるか否かが判断される。室22内の温度が設定温度に到達している場合には、ステップS32に移行する。一方、室22内の温度が設定温度に到達していない場合には、室22内の温度が設定温度に到達するまで待機される(室内機72の動作を継続させる)。
【0076】
ステップS32では、室内機72の動作を停止する。そして、プログラムを終了する。
【0077】
以上、説明したように、床下換気構造50では、空調部54の供給動作によって、空気が吹出口45A、45B、45Cを介して室22内へ供給される。そして、室22内の空気は、空調部54の吸気動作によって吸気される。このように、空調部54から室22内へ供給された空気が空調部54へ戻る流れが形成されることで、室22内の空調が行われる。
【0078】
また、給気部56が吹出口45A、45B、45Cから空調部54までの空気の流通経路に配置されているために、室22内から空調部54に向かう空気の一部が、給気部56を通って床下空間部52へ供給される。これにより、床下空間部52の換気が行われる。ここで、空調部54は、建物10のY方向及びX方向の少なくとも一方における中央に対する吹出口45A、45B側とは反対側に設けられている。さらに、給気部56は、吹出口45A、45B、45Cから空調部54までの空気の流通経路における中央よりも空調部54側に配置されている。
【0079】
つまり、空調部54及び給気部56は、吹出口45A、45B、45Cから遠く離れた場所に設けられている。これにより、吹出口45A、45B、45Cから室22内へ供給された空気が、室22内を十分に流されないうちに給気部56から床下空間部52へ供給されてしまうことが抑制される。このため、給気部56を用いて床下空間部52の換気を行う場合に、室22内の空調効率が低下するのを抑制することができる。なお、本実施形態における空調効率は、吹出口45A、45B、45Cから室22内へ一定時間に供給された空気量に対する、収納室26周辺での温度変化量で定義されている。
【0080】
また、床下換気構造50では、空調部54及び給気部56が、側壁33に対する吹出口45A、45B、45C側とは反対側に設けられている。つまり、空調部54及び給気部56は、吹出口45A、45B、45Cから遠く離れた場所に設けられている。これにより、給気部56を用いて床下空間部52の換気を行う場合に、室22内の空調効率が低下するのを抑制することができる。
【0081】
さらに、床下換気構造50では、床下空間部52から外側へ排気する換気扇58が、空調部54に近い前壁部64ではなく、空調部54から遠い後壁部65に設けられている。換言すると、換気扇58は、給気部56から遠い場所に設けられている。これにより、換気扇58が給気部56に近い場所に設けられた構成に比べて、給気部56から換気扇58までの空気が流れる経路の長さが長くなり、床下空間部52に空気が広がり易くなるので、床下空間部52の一部に空気が滞留するのを抑制することができる。
【0082】
加えて、床下換気構造50では、前壁部64が玄関16の一部を構成することで、後壁部65が玄関16から離れた場所に配置されることになる。換言すると、換気扇58が玄関16から離れた場所に配置されることで、玄関16において、換気扇58の開口を介して床下空間部52が視認されなくなるので、玄関16の見た目を損なうことを抑制することができる。
【0083】
空調部54の動作開始時には、吹出口45A、45B、45Cを介して室22内に供給される空気の量が少ない。このため、給気部56を介して床下空間部52へ一部の空気が供給された場合には、室22内の空気の量が減ることになる。ここで、床下換気構造50では、空調部54の動作開始時において、制御部60が蓋部材62を閉止位置に移動させる制御を行う。これにより、給気部56を介して床下空間部52に流れる空気の量が減る。換言すると、室22内を流れる空気の量が減ることが抑制されるので、室22内の空調効率の低下を抑制することができる。
【0084】
なお、空調部54の定常動作時には、吹出口45A、45B、45Cを介して室22内に供給される空気の量が多い。このため、給気部56を介して床下空間部52へ一部の空気が流れても、室22内の空気の量は、空調を行うのに必要なだけ確保される。
【0085】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る床下換気構造130について説明する。なお、前述した第1実施形態と基本的に同一の部材、部位及び同一名称のものには、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0086】
図5には、建物10(
図1参照)に比べて間口の広い建物100が示されている。建物100は、後述する基礎101(
図7参照)と、外壁102を有する。外壁102は、建物100の内部の生活空間としての室104内と、建物100の外部の空間とを区画している。換言すると、建物100は、室104を有する。外壁102及び室104は、図示しない天井により上側から覆われている。
【0087】
また、建物100は、一例として、玄関16と、居室106と、収納室108と、台所32と、洗面室112と、浴室36と、階段室114とを含んで構成されている。なお、本実施形態における室104とは、居室106、収納室108、台所32、洗面室112及び階段室114のそれぞれを構成する床、天井、側壁及び内部空間を含んでいる。建物100には、後述する床下換気構造130が適用されている。
【0088】
建物100を平面視して、居室106は、Y方向の手前側でX方向に広がっている。また、居室106は、床板107を有する。居室106に対するX方向の一方側には、台所32が設けられている。台所32は、床板32Aを有する。居室106に対するX方向の他方側には、玄関16が設けられている。玄関16は、床板17を有する。玄関16の一部と居室106の一部とは、通路116を介して繋がっており、空気が流通可能とされている。また、玄関16の他の部分と居室106の他の部分とは、Y方向に沿って延びる側壁122により区画されている。玄関16のY方向の奥側には収納室108が設けられている。
【0089】
台所32のY方向の奥側には洗面室112が設けられている。洗面室112は、床板113を有する。床板113は、床板32Aとほぼ同じ高さで配置されている。また、洗面室112には、X方向の一方側へ開閉可能とされた扉112Aが設けられている。収納室108と洗面室112との間で且つ居室106に対するY方向の奥側には、階段室114と浴室36とが設けられている。階段室114は、床板115を有する。建物100において、外壁102のうち、X方向の一方側でY方向に延びる右壁102Aに対して、台所32及び洗面室112側とは反対側には、ポーチ118が設けられている。
【0090】
台所32と洗面室112とは、壁部124により区画されている。壁部124の一部には開口部124Aが形成されている。開口部124Aには、引違い戸126が設けられている。
【0091】
収納室108は、玄関16に対するY方向の奥側で且つ階段室114に対するX方向の他方側に配置されている。また、収納室108は、床板109と、床板109の外縁部に立設され空間部を形成する側壁部111とを有する。床板109のY方向の手前側端部には、後述する給気部134が形成されている。また、床板109の中央部には、Z方向に貫通した貫通孔109Aが形成されている。側壁部111は、外壁102の一部と、側壁111Aと、側壁111Bとを有する。
【0092】
側壁111Aは、壁体の一例であり、収納室108のX方向の一方側でY方向に延びており、収納室108と階段室114とを区画している。側壁111Bは、収納室108のY方向手前側でX方向に延びており、収納室108と玄関16とを区画している。側壁111Bには、X方向に貫通された開口部117が形成されている。開口部117には、X方向に移動されることで開口部117を開放及び閉止する図示しない扉が設けられている。
【0093】
床板17には、吹出口45Aが形成されている。床板107には、吹出口45Bが形成されている。床板32Aには、吹出口45Cが形成されている。床板113には、Z方向に空気が吹出し可能とされた吹出口45Dが形成されている。床板115には、Z方向に空気が吹出し可能とされた吹出口45Eが形成されている。換言すると、室104には、吹出口45A、45B、45C、45D、45Eが形成されている。吹出口45A、45B、45C、45D、45Eには、それぞれメッシュ状の部材が設けられている。これにより、吹出口45A、45B、45C、45D、45Eでは、内部への異物の侵入が抑制されると共に通気可能とされている。
【0094】
図7に示す基礎101は、地盤13にコンクリートを打設することにより形成されており、Z方向に直立されている。また、基礎101は、一例として、基礎101の大部分を構成する第1基礎部101Aと、第1基礎部101Aに対する手前側でかつ他方側に配置された第2基礎部101Bと、第1基礎部101Aに対する一方側に配置された第3基礎部101Cとを有する。第2基礎部101Bは、玄関16の基礎部分を構成している。第3基礎部101Cは、後述するポーチ118の基礎部分を構成している。基礎101の内側面には、図示しない断熱材が取付けられている。
【0095】
第1基礎部101Aの外縁部には、Z方向に沿って直立する縦壁部136が設けられている。縦壁部136は、平面視して、第1壁部の一例としての左壁部138と、第2壁部の一例としての内側壁部142と、第3壁部の一例としての外側壁部144と、前壁部146と、後壁部148とを有する。
【0096】
左壁部138は、平面視した場合に、基礎101のX方向の他方側でY方向に延びている。左壁部138のY方向の手前側はクランク状に形成されている。
【0097】
内側壁部142は、平面視した場合に、基礎101のX方向の一方側でY方向に延びている。また、内側壁部142のY方向の中央よりも奥側には、内側壁部142をX方向に貫通する排気口152が形成されている。排気口152が形成されていることによって、後述する床下空間部132から外側へ排気可能となっている。
【0098】
外側壁部144は、内側壁部142に対する左壁部138側とは反対側に設けられる。
【0099】
第2基礎部101Bの上面の高さは、第1基礎部101Aの上面の高さよりも高い。また、第2基礎部101Bは、一例として、玄関16の「たたき」として用いられている。
【0100】
図6(A)に示すように、ポーチ118は、基礎101の一部と、床部121と、側壁122と、屋根125とを有する。床部121は、換気扇58の下端よりも下側に設けられている。側壁122は、右壁102AとX方向に間隔をあけて対向配置され、基礎101上にZ方向に沿って立設されている。屋根125は、右壁102Aの上部と側壁122の上部とを繋いでいる。これにより、ポーチ118は、Y方向に開放された空間部を形成している。
【0101】
〔床下換気構造〕
図7に示す床下換気構造130は、床下空間部132と、空調部54と、給気部134と、換気扇58と、蓋部材62と、制御部60とを有する。
【0102】
<床下空間部>
床下空間部132は、前壁部146、後壁部148、左壁部138、内側壁部142により囲まれた空間部である。換言すると、床下空間部132は、吹出口45A、45B、45C、45D、45Eが形成された室104(
図5参照)を有する建物100の基礎101の内側に形成されている。
【0103】
床下空間部132には、一例として、湿度センサ69A、69Bが設けられている。湿度センサ69Aは、一例として、床下空間部132におけるX方向及びY方向の中央に配置されている。湿度センサ69Bは、一例として、左壁部138及び後壁部148で囲まれた領域内に配置されている。
【0104】
<空調部>
図5に示す空調部54は、第1実施形態の空調部54(
図1参照)に、さらにダクト74D、74Eが追加された構成とされている。室内機72は、建物10のX方向中央に対する吹出口45C、45D側とは反対側で且つY方向中央に対する吹出口45A、45B、45C側とは反対側に設けられている。また、室内機72は、側壁111Aに対する吹出口45E側とは反対側に設けられている。
【0105】
室内機72は、貫通孔109Aに挿入され床下空間部132(
図7参照)と収納室108内の空間とに跨って設置されている。ダクト74Aは、室内機72と吹出口45Aとに接続されている。ダクト74Bは、室内機72と吹出口45Bとに接続されている。ダクト74Cは、室内機72と吹出口45Cとに接続されている。ダクト74Dは、室内機72と吹出口45Dとに接続されている。ダクト74Eは、室内機72と吹出口45Eとに接続されている。これにより、室内機72が動作された場合に、吹出口45A、45B、45C、45D、45Eから室104内へ空気が吹出される。つまり、空調部54は、吹出口45A、45B、45C、45D、45Eを介して室104内へ空気を供給し、且つ室104内の空気を吸気して空気の流れを生じさせることで、室104内を空調する。
【0106】
図7に示すように、空調部54の近くには、左壁部138が配置されている。内側壁部142は、左壁部138に比べて空調部54から遠くに配置されている。そして、内側壁部142の排気口152には、換気扇58が設けられている。
【0107】
図6(B)に示す外側壁部144は、換気扇58の排気方向(一例としてX方向)から見た場合に、全体が換気扇58と重なっている。また、外側壁部144は、内側壁部142(
図7参照)とX方向に間隔をあけて配置されているため、換気扇58による排気を可能としている。
【0108】
<給気部>
図5に示す給気部134は、床板109に形成された第1給気部154と、床板107に形成された第2給気部156とを有する。
【0109】
(第1給気部)
第1給気部154は、床板109における室内機72に対するY方向の手前側に形成された給気口57で構成されている。給気口57には、蓋部材62が給気口57を開閉可能に設けられている。また、給気口57は、吹出口45A、45B、45C、45D、45Eから空調部54までの空気の流通経路における中央よりも空調部54側に配置され、室104内から床下空間部132(
図7参照)へ給気可能とされている。
【0110】
図7に示すように、平面視で、給気口57と排気口152とは、ほぼX方向に沿って並んでいる。ここで、平面視で、給気口57の中心となる位置と排気口152の中心となる位置とを結ぶ直線を仮想直線Gと称する。
【0111】
(第2給気部)
図5に示す第2給気部156は、給気口157で構成されている。給気口157は、一例として、床板107におけるY方向の手前側で且つX方向の他方側において、側壁122とX方向に隣合う場所に形成されている。給気口157には、蓋部材62が給気口157を開閉可能に設けられている。また、給気口157は、吹出口45Cから空調部54までの空気の流通経路における中央よりも空調部54側に配置され、室104内から床下空間部132(
図7参照)へ給気可能とされている。
【0112】
図7に示すように、給気口157は、一例として、平面視で、仮想直線G上からY方向の手前側に外れた場所に配置されている。床下空間部132では、給気口57から流入した空気が、仮想直線G上及び仮想直線Gの周辺部を流れて排気口152に到達される。また、床下空間部132では、給気口157から流入した空気が、仮想直線Gとは異なる経路で流、排気口152に到達される。このように、床下空間部132では、空気が仮想直線Gに沿った経路を流れるだけでなく、前壁部146に近い場所や後壁部148に近い場所を通る曲線上の経路を流れるようになっている。
【0113】
〔作用〕
次に、第2実施形態の床下換気構造130の作用について説明する。なお、建物100の各部については、
図5、
図6(A)、(B)及び
図7を参照する。
【0114】
床下換気構造130では、空調部54の供給動作によって、空気が吹出口45A、45B、45C、45D、45Eを介して室104内へ供給される。そして、室104内の空気は、空調部54の吸気動作によって吸気される。このように、空調部54から室104内へ供給された空気が空調部54へ戻る流れが形成されることで、室104内の空調が行われる。
【0115】
また、第1給気部154が、吹出口45A、45B、45C、45D、45Eから空調部54までの空気の流通経路に配置されている。さらに、第2給気部156が、吹出口45B、45Cから空調部54までの空気の流通経路に配置されている。このため、室104内から空調部54に向かう空気の一部が、第1給気部154及び第2給気部156を通って床下空間部132へ供給される。これにより、床下空間部132の換気が行われる。
【0116】
ここで、空調部54及び第1給気部154は、吹出口45A、45B、45C、45D、45Eから遠く離れた場所に設けられている。これにより、吹出口45A、45B、45C、45D、45Eから室104内へ供給された空気が、室104内を十分に流されないうちに第1給気部154から床下空間部132へ供給されてしまうことが抑制される。このため、第1給気部154を用いて床下空間部132の換気を行う場合に、室104内の空調効率が低下するのを抑制することができる。なお、本実施形態における空調効率は、吹出口45A、45B、45C、45D、45Eから室104内へ一定時間に供給された空気量に対する、収納室108周辺での温度変化量で定義されている。
【0117】
また、床下換気構造130では、空調部54及び第1給気部154が、側壁111Aに対する吹出口45E側とは反対側に設けられている。つまり、空調部54及び第1給気部154は、吹出口45Eから遠く離れた場所に設けられている。これにより、第1給気部154を用いて床下空間部132の換気を行う場合に、室104内の空調効率が低下するのを抑制することができる。
【0118】
さらに、床下換気構造130では、換気扇58が、空調部54から遠い内側壁部142に設けられている。これにより、第1給気部154から換気扇58までの空気が流れる経路の長さが長くなり、床下空間部132に空気が広がり易くなるので、床下空間部132の一部に空気が滞留するのを抑制することができる。
【0119】
加えて、床下換気構造130では、左壁部138が玄関16の一部を構成することで、内側壁部142が玄関16から離れた場所に配置されることになる。換言すると、換気扇58が玄関16から離れた場所に配置されることで、玄関16において、換気扇58の開口を介して床下空間部132が視認されなくなるので、玄関16の見た目を損なうことを抑制することができる。
【0120】
また、床下換気構造130では、床下空間部132において、第1給気部154から換気扇58へ向かう空気の流れと、第2給気部156から換気扇58へ向かう空気の流れとが生じる。これにより、第1給気部154のみを有する構成に比べて、床下空間部132において空気が流れる経路が増えるので、床下空間部132の一部に空気が滞留するのを抑制することができる。
【0121】
さらに、床下換気構造130では、換気扇58によって、床下空間部132から外側へ排気される。ここで、換気扇58を建物100の外側から見た場合に、外側壁部144によって換気扇58が隠れるので、建物100の見た目を損なうことを抑制するとともに、風雨等の外部からの影響を抑制し、設備の故障や、床下空間部132に雨水が入ることを防ぐことができる。
【0122】
加えて、床下換気構造130では、空調部54の動作開始時において、制御部60が蓋部材62を閉止位置に移動させる制御を行う。これにより、動作開始時に第1給気部154及び第2給気部156を介して床下空間部132に流れる空気の量が減る。換言すると、動作開始時に室104内を流れる空気の量が減ることが抑制されるので、室104内の空調効率の低下を抑制することができる。なお、空調部54の定常動作時には、給気口57及び給気口157が開放される。
【0123】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されない。
【0124】
床下換気構造50において、側壁33が設けられていなくてもよい。また、床下換気構造50において、換気扇58が設けられていなくてもよい。さらに、床下換気構造50において、前壁部64が玄関16の一部を構成していなくてもよい。加えて、床下換気構造50において、蓋部材62が設けられていなくてもよい。
【0125】
床下換気構造130において、側壁111Aが設けられていなくてもよい。また、床下換気構造130において、換気扇58が設けられていなくてもよい。さらに、床下換気構造130において、左壁部138が玄関16の一部を構成していなくてもよい。加えて、床下換気構造130において、第1給気部154と第2給気部156とが仮想直線G上に配置されていてもよい。
【0126】
また、床下換気構造130において、換気扇58の排気方向から見た場合に、外側壁部144の一部が換気扇58と重なる構成であってもよい。あるいは、換気扇58の排気方向から見た場合に、外側壁部144が換気扇58と重ならない構成であってもよい。つまり、ポーチ118が設けられていなくてもよい。さらに、床下換気構造130において、蓋部材62が設けられていなくてもよい。加えて、床下換気構造130において、第2給気部156に蓋部材62を設けて開閉させ、第1給気部154に蓋部材62を設けずに開放させたままとしてもよい。
【0127】
給気部56、第1給気部154、第2給気部156の数は、単数に限らず、複数であってもよい。また、給気部56、第1給気部154、第2給気部156にファンを設けて給気を促進させてもよい。吹出口45A、45B、45C、45D、45Eは、床板に形成されるものに限らず、床板に立設された側壁の一部に形成されていてもよい。排気部は、換気扇58のように1つに限らず、複数設けられていてもよい。
【0128】
湿度センサ69A、69Bに換えて、温度及び湿度を測定するセンサを設けてもよい。
【符号の説明】
【0129】
10 建物
14 基礎
16 玄関
22 室
33 側壁(壁体の一例)
45A 吹出口
45B 吹出口
45C 吹出口
50 床下換気構造
52 床下空間部
54 空調部(空調手段の一例)
56 給気部
58 換気扇(排気部の一例)
60 制御部(制御手段の一例)
62 蓋部材(開閉部材の一例)
64 前壁部(第1壁部の一例)
65 後壁部(第2壁部の一例)
100 建物
101 基礎
104 室
111A 側壁(壁体の一例)
130 床下換気構造
132 床下空間部
138 左壁部(第1壁部の一例)
142 内側壁部(第2壁部の一例)
144 外側壁部(第3壁部の一例)
154 第1給気部
156 第2給気部
G 仮想直線