(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】グリスフィルタ
(51)【国際特許分類】
B01D 45/08 20060101AFI20220613BHJP
F24F 7/06 20060101ALN20220613BHJP
【FI】
B01D45/08 Z
F24F7/06 101A
(21)【出願番号】P 2018051441
(22)【出願日】2018-03-19
【審査請求日】2021-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】390022666
【氏名又は名称】協立エアテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【氏名又は名称】南瀬 透
(72)【発明者】
【氏名】柿原 秀規
(72)【発明者】
【氏名】井川 直道
(72)【発明者】
【氏名】野口 昌孝
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03834135(US,A)
【文献】国際公開第2009/106804(WO,A2)
【文献】実開昭55-025195(JP,U)
【文献】特開昭49-104267(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0163216(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0023429(US,A1)
【文献】実開昭51-076868(JP,U)
【文献】特開昭51-011277(JP,A)
【文献】特開2004-108680(JP,A)
【文献】実開昭59-079213(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D45/00-46/54
F24F7/00-7/10
F24F13/08-13/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠状部の内周領域に樋形状をした複数のフィルタ板がそれぞれの凹面部を同方向に向けた状態で隙間を隔てて平行に配列されたフロントバッフル並びにバックバッフルを、
前記フロントバッフル、前記バックバッフルをそれぞれ構成する前記フィルタ板同士が互いに平行をなすとともに前記フィルタ板の凹面部の一部が互いに対向するように係脱可能に配置したグリスフィルタにおいて、
前記バックバッフルの前記フィルタ板の凹面部の幅方向の中心に、前記フロントバッフルに向かって突出した突状部を備え
、
前記フロントバッフルの枠状部と前記バックバッフルの枠状部とが重なり合う領域に前記バックバッフルの枠状部から前記フロントバッフルの枠状部を貫通して前記フロントバッフルの正面に突出する取っ手を備え、前記取っ手が前記バックバッフルの枠状部に収納可能であるグリスフィルタ。
【請求項2】
前記突状部の頂上部が前記フロントバッフルのフィルタ板の正面よりも前記バックバッフル寄りに位置する請求項1記載のグリスフィルタ。
【請求項3】
前記突状部の横断面形状が前記フィルタ板の凹面部の幅方向の中心線を挟んで鏡面対称をなしている請求項1または2記載のグリスフィルタ。
【請求項4】
前記突状部の横断面形状が、山形、鋭角山形、半円形、半楕円形、曲線楔形、半多角形若しくは平板形の何れか1以上を含むものである請求項1~3の何れかの項に記載のグリスフィルタ。
【請求項5】
前記取っ手が、コ字状をなす本体部と、その両端に形成されたフック部とを有し、前記バックバッフルの枠状部に開設された複数の開口部に前記取っ手のフック部側がそれぞれ進退可能に挿入された請求項
1~4の何れかの項に記載のグリスフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理中に発生する排気ガス中の油煙に含まれる油脂を捕集回収するため、調理用レンジの上方に設置された排気フード内の排気ガス吸入口に配置して使用されるグリスフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
厨房の排気フード内の排気ガス吸入口に配置されるグリスフィルタについては、従来、様々な構造、機能を有するものが提案されているが、本発明に関連するものとして、例えば、特許文献1に記載された「バッフル型グリスフィルター」などがある。
【0003】
前記「バッフル型グリスフィルター」においては、第1バッフルと第2バッフルとの間に略S字状に蛇行する油脂捕集路が形成され、この油脂捕集路において油煙の圧縮と膨張を繰り返し、圧縮過程により油煙の流速を増して油脂の粒子を高速でバッフル板に効率良く衝突させ、膨張過程により油脂の温度を下げて油脂の凝集を促進させ、脱脂効率を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された「バッフル型グリスフィルター」を使用することにより、ある程度、油脂除去率(脱脂効率)を高めることができるのであるが、油脂除去率の向上、圧力損失の低減及び騒音の軽減は、今後も要請され続ける重要な課題である。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、油煙中の油脂除去率が高く、圧力損失の低減、騒音の軽減を図ることができるグリスフィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るグリスフィルタは、
枠状部の内周領域に樋形状をした複数のフィルタ板がそれぞれの凹面部を同方向に向けた状態で隙間を隔てて平行に配列されたフロントバッフル並びにバックバッフルを、
前記フロントバッフル、前記バックバッフルをそれぞれ構成する前記フィルタ板同士が互いに平行をなすとともに前記フィルタ板の凹面部の一部が互いに対向するように係脱可能に配置したグリスフィルタにおいて、
前記バックバッフルの前記フィルタ板の凹面部の幅方向の中心に、前記フロントバッフルに向かって突出した突状部を備え、
前記フロントバッフルの枠状部と前記バックバッフルの枠状部とが重なり合う領域に前記バックバッフルの枠状部から前記フロントバッフルの枠状部を貫通して前記フロントバッフルの正面に突出する取っ手を備え、前記取っ手が前記バックバッフルの枠状部に収納可能であることを特徴とする。
【0008】
このような構成とすれば、フロントバッフルのフィルタ板の隙間からバックバッフルのフィルタ板の凹面部に向かって流入する排気ガスは突状部に接触した後、二つの方向に分かれ、流路に逆らうことなく、流速を上げながら、それぞれバックバッフルのフィルタ板の凹面部に沿って流動するので、フィルタ板との接触機会が増加し、油煙中の油脂除去率が高まる。また、排気ガスが流路に逆らわず流動するので、圧力損失が低下し、騒音も低減する。
【0009】
前記グリスフィルタにおいては、前記突状部の頂上部が前記フロントバッフルのフィルタ板の正面よりも前記バックバッフル寄りに位置することが望ましい。
【0010】
このような構成とすれば、グリスフィルタに進入した油煙が通動する流路が急激に縮小するので、油煙中の油脂除去効率が向上する。なお、突状部の頂上部がフロントバッフルの正面よりもバックバッフルから離れた位置にある場合(突状部の頂上部がフロントバッフルの正面から突出している場合)は、突状部により二分された油煙が、二分された流路内でフィルタ板面に接触する機会が減るので、フィルタ板面への付着による油脂除去率の向上に寄与しない。また、フィルタ板面への付着により油煙から除去された油脂はフィルタ板の突状部を伝わってバックバッフルから効率良く下部へ誘導されるが、頂上部がフロントバッフルのフィルタ板の正面よりも突出していると、誘導されずに頂上部から厨房室内に滴下するおそれがある。
【0011】
前記グリスフィルタにおいては、前記突状部の横断面形状が前記フィルタ板の凹面部の幅方向の中心線を挟んで鏡面対称をなしていることが望ましい。
【0012】
このような構成とすれば、突状部に接触した排気ガスは二つの方向に均等に分流して流動するので、排気ガスの偏った流入、流動が抑制され、油脂除去率の向上に有効である。
【0013】
前記グリスフィルタにおいては、前記突状部の横断面形状が、山形、鋭角山形、半円形、半楕円形、曲線楔形、半多角形若しくは平板形の何れか1以上を含むものとすることができる。
【0014】
このような構成とすれば、油煙が突状部に接触する機会が増えるので、油脂除去率の向上に有効である。
【0015】
前記グリスフィルタにおいては、前記フロントバッフルの枠状部と前記バックバッフルの枠状部とが重なり合う領域に前記バックバッフルの枠状部から前記フロントバッフルの枠状部を貫通して前記フロントバッフルの正面に突出する取っ手を備え、前記取っ手が前記バックバッフルの枠状部に収納可能である。
【0016】
このような構成とすれば、前記バックバッフルの枠状部に取っ手を収納することにより、当該枠状部から突出する部材を減らすことができるので、保管中、運搬中の省スペースを図ることができる。
【0017】
前記グリスフィルタにおいては、前記取っ手が、コ字状をなす本体部と、その両端に形成されたフック部とを有し、前記バックバッフルの枠状部に開設された複数の開口部に前記取っ手のフック部側がそれぞれ進退可能に挿入されることが望ましい。
【0018】
このような構成とすれば、従来のグリスフィルタの製造工程において実施されていた、取っ手をスポット溶接により枠状部に固定する工程を無くすことができるので、工数削減を図ることができる。なお、フック部の形状は限定しないので、コ字状部分の両端を外側に曲げるハット曲げ、あるいは、コ字状部分の両端を内側に曲げるC字曲げなどを採用することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、油煙中の油脂除去率が高く、圧力損失の低減、騒音の軽減を図ることができるグリスフィルタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態であるグリスフィルタを示す斜視図である。
【
図5】
図2中のA-A線における切断部端面図である。
【
図6】
図1に示すグリスフィルタを通過する排気ガスの流動状態を示す図である。
【
図7】
図1に示すグリスフィルタを通過する排気ガスの圧力分布を示す図である。
【
図8】従来のグリスフィルタを通過する排気ガスの流動状態を示す図である。
【
図9】従来のグリスフィルタを通過する排気ガスの圧力分布を示す図である。
【
図10】
図1に示すグリスフィルタの分解斜視図である。
【
図14】
図10中に示すバックバッフルの一部省略背面図である。
【
図17】バックバッフルに取っ手を装着する工程を示す一部省略斜視図である。
【
図18】バックバッフルのフィルタ板に関するその他の実施形態を示す一部省略切断部端面図である。
【
図19】バックバッフルのフィルタ板に関するその他の実施形態を示す一部省略切断部端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、
図1~
図19に基づいて、本発明の実施形態であるグリスフィルタ100並びにバックバッフルのフィルタ板に関するその他の実施形態などについて説明する。
【0022】
図1~
図3に示すグリスフィルタ100は,
図10に示すように、正面視形状が四角形をしたフロントバッフル10とバックバッフル50とを互いに重なり合うような状態で係脱可能に接合することによって形成されている。
【0023】
図10~
図13に示すように、フロントバッフル10は、正面視形状が四角形の額縁状をした枠状部11と、樋形状をした複数のフィルタ板12と、を備えている。複数のフィルタ板12は凹面部12bを同方向(背面側)に向けた状態で枠状部11の内周領域に等しい隙間S1を隔てて互いに平行をなすように配列されている。
【0024】
枠状部11の上縁部11b及び下縁部11cは断面L字状をなし、それぞれの平板部11pが枠状部11の正面11a側を向いている。上縁部11b及び下縁部11cの角縁部11dに沿って複数の貫通孔11eが等間隔に開設されている。また、上縁部11bの上面部11qの両側寄りの部分及び下縁部11cの下面部11r(
図13参照)の両側寄りの部分にもそれぞれ複数の貫通孔11fが開設されている。さらに、枠状部11の左右の側縁部11s,11sの正面の平板部11t,11tの高さ方向の中央部分に、
図10中に示すバックバッフル50の左右一対の取っ手55,55がそれぞれ挿通可能な矩形状の開口部11u,11uが開設されている。
【0025】
図13に示すように、フロントバッフル10を形成する複数のフィルタ板12の横断面はそれぞれ末広がりの半八角形状であり、正面部12aは枠状部11の正面11aと略同一平面をなしている。フィルタ板12の正面部12aの両側からそれぞれ背面側に向かって拡幅するように隔壁部12c,12cが延設され、隔壁部12c,12cの背面側に隔壁部12c,12c同士が成す角度より小さい角度で拡幅するように突縁部12d,12dが延設されている。フィルタ板12の横断面はフィルタ板12の凹面部12bの幅方向12wの中心線12wcを挟んで鏡面対称をなしている。なお、フィルタ板12の横断面形状は末広がりの半八角形状に限定しないので、半円形状、円弧形状などの曲線形状とすることもできる。
【0026】
図10,
図14~
図16に示すように、バックバッフル50は、正面視形状が四角形をした額縁状の枠状部51と、樋形状をした複数のフィルタ板52と、左右一対の取っ手55,55と、を備えている。複数のフィルタ板52は凹面部52bを同方向(正面側)に向けた状態で枠状部51の内周領域に等しい隙間S2を隔てて互いに平行をなすように配列されている。
【0027】
枠状部51の上縁部51b及び下縁部51cは断面L字状をなし、それぞれの平板部51pが枠状部51の背面51d側を向いている。上縁部51bの上面部51q(
図10参照)の両側寄りの部分及び下縁部51cの下面部51r(
図10参照)の両側寄りの部分にそれぞれ複数の貫通孔51fが開設されている。さらに、枠状部51の左右の側縁部51s,51sの正面の平板部51t,51tの高さ方向の中央部分にそれぞれ取っ手55,55が取り付けられている。
【0028】
図16に示すように、バックバッフル50を形成するフィルタ板52は、正面方向に突出した突状部52aを有する平板状の正面部52cと、正面部52cの両側からそれぞれ左右に延設された正面部52cと、正面部52cの両側から正面側に向かって拡幅するように延設された隔壁部52d,52dと、隔壁部52d,52dの先端側からそれぞれ正面側に向かって縮幅するように延設された突縁部52e,52eと、を備えている。
【0029】
突状部52aは、フィルタ板52の凹面部52bの幅方向52wの中心線52wcに沿って形成され、フロントバッフル10に向かって突出している。突状部52aの横断面形状は山形であり、その頂上部52fは直角をなしている。突状部52aの横断面形状はフィルタ板52の凹面部52bの幅方向52wの中心線52wcを挟んで鏡面対称をなしている。
【0030】
図10に示すように、フロントバッフル10の背面側と、バックバッフル50の正面側と、を対向させて重ね合わせると、フロントバッフル10の枠状部11の内側にバックバッフル50の枠状部51が内接した状態で両者が係脱可能に接合され、
図1に示すグリスフィルタ100が形成される。
【0031】
フロントバッフル10の枠状部11の左右の平板部11t,11tと、バックバッフル50の枠状部51の左右の平板部51t,51tとが重なり合う領域にバックバッフル50の枠状部51の平板部51tからフロントバッフル10の枠状部11の平板部11tを貫通してフロントバッフル10の正面側に突出する取っ手55を備えている。
【0032】
フロントバッフル10とバックバッフル50とを接合する過程において、バックバッフル50の左右の平板部51t,51tから突出した取っ手55,55のコ字状の本体部55a,55aが、フロントバッフル10の左右の開口部11u,11uを背面側から正面側に向かって貫通し、接合後は、
図1に示すように、フロントバッフル10の左右の平板部11t,11tから突出した状態となる。
【0033】
フロントバッフル10を構成する複数のフィルタ板12の配置間隔と、バックバッフル50を構成する複数のフィルタ板52の配置間隔とは同じであるが、配置位相がフィルタ板1枚分偏移しているので、
図1に示すように、フロントバッフル10とバックバッフル50とを接合すると、
図4,
図5に示すように、フロントバッフル10のフィルタ板12と、バックバッフル50のバッフル板52とは互いに平行をなすとともに、フィルタ板12の凹面部12bの一部とフィルタ板52の凹面部52bの一部とが互いに対向した状態となる。
【0034】
具体的には、フロントバッフル10とバックバッフル50とを接合すると、
図5に示すように、フロントバッフル10のフィルタ板12の隙間S1の幅方向の中央部分と、バックバッフル50のフィルタ板52の突状部52aの頂上部52fとが対向した状態となり、バックバッフル50のフィルタ板52の隙間S2と、フロントバッフル10の正面部12aの凹面部12b側とが対向した状態となる。また、
図5に示すように、突状部52aの頂上部52fはフロントバッフル10のフィルタ板12の正面部12aよりもバックバッフル50寄り(背面側)に位置している。
【0035】
次に、
図4~
図7を参照して、
図1~
図3に示すグリスフィルタ100の機能、効果などについて説明する。グリスフィルタ100は、加熱調理中に発生する排気ガス中の油煙に含まれる油脂を捕集回収するため、調理用レンジの上方に設置された排気フード内の排気ガス吸入口に配置して使用される。加熱調理中に発生する排気ガスは、
図1,
図4,
図6,
図7中に示すように、矢印Gで示す方向に沿ってグリスフィルタ100のフロントバッフル10側から流入し、グリスフィルタ100内を流動して、バックバッフル50側から流出する。
【0036】
具体的には、
図4~
図6に示すように、矢印Gに沿って流動してきた排気ガスはフロントバッフル10のフィルタ板12の隙間S1に流れ込み、バックバッフル50のフィルタ板52の突状部52aの頂上部52fに接触した後、二つの方向に分かれ、フィルタ板12とフィルタ板52との対向部分の隙間S3を通過して、フロントバッフル10の凹面部12b側へ流れ込み、反対方向から流れ込む排気ガスと接触、合流することによって互いの流動方向が変化し、バックバッフル50のフィルタ板52の隙間S2を通過して流出する。
【0037】
図6に示すように、バックバッフル50のフィルタ板52の突状部52aの頂上部52fに接触して二方向に分流した排気ガスは、突状部52aの斜面部分、正面部12c、隔壁部52d及び突縁部52eに、順次、連続的に接触し、流速を上げながら流動するので、フィルタ板52の凹面部52bとの接触機会が増加し、排気ガスに含まれる油煙中の油脂除去率を高めることができる。
【0038】
即ち、
図6に示すように、グリスフィルタ100のフロントバッフル10のフィルタ板12の隙間S1からバックバッフル50のフィルタ板52の凹面部52bに向かって流入する排気ガスは突状部52aの頂上部52fに接触することによって二つの方向に分かれ、流路に逆らうことなく、それぞれフィルタ板52の凹面部52bの広範囲に沿って流動するので、フィルタ板52との接触機会が多いのがわかる。
【0039】
また、フロントバッフル10のフィルタ板12の隙間S1からバックバッフル50のフィルタ板52の凹面部52bに向かって流入した排気ガスは突状部52aの頂上部52fに接触した後、二つの方向に分かれ、流路に逆らうことなく、それぞれバックバッフル50のフィルタ板52の凹面部52bに沿って流動する。このため、
図7に示すように、圧力の高い領域は、突状部52aの頂上部52fの正面付近(符号X1で示す領域)及び突状部52fの裾野付近(符号X2で示す領域)の比較的狭い範囲に限られることとなり、その結果、圧力損失が低下し、騒音も低減する。なお、
図7中に記載されている数値の単位はPaである。
【0040】
次に、
図8,
図9を参照し、従来のグリスフィルタにおける排気ガスの流動状態及び圧力分布状態について説明する。
図8は従来のグリスフィルタを通過する排気ガスの流動状態を示す図であり、
図9は従来のグリスフィルタを通過する排気ガスの圧力分布状態を示す図である。なお、
図9中に記載されている数値の単位はPaである。
【0041】
図8に示すように、従来のグリスフィルタにおいては、フロントバッフルのフィルタ板62の隙間S1からバックバッフルのフィルタ板72の凹面部72bに向かって流入した排気ガスは平板状の正面部72aよりも正面側に離れた部分において、二つの方向に分かれて流動しているため、フィルタ板72の正面部72aとの接触機会が少なく、排気ガスに含まれる油煙中の油脂除去率が低いことが分かる。
【0042】
また、従来のグリスフィルタにおいては、フロントバッフルのフィルタ板62の隙間S1からバックバッフルのフィルタ板72の凹面部72bに向かって流入した排気ガスは平板状の正面部72aよりも正面側に離れた部分において二つの方向に分かれている。このため、
図9に示すように、正面部72aの正面付近(符号Yで示す領域)の比較的広い範囲(
図7中に示す符号X1,X2で示す領域より広い領域)において圧力が高くなっており、本実施形態のグリスフィルタ100に比べ、従来のグリスフィルタは、圧力損失が高く、騒音も大である。
【0043】
次に、
図17に基づいて、バックバッフル50の取っ手55について説明する。
図17(a)に示すように、取っ手55は、コ字状の本体部55aと、その両端部分に形成されたフック部55b,55bとを備えている。フック部55b,55bは本体部55aの両端部分からコ字の外側に直角に曲がった形状をなしており、ハット曲げによって形成されている。
【0044】
また、バックバッフル50の枠状部51の側縁部51sの平板部51t及び側面部51gに跨る領域に、取っ手55の本体部55aとフック部55bの境界部分及びフック部55bが挿通可能な一対のスリット状の開口部56,56が開設されている。
【0045】
図17(a)に示すように、取っ手55のフック部55b,55b寄りの部分を、側縁部51sの側面部51gからそれぞれ開口部56,56に近づけ、
図17(b)に示すように、取っ手55のフック部55b,55b寄りの部分をそれぞれ開口部56,56に挿入すると、取っ手55が側縁部51sに装着される。
【0046】
この後、取っ手55の本体部55aを、側縁部51sの平板部51tに向かって押圧すると、
図17(c)に示すように、取っ手55が側縁部51s内に収納される。また、収納された取っ手55の本体部55aを引っ張れば、取っ手55は
図17(b)に示す状態に復帰する。
【0047】
図17(c)に示すように、取っ手55をバックバッフル50の枠状部51の側縁部51に収納すれば、枠状部51から突出する部材を減らすことができるので、保管中、運搬中の省スペースを図ることができる。
【0048】
また、取っ手55は、コ字状をなす本体部55aと、その両端のフック部55b,55bを有し、バックバッフル50の枠状部51に開設された複数の開口部56,56に取っ手55のフック部55a,55a側がそれぞれ進退可能に挿入されている。
【0049】
従って、従来のグリスフィルタの製造工程において実施されていた、取っ手をスポット溶接により枠状部に固定する工程が不要となり、工数削減を図ることができる。なお、取っ手55のフック部55b,55bの形状は限定しないので、コ字状部分の両端を外側に曲げるハット曲げのほかに、コ字状部分の両端を内側に曲げるC字曲げなどを採用することもできる。
【0050】
次に、
図18,
図19に基づいて、バックバッフルのフィルタ板に関するその他の実施形態について説明する。なお、
図18,
図19に示す、フロントバッフルのフィルタ板12は
図5に示すフィルタ板12と同じものである。
【0051】
図18(a)に示すフィルタ板1は、
図5に示すフィルタ板52の突状部52aと同じ位置に、正面方向に突出した突状部1aを有している。突状部1aの横断面形状は山形であるが、頂上部1bの角度がフィルタ板52の突状部52aより小さい鋭角山形を成している。また、突状部1aの頂上部1bは、フィルタ板12の隔壁部12cと突縁部12dとの境界より正面寄りに位置している。
【0052】
図18(b)に示すフィルタ板2は、
図5に示すフィルタ板52の突状部52aと同じ位置に、正面方向に突出した突状部2aを有している。突状部2aの横断面形状は半六角形であり、その頂上部2bは、フィルタ板12の隔壁部12cと突縁部12dとの境界より正面寄りに位置している。
【0053】
図18(c)に示すフィルタ板3は、
図5に示すフィルタ板52の突状部52aと同じ位置に、正面方向に突出した突状部3aを有している。突状部3aの横断面形状は半円形であり、その頂上部3bは、フィルタ板12の突縁部12dの側縁部分よりも背面寄りに位置している。
【0054】
図19(a)に示すフィルタ板4は、
図5に示すフィルタ板52の突状部52aと同じ位置に、正面方向に突出した突状部4aを有している。突状部4aの横断面形状は曲線楔形であり、その頂上部4bは、フィルタ板12の隔壁部12cと突縁部12dの境界部分よりも正面寄りに位置している。また、突状部4aの裾野部4c,4cはそれぞれ滑らかな凹曲面を成している。
【0055】
図19(b)に示すフィルタ板5は、
図5に示すフィルタ板52の突状部52aと同じ位置に、正面方向に突出した突状部5aを有している。突状部5aの横断面形状は平板形であり、その頂上部5bは、フィルタ板12の隔壁部12cと突縁部12dの境界部分よりも正面寄りに位置している。
【0056】
図19(c)に示すフィルタ板6は、
図5に示すフィルタ板52の突状部52aと同じ位置に、正面方向に突出した突状部6aを有している。突状部6aは、フィルタ板6の正面部6eから正面方向へ突出する山形部6bと、山形部6bの頂上部6dから正面方向に突出する平板形部6cとを備えている。突状部6aの頂上部6fは、フィルタ板12の隔壁部12cと突縁部12dの境界部分よりも正面寄りに位置している。
【0057】
図18(a)~(c)に示す突状部1a,2a,3a並びに
図19(a)~(c)に示す突状部4a,5a,6aを備えることにより、油煙が突状部1a,2a,3a,4a,5a,6aに接触する機会が増えるので、油脂除去率の向上に有効である。
【0058】
なお、
図1~
図17に基づいて説明したグリスフィルタ100及び
図18,
図19に基づいて説明したフィルタ板1,2,3,4,5,6は、本発明のグリスフィルタ及びそれを構成するフィルタ板を例示するものであり、本発明のグリスフィルタ及びこれを構成するフィルタ板は前述したグリスフィルタ100及びフィルタ板1,2,3,4,5,6に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明に係るグリスフィルタは、飲食店やホテルの厨房などの排気設備の構成部材として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1,2,3,4,5,6 フィルタ板
1a,2a,3a,4a,5a,6a,52a 突状部
1b,2b,3b,4b,5b,6d,6f,52f 頂上部
4c 裾野部
6b 山形部
6c 平板形部
6e,12a,52c,72a 正面部
10 フロントバッフル
11,51 枠状部
11a 正面
11b,51b 上縁部
11c,51c 下縁部
11d 角縁部
11e,11f,51f 貫通孔
11p,11t,51p 平板部
11q,51q 上面部
11r,51r 下面部
11s,51s 側縁部
11t,51t 平板部
11u,56 開口部
12,52 フィルタ板
12b,52b 凹面部
12c,52d 隔壁部
12d,52e 突縁部
12w,52w 幅方向
12wc,52wc 中心線
50 バックバッフル
51d 背面
51g 側面部
55 取っ手
55a 本体部
55b フック部
S1,S2,S3 隙間