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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】鋼製人工魚礁
(51)【国際特許分類】
   A01K 61/73 20170101AFI20220613BHJP
【FI】
A01K61/73
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018073625
(22)【出願日】2018-04-06
(65)【公開番号】P2019180277
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000000446
【氏名又は名称】岡部株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094042
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 知
(72)【発明者】
【氏名】高橋 延幸
(72)【発明者】
【氏名】金和 基葉子
(72)【発明者】
【氏名】北野 潔
(72)【発明者】
【氏名】横山 貴司
(72)【発明者】
【氏名】志賀 隆顕
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-125692(JP,A)
【文献】特開2000-125693(JP,A)
【文献】特開2005-160344(JP,A)
【文献】実開昭59-147467(JP,U)
【文献】特開2005-176679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 61/73
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向の縦材、横方向の横材及び斜め方向の斜材を含む鋼製骨組み材から組み立てられる三次元立体格子状の骨組み構造で構成される鋼製人工魚礁であって、
少なくともいずれかの上記骨組み材は、その長さ方向と直交する断面に現れるいずれかの端部が該骨組み材の長さ方向に延びる突条縁辺を構成し、
該突条縁辺にはこれに沿って、上記端部から上記骨組み材外方へ向けて迫り出して、該突条縁辺を釣り針から遮蔽するための軸状の遮蔽部材が接合され、
上記端部周りに現れる上記遮蔽部材は、軸周りの形態釣り針の掛止を妨げる円形である、丸鋼または円形鋼管であることを特徴とする鋼製人工魚礁。
【請求項2】
前記遮蔽部材は、前記骨組み構造の外面に位置する前記骨組み材の前記突条縁辺に接合されることを特徴とする請求項1に記載の鋼製人工魚礁。
【請求項3】
前記骨組み材は、前記骨組み構造の外面を規定する平面部を有し、前記遮蔽部材は、上記骨組み材の上記平面部よりも上記骨組み構造の内方へ寄せた位置に設けられることを特徴とする請求項2に記載の鋼製人工魚礁。
【請求項4】
前記骨組み材は一対の前記端部を有し、前記遮蔽部材は、これら一対の端部が構成する一対の前記突条縁辺にそれぞれ接合されることを特徴とする請求項1~3いずれかの項に記載の鋼製人工魚礁。
【請求項5】
前記骨組み構造には、部分的に鋼製板材が張られ、該板材のいずれかの縁辺にはこれに沿って、該縁辺から該板材外方へ向けて迫り出して、該縁辺を釣り針から遮蔽するための軸状の第2の遮蔽部材が接合され、
上記縁辺周りに現れる上記第2の遮蔽部材は、軸周りの形態釣り針の掛止を妨げる円形である、丸鋼または円形鋼管であることを特徴とする請求項1~4いずれかの項に記載の鋼製人工魚礁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨組み構造を構成する縦・横・斜めの骨組み材に漁具が引っ掛かることを適切かつ確実に妨げることが可能であると共に、構造がきわめて簡単で、市場に多量に流通されている安価な材料を用いて容易に製作することが可能な鋼製人工魚礁に関する。
【背景技術】
【0002】
角形鋼管や山形鋼(アングル材)などの骨組み材を溶接接合するなどして、三次元立体格子状の骨組み構造に組み立てた鋼製人工魚礁が知られている。
【0003】
人工魚礁は、海底に沈設され、渦流効果や逃避効果、付設される鋼製板材等による陰影効果などが得られることにより、稚魚や底魚等が当該人工魚礁の内部や周辺に蝟集し、そしてまた、それら稚魚等を餌とする中・大型魚を集めることができる。人工魚礁は、例えば、各地域の漁業協同組合や公共団体が漁場の造成を目的として、海底に設置される。
【0004】
人工魚礁に蝟集した中・大型魚を漁獲するときには、網や釣り具(釣り針)等の漁具が用いられる。これら網や釣り具等の漁具は、潮流に流されるなどして人工魚礁に近づき、当該人工魚礁に引っ掛かってしまって漁が妨げられたり、漁具自体が破損してしまうおそれがあった。
【0005】
この種の課題を解決可能な技術として、特許文献1が知られている。特許文献1の「鋼製魚礁」は、漁具の引っ掛かりを防止し、漁具の損傷を少なくして漁獲能率の低下を防ぎ、且つ安心して漁を行い得る鋼製魚礁を提供することを課題とし、鋼材を縦横斜めに設けて構造された鋼製魚礁において、この魚礁の少なくとも外周部に設けられている鋼板が、水平に設けられる鋼板については魚礁の外周側に該当する縁部分が上向きに曲げられ、傾斜して設けられる鋼板については下側の縁部分が傾斜角度に応じて上又は下向きに曲げられ、垂直に設けられる鋼板については下側の縁部分が魚礁の内部方向に曲げられてなっている。
【0006】
特許文献1では要するに、骨組み構造の鋼製人工魚礁に設けられる鋼板に関し、それらの縁部分を折り曲げることで、漁具の引っ掛かりを防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2000-125693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の鋼製魚礁は、鋼材と鋼板から構成されていて、折り曲げることによって鋼板に対する漁具の引っ掛かり防止は期待できるものの、形鋼からなる鋼材については何らの対策もなされてはおらず、依然として、形鋼に漁具が引っ掛かるおそれがあって、鋼製人工魚礁としては、さらに改善の余地があると考えられる。
【0009】
仮に、形鋼の向きを、潮流を考慮し、漁具が引っ掛かり難い向きに定めて、鋼製魚礁を組み立てることが考えられる。しかしながら、潮流は短時間のうちに時々刻々変化し、また、魚などの外部要因によって、浮遊する漁具が様々な向きに動くことから、形鋼の向きを定めたとしても、漁具の引っ掛かりを適切かつ確実に防ぐことができるとは言えなかった。
【0010】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、骨組み構造を構成する縦・横・斜めの骨組み材に漁具が引っ掛かることを適切かつ確実に妨げることが可能であると共に、構造がきわめて簡単で、市場に多量に流通されている安価な材料を用いて容易に製作することが可能な鋼製人工魚礁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかる鋼製人工魚礁は、縦方向の縦材、横方向の横材及び斜め方向の斜材を含む鋼製骨組み材から組み立てられる三次元立体格子状の骨組み構造で構成される鋼製人工魚礁であって、少なくともいずれかの上記骨組み材は、その長さ方向と直交する断面に現れるいずれかの端部が該骨組み材の長さ方向に延びる突条縁辺を構成し、該突条縁辺にはこれに沿って、上記端部から上記骨組み材外方へ向けて迫り出して、該突条縁辺を釣り針から遮蔽するための軸状の遮蔽部材が接合され、上記端部周りに現れる上記遮蔽部材は、軸周りの形態釣り針の掛止を妨げる円形である、丸鋼または円形鋼管であることを特徴とする。
【0012】
前記遮蔽部材は、前記骨組み構造の外面に位置する前記骨組み材の前記突条縁辺に接合されることを特徴とする。
【0013】
前記骨組み材は、前記骨組み構造の外面を規定する平面部を有し、前記遮蔽部材は、上記骨組み材の上記平面部よりも上記骨組み構造の内方へ寄せた位置に設けられることを特徴とする。
【0014】
前記骨組み材は一対の前記端部を有し、前記遮蔽部材は、これら一対の端部が構成する一対の前記突条縁辺にそれぞれ接合されることを特徴とする。
【0017】
前記骨組み構造には、部分的に鋼製板材が張られ、該板材のいずれかの縁辺にはこれに沿って、該縁辺から該板材外方へ向けて迫り出して、該縁辺を釣り針から遮蔽するための軸状の第2の遮蔽部材が接合され、上記縁辺周りに現れる上記第2の遮蔽部材は、軸周りの形態釣り針の掛止を妨げる円形である、丸鋼または円形鋼管であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明にかかる鋼製人工魚礁にあっては、骨組み構造を構成する縦・横・斜めの骨組み材に漁具が引っ掛かることを適切かつ確実に妨げることができると共に、構造がきわめて簡単で、市場に多量に流通されている安価な材料を用いて容易に製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る鋼製人工魚礁の好適な一実施形態を説明する説明図であって、図1(A)は、鋼製人工魚礁の全体斜視図、図1(B)は、鋼製人工魚礁を構成する格子状ユニットの一例を示す斜視図である。
図2図1に示した鋼製人工魚礁を構成する骨組み材の長さ方向と直交する断面であって、遮蔽部材を接合して設けた様子を示す説明図である。
図3】釣り針の一例を示す図である。
図4図1に示した鋼製人工魚礁の鋼製骨組み材及び鋼製板材それぞれに遮蔽部材を接合した様子を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明にかかる鋼製人工魚礁の好適な一実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。図1には、本実施形態に係る鋼製人工魚礁の構成を説明する説明図が示されている。図1(A)は、鋼製人工魚礁の全体斜視図であり、図1(B)は、鋼製人工魚礁を構成する格子状ユニットの一例を示す斜視図である。
【0021】
鋼製人工魚礁1は、工場等で製作された複数の格子状ユニット2を港湾等のヤードで接合することによって組み立てられる。組み立てられた鋼製人工魚礁1は、台船に搭載されて設置海域へ運ばれ、台船のクレーンによって海底に沈設される。
【0022】
鋼製人工魚礁1の組立要素である各格子状ユニット2は、細長い軸状の鋼製骨組み材3,4,5から三次元立体格子状の骨組み構造に組み立てられる。図示例では、格子状ユニット2は、四角柱状のものが示されているが、その他の形態であってもよいことはもちろんである。
【0023】
鋼製人工魚礁1は、上下左右に配列されるこれら格子状ユニット2の隣接するもの同士が互いに接合されることにより、骨組み材3,4,5からなる三次元立体格子状の骨組み構造に構成される。図示例の鋼製人工魚礁1は、屋根面部6を有する平面方形状の建屋形態の骨組み構造に組み立てられている。また図示例では、鋼製人工魚礁1の四隅に配置される格子状ユニット2に、その内部に組み込んで、増殖機能を目的としたFRP製や鋼製の蛇籠7が設けられている。
【0024】
格子状ユニット2、そしてまた鋼製人工魚礁1を構成する鋼製骨組み材3,4,5には、上下縦方向の縦材3、左右横方向の横材4、上下斜め方向や左右斜め方向の斜材5が用いられる。鋼製人工魚礁1において、縦材3は柱、横材4は梁、斜材5は筋交いとしての役割を果たす。
【0025】
鋼製人工魚礁1を構成するこれら骨組み材3,4,5としては、従来周知のように、市場に多量に流通されている安価な材料、例えば形鋼や鋼管が用いられる。形鋼や鋼管は、帯状や板状の平鋼に比し、高い断面性能が得られる。特に、形鋼は廉価で、鋼製人工魚礁1の材料費を低減でき、また、溶接接合による組立性が、鋼管に比し、良好である点で好ましい。
【0026】
本実施形態では、図2に示すように、使用する形鋼の例として、山形鋼(アングル材)が例示されている。鋼製人工魚礁1に用いる形鋼としては、山形鋼に限らず、溝形鋼(断面コ字状のチャンネル材)など、どのようなものであってもよい。
【0027】
さらに、形鋼や鋼管の用い方として、縦材3に鋼管を用い、横材4及び斜材5に形鋼を用いたり、あるいは、縦材3及び横材4に鋼管を用い、斜材5だけに形鋼を用いたり、または、縦材3、横材4及び斜材5のすべてに形鋼を用いてもよい。少なくともいずれかの骨組み材3,4,5に形鋼を用いることで、材料費の低減と組立性の容易化が確保される。
【0028】
細長い軸状のいずれかの鋼製骨組み材3,4,5に形鋼を用いることで、当該骨組み材3,4,5の長さ方向と直交する断面には、図2に示すように、当該断面の材端をなす端部8が現れる。断面の材端をなす端部8は、図2に示した山形鋼であれば、1つの折曲部9(これは材央の端部と考えても良い)を挟んで2箇所に現れる。溝形鋼であれば、図示しないけれども、同様の端部8が、2つの折曲部9を挟んで、2箇所に現れる。
【0029】
この断面に現れる材端の端部8を骨組み材3,4,5の長さ方向に見ると、図4(A)~(C)を見ることで理解されるように、当該端部8は、骨組み材3,4,5の長さ方向に延びる突条形態の真っ直ぐな縁辺10(以下、突条縁辺と称する)を構成する。図4(A)は縦材3、図4(B)は横材4、図4(C)は斜材5の要部拡大斜視図である。すなわち、骨組み材3,4,5の突条縁辺10は、当該骨組み材3,4,5外方へ突出する厚さの薄い突起が骨組み材3,4,5の長さ方向に連続する形態を呈する。このような突条縁辺10には、釣り針Rが引っ掛かりやすく、上述した課題が生じることになる。
【0030】
図3には、一般的な釣り針Rの形状が示されている。釣り針Rは、当該釣り針Rを構成する線材の材端にカエシr1を有する針先r2が形成され、この針先r2から順次、先曲げr3、胴曲げr4の曲げ加工部位を経て、軸(胴)r5に至り、この軸r5から針先r2に亘る湾曲部の内方がフトコロr6とされ、また、軸r5の先は、チモトr7の折り曲げ加工部位で折曲形成されている。
【0031】
突条縁辺10には図2に示すように、これに沿って骨組み材3,4,5の長さ方向に、遮蔽部材11が溶接接合される。遮蔽部材11は、長さ方向に長い軸状に形成される。遮蔽部材11は、厚さの薄い突起の連続として骨組み材3,4,5外方へ突出する突条縁辺10を釣り針Rから遮蔽する、言い換えれば、隠すために設けられ、これにより、突条縁辺10への釣り針Rの引っ掛かりを忌避するようになっている。
【0032】
遮蔽部材11が突条縁辺10を「遮蔽する」あるいは「隠す」とは、遮蔽部材11を突条縁辺10に接合することで、骨組み材3,4,5の長さ方向と直交する断面に現れる端部8が、釣り針Rの掛からない形態に変更されることを言う。遮蔽部材11は、突条縁辺10を遮蔽する機能を果たすために、突条縁辺10に、上記端部8から骨組み材3,4,5外方へ向けて迫り出して設けられる。
【0033】
「迫り出す」とは、突条縁辺10が現れる骨組み材3,4,4の端部8の形態が隠され、変更されれば、その迫り出す程度(量・寸法)は問われない(図2中、位置をずらして表示している点線Xを参照)。これにより、厚さの薄い突起が連続する形態を呈する突条縁辺10の形態が、釣り針Rの掛からない形態に変更される。
【0034】
突条縁辺10に接合された遮蔽部材11については、骨組み材3,4,5の長さ方向と直交する断面で、骨組み材3,4,5の端部8周りに現れる当該遮蔽部材11の軸周りの形態が、釣り針Rの掛止が不能な、釣り針Rが掛からないものとされる。
【0035】
釣り針Rが掛からない軸周りの形態とは、遮蔽部材11が釣り針Rのフトコロr6に入り込まない大きさを有することをいう。あるいは、釣り針Rが掛からない軸周りの形態とは、遮蔽部材11に、釣り針Rが引っ掛からない一連に連続した滑らかな面(湾曲面、平坦面)を備えることをいう。
【0036】
また、滑らかな面同士が突角部を介して連続している場合でも、当該突角部が、釣り針Rの掛からない大きな鈍角であれば、そのような遮蔽部材11であっても良い。さらに、釣り針Rが掛からない軸周りの形態とは、上記大きさ及び上記滑らかな面の双方を備えていてもよい。
【0037】
遮蔽部材11は、その軸周りの形態が鋼製人工魚礁1の設置される海域で使用される釣り針Rに対し、大きさ及び/または滑らかな面の条件を満たすものが選定される。本実施形態にあっては、遮蔽部材11として、軸周りの形態が角部を有しない円形であって、釣り針Rのフトコロr6に入り込まない、当該フトコロr6よりも大きな外径寸法の丸鋼が示されている。軸周りの形態が角部を有しない円形のものとしては、円形鋼管であってもよい。
【0038】
丸鋼は、市場に大量に流通し、サイズも様々であって、そしてまた、安価で容易に入手可能であることから、最適に用いることができる。また、丸鋼や円形鋼管であれば、図2に示すように、端部8周りのどの方向からの釣り針Rに対しても、引っ掛かりを妨げることができる。また、丸鋼や円形鋼管は、潮流に対する抵抗が小さい点でも優れる。
【0039】
しかしながら、遮蔽部材11としては、骨組み材3,4,5の端部8周りに現れる当該遮蔽部材11の軸周りの形態が、釣り針Rの掛止が不能であれば、断面楕円形や断面半円形、さらには多角形断面であってもよい。
【0040】
遮蔽部材11はその全長に亘り、骨組み材3,4,5の突条縁辺10に対して、隅肉溶接wによって溶接接合される。隅肉溶接wは、端部8の外形形状と遮蔽部材11の外形形状の相違に起因して生じる隙間があっても、釣り針Rが掛からないように、連続隅肉溶接wにより当該隙間を埋めかつ端部8と遮蔽部材11との間にできる限り滑らかな面を形成する。
【0041】
図4(A)~(C)には、鋼製人工魚礁1を構成する骨組み構造に用いられる骨組み材の縦材3、横材4及び斜材5それぞれについて、それらが山形鋼である場合の遮蔽部材11の取付状態が示されている。山形鋼は、1つの折曲部9を挟んで上記端部8を一対2箇所に有していて、遮蔽部材11は、材端のこれら一対で2つの端部8それぞれに位置させて、これらによる突条縁辺10に沿って接合される。
【0042】
釣り針Rは、骨組み構造でなる鋼製人工魚礁1の最も外側に位置されてその外面を形成する骨組み材3,4,5に掛かりやすいことから、遮蔽部材11は、骨組み構造の当該外面に位置する骨組み材3,4,5の突条縁辺10に接合される。
【0043】
詳細には、鋼製人工魚礁1は、骨組み構造であるとは言え、その周囲で潮流が円滑に流れるように、最も外側の骨組み材3,4,5は、当該骨組み構造の外面を規定する平面部12を有する。言い換えれば、最も外側の骨組み材3,4,5は、その平面部12が骨組み構造(鋼製人工魚礁1)の外面を規定するように向けて位置付けられる。
【0044】
山形鋼を示している図4(A)~(C)では、折曲部9を形成する2つの平坦部13,14のうちのいずれか一方の平坦部13の平面部12が、骨組み構造の外面に位置付けられ、他方の平坦部14が骨組み構造の外面より奥に位置付けられる。遮蔽部材11は、潮流を円滑に流しその妨げとならないように、平面部12よりも骨組み構造の内方に寄せた位置に設けられる(図2参照)。
【0045】
鋼製人工魚礁1には、図1に示したように、屋根面部6に、その外面に沿って、蝟集効果を高める陰影を作り出すための鋼製板材18,19が張られる場合がある。
【0046】
この鋼製板材18,19は、図4(D)及び(E)に示すように、例えばおおよそ四角形状や三角形状の外周囲の、強度を高めるための折り曲げ部15を介して折り曲げられた材端に、骨組み材3,4,5における突条縁辺10と同様な真っ直ぐな縁辺16を有する。これら縁辺16にも、釣り針Rが引っ掛かりやすく、上述した課題が生じることになる。
【0047】
本実施形態にあっては、板材18,19の縁辺16には、これに沿って、骨組み材3,4,5に遮蔽部材11を接合する場合と同様にして、第2の遮蔽部材17が溶接接合して設けられる。すなわち、第2の遮蔽部材17は、縁辺16を釣り針Rから遮蔽するための軸状に形成され、板材18,19の縁辺16から板材18,19外方へ迫り出して設けられる。
【0048】
図示例では、上下方向に向く縁辺よりも釣り針Rが掛かりやすい左右方向に向く縁辺16に第2の遮蔽部材17が設けられている。第2の遮蔽部材17は、上記遮蔽部材11と同様に、縁辺16周りに現れる当該第2の遮蔽部材17の軸周りの形態が、釣り針Rの掛止不能とされる。また、この第2の遮蔽部材17の縁辺16に対する設置も、上記突条縁辺10に接合される遮蔽部材11と同様である。
【0049】
次に、本実施形態に係る鋼製人工魚礁1の作用について説明すると、鋼製人工魚礁1もしくは格子状ユニット2の製作に際し、当該鋼製人工魚礁1の外面に位置される骨組み材3,4,5の突条縁辺10や鋼製板材18,19の折り曲げによる縁辺16に、隅肉溶接wにより、丸鋼等の軸状の遮蔽部材11や第2の遮蔽部材17を設ける。
【0050】
これら遮蔽部材11,17は、突条縁辺10等を釣り針Rから遮蔽するように設けられ、それ自体の軸周りの形態が、釣り針Rの掛止が不能であるので、鋼製人工魚礁1を海底に沈設した後の漁に際し、潮流に流されるなどして釣り針Rが人工魚礁1に近づいても、図2に示すように、釣り針Rが縦・横・斜めの骨組み材3,4,5や板材18,19等に、そしてまた遮蔽部材11,17そのものに引っ掛かることを妨げることができる。
【0051】
従ってまた、遮蔽部材11,17は、網や、釣り針R以外の釣り具などの漁具が引っ掛かる可能性も少なくすることができる。これにより、漁具が破損されないようにして、円滑に漁を行うことができる。
【0052】
また、遮蔽部材11及び第2の遮蔽部材17としては、丸鋼など、市場に多量に流通されている安価な材料を用いれば足りると共に、このような安価な材料のこれら遮蔽部材11,17を単に骨組み材3,4,5等に隅肉溶接wで接合するだけで良く、構造がきわめて簡単であり、容易に製作することができる。
【0053】
遮蔽部材11及び第2の遮蔽部材17を、鋼製人工魚礁1の骨組み構造の外面に位置する骨組み材3,4,5の突条縁辺10や板材18,19の縁辺16に接合するので、骨組み構造の内方に位置する骨組み材3,4,5にまで設ける構成ではなく、これら遮蔽部材11,17の数量及び接合工数を低減して、安価かつ少ない手間で、釣り針Rが掛止しない鋼製人工魚礁1を製作できると共に、鋼製人工魚礁1にその周りから近づく釣り針Rが引っ掛かることを適切に妨げることができる。
【0054】
骨組み材3,4,5は、骨組み構造の外面を規定する平面部12を有し、遮蔽部材11は、骨組み材3,4,5の平面部12よりも骨組み構造の内方へ寄せた位置に設けられるので、平面部12により、鋼製人工魚礁1の外面周りで潮流を円滑に流しかつ遮蔽部材11が当該流れの妨げになることはなく、適切に魚類を蝟集させることができる。
【0055】
骨組み材3,4,5が一対の端部8を有する場合に、遮蔽部材11は、これら一対の端部8が構成する一対の突条縁辺10にそれぞれ接合されるので、骨組み材3,4,5のいずれの突条縁辺10に対しても、釣り針Rの掛止を妨げることができる。
【0056】
遮蔽部材11及び第2の遮蔽部材17の軸周りの形態は角部を有しない、特に軸周りの形態が円形である丸鋼や円形鋼管である場合には、釣り針Rの掛止を確実に妨げることができると同時に、鋼製人工魚礁1を安価に製作することができる。
【0057】
骨組み材3,4,5が角形鋼管の場合に、その断面の隅角部を突条縁辺10と考えることができ、当該隅角部に遮蔽部材11を接合して、釣り針Rの掛止を妨げることができることは勿論である。また、形鋼の材央となる折曲部9も、上記隅角部と同様に、突条縁辺10と考えることができて、当該折曲部9に遮蔽部材11を接合するようにしても良い。
【符号の説明】
【0058】
1 鋼製人工魚礁
3 縦材
4 横材
5 斜材
8 鋼製骨組み材の端部
10 突条縁辺
11 遮蔽部材
12 鋼製骨組み材の平面部
13,14 板材
16 板材の縁辺
17 第2の遮蔽部材
R 釣り針
図1
図2
図3
図4