(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】有機性廃棄物の処理システム
(51)【国際特許分類】
C02F 11/04 20060101AFI20220613BHJP
C02F 11/10 20060101ALI20220613BHJP
B09B 3/65 20220101ALI20220613BHJP
B09B 3/40 20220101ALI20220613BHJP
【FI】
C02F11/04 A ZAB
C02F11/10 Z
B09B3/65
B09B3/40
(21)【出願番号】P 2018077664
(22)【出願日】2018-04-13
【審査請求日】2021-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593153532
【氏名又は名称】公益財団法人日本下水道新技術機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永森 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】茂庭 忍
(72)【発明者】
【氏名】仕入 英武
(72)【発明者】
【氏名】小原 卓巳
(72)【発明者】
【氏名】大江 真理
(72)【発明者】
【氏名】大月 伸浩
(72)【発明者】
【氏名】落 修一
【審査官】富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-197639(JP,A)
【文献】特開2000-005797(JP,A)
【文献】特開2007-229581(JP,A)
【文献】特開2000-015228(JP,A)
【文献】特開2012-236115(JP,A)
【文献】特開2004-351308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/00- 3/34
C02F 11/00-11/20
B09B 3/00- 3/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥を熱処理する熱処理装置と、
木質バイオマスを破砕する破砕装置と、
破砕後の前記木質バイオマスの水分を調整する調整槽と、
生ごみ
、熱処理後の前記汚泥
及び前記調整槽で水分調整された前記木質バイオマスを混和する混和槽と、
前記混和槽において混和した混和物を嫌気性消化することによりバイオガスと消化汚泥とを生成させる消化槽と、
前記消化汚泥の一部、または、前記消化汚泥を固液分離して得られた分離液の一部を前記混和槽に返送する返送ラインと、
を
備えた有機性廃棄物の処理システム。
【請求項2】
前記消化槽において生成された前記消化汚泥を脱水する脱水機を更に備え、
前記分離液は前記脱水機において前記消化汚泥から分離され
る請求項1に記載の有機性廃棄物の処理システム。
【請求項3】
前記返送ラインは、前記消化汚泥の一部を前記混和槽及び前記調整槽に返送するものである
請求項1に記載の有機性廃棄物の処理システム。
【請求項4】
前記返送ラインは、
前記分離液の一部
を前記混和槽及び前記調整槽に返送するものである
請求項1に記載の有機性廃棄物の処理システム。
【請求項5】
前記熱処理装置は、
前記汚泥を移送するスクリューコンベアと、
前記汚泥を前記スクリューコンベアに圧送して供給するポンプと、
前記スクリューコンベアの一部または全部を覆うジャケットと、
前記ジャケットの内部に加熱媒体を供給する供給配管と、
前記スクリューコンベアの出口と前記混和槽とを接続する配管と、を備え、
前記スクリューコンベア及び前記配管が密閉されている
請求項1乃至請求項
4の何れか一項に記載の有機性廃棄物の処理システム。
【請求項6】
前記熱処理装置は、
前記スクリューコンベアのうち、前記ジャケットに覆われた領域に設置された温度計と、
前記供給配管の途中に設けられたた流量調整バルブと、
前記スクリューコンベアにおける前記汚泥の搬送速度及び前記流量調整バルブの開度をそれぞれ調整する熱処理制御部と、を備え、
前記熱処理制御部は、前記温度計の測定結果に基づき、前記流量調整バルブの開度調整を行うか、または、前記スクリューコンベアによる前記汚泥の移送速度を調整する
請求項5に記載の有機性廃棄物の処理システム。
【請求項7】
前記調整槽は、
前記調整槽内の前記木質バイオマスのpHを測定するpH計と、
前記調整槽と前記混和槽との間に設置されたポンプと、
前記pH計によって測定された前記木質バイオマスのpHが閾値以下になった場合に前記ポンプを作動させて前記木質バイオマスを前記調整槽から前記混和槽に送出させるpH制御部と、を備えている
請求項1乃至請求項
6の何れか一項に記載の有機性廃棄物の処理システム。
【請求項8】
前記消化槽において生成したバイオガスを用いて発電する発電機が更に備えられている
請求項1乃至請求項
7の何れか一項に記載の有機性廃棄物の処理システム。
【請求項9】
前記消化槽において生成したバイオガスを用いて発電する発電機が更に備えられ、
前記ジャケット内に供給される前記加熱媒体は、前記発電機の排熱を利用して生成された加熱空気または加熱水蒸気である
請求項5または請求項
6に記載の有機性廃棄物の処理システム。
【請求項10】
前記破砕装置は、
回分式の蒸煮・爆砕処理によって前記木質バイオマスを破砕するものである
請求項1乃至請求項
9の何れか一項に記載の有機性廃棄物の処理システム。
【請求項11】
前記消化槽において生成したバイオガスを用いて発電する発電機が更に備えられ、
前記破砕装置の蒸煮・爆砕処理に供給される水蒸気は、前記発電機の排熱を利用して生成された加熱水蒸気である
請求項10に記載の有機性廃棄物の処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、有機性廃棄物の処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
有機性廃棄物の処理方法の一つに嫌気性消化がある。嫌気性消化は、有機性廃棄物中の有機物を、消化槽で低分子化して、メタンと二酸化炭素を主成分とするバイオガスに転換する。
【0003】
また、嫌気性消化は有機性廃棄物からのエネルギー回収にも利用される。嫌気消化によって得られたバイオガスには可燃性ガスであるメタンが約70%含まれており、このメタンをガスボイラーで熱に変換して消化槽の加温に用いたり、メタンを利用したガス発電機により発電された電力を処理施設で使用することにより、処理施設全体の購入電力量を低減している。また、副生する排熱を熱エネルギーとして利用している。
【0004】
有機性廃棄物には、生ごみ、汚泥、木質バイオマスなどがある。生ごみは食品廃棄物であり、具体的には、食品製造業から排出される動植物性残さ、食品流通業と外食産業から排出される売れ残り、廃棄食品、廃油、食べ残し、家庭から排出される調理くず、廃棄食品、等である。汚泥は上記産業の排水処理施設や上下水処理場から排出される余剰汚泥、余剰汚泥を脱水した脱水汚泥、等である。木質バイオマスは、剪定等によって生じた草、枝、葉、農業から排出される、わら等である。
上記の有機性廃棄物は、嫌気性消化によって処理可能であるが、含有成分、形状等が異なることから最適な処理プロセスは異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5288730号公報
【文献】特許第5250665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、生ごみ、汚泥、木質バイオマスを効率的に嫌気性消化することができる有機性廃棄物の処理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の有機性廃棄物の処理システムは、熱処理装置と、破砕装置と、調整槽と、混和槽と、消化槽と、返送ラインとを持つ。熱処理装置は、汚泥を熱処理する。破砕装置は、木質バイオマスを破砕する。調整槽は、破砕後の前記木質バイオマスの水分を調整する。混和槽は、生ごみ、熱処理後の前記汚泥及び前記調整槽で水分調整された前記木質バイオマスを混和する。消化槽は、前記混和槽において混和した混和物を嫌気性消化することによりバイオガスと消化汚泥とを生成させる。返送ラインは、前記消化汚泥の一部、または、前記消化汚泥を固液分離して得られた分離液の一部を前記混和槽に返送する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態の処理システムを示す模式図。
【
図2】第1の実施形態の処理システムに備えられた熱処理装置を示す模式図。
【
図3】第2の実施形態の処理システムを示す模式図。
【
図4】第3の実施形態の処理システムを示す模式図。
【
図5】第4の実施形態の処理システムを示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態の有機性廃棄物の処理システムを、図面を参照して説明する。
実施形態の処理システムの処理対象である有機性廃棄物は、生ごみ、汚泥及び木質バイオマスである。
【0010】
生ごみは、食品廃棄物であり、具体的には、食品製造業から排出される動植物性残さ、食品流通業と外食産業から排出される売れ残り、廃棄食品、廃油、食べ残し、家庭から排出される調理くず、廃棄食品、等である。生ごみは、汚泥と比較してC/N比(炭素/窒素比)が高く、メタン転換率も高いことから、汚泥よりもバイオガスの回収ポテンシャルは高い。その一方、嫌気性消化におけるメタン生成菌の増殖や活性促進効果がある微量金属(鉄、ニッケル、コバルト、等)は、汚泥よりも少ない。従って、本実施形態では、生ごみと汚泥を混合して嫌気性消化することで、これらを単独で嫌気性消化するよりも、より多くのバイオガスを回収できる可能性がある。
【0011】
汚泥は、上記産業の排水処理施設や上下水処理場から排出される余剰汚泥、余剰汚泥を脱水した脱水汚泥、等である。汚泥は、タンパク質を多く含み、嫌気性消化率が悪い。そこで、本実施形態では、汚泥を熱処理することで汚泥を可溶化させ、嫌気性消化率を向上させる。
【0012】
木質バイオマスは、剪定等によって生じた草、枝、葉、農業から排出されるわら、等である。木質バイオマスは、セルロースを多く含むものの、ヘミセルロースとリグニンに強固に保護されているため嫌気性消化率が悪い。木質バイオマスを破砕することで木質バイオマスが微細化するとともにヘミセルロースとリグニンが破砕されてセルロースが露出することで嫌気性消化率が向上する。
【0013】
これらの有機性廃棄物は、含水率が低いため流動性が低く、消化槽内で分散混合しづらい。そこで、有機性廃棄物の含水率を消化槽の投入前に調整することで、有機廃棄物の流動性が増加し、消化槽内で分散混合しやすくなり、嫌気性消化率が向上するようになる。また、有機性廃棄物の嫌気性消化処理によって生成する消化汚泥や脱水ろ液は、嫌気性消化後の汚泥や液であることから、嫌気性消化前の汚泥と比較して性状が均一であり、また、その温度は、中温域であり、pHは中性域で安定しているため、これらを、有機性廃棄物の含水率の調整に用いることで、消化槽に投入される有機性廃棄物の性状、温度、pHを嫌気性消化に適した状態に調製でき、嫌気性消化率が向上するようになる。
【0014】
[第1の実施形態]
以下、第1の実施形態について
図1及び
図2を参照して説明する。
図1に示す有機性廃棄物の処理システム(以下、処理システムという)は、汚泥及び生ごみを処理する処理システムである。
図1に示すように、本実施形態の処理システム1は、汚泥を熱処理する熱処理装置2と、熱処理後の汚泥と生ごみとを混和する混和槽3と、消化槽4と、消化槽4において生成した消化汚泥の一部を混和槽3に返送する返送ライン5と、が備えられている。返送ライン5の途中には、消化汚泥を混和槽3に送るポンプ6が備えられている。更に、ポンプ6を制御する制御装置7が備えられている。また、
図1に示す処理システム1には、発電機8も備えられている。
【0015】
熱処理装置2と混和槽3との間には熱処理後の汚泥を搬送する搬送ラインL1が設けられ、混和槽3と消化槽4の間には、生ごみと汚泥の混和物を搬送する搬送ラインL2が設けられ、消化槽4には消化汚泥を排出する排出ラインL3が設けられている。また、排出ラインL3の途中で返送ライン5が分岐している。返送ライン5は混和槽3に接続されている。
【0016】
また、消化槽4と発電機8の間には、バイオガスを搬送する搬送ラインL4が設けられ、発電機8と熱処理装置2の間には、発電によって生成した加熱媒体を搬送する搬送ラインL5が設けられている。
【0017】
図2には、熱処理装置2の断面模式図を示す。熱処理装置2は、
図2に示すように、汚泥を移送するスクリューコンベア21と、汚泥をスクリューコンベア21に圧送して供給するポンプ22と、スクリューコンベア21の一部または全部を覆うジャケット23と、ジャケット23の内部に加熱媒体を供給する供給配管24と、スクリューコンベア21の出口21aと混和槽3とを接続する配管25と、が備えられている。供給配管24は、
図1における搬送ラインL5であり、配管25は、
図1における搬送ラインL1である。
【0018】
また、熱処理装置2には、スクリューコンベア21のうち、ジャケット23に覆われた領域に設置された温度計26と、供給配管24の途中に設けられたた流量調整バルブ27と、スクリューコンベア21における汚泥の搬送速度及び流量調整バルブ27の開度をそれぞれ調整する熱処理制御部28と、が備えられている。
【0019】
スクリューコンベア21には回動機29が備えられており、汚泥を撹拌させつつ、スクリューコンベア21の入口21b側から出口21a側に向けて一定の移送速度で搬送させる。ジャケット23は略筒状とされており、その内部にスクリューコンベア21が配設されている。ジャケット23には加熱媒体の供給部23aと排出部23bが設けられている。加熱媒体は、発電機8の排熱を利用して生成された加熱空気または加熱水蒸気である。供給部23aは、スクリューコンベア21の汚泥の移送方向の下流側(出口21a側)に配設され、一方、排出部23bは、スクリューコンベア21の汚泥の移送方向の上流側(入口21b側)に配設されている。供給部23aには供給配管24が接続されている。供給配管24及び供給部23aを経てジャケット23の内部に供給された加熱媒体は、汚泥の移送方向と逆方向に流れながら、スクリューコンベア21内を移送される汚泥を加熱する。このため、汚泥は、スクリューコンベア21の入口21b側から出口21a側に向けて移送されながら徐々に温度上昇する。温度計26は、スクリューコンベア21のジャケット23に覆われた領域に設置されており、汚泥の最高到達温度を測定する。熱処理制御部28は、温度計26の測定結果に基づき、流量調整バルブ27の開度調整を行うとともに、回動機29の回転数を制御することでスクリューコンベア21による汚泥の移送速度を調整する。
【0020】
熱処理装置2においては、スクリューコンベア21及び配管25が密閉されている。このため、汚泥に含まれる水分や揮発成分は、加熱されても熱処理装置2外に漏れることなく、その全量が搬送ラインL1(配管25)によって混和槽3に送られる。
【0021】
混和槽3には、図示しない攪拌機が備えられている。混和槽3は、生ごみと、熱処理装置2によって熱処理された汚泥とを攪拌機によって混和させて混和物とする。また、混和槽3には返送ライン5が接続されており、消化槽4において生成した消化汚泥の一部が供給される。供給された消化汚泥は、生ごみ及び汚泥とともに混和されて混和物とされる。混和物は、搬送ラインL2によって消化槽4に送られる。
【0022】
消化槽4は、混和槽3において混和した混和物を嫌気性消化することにより、バイオガスと消化汚泥とを生成させる。生成したバイオガスは搬送ラインL4によって発電機8に送られ、消化汚泥は排出ラインL3によって消化槽4から排出される。排出された消化汚泥の一部は返送ライン5によって混和槽3に送られる。
【0023】
返送ライン5は、消化槽4から排出された消化汚泥の一部を混和槽3に搬送する配管である。返送ライン5の途中にはポンプ6が備えられている。ポンプ6は、制御装置7によって制御されている。制御装置7は、混和槽3内の混和物の流動状態に基づき、ポンプ6を作動させて消化汚泥の返送量を調整する。
【0024】
以下、本実施形態の処理システム1を用いた有機性廃棄物の処理方法を説明する。
まず、汚泥を熱処理装置2に供給し、ポンプ22によって汚泥をスクリューコンベア21に圧送する。次いで、スクリューコンベア21を作動させて汚泥を入口21b側から出口21a側に移送する。同時に、流量調整バルブ27を開き、加熱媒体をジャケット23内に導入して汚泥を加熱する。加熱媒体は、発電機8から排出された排熱を含む排ガス等を利用する。汚泥の温度は、スクリューコンベア21に配置された温度計26によって常時測定する。汚泥の温度は、熱処理制御部28に入力される。
【0025】
汚泥の温度が高すぎる場合、熱処理制御部28は、流量調整バルブ27の開度を小さくして加熱媒体の供給量を減らすか、回動機29の回転数を高めてスクリューコンベア21による汚泥の移送速度を速め、加熱媒体との接触時間を短縮する。また、汚泥の温度が低すぎる場合、熱処理制御部28は、流量調整バルブ27の開度を大きくして加熱媒体の供給量を増やすか、回動機29の回転数を少なくしてスクリューコンベア21による汚泥の移送速度を遅くし、加熱媒体との接触時間を長くする。
【0026】
汚泥の最高到達温度は、80℃以上200℃以下の範囲が好ましい。また、汚泥のスクリューコンベア21の入口21bから出口21aまでの移送時間(加熱時間)は15分以上とすることが好ましい。15分以上であれば効果は飽和する。このようにして汚泥を熱処理することで、汚泥が可溶化され、消化槽4における嫌気性消化率が向上する。熱処理した汚泥は、配管25を通して混和槽3に送られる。
【0027】
また、スクリューコンベア21の入口21bは、ポンプ22によって圧送される汚泥によって塞がれ、出口21aは密閉状態で混和槽3に接続されている。このため、汚泥の水分、揮発成分は、スクリューコンベア21の移送によって失われることがなく、水分や揮発成分が保たれたまま、熱処理後の汚泥が混和槽3に移送される。
【0028】
次に、混和槽3において、熱処理後の汚泥と生ごみとを混合する。熱処理後の汚泥は、密閉された熱処理装置2によって熱処理され、更に密閉された配管25(搬送ラインL1)によって混和槽3に搬送されるため、混和槽3に供給される汚泥の含水率は、熱処理前から大きく変化せず、比較的高いままになっている。一方、生ごみの含水率は、汚泥よりも低くなっている。そのため、混和槽3において汚泥と生ごみを混合すると、流動性が著しく低下する。また、含水率が低い状態のまま、汚泥と生ごみを消化槽4に投入すると、嫌気性消化処理の効率が大幅に低下する。そこで、本実施形態では、返送ライン5によって、消化処理後に生成した消化汚泥の一部を、混和槽3に返送することで、水分を供給して汚泥と生ごみの混合物の含水率を高める。混和槽3における汚泥と生ごみの混合物の含水率は、80~95%程度にするとよい。
【0029】
次に、混和槽3において消化汚泥により水分調整された汚泥及び生ごみの混和物を、消化槽4に送る。消化槽4では、汚泥及び生ごみが嫌気性消化処理され、消化汚泥とバイオガスが生成する。消化汚泥の一部は返送ライン5を介して混和槽3に返送される。返送ライン5にはポンプ6が備えられている。制御装置7は、混和槽3の中の生ごみと汚泥の混和状況を監視しており、混和槽3に消化汚泥を返送すべきかどうかを判断する。混和槽3における混和状況は、例えば、混和槽3に備えられた撹拌機における撹拌抵抗や、生ごみ及び汚泥の含水率等によって把握する。制御装置7が混和槽3に消化汚泥を返送すると判断した場合は、ポンプ6を作動させて返送ライン5を経由して消化汚泥を混和槽3に返送する。このように、混和槽3には消化汚泥が供給されて水分調整がなされるので、処理システム1の外から、新たに水を供給する必要がない。
【0030】
また、嫌気性消化処理によって生成したバイオガスは、搬送ラインL4によって発電機8に送られ、電気エネルギーに変換される。発電機8において生成した排熱は、加熱空気または加熱水蒸気を生成するための熱源として利用される。加熱空気または加熱水蒸気は、加熱媒体として返送ラインL5によって熱処理装置2に送られ、熱処理装置2における熱源として利用される。発電機8によって発電された電力は、処理システム1のエネルギーとして利用される。
【0031】
以上説明したように、本実施形態によれば、汚泥を熱処理する熱処理装置2と、混和槽3と、消化槽4と、消化汚泥の一部を混和槽3に返送する返送ライン5とが備えられており、消化汚泥を混和槽3に返送することで、本来は含水率が低い生ごみ及び汚泥の混合物の含水率を、80~95%程度に高めることができ、流動性を確保するとともに、嫌気性消化処理の効率を高めることができる。また、処理システム1の外部から水を別途供給する必要がなく、処理システム1内において必要な水を確保できる。
【0032】
また、本実施形態の処理システム1の熱処理装置2では、スクリューコンベア21及び配管25が密閉されているので、汚泥の水分が外部に漏れ出すことがなく、これにより、熱処理後に汚泥の含水率が減少することがなく、流動性を保ったまま、汚泥を混和槽3に供給することができる。
【0033】
また、本実施形態の処理システム1の熱処理装置2では、スクリューコンベア21のうちジャケット23の覆われた箇所に設置された温度計26と、流量調整バルブ27と、熱処理制御部28とを備えており、熱処理制御部28は、温度計26の測定結果に基づき、流量調整バルブ27の開度調整を行うとともに、スクリューコンベア21による汚泥の移送速度を調整することで、汚泥を最適な温度範囲で熱処理することができる。
【0034】
更に、消化槽4において生成したバイオガスを用いて発電する発電機8が更に備えられており、発電機8によって発電された電力を、処理システム1のエネルギーとして利用することで、省エネ化を推進できる。
【0035】
更に,発電機8で生成した加熱媒体を、汚泥の熱処理装置2の熱源に利用することで、処理システム1全体の熱効率を高めることができる。
【0036】
(第2の実施形態)
図3には、第2の実施形態の処理システム11を示す。第2の実施形態の処理システム11と、
図1の処理システム1との違いは、次に述べるとおりである。
【0037】
図3に示す処理システム11には、消化槽4の後段に脱水機12が備えられている。また、脱水機12の後段に、返送ライン15が接続されている。返送ライン15は、混和槽3に接続されている。消化槽4と脱水機12との間には、消化汚泥を搬送する搬送ラインL13が設けられている。また、脱水機12の後段には、脱水後の脱水汚泥を搬送する搬送ラインL14が設けられている。更に、脱水機12の後段には、脱水によって消化汚泥から分離された分離液を搬送するための搬送ラインL15が設けられている。搬送ラインL15の途中から、返送ライン15が分岐している。返送ライン15の途中には、ポンプ6と、ポンプを制御する制御装置7が備えられている。
【0038】
脱水機12は、消化槽4において生成した消化汚泥を脱水する。これにより、消化汚泥は、脱水汚泥と、分離液とに分離される。脱水機12によって生成した分離液の一部は、搬送ラインL15及び返送ライン15によって、混和槽3に返送される。分離液の返送量の調整は、第1の実施形態の消化汚泥の返送量の調整方法と同様に、制御装置7によってポンプ6を制御することで調整する。
図3に示す処理システム11のその他の構成は、
図1に示す処理システム1と同じである。
【0039】
図3に示す処理システム11によれば、消化汚泥の脱水によって得られた分離液の一部を混和槽3に返送して、混和槽3における熱処理後の汚泥と生ごみとの含水率を調整するので、消化汚泥を返送して含水率を調整する場合に比べて、含水率の調整を容易に行うことができる。また、第1の実施形態における効果と同様の効果も得られる。
【0040】
(第3の実施形態)
図4には、第3の実施形態の処理システム21を示す。第3の実施形態の処理システム21と、
図1の処理システム1との違いは、次に述べるとおりである。
【0041】
図4に示す処理システム21には、木質バイオマスを破砕する破砕装置32と、破砕後の木質バイオマスの含水率を調整する調整槽33とが備えられている。調整槽33には、pH計33aが備えられている。また、消化槽4の後段に、返送ライン25が接続されている。返送ライン25は、混和槽3及び調整槽33に接続されている。発電機8と熱処理装置2及び破砕装置32の間には、加熱媒体を搬送する搬送ラインL35が設けられている。
【0042】
破砕装置32と調整槽33の間には、破砕後の木質バイオマスを搬送する搬送ラインL21が設けられ、調整槽33と混和槽3との間には、含水率が調整されたバイオマスを搬送する搬送ラインL22が設けられている。調整槽33と混和槽3との間の搬送ラインL22には、ポンプ33bが設置されている。また、pH計33a及びポンプ33bは、pH制御部33cに接続されている。pH制御部33cは、pH計33aによって測定された木質バイオマスのpHが閾値以下になった場合に、ポンプ33bを作動させて木質バイオマスを調整槽33から混和槽3に送出させる。
【0043】
図4に示す処理システム21では、破砕装置32によって破砕された木質バイオマスが、搬送ラインL21によって調整槽33に送られる。調整槽33には、返送ライン25によって消化汚泥が供給される。木質バイオマスは含水率が少なく、そのままの状態では分解されにくい。このため、消化汚泥を調整槽33に供給して木質バイオマスの分解を促進させる。調整槽33において含水率が調整され、分解が進んだ破砕後の木質バイオマスは、搬送ラインL22によって混和槽3に送られる。混和槽3において、熱処理後の汚泥と生ごみと木質バイオマスとが混和される。混和された汚泥、生ごみ及び木質バイオマスは消化槽4に送られ、嫌気性消化処理がなされる。嫌気性消化処理によって生成した消化汚泥の一部は、返送ライン25によって混和槽3と調整槽33とに返送される。混和槽3への消化汚泥の返送量の調整は、第1の実施形態の場合と同様に調整すればよい。また、調整槽33への消化汚泥の返送量の調整は、調整槽33内における水量を一定にするように調整すればよい。
【0044】
図3に示す処理システム21のその他の構成は、
図1に示す処理システム1と同じである。以下、効果について説明する。
【0045】
破砕装置32は、回分式の蒸煮・爆砕処理によって木質バイオマスを破砕するものである。搬送ラインL35から搬送される加熱水蒸気が、木質バイオマスの蒸煮・爆砕処理に利用される。蒸煮・爆砕処理によって、木質バイオマスは破砕されるとともに、セルロース、ヘミセルロース、リグニンなどの一部が溶出し、可溶化する。可溶化によって蒸煮・爆砕処理された木質バイオマスは、ギ酸、酢酸などの揮発性脂肪酸を生成する。揮発性脂肪酸は嫌気性消化しやすい有機物であるため、蒸煮・爆砕処理した木質バイオマスを消化槽4に導入することにより、嫌気性消化率をより向上できる。
また、発電機8において生成した加熱媒体を、木質バイオマスの蒸煮・爆砕処理に利用することで、処理システム21全体の熱効率を高めることができる。
【0046】
また、安定して排出される生ごみや汚泥に対して、木質バイオマスは排出期間も限られ、また排出量も少ない場合が多い。そこで、破砕した木質バイオマスを生ごみ、熱処理汚泥と混合する前に、調整槽33で予め水分調整しつつ一時的に貯留することで、木質バイオマスが不足する時期にも木質バイオマスを消化槽4に安定して供給できるようになる。また、調整槽33において消化汚泥とともに木質バイオマスを貯留することで、木質バイオマスの分解を促して揮発性脂肪酸の生成を促進できる。揮発性脂肪酸のpHは酸性側であるから、pH計33aによりpHを計測することで揮発性脂肪酸の生成状況を把握することができる。更に、調整槽33でpHを低下させた木質バイオマスを、混和槽3で生ごみ、熱処理汚泥と混合してから消化槽4に供給することで、嫌気性消化率をより向上できる。
【0047】
上記のように、木質バイオマスは、水分の添加によって加水分解され、更に酸発酵して脂肪酸が生成する。脂肪酸生成によってpHが低下する。調整槽33では、酸発酵が適度に進むようになる。そこで、本実施形態の処理システム21では、調整槽33内の木質バイオマスのpHをpH計33aによって測定し、ある閾値に到達するまで、調整槽33に木質バイオマスを留めて酸発酵を進ませるとよい。木質バイオマスのpHが閾値に到達したら、pH制御部33cによって搬送ラインL22の途中に設けたポンプ33bを稼働させて、酸発酵が進んだ木質バイオマスを混和槽3に供給する。そして、酸発酵が進んだ木質バイオマスを消化槽4において嫌気性消化する。これにより、嫌気性消化処理の効率をより高めることができる。
【0048】
更に、調整槽33に消化汚泥の一部を返送することで、調整槽33における木質バイオマスの分解を促進できる。また、混和槽3に消化汚泥の一部を返送することで、混和槽3における生ごみ、汚泥及び木質バイオマスの流動性を向上できる。
更に、第1~第2の実施形態における効果と同様の効果も得られる。
【0049】
(第4の実施形態)
図5には、第4の実施形態の処理システム31を示す。
図5に示す処理システム31は、第3の実施形態において説明した処理システム21に、脱水機12を加えたものであり、脱水機12によって得られた分離液を混和槽3及び調整槽33に返送するものである。その他の構成は第3の実施形態と同様である。本実施形態の処理システム31には、熱処理装置2、混和槽3、消化槽4、発電機8、破砕装置32及び調整槽33に加えて、脱水機12及び返送ライン35が備えられている。脱水機12は、第2の実施形態において説明した脱水機12と同様のものである。脱水機12には、消化汚泥から脱水によって分離された分離液を排出するための搬送ラインL15が接続されており、この搬送ラインL15の途中から、返送ライン35が分岐している。返送ライン35は、第3の実施形態の場合と同様に、混和槽3及び調整槽33に接続されている。
【0050】
本実施形態の処理システム31では、脱水機12によって消化汚泥から分離された分離液を、混和槽3及び調整槽33に返送する。これにより、混和槽3における生ごみ、汚泥及び木質バイオマスの流動性を向上させることができる。また、調整槽33における木質バイオマスの分解を促進できる。更には、消化槽4における嫌気性消化処理の効率を高めることができる。
更にまた、第1~第3の実施形態における効果と同様の効果も得られる。
【0051】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、消化汚泥の一部、または、消化汚泥を固液分離して得られた分離液の一部を混和槽に返送する返送ラインを持つことにより、生ごみ、汚泥、木質バイオマスを効率的に嫌気性消化することができる。
【実施例】
【0052】
(実施例1)
汚泥の熱処理条件と効果について検討した。
オートクレーブで汚泥の熱処理を行った。各熱処理温度に対して所定の温度に達した後の維持時間を熱処理温度とした。熱処理後の汚泥のVSS(浮遊物質の強熱減量)分析を行った。そのVSS分析値を用いて、未処理汚泥のVSSに対する熱処理汚泥のVSSの減少率を可溶化率として求めた。
【0053】
この熱処理後の汚泥サンプルは、含水率が80%程度しかなく、そのままでは流動性がなく、嫌気性消化が困難であったので、汚泥サンプルに消化汚泥を加えて撹拌して汚泥を消化汚泥中に分散させて、含水率を95%程度の汚泥分散液に調製した。この汚泥分散液の嫌気性消化でのガス発生量を求めた。
【0054】
バイアル瓶に、汚泥分散液と、種汚泥として消化槽から採取した消化汚泥とを入れ、気相部を窒素置換して封入し、37℃の恒温振とう機にセットして振とうさせ、発生するガス量を30日間測定した。測定値から汚泥サンプルのVS(強熱減量)当たりのガス発生量と、未処理汚泥に対するガス増加倍率を算出した。
【0055】
熱処理条件と実験結果を表1に示す。100℃以上では熱処理によって溶出したタンパク質が、同時に熱凝固反応によって固体に変性したために、可溶化率とガス増加倍率が予想よりも低下したものと示唆された。ガス増加倍率は、80℃と120℃とでそれぞれ1.4倍、1.5倍となり、未処理汚泥に対して熱処理汚泥のガス発生量は大きく増加することが分かった。
【0056】
【0057】
(実施例2)
次に120℃の熱処理汚泥に、生ごみと、破砕処理した剪定枝(木質バイオマス)を加えて、それら混合物の3倍量の消化汚泥と混合撹拌し、含水率を約95%に調製した分散液を得た。この分散液について、有機物濃度を揃えて実施例1と同様の消化試験を実施した。剪定枝としては、破砕して加熱処理した剪定枝に消化汚泥を加えてpHが4以下となるまで貯蔵したものを生ごみ及び汚泥に混合した。結果を表2に示す。熱処理汚泥に対して生ごみと破砕剪定枝を加えたサンプルは、ガス増加倍率が1.9倍となり、熱処理汚泥と生ごみと破砕した剪定枝を嫌気性消化することでバイオガスの回収量を増加できることが示唆された。
【0058】
汚泥を連続して熱処理する装置として
図2に示す装置を作成した。熱処理装置は汚泥を移送するスクリューコンベア21と、汚泥をスクリューコンベア21に圧送して供給するポンプ22と、スクリューコンベア21を覆うジャケット23と、ジャケット23の熱源として過熱水蒸気を供給し、スクリューコンベア21の出口21aと混和槽3とを配管25で密閉して接続した。スクリューコンベア21には温度計26を備え、汚泥の温度を計測した。汚泥の熱処理温度を、バルブ27の開度で過熱水蒸気の供給量を調節して制御した。熱処理時間はポンプ22及び回動機29で汚泥の送泥量を調節してジャケット23を通過する時間を制御した。熱処理によって汚泥の水分量が消失しないように熱処理装置は開放部分がなく密閉した配管25で混和槽3まで送泥されるようにした。また処理温度は80~120℃程度であることから装置内は空気雰囲気のままとした。この装置により汚泥の連続熱処理が可能となった。
【0059】
【0060】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0061】
1、11、21、31…処理システム、2…熱処理装置、3…混和槽、4…消化槽、5、15、25、35…返送ライン、8…発電機、12…脱水機、21…スクリューコンベア、22…ポンプ、23…ジャケット、24…供給配管、25…配管、26…温度計、27…流量調整バルブ、28…熱処理制御部、32…破砕装置、33…調整槽、33a…pH計、33b…ポンプ、33c…pH制御部。