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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】電力変換装置及び鉄道車両
(51)【国際特許分類】
   B61C 17/00 20060101AFI20220613BHJP
   H01L 23/467 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
B61C17/00 E
H01L23/46 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018085756
(22)【出願日】2018-04-26
(65)【公開番号】P2019189110
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】月成 勇起
(72)【発明者】
【氏名】藤原 伸人
【審査官】川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-039481(JP,A)
【文献】特開2006-347309(JP,A)
【文献】特開2005-251892(JP,A)
【文献】特開2019-031122(JP,A)
【文献】特開2000-092819(JP,A)
【文献】特開2000-158938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61C 17/00
H01L 23/467
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両を駆動する電力を出力可能な半導体素子と、
前記半導体素子に接続された受風部と、
前記受風部に対して、前記鉄道車両の走行想定方向及び上下方向に直交する直交方向のいずれか一方側、又は下方である配置向きに前記受風部に接合した状態で配置されるとともに、前記走行想定方向の両端部のうち、前記受風部の中央部寄りの端部を第1端部とし、前記第1端部とは反対側の端部を第2端部とする一対の導風ガイドと、
前記一対の導風ガイドの前記第2端部から前記配置向きに向かってそれぞれ延びる一対の鍔部と、
を備え、
前記受風部の前記走行想定方向の両端部における前記配置向きの端部には、前記配置向きとは反対の向きに向かって切り欠かれた切欠きがそれぞれ形成され、
前記一対の導風ガイドは、前記受風部のうち前記切欠きにおける前記配置向きとは反対の向きの底部にそれぞれ接合されている電力変換装置。
【請求項2】
鉄道車両を駆動する電力を出力可能な半導体素子と、
前記半導体素子に接続された受風部と、
前記受風部に対して、前記鉄道車両の走行想定方向及び上下方向に直交する直交方向のいずれか一方側、又は下方である配置向きに前記受風部に接合した状態で配置されるとともに、前記走行想定方向の両端部のうち、前記受風部の中央部寄りの端部を第1端部とし、前記第1端部とは反対側の端部を第2端部とする一対の導風ガイドと、
前記一対の導風ガイドの前記第2端部から前記配置向きに向かってそれぞれ延びる一対の鍔部と、
を備え、
前記一対の鍔部の少なくとも一方の前記走行想定方向の端は、前記走行想定方向において、前記受風部の端に一致しているか、前記受風部の端よりも前記受風部の中央部寄りの位置に配置されている電力変換装置。
【請求項3】
鉄道車両を駆動する電力を出力可能な半導体素子と、
前記半導体素子に接続された受風部と、
前記受風部に対して、前記鉄道車両の走行想定方向及び上下方向に直交する直交方向のいずれか一方側、又は下方である配置向きに前記受風部に接合した状態で配置されるとともに、前記走行想定方向の両端部のうち、前記受風部の中央部寄りの端部を第1端部とし、前記第1端部とは反対側の端部を第2端部とする一対の導風ガイドと、
前記一対の導風ガイドの前記第2端部から前記配置向きに向かってそれぞれ延びる一対の鍔部と、
前記一対の導風ガイドの前記第1端部から前記走行想定方向に沿って、かつ前記一対の導風ガイドの前記第2端部とは反対側に向かってそれぞれ延びる一対の整風部と、
を備える電力変換装置。
【請求項4】
前記一対の導風ガイドの前記第1端部同士は、前記走行想定方向に離間している、請求項1から3のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の電力変換装置と、
前記電力変換装置が取付けられる車体と、
を備え、
前記一対の鍔部は、前記車体の艤装限界に対して前記配置向きに一致しているか、前記艤装限界に対して前記配置向きとは反対の向きの範囲内にそれぞれ配置されている、鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置及び鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両には、架線から供給される電力を所望の電力に変換して主電動機等の駆動を制御する電力変換装置が搭載されている。この種の電力変換装置は、半導体素子と、半導体素子を冷却する冷却器と、を持つ。
上述した冷却器は、ポンプ等を用いた強制循環液冷方式やファン等を用いた強制空冷方式、走行風を用いた走行風自然空冷式に大別される。近時では、低騒音化や省エネ化、メンテナンスフリーの観点から、走行風自然空冷式が主流である。
【0003】
走行風自然空冷式の冷却器は、受熱ブロックと、複数のフィン(受風部)と、を持つ。受熱ブロックには、半導体素子が搭載されている。各フィンは、受熱ブロックに接続されている。各フィンは、車両前後方向に沿って互いに平行に延在している。従って、隣り合うフィン同士の間には、鉄道車両の走行時において、走行風が流通する流通路が形成される。走行風は、流通路内を通過する際にフィンとの間で熱交換を行う。これにより、半導体素子で発生する熱がフィンを介して放熱される。
【0004】
上述した従来の電力変換装置において、流通路内では、走行風が通過する際の圧力損失が大きい。そのため、鉄道車両における走行想定方向の前方から流通路内に流入する走行風が、流通路内における走行想定方向の後側端部まで到達せずに流通路から流出するおそれがある。
【0005】
また、一般的に電力変換装置は、鉄道車両の車体の外部に取付けられるため、鉄道車両が走行しているときに軌道のバラスト等が当たり、電力変換装置が変形する場合がある。このとき、電力変換装置の流通路が変形して、電力変換装置の冷却性能が低下するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-224796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、受風部に対して走行風を効果的に供給し、受風部の冷却性能及び強度を確保できる電力変換装置及び鉄道車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の電力変換装置は、半導体素子と、受風部と、一対の導風ガイドと、一対の鍔部と、を持つ。前記半導体素子は、鉄道車両を駆動する電力を出力可能である。前記受風部は、前記半導体素子に接続されている。前記一対の導風ガイドは、前記受風部に対して、前記鉄道車両の走行想定方向及び上下方向に直交する直交方向のいずれか一方側、又は下方である配置向きに前記受風部に接合した状態で配置されるとともに、前記走行想定方向の両端部のうち、前記受風部の中央部寄りの端部を第1端部とし、前記第1端部とは反対側の端部を第2端部とする。前記一対の鍔部は、前記一対の導風ガイドの前記第2端部から前記配置向きに向かってそれぞれ延びる。前記受風部の前記走行想定方向の両端部における前記配置向きの端部には、前記配置向きとは反対の向きに向かって切り欠かれた切欠きがそれぞれ形成される。前記一対の導風ガイドは、前記受風部のうち前記切欠きにおける前記配置向きとは反対の向きの底部にそれぞれ接合されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態の鉄道車両を示す概略側面図。
図2】一実施形態の電力変換装置を示す断面図。
図3】一実施形態の変形例の電力変換装置を示す断面図。
図4】一実施形態の変形例の電力変換装置を示す断面図。
図5】一実施形態の変形例の電力変換装置を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態の電力変換装置及び鉄道車両を、図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、鉄道車両1の概略側面図である。
図1に示すように、本実施形態の鉄道車両1は、車体2と、台車3と、本実施形態の電力変換装置4と、を持つ。
なお、本実施形態では、鉄道車両1の走行想定方向X及び上下方向Zにそれぞれ直交する方向は、鉄道車両1の幅方向(直交方向)Yに一致している。電力変換装置4を車体2に取付けた場合には、走行想定方向Xは鉄道車両1の走行方向となる。走行想定方向Xは、鉄道車両1の前後方向に一致している。
走行想定方向X、幅方向Y、及び上下方向Zは、X,Y,Zの直交座標系を構成する。
【0012】
車体2は、走行想定方向Xに長い直方体形状に形成されている。車体2の内部には、乗客を収容可能な空間が形成されている。車体2の天井には、上方Z1に向かってパンタグラフ6が突設されている。パンタグラフ6は、架線5に接触可能である。
なお、上方Z1、及び後述する下方Z2は、上下方向Zの一方側であり、後述する前方X1及び後方X2は、走行想定方向Xの一方側である。上方Z1、下方Z2、前方X1、及び後方X2の符号は、図中には示していない。
【0013】
台車3は、例えば空気ばね等の台車ばね7を介して車体2の床下における走行想定方向Xの両端部にそれぞれ取付けられている(一方の台車3は不図示)。台車3の走行想定方向Xの両端部には、幅方向Yに延びる一対の車軸11が回転可能に支持されている。これら車軸11の幅方向Yの両端部には、車輪12がそれぞれ取付けられている(一方の車輪12は不図示)。台車3には、各車軸11をそれぞれ回転させる主電動機13が搭載されている。
電力変換装置4は、車体2の床下において一対の台車3の間に位置する部分に搭載されている。
【0014】
図2は、電力変換装置4の断面図である。電力変換装置4は、鉄道車両1の外部から供給される電力を変換する。
電力変換装置4は、半導体素子21と、半導体素子21を収容する筐体22と、半導体素子21を冷却する冷却器23と、を持つ。
筐体22は、直方体の箱状に形成されている。筐体22は、上部に設けられた図示しない取付け片を介して、車体2の床下に連結されている(図1参照)。
【0015】
半導体素子21は、鉄道車両1を駆動する電力を出力可能に構成されている。具体的に、半導体素子21は、架線5及びパンタグラフ6を介して直流電力が入力されるとともに、直流電力を交流電力に変換して主電動機13等に供給する。半導体素子21は、図示しない制御部等とともに電力変換ユニットを構成している。電力変換ユニットは、上述した筐体22内にまとめて収容されている。なお、制御部は、半導体素子21との間でスイッチング信号を送受信する。
【0016】
冷却器23は、半導体素子21で発生する熱を放熱するヒートシンク31と、ヒートシンク31に接合されたディフューザ32と、を持つ。
ヒートシンク31は、アルミニウム等の熱伝導率が高い材料により形成されている。ヒートシンク31は、一部が筐体22の底壁部22aから下方(配置向き)Z2に向かって突出した状態で、底壁部22aを上下方向Zに貫通している。また、ヒートシンク31は、受熱ブロック41と、受風部42と、を持つ。
【0017】
受熱ブロック41は、底壁部22aに対して上方Z1(配置向きとは反対の向き)に向かって突出している。すなわち、受熱ブロック41は筐体22の内部に位置している。受熱ブロック41の上部に、上述した半導体素子21が搭載されている。受熱ブロック41は、半導体素子21に接続されている。
本実施形態では、受熱ブロック41の上部に、3つの半導体素子21が走行想定方向Xに互いに間隔をあけて配置されている。
【0018】
受風部42は、底壁部22aに対して下方Z2に向かって突出している。すなわち、受風部42は筐体22の外部に位置している。受風部42は、鉄道車両1の走行に伴い、主に走行想定方向Xに流れる走行風を受ける。
【0019】
受風部42は複数のフィン43を備えている(図2では1つのフィン43のみ示している)。フィン43は、幅方向Yを厚さ方向とする薄板状に形成されている。フィン43は、幅方向Yに見たときに矩形状を呈している。
フィン43は、受熱ブロック41の下端面から下方Z2に向かって突設されている。各フィン43は、受熱ブロック41の下端面において、幅方向Yに互いに間隔をあけて並設されている。各フィン43は、走行想定方向Xに沿って互いに平行に延在している。
受風部42の走行想定方向Xの両端部における下端部には、上方Z1に向かって切り欠かれた切欠き44がそれぞれ形成されている。より具体的には、一対の切欠き44はフィン43に形成されている。切欠き44は、幅方向Yに見たときに矩形状を呈している。一対の切欠き44は、受風部42における走行想定方向Xの各端に達している。
【0020】
一対の切欠き44は、走行想定方向Xに離間している。フィン43における一対の切欠き44により走行想定方向Xに挟まれた部分には、フィン43における残りの部分よりも下方Z2の突出した突出部43aが形成されている。
幅方向Yで隣り合うフィン43同士の間には、走行風が通過する通風路Rが形成される。通風路Rは、走行想定方向Xの両側及び下方Z2に向かって開放されている。
【0021】
ディフューザ32は、受風部42の一対の切欠き44内にそれぞれ配置されている。また、一対のディフューザ32は、受風部42にそれぞれ接合されている。
なお、各ディフューザ32は、受風部42における走行想定方向Xの中央部を通りYZ平面に沿って延びる図示しない対称面に対して面対称に形成されている。従って、各ディフューザ32に同一の符号を付して、重複する説明を省略する。また、以下の説明では、走行想定方向Xにおいて、受風部42の中央部に近づく向きを走行想定方向Xの内側といい、受風部42の中央部から離間する向きを走行想定方向Xの外側という場合がある。
【0022】
各ディフューザ32は、走行想定方向Xにおいて中央の大部分を占める導風ガイド61と、導風ガイド61における走行想定方向Xの外側端部(第2端部)に配置された鍔部62と、導風ガイド61における走行想定方向Xの内側端部(第1端部)に配置された整風部63と、を持つ。各ディフューザ32では、導風ガイド61、鍔部62、及び整風部63が一体に成形されている。
【0023】
導風ガイド61は、上下方向Zを厚さ方向として走行想定方向Xに沿って延びる板状に形成されている。具体的に、導風ガイド61は、走行想定方向Xの内側から外側に向かうに従い漸次、下方Z2に向かって傾斜している。すなわち、導風ガイド61では、受風部42のうち切欠き44における上方Z1の底部との間の上下方向Zにおける距離が、走行想定方向Xの内側端部から外側端部に向かうに従い漸次増加している。なお、導風ガイド61は、走行想定方向Xの全域にわたって、受風部42のうち切欠き44における上方Z1の底部との間の上下方向Zにおける距離が一定でもよい。
【0024】
導風ガイド61の走行想定方向Xの外側の端は、受風部42における走行想定方向Xの外側の端に走行想定方向Xにおいて一致している。一対の導風ガイド61の走行想定方向Xの内側端部同士は、走行想定方向Xに離間している。
導風ガイド61は、受風部42に対する下方Z2であって、切欠き44内に配置されている。導風ガイド61の走行想定方向Xの内側端部は、受風部42のうち切欠き44における上方Z1の底部に、溶接やロウ付け等により接合されている。導風ガイド61の走行想定方向Xの外側端部は、受風部42のうち切欠き44における上方Z1の底部から下方Z2に離間している。
【0025】
鍔部62は、走行想定方向Xを厚さ方向として上下方向Zに沿って延びる板状に形成されている。鍔部62は、各導風ガイド61における走行想定方向Xの外側端部から下方Z2に向かって延びている。
各鍔部62の走行想定方向Xの外側の端、及び受風部42の走行想定方向Xの外側の端は、走行想定方向Xにおいて互いに一致している。鍔部62の下端、及び受風部42の下端は、上下方向Zに互いに一致している。
なお、各鍔部62の走行想定方向Xの外側の端は、走行想定方向Xにおいて、受風部42の端よりも受風部42の中央部寄りの位置に配置されていてもよい。一対の鍔部62の一方の走行想定方向Xの外側の端、及び受風部42の走行想定方向Xの外側の端が、走行想定方向Xにおいて互いに一致し、一対の鍔部62の他方の走行想定方向Xの外側の端、及び受風部42の走行想定方向Xの外側の端が、走行想定方向Xにおいて互いに一致しなくてもよい。
【0026】
整風部63は、上下方向Zを厚さ方向として走行想定方向Xに沿って延びる板状に形成されている。整風部63は、導風ガイド61における走行想定方向Xの内側端部から走行想定方向Xの内側(走行想定方向Xの外側端部とは反対側)に向かって延びている。
整風部63は、切欠き44内に配置され、受風部42のうち切欠き44における上方Z1の底部に、溶接やロウ付け等により接合されている。
一対の整風部63の走行想定方向Xの内側端部同士は、走行想定方向Xに離間していて、一対の整風部63の走行想定方向Xの内側端部同士の間には、隙間Tが形成されている。
【0027】
ディフューザ32を構成する導風ガイド61、鍔部62、及び整風部63は、例えばアルミニウム製の板材をプレス加工することにより一体に形成されている。ディフューザ32は、受風部42との接合強度が走行想定方向Xから流入する走行風の影響で折損して、受風部42からディフューザ32が脱落しないように、形状が決められている。
ディフューザ32の鍔部62及び受風部42は、車体2の艤装限界Lに対して上方Z1の範囲内に配置されている。艤装限界Lは、車体2に電力変換装置4等の装備を設置しけても鉄道車両1の走行に支障にならない装備の設置範囲のことを意味する。例えば、車体2の下方Z2の艤装限界Lは、鉄道車両1の台車ばね7が圧縮されて車体2が下がったときに、図示しない軌道に対して上方Z1に所定の距離離れた面として規定される。
なお、鍔部62及び受風部42は、車体2の艤装限界Lに対して下方Z2に一致していていてもよい。
【0028】
次に、以上のように構成された鉄道車両1の作用について説明する。
なお、以下の説明では、鉄道車両1が前方X1に向かって走行する場合について説明する。
【0029】
上述した鉄道車両1を走行させる場合は、まず、架線5及びパンタグラフ6を介して入力された直流電力を、半導体素子21で交流電力に変換する。各半導体素子21から各主電動機13に交流電力を供給することにより、各主電動機13が回転する。すると、主電動機13の回転力が、車軸11に伝達されることで、車軸11及び車輪12が回転する。これにより、鉄道車両1が図示しない軌道上を前方X1に向かって走行する。
なお、半導体素子21では、電力変換時における電力損失に起因して熱が発生する。半導体素子21で発生した熱は、受熱ブロック41を介して受風部42のフィン43に伝達される。
【0030】
一方、鉄道車両1が走行すると、鉄道車両1の周囲には主に後方X2に向かって走行風が流れる。
電力変換装置4の外部から流れ込んだ走行風は、前方X1に位置するディフューザ32の導風ガイド61に導かれて走行想定方向Xに流通する。走行風は、受風部42の外表面上や通風路R内を通過する。この際、受風部42(フィン43)と走行風との間で熱交換が行われることで、半導体素子21で発生する熱が受風部42を介して放熱される。
その後、走行風は、電力変換装置4の外部に排出される。
【0031】
ここで、電力変換装置4内を流通する走行風は、電力変換装置4から排出される際、後方X2のディフューザ32(主に鍔部62)によって流れが妨げられる。このため、後側のディフューザ32よりも後方X2の領域に渦が形成される。これにより、後方X2のディフューザ32(鍔部62)よりも後方X2の領域には、後方X2のディフューザ32よりも前方X1の領域に比べて低圧の低圧領域Qが形成される。
【0032】
すると、通風路R内を流れ、受風部42のフィン43の間を流通する走行風が低圧領域Qに引き込まれるため、後方X2のディフューザ32の上方Z1を通過する走行風の流量が増加する。これにより、通風路R内から下方Z2に逃げようとする走行風が通風路R内に引き戻されることになり、通風路R内を通過する走行風の流量が増大する。
このように、走行想定方向Xに並ぶ2つのディフューザ32は、鉄道車両1の走行方向である前方X1に対して後方X2に位置するディフューザ32が走行風の流量を増大させるために機能する。すなわち、鉄道車両1が逆向きの後方X2に走行すれば、前方X1に位置するディフューザ32が、走行風の流量を増大させるために機能する。
【0033】
ところで、鉄道車両1の走行時には、走行方向の前方X1のディフューザ32によっても走行風の流れが妨げられて、前方X1のディフューザ32において、前方X1の領域に比べて後方X2の領域(つまり、後方X2のディフューザ32よりも前方X1の領域)に低圧の低圧領域Sが形成される。しかしながら、ディフューザ32は、互いに対向する側に向かって(走行想定方向Xに向かって)延びる整風部63を備えているため、この整風部63によって、低圧領域Sに走行風が引き込まれるのが抑制される。このため、後方X2のディフューザ32の上方Z1を通過する走行風の流量がさらに増加する。
【0034】
なお、鉄道車両1が停止しているときには、走行風は流れない。通風路R内の空気は、受風部42との間で熱交換して軽くなり、受風部42から前方X1や後方X2に流れ出る。通風路R内の圧力が低下したため、電力変換装置4の下方Z2の空気は、一対の整風部63の隙間Tを通して通風路R内に流れ込み、受風部42との間で熱交換する。
このように、走行風を用いない自然対流により、半導体素子21で発生する熱が受風部42を介して、電力変換装置4の外部に放熱される。
【0035】
以上説明したように、本実施形態の電力変換装置4では、ディフューザ32が導風ガイド61及び鍔部62を備えている。走行風が後方X2のディフューザ32(鍔部62)の後方X2に形成された低圧領域Qに向かって引き込まれるため、後方X2のディフューザ32の通風路Rを通過する走行風の流量を増加させることができる。これにより、受風部42(通風路R)から逃げようとする走行風を通風路R内に引き戻すことができる。
【0036】
ここで、走行風の流量が少ない場合、後方X2のディフューザ32の低圧領域Qと、この低圧領域Qの周囲との差圧が小さくなる。このため、上記後方X2のディフューザ32の通風路Rを通過する走行風の流量を増加させる効果が得られなくなる可能性がある。しかしながら、ディフューザ32は整風部63を備えているので、前述の低圧領域Sに走行風が引き込まれるのが抑制される。つまり、後方X2のディフューザ32の低圧領域Qと、この低圧領域Qの周囲との差圧が小さい場合であっても、通風路R内から下方Z2へ逃げようとする走行風の流出量を極力抑制することができる。
とりわけ、鉄道車両1の低速走行時は、後方X2のディフューザ32の低圧領域Qと、この低圧領域Qの周囲との差圧が小さい。しかしながら、ディフューザ32の整風部63によって、通風路R内から下方Z2へ逃げようとする走行風の流出量を極力抑制することができる。
【0037】
また、受風部42に導風ガイド61及び整風部63が接合されているため、受風部42の強度を確保することができる。
以上のように、走行風の流量の多少によらず受風部42に対して走行風を効果的に供給し、受風部42の冷却性能及び強度を確保することができる。
例えば、受風部42のフィン43を薄くするとともにフィン43の枚数を多くして複数のフィン43による放熱面器を増加させる場合、フィン43の強度が問題になる。しかし、受風部42に導風ガイド61及び整風部63が接合されているため、複数のフィン43の強度を確保し、ディフューザ32を含めた受風部42の冷却性能を向上させることができる。
【0038】
受風部42に切欠き44が形成され、ディフューザ32の導風ガイド61及び整風部63が受風部42のうち切欠き44における上方Z1の底部に接合されている。これにより、受風部42及びディフューザ32全体としての上下方向Zの長さを短くすることができる。
電力変換装置4が一対のディフューザ32を備えるため、鉄道車両1が前方X1に走行する場合だけでなく、後方X2に走行する場合にも、上述した作用効果が奏功される。
【0039】
一対の整風部63の走行想定方向Xの内側端部同士は、走行想定方向Xに離間している。例えば、鉄道車両1が停止しているときでも、電力変換装置4の下方Z2の空気が、一対の整風部63の隙間Tを通して受風部42の外表面上や通風路R内を通過して、受風部42と熱交換を行う。従って、鉄道車両1が停止しているときでも、受風部42の冷却性能を確保することができる。
各鍔部62の走行想定方向Xの外側の端、及び受風部42の走行想定方向Xの外側の端は、走行想定方向Xにおいて互いに一致している。走行想定方向Xにおいて、一対の鍔部62が受風部42の外形よりも外側に突出しないため、受風部42及び一対の鍔部62全体としての走行想定方向Xの外形を小さく抑えることができる。
【0040】
ディフューザ32が整風部63を備えるため、通風路R内を流れる走行風を走行想定方向Xに沿って流れるように整流させ、受風部42と走行風との熱交換を効率的に行わせることができる。
また、本実施形態の鉄道車両1によれば、ディフューザ32の鍔部62及び受風部42は、車体2の艤装限界Lに対して上方Z1の範囲内に配置されている。このため、車体2に電力変換装置4を取付けても、鉄道車両1の走行に支障が生じない。
電力変換装置4の冷却性能が優れているため、長期にわたって信頼性に優れた鉄道車両1を提供できる。
【0041】
本実施形態の電力変換装置4は、以下に説明するようにその構成を様々に変形させることができる。
図3に示す電力変換装置4Aのように、受風部42に形成された切欠き44Aの下端部の幅方向Yに見た形状を、導風ガイド61及び整風部63の上面の形状に一致させてもよい。この変形例では、導風ガイド61及び整風部63は、走行想定方向Xの全範囲にわたって、受風部42のうち切欠き44Aにおける上方Z1の底部に接合されている。この変形例の電力変換装置4Aの場合、受風部42が備える複数のフィン43は、本実施形態の電力変換装置4の複数のフィン43に比べて、導風ガイド61に接合されるために面積が広がっている。
【0042】
変形例の電力変換装置4Aのように構成することにより、複数のフィン43の放熱面積が増加し、電力変換装置4Aの冷却性能を高めることができる。そして、受風部42の複数のフィン43とディフューザ32とが接合される長さが増加するため、受風部42の強度を増加させることができる。
【0043】
図4に示す電力変換装置4Bのように、変形例の電力変換装置4Aに対して、各ディフューザ32Aは整風部63を備えなくてもよい。この変形例では、受風部42のうち切欠き44Bにおける上方Z1の底部の幅方向Yに見た形状は、導風ガイド61の上面の形状に一致している。一対の導風ガイド61における走行想定方向Xの内側端部間の隙間Tは、電力変換装置4Aに比べて走行想定方向Xに広がっている。
変形例の電力変換装置4Bのように構成することにより、フィン43の突出部43aにおける走行想定方向Xの長さを長くして複数のフィン43の放熱面積を増加させ、電力変換装置4Bの冷却性能を高めることができる。
【0044】
図5に示す電力変換装置4Cのように、実施形態の電力変換装置4に対して、受風部42に切欠き44が形成されていなく、各ディフューザ32は受風部42の下端部に接合されていてもよい。
受風部42が備える複数のフィン43に突出部43aが形成されていないため、一対のディフューザ32の下方Z2を走行風が通過する際の圧力損失が減少する。これにより、低圧領域Qにおける圧力がより減少し、後方X2のディフューザ32の通風路Rを通過する走行風の流量をさらに増加させることができる。
【0045】
本実施形態の電力変換装置4では、各鍔部62の走行想定方向Xの外側の端は、走行想定方向Xにおいて、受風部42の端よりも走行想定方向Xの外側に配置されていてもよい。
本実施形態では、配置向きは下方Z2であるとした。しかし、配置向きはこれに限定されず、幅方向Yのいずれか一方側、すなわち、例えば筐体22の右側であったり、左側であったりしてもよい。
電力変換装置は、鉄道車両1の車体2に限定されず、自動車等の種々の車両に搭載することができる。
【0046】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、配置向きに受風部42に接合した状態で配置された一対の導風ガイド61を持つことにより、受風部42に対して走行風を効果的に供給し、鉄道車両1の全速度域で所望の冷却性能と受風部42の強度を確保することができる。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0048】
1…鉄道車両、2…車体、4,4A,4B,4C…電力変換装置、21…半導体素子、42…受風部、44,44A,44B…切欠き、61…導風ガイド、62…鍔部、63…整風部、L…艤装限界、X…走行想定方向、Y…幅方向(直交方向)、Z…上下方向、Z2…下方
図1
図2
図3
図4
図5