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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】ホームステップ装置
(51)【国際特許分類】
   B61B 1/02 20060101AFI20220613BHJP
【FI】
B61B1/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018107066
(22)【出願日】2018-06-04
(65)【公開番号】P2019209820
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小森 美樹
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-108746(JP,A)
【文献】特開平02-048260(JP,A)
【文献】特開2013-063693(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0043664(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 1/02
B61L 1/00-99/00
E01F 1/00,13/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体に収容されるステップに駆動手段から駆動力を伝達して当該ステップを出し入れし、当該駆動力を伝達して送風部材を回転させて前記筐体内の機器を冷却するホームステップ装置。
【請求項2】
前記送風部材と共に回転するチェーン又はベルトを用いて前記駆動力を伝達する
請求項1に記載のホームステップ装置。
【請求項3】
前記ステップが出るときと引っ込むときとで前記送風部材の回転方向が変化する
請求項1又は2に記載のホームステップ装置。
【請求項4】
前記送風部材は遠心方向に送風する遠心ファンである
請求項3に記載のホームステップ装置。
【請求項5】
前記送風部材は回転軸方向に送風する軸流ファンであり、前記ステップを筐体内から出す際に前記機器に送風する軸流ファンと、前記ステップを筐体内に引っ込める際に前記機器に送風する軸流ファンとが設けられた
請求項3又は4に記載のホームステップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホームと車両の隙間への落下を防ぐ技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ホームと車両の隙間への落下を防ぐ技術として、特許文献1には、可動ステップの正常又は異常を判断するためにモータ等の状態検知センサ及び可動ステップの位置検知センサ等を備えたプラットホームステップ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-63693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ホームステップ装置をホームに設置する際、装置を直接ホームの切り欠きに設置するのではなく、装置を収容する収容部材を設置して、その収容部材に装置を収容する場合がある。収容部材とホームの間にはモルタル等の充填材が充填されるが、収容部材とホームの隙間に充填不足の部分があると、ホームステップ装置が不安定になる恐れがある。
本発明は、上記の背景に鑑み、冷却専用の駆動力を用いずに機器を冷却することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、筐体に収容されるステップに駆動手段から駆動力を伝達して当該ステップを出し入れし、当該駆動力を伝達して送風部材を回転させて前記筐体内の機器を冷却するホームステップ装置を第1の態様として提供する。
【0006】
第1の態様のホームステップ装置によれば、冷却専用の駆動力を用いずに機器を冷却することができる。
【0007】
上記の第1の態様のホームステップ装置において、前記送風部材と共に回転するチェーン又はベルトを用いて前記駆動力を伝達する、という構成が第2の態様として採用されてもよい。
【0008】
第2の態様のホームステップ装置によれば、駆動力の発生位置から離れて配置された機器の冷却を容易にすることができる。
【0009】
上記の第1又は第2の態様のホームステップ装置において、前記ステップが出るときと引っ込むときとで前記送風部材の回転方向が変化する、という構成が第3の態様として採用されてもよい。
【0010】
第3の態様のホームステップ装置によれば、回転方向の切替機構がなくてもステップの出し入れの両方の期間において冷却対象の機器を冷却することができる。
【0011】
上記の第3の態様のホームステップ装置において、前記送風部材は遠心方向に送風する遠心ファンである、という構成が第4の態様として採用されてもよい。
【0012】
第4の態様のホームステップ装置によれば、1つの送風部材でステップ出し入れの両方の期間における冷却をすることができる。
【0013】
上記の第3又は第4の態様のホームステップ装置において、前記送風部材は回転軸方向に送風する軸流ファンであり、前記ステップを筐体内から出す際に前記機器に送風する軸流ファンと、前記ステップを筐体内に引っ込める際に前記機器に送風する軸流ファンとが設けられた、という構成が第5の態様として採用されてもよい。
【0014】
第5の態様のホームステップ装置によれば、遠心ファンを用いる場合に比べて風量を多くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例に係るホームステップ装置の外観を表す図
図2】ホームステップ装置の外観を表す図
図3】ホームステップ装置の外観を表す図
図4】天板部を外したホームステップ装置の外観を表す図
図5】天板部を外したホームステップ装置の平面図を表す図
図6】ステップを表す図
図7】ステップをロックした状態を表す図
図8】手動駆動部及び送風冷却部を表す図
図9】変形例の送風冷却部を表す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
[1]実施例
図1は実施例に係るホーム設備1の外観を表す。ホーム設備1は、鉄道の駅のホーム9(プラットホーム)の線路側に設置され、ホーム9からの乗客の転落を防ぎつつ、鉄道の車両がホーム9に到着したときには乗降を可能にすると共に乗降時の転落を防ぐ役割を果たす設備である。図1(a)では、線路側から見たホーム設備1が表され、図1(b)では、鉛直上方から見たホーム設備1が表されている。
【0017】
ホーム設備1は、少なくとも1つのホームドア3と、少なくとも1つのホームステップ装置10とを備えており、本実施例では、複数のホームドア3と、複数のホームステップ装置10とを備えている。各ホームドア3は、いずれもドア4と、格納部5とを備える。ドア4は、本実施例では、停車した車両のドアに対向する位置に配置されている。格納部5は、水平方向の一方の端から開放位置にあるドア4を格納する(いわゆる戸袋としての役割を果たす)。
【0018】
また、格納部5は、反対側の端が閉鎖位置にあるドア4と接触してホーム9にいる乗客を線路側に通さないようにしている。開放位置とは最も開いた状態のドア4の位置であり、閉鎖位置とは完全に閉じた状態のドア4の位置である。複数のホームドア3がホーム9の延伸方向A3(線路の延伸方向でもある)の全体に渡って並べて設置されることで、ホーム9の線路側及び内側を隔てるようにしている。ここでいう内側とは、ホーム9の線路側を外側とした場合の外側から離れた部分を意味する。線路側及び内側は、ホーム9のうちの線路に近い方(線路側)及び遠い方(内側)と言い換えてもよい。
【0019】
ホームステップ装置10は、筐体20と、ステップ30とを備え、筐体20に収容されたステップ30を出し入れする装置である。筐体20は、板状且つ中空の形をしており、線路側に開口部21を有している。ステップ30は、筐体20の内部に収容され、後述する駆動手段によって駆動されて筐体20の開口部21を通って出し入れされる。ステップ30は、ホーム9と停車した車両との隙間に張り出して、乗降する乗客の足場となる。
【0020】
ホームステップ装置10は、前述したホーム9の内側から線路側に向かう方向(張出方向A1)にステップ30を移動させて筐体20から張り出した張出状態にし、張り出した状態のステップ30を線路側からホーム9の内側に向かう方向(収容方向A2)に移動させて筐体20に収容された収容状態にする。ホームステップ装置10は、ホーム9の延伸方向A3の寸法が張出方向A1の寸法よりも長い形をしている。なお、ホーム9の延伸方向A3は、張出方向A1及び収容方向A2に直交する方向であるものとする。
【0021】
ホーム9には、ホームステップ装置10を設置するための切り欠き93が設けられている。切り欠き93には、収容部材6が設置されている。収容部材6は、ホームステップ装置10を収容するためにホーム9の切り欠き93に設置される部材である。収容部材6は、中空の直方体の6面のうち上面及び線路側の側面を除く4面を有する形をしており、内側にホームステップ装置10を収容可能な大きさで形成された箱状の部材である。収容部材6は、自部材と切り欠き93との間にモルタル等の充填材が注入されることで切り欠き93に固定されている。
【0022】
ホームステップ装置10は、切り欠き93に固定された収容部材6の内側に設置されている。この状態で、ホームステップ装置10は、自装置の上面11がホーム9の上面91と概ね同一の平面を成し、自装置の線路側の側面12(ステップ30が収容された状態における側面)がホーム9の側面92と概ね同一の平面を成すように設置される。ホーム9に設置されたホームステップ装置10の延伸方向A3の両端の上方には、ホームドア3の格納部5が設置されている。
【0023】
ステップ30は、本実施例では、延伸方向A3の寸法が、隣り合う格納部5同士の距離(ドア4が開いたときの乗降経路の幅)と概ね同じになっている。ホームドア3及びホームステップ装置10は、図示せぬ制御装置に電気的に接続されており、ドア4の開閉とステップ30の出し入れが連動するようになっている。具体的には、例えば、車両が停止すると、まずステップ30が張り出し、次にドア4が開く。そして、出発時間になると、まずドア4が閉じてからステップ30が収容され、車両が出発する。なお、乗客の安全が確保されるのであれば、これとは異なるタイミングで開閉及び出し入れが行われてもよい。
【0024】
図2及び図3はホームステップ装置10の外観を表す。図2では、ステップ30が筐体20に収容された状態のホームステップ装置10が表されており、図3では、ステップ30が張出方向A1に移動して筐体20から張り出した状態のホームステップ装置10が表されている。筐体20は、本体部40と、天板部50とを備える。本体部40は、中空の直方体のうち鉛直上方及び線路側の面を除いた4面を有する箱状の部材である。
【0025】
天板部50は、本体部40の鉛直上方を覆う板状の部材であり、5枚の天板51、52、53、54、55を有する。各天板は、金属等で形成され、乗客に踏まれても容易には変形しない強度を有する。各天板には、滑り止めの突起が上面に形成されている。この滑り止めの突起は、ステップ30の上面にも形成されている。各天板は、本体部40内の後述する天板支持部材にリベットで固定されている。ホーム9に一度設置すると、天板を外す機会は少ないが、修理等で必要な場合は、ドリル等を用いてリベットを取り外すことで天板を外すことができる。
【0026】
ただし、それでは手間がかかるので、例えば不具合でステップ30が動かなくなるといった緊急の事態に対応するために、作業員(例えば駅員)が手動で作業を行うための開口部56が天板53に設けられており、開口部57が天板54に設けられている。天板53は開口部56を覆う蓋58を有し、天板54は開口部57を覆う蓋59を有している。蓋58及び59は、一般人が取り外しできないように、専用の冶具を用いて天板53、54への取り付け及び取り外しが行われる。
【0027】
図4は天板部50を外したホームステップ装置10の外観を表し、図5はその平面図を表す。なお、図5以降では、図を見やすくするため、滑り止めの突起は図示を省略している。ホームステップ装置10は、本体部40と、天板支持部材41-1及び4つの41-2(それぞれを区別しない場合は「天板支持部材41」という)と、ガイドレール42-1及び42-2(それぞれを区別しない場合は「ガイドレール42」という)と、モータ駆動部43と、電磁ブレーキ部44と、手動駆動部45と、手動ロック部46と、電動ロック部47と、送風冷却部48とを備える。
【0028】
本体部40は、側板401、402と、後方板403と、底板404とを有し、上述した4面を有する形状をしている。天板支持部材41は、各天板の端部に対応する位置に設けられ、各天板を支持する。天板支持部材41-1は、本体部40の側板401、402及び後方板403の鉛直上方の端に取り付けられている。天板支持部材41-2は、底板404のうち隣接する天板同士が接する位置に取り付けられている。各天板支持部材41には、前述したリベットを取り付ける孔が設けられており、各天板が固定される。
【0029】
ガイドレール42は、天板部50を含む筐体20内に設けられ、自レールの長手方向にステップ30を案内する。ガイドレール42は、長手方向が張出方向A1に沿うように設けられているため、張出方向A1及び収容方向A2にステップ30を案内する。ガイドレール42-1は、ホームステップ装置10を張出方向A1から見たときの中央よりも右側に配置され、ガイドレール42-2は、ホームステップ装置10を張出方向A1から見たときの中央よりも左側に配置されている。
【0030】
モータ駆動部43は、モータ431及びボールねじ432を有し、モータ431の回転力をボールねじ432が張出方向A1に沿った方向の力に変換してステップ30に伝達し、ステップ30を駆動する。このように、モータ駆動部43は、電力で動作し、筐体20に収容されるステップ30に駆動力を伝達してそのステップ30を出し入れする。モータ駆動部43は本発明の「駆動手段」の一例である。モータ駆動部43は、ホームステップ装置10を張出方向A1から見たときの延伸方向A3における中央に配置されている。ここで、ステップ30について図6を参照して説明する。
【0031】
図6はステップ30を表す。図6(a)では鉛直上方から見たステップ30を表し、図6(b)では収容方向A2から見たステップ30を表している。ステップ30は、ステップ部31と、支持部32と、伝達部33とを有する。ステップ部31は、筐体20から張り出して乗客に踏みつけられる板状の部分である。支持部32は、レール部32-1及び32-2と、板部32-3とを有する。
【0032】
レール部32-1及び32-2は、ガイドレール42の鉛直上方に配置され、ガイドレール42によって支持される。レール部32-1は、レール上を移動可能な形をしたキャスタ部35-1を鉛直下方に有し、キャスタ部35-1は、ガイドレール42-1上を移動する。レール部32-2は、同じくキャスタ部35-2を鉛直下方に有し、キャスタ部35-2は、ガイドレール42-2上を移動する。
【0033】
板部32-3は、ステップ部31よりも厚手で且つステップ部31をわずかに小さくした形をした板状の部材であり、ステップ部31のほぼ全体を鉛直下方から支持する。板部32-3は、レール部32-1及び32-2は板部32-3に溶接されており、ステップ部31に加わる乗客の荷重をレール部32-1及び32-2も一体になって支えている。伝達部33は、モータ駆動部43のボールねじ432が挿入されるナット孔34を有する。ナット孔34に挿入されたボールねじ432が回転すると、ボールねじ432の回転力が直線移動の駆動力として伝達される。
【0034】
上記のとおり、ステップ30は、乗客が直接踏みつけるステップ部31と、ステップ部31を支持し且つガイドレール42による案内もされる支持部32とを一体にした一体型のステップである。また、ホームステップ装置10は、伝達部33に伝達される駆動力により、ガイドレール42の長手方向に案内されるこの一体型のステップ30を筐体20から出し入れする。
【0035】
図5に戻る。電磁ブレーキ部44は、張り出した状態になったステップ30が張出方向A1及び収容方向A2のいずれに動いても危険なので、動かないようにブレーキをかける部分である。電磁ブレーキ部44は、レール部32-2に接触してブレーキをかけるように設置されている。手動駆動部45は、モータ駆動部43等に異常が生じてステップ30の出し入れが正常に行われなくなった場合に、手動でステップ30の出し入れをするための手段である。
【0036】
手動ロック部46は、同じ場合に、手動で筐体20に収容したステップ30が動かないように固定(ロック)する手段である。レール部32-1には、ロック用の孔が設けられている。手動ロック部46は、棒状の部分を有し、この孔にその棒状の部分を挿入することでステップ30を固定する。電動ロック部47は、収容された状態になったステップ30が張出方向A1に動くと車両に接触する可能性があり危険なので、動かないようにロックする手段である。
【0037】
ステップ30のレール部32-1は、ロック用部材321を有している。ロック用部材321には、ロック孔322が設けられている。電動ロック部47は、鉄芯471(ブランジャ)を出し入れするソレノイドであり、押し出した鉄芯471をロック孔322に挿入することでステップ30をロックする。
図7はステップ30をロックした状態を表す。図7(a)では、筐体20に収容されたステップ30が表されている。
【0038】
図7(b)では、図7(a)における電動ロック部47を含むX部を拡大して表している。電動ロック部47は、ステップ30が筐体20に完全に収容されたときにロック孔322が正面となる位置に配置されており、ステップ30が完全に収容されると鉄芯471を押し出してロック孔322に挿入する。本実施例では、この鉄芯471が押し出された状態のときに電動ロック部47が通電されているものとする。
【0039】
つまり、電動ロック部47は、通電することで鉄芯471を押し出すプッシュ型のソレノイドである。ステップ30は収容されている時間の方が長いので、発熱する電動ロック部47を冷却する必要がある。送風冷却部48は、ファンを有し、この発熱する電動ロック部47に風を送って冷却する手段である。送風冷却部48は、手動駆動部45を介して伝達されてくるモータ駆動部43の駆動力によりファンを回転させる。この伝達の仕組みについて図8を参照して説明する。
【0040】
図8は手動駆動部45及び送風冷却部48を表す。ステップ30は、モータ駆動部43だけでなく、手動駆動部45からも駆動力を受け取って筐体20から出し入れされる。手動駆動部45は、第1ギヤ451と、ローラーチェーン452と、ハンドルギヤ453と、クランクハンドル454と、第2ギヤ455とを備える。第1ギヤ451及び第2ギヤ455は、ローラーチェーン452が掛けられているギヤ(スプロケットとも言う)である。
【0041】
ローラーチェーン452は、自転車のチェーンのように多数の孔を有する無端のチェーンであり、回転するスプロケットの歯を各孔に挿入することでスプロケットと共に回転する。ハンドルギヤ453は、クランクハンドル454が取り付けられたギヤ(スプロケット)であり、同じくローラーチェーン452が掛けられている。クランクハンドル454は、ハンドルギヤ453に接続され、ハンドルギヤ453の回転軸から離れた位置にあるハンドルを回すことでハンドルギヤ453と同じ回転軸で回転する。
【0042】
作業員(例えば駅員)がクランクハンドル454を回転させると、ハンドルギヤ453が回転し、ハンドルギヤ453に掛けられたローラーチェーン452も回転し、それに合わせて第1ギヤ451及び第2ギヤ455も回転する。第2ギヤ455は、第2ギヤ455の回転運動をステップ30の伝達部33の直線運動に変換する変換機構(例えば平歯車と直線歯車)と接続されている。
【0043】
モータ431及び電磁ブレーキ部44の電源が切れた状態で第2ギヤ455が回転すると伝達部33が張出方向A1及び収容方向A2に移動する。その際、伝達部33が移動すると、それに伴って、伝達部33に挿入されているボールねじ432が回転するようになっている。反対に、電力を供給されたモータ431がボールねじ432を回転させて伝達部33を移動させると、伝達部33の直線運動が前述した変換機構により第2ギヤ455の回転運動に変換され、ローラーチェーン452及び第1ギヤ451が回転する。
【0044】
送風冷却部48は、ローラーチェーン481と、ファンギヤ482と、送風ファン483とを有する。ローラーチェーン481は、ローラーチェーン452と同じく、スプロケットと共に回転する無端のチェーンである。第1ギヤ451は、2層になっていて、下層側にローラーチェーン452が掛けられ、上層側にローラーチェーン481が掛けられている。
【0045】
ローラーチェーン481は、ファンギヤ482にも掛けられており、第1ギヤ451が回転するとファンギヤ482も回転する。ファンギヤ482には、送風ファン483が固定されている。送風ファン483は、円柱状の回転軸484と、8枚の羽根485とを有する。羽根485は、いずれも板状の部材であり、回転軸484を中心とする遠心方向(回転軸484が回転したときに遠心力が働く方向。放射方向とも言う)に各々の面が沿うように回転軸484に取り付けられている。
【0046】
これらの羽根485は、回転軸484と共に回転すると、遠心方向に風を送り出す。つまり、送風ファン483は、遠心方向に送風する遠心ファンである。送風ファン483は本発明の「送風部材」の一例である。送風冷却部48は、上記のとおり、ステップ30を駆動する駆動力(モータ駆動部43が発生させる駆動力)を伝達して送風ファン483を回転させて筐体20内の機器である電動ロック部47を冷却する。
【0047】
本実施例では、このようにステップ30を駆動する駆動力を利用することで、冷却専用の駆動力を用いずに機器(電動ロック部47)を冷却することができる。また、送風冷却部48は、送風ファン483と共に回転するローラーチェーン481を用いて駆動力を伝達する。また、前述した伝達部33は、ステップ30の張り出し時と収容時とで移動する方向が反対になる。
【0048】
そのため、変換機構により変換された回転運動の方向も反対向きになり、それに合わせて回転するローラーチェーン481及び送風ファン483の回転方向も反対になる。つまり、送風ファン483は、ステップが筐体20から出るときと筐体20に引っ込むときとで回転方向が変化する。しかし、送風ファン483は、前述したとおり遠心ファンであり、遠心ファンは回転方向にかかわらず遠心方向に送風する。
【0049】
例えば回転軸方向に送風する軸流ファンを用いる場合、回転方向が反対になると送風方向も反対になるため、例えばステップ30の出し入れに応じて回転方向を切り替える切替機構を用いることで出し入れの両方において冷却対象に送風することが考えられる。これに対し、本実施例では、送風ファン483の遠心方向に冷却対象(電動ロック部47)を配置しておけば、ステップ30の出し入れにより回転方向が変化しても常に冷却対象に送風することができる。これにより、回転方向の切替機構がなくてもステップ30の出し入れの両方の期間において冷却対象の機器を冷却することができる。
【0050】
[2]変形例
上述した実施例は本発明の実施の一例に過ぎず、以下のように変形させてもよい。また、実施例及び各変形例は必要に応じてそれぞれ組み合わせてもよい。
【0051】
[2-1]駆動力の伝達方法
実施例では、ローラーチェーン452及びローラーチェーン481を用いて駆動力が伝達されたが、駆動力の伝達方法はこれに限らない。例えばローラーチェーンの代わりにベルトが用いられてもよい。また、それらの代わりに複数のギヤを配置して駆動力を伝達してもよい。ただし、例えば図8に表す第1ギヤ451及びファンギヤ482は、図5に表すようにかなり離れているため、複数のギヤを用いる方法だと、ギヤを何枚も配置しなければならない。
【0052】
ギヤの枚数を増やすほど摩擦抵抗が大きくなるし、ギヤの配置及び形状の精度も高めなければならなくなる。これに対し、ローラーチェーン及びベルトは、摩擦抵抗及び必要な精度の高さが動力の発生源(グリップ458)と伝達先(第2ギヤ455)の距離による影響を受けにくい。そのため、ギヤだけを用いて駆動力を伝達する場合に比べて、駆動力の発生位置から離れて配置された機器の冷却を容易にすることができる。
【0053】
[2-2]送風部材
実施例では、送風部材として遠心ファンが用いられたが、これに限らず、例えば軸流ファン(回転軸に沿った方向に送風するファン)が用いられてもよい。その場合でも、ステップ30を駆動する駆動力(モータ駆動部43が発生させる駆動力)を伝達して送風部材を回転させることで、実施例と同様に冷却専用の駆動力を用いずに機器を冷却することができる。
【0054】
なお、軸流ファンが1つだと、ステップ30の出し入れのどちらか一方の期間だけ冷却対象に送風されることになるので、両方の期間に送風するために次のような構成としてもよい。
図9は本変形例の送風冷却部48aを表す。送風冷却部48aは、ローラーチェーン481-1、481-2と、ファンギヤ482-1、482-2と、いずれも回転軸方向に送風する軸流ファンである送風ファン483-1、483-2とを有する。
【0055】
本変形例の手動駆動部45aは、ローラーチェーン452が掛けられるスプロケットに傘歯車が固定された第1ギヤ451aと、第1ギヤ451aに噛み合う傘歯車にスプロケットを固定したギヤ456-1及び456-2とを有する。ギヤ456-1及び456-2のスプロケットにローラーチェーン481-1及び481-2がそれぞれ掛けられ、ローラーチェーン481-1及び481-2がファンギヤ482-1及び482-2に掛けられる。
【0056】
ファンギヤ482-1及び482-2には、送風ファン483-1及び483-2がそれぞれ同軸で固定されている。送風ファン483-1は、例えばステップ30が張出方向A1に移動するときに電動ロック部47に向かう方向A4に送風し、ステップ30が収容方向A2に移動するときにその反対の方向A5に送風する。一方、送風ファン483-2は、ステップ30が収容方向A2に移動するときに電動ロック部47に向かう方向A6に送風し、ステップ30が張出方向A1に移動するときにその反対の方向A7に送風する。
【0057】
このように、本変形例では、ステップ30を筐体20内から出す際に冷却対象の機器に送風する送風ファン483-1と、ステップ30を筐体20内に引っ込める際に冷却対象の機器に送風する送風ファン483-2とが設けられている。これにより、実施例と同様に、回転方向の切替機構がなくてもステップの出し入れの両方の期間において冷却対象の機器を冷却することができる。
【0058】
なお、実施例では、遠心ファンである送風ファン483を設けることで、1つの送風部材だけでそのような冷却を行うことができたので、図9の例に比べると、送風部材の設置スペースを小さくすることができる。一方、遠心ファンに比べると、軸流ファンの方が風量が多いので、図9の例であれば、遠心ファンを用いる場合に比べて、設置スペースは大きくなるが、風量を多くすることができる。
【0059】
なお、本変形例の送風冷却部は図9で述べたものに限らない。例えば冷却対象が駆動力を発生させるモータ自身であり、且つ、軸貫通型のモータであれば、前後の回転軸に軸流ファンを同じ向きに取り付ければよい。そのモータがステップの出し入れで回転方向を変化させた場合、ステップの出し入れの両方の期間において冷却対象であるモータ自身を冷却することができる。
【0060】
なお、送風部材は、上記以外にも、例えば斜流ファン又は横流ファン等が用いられてもよい。いずれの場合も、ステップ30を駆動する駆動力(モータ駆動部43が発生させる駆動力)を伝達して回転させることで冷却対象の機器を冷却することができるものが用いられていればよい。
【0061】
[2-3]電動ロック部
電動ロック部は、実施例では、プッシュ型のソレノイドであったが、プル型(通電することで鉄芯471を引っ込める)のソレノイドであってもよい。その場合も、ステップ30が張り出している間は発熱するので、送風冷却部により冷却されることが望ましい。
【0062】
[2-4]冷却対象
送風冷却部による冷却の対象は、上述した機器(電動ロック部及びモータ)に限らない。これら以外にも、電磁ブレーキ部等の発熱する機器であれば、どのような機器を冷却対象としてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1…ホーム設備、6…収容部材、10…ホームステップ装置、20…筐体、30…ステップ、31…ステップ部、32…支持部、40…本体部、50…天板部、41…天板支持部材、42…ガイドレール、43…モータ駆動部、44…電磁ブレーキ部、45…手動駆動部、46…手動ロック部、47…電動ロック部、48…送風冷却部、451…第1ギヤ、452…ローラーチェーン、455…第2ギヤ、471…鉄芯、481…ローラーチェーン、482…ファンギヤ、483…送風ファン。
図1
図2
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図5
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図7
図8
図9