(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】センサノード、センサネットワーク、および、中継ノードの動作推定方法
(51)【国際特許分類】
H04W 52/02 20090101AFI20220613BHJP
H04W 84/18 20090101ALI20220613BHJP
H04W 28/04 20090101ALI20220613BHJP
H04Q 9/00 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
H04W52/02 110
H04W84/18 110
H04W28/04 110
H04Q9/00 311J
(21)【出願番号】P 2018111024
(22)【出願日】2018-06-11
【審査請求日】2021-01-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】仲野 良佑
(72)【発明者】
【氏名】大山 直樹
(72)【発明者】
【氏名】近藤 一海
(72)【発明者】
【氏名】村田 英明
【審査官】白川 瑞樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0176465(US,A1)
【文献】特開2009-206624(JP,A)
【文献】特開2007-202134(JP,A)
【文献】特表2017-530663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03J9/00-9/06
H04B7/24-7/26
H04M3/00
3/16-3/20
3/38-3/58
7/00-7/16
11/00-11/10
H04Q9/00-9/16
H04W4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサネットワークを構成する中継ノードであって、送達確認の送信を要求する応答要求フレームに対して前記送達確認を送信するアクティブ期間と前記送達確認を送信しないスリープ期間とを所定の
第1動作設定に従って切り替えるように構成された中継ノード、に前記応答要求フレームを送信するよう構成されたセンサノードであって、
前記センサネットワークに接続するための通信部と、
センシング対象を計測するためのセンサ部と、
前記応答要求フレームを所定の
第2動作設定に従って前記中継ノードに送信するように構成された送信部、及び前記送達確認の受信状況に基づいて前記中継ノードの前記アクティブ期間または前記スリープ期間の少なくとも一方を判定するように構成された判定部、を含む動作状態推定部と、
前記
第1動作設定の推定結果に基づいて、前記センサ部によって計測された計測データの通信先との通信の実行を制御するように構成された通信実行制御部と、を備え
、
前記動作状態推定部は、
前記センサノードが受信した前記送達確認に対応する第1の前記応答要求フレームおよび第2の前記応答要求フレームである2つの前記応答要求フレームであって、前記第1の応答要求フレームの送信時と前記第2の応答要求フレームの送信時との間には、前記中継ノードからの対応する前記送達確認を受信しなかった第3の応答要求フレームが送信されている場合の前記2つの応答要求フレームの送信間隔、または、前記2つの応答要求フレームに対して前記センサノードが受信した2つの前記送達確認の受信間隔に基づいて、前記アクティブ期間の時間間隔を算出するように構成された算出部を、さらに有し、
前記第2動作設定は、複数の前記応答要求フレームの各々を送信する送信間隔設定を含み、
前記動作状態推定部は、前記送信間隔設定に従って前記応答要求フレームを送信する前記送信部による前記応答要求フレームの送信実行間隔を変更するように構成された送信実行間隔変更部を、さらに有し、
前記送信実行間隔変更部は、
前記送達確認が受信された場合には前記応答要求フレームの送信実行間隔を短くし、前記送達確認が受信されない場合には、前記応答要求フレームの送信実行間隔を長くすることを特徴とするセンサノード。
【請求項2】
センサネットワークを構成する中継ノードであって、送達確認の送信を要求する応答要求フレームに対して前記送達確認を送信するアクティブ期間と前記送達確認を送信しないスリープ期間とを所定の第1動作設定に従って切り替えるように構成された中継ノード、に前記応答要求フレームを送信するよう構成されたセンサノードであって、
前記センサネットワークに接続するための通信部と、
センシング対象を計測するためのセンサ部と、
前記応答要求フレームを所定の第2動作設定に従って前記中継ノードに送信するように構成された送信部、及び前記送達確認の受信状況に基づいて前記中継ノードの前記アクティブ期間または前記スリープ期間の少なくとも一方を判定するように構成された判定部、を含む動作状態推定部と、
前記第1動作設定の推定結果に基づいて、前記センサ部によって計測された計測データの通信先との通信の実行を制御するように構成された通信実行制御部と、を備え、
前記通信実行制御部は、
前記第1動作設定の推定結果に基づいて、前記中継ノードの前記アクティブ期間に前記通信先との通信を実行する通信実行タイミングを決定するように構成された通信タイミング決定部と、
前記通信実行タイミングで前記通信先との通信を実行するように構成された通信実行部と、を有し、
前記通信タイミング決定部は、
前記通信実行タイミングの初期値を設定するように構成された初期値設定部と、
前記通信先との通信時に送信する前記応答要求フレームに対する前記送達確認の受信状況に基づいて、前記通信実行タイミングの初期値を調整していくことにより、前記通信実行タイミングを決定するように構成された調整部と、をさらに有し、
前記調整部は、前記送達確認が受信された場合に、通信頻度が段階的に下がるように、前記通信実行タイミングの初期値を調整していくことを特徴とするセンサノード。
【請求項3】
前記動作状態推定部は、
前記センサノードが受信した前記送達確認に対応する第1の前記応答要求フレームおよび第2の前記応答要求フレームである2つの前記応答要求フレームであって、前記第1の応答要求フレームの送信時と前記第2の応答要求フレームの送信時との間には、前記中継ノードからの対応する前記送達確認を受信しなかった第3の応答要求フレームが送信されている場合の前記2つの応答要求フレームの送信間隔、または、前記2つの応答要求フレームに対して前記センサノードが受信した2つの前記送達確認の受信間隔に基づいて、前記アクティブ期間の時間間隔を算出するように構成された算出部を、さらに有することを特徴とする請求項
2に記載のセンサノード。
【請求項4】
前記
第2動作設定は、複数の前記応答要求フレームの各々を送信する送信間隔設定を含み、
前記動作状態推定部は、前記送信間隔設定に従って前記応答要求フレームを送信する前記送信部による前記応答要求フレームの送信実行間隔を変更するように構成された送信実行間隔変更部を、さらに有し、
前記送信実行間隔変更部は、
前記送達確認が受信された場合には前記応答要求フレームの送信実行間隔を短くし、前記送達確認が受信されない場合には、前記応答要求フレームの送信実行間隔を長くすることを特徴とする請求項
3に記載のセンサノード。
【請求項5】
前記送信実行間隔変更部は、前記応答要求フレームの送信実行間隔が、所定の最小値以上で、かつ、所定の最大値以下の範囲に収まるように、前記応答要求フレームの送信実行間隔を変更することを特徴とする請求項
1または4に記載のセンサノード。
【請求項6】
前記通信実行制御部は、
前記
第1動作設定の推定結果に基づいて、前記中継ノードの前記アクティブ期間に前記通信先との通信を実行する通信実行タイミングを決定するように構成された通信タイミング決定部と、
前記通信実行タイミングで前記通信先との通信を実行するように構成された通信実行部と、を有することを特徴とする請求項1に記載のセンサノード。
【請求項7】
前記通信タイミング決定部は、
前記通信実行タイミングの初期値を設定するように構成された初期値設定部と、
前記通信先との通信時に送信する前記応答要求フレームに対する前記送達確認の受信状況に基づいて、前記通信実行タイミングの初期値を調整していくことにより、前記通信実行タイミングを決定するように構成された調整部と、をさらに有することを特徴とする請求項
6に記載のセンサノード。
【請求項8】
前記調整部は、前記送達確認が受信された場合に、通信頻度が段階的に下がるように、前記通信実行タイミングの初期値を調整していくことを特徴とする請求項
7に記載のセンサノード。
【請求項9】
前記調整部は、前記送達確認が受信されない場合に、通信頻度が段階的に上がるように、前記通信実行タイミングの初期値を調整していくことを特徴とする請求項
2、7、または
8に記載のセンサノード。
【請求項10】
前記通信実行部によって送信された前記応答要求フレームに対して前記送達確認が受信されない場合に前記動作状態推定部に対して通知するように構成された通知部を、さらに備えることを特徴とする請求項
2、6、7、8、または9に記載のセンサノード。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか1項に記載のセンサノードと、
前記センサノードが送信する送信データを収集するように構成されたゲートウェイノードと、
前記センサノードが送信する前記送信データを前記ゲートウェイノードに中継するように構成された中継ノードと、を備えることを特徴とするセンサネットワーク。
【請求項12】
センサネットワークを構成する中継ノードであって、送達確認の送信を要求する応答要求フレームに対して前記送達確認を送信するアクティブ期間と前記送達確認を送信しないスリープ期間とを所定の
第1動作設定に従って切り替えるように構成された中継ノード、に前記応答要求フレームを送信するよう構成されたセンサノードで実行する中継ノードの動作推定方法であって、
前記応答要求フレームを所定の
第2動作設定に従って前記中継ノードに送信するステップ、及び前記送達確認の受信状況に基づいて前記中継ノードの前記アクティブ期間または前記スリープ期間の少なくとも一方を判定するステップ、を含む動作状態推定のためのステップと、
前記
第1動作設定の推定結果に基づいて、
センシング対象を計測するためのセンサ部によって計測された計測データの通信先との通信の実行を制御するステップと、を備え
、
前記動作状態推定のためのステップは、
前記センサノードが受信した前記送達確認に対応する第1の前記応答要求フレームおよび第2の前記応答要求フレームである2つの前記応答要求フレームであって、前記第1の応答要求フレームの送信時と前記第2の応答要求フレームの送信時との間には、前記中継ノードからの対応する前記送達確認を受信しなかった第3の応答要求フレームが送信されている場合の前記2つの応答要求フレームの送信間隔、または、前記2つの応答要求フレームに対して前記センサノードが受信した2つの前記送達確認の受信間隔に基づいて、前記アクティブ期間の時間間隔を算出するためのステップを、さらに有し、
前記第2動作設定は、複数の前記応答要求フレームの各々を送信する送信間隔設定を含み、
前記動作状態推定のためのステップは、前記送信間隔設定に従って前記応答要求フレームを送信する前記送信するステップにおける前記応答要求フレームの送信実行間隔を変更するためのステップを、さらに有し、
前記送信実行間隔を変更するためのステップは、
前記送達確認が受信された場合には前記応答要求フレームの送信実行間隔を短くし、前記送達確認が受信されない場合には、前記応答要求フレームの送信実行間隔を長くすることを特徴とする中継ノードの動作推定方法。
【請求項13】
センサネットワークを構成する中継ノードであって、送達確認の送信を要求する応答要求フレームに対して前記送達確認を送信するアクティブ期間と前記送達確認を送信しないスリープ期間とを所定の第1動作設定に従って切り替えるように構成された中継ノード、に前記応答要求フレームを送信するよう構成されたセンサノードで実行する中継ノードの動作推定方法であって、
前記応答要求フレームを所定の第2動作設定に従って前記中継ノードに送信するステップ、及び前記送達確認の受信状況に基づいて前記中継ノードの前記アクティブ期間または前記スリープ期間の少なくとも一方を判定するステップ、を含む動作状態推定のためのステップと、
前記第1動作設定の推定結果に基づいて、センシング対象を計測するためのセンサ部によって計測された計測データの通信先との通信の実行を制御するステップと、を備え、
前記通信先との通信の実行を制御するステップは、
前記第1動作設定の推定結果に基づいて、前記中継ノードの前記アクティブ期間に前記通信先との通信を実行する通信実行タイミングを決定するためのステップと、
前記通信実行タイミングで前記通信先との通信を実行するためのステップと、を有し、
前記通信実行タイミングを決定するためのステップは、
前記通信実行タイミングの初期値を設定するためのステップと、
前記通信先との通信時に送信する前記応答要求フレームに対する前記送達確認の受信状況に基づいて、前記通信実行タイミングの初期値を調整していくことにより、前記通信実行タイミングを決定するための調整ステップと、をさらに有し、
前記調整ステップは、前記送達確認が受信された場合に、通信頻度が段階的に下がるように、前記通信実行タイミングの初期値を調整していくことを特徴とする中継ノードの動作推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、省電力動作が可能な中継ノードを備えセンサネットワークに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、センサをネットワーク(有線または無線)に接続することにより、センサがセンシングした計測データを収集するためのセンサネットワークが知られている(特許文献1~3、非特許文献1参照)。例えば無線センサネットワークでは、無線通信機能を備えたセンサであるセンサノード(無線通信子機)から無線で送信される計測データが、この無線センサネットワークと有線ネットワークとの境界などに位置するゲートウェイノード(基地局)に送られることにより収集される。この際、例えば発電プラント内など、センサノードの設置場所の制約や金属構造物などの遮蔽物の影響からセンサノードおよびゲートウェイノード間で通信の安定性を十分に確保できないような場合には、通信安定性向上策として、通信の中継動作が可能な中継ノード(ルータノード)が配置される。これによって、センサノードおよびゲートウェイノードは、1以上の中継ノードによってマルチホップ接続され、安定した通信が可能となる。なお、中継ノードは、中継機能を有するセンサノードである場合もある。
【0003】
また、センサノードは、ネットワークの端に位置するエンドノードである場合が多く、他ノードとの通信可能なアクティブモードで動作するアクティブ状態と、他ノードとの通信ができないスリープモードで操作するスリープ状態とを周期的などで切り替える省電力動作が可能である。これによって、電池(バッテリ)で駆動するセンサノードは、スリープモードで動作することにより無線回路などをスリープ状態にさせることで、電力消費を抑制することができ、電池交換することなく長期間の駆動が可能となる。
【0004】
その一方で、中継ノードは、センサノード(エンドノード)や他の中継ノードと非同期に通信を行う可能性がある。このため、中継ノードを省電力動作させるための方法としては、様々な提案がなされている。例えば、中継ノードが、自身が管理するセンサノードに対して送信間隔を指定するコマンドを送信し、センサノードからの通信がない期間にスリープ状態になるといった方法(特許文献1)や、ゲートウェイ(収集局)が、センサネットワーク内の中継ノードおよびセンサノードに対してスリープ期間を指定した命令パケットを送信し、これを受信した各ノードが、指定されたスリープ期間にスリープ状態になるといった方法(特許文献2)などが提案されている。
【0005】
なお、特許文献3では、中継ノードが、センサノードから送信される計測データの受信状況に基づいて、センサノードがアクティブ状態となる周期(起動周期)を推定し、アクティブ状態のセンサノードに対して、起動周期や起動時間の変更設定や、各種計測のための処理要求を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-216581号公報
【文献】特開2009-206749号公報
【文献】特開2013-102263号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】久保 祐樹、他2名、“無線センサネットワークの省電力化技術”、[online]、2009年4月、OKIテクニカルレビュー第214号 Vol.76 No.1、[2018年4月18日検索]、インターネット<URL: https://www.oki.com/jp/otr/2009/n214/pdf/214_r09.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1~2が開示する方法は、中継ノードとセンサノードとが、アクティブ状態となるアクティブ期間およびスリープ状態となるスリープ期間を設定によって同期させることにより、中継ノードの省電力動作を可能としている。このためには、中継ノードおよびセンサノードの両方にそのための機能を実装する必要があり、既存のセンサネットワークシステムへの変更がその分だけ大きくなる。各種のノード間で時間同期が必要となるため、センサネットワークシステムのセットアップが複雑になる。また、特許文献1では、中継ノードが配下のセンサノードを管理する必要が生じる。このような課題に鑑みて、本発明者らは、中継ノードが省電力動作をするための新たな手法を考えた。
【0009】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、センサネットワークを構成する中継ノードが省電力動作をするための方式を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係るセンサノードは、
センサネットワークを構成する中継ノードであって、送達確認の送信を要求する応答要求フレームに対して前記送達確認を送信するアクティブ期間と前記送達確認を送信しないスリープ期間とを所定の動作設定に従って切り替えるように構成された中継ノード、に前記応答要求フレームを送信するよう構成されたセンサノードであって、
前記センサネットワークに接続するための通信部と、
センシング対象を計測するためのセンサ部と、
前記応答要求フレームを所定の推定送信動作設定に従って前記中継ノードに送信するように構成された推定送信部、及び前記送達確認の受信状況に基づいて前記中継ノードの前記アクティブ期間または前記スリープ期間の少なくとも一方を判定するように構成された判定部、を含む動作状態推定部と、
前記動作設定の推定結果に基づいて、前記センサ部によって計測された計測データの通信先との通信の実行を制御するように構成された通信実行制御部と、を備える。
【0011】
上記(1)の構成によれば、センサノードは、アクティブ状態とスリープ状態とを切り替えることにより省電力動作を行う中継ノードと通信するように構成されている。そして、センサノードは、中継ノードに対して送達確認の送信を要求する送信データである応答要求フレームを送信することより、その要求に応じて中継ノードから送信される送達確認の受信状況に基づいてアクティブ期間またはスリープ期間を推定し、その推定結果に基づいて通信先(ゲートウェイなど)との通信の実行を制御する。
【0012】
このように、センサノードが中継ノードの動作設定(省電力動作設定)を推定することにより、センサノードは、中継ノードのアクティブ期間に通信を行い、スリープ期間に通信を行わないなど、中継ノードを介した通信先との通信を適切なタイミングで行うことができる。よって、中継ノードの省電力動作を可能にすることができると共に、中継ノードのスリープ期間に通信を行うことによるセンサノードの電力消費を防止することができる。また、センサノードが新たに記憶する必要があるのは、省電力動作設定の推定に必要な送達確認の受信状況(過去数回の通信記録データ)や、省電力動作設定の推定結果のみであり、この構成を実現のために必要な記憶領域は大きくなく、センサノードのコストを押し上げることもない。
【0013】
その他、センサノードおよび中継ノード間の精密な時間同期(特許文献1~2など)が不要であるため、センサネットワークのセットアップを簡易化することができる。センサノードが上記の推定結果に基づいて通信頻度を自動的に調整するため、中継ノードがセンサノードを管理する必要がなく、また、1以上のセンサノードが省電力動作を行う場合にそれに合わせて中継ノードの省電力動作を調整するといった中継動作に対するチューニング等も不要とすることができる。
【0014】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記動作状態推定部は、
前記センサノードが受信した前記送達確認に対応する第1の前記応答要求フレームおよび第2の前記応答要求フレームである2つの前記応答要求フレームであって、前記第1の応答要求フレームの送信時と前記第2の応答要求フレームの送信時との間には、前記中継ノードからの対応する前記送達確認を受信しなかった第3の応答要求フレームが送信されている場合の前記2つの応答要求フレームの送信間隔、または、前記2つの応答要求フレームに対して前記センサノードが受信した2つの前記送達確認の受信間隔に基づいて、前記アクティブ期間の時間間隔を算出するように構成された算出部を、さらに有する。
【0015】
中継ノードは、アクティブ期間とスリープ期間とを交互に繰り返す。よって、センサノードは、アクティブ期間で応答要求フレームを送信することによって、応答要求フレームに対する送達確認が受信される場合である通信成功を経験した後には、そのアクティブ期間の次に続くスリープ期間に応答要求フレームを送信することによって、応答要求フレームに対する送達確認が受信されない場合である通信失敗を経験し、その次のアクティブ期間で通信成功を再度経験することになる。
【0016】
上記(2)の構成によれば、中継ノードのスリープ期間を挟んで隣接する2つのアクティブ期間の各々に行った通信成功時の応答要求フレームの送受信間隔に基づいて、中継ノードのアクティブ期間が繰り返される時間間隔(周期)を算出することができる。また、アクティブ期間やスリープ期間のタイミングを推定することもできる。
【0017】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、
前記推定送信動作設定は、複数の前記応答要求フレームの各々を送信する送信間隔設定を含み、
前記動作状態推定部は、前記送信間隔設定に従って前記応答要求フレームを送信する前記推定送信部による前記応答要求フレームの送信実行間隔を変更するように構成された送信実行間隔変更部を、さらに有し、
前記送信実行間隔変更部は、
前記送達確認が受信された場合には前記応答要求フレームの送信実行間隔を短くし、前記送達確認が受信されない場合には、前記応答要求フレームの送信実行間隔を長くする。
【0018】
上記(3)の構成によれば、センサノードは、中継ノードとの通信成功時には、応答要求フレームの送信実行間隔をより長い値に更新し、中継ノードとの通信失敗時にはこの送信実行間隔をより短い値に更新する。これによって、中継ノードのスリープ期間、およびこのスリープ期間を挟んで隣接する2つのアクティブ期間に送信する応答要求フレームの送信数を減らしつつ、アクティブ期間が繰り返される周期を適切に算出することができる。
【0019】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)の構成において、
前記送信実行間隔変更部は、前記応答要求フレームの送信実行間隔が、所定の最小値以上で、かつ、所定の最大値以下の範囲に収まるように、前記応答要求フレームの送信実行間隔を変更する。
上記(4)の構成によれば、応答要求フレームの送信実行間隔に最小値を設けることで、タイマ時間が短くなり過ぎることによって、不必要なほど過度に推定のための応答要求フレームが送信さることを防止し、推定時の電力消費の増大の防止することができる。また、応答要求フレームの送信実行間隔に最大値を設けることで、センサノードが中継ノードと通信可能な最小の時間間隔などの適切な推定を図ることができる。
【0020】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)~(4)の構成において、
前記通信実行制御部は、
前記動作設定の推定結果に基づいて、前記中継ノードの前記アクティブ期間に前記通信先との通信を実行する通信実行タイミングを決定するように構成された通信タイミング決定部と、
前記通信実行タイミングで前記通信先との通信を実行するように構成された通信実行部と、を有する。
上記(5)の構成によれば、アクティブ期間の周期の推定結果を用いて、通信実行タイミングが中継ノードのアクティブ期間に重なるように決定する。この通信実行タイミングに従って、センサノードがゲートウェイなど通信先との通信を実行することにより、中継ノードのアクティブ期間に通信を行うことができ、電力消費を抑制しつつ、通信先との通信をより確実に行うことができる。
【0021】
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)の構成において、
前記通信タイミング決定部は、
前記通信実行タイミングの初期値を設定するように構成された初期値設定部と、
前記通信先との通信時に送信する前記応答要求フレームに対する前記送達確認の受信状況に基づいて、前記通信実行タイミングの初期値を調整していくことにより、前記通信実行タイミングを決定するように構成された調整部と、をさらに有する。
上記(6)の構成によれば、状況に応じて通信実行タイミングを決定することができ、より適した通信実行タイミングによる通信先との通信の実行を図ることができる。
【0022】
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)の構成において、
前記調整部は、前記送達確認が受信された場合に、通信頻度が段階的に下がるように、前記通信実行タイミングの初期値を調整していく。
上記(7)の構成によれば、通信実行タイミングを段階的に調整することにより、より適した通信実行タイミングによる通信先との通信の実行を図ることができる。
【0023】
(8)幾つかの実施形態では、上記(6)~(7)の構成において、
前記調整部は、前記送達確認が受信されない場合に、通信頻度が段階的に上がるように、前記通信実行タイミングの初期値を調整していく。
上記(8)の構成によれば、通信実行タイミングを段階的に調整することにより、より適した通信実行タイミングによる通信先との通信の実行を図ることができる。
【0024】
(9)幾つかの実施形態では、上記(5)~(8)の構成において、
前記通信実行部によって送信された前記応答要求フレームに対して前記送達確認が受信されない場合に前記動作状態推定部に対して通知するように構成された通知部を、さらに備える。
上記(9)の構成によれば、中継ノードの動作設定(省電力動作設定)の推定結果に基づいて送信された応答要求フレームに対する中継ノードからの送達確認が受信されない場合には、継動作推定部に対してその旨を通知する。中継ノードからの送達確認が受信されない場合には、応答要求フレームが中継ノードの省電力動作設定の推定結果に基づいて送信されているので、例えばセンサネットワークに何らかの変化が生じたなどにより、これまでの中継ノードの省電力動作設定の推定結果が適切ではなくなったものと想定される。よって、このような状況を動作状態推定部に通知するようにすれば、再度の推定を行う契機を与えることができ、これを契機に動作状態推定部による再推定を行うことにより、現在の状況に適した推定結果を得ることができる。
【0025】
(10)本発明の少なくとも一実施形態に係る中継ノードは、
センサネットワークを構成し、1または複数のセンサノードが行う通信の中継が可能なアクティブ期間と前記通信の中継をしないスリープ期間とを所定の動作設定に従って切り替えるように構成された中継ノードであって、
前記1または複数のセンサノードから送信される送信データの受信状況を監視するように構成された受信状況監視部、および前記送信データの受信状況に基づいて前記動作設定を決定するように構成された設定決定部、を含む動作設定生成部と、
前記動作設定生成部によって生成された前記動作設定に従って、前記アクティブ期間と前記スリープ期間とを切り替えるように構成された動作制御部と、を備える。
【0026】
上記(10)の構成によれば、中継ノードは、動作設定(省電力動作設定)に従って、アクティブ状態とスリープ状態とを切り替えることにより省電力動作が可能に構成されており、この省電力動作設定を、センサノードが送信するゲートウェイなどの通信先に向けた送信データなどの受信状況に応じて生成する。これによって、中継ノードは、通信を実行するセンサノードが存在しないと見込まれる期間にはスリープ状態になることができ、電力消費を抑制することができる。また、中継ノードは、通信を実行するセンサノードが1つでも存在することが見込まれる期間にはアクティブ状態になることによりセンサノードの通信の確実な中継を図ることができる。よって、ゲートウェイなどによる計測データの収集のリアルタイム性の向上や、センサノードの送信データの再送などに伴う電力消費を抑制することができる。
【0027】
その他、センサノードと中継ノードとの間の精密な時間同期が不要であるため、センサネットワークのセットアップを簡易化することができる。また、先に説明したような、センサノードが中継ノードの省電力動作設定を推定するような場合に比べて、センサノードに対する機能追加を不要とすることや、センサノードの推定時の電力消費の低減、メンテナンスを中継ノードに集約できるといった効果を有する。
【0028】
(11)幾つかの実施形態では、上記(10)の構成において、
前記設定決定部は、前記送信データの受信状況に基づいて、前記送信データを受信しない時間間隔に基づいて前記スリープ期間を決定するか、あるいは、前記送信データを受信する時間間隔に基づいて前記アクティブ期間を決定するかの少なくとも一方を実行する。
上記(11)の構成によれば、中継ノードは、省電力動作設定を適切に決定することができる。
【0029】
(12)幾つかの実施形態では、上記(10)~(11)の構成において、
前記動作設定を更新するように構成された設定更新部を、さらに備え、
前記設定更新部は、
前記アクティブ期間毎に、前記送信データを送信する前記センサノードの数の期待数を算出するように構成された期待数算出部と、
前記アクティブ期間毎に、前記送信データを送信する前記センサノードの数の実績数を算出するように構成された実績数算出部と、
前記期待数と前記実績数とが一致しない場合に前記動作設定生成部に通知するように構成された不一致通知部と、を有する。
上記(12)の構成によれば、中継ノードは、センサノードからの送信データの期待数および実績数をアクティブ期間毎に確認し、期待数と実績数が一致しない場合には通知する。期待数と実績数が一致しない場合には、中継ノードがセンサノードの通信状況を適切に把握できていないと判断される。よって、期待数と実績数との比較により、中継ノードの省電力動作設定が適切であるか否かを判定することができ、適切でない場合には中継ノードの省電力動作設定を更新するようにすれば、センサネットワークの変化に追従した、中継ノードの適切な省電力動作設定を維持することができる。
【0030】
(13)本発明の少なくとも一実施形態に係るセンサネットワークは、
上記(1)~(9)のいずれか1つに記載のセンサノードと、
前記センサノードが送信する送信データを収集するように構成されたゲートウェイノードと、
前記センサノードが送信する前記送信データを前記ゲートウェイノードに中継するように構成された中継ノードと、を備える。
【0031】
上記(13)の構成によれば、上記(1)~(9)と同様の効果を奏する。
【0032】
(14)本発明の少なくとも一実施形態に係るセンサネットワークは、
センサノードと、
前記センサノードが送信する送信データを収集するように構成されたゲートウェイノードと、
上記(10)~(12)のいずれか1つに記載の中継ノードと、を備える。
【0033】
上記(14)の構成によれば、上記(10)~(12)と同様の効果を奏する。
【0034】
(15)本発明の少なくとも一実施形態に係る中継ノードの動作推定方法は、
センサネットワークを構成する中継ノードであって、送達確認の送信を要求する応答要求フレームに対して前記送達確認を送信するアクティブ期間と前記送達確認を送信しないスリープ期間とを所定の動作設定に従って切り替えるように構成された中継ノード、に前記応答要求フレームを送信するよう構成されたセンサノードで実行する中継ノードの動作推定方法であって、
前記応答要求フレームを所定の推定送信動作設定に従って前記中継ノードに送信するステップ、及び前記送達確認の受信状況に基づいて前記中継ノードの前記アクティブ期間または前記スリープ期間の少なくとも一方を判定するステップ、を含む動作状態推定のためのステップと、
前記動作設定の推定結果に基づいて、前記センサ部によって計測された計測データの通信先との通信の実行を制御するステップと、を備える。
【0035】
上記(15)の構成によれば、上記(1)と同様の効果を奏する。
【0036】
(16)本発明の少なくとも一実施形態に係る中継ノードの動作方法は、
センサネットワークを構成し、1または複数のセンサノードが行う通信の中継が可能なアクティブ期間と前記通信の中継をしないスリープ期間とを所定の動作設定に従って切り替えるように構成された中継ノードのための中継ノードの動作方法であって、
前記1または複数のセンサノードから送信される送信データの受信状況を監視する受信状況監視ステップ、および前記送信データの受信状況に基づいて前記動作設定を決定する設定決定ステップ、を含む動作設定生成のためのステップと、
前記動作設定生成部によって生成された前記動作設定に従って、前記アクティブ期間と前記スリープ期間とを切り替えるステップと、を備える。
【0037】
上記(16)の構成によれば、上記(10)と同様の効果を奏する。
【発明の効果】
【0038】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、センサネットワークを構成する中継ノードが省電力動作をするための方式が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明の一実施形態に係る無線センサネットワークの構成を概略的に示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るセンサノードの機能を示すブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る通信実行制御部による通信の実行制御を説明するための図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るセンサノードによるアクティブ期間間隔の推定方法を説明するための図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る中継ノードの省電力動作設定推定方法のフローを示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る中継ノードの機能を示すブロック図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る中継ノードが管理するセンサノードテーブルを示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る中継ノードの動作方法を示す図であり、中継ノードの学習後の定常動作時の状況を説明するための図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る中継ノードの動作方法を示す図であり、中継ノードの学習時の動作を示すフロー図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る中継ノードの学習後の定常動作時の動作を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0041】
図1は、本発明の一実施形態に係る無線センサネットワーク1の構成を概略的に示す図である。
図1に示すように、センサネットワーク(無線センサネットワーク1)は、1又は複数のセンサノード2と、1又は複数の中継ノード5と、ゲートウェイノード(以下、単に、ゲートウェイ8)と、で構成される。そして、センサノード2は、ゲートウェイ8と直接通信するか、または、その近隣に存在する中継ノード5を介してゲートウェイ8と通信することにより、ゲートウェイ8に送信データDを送るように構成される。
【0042】
なお、以下の説明では、
図1に示すような無線センサネットワーク1を例に説明するが、センサネットワークは有線で構築されていても良いし、有線の部分と無線の部分とを含んで構築されていても良く、以下の説明中の無線を適宜有線と読み替えて適用する。
【0043】
詳述すると、センサノード2は、センシング対象を計測するためのセンサ部2s、および無線センサネットワーク1に接続するための無線通信機能を備える装置である。換言すれば、センサノード2は、センサ部2sと、無線通信が可能な無線通信部2rとが接続された装置である。センサ部2sは、センシング対象をセンシング可能に設置されることにより、そのセンシング(計測)を行う。無線通信部2rは、センサ部2sによってセンシングされた結果である計測データの無線による送信や、中継ノード5などの他のノードから送信される送達確認Fa(後述)などの受信を行う。なお、センサノード2は、1つの無線通信部2rと1つのセンサ部2sとが接続されて構成されていても良いし(1対1の接続)、1つの無線通信部2rに対して同一又は異なるセンシング対象を計測する複数のセンサ部2sが接続されて構成されていても良い(多対1の接続)。
【0044】
具体的には、センサノード2は、例えば周期的(アップロード間隔)などの所定の送信タイミングで、計測データを送信する。計測データなどの送信データDは、その下位レイヤを構成するネットワーク層(レイヤ)のプロトコルによるパケット化、MAC層のプロトコルによるフレーム化を受けた後に、無線通信部2rから出力される。こうしてセンサノード2から送信された送信データDは、ゲートウェイ8により直接受信されるか、中継ノード5によって中継されることにより、ゲートウェイ8に受信される。
【0045】
また、センサノード2は、通常、電池(バッテリ。以下同様。)で駆動するように構成されており、スリープ状態(後述)とアクティブ状態(後述)とを例えば周期的などで繰り返すように動作(省電力動作)する。つまり、センサノード2は、電池交換することなく長期間の駆動を可能とするために、送信データDを送信しない時にはスリープ状態(後述)になり、送信データDを送信する時には、全ての機能に対する電源供給を行った状態など、スリープ状態を解除したアクティブ状態(後述)になるように動作する。ただし、本発明では、センサノード2は省電力動作を実行しても良いし、その実行をしなくても良い。センサノード2が省電力動作をすることにより、センサノード2に対する電池交換などのメンテナンスコストの削減が可能となる。
【0046】
ゲートウェイ8は、上述したセンサノード2(通常は複数)から送信される計測データを収集する装置である。
図1に示すように、ゲートウェイ8は、無線センサネットワーク1と有線ネットワーク91との境界などに設置される。よって、通常、ゲートウェイ8は、電源の確保が容易であり、また、無線センサネットワーク1を構成する各種ノードからの不定期な通信に対応する必要があることから、省電力動作は行わない(常時アクティブ状態)。なお、ゲートウェイ8で収集された計測データは、ゲートウェイ8自身が利用しても良いし、ルーティングするなどして、有線ネットワーク91に設置されるサーバなどの他の装置に送信しても良い。
【0047】
中継ノード5は、センサノード2の通信を中継する装置である。すなわち、中継ノード5は、センサノード2から送信された通信フレームを受信すると共に、その通信フレームにカプセル化されているパケット(送信データD)をゲートウェイ8に向けて中継送信する。
図1に示すように、中継ノード5が中継送信した通信フレームをゲートウェイ8が直接受信する場合もあれば、さらに他の1以上の中継ノード5によってさらに中継送信されていくことにより、最終的にゲートウェイ8が送信データDを受信する場合がある。つまり、センサノード2とゲートウェイ8とは中継ノード5を介してマルチホップ接続される。なお、中継ノード5は、ゲートウェイ8や他の中継ノード5からの通信を中継しても良い。
【0048】
このような中継ノード5は、センサノード2およびゲートウェイ8間での安定した通信を確保するために設置される。例えば、発電プラント内に無線センサネットワーク1を構築する場合には、発電プラント内にはボイラ、タービン、配管など様々な設備が設置されており、ゲートウェイ8やセンサノード2の設置に対して様々な制約が存在する。例えば、ゲートウェイ8の設置に関しては、ゲートウェイ8を駆動する電源や通信線(有線ネットワーク91側)の配線が可能かという観点や、温度や振動などの環境条件が適合するか、梁や柱など設置が可能な構造物があるか、などの制約条件を満たす必要がある。センサノード2の設置に関しては、センサ部2sと無線通信部2rとの配線が可能であるかという観点や、上記の環境条件によるものほか、無線通信部2rの設置固定が可能な場所であるか、などの制約条件を満たす必要がある。電源の配線については、ノードを電池で駆動するように構成すれば良いが、電池の消耗に伴う定期的な電池交換が必要となる。
【0049】
このため、各種のノードの設置場所は、上述したような制約を満たす場所に限定される。また、これらの設置に関する制約を全て満たす場所に各種のノードを設置したとしても、センサノード2とゲートウェイ8との間に、例えば密集した金属製配管93などの金属構造物や壁94などの遮蔽物(
図1参照)が存在すると、その影響により、通信の安定性が十分に確保できない場合がある。このような場合に中継ノード5を配置することにより、センサノード2およびゲートウェイ8間での通信の安定化を図ることが可能となる。
【0050】
なお、例えば発電プラントでは、数十分に一回~数時間に一回、あるいは一日に一回など、センシング対象を低頻度で計測できれば良いようなリアルタイム性を問わないデータの収集に用いられるのが良い。このようなリアルタイム性を問わないデータは、例えば発電プラントでは、例えば温度、振動の統計値(所定期間の平均値や、最大値、最小値など)や、油、水の漏洩有無、補助ボイラや送風ファンなど短時間の停止がプラントの動作上致命的とならない補機におけるセンシング情報が挙げられる。
【0051】
また、無線センサネットワーク1に適用する無線通信規格としては、具体的には、ZigBee(登録商標)であっても良い。ZigBeeでは、上述したセンサノード2はエンドデバイスであり、中継ノード5はルータノードであり、ゲートウェイ8は例えばコーディネータと呼ばれる。ただし、ZigBeeに限らず、Bluetooth(登録商標) Low Energy、LoRaWANやSigFoxなど、中継ノード5による中継送信が行われる全ての低頻度・低消費電力向け無線通信規格のいずれかであれば良い。なお、センサノード2の数が増加した場合、後述するように、中継ノード5の起動時間を狙って複数のセンサノード2が通信を実施し、輻輳状態となることがあることから、CSMA/CAなど、通信の衝突を回避する仕組みを持つ通信規格であることが望ましい。
【0052】
上述したような構成を備える無線センサネットワーク1において、本発明の中継ノード5は、上述した省電力動作を実行することが可能である。具体的には、中継ノード5は、例えば周期的などの所定のタイミングでスリープ状態とアクティブ状態とを切り替える省電力動作を実行する。換言すれば、中継ノード5は、省電力動作によって、アクティブ状態で動作するアクティブモードと、スリープ状態で動作するスリープモードとで動作モードを切り替える。アクティブ状態とは、無線通信回路などの少なくとも一部の機能(回路)に対する電力供給を停止した状態であり、他ノードとの通信(データの送受信)が可能な状態である。スリープ状態とは、他のノードとの通信をしない状態(あるいは通信ができな状態)であり、アクティブ状態以外の状態である。
【0053】
より具体的には、中継ノード5は、例えば、スリープ状態を時間x(例えば3時間など)継続した後にアクティブ状態を時間y(例えば10分間など)継続するなど、アクティブ状態にある期間(時間帯)であるアクティブ期間Taとスリープ状態にある期間(時間帯)であるスリープ期間Tsとを交互に繰り返す。スリープ期間Tsでは、無線通信機能などへの電力供給が停止されることで、中継ノード5は、スリープ状態になることによりアクティブ状態の時よりも電力消費を抑制できる。このため、中継ノード5を電池で駆動するように構成する場合には、電池交換なしにより長期の駆動が可能となる。
【0054】
その反面、中継ノード5が省電力動作を実行する場合には、センサノード2は、中継ノード5のアクティブ期間Taでしか通信ができない。つまり、中継ノード5のアクティブ期間Taにセンサノード2が送信データDを送信する場合には、中継ノード5がセンサノード2からの通信フレームを受信するので、通信が中継される。ところが、センサノード2が送信データDを送信する送信タイミング(センサノード2のアクティブ期間Ta)に中継ノード5がスリープ状態(スリープ期間Ts)にあると、中継ノード5がセンサノード2からの通信フレームを受信処理しないなどにより、中継ノード5が中継をせず、センサノード2はゲートウェイ8と通信を行うことができない。さらに、中継ノード5による通信の中継が行われない場合には、ゲートウェイ8による計測データの収集に遅延が生じたり、通信の失敗を検知したセンサノード2が再送制御を行う場合には、その再送による電力消費が生じたりする。センサノード2が再送しない場合には、ゲートウェイ8において収集する計測データの欠落が生じる場合もある。
【0055】
(実施形態1)
そこで、本発明の幾つかの実施形態では、以下で説明するような手法により、センサノード2が、中継ノード5のアクティブ期間Taやスリープ期間Tsを推定する。これによって、センサノード2は、中継ノード5がアクティブ状態と推定される時に、センサノード2はゲートウェイ8との通信を行うようにすることが可能となる。
【0056】
本実施形態について、
図2~
図5を用いて説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係るセンサノード2の機能を示すブロック図である。
図3は、本発明の一実施形態に係る通信実行制御部4による通信の実行制御を説明するための図である。
図4は、本発明の一実施形態に係るセンサノードによるアクティブ期間間隔Pの推定方法を説明するための図である。また、
図5は、本発明の一実施形態に係る中継ノード5の省電力動作設定推定方法のフローを示す図である。
【0057】
詳述すると、幾つかの実施形態では、センサノード2は、上述したアクティブ期間Taとスリープ期間Tsとを所定の動作設定(以下、省電力動作設定)に従って切り替える中継ノード5を介して、ゲートウェイ8などとなる送信データDの通信先と通信を行うノードである(
図1参照)。
図2に示すように、センサノード2は、上記の無線通信部2rおよびセンサ部2sに加えて、動作状態推定部3と、通信実行制御部4と、を備える。これらのセンサノード2が備える機能部について、それぞれ説明する。
【0058】
なお、センサノード2や中継ノード5などの各種ノードは、コンピュータを含んで構成されても良く、図示しないCPU(プロセッサ)や、ROMやRAMといったメモリなどとなる記憶装置m(2m、5m)を備えている。そして、メモリ(主記憶装置)にロードされたプログラムの命令に従ってCPUが動作(データの演算など)することで、センサノード2が備える上記の各機能部など、各種ノードに必要な機能を実現する。換言すれば、上記のプログラムは、コンピュータに後述する各機能部を実現させるためのソフトウェアであり、コンピュータによる読み込みが可能な記憶媒体に記憶されても良い。あるいは、各種ノードは、上記の各機能部の少なくとも一部の処理を実行するための専用の回路(ハード)を含んで構成されても良い。
【0059】
動作状態推定部3は、中継ノード5の省電力動作設定(動作状態)を推定するよう構成される機能部である。換言すれば、中継ノード5の動作状態を推定するよう構成される機能部である。より詳細には、動作状態推定部3は、送達確認Faの送信を要求する通信フレームである応答要求フレームFrを所定の設定(推定送信動作設定)に従って中継ノード5に送信する推定送信部31と、この応答要求フレームFrを受信した中継ノード5から送信(返送)される上記の送達確認Faの受信状況に基づいて、中継ノード5のアクティブ期間Taまたはスリープ期間Tsの少なくとも一方を判定する判定部32と、を有する。
【0060】
上記の送達確認Fa(Ack)は、通信フレームを受信したことを、その通信フレームの送信元に通知するための情報を有する通信フレームである。例えばZigBee(登録商標)では、MAC層レベルでAckの要求を行うオプションにより、Ackの要求が必要であることを指定することによって、隣接するノード間で送達確認Faの要求と応答を行うことが可能である。本実施形態では、このようなセンサノード2は、隣接するノード(1ホップ先)に対して送達確認Faを要求する応答要求フレームFrを送信するように構成されている。
【0061】
ただし、本実施形態に本発明は限定されない。他の幾つかの実施形態では、センサノード2は、中継ノード5の先に位置するゲートウェイ8などの通信先に対して送達確認Faを要求(アプリケーション層での送達確認Faを要求)する応答要求フレームFrを送信しても良い。この場合、応答要求フレームFrおよび送達確認Faは中継ノード5を介して送受信されることになるので、センサノード2は、送達確認Faの受信の有無によって、中継ノード5の動作状態を判定することが可能となる。あるいは、例えば通信先を隣接ノードとした通信を実行(応答要求フレームFrを送信)することによって、隣接するノード間で、アプリケーション層での送達確認Faの要求と応答を行っても良い。
【0062】
このセンサノード2からの応答要求フレームFrに対して、中継ノード5は、アクティブ期間Taではセンサノード2などの他のノードから送信された通信フレームを受信処理する。よって、中継ノード5は、通信フレームが応答要求フレームFrの場合には、送達確認Faが要求されていることを検知することができ、送達確認Faを送信(返信)する。逆に、スリープ期間Tsでは、中継ノード5は他のノードから送信された通信フレームの受信処理をしないなどのため、応答要求フレームFrを送信したセンサノード2に対して、送達確認Faを送信しない。なお、スリープ状態における電力供給の停止をどの機能(回路)にするかによって、中継ノード5が、スリープ状態において送達確認Faの要求を検知できるように構成されているような場合には、送達確認Faを送信しないように中継ノード5を構成しても良い。
【0063】
したがって、判定部32は、推定送信部31によって送信された応答要求フレームFrに対する中継ノード5からの送達確認Faが受信された場合には、その受信時など、応答要求フレームFrや送達確認Faの送受信の際には中継ノード5がアクティブ状態であると判定することができ、逆に、送達確認Faが受信されない場合には、中継ノード5がスリープ状態であると判定することができる。
【0064】
例えば、中継ノード5の省電力動作設定が、例えば1日の何時から何時までアクティブ状態あるいはスリープ状態になるなど、動作状態を時刻で設定したものである場合には、センサノード2による送達確認Faの受信時刻などに中継ノード5がアクティブ状態になることが分かるので、アクティブ期間Taのタイミングを判定することができる。同様に、センサノード2による送達確認Faが受信できなかった時刻などに中継ノード5がスリープ状態になることが分かるので、スリープ期間Tsのタイミングを判定することができる(
図3参照)。
【0065】
中継ノード5が、例えばスリープ状態を3時間(時間x)継続した後にアクティブ状態を10分間(時間y)継続するといった周期的などにスリープ状態とアクティブ状態とを交互に繰り返す場合には、後述するように、判定部32は、応答要求フレームFrを時間の経過に従って複数送信し、各応答要求フレームFrに対する送達確認Faの受信、不受信を記憶することにより、送達確認Faの受信間隔や応答要求フレームFrの送信間隔などに基づいて、アクティブ期間Taやスリープ期間Tsを判定することができる(
図3参照)。
【0066】
また、センサノード2による送達確認Faの受信の有無は、幾つかの実施形態では、1つの応答要求フレームFrの送信に対する送達確認Faの受信の有無で評価しても良い。他の幾つかの実施形態では、規定時間α内に送信する複数の応答要求フレームFrに対する送達確認Faの受信割合(通信成功率)で評価しても良い。この場合、通信成功率が所定値以上の場合に通信成功とし、所定値よりも低い場合に通信失敗とする。通信成功率で評価することにより、中継ノード5がアクティブ状態であるにもかかわらず、通信の輻輳時や、一時的な無線通信環境の悪化によって、センサノード2および中継ノード5間の応答要求フレームFrや送達確認Faの送受信が失敗した場合に、センサノード2が、中継ノード5がスリープ状態であることにより送達確認Faが受信されないと誤って判定するのを防止することが可能となる。
【0067】
他方、通信実行制御部4は、
図3に示すように、上述した動作状態推定部3によって推定された、中継ノード5の省電力動作設定の推定結果Eに基づいて、センサ部2sによって計測された計測データの通信先(本実施形態ではゲートウェイ8)との通信の実行を制御するよう構成される機能部である。具体的には、通信実行制御部4は、上記の推定結果Eに基づいて、ゲートウェイ8に対する計測データの送信を、中継ノード5がアクティブ状態と推定される時(アクティブ期間Ta)に実行し、中継ノード5がスリープ状態と推定される時(スリープ期間Ts)には実行しないように制御する。
【0068】
これによって、中継ノード5の省電力動作を可能としつつ、センサノード2からゲートウェイ8への通信が、中継ノード5のスリープ期間Tsに実行されることによる通信遅延や電力消費などを防止することが可能となる。また、例えば、センサノード2が、中継ノード5のスリープ期間Tsには一緒にスリープ状態で動作するようにすれば、センサノード2の電力消費もより効果的に低減することが可能となる。
【0069】
なお、本実施形態では、センサノード2は、中継ノード5のスリープ期間Tsと推定される期間にはスリープ状態で動作するよう構成されるが、他の幾つかの実施形態では、スリープ状態で動作せずに、単に、計測データの送信を行わないように構成しても良い。
【0070】
上記の構成によれば、センサノード2は、アクティブ状態とスリープ状態とを切り替えることにより省電力動作を行う中継ノード5と通信するように構成されている。そして、センサノード2は、中継ノード5に対して送達確認Faの送信を要求する応答要求フレームFrを送信することより、その要求に応じて中継ノード5から送信される送達確認Faの受信状況に基づいてアクティブ期間Taまたはスリープ期間Tsを推定し、その推定結果に基づいて通信先(ゲートウェイ8など)との通信の実行を制御する。
【0071】
このように、センサノード2が中継ノード5の省電力動作設定を推定することにより、センサノード2は、中継ノード5のアクティブ期間Taに通信を行い、スリープ期間Tsに通信を行わないなど、中継ノード5を介した通信先との通信を適切なタイミングで行うことができる。よって、中継ノード5の省電力動作を可能にすることができると共に、中継ノード5のスリープ期間Tsに通信を行うことによるセンサノード2の電力消費を防止することができる。また、センサノード2が新たに記憶する必要があるのは、中継ノード5の省電力動作設定の推定に必要な送達確認Faの受信状況(過去数回の通信記録データ)や、省電力動作設定の推定結果のみであり、この構成を実現のために必要な記憶領域は大きくなく、センサノード2のコストを押し上げることもない。
【0072】
その他、センサノード2および中継ノード5間の精密な時間同期が不要であるため、無線センサネットワーク1のセットアップを簡易化することができる。センサノード2が上記の推定結果Eに基づいて通信頻度を自動的に調整するため、中継ノード5がセンサノード2を管理する必要がなく、また、1以上のセンサノード2が省電力動作を行う場合にそれに合わせて中継ノード5の省電力動作を調整するといった中継動作に対するチューニング等も不要とすることができる。
【0073】
なお、上述した実施形態では、中継ノード5の省電力動作設定を推定するセンサノード2が、自ら送信した応答要求フレームFrを送信し、それに対する送達確認Faの受信状況に基づいて推定を行うが、他の幾つかの実施形態では、センサノード2は、中継ノード5と他のセンサノード2との間で送受信される通信フレーム(応答要求フレームFr、送達確認Faなど)をキャプチャし、そのキャプチャした通信フレームに基づいて上記の推定行っても良い。
【0074】
次に、センサノード2が行う中継ノード5の省電力動作設定の推定手法に関する幾つかの実施形態について、
図4を用いて詳細に説明する。
幾つかの実施形態では、動作状態推定部3は、センサノード2が受信した送達確認Faに対応する第1の応答要求フレームFrおよび第2の応答要求フレームFrである2つの応答要求フレームFrであって、第1の応答要求フレームFrの送信時と第2の応答要求フレームFrの送信時との間には、中継ノード5からの対応する送達確認Faを受信しなかった第3の応答要求フレームFrが送信されている場合の2つの応答要求フレームFrの送信間隔、または、この2つの応答要求フレームFrに対してセンサノード2が受信した2つの送達確認Faの受信間隔に基づいて、アクティブ期間Taの時間間隔を算出する算出部を、さらに有しても良い。
【0075】
上述したように、中継ノード5は、アクティブ期間Taとスリープ期間Tsとを交互に繰り返す。よって、センサノードは5、アクティブ期間Taで応答要求フレームFrを送信することによって、応答要求フレームFrに対する送達確認Faが受信される場合である通信成功を経験した後には、そのアクティブ期間Taの次に続くスリープ期間Tsに応答要求フレームFrを送信することによって、応答要求フレームFrに対する送達確認Faが受信されない場合である通信失敗を経験し、その次のアクティブ期間Taで通信成功を再度経験することになる。
【0076】
例えば、中継ノード5が、3時間(時間x)に1回10分(時間y)だけアクティブ状態になるとすると、
図4に示すように、10分のアクティブ期間Ta、3時間のスリープ期間Tsの後、再度、10分のアクティブ期間Taが始まるというような繰り返しが行われる。この際、センサノード2が、例えば5分周期で1の応答要求フレームFrを送信する場合、
図4に示すように、第1のアクティブ期間Ta(1)で送信した各応答要求フレームFrに対して最後に通信が成功した後(
図4の〇)、その通信成功後の5分後に送信した応答要求フレームFrは、第1のスリープ期間Ts(1)でなされることになるので、通信が失敗する(
図4の×)。その後、この第1のスリープ期間Ts(1)において5分間隔で送信した応答要求フレームFrは全て通信失敗となるが、その最後の通信失敗後は、第2のアクティブ期間Ta(2)に応答要求フレームFrを送信することになるので、通信が成功することになる。
【0077】
よって、このような通信成功と通信失敗との関係性から、第1のアクティブ期間Ta(1)で最後に通信が成功した時刻と、第2のアクティブ期間Ta(2)で最初に通信が成功した時刻との2つの時刻の時間間隔を算出することにより、アクティブ期間Taが繰り返される時間間隔(アクティブ期間間隔P)を求めることができる。そして、ある通信成功の時刻から、アクティブ期間間隔Pで、アクティブ期間Taが繰り返されることが推定できる。
【0078】
また、アクティブ期間間隔Pの間には、そのアクティブ期間間隔P以下の期間長を有するスリープ期間Tsが存在することも推定できる。ある1つのアクティブ期間Taで通信が2回以上連続で成功すれば、その最初の通信成功と最後の通信成功との時間間隔は、1つのアクティブ期間Taの少なくとも一部であると推定できる。
【0079】
上記の構成によれば、中継ノード5のスリープ期間Tsを挟んで隣接する2つのアクティブ期間Taの各々に行った通信成功時の応答要求フレームFrの送受信間隔に基づいて、中継ノード5のアクティブ期間Taが繰り返される時間間隔(周期)を算出することができる。また、アクティブ期間Taやスリープ期間Tsのタイミングを推定することもできる。
【0080】
上記の実施形態において、幾つかの実施形態では、上記の推定送信部31の動作を規定する上記の推定送信動作設定は、複数の応答要求フレームFrの各々を送信する送信間隔設定を含む。この場合において、幾つかの実施形態では、上述した動作状態推定部3は、上記の送信間隔設定に従って応答要求フレームFrを送信する推定送信部31による応答要求フレームFrの送信実行間隔を変更する送信実行間隔変更部34を、さらに有しても良い。より詳細には、送信実行間隔変更部34は、推定送信部31が送信した応答要求フレームFrに対する送達確認Faが受信された場合には応答要求フレームFrの送信実行間隔を短くし、上記の送達確認Faが受信されない場合には送信実行間隔を長くする。
【0081】
応答要求フレームFrの送信実行間隔を長くすると、推定送信部31が送信する応答要求フレームFrの送信頻度(単位時間当たりの送信回数)が下がる。そして、上述したスリープ期間Tsを挟んで隣接する2つのアクティブ期間Taのうちの最初のアクティブ期間Taで通信が1度成功した後は送信頻度を下げると、もう一方である次のアクティブ期間Taが来るまでに送信する応答要求フレームFrの数がより少なくなる。よって、センサノード2が中継ノード5の省電力動作設定の推定のための電力消費を抑制することが可能となる。
【0082】
逆に、応答要求フレームFrの送信実行間隔を短くすると、推定送信部31が送信する応答要求フレームFrの送信頻度が上がる。上述したスリープ期間Tsを挟んで隣接する2つのアクティブ期間Taのうちの最初のアクティブ期間Taでの通信成功が繰り返されると、その都度、応答要求フレームFrの送信実行間隔を長くすることになる。このため、場合によっては応答要求フレームFrの送信実行間隔が長くなり過ぎ、最初のアクティブ期間Taに続くスリープ期間Tsや、もう一方のアクティブ期間Taに応答要求フレームFrが適切に送信されない場合が生じ得る。このような場合によって、中継ノード5のアクティブ期間間隔Pの最小値が求められない場合には、送信データDが本来送信できるタイミングを適切に判定できず、送信データDをアップロード間隔などで送信できないなどの問題が生じ得る。よって、通信失敗時には応答要求フレームFrの送信実行間隔を短くすることにより、アクティブ期間間隔Pの適切な算出を図ることが可能となる。
【0083】
図2に示す実施形態では、推定送信部31は、応答要求フレームFrの送信にあたって推定送信動作設定を読み込み、送信間隔設定値をタイマ時間(変数)にセットするようになっている。また、推定送信部31は、経過時間を測るためのカウンタをタイマ時間までカウントアップしていき、タイマ時間の値まで時間をカウントする度に応答要求フレームFrを送信するように構成されている。また、応答要求フレームFrの送信後にカウンタをリセットするように構成されている。そして、送信実行間隔変更部34は、上記のタイマ時間を変更するようになっている。つまり、推定送信動作設定(送信間隔設定)の値を変更するのではなく、その値を初期値としてタイマ時間にセットすると共に、セットしたタイマ時間の値を変更することにより、推定送信部31の応答要求フレームFrの送信実行間隔を変更する。
【0084】
本実施形態について、
図5を用いて、ステップ順に説明する。なお、
図5のフローは、センサノード2の電源投入後、無線センサネットワーク1に参加(接続)した後に行われるようになっている。また、送信間隔設定値(初期値)は、中継ノード5のスリープ期間Tsやアクティブ期間Taよりも十分短いものとする。
【0085】
図5のステップS51において、センサノード2は、送信間隔設定の設定値(例えば5分など)を初期値としてタイマ時間にセットする。その後、ステップS52において、中継ノード5の省電力動作設定の推定のために応答要求フレームFrを送信する。そして、ステップS53において、センサノード2は、ステップS52で送信した応答要求フレームFrに対する送達確認Faが中継ノード5から受信されるか否か(通信が成功したか否か)を判定する。
【0086】
そのステップS53での判定の結果、センサノード2は、送達確認Faが受信されなかったと判定した場合(通信失敗の場合)には、ステップS54において、タイマ時間を短くするためタイマ時間短縮処理を実行する。具体的には、例えば現在のタイマ時間を半分にした値や、タイマ時間から所定値を減算した値など、現在のタイマ時間に任意の演算を行うことにより、現在のタイマ時間よりも短い値を有する変更値を算出し、変更値でタイマ時間を更新(上書き)する。
【0087】
逆に、ステップS53において、センサノード2は、送達確認Faが受信されたと判定した場合(通信成功の場合)には、ステップS55において、タイマ時間を長くするためタイマ時間延長処理を実行する。具体的には、例えば現在のタイマ時間を2倍にした値や、タイマ時間から所定値を加算した値など、現在のタイマ時間に任意の演算を行うことにより、現在のタイマ時間よりも長い値を有する変更値を算出し、変更値でタイマ時間を更新(上書き)する。
【0088】
その後、ステップS56において、中継ノード5の省電力動作の推定が完了したか否かを判定し、推定が完了していないと判定した場合には、ステップS57でタイマ時間の満了まで待機後、ステップS52に戻り、応答要求フレームFrを送信する。逆に、ステップS56において推定が完了したと判定される場合には、フローを終了する。上記の推定の完了は、例えば、アクティブ期間間隔Pが算出できた場合であっても良い。
【0089】
なお、ステップS53での通信成功、通信失敗は、ステップS52で送信した1または複数の応答要求フレームFrに対する送達確認Faの受信割合(通信成功率)で評価しても良い。例えば、タイマ時間から規定時間α(αはタイマ時間よりも短時間)を減算し、この(タイマ時間-α)毎に、α時間の間に周期的に複数の応答要求フレームFrを送信しても良い。
【0090】
また、幾つかの実施形態では、
図2に示す実施形態では、送信実行間隔変更部34は、応答要求フレームFrの送信実行間隔が、所定の最小値以上で、かつ所定の最大値以下の範囲に収まるように、応答要求フレームFrの送信実行間隔を変更しても良い。具体的には、上述した
図5のステップS54において、タイマ時間の最小値(例えば初期値など)と、上記の変更値とを比較し、そのうちの大きい値を有する方で現在のタイマ時間を変更する。このように、タイマ時間に対して最小値を設けることで、タイマ時間が短くなり過ぎることによって、不必要なほど過度に応答要求フレームFrが送信さることを防止し、推定時の電力消費の増大の防止を図ることが可能となる。
【0091】
同様に、ステップS55において、所定の最大値と、上記の変更値とを比較し、そのうちの小さい値を有する方で現在のタイマ時間を変更する。このように、タイマ時間に対して最大値を設定することで、センサノード2が中継ノード5と通信可能な最小の時間間隔などの適切な推定を図ることが可能となる。
【0092】
上記の構成によれば、センサノード2は、中継ノード5との通信成功時には、応答要求フレームFrの送信実行間隔をより長い値に更新し、中継ノード5との通信失敗時にはこの送信実行間隔をより短い値に更新する。これによって、中継ノード5のスリープ期間Ts、およびこのスリープ期間Tsを挟んで隣接する2つのアクティブ期間Taに送信する応答要求フレームFrの送信数を減らしつつ、アクティブ期間Taが繰り返される周期(アクティブ期間間隔P)を適切に算出することができる。
なお、本実施形態に本発明は限定されず、他の幾つかの実施形態では、
図5のステップS54やS55において、現在のタイマ時間を変更値で無条件に変更しても良い。
【0093】
他の幾つかの実施形態では、例えば、中継ノード5は、3時間(時間x)のスリープ期間Tsおきに、10分(時間y)だけアクティブ状態になるなど、中継ノード5の省電力動作設定に関する情報をセンサノード2に事前に登録するように構成しても良い。このような実施形態では、センサノード2が1または複数回送信する応答要求フレームFrに対する送達確認Faが1回受信できれば、スリープ期間Tsが分かっているので、アクティブ期間Taが繰り返される周期がx+y時間と算出できる。
【0094】
次に、上述した通信実行制御部4に関する幾つかの実施形態について、説明する。
幾つかの実施形態では、
図2に示すように、通信実行制御部4は、動作状態推定部3による推定結果Eに基づいて、中継ノード5のアクティブ期間Taに通信先との通信を実行する通信実行タイミングを決定する通信タイミング決定部41と、この通信実行タイミングで通信先との通信を実行する通信実行部44と、を有しても良い。
【0095】
具体的には、通信タイミング決定部41は、動作状態推定部3(判定部32)が推定した例えばアクティブ期間間隔Pなどに基づいて、その間隔や、その間隔の公倍数などの間隔を通信実行間隔として設定し、応答要求フレームFrあるいは送達確認Faの送受信時刻を起点として、アクティブ期間間隔Pで通信先との通信を行うような通信実行タイミングを決定しても良い。あるいは、後述するように、通信タイミング決定部41は、通信実行タイミングの初期値を設定し、その初期値を調整しながら、通信実行タイミングを決定しても良い。
【0096】
上記の構成によれば、アクティブ期間Taの周期(アクティブ期間間隔P)の推定結果Eを用いて、通信実行タイミングが中継ノード5のアクティブ期間Taに重なるように決定する。この通信実行タイミングに従って、センサノード2がゲートウェイ8など通信先との通信を実行することにより、中継ノード5のアクティブ期間Taに通信を行うことができ、電力消費を抑制しつつ、通信先との通信をより確実に行うことができる。
【0097】
また、上述した実施形態において、幾つかの実施形態では、
図2に示すように、上記の通信タイミング決定部41は、上述した通信実行タイミングの初期値(以下、通信タイミング初期値Ps)を設定する初期値設定部41aと、通信先(ゲートウェイ8など)との通信時に送信する応答要求フレームFrに対する送達確認Faの受信状況に基づいて、通信タイミング初期値Psを調整していくことにより、通信実行タイミングを決定する調整部41bと、をさらに有しても良い。センサノード2は、通常、予め定められた規定のアップロード間隔(頻度)などの所定の送信タイミングで計測データ(送信データD)を通信先に送信するが、このような所定の送信タイミングに従って送信データDを送信するための調整を行う。
【0098】
すなわち、推定によって得られたアクティブ期間間隔Pが、中継ノード5のアクティブ期間の最小間隔(周期)ではなかった場合において、規定のアップロード間隔と、アクティブ期間間隔Pの公倍数で得られる間隔であって規定のアップロード間隔に最も近い間隔との差異が許容できないほど大きい場合が有り得る。このような場合、アクティブ期間間隔Pが最小値でないため、規定のアップロード間隔により近く、上記の差異が許容できるような通信実行タイミングに設定できる可能性がある。よって、センサノード2は、調整部41bによる調整を通して、より適切な通信実行タイミングを探す。
【0099】
具体的には、調整部41bは、応答要求フレームFrに対する送達確認Faが受信された場合に通信タイミング初期値Psを調整しても良く、例えば通信頻度が段階的に下がるように、通信タイミング初期値Psを調整しても良い。逆に、調整部41bは、応答要求フレームFrに対する送達確認Faが受信されない場合に通信タイミング初期値Psを調整しても良く、例えば通信頻度が段階的に上がるように、通信タイミング初期値Psを調整しても良い。
【0100】
より具体的には、調整部41bは、通信タイミング初期値Psを変数にアクティブ期間間隔Pセットし、送達確認Faの受信状況に応じて、この変数値を変更する。上記の通信タイミング初期値Psは、例えばアクティブ期間間隔Pの公倍数(P×n。nは1以上の整数)であっても良い。また、調整部41bによる通信頻度の段階的な上げ下げの幅は、通信タイミング初期値Psあるいはアクティブ期間間隔Pよりも小さい間隔となる。
【0101】
例えば、調整部41bは、アクティブ期間間隔Pに基づいて算出される、規定のアップロード間隔よりも小さく、かつ、それに最も近い間隔を通信タイミング初期値Psとして、アクティブ期間間隔Pを2以上の任意の数で分割するような周期で、通信タイミング初期値Psから、通信タイミング初期値Psからアクティブ期間間隔P(Ps+P)まで、応答要求フレームFrの送信および送達確認Faの受信確認を行っても良い。通信タイミング決定部41は、このような処理によって、通信タイミング初期値Psからアクティブ期間間隔Pまでの間で見つけられた規定のアップロード間隔に最も近い間隔を、通信実行タイミングに決定する。
【0102】
上記の構成によれば、状況に応じて通信実行タイミングを決定することができ、より適した通信実行タイミングによる通信先との通信の実行を図ることができる。
なお、上述した通信タイミング決定部41と同様の処理を実行するためのステップを、中継ノードの動作推定方法が備えていても良い。
【0103】
その他、幾つかの実施形態では、通信実行制御部4は、通信実行部44によって送信された応答要求フレームFrに対して送達確認Faが受信されない場合に動作状態推定部3に対して通知する通知部45を、さらに備えても良い。中継ノード5からの送達確認Faが受信されない場合には、応答要求フレームFrが中継ノード5の省電力動作設定の推定結果Eに基づいて送信されているので、例えば無線センサネットワーク1に何らかの変化が生じたなどにより、これまでの中継ノード5の省電力動作設定の推定結果Eが適切ではなくなったものと想定される。
【0104】
よって、このような状況を動作状態推定部3に通知するようにすれば、再度の推定を行う契機を与えることができ、これを契機に動作状態推定部3による再推定を行うことにより、現在の状況に適した推定結果Eを得ることができる。
なお、上述した通知部45と同様の処理を実行するためのステップを、中継ノードの動作推定方法が備えていても良い。
【0105】
(実施形態2)
次に、本発明の他の幾つかの実施形態について、
図6~
図10を用いて説明する。
図6は、本発明の一実施形態に係る中継ノードの機能を示すブロック図である。
図7は、本発明の一実施形態に係る中継ノードが管理するセンサノードテーブルを示す図である。
図8は、本発明の一実施形態に係る中継ノードの動作方法を示す図であり、中継ノードの学習後の定常動作時の状況を説明するための図である。
図9は、本発明の一実施形態に係る中継ノードの動作方法を示す図であり、中継ノードの学習時の動作を示すフロー図である。また、
図10は、本発明の一実施形態に係る中継ノードの学習後の定常動作時の動作を示すフロー図である。
【0106】
本実施形態は、上述した省電力動作を行う中継ノード5が、電源投入後の初期状態などにおいて、センサノード2からの送信データDの送信状況を監視し、その監視結果に基づいて、自ノードのアクティブ期間Taやスリープ期間Tsをいつにするかを決定する。つまり、中継ノード5は、センサノードの通信状況を把握して、自ノードの動作設定(省電力動作設定)を決定する。これによって、中継ノード5は、センサノード2が通信(送信データDを送信)すると推定される時(時間帯)がアクティブ期間Taになり、センサノード2が通信しないと推定される時がスリープ期間Tsになるように、省電力動作設定を生成することが可能となり、センサノード2の動作に応じた中継ノード5の適切な省電力動作を図れる。
【0107】
詳述すると、幾つかの実施形態では、中継ノード5は、上述したように、1または複数のセンサノード2が行う通信の中継が可能なアクティブ期間Taと、この通信の中継をしないスリープ期間Tsとを所定の動作設定(以下、省電力動作設定)に従って切り替える装置である。
図6に示すように、中継ノード5は、省電力動作に関する動作設定生成部6と、動作制御部7と、を備える。
【0108】
動作設定生成部6は、省電力動作設定を生成するよう構成された機能部である。通常、センサノード2は、事前に設定されたアップロード間隔などで計測データをゲートウェイ8に送信するよう構成されている。そこで、中継ノード5は、省電力動作設定が初期化されていることで未だ内容設定がない初期化時においては、スリープ状態になることなくアクティブ状態で動作することにより、センサノード2の通信状況を監視する。そして、中継ノード5は、この監視結果に基づいて、各センサノード2のアクティブ期間Taやスリープ期間Tsを把握(学習)し、自ノードの省電力動作設定として保存する。
より詳細には、動作設定生成部6は、受信状況監視部61と、設定決定部62と、を含む。
【0109】
受信状況監視部61は、1または複数のセンサノード2から送信される送信データDの受信状況を監視する。具体的には、中継ノード5は、センサノード2が送信した送信データDを受信すると、その送信データDの通信フレーム中から省電力動作設定を決定するのに用いる情報を抽出する。具体的には、例えば通信フレームのヘッダ情報から送信元(センサノード2のアドレス)を抽出し、その通信フレームの受信時刻などの通信時刻と共に履歴データHとして記憶する。この動作を所定の学習期間(監視期間)にわたって実行することで、複数の履歴データHを記憶装置5mに蓄積する。なお、通信フレームから送信データDの宛先(ネットワーク層の宛先)をさらに抽出しても良い。宛先がゲートウェイ8であれば、その送信データDが、センサノード2からのゲートウェイ8への計測データの通信のためのものであることが確認できる。
【0110】
設定決定部62は、センサノード2から送信された送信データDの受信状況に基づいて、自ノードの省電力動作設定を決定する。つまり、上述した学習期間に得られる複数の履歴データHを解析し、省電力動作を決定する。より詳細には、設定決定部62は、送信データDの受信状況に基づいて、1または複数のセンサノード2が送信する送信データDを受信しない時間間隔に基づいてスリープ期間Tsを決定しても良い。あるいは、1または複数のセンサノード2が送信する送信データDを受信する時間間隔に基づいてアクティブ期間Taを決定しても良い。これらのうちの両方を行っても良い。スリープ期間Tsあるいはアクティブ期間Taを設定すべき期間が分かれば、その期間以外を他方の期間とすれば良く、省電力動作設定を生成することが可能となる。
【0111】
すなわち、学習期間に蓄積された複数の履歴データHの送信元から、中継ノード5が中継すべきセンサノード2が把握できる。また、複数の履歴データHを送信元毎に確認することにより、各センサノード2が行ったゲートウェイ8などの通信先との通信時刻が把握できる。よって、複数の履歴データHの通信時刻をセンサノード2毎に確認することにより、その複数の通信時刻に基づいて、各センサノード2の通信間隔を推定することができる。
【0112】
さらに、各センサノード2の通信間隔の推定値(推定通信間隔G)を用いることで、
図10に示すように、中継ノード5は、例えば、その推定後に受信した送信データDの受信時刻およびその送信データDの送信元から、各センサノード2のその後の通信先との通信時刻を推定することができる。よって、設定決定部62は、各センサノード2の通信の推定時刻の前後に所定の時間を付加するなどした、この推定時刻を含む所定の時間帯にアクティブ状態で動作するようにし、それ以外の時間帯ではスリープ状態で動作するような省電力動作設定を生成する。
【0113】
図6に示す実施形態では、中継ノード5は、
図7に示すようなセンサノードテーブル5Tで、自ノードが中継する必要がある1または複数のセンサノード2を管理するようになっている。センサノードテーブル5Tは、センサノード2毎に、推定した推定通信間隔Gと、最新の送信データDの受信時刻と、この最新の送信データDの受信時刻の次に、同一のセンサノード2から送信データDを受信する想定受信時刻を記憶するようになっている。
【0114】
この動作設定生成部6は、幾つかの実施形態では、
図8に示すフローに従って動作しても良い。
図8をステップ順に説明すると、中継ノード5は、電源投入がなされると、学習モードに移行する。すなわち、無線センサネットワーク1への参加、および、ステップS81におけるセンサノードテーブル5Tの初期化(クリア)の後、ステップS82において、センサノード2から送信される送信データDを待ち受ける。そして、ステップS83において、中継すべき送信データDを受信したら、その送信データDの通信フレームから送信元を抽出し、その送信元が初めて送信データDを送信した場合など未だセンサノードテーブル5Tへ登録がない場合には、センサノードテーブル5Tに登録する。また、ステップS84において、履歴データHを記憶装置5mなどに保存する。
【0115】
そして、ステップS85において、学習モードを完了させるか否かを判定し、学習モードを継続すると判定した場合には、ステップS82に戻り、上述したステップS82~S85を繰り返す。学習モードの完了は、学習モードを完了できるものとして設定した所定の時間が経過した場合に完了と判定しても良い。あるいは、センサノードテーブル5Tに最後に登録されたセンサノード2の登録後から、所定の時間を経過しても、新たなセンサノード2が追加されなかった場合に完了と判定しても良い。このような複数の条件の少なくとも1つが成立した場合に、完了と判定しても良い。
【0116】
逆に、ステップS85において、学習モードを完了すると判定した場合には、ステップS84の実行により蓄積した複数の履歴データHを用いて、各センサノード2毎に推定通信間隔G(前述)の算出を行い、センサノードテーブル5Tに登録する。この際、センサノード2毎に、最新の通信フレームの受信時刻を履歴データHから抽出し、最新の受信時刻に登録する。その後、次に説明する動作制御部7による定常動作モードへ移行する。
【0117】
他方、動作制御部7は、動作設定生成部6によって生成された省電力動作設定に従って、自ノードのアクティブ期間Taとスリープ期間Tsとを切り替える。上述したセンサノードテーブル5Tを参照すれば、各センサノード2の想定受信時刻のうちの現在時刻に最も近い想定受信時刻に、次に中継すべきセンサノード2からの送信データDの想定受信時刻が得られる。よって、動作制御部7は、この現在時刻から最も時間的に近い想定受信時刻まではスリープ状態になり、この想定受信時刻付近でアクティブ状態になるように制御(省電力動作)する。アクティブ状態になった後は、動作制御部7は、例えば、上記と同様の処理を行うことにより、次のスリープ状態になるタイミングと、アクティブ状態になるタイミングを決定し、その決定に従って省電力動作を実行しても良い。あるいは、センサノードテーブル5Tに基づいて、スリープ状態およびアクティブ状態の各タイミングを決めて、これに基づく周期などで省電力動作を実行しても良い。その結果、中継ノード5は、時間の経過に従って、アクティブ期間Taとスリープ期間Tsを交互に繰り返すようになる(
図10参照)。
【0118】
より具体的には、動作制御部7は、
図9に示すフローに従って動作しても良い。
図9をステップ順に説明すると、中継ノード5は、定常動作モードへの移行後のステップS91において、センサノードテーブル5Tに登録されたセンサノード2毎の次の想定受信時刻から現在時刻に最も近い想定受信時刻を探す。ステップS92において、ステップS91で見つけた想定受信時刻までスリープ状態となる。ステップS93において、スリープ状態からの復帰後(アクティブ状態への切替り後)、センサノードテーブル5Tの次の想定受信時刻に登録された時刻のうち、現在時刻から任意の時間(β)以内(現在時刻+β以内)の時刻となっているセンサノード2を抽出する。その後、ステップS94において、抽出した1以上のセンサノード2からの送信データDを待機する。
【0119】
そして、ステップS95において、ステップ53で抽出したセンサノード2の全てから、現在時刻+β以内に送信データDを通信するための通信フレームが受信できた場合には、ステップS96において、センサノードテーブル5Tに変更が有るか否かを判定する。例えば、センサノードテーブル5Tに登録されていない他のセンサノード2からの通信フレームを受信した場合には、変更有りと判定する。
【0120】
例えばZigbeeでは、センサノード2は、無線センサネットワーク1に参加する際には、CSMA/CAのキャリアセンスなどにより、他の通信が存在する時間に割り込むように孤立通知(Beacon request)をブロードキャストし、自ノードの存在を近隣の中継ノード5(近隣のノード)に通知する。センサノード2は、自ノードが送信した孤立通知に対して中継ノード5が応答(Beacon response)するまで孤立通知を送信するが、中継ノード5は、この孤立通知を受け取った段階で新規のセンサノード2が出現したことを検知する。よって、中継ノード5を、センサノード2からの孤立通知の受信に応じてセンサノードテーブル5Tに変更有りと判定するように構成しても良い。あるいは、新しいセンサノード2が無線センサネットワーク1に参加する前にゲートウェイ8に対して新しいセンサノード2を登録するなど、ゲートウェイ8に新しいセンサノード2がペアリングされたことをゲートウェイ8からアクティブ状態の中継ノード5に通知することにより、中継ノード5がセンサノードテーブル5Tに変更有りと判定するように構成しても良い。物理的なスイッチあるいはソフトウェアスイッチを中継ノード5に設けておき、センサノード2を設置した段階で人が中継ノード5のモードを切り替えることにより、中継ノード5がセンサノードテーブル5Tに変更有りと判定するように構成しても良い。
【0121】
そして、ステップS96において、変更無しの場合には、ステップS91に戻って上述したステップを繰り返す。逆に、ステップS96において、変更有りの場合には、学習モード(
図8参照)へ遷移する。
【0122】
一方、上述したステップS95において、全てのセンサノード2から通信フレームが受信できない場合には、学習モードへ遷移する。本実施形態では、多少のタイミングずれで通信フレームを受信できない場合に学習モードへ遷移するのを防止するために、ステップS97において、さらに所定の時間だけ受信を待機する。例えば、さらにβだけ受信を待機しても良いし、β×m(mは1以上の整数)の間、受信を待機しても良い。その後、ステップS98で、抽出した全てのセンサノード2からの通信フレームが受信できたか否かを判定し、受信できた場合には、上述したステップS96に移り、受信できない場合には、学習モードへ遷移する。
【0123】
上記の構成によれば、中継ノード5は、省電力動作設定に従って、アクティブ状態とスリープ状態とを切り替えることにより省電力動作が可能に構成されており、この省電力動作設定を、センサノード2が送信するゲートウェイ8などの通信先に向けた送信データDなどの受信状況に応じて生成する。これによって、中継ノード5は、通信を実行するセンサノード2が存在しないと見込まれる期間にはスリープ状態になることができ、電力消費を抑制することができる。また、中継ノード5は、通信を実行するセンサノード2が1つでも存在することが見込まれる期間にはアクティブ状態になることによりセンサノード2の通信の確実な中継を図ることができる。よって、ゲートウェイ8などによる計測データの収集のリアルタイム性の向上や、センサノード2の送信データDの再送などに伴う電力消費を抑制することができる。
【0124】
その他、センサノード2と中継ノード5との間の精密な時間同期が不要であるため、無線センサネットワーク1のセットアップを簡易化することができる。また、先に説明したような、センサノード2が中継ノード5の省電力動作設定を推定するような場合に比べて、センサノード2に対する機能追加を不要とすることや、センサノード2の推定時の電力消費の低減、メンテナンスを中継ノード5に集約できるといった効果を有する。
【0125】
また、幾つかの実施形態では、中継ノード5は、上記の省電力動作設定を更新する設定更新部64を、さらに備えても良い。設定更新部64は、アクティブ期間Ta毎に、送信データDを送信するセンサノード2の数の期待数を算出する期待数算出部64aと、アクティブ期間Ta毎に、送信データDを送信するセンサノード2の数の実績数を算出する実績数算出部64bと、上記の期待数と実績数とが一致しない場合に動作設定生成部6に通知する通知部64cと、を有する。
【0126】
本実施形態について
図10を用いて説明する。
図10では、中継ノード5は、時間の経過に従って、アクティブ期間Taを6回繰り返している。その中の1番目~4番目、および6番目のアクティブ期間Taでは、中継ノード5は、センサノード2a~2cのうちのいずれか1つのセンサノード2のみが送信した送信データDを受信する見込みなので、期待数は1となる。他方、5番目のアクティブ期間Taでは、中継ノード5は、センサノード2aおよび2cの2つのセンサノード2が送信した送信データDを受信する見込みなので、期待数は2となる。
【0127】
このように設定された各アクティブ期間Taの期待数に対して、実際に受信した送信データDの実績数の全てが1であったとする。この場合、5番目の各アクティブ期間Taでの期待数は2であるため、5番目の各アクティブ期間Taにおける期待数と実績数とが一致しない。よって、通知部64cによる上記の通知がなされる。また、
図10に示す実施形態では、実績数が期待数よりも小さい場合を示しているが、いずれかの中継ノード5のアクティブ期間Taにおいて実績数が期待数よりも多い場合にも、通知部64cによる通知がなされる。
【0128】
上記の構成によれば、中継ノードは、センサノード2からの送信データDの期待数および実績数をアクティブ期間Ta毎に確認し、期待数と実績数が一致しない場合には通知する。期待数と実績数が一致しない場合には、中継ノード5がセンサノード2の通信状況を適切に把握できていないと判断される。よって、期待数と実績数との比較により、中継ノード5の省電力動作設定が適切であるか否かを判定することができ、適切でない場合には中継ノード5の省電力動作設定を更新するようにすれば、センサネットワークの変化に追従した、中継ノード5の適切な省電力動作設定を維持することができる。
【0129】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【符号の説明】
【0130】
1 無線センサネットワーク
2 センサノード
2r 無線通信部
2s センサ部
3 動作状態推定部
31 推定送信部
32 判定部
34 送信実行間隔変更部
4 通信実行制御部
41 通信タイミング決定部
41a 初期値設定部
41b 調整部
44 通信実行部
45 通知部
5 中継ノード
5T センサノードテーブル
6 動作設定生成部
61 受信状況監視部
62 設定決定部
64 設定更新部
64a 期待数算出部
64b 実績数算出部
64c 通知部
7 動作制御部
8 ゲートウェイ
91 有線ネットワーク
93 金属製配管
94 壁
Fr 応答要求フレーム
Fa 送達確認
Ta アクティブ期間
Ts スリープ期間
D 送信データ
E 中継ノードの省電力動作設定の推定結果
P アクティブ期間間隔
G 推定通信間隔