(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】接合構造、接合部材及び接合方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/58 20060101AFI20220613BHJP
E04H 1/12 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
E04B1/58 506H
E04B1/58 508H
E04H1/12 A
(21)【出願番号】P 2018120493
(22)【出願日】2018-06-26
【審査請求日】2020-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山鹿 栄治
(72)【発明者】
【氏名】島田 空
(72)【発明者】
【氏名】丸山 剛
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-284268(JP,A)
【文献】実開昭61-131508(JP,U)
【文献】特開2010-196328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/38-1/61
E04B 1/343
E04H 1/12
E04H 6/02
F16B 7/00-7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1フレーム材の小口を第2フレーム材の側面に当接させ接合部材を介して前記第1フレーム材と前記第2フレーム材とを接合する接合構造であって、
前記第1フレーム材は、長手方向に沿う中空部と、当該中空部内において前記接合部材に係合し当該第1フレーム材に螺合される係合ねじの螺合孔と、を有し、
前記接合部材は、前記第2フレーム材の前記側面に
柱当接面が当接されて取り付けられ、前記係合ねじが係合される係合部を有して
おり、
前記第1フレーム材の前記小口から前記螺合孔における前記小口とは反対側の縁までの距離は、前記第2フレーム材の前記側面に当接される前記接合部材の前記柱当接面から前記係合部までの距離より長く形成されていることを特徴とする接合構造。
【請求項2】
請求項1に記載の接合構造であって、
前記接合部材は、前記中空部の内面に当接される固定当接部と、前記固定当接部から前記
柱当接面側に向かって前記内面との間隔が広くなる傾斜部と、
前記傾斜部の前記柱当接面側に前記係合ねじが係合しつつ挿入される係合ねじ挿入孔と、を有し、
前記係合部は、前記係合ねじ挿入孔における前記傾斜部側の縁であることを特徴とする接合構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の接合構造であって、
前記第1フレーム材は、互いに対向する2箇所にて各々前記接合部材により接合されていることを特徴とする接合構造。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の接合構造であって、
前記第1フレーム材は、互いに対向する2箇所のうちの一方が前記接合部材により接合されており、
互いに対向する2箇所のうちの他方は、前記接合部材にて位置決めされた位置に前記第1フレーム材の
前記小口を前記側面に引き寄せて接合可能な固定部材により接合されていることを特徴とする接合構造。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の接合構造であって、
前記側面と前記小口との間にパッキンが介在されていることを特徴とする接合構造。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の接合構造に用いることを特徴とする接合部材。
【請求項7】
第1フレーム材の小口を第2フレーム材の側面に当接させ接合部材を介して前記第1フレーム材と前記第2フレーム材とを接合する接合方法であって、
前記第1フレーム材は、長手方向に沿う中空部と、当該中空部内において前記接合部材に係合し当該第1フレーム材に螺合される係合ねじの螺合孔と、を有しており、
前記接合部材は、前記第2フレーム材の前記側面に当接される柱当接面と、当該柱当接面とは反対側にて前記係合ねじと係合する係合部と、を有しており、
前記小口から前記螺合孔における前記小口とは反対側の縁までの距離は、前記柱当接面から前記係合部までの距離より長く形成されており、
前記第2フレーム材の前記側面に取り付けられた前記接合部材を、前記第1フレーム材の前記小口から前記中空部内に挿入する接合部材挿入ステップと、
前記螺合孔に螺合した前記係合ねじを前記中空部内に突出させて前記係合部に当接させる係合ねじ螺合ステップと、
を有することを特徴とする接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1フレーム材の小口を第2フレーム材の側面に当接させ接合部材を介して前記第1フレーム材と前記第2フレーム材とを接合する接合構造、この接合構造に用いる接合部材、及び、接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カーポート等の屋外構造体であって、断面中空状の角材からなる第1フレーム材としての梁を、互いに間隔を隔てて立設された2本の第2フレーム材としての支柱間に渡してなるフレーム体の支柱と梁との接合構造は知られている(例えば、特許文献1参照)。このフレーム体の支柱と梁との接合は、支柱の側面に固着される連結金具によってなされており、連結金具は、支柱の側面に固着された連結金具の梁固定面が、中空状の梁の内周面に当接されて梁がボルトにより固着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のフレーム体における支柱と梁との接合構造は、支柱に固着された連結金具の梁固定面を梁の内周面に当接させてボルトにより固着されているだけなので、梁の小口と支柱の側面との間に隙間が生じ易く、止水性が悪いという課題がある。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、止水性に優れた接合構造、接合部材及び接合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するために本発明の接合構造は、第1フレーム材の小口を第2フレーム材の側面に当接させ接合部材を介して前記第1フレーム材と前記第2フレーム材とを接合する接合構造であって、前記第1フレーム材は、長手方向に沿う中空部と、当該中空部内において前記接合部材に係合し当該第1フレーム材に螺合される係合ねじの螺合孔と、を有し、前記接合部材は、前記第2フレーム材の前記側面に取り付けられ、前記係合ねじが係合される係合部を有し、前記螺合孔に螺合されている前記係合ねじは、前記側面とは反対側にて、前記第2フレーム材に取り付けられている前記接合部材の前記係合部に当接し、前記側面側では前記接合部材に当接していないことを特徴とする接合構造である。
【0006】
このような接合構造によれば、係合ねじを螺合孔に螺合すると、進入していく係合ねじは、第2フレーム材の側面とは反対側にて係合部に当接しつつ進入していく。このとき、第1フレーム材が第2フレーム材の側面側に引き寄せられる。このため、第1フレーム材の小口は第2フレーム材の側面に押圧されるので、小口を側面により強く押し付けることが可能である。このため、小口と側面との間に隙間が生じにくいので、止水性に優れた接合構造を提供することが可能である。
【0007】
かかる接合構造であって、前記接合部材は、前記中空部の内面に当接される固定当接部と、前記固定当接部から前記側面側に向かって前記内面との間隔が広くなる傾斜部と、を有し、前記係合部は、前記傾斜部にて前記固定当接部と繋がっていることを特徴とする。
【0008】
このような接合構造によれば、係合部は、固定当接部から側面側に向かって内面との間隔が広くなる傾斜部にて固定当接部と繋がっているので、係合ねじを締めることにより進入する係合ねじの先端が傾斜部を押圧することにより、接合部材を第2フレーム材の側面とは反対方向に押圧する力が作用する。このため、係合ねじを締めるだけで小口を側面に容易に、且つ、より強く押し付けることが可能である。
【0009】
かかる接合構造であって、前記第1フレーム材は、互いに対向する2箇所にて各々前記接合部材により接合されていることを特徴とする。
このような接合構造によれば、第1フレーム材の対向する2箇所にて各々、第1フレーム材が第2フレーム材の側面側に引き寄せられる。このため、小口を側面に対する傾きを抑えつつより強く押し付けることが可能である。
【0010】
かかる接合構造であって、前記第1フレーム材は、互いに対向する2箇所のうちの一方が前記接合部材により接合されており、互いに対向する2箇所のうちの他方は、前記接合部材にて位置決めされた位置に前記第1フレーム材の小口を前記側面に引き寄せて接合可能な固定部材により接合されていることを特徴とする。
【0011】
このような接合構造によれば、第1フレーム材の対向する2箇所うちの一方が接合部材により位置決めされて接合され、他方は、2箇所が対向する方向において第1フレーム材を規制することなく、接合部材により位置決めされた位置に固定部材により固定される。このため、第1フレーム材を配置しやすいので施工性に優れており、接合部材及び固定部材のいずれによっても小口を側面に引き寄せて接合するので、高い止水性を備えることが可能である。
【0012】
かかる接合構造であって、前記側面と前記小口との間にパッキンが介在されていることを特徴とする。
このような接合構造によれば、側面と小口との間にパッキンが介在されているので、より止水性に優れた接合構造を提供することが可能である。
【0013】
また、上記接合構造に用いることを特徴とする接合部材である。
このような接合部材によれば、第1フレーム材の小口を第2フレーム材の側面に押圧して接合することができるので、高い止水性を備えるように第1フレーム材と第2フレーム材とを接合することが可能である。
【0014】
また、第1フレーム材の小口を第2フレーム材の側面に当接させ接合部材を介して前記第1フレーム材と前記第2フレーム材とを接合する接合方法であって、前記第1フレーム材は、長手方向に沿う中空部と、当該中空部内において前記接合部材に係合し当該第1フレーム材に螺合される係合ねじの螺合孔と、を有しており、前記接合部材は、前記第2フレーム材の前記側面に当接される柱当接面と、当該柱当接面とは反対側にて前記係合ねじと係合する係合部と、を有しており、前記小口から前記螺合孔における前記小口とは反対側の縁までの距離は、前記柱当接面から前記係合部までの距離より長く形成されており、前記第2フレーム材の前記側面に取り付けられた前記接合部材を、前記第1フレーム材の前記小口から前記中空部内に挿入する接合部材挿入ステップと、前記螺合孔に螺合した前記係合ねじを前記中空部内に突出させて前記係合部に当接させる係合ねじ螺合ステップと、を有することを特徴とする接合方法である。
【0015】
このような接合方法によれば、係合ねじを螺合孔に螺合すると、中空部内に突出して進入していく係合ねじは、第2フレーム材の側面に当接される柱当接面とは反対側にて係合部に当接しつつ進入していく。このとき、第1フレーム材が第2フレーム材の側面側に引き寄せられる。このため、係合ねじを螺合するだけで、第1フレーム材の小口を第2フレーム材の側面に押圧することができ、小口を側面により強く押し付けることが可能である。このため、係合ねじを螺合するだけで、止水性に優れた状態で第1フレーム材と第2フレーム材とを接合することが可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、止水性に優れた接合接合構造、接合部材及び接合方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の接合構造にて接合された構造体の一例をなすパーゴラを示す斜視図である。
【
図2】柱と桁との接合部の構成を示す分解斜視図である。
【
図3】接合部材が取り付けられた柱を示す図である。
【
図4】
図4(a)は、接合部材の平面図であり、
図4(b)は、接合部材の側面図である。
【
図5】小口に対する係合ねじ螺合孔及び係合ねじ挿入孔の位置を示す図である。
【
図6】係合ねじにより桁が柱側に引き寄せられる様子を示す模式図である。
【
図7】パッキンが設けられている例を示す斜視図である。
【
図8】第1固定部材を用いた接合構造を示す図である。
【
図9】第2固定部材を用いた接合構造を示す図である。
【
図10】第3固定部材を用いた接合構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係る接合構造について図面を参照して説明する。
本実施形態においては、例えば、
図1に示すようなパーゴラ1を例に挙げて説明する。本発明の接合構造は、パーゴラ1にて第2フレーム材としての柱2と第1フレーム材としての桁3との接合部に用いられている。
【0019】
本実施形態のパーゴラ1は、四隅に立設された柱2と、互いに隣り合う柱2間に架け渡された桁3とを有している。柱2及び桁3は、各々長手方向に貫通する中空部2a、3aを有している。以下、柱2の右側の側面2bに左右方向に延びる桁3の左側の小口3bが当接されて接合されている接合構造について説明する。
【0020】
以下の説明においては、説明の対象となる柱2が立設されている方向を上下方向、柱2の上端に接合されている桁3の長手方向を左右方向、上下方向および左右方向と直交する方向を桁3の幅方向または奥行き方向として示す。パーゴラ1の各部位であっても、また、パーゴラ1を構成する各部材については単体の状態であっても、パーゴラ1が立設されている状態にて上下方向、左右方向、桁3の幅方向または奥行き方向にて方向を特定して説明する。
【0021】
図2、
図3に示すように、柱2と桁3とは、2つの接合部材4を介して接合されている。より具体的には、柱2の側面2bに固定されて桁3の中空部3a内に挿入され、挿入された部位と桁3とがねじ止めされて、桁3の小口3bが柱2の側面2bに当接された状態で接合されている。
【0022】
柱2は、断面が矩形状をなし上下方向に貫通する角パイプ材であり、互いに隣り合う柱2とは、一つの側面2bを互いに対向させるとともに互いに間隔を空けて立設されている。
【0023】
桁3は、断面が矩形状をなし水平方向に貫通する中空部3aを有する角パイプ状の桁本体部3cと、桁本体部3cの下方に延出された桁垂壁部3dと、を有する押出成形部材である。
【0024】
桁本体部3cは、中空部3aを形成し奥行き方向に対向する一対の側板部3eと、一対の側板部3eの上端部同士を繋ぐ上板部3fと、一対の側板部3eの下端部同士を繋ぐ下板部3gと、を有している。桁垂壁部3dは、下板部3gよりも下方に延出されて一対の側板部3eと各々繋がった壁部を形成している。
【0025】
上板部3fと下板部3gとの長手方向における端部側には、各々、接合部材4を固定するための桁固定ねじ5aが挿通される2つの桁固定ねじ挿通孔3hと、後述する係合ねじ5bが螺合される係合ねじ螺合孔3iとが設けられている。2つの桁固定ねじ挿通孔3hは、桁3の幅方向において中央から振り分けて配置されており、係合ねじ螺合孔3iは、桁3の幅方向において中央に設けられている。また、2つの桁固定ねじ挿通孔3hと係合ねじ螺合孔3iとは、奥行き方向に沿う直線上に並べて設けられている。
【0026】
2つの接合部材4は、同一の部材であり、桁3の中空部3a内に挿入されるため、奥行き方向の幅は、桁3の一対の側板部3eの間隔よりも狭く形成されている。2つの接合部材4は、互いに上下を反転させた状態で、桁3の中空部3a内にて互いに対向する2つの内面としての上板部3fの下面3k及び下板部3gの上面3lに各々固定されて用いられる。このため、ここでは、上側に取り付けられる接合部材4を例に挙げて説明する。
【0027】
柱2の側面2bに固定され上側に位置する接合部材4は、
図3、
図4に示すように、側面2bに固定されて鉛直な板状をなす柱固定部4aと、桁3の中空部3a内に挿入されて上板部3fの下面3kに当接されて固定され水平な板状をなす桁固定部4bと、柱固定部4aと桁固定部4bとを繋ぎ、柱固定部4aの上縁から上方に向かって柱との間隔が広くなる傾斜を備えた傾斜連結部4cと、を有している。
【0028】
柱固定部4aには、柱2に固定するための柱固定ねじ5cが挿通される挿通孔4dが設けられている。桁固定部4bは、桁3の幅方向に沿い下方に窪む溝部4eと、溝部4eの左右方向における両側に上板部3fの下面3kに当接される固定当接部4fとを有している。溝部4eは、窪んでいる底部4gと、左右の固定当接部4fとの間に、底部4gから離れるにつれて高くなる傾斜を有する溝傾斜部4hを有している。
【0029】
溝部4eには、奥行き方向において接合部材4の中央から振り分けて桁固定ねじ5aが螺合される2つの桁固定螺合孔4iが設けられており、奥行き方向において接合部材4の中央に係合ねじ5bが係合されつつ挿入される係合ねじ挿入孔4jが設けられている。係合ねじ挿入孔4jの直径は、係合ねじ5bのねじ部の直径より十分大きく形成されている。
【0030】
柱2に固定された接合部材4が、桁3の中空部3aに挿入されて、係合ねじ5bが螺合される前の、桁3の小口3bが柱2の側面2bに近接された状態では、2つの桁固定螺合孔4iは、桁3に設けられた2つの桁固定ねじ挿通孔3hよりも、また、係合ねじ挿入孔4jは、係合ねじ螺合孔3iよりも、柱2側に位置するように構成されている。
【0031】
より具体的には、
図5に示すように、桁3の小口3bから2つの桁固定ねじ挿通孔3hの中心までの距離L1は、接合部材4の柱固定部4aの柱当接面4kから桁固定螺合孔4iの中心までの距離L2よりも僅かに長く形成されている。また、桁3の小口3bから係合ねじ螺合孔3iにおける小口3bとは反対側の縁3jまでの距離L3は、柱固定部4aの柱当接面4kから側面2bに取り付けられた接合部材4の係合ねじ挿入孔4jにおける側面2bとは反対側の縁4lまでの距離L4よりも長く形成されている。
【0032】
このため、柱2に固定された接合部材4が、桁3の中空部3aに挿入された状態で、
図6(a)に示すように、桁3の係合ねじ螺合孔3iの下には、係合ねじ挿入孔4jにおける側面2bとは反対側の縁4l及び、この縁4lと繋がった右側の溝傾斜部4hが位置している。そして、係合ねじ螺合孔3iに係合ねじ5bを螺合して締め込むことにより、
図6(b)に示すように、下方に進入する係合ねじ5bの先端が右側の溝傾斜部4hを押圧することにより、
図6(c)に示すように、桁3が左方向、すなわち柱2側に引き寄せられ、桁3の小口3bが柱2の側面2bに押圧される。このとき、柱2に取り付けられている接合部材4の係合ねじ挿入孔4jは、係合ねじ螺合孔3iに螺合されている係合ねじ5bに、柱2の側面2bとは反対側にて当接している。このとき、係合ねじ挿入孔4jの直径は、係合ねじ5bのねじ部の直径より十分大きいので、係合ねじ5bは、柱2に取り付けられている接合部材4の係合ねじ挿入孔4jにおける側面2aとは反対側にて当接しているときには、側面2a側では係合ねじ挿入孔4jを含む接合部材4に当接していない。
ここで、係合ねじ挿入孔4jにおいて係合ねじ5bが当接している、柱2の側面2bとは反対側の縁が係合部に相当する。
【0033】
柱2には、接合部材4が2つ設けられており、下側の接合部材4においても、桁3の下板部3g側が、上側の接合部材4と同様に、柱2側に引き寄せられて接合される。このため、桁3の小口3bは上板部3f側でも下板部3g側でも柱2の側面2bに押圧されて接合される。
【0034】
2つの接合部材4を用いて柱2と桁3とを接合する接合方法は、まず、2つの接合部材4を柱2の側面2bに取り付けておく。
次に、桁3を柱2に固定されている2つの接合部材4を桁3の中空部3aに挿入しつつ桁3の小口3bを柱2の側面2bに近づける(接合部材挿入ステップ)。
【0035】
次に、係合ねじ螺合孔3iに係合ねじ5bを螺合し、係合ねじ5bのねじ部を2つの接合部材4の係合ねじ挿入孔4jに各々係合させて、桁3の小口3bを柱2側に引き寄せる(係合ねじ螺合ステップ)。桁3を柱2側引き寄せた後に、桁固定ねじ5aを桁固定ねじ挿通孔3hに挿通させて桁固定螺合孔4iに螺合し、接合部材4に桁3を固定する。
【0036】
本実施形態の接合構造によれば、桁3の小口3bから、係合ねじ5bが螺合される係合ねじ螺合孔3iにおける小口3bとは反対側の縁3jまでの距離が、柱2の側面2bから、側面2bに取り付けられた接合部材4において係合ねじ5bが係合される係合ねじ挿入孔4jにおける側面2bとは反対側の縁4lまでの距離より長い。このため、係合ねじ5bを係合ねじ螺合孔3iに螺合すると、進入していく係合ねじ5bは、係合ねじ螺合孔3iにおける、側面2bとは反対側の縁3jと係合しつつ、係合ねじ挿入孔4jの、側面2bとは反対側の縁4lより側面2b側に進入していく。このとき、桁3は、接合部材4が取り付けられている柱2側に引き寄せられる。このため、桁3の小口3bは柱2の側面2bに押圧されるので、小口3bを側面2bにより強く押し付けることが可能である。小口3bが側面2bにより強く押し付けることにより、小口3bと側面2bとの間に隙間が生じにくいので、止水性に優れた接合構造を提供することが可能である。
【0037】
また、係合ねじ挿入孔4jにおける側面2bとは反対側の縁4lは、固定当接部4fから側面2b側に向かって上板部3fの下面3kまたは下板部3gの上面3lとの間隔が広くなる溝傾斜部4hにて固定当接部4fと繋がっているので、係合ねじ5bを締めることにより進入する係合ねじ5bの先端が溝傾斜部4hを押圧することにより、接合部材4を側面2bとは反対方向に押圧する力が作用する。このため、係合ねじ5bを締めるだけで小口3bを側面2bに容易に、且つ、より強く押し付けることが可能である。
【0038】
また、桁3は、中空部3a内にて互いに対向する上板部3fの下面3k及び下板部3gの上面3lにて各々柱2側に引き寄せられる。このため、小口3bを側面2bに対する傾きを抑えつつより強く押し付けることが可能である。
【0039】
また、本実施形態の接合方法によれば、係合ねじ5bを係合ねじ螺合孔3iに螺合すると、中空部3a内に突出して進入していく係合ねじ5bは、柱2の側面2bとは反対側にて係合ねじ挿入孔4jに当接しつつ進入していく。このとき、桁3が柱2の側面2b側に引き寄せられる。このため、係合ねじ5bを螺合するだけで、桁3の小口3bを柱2の側面2bに押圧することができ、小口3bを側面2bにより強く押し付けることが可能である。このため、係合ねじ5bを螺合するだけで、止水性に優れた状態で桁3と柱2とを接合することが可能である。
【0040】
本実施形態の接合部材4は、傾斜連結部4cを有しており、柱2に取り付けられて桁3の中空部3aに挿入されたときに、柱固定部4aと傾斜連結部4cとの境界位置が、上板部3fまたは下板部3gと離れた位置に配置される。このため、上下に2つ設けられた接合部材4は、各々の、柱固定部4aと傾斜連結部4cとの境界位置から撓んで、各々の固定当接部4fを互いに近づけ間隔を狭めることが可能である。このため、柱2の側面2bに接合部材4が上下に2つ設けられていたとしても、桁3の小口3bに容易に挿入することが可能である。
【0041】
上記実施形態においては、桁3の小口3bを柱2の側面2bに当接させて、小口3bが側面2bを直接押圧する例について説明したが、これに限らず、例えば、
図7に示すように、柱2の側面2bと桁3の小口3bとの間にゴムなどの軟質樹脂にて形成されたパッキン6を介在させると、止水性をより一層向上させることが可能である。
【0042】
また、本実施形態の接合部材4を用いることにより、桁3の小口3bを柱2の側面2bに押圧して接合することができるので、高い止水性を備えるように桁3と柱2とを接合することが可能である。
【0043】
また、上記実施形態においては、柱2の側面2bに固定した2つの接合部材4にて桁3を接合する例について説明したが、これに限るものではない。例えば、上側に接合部材4が設けられ、下側には、桁3を柱2の側面2bに引き寄せて接合可能な、例えば、
図8~10に示すような固定部材7、8、9を用いても構わない。
【0044】
具体的には、
図8に示す第1固定部材7は、断面形状がL字状をなす横板部7aと縦板部7bがほぼ直角に繋がっている。横板部7aは、桁3の下板部3gの下面に当接されて固定されている。縦板部7bは、横板部7aの小口3b側の縁から下方に垂設されている。
【0045】
第1固定部材7が桁3に固定された状態では、縦板部7bにおいて柱2側に向く面7cは、小口3bよりも中空部3aの僅か内方側に位置している。縦板部7bには、奥行き方向における中央から振り分けて2箇所に、下方が開放されて上下方向に長い切欠部7dが設けられている。切欠部7dには、柱2と桁3とを接合する際に、第1固定部材7を柱2の側面2bに固定する柱側固定ねじ5dが挿通される。
【0046】
第1固定部材7を用いて柱2と桁3とを接合する接合方法は、まず、接合部材4を柱2の側面2bの上端側に取り付け、第1固定部材7を桁3の下板部3gの下面に取り付けておく。また、柱2の側面2bには、第1固定部材7を固定するための柱側固定ねじ5dを緩めた状態で螺合しておく。
【0047】
次に、桁3を柱2に固定されている接合部材4上に載置して桁3の小口3bを柱2の側面2bに近づける。このとき、桁3に固定されている第1固定部材7を側面2bに螺合されている柱側固定ねじ5dの上から下方に移動させつつ、切欠部7d内に柱側固定ねじ5dを挿通させる。
【0048】
次に、係合ねじ螺合孔3iに係合ねじ5bを螺合し、係合ねじ5bのねじ部を係合ねじ挿入孔4jに係合させて、桁3の小口3bを柱2側に引き寄せる。桁3を柱2側引き寄せた後に、桁固定ねじ5aを桁固定ねじ挿通孔3hに挿通させて桁固定螺合孔4iに螺合し、接合部材4に桁3を固定する。
次に、柱側固定ねじ5dを締め込むことにより、桁3の下側においても桁3の小口3bを柱2側に引き寄せて柱2と桁3とを接合する。
【0049】
第1固定部材7を用いた場合には、桁3を柱2と接合する際に、桁3を接合部材4上に載置すると共に、固定部材7に引っ掛けるので、桁3を接合部材4にて位置決めし、柱2側に保持させることが可能であり施工性に優れている。また、各部材の寸法誤差及び取り付け誤差を第1固定部材7の切欠部7dにより吸収することができる。
【0050】
また、
図9に示す第2固定部材8は、フック部材80と受け部材81とを有している。
フック部材80は、桁3の中空部3a内に設けられ、下板部3g上に載置されて固定されるフック固定部80aと、取り付けられたときにフック固定部80aの小口3b側となる縁から上方に延出される上方延出板部80bと、上方延出板部80bの上縁から小口3bの外に向かって低くなる傾斜を有するフック傾斜部80cとを有している。フック部材80は、フック傾斜部80cの下面側の上端部が、小口3bより中空部3aの内側に位置するように取り付けられている。
【0051】
受け部材81は、柱2の側面2bに固定される板状の部材であり、桁3に固定されたフック部材80のフック傾斜部80cが挿入される角孔81aが設けられている。また、柱2の側面2bには、受け部材81が固定されたときに角孔81aとともに柱2の中空部2aと外部とを連通する連通孔(不図示)が設けられている。
【0052】
第2固定部材8を用いて柱2と桁3とを接合する接合方法は、まず、接合部材4を柱2の側面2bの上端側に取り付け、フック部材80を桁3の下板部3gの上面3lに取り付け、受け部材81を柱2の側面2bに取り付けておく。
【0053】
次に、桁3を柱2に固定されている接合部材4上に載置すべく桁3の小口3bを柱2の側面2bに近づけるとともに、桁3に固定されているフック部材80のフック傾斜部80cを側面2bに固定されている受け部材81の角孔81a及び柱2の連通孔に挿入させる。このとき、桁3を接合部材4よりも上から下方に移動させつつ、中空部3a内に接合部材4が挿入し、接合部材4の上を桁3の上板部3fが覆うように桁3を装着すると、フック部材80のフック傾斜部80cが、角孔81a及び連通孔に挿入されて、フック傾斜部80cの下面が、角孔81aまたは連通孔の上縁を摺動する。フック傾斜部80cの下面が、角孔81aまたは連通孔の上縁を摺動することにより、桁3が柱2の側面2b側に引き寄せられ桁3の小口3bが柱2の側面2bを押圧する。
【0054】
次に、係合ねじ螺合孔3iに係合ねじ5bを螺合し、係合ねじ5bのねじ部を係合ねじ挿入孔4jに係合させて、桁3の小口3bを柱2側に引き寄せる。柱側に引き寄せた後に、桁固定ねじ5aを桁固定ねじ挿通孔3hに挿通させて桁固定螺合孔4iに螺合し、接合部材4に桁3を固定する。
【0055】
第2固定部材8を用いた場合には、桁3を柱2と接合する際に、桁3を接合部材4上に載置すると共に、フック傾斜部80cの下面が、角孔81aまたは連通孔の上縁を摺動して桁3が柱2の側面2b側に引き寄せられるので、桁3を接合部材4に載置しフック傾斜部80cを角孔81a及び連通孔に挿入するだけで桁3の小口3bを柱2の側面2bを押圧することが可能である。また、このとき、桁3を接合部材4にて位置決めし、柱2側に保持させることが可能である。このため、施工性に優れている。また、桁3の下側は、フック傾斜部80cを角孔81a及び連通孔に挿入するだけなので、各部材の寸法誤差及び取り付け誤差を第2固定部材8のフック傾斜部80cと角孔81a及び連通孔により吸収することができる。
【0056】
また、
図10に示す第3固定部材9は、ピン90aを備えた係合部材90と、係合部材90と係合して桁3を柱2側に引き寄せる引寄部材91とを有している。
【0057】
係合部材90は、桁3の中空部3a内に設けられ、下板部3g上に載置されて固定される。係合部材90は、断面形状がL字状をなす横板部90bと縦板部90cがほぼ直角に繋がっている。横板部90bは、桁3の下板部3gの上面3lに載置されて固定されている。縦板部90cは、横板部90bの小口3b側の縁から上方に延出されている。係合部材90が桁3に固定された状態では、縦板部90cが小口3bと面一に配置されており、縦板部90cに設けられたピン90aが小口3bより柱2側に向かって外側に突出している。
【0058】
ピン90aの突出している先端は、その直径が基端側の軸部90eの直径よりも大きな拡径部90dをなしており、ピン90aは、桁3の小口3bが柱2の側面2bに当接されたときに、柱2の側面に形成されたピン挿入孔(不図示)に挿入される。挿入孔に挿入されたピン90aは、柱2の内周面2cと拡径部90dとの間隔が隔てられている。
【0059】
ピン90aが挿入されるピン挿入孔は、拡径部90dよりも直径が大きな丸孔と、丸孔から繋がり下方に長い長孔とが繋がった形状をなしている。長孔の幅は、ピン90aの拡径部90dの直径より狭く、基端側の軸部90eの直径より僅かに広く形成されている。
【0060】
引寄部材91は、柱2の内周面2cに沿って中空部2aに上方から挿入されるほぼ板状の引寄本体部91aと、引寄本体部91aの上縁から水平方向に延出された操作部91bとを有している。引寄本体部91aには、下端側が開放されて上下方向に沿うスリット91cが設けられており、スリット91cの両側に上方に向かって中空部2aの内側に隆起する傾斜を備えた傾斜隆起部91dを有している。スリット91cの幅は、ピン90aの拡径部90dの直径より狭く、基端側の軸部90eの直径より僅かに広く形成されている。
【0061】
第3固定部材9を用いて柱2と桁3とを接合する接合方法は、まず、接合部材4を柱2の側面2bの上端側に取り付け、係合部材90を桁3の下板部3gの上面3lに取り付けておく。
【0062】
次に、桁3を柱2に固定されている接合部材4より上側にて桁3の小口3bを柱2の側面2bに近づけるとともに、桁3の小口3bから突出しているピン90aをピン挿入孔の丸孔に挿入し、挿入後に桁3を下方に移動して接合部材4上に載置する。このとき、ピン90aの軸部90eは、ピン挿入孔の長孔に位置している。
【0063】
次に、係合ねじ螺合孔3iに係合ねじ5bを螺合し、係合ねじ5bのねじ部を係合ねじ挿入孔4jに係合させて、桁3の小口3bを柱2側に引き寄せる。桁3を柱2側に引き寄せた後に、桁固定ねじ5cを桁固定ねじ挿通孔3hに挿通させて桁固定螺合孔4iに螺合し、接合部材4に桁3を固定する。
【0064】
次に、柱2の上方から、柱2の内周面2cに引寄本体部91aを沿わせつつ引寄部材91を中空部2a内に挿入する。このとき、ピン90aをスリット91cに挿入させつつ、内周面2cと拡径部90dとの間に、傾斜隆起部91dを挿入する。そして、引寄部材91の操作部91bを下方に打ち込むことにより、傾斜隆起部91dによりピン90aが柱2の中央側に引っ張られることにより、桁3が柱2の側面2b側に引き寄せられ桁3の小口3bが柱2の側面2bを押圧する。
【0065】
第3固定部材9を用いた場合には、桁3を柱2と接合する際に、桁3を接合部材4上に載置したときに、ピン90aは挿入孔に挿入されているだけなので、桁3の位置は、ピン90a及び挿入孔に規制されない。このため、各部材の寸法誤差及び取り付け誤差を第3固定部材9のピン90aと長孔により吸収することができる。
【0066】
また、ピン90aを挿入孔に挿入して接合部材4に桁3を載置し、柱2の上方から引寄部材91を打ち込むだけで、桁3を柱2の側面2b側に引き寄せることが可能であり、より強固に桁3の小口3bを柱2の側面2bに押圧することが可能である。
【0067】
上記実施形態においては、接合部材4に設けられている係合部を、係合ねじ挿入孔4jにおける、柱2の側面2bとは反対側の縁として説明したが、これに限るものではない。例えば、桁の中空部内に挿入されたときに、桁の内面から離れる方向に窪む凹部や溝部における柱2の側面2bとは反対側の部位であっても構わず、螺合された係合ねじが、小口と反対側にて当接される部位であれば貫通する孔を有していなくとも構わない。
【0068】
上記実施形態においては、桁3に設けられた2つの桁固定ねじ挿通孔3hと係合ねじ螺合孔3iとが、奥行き方向に沿う直線上に並べて設けられている例について説明したが、これに限るものではない。小口3bから係合ねじ螺合孔3iにおける小口3bとは反対側の縁3jまでの距離が、接合部材4が取り付けられている側面2bから当該接合部材4の係合ねじ挿入孔4jにおける側面2bとは反対側の縁4lまでの距離より長く形成されており、係合ねじ5bを締め込んだ後に、桁固定ねじ挿通孔3hに挿通された桁固定ねじ5aが桁固定螺合孔4iに螺合可能であれば構わない。
【0069】
上記実施形態においては、係合ねじ挿入孔4jにおける側面2bとは反対側の縁4lが溝傾斜部4hにて固定当接部4fと繋がっている例について説明したが、これに限るものではない。係合ねじ挿入孔における側面とは反対側の縁が固定当接部と、固定当接部から離れるにつれて桁の内面から離れる傾斜面にて繋がっていれば、接合部材は、必ずしも溝部を備えていなくとも構わない。
【0070】
上記実施形態においては、パーゴラ1の桁3を第1フレーム材とし、柱2を第2フレーム材として柱2と桁3との接合構造を例に説明したが、第1フレーム材及び第2フレーム材はこれに限らず、例えば、直交する桁同士の接合構造であっても、また、カーポートなどの柱と梁との接合構造であっても、2本のフレーム材を一方の側面に他方の小口を当接させて接合する接合構造であれば構わない。
【0071】
また、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0072】
2 柱、2b 側面、3 桁、3a 中空部、3b 小口、3i 係合ねじ螺合孔、
3j 係合ねじ螺合孔における小口とは反対側の縁、3k 上板部の下面、
3l 下板部の上面、4 接合部材、4f 固定当接部、4h 溝傾斜部、
4j 係合ねじ挿入孔、4l 係合ねじ挿入孔における側面とは反対側の縁、
5b 係合ねじ、6 パッキン、7 第1固定部材、8 第2固定部材、
9 第3固定部材、
L3 小口から係合ねじ螺合孔における小口とは反対側の縁までの距離
L4 柱当接面から係合ねじ挿入孔における柱当接面とは反対側の縁までの距離