(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】パターン形成方法および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20220613BHJP
B29C 59/02 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
(21)【出願番号】P 2018128789
(22)【出願日】2018-07-06
【審査請求日】2021-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小向 敏章
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-185531(JP,A)
【文献】特開2001-358218(JP,A)
【文献】特開2008-132722(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0248436(US,A1)
【文献】特開2011-159904(JP,A)
【文献】特開2012-039012(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0364337(US,A1)
【文献】特開2017-118062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インプリント処理を含むパターン形成方法であって、
有機膜が形成された基板を準備する準備ステップと、
前記有機膜の表面に金
属を含む表層膜を形成する表層膜形成ステップと、
前記表層膜上に無機膜を形成する無機膜材形成ステップと、
前記無機膜上に有機系マスク材を配置し、微細パターンを有するテンプレートを前記有機系マスク材に押印してマスクパターンを形成するマスクパターン形成ステップと、
前記マスクパターンをマスクに前記無機膜を加工する無機膜加工ステップと、
前記マスクパターンを除去するマスクパターン除去ステップと、を含
み、
前記表層膜形成ステップでは、
化学気相成長法により、前記有機膜上に金属膜を形成する、
パターン形成方法。
【請求項2】
インプリント処理を含むパターン形成方法であって、
有機膜が形成された基板を準備する準備ステップと、
前記有機膜の表面に金属を含む表層膜を形成する表層膜形成ステップと、
前記表層膜上に無機膜を形成する無機膜材形成ステップと、
前記無機膜上に有機系マスク材を配置し、微細パターンを有するテンプレートを前記有機系マスク材に押印してマスクパターンを形成するマスクパターン形成ステップと、
前記マスクパターンをマスクに前記無機膜を加工する無機膜加工ステップと、
前記マスクパターンを除去するマスクパターン除去ステップと、を含み、
前記表層膜形成ステップでは、
前記有機膜の表層に金属元
素を含浸させ
て、前記表層膜の表層部における前記金属元素の濃度が最も高い濃度勾配を有することにより、前記有機膜との界面を有さない前記表層膜を形成する、
パターン形成方法。
【請求項3】
前記マスクパターン除去ステップでは、
プラズマアッシングにより前記マスクパターンを除去する、
請求項1
または請求項
2に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
前記表層膜形成ステップでは、
前記基板の全面に一括して前記表層膜が形成され、
前記マスクパターン形成ステップでは、
前記基板を複数の区画に分割するショット領域ごとに前記マスクパターンが形成される、
請求項1乃至請求項
3のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項5】
インプリント処理を含む半導体装置の製造方法であって、
有機膜が形成された半導体基板を準備する準備ステップと、
前記有機膜の表面に金
属を含む表層膜を形成する表層膜形成ステップと、
前記表層膜上に無機膜を形成する無機膜材形成ステップと、
前記無機膜上に有機系マスク材を配置し、微細パターンを有するテンプレートを前記有機系マスク材に押印してマスクパターンを形成するマスクパターン形成ステップと、
前記マスクパターンをマスクに前記無機膜を加工する無機膜加工ステップと、
前記マスクパターンを除去するマスクパターン除去ステップと、を含
み、
前記表層膜形成ステップでは、
化学気相成長法により、前記有機膜上に金属膜を形成する、
半導体装置の製造方法。
【請求項6】
インプリント処理を含む半導体装置の製造方法であって、
有機膜が形成された半導体基板を準備する準備ステップと、
前記有機膜の表面に金属を含む表層膜を形成する表層膜形成ステップと、
前記表層膜上に無機膜を形成する無機膜材形成ステップと、
前記無機膜上に有機系マスク材を配置し、微細パターンを有するテンプレートを前記有機系マスク材に押印してマスクパターンを形成するマスクパターン形成ステップと、
前記マスクパターンをマスクに前記無機膜を加工する無機膜加工ステップと、
前記マスクパターンを除去するマスクパターン除去ステップと、を含み、
前記表層膜形成ステップでは、
前記有機膜の表層に金属元素を含浸させて、前記表層膜の表層部における前記金属元素の濃度が最も高い濃度勾配を有することにより、前記有機膜との界面を有さない前記表層膜を形成する、
半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、パターン形成方法および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程において微細なパターンを形成する方法として、インプリント法が提案されている。インプリント法では、被加工膜上にレジストを滴下し、微細なパターンが形成されたテンプレートをレジストに押し付けて、テンプレートの微細パターンをレジストに転写する。このとき、テンプレートの端部からレジストが浸み出し、突起状の浸み出し欠陥となってしまうことがある。
【0003】
また、半導体装置の製造工程において、積層マスク構造が採られることがある。この場合、例えば上記レジストに転写された微細パターンを、順次、積層マスク構造に転写していきながら、下層の被加工膜を加工する。しかしながら、レジストの浸み出し部分とその下の積層マスク構造が、後の工程で汚染源となってしまうことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、レジストの浸み出し欠陥が汚染源となってしまうことを抑制することができるパターン形成方法および半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のパターン形成方法は、インプリント処理を含むパターン形成方法であって、有機膜が形成された基板を準備する準備ステップと、前記有機膜の表面に金属を含む表層膜を形成する表層膜形成ステップと、前記表層膜上に無機膜を形成する無機膜材形成ステップと、前記無機膜上に有機系マスク材を配置し、微細パターンを有するテンプレートを前記有機系マスク材に押印してマスクパターンを形成するマスクパターン形成ステップと、前記マスクパターンをマスクに前記無機膜を加工する無機膜加工ステップと、前記マスクパターンを除去するマスクパターン除去ステップと、を含み、前記表層膜形成ステップでは、化学気相成長法により、前記有機膜上に金属膜を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態にかかるインプリント処理が適用された半導体基板の構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態にかかるインプリント処理の手順の一例を示すフロー図である。
【
図3】
図3は、実施形態にかかるパターン形成処理の手順の一例を示すフロー図である。
【
図4】
図4は、実施形態にかかるパターン形成処理の手順の一例を示すフロー図である。
【
図5】
図5は、実施形態にかかるパターン形成処理の手順の一例を示すフロー図である。
【
図6】
図6は、比較例にかかるパターン形成処理の手順の一例を示すフロー図である。
【
図7】
図7は、実施形態の変形例にかかるパターン形成処理の手順の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態により、本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0009】
【0010】
[インプリント処理]
図1は、実施形態にかかるインプリント処理が適用された半導体基板の構成例を示す図である。実施形態のインプリント処理においては、半導体基板としてのウェハ100に対し、ウェハ100を複数の区画に分割するショット領域100sごとにインプリント処理が行われる。それぞれのショット領域100sは、ショット領域100sの間隙であるカーフ領域100kによって隔てられている。
【0011】
図2は、実施形態にかかるインプリント処理の手順の一例を示すフロー図である。実施形態のインプリント処理は、例えば、インプリント装置1で実施される。
【0012】
図2に示すように、インプリント装置1は、ウェハステージ10、テンプレートステージ21、テンプレートチャック22、加圧部23、アライメント部30、光源41、及びアパーチャー42を備える。
【0013】
ウェハステージ10にはウェハ100が載置される。ウェハ100上の所定のショット領域には、図示しないレジスト供給部により、液滴状のレジスト170が滴下されている。レジスト170は、例えば光硬化型の有機系マスク材である。テンプレートステージ21には、テンプレートチャック22に真空吸着されることによって、テンプレート200が微細パターンを下方に向けて装着されている。テンプレート200は、ガラスまたはクリスタル等の透明部材で構成される。
【0014】
図2(a)に示すように、ウェハ100は、ウェハステージ10により、テンプレートステージ21に保持されたテンプレート200の下方に移動される。アライメント部30は、ウェハ100及びテンプレート200の位置を検出して、ウェハ100の位置とテンプレート200の位置とを調整する。
【0015】
図2(b)に示すように、テンプレートステージ21が下方に移動し、テンプレート200がウェハ100上のレジスト170と接触する。テンプレートステージ21が加圧部23により下方に加圧されることで、テンプレート200は更にウェハ100上のレジスト170に押し付けられる。ただし、テンプレート200がウェハ100に接触しないよう、テンプレート200はウェハ100から僅かに距離を保っている。なお、テンプレート200をレジスト170に押し付けるとき、一部のレジスト170が、テンプレート200の端部から浸み出してしまうことがある。
【0016】
この状態で、光源41からアパーチャー42を通過した紫外線が、テンプレートステージ21の図示しない貫通孔、及びテンプレート200を透過してウェハ100上のレジスト170に照射される。これにより、レジスト170が硬化する。このとき、レジスト170の浸み出し部分も硬化されてしまう。
【0017】
図2(c)に示すように、テンプレートステージ21が上方に移動し、テンプレート200がウェハ100上のレジストパターン170pから離型される。レジストパターン170pは、微細パターンが転写され硬化したレジストである。レジストパターン170pの各パターン間には、テンプレート200とウェハ100との隙間によるレジスト残膜170rが存在する。また、上述のように、レジストパターン170pは、突起状の浸み出し欠陥170dをウェハ100のカーフ領域100kに有することがある。
【0018】
なお、本例では、テンプレートステージ21が下方に移動し、テンプレート200がウェハ100に押し付けられることとしたが、これに限られない。ウェハステージ10が上方に移動し、ウェハ100がテンプレート200に押し付けられることで、テンプレート200の微細パターンがウェハ100上のレジスト170に押印されてもよい。
【0019】
[パターン形成処理]
次に、
図3~
図5を用いて、実施形態の半導体装置の製造処理としてのパターン形成処理について説明する。
図3~
図5は、実施形態にかかるパターン形成処理の手順の一例を示すフロー図である。
図3~
図5において、左側の図面はショット領域100s内のウェハ100の断面図であり、右側の図面はカーフ領域100kにおけるウェハ100の断面図である。
【0020】
実施形態のパターン形成処理では、主に、SOC膜130、SOG膜150、レジストパターン170pをこの順に積層して積層マスク構造を形成し、被加工膜120を加工する。積層マスク構造によれば、各膜の各種エッチングガスに対するエッチング耐性の違いを利用しながら、順次、各膜をパターニングしていくことで、厚膜のマスクが得られる。
【0021】
まず、
図3(a)に示すように、被加工膜120が形成されたウェハ100の被加工膜120上に、有機膜としてのSOC(Spin On Carbon)膜130を形成する。被加工膜120は、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜等の単層膜でもよいし、複数の膜が積層された積層膜でもよい。
【0022】
次に、
図3(b)に示すように、SOC膜130の表面に表層膜としてのタングステン膜140を形成する。タングステン膜140は、例えばCVD(Chemical Vapor Dposition)法により、ウェハ100の全面に形成される。
【0023】
次に、
図3(c)に示すように、スピン塗布等により、タングステン膜140上に無機膜としてのSOG(Spin On Glass)膜150を形成する。そして、SOG膜150上に密着膜160を形成する。密着膜160は、例えば、フッ素原子やケイ素原子を含む界面活性剤またはシランカップリング剤等が添加された有機膜である。密着膜160は、上層に形成されるレジスト膜と、SOG膜150との密着性を高める。
【0024】
続いて、
図4(a)に示すように、上述のインプリント処理により、密着膜160上に、マスクパターンとしてのレジストパターン170pが形成される。レジストパターン170pの各パターン間には、所定膜厚のレジスト残膜170rが存在する。また、カーフ領域100kには、レジストの浸み出し欠陥170dが形成されているものとする。
【0025】
次に、
図4(b)に示すように、レジストパターン170pの各パターン間のレジスト残膜170r及び密着膜160を除去する。密着膜160は、パターニングされた密着膜160pとなる。そして、レジストパターン170pをマスクにSOG膜150をエッチングして、SOGパターン150pを形成する。
【0026】
次に、
図4(c)に示すように、酸素プラズマを用いたアッシングにより、レジストパターン170pを除去する。このとき、密着膜160pも除去される。ただし、SOC膜130は、タングステン膜140で保護されているので除去されない。
【0027】
続いて、
図5(a)に示すように、SOGパターン150pの各パターン間のタングステン膜140を除去する。タングステン膜140は、パターニングされたタングステン膜140pとなる。
【0028】
次に、
図5(b)に示すように、SOGパターン150pをマスクにSOC膜130をエッチングして、SOCパターン130pを形成する。なお、SOCパターン130pの形成後、SOGパターン150pが消失するよう、予めSOGパターン150pの膜厚が調整されている。
【0029】
次に、
図5(c)に示すように、SOCパターン130pをマスクに被加工膜120をエッチングして、パターニングされた被加工膜120pを形成する。そして、SOCパターン130p上のタングステン膜140pを除去する。または、被加工膜120pのエッチング時に、タングステン膜140pが消失するよう、予めタングステン膜140pの膜厚が調整されていてもよい。
【0030】
次に、
図5(d)に示すように、酸素プラズマを用いたアッシングにより、SOCパターン130pを除去する。以上により、パターンが形成された被加工膜120pが得られる。
【0031】
[比較例]
本発明者は、SOC膜を積層マスク構造に用いれば厚膜のマスクが得られると考えた。
【0032】
図6は、SOC膜130’を積層マスク構造に適用した場合の、比較例にかかるパターン形成処理について説明するフロー図である。
図6において、左側の図面はショット領域内のウェハ100’の断面図であり、右側の図面はカーフ領域におけるウェハ100’の断面図である。
【0033】
図6(a)に示すように、比較例のウェハ100’上には、被加工膜120’、SOC膜130’、SOG膜150’、密着膜160’、レジストパターン170p’がこの順に形成されている。カーフ領域100k’には、レジストの浸み出し欠陥170d’が形成されている。このように、発明者は、まず、SOC膜130’上にタングステン膜が形成されていない比較例でのパターン形成を試みた。
【0034】
図6(b)に示すように、レジスト残膜170r’、密着膜160’、SOG膜150’、SOC膜130’、被加工膜120’がこの順に、順次、パターニングされていく。これにより、パターンが形成された被加工膜120p’が得られる。
【0035】
このような加工の後、カーフ領域には、SOG膜150’を含むレジスト構造物170sが形成されてしまう。レジスト構造物170sは、例えば数百nm程度の高さを有し、ショット領域の被加工膜120p’に比べて数倍の高さで突出する。このため、レジスト構造物170sは、例えば、ウェハ100’をハンドリングするためのフープのツメに擦れて飛散し、ウェハ100’やフープ内や製造装置内を汚染してしまうことがある。
【0036】
次に、
図6(c)に示すように、酸素プラズマを用いたアッシングにより、レジストパターン170p’を除去する。このとき、SOG膜150’を含むレジスト構造物170sは、完全には除去されず、一部がパーティクルPとなって飛散して、ウェハ100’や製造装置内を汚染してしまうことがある。
【0037】
このように、例えばSOC膜130’を積層マスク構造に用いることで厚膜のマスクが得られるが、SOC膜130’の積層マスク構造への導入には難点があることが判った。
【0038】
実施形態のパターン形成処理によれば、SOGパターン150pの形成後に酸素プラズマアッシングを行う。SOC膜130の表面には、タングステン膜140が形成されているので、この段階で酸素プラズマアッシングを行っても、SOC膜130が除去されるのを抑制することができる。これにより、SOGパターン150pの下層の加工前に、レジストの浸み出し欠陥170dを除去することができる。よって、SOG膜150’を含むレジスト構造物170sが形成されず、レジスト構造物170sが汚染源となってしまうのを抑制することができる。
【0039】
実施形態のパターン形成処理によれば、汚染を懸念することなく、SOC膜130の積層マスク構造への導入が可能となり、厚膜のマスクを得ることができる。また、SOC膜130上にタングステン膜140が存在することで、マスクのエッチング耐性がよりいっそう向上する。よって、被加工膜120の加工精度を向上させることができる。
【0040】
実施形態のパターン形成処理によれば、厚膜のSOC膜130を積層マスク構造に導入することができ、ウェハ100上のパーティクル等によるテンプレート200の破損を抑制し、テンプレート200の寿命を向上させることができる。
【0041】
[変形例]
次に、
図7を用いて、実施形態の変形例のパターン形成処理について説明する。
図7は、実施形態の変形例にかかるパターン形成処理の手順の一例を示すフロー図である。
図7において、左側の図面はショット領域内のウェハ100の断面図であり、右側の図面はカーフ領域におけるウェハ100の断面図である。実施形態の変形例のパターン形成処理においては、SOC膜130をメタライズして表層膜を形成する点が、上述の実施形態とは異なる。
【0042】
まず、
図7(a)に示すように、被加工膜120が形成されたウェハ100の被加工膜120上に、有機膜としてのSOC膜130を形成する。
【0043】
次に、
図7(b)に示すように、SOC膜130の表面に表層膜としての金属含浸140mを形成する。金属含浸膜140mは、例えばSOC膜130をメタライズすることにより、ウェハ100の全面に形成される。
【0044】
SOC膜130のメタライズでは、例えば、CVD法やALD(Atomic Layer Deposition)法に用いられるWCl6等のプレカーサを利用する。例えば、プレカーサであるWCl6に、SOC膜130を真空雰囲気下で曝露することで、SOC膜130中のポリマーが備えるカルボニル基やシアノ基等の電子対を持つ構造にWCl6が吸着する。この状態で、SOC膜130を水蒸気等に曝露して酸化処理すると、SOC膜130中に酸化タングステン等の金属化合物または単体のタングステン等が析出し、SOC膜130がメタライズされる。
【0045】
このように、WCl6等のプレカーサをSOC膜130中に含浸させ、金属単体または金属化合物をSOC膜130中に析出させることをSOC膜130のメタライズといい、これ以降、このように形成された膜を金属含浸膜(メタライズ膜)140mという。金属含浸膜140mはSOC膜130の表層部に形成される。つまり、金属含浸膜140mは、SOC膜130と一体に形成され、SOC膜130との明瞭な界面を有さない。金属含浸膜140m中の金属化合物は、膜厚方向に濃度勾配を有し、SOC膜130の表面である金属含浸膜140mの表層部の濃度が最も高い。
【0046】
次に、
図7(c)に示すように、スピン塗布等により、金属含浸膜140m上にSOG膜150を形成する。そして、SOG膜150上に密着膜160を形成する。これ以降の処理は、上述の実施形態のパターン形成処理と同様である。
【0047】
実施形態の変形例のパターン形成処理によれば、上述の実施形態のパターン形成処理と同様の効果を奏する。
【0048】
また、実施形態の変形例のパターン形成処理によれば、金属含浸膜140mはSOC膜130との明瞭な界面を有さない。このため、金属含浸膜140mのSOC膜130からの剥離が抑制される。また、金属含浸膜140mのSOC膜130からの剥離を懸念することなく、金属含浸膜140mの厚膜化を図ることができる。
【0049】
[その他の変形例]
上述の実施形態では、表層膜はタングステン膜140であるとしたがこれに限られない。表層膜は、CVD法で成膜可能で、アッシングプラズマに対して耐性のある膜であればよい。具体的には、表層膜は、例えば、タングステン、タングステンシリサイド、チタン、チタンナイトライド等の膜であってもよい。
【0050】
上述の変形例では、表層膜はタングステンを含む金属含浸膜140mであるとしたがこれに限られない。表層膜は、SOC膜130等の有機膜をメタライズ可能で、アッシングプラズマに対して耐性のある膜であればよい。金属含浸膜には、タングステン、アルミニウム、チタン、亜鉛、バナジウム、ハフニウム、ジルコニウム、タンタル、モリブデン等の金属が含まれていてもよい。金属含浸膜には、シリコン、ゲルマニウム等の半導体原子が含まれていてもよい。プレカーサとしては、これらの有機金属化合物やハロゲン化物を用いることができる。具体的には、プレカーサは、AlCl3、TiCl4、ZnCl2、WCl6、VCl4、HfCl4、ZrCl4、トリメチルアルミニウム(TMA)等であってもよい。これらのプレカーサに、有機膜を気相中または液相中にて曝露し、メタライズすることができる。メタライズにより、有機膜中には、これらの金属酸化物または金属単体が析出する。具体的には、有機膜中の析出物は、AlOx、TiOx、ZnO、ZrOx、HfOx、SiOx等である。
【0051】
上述の実施形態等では、酸素プラズマを用いたアッシングによりレジストパターン170pを除去することとしたがこれに限られない。アッシングには、酸素プラズマのほか、COプラズマ、窒素プラズマ、水素プラズマ等を用いることができる。
【0052】
上述の実施形態等では、積層マスク構造として、主に、SOC膜130、SOG膜150、レジストパターン170pを有する構造を示したがこれに限られない。SOC膜130の代わりに他の有機膜を用いることもできる。SOG膜150の代わりに、低温酸化膜(LTO:Low Temperature Oxide)や低温窒化膜等の他の無機膜を用いることもできる。積層マスク構造には、上記以外にも種々の膜を挿入し、または、上記膜の幾つかを削減して、様々な構成が採用され得る。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0054】
1…インプリント装置、10…ウェハステージ、21…テンプレートステージ、41…光源、100…ウェハ、120…被加工膜、130…SOC膜、140…タングステン膜、140m…金属含浸膜、150…SOG膜、160…密着膜、170p…レジストパターン、200…テンプレート。