(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】DCDCコンバータの制御装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20220613BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20220613BHJP
【FI】
H02M3/155 H
H02M7/48 E
(21)【出願番号】P 2018156435
(22)【出願日】2018-08-23
【審査請求日】2021-07-16
(31)【優先権主張番号】P 2017175086
(32)【優先日】2017-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】中津川 義規
【審査官】土井 悠生
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-131429(JP,A)
【文献】特開2015-076986(JP,A)
【文献】国際公開第2016/170811(WO,A1)
【文献】特開2015-163022(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0218985(US,A1)
【文献】特開2005-295671(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0218876(US,A1)
【文献】龍建儒,"直流接続された家庭用ハイブリッド発電システムの制御に関する研究",大阪大学大学院 博士学位論文,大阪大学大学院,2013年07月01日,URL:https://ir.library.osaka-u.ac.jp/,DOI:10.18910/26194
【文献】石川裕記、関末崇行、阿部貴志、中津川義規,"電気自動車用モータドライブシステムのモデリングとシステム設計",自動車技術会2017年春季大会学術講演会講演予稿集,自動車技術会,2017年05月22日,609-614,ISSN:2189-4588
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00-7/98
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
B60L 1/00-3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリ又はコンデンサとインバータとの間に設けられた双方向DCDCコンバータの制御装置であって、
インバータ側電圧の測定値と目標値との偏差、インバータ側電流の測定値と目標値との偏差、及び、バッテリ側電流又はコンデンサ側電流の測定値と目標値との偏差に基づいて、前記DCDCコンバータのフィードバック制御を行うことを特徴とするDCDCコンバータの制御装置。
【請求項2】
前記インバータ側電圧の測定値と目標値との偏差に基づいて、前記バッテリ側電流又は前記コンデンサ側電流の目標値を定める第1のフィードバック制御部と、
前記バッテリ側電流又は前記コンデンサ側電流の測定値と前記第1のフィードバック制御部により定められた目標値との偏差に基づいて、前記インバータ側電流の目標値を定める第2のフィードバック制御部と、
前記インバータ側電流の測定値と前記第2のフィードバック制御部により定められた目標値との偏差に基づいて、前記DCDCコンバータを制御する第3のフィードバック制御部と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載のDCDCコンバータの制御装置。
【請求項3】
前記第2のフィードバック制御部は、前記バッテリ側電流又は前記コンデンサ側電流の測定値と前記第1のフィードバック制御部により定められた目標値との偏差を-1倍にするように制御された入力をバッテリ側電圧又はコンデンサ側電圧の測定値に加算し、当該入力を加算したバッテリ側電圧又はコンデンサ側電圧とインバータ側電圧の測定値とに基づいて、前記インバータ側電流の目標値を定めることを特徴とする請求項2に記載のDCDCコンバータの制御装置。
【請求項4】
前記第2のフィードバック制御部は、前記バッテリ側電流又は前記コンデンサ側電流の測定値と前記第1のフィードバック制御部により定められた目標値との偏差を-1倍にするように制御された入力をバッテリ側電圧又はコンデンサ側電圧の測定値に乗じ、当該入力を乗じたバッテリ側電圧又はコンデンサ側電圧とインバータ側電圧の測定値とに基づいて、前記インバータ側電流の目標値を定めることを特徴とする請求項2に記載のDCDCコンバータの制御装置。
【請求項5】
前記インバータ側電圧の測定値と目標値との偏差に基づいて、前記インバータ側電流の目標値を定める第4のフィードバック制御部と、
前記インバータ側電流の測定値と前記第4のフィードバック制御部により定められた目標値との偏差に基づいて、前記バッテリ側電流又は前記コンデンサ側電流の目標値を定める第5のフィードバック制御部と、
前記バッテリ側電流又は前記コンデンサ側電流の測定値と前記第5のフィードバック制御部により定められた目標値との偏差に基づいて、前記DCDCコンバータを制御する第6のフィードバック制御部と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載のDCDCコンバータの制御装置。
【請求項6】
前記第4のフィードバック制御部は、前記インバータ側電圧の測定値と目標値との偏差を0にするように制御された入力をバッテリ側電圧又はコンデンサ側電圧の測定値に乗じ、当該乗じたバッテリ側電圧又はコンデンサ側電圧と前記インバータ側電圧の測定値とに基づいて、前記インバータ側電流の目標値を定め、
前記第6のフィードバック制御部は、前記バッテリ側電流又は前記コンデンサ側電流の測定値と前記第5のフィードバック制御部により定められた目標値との偏差の-1倍に基づいて、前記DCDCコンバータを制御することを特徴とする請求項5に記載のDCDCコンバータの制御装置。
【請求項7】
前記第4のフィードバック制御部は、前記インバータ側電圧の測定値と目標値との偏差を0にするように制御された入力をバッテリ側電圧又はコンデンサ側電圧の測定値に加算し、当該加算したバッテリ側電圧又はコンデンサ側電圧と前記インバータ側電圧の測定値とに基づいて、前記インバータ側電流の目標値を定め、
前記第6のフィードバック制御部は、前記バッテリ側電流又は前記コンデンサ側電流の測定値と前記第5のフィードバック制御部により定められた目標値との偏差の-1倍に基づいて、前記DCDCコンバータを制御することを特徴とする請求項5に記載のDCDCコンバータの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DCDCコンバータの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電機自動車やハイブリッド車や燃料電池車においては、バッテリからの直流電源をインバータにより交流に変換して電動モータに供給している(力行)。また、電動モータの回生電力をインバータにより直流に変換してバッテリに蓄電している(回生)。銅損やスイッチング損失の低減のためにバッテリの電圧を増大させて、電流を抑制することは好適であるが種々の問題が派生することから現状では300V程度が限界となっている。
【0003】
そこで、バッテリとインバータとの間に双方向DCDCコンバータを設け、バッテリからの電源を昇圧してインバータに供給し、インバータからの電源を降圧してバッテリに供給している。
【0004】
従来、上述したDCDCコンバータの制御としては、インバータ側電圧を一定にするフィードバック制御が考えられる。しかしながら、この制御方法を、電気自動車やハイブリッド車や燃料電池車などに用いた場合、インバータ側電圧を一定にすることができず、指示通りの走行ができず、車両の走行特性がよくない、と言う問題が生じる。
【0005】
また、上述したDCDCコンバータとして、例えば、特許文献1、2に記載されたものが提案されている。
【0006】
特許文献1に記載された双方向昇降圧型チョッパ回路200は、
図27に示すように、電源側ハーフブリッジ回路201と、負荷側ハーフブリッジ回路202と、2つのハーフブリッジ回路201、202の出力端を接続するリアクトル203と、制御装置204と、を備えている。電源側ハーフブリッジ回路201は、電源側に直列に接続された2つの電源側スイッチング素子Q11、Q12から構成されている。負荷側ハーフブリッジ回路202は、負荷側に直列に接続された2つの負荷側スイッチング素子Q21、Q22から構成されている。
【0007】
制御装置204は、予め定めた運転モード(I:順送電昇圧、II:順送電降圧、III:逆送電昇圧、IV:逆送電降圧)に応じて各スイッチング素子Q11、Q12、Q21、Q22を制御する。上述した双方向昇降圧型チョッパ回路200では、チョッパ回路を疑似的なブリッジ回路構成としているため、二方向(順送電方向、逆送電方向)、二機能(昇圧、降圧)を実現することができる。
【0008】
しかしながら、上述した特許文献1の双方向昇降圧型チョッパ回路200は、u、v、wの各相毎の計3個が必要であり、DCDCコンバータ全体の体積、重量、部品点数が増大する。また、予め定めた運転モードと、実際の運転モードとのずれが生じることによる、スイッチングタイミングのずれによる特性劣化、エネルギーロス、ノイズ発生等の懸念がある。
【0009】
また、特許文献2の車両用電源システムは、発電機側の電圧を所定の目標電圧に保つ定電圧型のDCDCコンバータと、発電機側の電流を所定の目標値に保つ定電流型のDCDCコンバータと、を備えている。しかしながら、上述した特許文献2の車両用電源システムは、2つのDCDCコンバータを必要とするため、DCDCコンバータ全体の体積、重量、部品点数等が増大する。
【0010】
また、非特許文献1は、一般的な双方向DCDCコンバータの制御方法であって、負荷側電圧をフィードバック制御して、負荷側電流の目標値を設定し、負荷側電流が設定した目標値になるようにDCDCコンバータを制御する制御方法が開示されている。しかしながら、上述した非特許文献1は、系統電源との系統連携を実施するスマートグリッド用DCDCコンバータであり、これをハイブリッド車やEV車に適用した場合、インバータ側電圧を一定にすることができず、走行特性がよくない、と言う問題が生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2005-295671号公報
【文献】特開2011-272540号公報
【非特許文献】
【0012】
【文献】2013年大阪大学大学院 博士学位論文(直流接続された家庭用ハイブリッド発電システムの制御に関する研究、龍、建儒)
【文献】自動車技術会2017年春季大会学術講演(電気自動車用モータドライブシステムのモデリングとシステム設計、石川 裕記、関末 崇行、阿部 貴志、中津川 義規)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、走行特性の向上を図ったDCDCコンバータの制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、検討を重ねた結果、インバータ側電圧、インバータ側電流、バッテリ側電流又はコンデンサ側電流の3つのフィードバック制御を行うと、一般的な双方向DCDCコンバータを用いて、ハイブリッド車やEV車において走行特性の向上を図ることができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
即ち、本発明の態様であるDCDCコンバータの制御装置は、バッテリ又はコンデンサとインバータとの間に設けられた双方向DCDCコンバータの制御装置であって、インバータ側電圧の測定値と目標値との偏差、インバータ側電流の測定値と目標値との偏差、及び、バッテリ側電流又はコンデンサ側電流の測定値と目標値との偏差に基づいて、前記DCDCコンバータのフィードバック制御を行うことを特徴とする。
【0016】
また、前記インバータ側電圧の測定値と目標値との偏差に基づいて、前記バッテリ側電流又は前記コンデンサ側電流の目標値を定める第1のフィードバック制御部と、前記バッテリ側電流又は前記コンデンサ側電流の測定値と前記第1のフィードバック制御部により定められた目標値との偏差に基づいて、前記インバータ側電流の目標値を定める第2のフィードバック制御部と、前記インバータ側電流の測定値と前記第2のフィードバック制御部により定められた目標値との偏差に基づいて、前記DCDCコンバータを制御する第3のフィードバック制御部と、を備えてもよい。
【0017】
また、前前記第2のフィードバック制御部は、前記バッテリ側電流又は前記コンデンサ側電流の測定値と前記第1のフィードバック制御部により定められた目標値との偏差を-1倍にするように制御された入力をバッテリ側電圧又はコンデンサ側電圧の測定値に加算し、当該入力を加算したバッテリ側電圧又はコンデンサ側電圧とインバータ側電圧の測定値とに基づいて、前記インバータ側電流の目標値を定めてもよい。
【0018】
また、前記第2のフィードバック制御部は、前記バッテリ側電流又は前記コンデンサ側電流の測定値と前記第1のフィードバック制御部により定められた目標値との偏差を-1倍にするように制御された入力をバッテリ側電圧又はコンデンサ側電圧の測定値に乗じ、当該入力を乗じたバッテリ側電圧又はコンデンサ側電圧とインバータ側電圧の測定値とに基づいて、前記インバータ側電流の目標値を定めてもよい。
【0019】
また、前記インバータ側電圧の測定値と目標値との偏差に基づいて、前記インバータ側電流の目標値を定める第4のフィードバック制御部と、前記インバータ側電流の測定値と前記第4のフィードバック制御部により定められた目標値との偏差に基づいて、前記バッテリ側電流又は前記コンデンサ側電流の目標値を定める第5のフィードバック制御部と、前記バッテリ側電流又は前記コンデンサ側電流の測定値と前記第5のフィードバック制御部により定められた目標値との偏差に基づいて、前記DCDCコンバータを制御する第6のフィードバック制御部と、を備えてもよい。
【0020】
また、前記第4のフィードバック制御部は、前記インバータ側電圧の測定値と目標値との偏差を0にするように制御された入力をバッテリ側電圧又はコンデンサ側電圧の測定値に乗じ、当該乗じたバッテリ側電圧又はコンデンサ側電圧と前記インバータ側電圧の測定値とに基づいて、前記インバータ側電流の目標値を定め、前記第6のフィードバック制御部は、前記バッテリ側電流又は前記コンデンサ側電流の測定値と前記第5のフィードバック制御部により定められた目標値との偏差の-1倍に基づいて、前記DCDCコンバータを制御するようにしてもよい。
【0021】
また、前記第4のフィードバック制御部は、前記インバータ側電圧の測定値と目標値との偏差を0にするように制御された入力をバッテリ側電圧又はコンデンサ側電圧の測定値に加算し、当該加算したバッテリ側電圧又はコンデンサ側電圧と前記インバータ側電圧の測定値とに基づいて、前記インバータ側電流の目標値を定め、前記第6のフィードバック制御部は、前記バッテリ側電流又は前記コンデンサ側電流の測定値と前記第5のフィードバック制御部により定められた目標値との偏差の-1倍に基づいて、前記DCDCコンバータを制御するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように本発明の態様によれば、走行特性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本願の双方向DCDCコンバータの制御装置を組み込んだ車両用電源システムの一実施形態を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示す双方向DCDCコンバータの詳細を示す回路図である。
【
図3】第1及び第2実施形態における
図1に示す制御装置の詳細を示す制御ブロック図である。
【
図4】第1実施形態における
図3に示す制御装置のさらに詳細を示す制御ブロック図である。
【
図5】
図3に示すロジック回路から出力されるパルス信号PWM1、PWM2のタイムチャートである。
【
図6】比較品Aの制御装置4を示す制御ブロック図である。
【
図7A】比較品Bの制御装置4を示す制御ブロック図である。
【
図7B】比較品Bの制御装置4を示す制御ブロック図である。
【
図8】
図4に示す本発明品Aを用いた電源供給システムの車速、バッテリ側電圧、インバータ側電圧の関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【
図9】
図4に示す本発明品Aを用いた電源供給システムの車速、電動モータのトルク電流及びトルク、バッテリのSOCの関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【
図10】
図6に示す比較品Aを用いた電源供給システムの車速、バッテリ側電圧、インバータ側電圧の関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【
図11】
図6に示す比較品Aを用いた電源供給システムの車速、電動モータのトルク電流及びトルク、バッテリのSOCの関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【
図12】
図7Bに示す比較品Bを用いた電源供給システムの車速、バッテリ側電圧、インバータ側電圧の関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【
図13】
図7Bに示す比較品Bを用いた電源供給システムの車速、電動モータのトルク電流及びトルク、バッテリのSOCの関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【
図14】
図6に示す比較品A(
図10とは回路パラメータ、制御パラメータが異なる)を用いた電源供給システムの車速、バッテリ側電圧、インバータ側電圧の関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【
図15】第2実施形態における
図3に示す制御装置のさらに詳細を示す制御ブロック図である。
【
図16】
図15に示す本発明品Bを用いた電源供給システムの車速、バッテリ側電圧、インバータ側電圧の関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【
図17】
図15に示す本発明品Bを用いた電源供給システムの車速、電動モータのトルク電流及びトルク、バッテリのSOCの関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【
図18】第3及び第4実施形態における
図1に示す制御装置の詳細を示すブロック図である。
【
図19】第3実施形態における
図18に示す制御装置のさらに詳細を示す制御ブロック図である。
【
図20】
図19に示す本発明品Cを用いた電源供給システムの車速、バッテリ側電圧、インバータ側電圧の関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【
図21】
図19に示す本発明品Cを用いた電源供給システムの車速、電動モータのトルク電流及びトルク、バッテリのSOCの関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【
図22】第4実施形態における
図19に示す制御装置のさらに詳細を示す制御ブロック図である。
【
図23】
図22に示す本発明品Dを用いた電源供給システムの車速、バッテリ側電圧、インバータ側電圧の関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【
図24】
図22に示す本発明品Dを用いた電源供給システムの車速、電動モータのトルク電流及びトルク、バッテリのSOCの関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【
図25】本願の双方向DCDCコンバータの制御装置を組み込んだ車両用電源システムの変形例を示すブロック図である。
【
図26】
図4に示す本発明品Aのバッテリをコンデンサに置き換えた発明品を用いた電源供給システムの車速、コンデンサ側電圧、インバータ側電圧、電動モータのトルク電流及びトルク、バッテリのSOCの関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【
図27】従来のDCDCコンバータの一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態を、
図1ないし
図4に基づいて説明する。同図に示すように、車両用電源システム1は、バッテリ2と、双方向DCDCコンバータ3と、制御装置4と、インバータ5と、電動モータ6と、を備えている。
【0025】
バッテリ2は、車両に搭載され、複数の二次電池が直並列に接続されて構成されている。双方向DCDCコンバータ3は、バッテリ2の電圧を昇圧してインバータ5に供給すると共に、インバータ5の電圧を降圧してバッテリ2に供給する。制御装置4は、例えば、マイクロコンピュータから構成され、双方向DCDCコンバータ3を制御する。
【0026】
インバータ5は、双方向DCDCコンバータ3からの直流電源を交流電源に変換して電動モータ6に供給すると共に、電動モータ6からの交流電源を直流電源に変換して双方向DCDCコンバータ3に出力する。電動モータ6は、所謂三相交流モータから構成され、バッテリ2からの電力供給を受けて、車両を駆動する。また、電動モータ6は、坂道や減速時などに発電機として働き、回生電流を発生し、バッテリ2に供給する。
【0027】
次に、双方向DCDCコンバータ3について説明する。双方向DCDCコンバータ3は、
図2に示すように、インダクタンスLと、一対の半導体スイッチQ
1、Q
2と、平滑コンデンサCと、を備えている。インダクタンスLの一端は、バッテリ2の正極に接続される。インダクタンスLの他端は、互いに直列接続された一対の半導体スイッチQ
1、Q
2間に接続される。
【0028】
半導体スイッチQ1、Q2は、互いに直列接続される。半導体スイッチQ1の半導体スイッチQ2から離れた側の端部は、インバータ5の正極に接続される。半導体スイッチQ2の半導体スイッチQ1から離れた側の端部は、接地されている。平滑コンデンサCは、インバータ5側に一対の半導体スイッチQ1、Q2に並列接続されている。
【0029】
上述した双方向DCDCコンバータ3は、電流がインバータ5からバッテリ2に流れる回生時に、バッテリ側電流が目標値Ibatt*になるように、PWM部45からのデューティに応じて半導体スイッチQ1、Q2をオンオフすると、インバータ5の電圧を降圧又は昇圧してバッテリ2に供給する。一方、双方向DCDCコンバータ3は、バッテリ2からインバータ5に電流が流れる力行時に、インバータ側電圧が目標値Vdc*となるように、PWM部45のデューティに応じて半導体スイッチQ1、Q2をオンオフすると、バッテリ2の電圧を昇圧してインバータ5に供給する。
【0030】
また、上述した双方向DCDCコンバータ3には、バッテリ側電圧計31と、バッテリ側電流計32と、インバータ側電圧計33と、インバータ側電流計34と、を備えている。バッテリ側電圧計31は、インダクタンスLよりもバッテリ2側のバッテリ側電圧VBATTを測定し、その測定値Vbattを後述する制御装置4に出力する。バッテリ側電流計32は、インダクタンスLよりもバッテリ2側のバッテリ側電流IBATTを測定し、その測定値Ibattを制御装置4に出力する。
【0031】
インバータ側電圧計33は、平滑コンデンサCよりもインバータ5側のインバータ側電圧VDCを測定し、その測定値Vdcを制御装置4に出力する。インバータ側電流計34は、平滑コンデンサCよりもインバータ5側のインバータ側電流IDCを測定し、その測定値Idcを制御装置4に出力する。
【0032】
制御装置4は、
図3に示すように、第1のフィードバック(以下、「FB」と略記する)制御部としてのV
DCコントローラ41と、第2のFB制御部としてのI
BATTコントローラ42と、第3のFB制御部としてのI
DCコントローラ43と、PWM部45と、ロジック回路46と、を備えている。
【0033】
VDCコントローラ41は、インバータ側電圧の測定値Vdcと目標値Vdc*との偏差に基づいてバッテリ側電流の目標値Ibatt*を定める。即ち、VDCコントローラ41は、インバータ側電圧の測定値Vdcと目標値Vdc*との偏差に基づいてDCDCコンバータ3のFB制御を行う。なお、目標値Vdc*は、予め定めた値であり、本実施例では例えば650Vに設定されている。
【0034】
IBATTコントローラ42は、バッテリ側電流の測定値Ibattと上記目標値Ibatt*との偏差に基づいてインバータ側電流の目標値Idc*を定める。即ち、IBATTコントローラ42は、バッテリ側電流の測定値Ibattと上記目標値Ibatt*との偏差に基づいてDCDCコンバータ3のFB制御を行う。
【0035】
IDCコントローラ43は、インバータ側電流の測定値Idcと上記目標値Idc*との偏差に基づいたPWM部45の入力を出力する。即ち、IDCコントローラ43は、インバータ側電流の測定値Idcと目標値Idc*との偏差に基づいてDCDCコンバータ3のFB制御を行う。
【0036】
PWM部45は、例えば、I
DCコントローラ43からの入力と三角波との比較により、入力に応じたデューティ比のパルス信号PWM1を出力する。ロジック回路46は、
図5に示すように、パルス信号PWM1とパルス信号PWM1の反転信号であるパルス信号PWM2の相互間にデットタイムTDを設けて、どんな状況においても、半導体スイッチQ
1、Q
2が同時にオンすることによる貫通電流が防止されるように、パルス信号PWM1、PWM2を波形生成する。また、ロジック回路46は、パルス信号PWM1を半導体スイッチQ
1のゲートに供給し、パルス信号PWM2を半導体スイッチQ
2のゲートに供給する。即ち、上記制御装置4は、回生時も力行時もインバータ側電圧の測定値Vdcと目標値Vdc
*との偏差、インバータ側電流の測定値Idcと目標値Idc
*との偏差、及び、バッテリ側電流の測定値Ibattと目標値Ibatt
*との偏差に基づいて、DCDCコンバータ3のFB制御を行う。
【0037】
次に、上述したV
DCコントローラ41、I
BATTコントローラ42及びI
DCコントローラ43のさらに詳細を
図4に基づいて説明する。V
DCコントローラ41は、減算器41Aと、PID制御部41Bと、Vdc/Vbatt算出部41Cと、乗算器41Dと、を備えている。減算器41Aは、測定値Vdcと目標値Vdc
*との偏差を出力する。PID制御部41Bは、偏差の一次関数として後段への入力を制御するP制御、偏差の積分に比例して後段への入力を変化させるI制御、偏差の微分に比例して後段への入力を変化させるD制御を行う周知のPID制御部である。
【0038】
本実施形態では、減算器41Aは、測定値Vdcと目標値Vdc*との偏差を0にするように後述するPID制御部41Bへ入力する。Vdc/Vbatt算出部41Cは、測定値Vdc、Vbattが入力され、Vdc/Vbattを算出する。乗算器41Dは、PID制御部41Bからの入力とVdc/Vbatt算出部41Cにより算出されたVdc/Vbattとを乗算して、バッテリ側電流の目標値Ibatt*とする。
【0039】
ところで、上述したDCDCコンバータ3においては、バッテリ2側の電力とインバータ5側の電力とが等しいと考え、下記の式(1)が成立する。
VDC×IDC=VBATT×IBATT …(1)
【0040】
上記式(1)から下記の式(2)、(3)が求められる。
IBATT=VDC/VBATT×IDC …(2)
IDC=VBATT/VDC×IBATT …(3)
【0041】
上記PID制御部41Bからの入力は、インバータ側電圧VDC、即ちインバータ側電流IDCに応じた値とみなせる。よって、乗算器41Dの出力は、式(2)に概ね応じた値であるとみなせ、バッテリ側電流の目標値Ibatt*として設定できる。
【0042】
IBATTコントローラ42は、バッテリ側電流の測定値IbattとVDCコントローラ41により定められた目標値Ibatt*との偏差に基づいてインバータ側電流の目標値Idc*を定める。詳しく説明すると、IBATTコントローラ42は、減算器42Aと、乗算器42Bと、PID制御部42Cと、加算器42Dと、1/Vdc算出部42Eと、乗算器42Fと、を備えている。減算器42Aは、測定値Ibattと目標値Ibatt*との偏差を0とするように乗算器42Bへ入力する。
【0043】
乗算器42Bは、測定値Ibattと目標値Ibatt*との偏差を-1倍する。PID制御部42Cは、偏差を-1倍にするように後段への入力を制御する。加算器42Dは、PID制御部42C側の出力である入力と測定値Vbattとを加算する。1/Vdc算出部42Eは、測定値Vdcが入力され、1/Vdcを算出する。乗算器42Fは、加算器42D及び1/Vdc算出部42Eの出力を乗算する。この乗算器42Fの出力は、概ね式(3)に応じた値であり、インバータ側電流の目標値Idc*に設定できる。
【0044】
IDCコントローラ43は、減算器43Aによるインバータ側電流の測定値IdcとIBATTコントローラ42により定められた目標値Idc*との偏差に基づいてDCDCコンバータ3を制御する。詳しく説明すると、IDCコントローラ43は、減算器43Aと、PID制御部43Bと、を備えている。減算器43Aは、測定値Idcと目標値Idc*との偏差を0とするようにPID制御部43Bへ入力する。PID制御部43Bは、測定値Idcと目標値Idc*との偏差を0にするように後段への入力を制御する。PID制御部43Bは、PWM部45への入力を出力する。
【0045】
上述した第1実施形態によれば、インバータ側電圧、インバータ側電流及びバッテリ側電流のフィードバック制御を行うことにより、1つの周知の双方向DCDCコンバータ3を用いて車両搭載時の特性を向上させることができる。このため、部品点数の削減、エネルギーロスの低減、特性向上を図ることができる。
【0046】
次に、本発明者は、上述した効果を確認すべく、
図4に示す制御装置4(本発明品A)を用いた電源供給システムの車速、バッテリ側電圧V
BATT、インバータ側電圧V
DC、電動モータ6のトルク電流及びトルク、バッテリ2のSOCの関係をシミュレーションした。結果を
図8及び
図9に示す。
【0047】
また、本発明者は、
図6に示すDCDCコンバータの制御装置4(比較品A)を用いた電源供給システムの車速、バッテリ側電圧V
BATT、インバータ側電圧V
DC、電動モータ6のトルク電流及びトルク、バッテリ2のSOCの関係をシミュレーションした。結果を
図10及び
図11に示す。また、本発明者は、
図6に示すDCDCコンバータの制御装置4(比較品A)について、回路パラメータ(リアクトルのインダクタンス、コンデンサの容量等)、制御パラメータ(PID制御部のP係数、I係数、D係数)が上記と異なる条件でのインバータ側電圧を一定にするFB制御を行う電源供給システムの車速、バッテリ側電圧V
BATT、インバータ側電圧V
DCの関係をシミュレーションした。結果を
図14に示す。
【0048】
また、本発明者は、
図7Bに示す制御装置4(比較品B)を用いた電源供給システムの車速、バッテリ側電圧V
BATT、インバータ側電圧V
DC、電動モータ6のトルク電流及びトルク、バッテリ2のSOCの関係をシミュレーションした。結果を
図12及び
図13に示す。
【0049】
図6に示す比較品Aの制御装置4は、インバータ側電圧V
DCを一定にするFB制御を行う装置である。比較品Aの制御装置4は、減算器100Aと、PID制御部100Bと、から構成されている。減算器100Aは、インバータ側電圧の測定値Vdcと目標値Vdc
*との偏差を0とするようにPID制御部100Bへ入力する。PID制御部100Bは、インバータ側電圧の測定値Vdcと目標値Vdc
*との偏差が0になるようにPWM部45への入力を制御する。
【0050】
図7Aに示す比較品Bの制御装置4は、非特許文献1の装置に相当する。非特許文献1は、天候等により変動する太陽電池の出力電力の最大化を図りながら、出力電圧、出力電流を安定化させるDCDCコンバータに関し、太陽電池側電圧V
DCBVS及び太陽電池側電流I
EDLCを一定にするFB制御を行う装置である。比較品Bの制御装置4は、V
DCBVSコントローラ111と、I
EDLCコントローラ112と、を備えている。V
DCBVSコントローラ111は、太陽電池側電圧の測定値V
DCBVSと目標値V
*
DCBVSとの偏差が0になるような太陽電池側電流の目標値I
*
EDLCを定める。I
EDLCコントローラ112は、太陽電池側電流の測定値I
EDLCと上記目標値I
*
EDLCとの偏差が0になるようなPWM部45の入力を出力する。本発明品Aとの違いは、第二の電流コントローラに相当するI
BATTコントローラ42がない点である。
【0051】
VDCBVSコントローラ111は、減算器111Aと、PI制御部111Bと、加算器111Cと、VDCBVS/VEDLCload算出部111Dと、を備えている。減算器111Aは、太陽電池側電圧の測定値VDCBVSと目標値V*
DCBVSとの偏差を0とするようにPI制御部111Bへ入力する。PI制御部111Bは、太陽電池側電圧の測定値VDCBVSと目標値V*
DCBVSとの偏差が0になるように後段への入力を制御する。
【0052】
加算器111Cは、PI制御部111B側の出力である入力と負荷側電流の測定値IEDLCloadとを加算する。VDCBVS/VEDLCload算出部111Dは、測定値IEDLCloadが入力され、VDCBVS/VEDLCloadを算出する。
【0053】
IEDLCコントローラ112は、減算器112Aと、PI制御部112Bと、減算器112Cと、算出部112Dと、を備えている。減算器112Aは、測定値IEDLCと目標値I*
EDLCとの偏差を0にするようにPI制御部112Bへ入力する。PI制御部112Bは、測定値IEDLCと目標値I*
EDLCとの偏差を0にするように後段への入力を制御する。減算器112Cは、PI制御部112B側の出力である入力と太陽電池側電圧の測定値VEDLCと、を減算する。算出部112Dは、減算器112Cの出力を1/VDCBVS倍する。算出部112は、PWM部45への入力を出力する。
【0054】
図7Bに示す比較品Bの制御装置4は、非特許文献1の装置を自動車に適用した例であり、インバータ側電圧V
DC及びインバータ側電流I
DCを一定にするFB制御を行う装置である。比較品Bの制御装置4は、V
DCコントローラ101と、I
DCコントローラ102と、を備えている。V
DCコントローラ101は、インバータ側電圧の測定値Vdcと目標値Vdc
*との偏差が0になるようなインバータ側電流の目標値Idc
*を定める。I
DCコントローラ102は、インバータ側電流の測定値Idcと上記目標値Idc
*との偏差が0になるようなPWM部45の入力を出力する。本発明品Aとの違いは、I
BATTコントローラ42がない点である。
【0055】
VDCコントローラ101は、減算器101Aと、PID制御部101Bと、乗算器101Cと、PID制御部101Dと、Vdc/Vbatt算出部101Eと、乗算器101Fと、を備えている。減算器101Aは、インバータ側電圧の測定値Vdcと目標値Vdc*との偏差を0とするようにPID制御部101Bへ入力する。PID制御部101Bは、インバータ側電圧の測定値Vdcと目標値Vdc*との偏差が0になるように後段への入力を制御する。
【0056】
乗算器101Cは、PID制御部101Bからの入力とバッテリ側電流の測定値Ibattとを乗算する。PID制御部101Dは、減算器101Aの偏差が0になるように後段への入力を制御する。Vdc/Vbatt算出部101Eは、測定値Vdc、Vbattが入力され、Vdc/Vbattを算出する。乗算器101Fは、PID制御部101Dからの入力とVdc/Vbattとを乗算して、インバータ側電流の目標値Idc*として設定する。
【0057】
IDCコントローラ102は、減算器102Aと、PID制御部102Bと、を備えている。減算器102Aは、測定値Idcと目標値Idc*との偏差を0にするようにPID制御部102Bへ入力する。PID制御部102Bは、測定値Idcと目標値Idc*との偏差を0にするように後段への入力を制御する。PID制御部102Bは、PWM部45への入力を出力する。
【0058】
なお、本発明品A~D、及び、比較品A、Bのシミュレーションは、自動車技術会2017年春季大会で報告されているEVモデルを用いたモータドライブシステム(MDS)を用いて行われている。このMDSは、
図1に示す、インバータ5をベクトル制御で駆動し、インバータ5の駆動により、永久磁石同期モータ6が加速時、定速時に力行回転し、減速時に回生回転する、一般的なモータドライブをモデル化し、実機モータドライブシステムと同様の挙動が得られているものである。
【0059】
図8~
図14は、上記MDSを用いて、0km/hから80km/hまでの加速、80km/hでの定速、80km/hから0km/hまでの減速を順次、指示(操作)したときの車速、バッテリ側電圧、インバータ側電圧、電動モータ6のトルク電流及びトルク、バッテリ2のSOCのシミュレーション値である。
【0060】
まず、比較品Aについて検討する。
図11に示すように、比較品Aでは、力行時にSOCが減少し、回生時にSOCが増加して、電動モータ6による正常な走行が行われているものの、
図10に示すように、バッテリ側電圧V
BATTとインバータ側電圧V
DCとがほぼ同じでDCDCコンバータ1による昇圧が全く行われていない。次に、比較品Aの他の回路パラメータ、制御パラメータの場合について検討する。
図14に示すように、比較品Aでは、インバータ側電圧V
DC及び車速ともに不安定で、回生時には、指示通りの走行ができなくなる。
【0061】
次に、比較品Bについて検討する。
図12に示すように、比較品Bでは、インバータ側電圧V
DCは、加速時、定速時にバッテリ側電圧V
BATTとほぼ同じになり、その後、減速時に200Vを上回った後、100V程度に下がってしまう。即ち、目標値Vdc
*=650Vに対して、インバータ側電圧V
DCが200V以下であり、かつ不安定である。一方、車両の速度は、指示通りになっているが、
図13に示すように、加速、等速時(即ち、バッテリ2の放電時)にSOCに変化がなく、減速時(即ちバッテリ2の充電時)にSOCが減ってしまっているため、電動モータ6による正常な走行が行われている、とは言えない。
【0062】
次に、本発明品Aについて検討してみる。
図8に示すように、本発明品Aでは、インバータ電圧V
DCを目標値Vdc
*=650Vで安定させることができ、車速も指示通りになっている。また、
図9に示すように、加速、等速時にSOCが減少し、減速時にSOCが増加しているため、電動モータ6による正常な走行が行われていることが分かる。即ち、本発明品Aは、比較品A~Cに比べて車両搭載時の特性を大幅に向上できることが分かった。
【0063】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について
図15を参照して説明する。第1実施形態と第2実施形態とで大きく異なる点は、制御装置4のI
BATTコントローラ42の構成である。
図15に第2実施形態における
図3に示す制御装置を示す。同図において、
図4について第1実施形態で既に説明した制御装置4の各部と同等の部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0064】
第2実施形態におけるIBATTコントローラ42は、第1実施形態の加算器42Dの代わりに乗算器42Gを用いている。乗算器42Gは、PID制御部42Cからの入力とバッテリ側電圧の測定値Vbattとを乗算する。このように構成しても第1実施形態と同様に、周知の双方向DCDCコンバータ3を用いて車両搭載時の特性を向上させることができ、部品点数の削減、エネルギーロスの低減、特性向上を図ることができる。
【0065】
次に、本発明者は、上述した効果を確認すべく
図15に示す制御装置4(本発明品B)を用いて電源供給システムの車速、バッテリ側電圧V
BATT、インバータ側電圧V
DC、電動モータ6のトルク電流及びトルク、バッテリ2のSOCの関係をシミュレーションした。結果を
図16及び
図17に示す。
【0066】
同図からも明らかなように、本発明品Bもインバータ電圧V
DCを目標値Vdc
*=650Vで安定させることができ、車速も指示通りになっている。また、
図17に示すように、加速、等速時にSOCが減少し、減速時にSOCが増加しているため、電動モータ6による正常な走行が行われていることが分かる。即ち、本発明品Bは、比較品A~Cに比べて車両搭載時の特性を大幅に向上できることが分かった。
【0067】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について
図18及び
図19を参照して説明する。第3実施形態と第1実施形態とで大きく異なる点は、I
BATTコントローラとI
DCコントローラとが入れ替わっている点である。なお、
図18及び
図19において、
図3及び
図4について上述した第1実施形態で既に説明した制御装置4と同等の部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0068】
第3実施形態における制御装置4は、
図18に示すように、第5のFB制御部としてのV
DCコントローラ46と、第6のFB制御部としてのI
DCコントローラ47と、第7のFB制御部としてのI
BATTコントローラ48と、PWM部45と、ロジック回路46と、を備えている。
【0069】
VDCコントローラ46は、インバータ側電圧の測定値Vdcと目標値Vdc*との偏差が0になるようなインバータ側電流の目標値Idc*を定める。IDCコントローラ47は、インバータ側電流の測定値Idcと上記目標値Idc*との偏差が0になるようなバッテリ側電流の目標値Ibatt*を定める。IBATTコントローラ48は、バッテリ側電流の測定値Ibattと上記目標値Ibatt*との偏差が0になるようなPWM部45の入力を出力する。
【0070】
次に、上述したV
DCコントローラ46、I
DCコントローラ47及びI
BATTコントローラ48のさらに詳細を
図19に基づいて説明する。V
DCコントローラ46は、減算器46Aと、PID制御部46Bと、乗算器46Cと、1/Vdc算出部46Dと、乗算器46Eと、を備えている。
【0071】
減算器46Aは、測定値Vdcと目標値Vdc*との偏差を0にするようにPID制御部46Bへ入力する。PID制御部46Bは、測定値Vdcと目標値Vdc*との偏差を0にするように後述する乗算器46Cへの入力を制御する。乗算器46Cは、バッテリ側電圧の測定値VbattとPID制御部46Bからの出力を乗じる。1/Vdc算出部46Dは、測定値Vdcが入力され、1/Vdcを算出する。乗算器46Eは、1/Vdcと乗算器46Cの出力とを乗算して、インバータ側電流の目標値Idc*に設定する。
【0072】
IDCコントローラ47は、減算器47Aと、PID制御部47Bと、Vdc/Vbatt算出部47Cと、乗算器47Dと、を備えている。減算器47Aは、VDCコントローラ46により設定された目標値Idc*と測定値Idcとの偏差を0にするように後述するPID制御部47Bへ入力する。PID制御部47Bは、VDCコントローラ46により設定された目標値Idc*と測定値Idcとの偏差を0にするように後述する乗算器47Dへの入力を制御する。Vdc/Vbatt算出部47Cは、測定値Vdc、Vbattが入力され、Vdc/Vbattを算出する。乗算器47Dは、Vdc/VbattとPID制御部47Bからの入力を乗算して、バッテリ側電流の目標値Ibatt*に設定する。
【0073】
IBATTコントローラ48は、減算器48Aと、乗算器48Bと、PID制御部48Cと、を備えている。減算器48Aは、IDCコントローラ47により設定された目標値Ibatt*と測定値Ibattとの偏差を0にするように乗算器48Aへ入力する。乗算器48Bは、IDCコントローラ47により設定された目標値Ibatt*と測定値Ibattとの偏差を-1倍する。PID制御部48Cは、偏差を-1倍にするように後述するPWM部45への入力を制御する。
【0074】
このように構成しても第1実施形態と同様に、周知の双方向DCDCコンバータ3を用いて車両搭載時の特性を向上させることができ、部品点数の削減、エネルギーロスの低減、特性向上を図ることができる。
【0075】
次に、本発明者は、上述した効果を確認すべく
図18及び
図19に示す制御装置4(本発明品C)を用いて電源供給システムの車速、バッテリ側電圧V
BATT、インバータ側電圧V
DC、電動モータ6のトルク電流及びトルク、バッテリ2のSOCの関係をシミュレーションした。結果を
図20及び
図21に示す。
【0076】
同図からも明らかなように、本発明品Cもインバータ電圧V
DCを目標値Vdc
*=650Vで安定させることができ、車速も指示通りになっている。また、
図21に示すように、加速、等速時にSOCが減少し、減速時にSOCが増加しているため、電動モータ6による正常な走行が行われていることが分かる。即ち、本発明品Cは、比較品A~Cに比べて車両搭載時の特性を大幅に向上できることが分かった。
【0077】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について
図22を参照して説明する。第3実施形態と第4実施形態とで大きく異なる点は、制御装置4のV
DCコントローラ46の構成である。
図22に第4実施形態における
図18に示す制御装置を示す。同図において、
図22について第3実施形態で既に説明した制御装置4の各部と同等の部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0078】
第4実施形態におけるVDCコントローラ46は、第3実施形態の乗算器46Cの代わりに加算器46Fを用いている。加算器46Fは、PID制御部46Bからの入力とバッテリ側電圧の測定値Vbattとを加算する。このように構成してもよい。
【0079】
次に、本発明者は、上述した効果を確認すべく
図22に示す制御装置4(本発明品D)を用いて電源供給システムの車速、バッテリ側電圧V
BATT、インバータ側電圧V
DC、電動モータのトルク電流及びトルク、バッテリのSOCの関係をシミュレーションした。結果を
図23及び
図24に示す。同図からも明らかなように、バッテリ側電圧V
DCを一定に保つことはできないが、202V以上にすることができ、車速は、指示通りになっている。また、
図24に示すように、加速、等速時にSOCが減少し、減速時にSOCが増加しているため、電動モータ6による正常な走行が行われていることが分かる。即ち、本発明品Dは、比較品A~Cに比べて車両搭載時の特性を大幅に向上できることが分かった。
【0080】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について
図25を参照して説明する。第5実施形態は、上述した第1実施形態の変形例であり、第1実施形態と大きく異なる点は、バッテリ2の代わりにコンデンサ7を用いる点である。なお、
図25において、
図1について上述した第1実施形態で既に説明した制御装置4と同等の部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0081】
第5実施形態における車両用電源システム1は、上述した第1実施形態についての説明において、「バッテリ」を「コンデンサ」に、「batt」を「con」に、「BATT」を「CON」に、読み替えたものと同じであるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0082】
次に、本発明者は、上述した効果を確認すべく、制御装置4(本発明品Aのバッテリをコンデンサに置き換えた発明品)を用いた電源供給システムの車速、コンデンサ側電圧V
CON、インバータ側電圧V
DC、電動モータ6のトルク電流及びトルク、バッテリ2のSOCの関係をシミュレーションした。結果を
図26に示す。なお、第5実施形態では、コンデンサ7として48Vのものを用いて、目標値Vdc
*を400Vに設定してシミュレーションしている。
【0083】
図26に示すように、本発明品Aのバッテリをコンデンサに置き換えた発明品でも、インバータ電圧V
DCを目標値Vdc
*=400Vで安定させることができ、車速も指示通りになっている。また、加速、等速時にSOCが減少し、減速時にSOCが増加しているため、電動モータ6による正常な走行が行われていることが分かる。
【0084】
即ち、上述したようにバッテリ2をコンデンサ7に代えても問題なく動作できることがことが分かった。よって、第2~第4実施形態についても同様に、バッテリ2をコンデンサ7に置き換えてもよい。
【0085】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0086】
2 バッテリ
7 コンデンサ
3 双方向DCDCコンバータ
4 制御装置
5 インバータ
41 VDCコントローラ(第1のフィードバック制御部)
42 IBATTコントローラ(第2のフィードバック制御部)
43 IDCコントローラ(第3のフィードバック制御部)
46 VDCコントローラ(第4のフィードバック制御部)
47 IBATTコントローラ(第5のフィードバック制御部)
48 IDCコントローラ(第6のフィードバック制御部)
Ibatt バッテリ側電流の測定値
Ibatt* バッテリ側電流の目標値
Idc インバータ側電流の測定値
Idc* インバータ側電流の目標値
Vdc インバータ側電圧の測定値
Vdc* インバータ側電圧の目標値
Vbatt バッテリ側電圧の測定値