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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】水処理方法および水処理システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/68 20060101AFI20220613BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20220613BHJP
   C02F 1/20 20060101ALI20220613BHJP
   C02F 9/02 20060101ALI20220613BHJP
   C02F 9/04 20060101ALI20220613BHJP
   C02F 9/08 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
C02F1/68 510B
C02F1/44 H
C02F1/20 A
C02F1/68 520B
C02F1/68 530A
C02F1/68 530K
C02F1/68 530L
C02F1/68 540D
C02F9/02
C02F9/04
C02F9/08
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018161870
(22)【出願日】2018-08-30
(65)【公開番号】P2019042734
(43)【公開日】2019-03-22
【審査請求日】2021-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2017167823
(32)【優先日】2017-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】596136316
【氏名又は名称】三菱ケミカルアクア・ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】近藤 和史
(72)【発明者】
【氏名】ザマン サエド
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-043868(JP,A)
【文献】特開平07-323279(JP,A)
【文献】特開昭61-283392(JP,A)
【文献】国際公開第2012/023742(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/034396(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/66- 1/68
B01D 53/22
B01D 61/00- 71/82
C02F 1/44
C02F 1/20- 1/26
C02F 1/30- 1/38
C02F 9/00- 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆浸透膜を用いて、無機塩類を含む供給水を脱塩処理し、脱塩水を得る脱塩処理工程と、
前記脱塩水のpHおよび遊離炭酸濃度を調整し、調整水を得る第1調整工程と、
前記調整水と、炭酸塩粒子とを接触させ、処理水を得る接触処理工程と、
前記脱塩処理工程に先立って、原水のpHおよび遊離炭酸濃度を調整し、前記供給水を得る第2調整工程と、を有し、
前記第2調整工程において、酸性条件下で前記原水を曝気し、脱炭酸処理する水処理方法。
【請求項2】
前記接触処理工程の後に、前記処理水のpHおよび遊離炭酸濃度を調整する第3調整工程を有する請求項1に記載の水処理方法。
【請求項3】
前記第3調整工程において、硫酸、硫酸塩、亜硫酸塩および重亜硫酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種と前記処理水とを混合する請求項に記載の水処理方法。
【請求項4】
前記第1調整工程において、硫酸、硫酸塩、亜硫酸塩および重亜硫酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種と前記脱塩水とを混合する請求項1~のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項5】
前記炭酸塩粒子として、炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも一種を用いる請求項1~のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項6】
前記炭酸塩粒子は、複数の粒子からなり、粒径が0.1mm以上10mm以下の前記粒子の個数が前記炭酸塩粒子の総数に対して90%以上である請求項1~のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項7】
前記接触処理工程において、空間速度5hr-1以上30hr-1以下にて前記脱塩水を前記炭酸塩粒子に接触させる請求項1~のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項8】
前記第1調整工程において、前記脱塩水に二酸化炭素または炭酸水素ナトリウムと硫酸との混合物を添加する請求項1~のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項9】
逆浸透膜を有する脱塩処理部と、
前記脱塩処理部で得られた水と、炭酸塩粒子とを接触させる接触処理部と、
前記脱塩処理部と前記接触処理部との間に配置され、前記水のpHおよび遊離炭酸濃度を調整する第1調整部と、
前記脱塩処理部の前に配置され、原水のpHおよび遊離炭酸濃度を調整する第2調整部と、を有し、
前記第2調整部は、酸性条件下で前記原水を曝気し、脱炭酸処理する水処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理方法および水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地下水や河川水などの原水を脱塩処理する方法が知られている。脱塩処理により得られる脱塩水はpHが低く、処理水を供給する配管や設備の腐食が度々問題になることがあった。そのため、通常、脱塩水には、腐食性を抑制するための後処理が行われる。
【0003】
このような後処理としては、脱塩水に炭酸カルシウムを溶解させる方法が知られている。特許文献1には、二酸化炭素が溶解した供給液(脱塩水)を用いて炭酸カルシウムのスラリーを調製し、得られたスラリーと供給液とを混合することにより、供給水に炭酸カルシウムを溶解させる方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-155128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、供給水が流れる系統が2つ必要であり、用いる装置の構成が複雑であるとの問題があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、配管や設備の腐食を容易に抑制することができる水処理方法および水処理システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記態様を有する。
[1]逆浸透膜を用いて、無機塩類を含む供給水を脱塩処理し、脱塩水を得る脱塩処理工程と、前記脱塩水のpHおよび遊離炭酸濃度を調整し、調整水を得る第1調整工程と、前記調整水と、炭酸塩粒子とを接触させ、処理水を得る接触処理工程と、を有する水処理方法。
[2]前記脱塩処理工程に先立って、原水のpHおよび遊離炭酸濃度を調整し、前記供給水を得る第2調整工程を有する[1]に記載の水処理方法。
[3]前記第2調整工程において、酸性条件下で前記原水を曝気し、脱炭酸処理する[2]に記載の水処理方法。
[4]前記接触処理工程の後に、前記処理水のpHおよび遊離炭酸濃度を調整する第3調整工程を有する[1]~[3]のいずれか1項に記載の水処理方法。
[5]前記第3調整工程において、硫酸、硫酸塩、亜硫酸塩および重亜硫酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種と前記処理水とを混合する[4]に記載の水処理方法。
[6]前記第1調整工程において、硫酸、硫酸塩、亜硫酸塩および重亜硫酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種と前記脱塩水とを混合する[1]~[5]のいずれか1項に記載の水処理方法。
[7]前記炭酸塩粒子として、炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも一種を用いる[1]~[6]のいずれか1項に記載の水処理方法。
[8]前記炭酸塩粒子は、複数の粒子からなり、粒径が0.1mm以上10mm以下の前記粒子の個数が前記炭酸塩粒子の総数に対して90%以上である[1]~[7]のいずれか1項に記載の水処理方法。
[9]前記接触処理工程において、空間速度5hr-1以上30hr-1以下にて前記脱塩水を前記炭酸塩粒子に接触させる[1]~[8]のいずれか1項に記載の水処理方法。
[10]前記第1調整工程において、前記脱塩水に二酸化炭素または炭酸水素ナトリウムと硫酸との混合物を添加する[1]~[9]のいずれか1項に記載の水処理方法。
[11]逆浸透膜を有する脱塩処理部と、前記脱塩処理部で得られた水と、炭酸塩粒子とを接触させる接触処理部と、前記脱塩処理部と前記接触処理部との間に配置され、前記水のpHおよび遊離炭酸濃度を調整する調整部と、を有する水処理システム。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、配管や設備の腐食を容易に抑制することができる水処理方法および水処理システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態の水処理システム1の概略構成を示す図である。
図2図2は、pHに対する全炭酸の濃度分布を示すグラフである。なお、図中、◇は二酸化炭素、□は重炭酸イオン、△は炭酸イオンの濃度分布を示す。
図3図3は、第1実施形態の水処理方法の各工程を示すフローチャートである。
図4図4は、第2実施形態の水処理システム2の概略構成を示す図である。
図5図5は、第2実施形態の水処理方法の各工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態における水処理方法および水処理システムについて、図面に基づき説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴部分を強調する目的で、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、同様の目的で、特徴とならない部分を省略して図示している場合がある。
【0011】
本実施形態の水処理方法は、逆浸透膜を用いて、無機塩類を含む供給水を脱塩処理し、脱塩水を得る脱塩処理工程と、脱塩水のpHおよび遊離炭酸濃度を調整し、調整水を得る第1調整工程と、調整水と、炭酸塩粒子とを接触させ、処理水を得る接触処理工程と、脱塩処理工程に先立って、原水のpHおよび遊離炭酸濃度を調整し、供給水を得る第2調整工程と、接触処理工程の後に、処理水のpHおよび遊離炭酸濃度を調整する第3調整工程と、を有する。
【0012】
本明細書において、遊離炭酸とは水中に溶けている二酸化炭素のことをいう。
【0013】
以下の説明においては、本実施形態の水処理システムにおける各処理を施す前の水を「原水W1」と称する。また、脱塩処理工程で処理される水を「供給水W2」と称する。さらに、脱塩処理工程で得られる水を「脱塩水W3」と称する。さらに、接触処理工程で処理される水を「調整水W4」と称する。さらに、接触処理工程で得られる水を「処理水W5」と称する。
【0014】
[水処理システム]
以下、本実施形態の水処理方法に用いる水処理システムについて説明する。図1は、第1実施形態の水処理システム1の概略構成を示す図である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の水処理システム1は、接触処理部10と、脱塩処理部20と、制御部40と、貯留槽51と、第1調整部160と、第2調整部60と、第3調整部340と、を有している。本明細書において、第1調整部160は、特許請求の範囲における「調整部」に相当する。
【0016】
(第2調整部)
本実施形態の第2調整部60は、水処理システム1に供給される原水W1のpHおよび遊離炭酸濃度を調整し、供給水W2を得る。本実施形態の第2調整部60は、前処理槽61と、pH調整手段35と、曝気装置36と、を備えている。
【0017】
図1に示す前処理槽61には、第5の流路62と、第1の流路22とが接続されている。
【0018】
第5の流路62は、原水W1を前処理槽61に流入させる。第5の流路62には、測定装置63が設けられている。
【0019】
測定装置63は、原水W1の水質を測定する。具体的には、原水W1に含まれるアンモニア濃度、金属イオン濃度、pH、遊離炭酸濃度および硫酸イオン濃度からなる群から選ばれる少なくとも一種を測定する。
【0020】
測定装置63の測定結果は、制御部40に出力される。
【0021】
第1の流路22は、供給水W2を後段の脱塩処理部20に流入させる。
【0022】
pH調整手段35は、原水W1に酸またはアルカリを添加することが可能な装置である。pH調整手段35の駆動は、後述の制御部40により制御される。
【0023】
pH調整手段35で添加される酸としては、硫酸が好ましい。pH調整手段35で添加されるアルカリとしては、水酸化ナトリウム(NaOH)が好ましい。
【0024】
曝気装置36は、前処理槽61の内部に設けられている。また、曝気装置36には、ブロア37が接続されている。
【0025】
曝気装置36は、原水W1を曝気することが可能な装置である。本実施形態の第2調整部60においては、pH調整手段35と曝気装置36とを併用して、酸性条件下で原水W1を曝気し、脱炭酸処理することができる。なお、本明細書において、「曝気」とは空気を供給することを意味する。
【0026】
(脱塩処理部)
本実施形態の脱塩処理部20では、無機塩類を含む供給水W2を脱塩処理する(脱塩処理工程)。
【0027】
本実施形態の脱塩処理部20は、逆浸透膜モジュール21を備えている。逆浸透膜モジュール21は、逆浸透法により無機塩類を含む供給水W2を脱塩処理する。
【0028】
逆浸透膜モジュール21に用いられる逆浸透膜の材質としては、ポリアミド、ポリスルホン、セルロースアセテートなどが挙げられる。なかでも、逆浸透膜の材質としては、芳香族ポリアミドまたは架橋芳香族ポリアミドを含むポリアミドが好ましい。
【0029】
図1に示す逆浸透膜モジュール21には、上述の第1の流路22と、第2の流路23とが接続されている。
【0030】
第2の流路23は、脱塩処理工程で得られる脱塩水W3を逆浸透膜モジュール21から流出させる。第2の流路23には、測定装置24が設けられている。
【0031】
測定装置24は、脱塩水W3のpH、遊離炭酸濃度および硫酸イオン濃度からなる群から選ばれる少なくとも一種を測定する。測定装置24は、脱塩水W3のpHおよび遊離炭酸の濃度を測定することが好ましく、脱塩水W3のpH、遊離炭酸濃度および硫酸イオン濃度を測定することがより好ましい。
【0032】
測定装置24の測定結果は、制御部40に出力される。
【0033】
(第1調整部)
本実施形態の第1調整部160は、脱塩水W3のpHおよび遊離炭酸濃度を調整し、調整水W4を得る。本実施形態の第1調整部160は、調整槽16と、pH調整手段31と、曝気装置32と、二酸化炭素供給手段38と、を備えている。
【0034】
図1に示す調整槽16には、上述の第2の流路23と、第3の流路12とが接続されている。
【0035】
第3の流路12は、調整水W4を後段の接触処理部10に流入させる。第3の流路12には、測定装置17が設けられている。
【0036】
測定装置17は、調整水W4のpH、遊離炭酸濃度および硫酸イオン濃度からなる群から選ばれる少なくとも一種を測定する。測定装置17は、調整水W4のpHおよび遊離炭酸の濃度を測定することが好ましく、調整水W4のpH、遊離炭酸濃度および硫酸イオン濃度を測定することがより好ましい。
【0037】
調整水W4と炭酸塩粒子との反応を効率的に進行させるためには、調整水W4における遊離炭酸の濃度が所定の基準を満たすように制御することが好ましい。本明細書では、調整水W4における遊離炭酸の濃度における所定の基準を、例えば5mg/L以上とする。
【0038】
測定装置17の測定結果は、制御部40に出力される。
【0039】
pH調整手段31は、脱塩水W3に酸またはアルカリを混合することが可能な手段である。pH調整手段31における酸またはアルカリの混合方法としては、脱塩水W3に酸またはアルカリを添加することが好ましい。
【0040】
pH調整手段31で混合される酸としては、水質基準を満たしやすいことから、硫酸、硫酸塩、亜硫酸塩および重亜硫酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種が好ましく、硫酸がより好ましい。上記酸として亜硫酸塩または重亜硫酸塩を用いる場合、曝気処理と酸化剤の添加とのいずれか一方または両方を行うことにより、脱塩水W3中に硫酸イオンを発生させる。
【0041】
上述の硫酸塩としては、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウムおよび硫酸カリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種が好ましい。
上述の亜硫酸塩としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸マグネシウム、亜硫酸カリウムなどが挙げられる。
上述の重亜硫酸塩としては、例えば重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸マグネシウム、重亜硫酸カリウムなどが挙げられる。
上述の酸化剤としては、例えば次亜塩素酸ナトリウム、オゾン、過酸化水素などが挙げられる。
【0042】
pH調整手段31で混合されるアルカリとしては、水質基準を満たしやすいことから、水酸化ナトリウム(NaOH)が好ましい。
【0043】
曝気装置32は、調整槽16の内部に設けられている。また、曝気装置32には、ブロア33が接続されている。
【0044】
曝気装置32は、脱塩水W3を曝気することが可能な装置である。本実施形態の第1調整部160においては、pH調整手段31と曝気装置32とを併用して、酸性条件下で脱塩水W3を曝気し、脱炭酸処理することができる。
【0045】
二酸化炭素供給手段38は、脱塩水W3に二酸化炭素を供給することが可能な手段である。
【0046】
二酸化炭素供給手段38では、脱塩水W3に二酸化炭素を供給してもよいし、炭酸水素ナトリウムと硫酸との混合物を供給し、系中で二酸化炭素を発生させることで二酸化炭素を供給してもよい。
【0047】
(接触処理部)
本実施形態の接触処理部10では、脱塩水W3のpHおよび遊離炭酸濃度を調整した調整水W4を、炭酸塩粒子に接触させる(接触処理工程)。
【0048】
図1に示す接触処理部10は、反応槽11を備えている。
【0049】
《反応槽》
反応槽11には、炭酸塩粒子が充填されている。用いる炭酸塩粒子としては、炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも一種が好ましい。図1に示す反応槽11には、上述の第3の流路12と、第4の流路13とが接続されている。
【0050】
第4の流路13は、接触処理工程で得られる処理水W5を反応槽11から流出させる。
【0051】
反応槽11の上部には、第4の流路13の端部が接続されている。また、反応槽11の下部には、第3の流路12の端部が接続されている。図1に示す水処理システム1では、反応槽11の内部を調整水W4が上向流で流れる。
【0052】
本実施形態の反応槽11に充填される炭酸塩粒子は、複数の粒子からなり、粒径が0.1mm以上10mm以下の粒子の個数が炭酸塩粒子の総数に対して90%以上であることが好ましい。炭酸塩粒子の総数に対して90%以上の個数の粒子の粒径が0.1mm以上であると、反応槽11の内部に調整水W4を上向流で流したときに、反応槽11の上部から炭酸塩粒子のスラリーが流出するのを抑制することができる。また、炭酸塩粒子の総数に対して90%以上の個数の粒子の粒径が10mm以下であると、調整水W4と炭酸塩粒子との接触面積が十分大きく、調整水W4と炭酸塩粒子との反応を効率的に進行させることができる。
【0053】
本実施形態の炭酸塩粒子において、粒径が0.5mm以上の粒子の個数が炭酸塩粒子の総数に対して90%以上であることがより好ましい。これにより、反応槽11の内部に調整水W4を上向流で流したときに、反応槽11の上部から炭酸塩粒子のスラリーが流出するのをより効果的に抑制することができる。
【0054】
本実施形態の炭酸塩粒子において、粒径が1.2mm以下の粒子の個数が炭酸塩粒子の総数に対して90%以上であることがより好ましい。これにより、調整水W4と炭酸塩粒子との接触面積が十分大きく、調整水W4と炭酸塩粒子との反応をより効率的に進行させることができる。
【0055】
本実施形態の接触処理部10においては、調整水W4が接触する炭酸塩粒子の表面から反応が進行する。そのため、処理中は経時的に炭酸塩粒子の粒径が小さくなる。本実施形態の水処理システム1においては、使用する炭酸塩粒子の総数に対して90%以上の粒子の粒径が、0.1mm以上10mm以下となるように、炭酸塩粒子を補充するものとする。
【0056】
本実施形態において、炭酸塩粒子の粒度分布は、音波式振動ふるい分け測定器により測定される。
【0057】
本実施形態の接触処理部10では、調整水W4と炭酸塩粒子との間で下記式(1)に示す平衡反応が進行する。
【0058】
【化1】
(式(1)中、MはCaまたはMgである。)
【0059】
本実施形態の接触処理部10において、調整水W4に炭酸塩を溶解させるためには、遊離炭酸(CO)の量を増やして、上記式(1)の右向きの反応を進行させる必要がある。しかし、上記式(1)における右辺の陰イオンである重炭酸イオン(HCO )は、pHによって遊離炭酸および炭酸イオン(CO 2-)に変化することが知られている。
【0060】
図2は、pHに対する全炭酸の濃度分布を示すグラフである。図2に示すグラフの横軸はpHである。また、グラフの縦軸は、全炭酸の濃度を100%としたときの、重炭酸イオン、遊離炭酸および炭酸イオンの濃度分布である。なお、全炭酸とは、重炭酸イオン、遊離炭酸および炭酸イオンの総和を意味する。
【0061】
図2に示すように、重炭酸イオンの濃度を示すグラフは上に凸であり、pHが8.5付近のとき、重炭酸イオンの濃度は最大値を示す。pHが8.5付近より酸性側では、重炭酸イオンの濃度が減少し、遊離炭酸の濃度が上昇する。一方、pHが8.5付近よりアルカリ性側では、重炭酸イオンの濃度が減少し、炭酸イオンの濃度が上昇する。
【0062】
調整水W4のpHは、4.0以上が好ましく、5.0以上がより好ましく、5.5以上がさらに好ましい。これにより、調整水W4における遊離炭酸の濃度が高くなりすぎず、調整水W4と炭酸塩粒子との反応時間(反応槽11に調整水W4を流す時間)を短くできる。また、調整水W4のpHは、7.0未満が好ましく、6.5以下がより好ましい。上記上限値および下限値は任意に組み合わせることができる。これにより、調整水W4に含まれる炭酸イオンの濃度が高くなりすぎず、得られた処理水W5の炭酸イオンの濃度が水質基準を満たしやすい。
【0063】
調整水W4のpHが4.0未満である場合、調整水W4における遊離炭酸の濃度が高くなり、調整水W4と炭酸塩粒子との反応を完了させようとすると、反応槽11に調整水W4を流す時間を長くする必要がある。
【0064】
一方、調整水W4のpHが7.0以上であると、調整水W4に含まれる炭酸イオンの濃度が高くなり、得られた処理水W5の炭酸イオンの濃度が水質基準を超えることがある。
【0065】
脱塩水W3のpHは、第1調整部160の調整槽16にて調整される。脱塩水W3のpHの詳細な調整方法については後述する。
【0066】
調整水W4における遊離炭酸の濃度は、5mg/L以上が好ましく、10mg/L以上がより好ましい。これにより、調整水W4と炭酸塩粒子との反応を効率的に進行させることができる。
【0067】
また、調整水W4における遊離炭酸の濃度は、25mg/L以下が好ましく、20mg/L以下がより好ましく、15mg/L以下がさらに好ましい。これにより、反応槽11に調整水W4を流す時間が短くなる。
【0068】
調整水W4における遊離炭酸の濃度が25mg/L超であると、調整水W4の処理時間が長くなる。また、調整水W4と炭酸塩粒子との反応が完了しなかった場合、遊離炭酸が消費されず、得られた処理水W5における遊離炭酸の濃度が水質基準を超えることがある。
【0069】
本実施形態の水処理システム1において、調整水W4の全炭酸の濃度が一定である場合、調整水W4のpHにより遊離炭酸の濃度が決定される。また、調整水W4のpHは、脱塩水W3における重炭酸イオンの濃度と、脱塩水W3のpH調整の際に混合される酸またはアルカリの量と、によって制御される。
【0070】
脱塩水W3における遊離炭酸の濃度は、第1調整部160の調整槽16にて調整される。脱塩水W3おける遊離炭酸の濃度の詳細な調整方法については後述する。
【0071】
本実施形態の接触処理部10では、空間速度5hr-1以上30hr-1以下にて調整水W4を炭酸塩粒子に接触させることが好ましい。本実施形態における調整水W4の空間速度は、単位時間あたりに処理する調整水W4の体積を、反応槽11に充填する炭酸塩粒子の体積で除したものである。
【0072】
調整水W4の空間速度が5hr-1以上であると、調整水W4と炭酸塩粒子との反応を効率的に進行させることができる。
【0073】
また、調整水W4の空間速度が30hr-1以下であると、水処理システム1の運転時と停止時とで反応槽11の内部の水質の変動が小さくなる。その結果、上記式(1)に示す平衡反応を制御しやすい。また、反応槽11の内部に調整水W4を上向流で流したときに、反応槽11の上部から炭酸塩粒子のスラリーが流出するのを抑制することができる。
【0074】
図1に戻り、第4の流路13には、ポンプ14と、測定装置15と、が設けられている。
【0075】
本実施形態の水処理システム1においては、ポンプ14の出力により、調整水W4の空間速度を5hr-1以上30hr-1以下の範囲に調整してもよい。
【0076】
測定装置15は、第4の流路13を流通する処理水W5のpH、遊離炭酸濃度および硫酸イオン濃度からなる群から選ばれる少なくとも一種を測定する。
【0077】
(第3調整部)
本実施形態の第3調整部340は、処理水W5のpHおよび遊離炭酸濃度を調整する。本実施形態の第3調整部340は、硫酸イオン混合手段34を備えている。本実施形態の硫酸イオン混合手段34は、処理水W5に硫酸、硫酸塩、亜硫酸塩および重亜硫酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種を混合することが可能な手段である。なかでも、硫酸イオン混合手段34は、処理水W5に硫酸塩を混合することが好ましい。硫酸イオン混合手段34で添加させる化合物は、pH調整手段31と同様である。なお、pH調整手段31と硫酸イオン混合手段34とで混合(添加)させる化合物の種類は同一であっても、異なっていてもよい。硫酸イオン混合手段34における酸またはアルカリの混合方法としては、処理水W5に酸またはアルカリを添加することが好ましい。
【0078】
硫酸イオン混合手段34で添加する硫酸塩としては、処理水W5のpHへの影響が小さいことから、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウムおよび硫酸カリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種が好ましい。
【0079】
(制御部)
本実施形態の制御部40は、測定装置24から脱塩水W3のpH、遊離炭酸濃度および硫酸イオン濃度からなる群から選ばれる少なくとも一種のデータを取得すると共に、測定装置17から調整水W4のpH、遊離炭酸濃度および硫酸イオン濃度からなる群から選ばれる少なくとも一種のデータを取得する。
【0080】
制御部40は、調整水W4のpH、遊離炭酸濃度および硫酸イオン濃度からなる群から選ばれる少なくとも一種のデータに基づいて、調整水W4が下記(a)および下記(b)を満たしているか否か判定する。そして、制御部40は、必要に応じて、脱塩水W3のpH、遊離炭酸濃度および硫酸イオン濃度からなる群から選ばれる少なくとも一種のデータに基づいてpH調整手段31、曝気装置32および二酸化炭素供給手段38の駆動を制御する。なお、本実施形態の水処理システム1では、調整水W4の判定基準として下記(a)および(b)を例に挙げたがこれに限定されない。調整水W4の判定基準は、目的の処理水W5に応じて適宜設定することができる。以下の説明では、調整水W4の判定基準が下記(a)および(b)であるとする。
(a)pHが4.0以上7.0未満
(b)遊離炭酸の濃度が0mg/L超25mg/L以下
【0081】
また、本実施形態の制御部40は、測定装置15から処理水W5におけるpH、遊離炭酸濃度および硫酸イオン濃度からなる群から選ばれる少なくとも一種のデータを取得する。
【0082】
制御部40は、処理水W5におけるpH、遊離炭酸濃度および硫酸イオン濃度からなる群から選ばれる少なくとも一種のデータに基づいて、処理水W5が目的の用途に適した濃度範囲を満たしているか否か判定する。そして、制御部40は、必要に応じて、処理水W5におけるpH、遊離炭酸濃度および硫酸イオン濃度からなる群から選ばれる少なくとも一種のデータに基づいて硫酸イオン混合手段34の駆動を制御する。
【0083】
また、本実施形態の制御部40は、測定装置63から原水W1におけるアンモニア濃度、金属イオン濃度、pH、遊離炭酸濃度および硫酸イオン濃度からなる群から選ばれる少なくとも一種のデータを取得する。
【0084】
制御部40は、原水W1におけるpH、遊離炭酸濃度および硫酸イオン濃度からなる群から選ばれる少なくとも一種のデータに基づいて、原水W1が所望の濃度範囲を満たしているか否か判定する。そして、制御部40は、必要に応じて、原水W1におけるpH、遊離炭酸濃度および硫酸イオン濃度からなる群から選ばれる少なくとも一種のデータに基づいてpH調整手段35および曝気装置36の駆動を制御する。
【0085】
(貯留槽)
本実施形態の貯留槽51は、処理水W5を貯留する。貯留槽51に貯留された処理水W5は、例えば、飲料水などに用いられる。
【0086】
本実施形態の貯留槽51は、曝気装置52を備えている。曝気装置52は、貯留槽51の内部に設けられている。また、曝気装置52には、ブロア53が接続されている。
【0087】
曝気装置52は、処理水W5を曝気することが可能な装置である。
【0088】
図1に示す貯留槽51には、上述の第4の流路13が接続されている。
【0089】
[水処理方法]
逆浸透膜を用いて、地下水を飲料化する際に、目標水(処理水)の水質を以下のように調整することが好ましい。
処理水の遊離炭酸濃度は5mg/L未満であることが好ましく、3mg/L未満であることがより好ましい。
処理水のpH値は、6.0以上であることが好ましく、8.6以下であることが好ましく、8.2以下であることがより好ましい。
処理水の腐食性(ランゲリア指数:LSI)は、-1.3以上であることが好ましく、-1.2以上であることがより好ましく、-1以上であることがさらに好ましい。
処理水の遊離炭酸濃度(二酸化炭素として)は、5未満であることが好ましく、3未満であることがより好ましい。
以下、上述の水処理システム1を用いた水処理方法について、図3に基づき説明する。図3は、第1実施形態の水処理方法の各工程を示すフローチャートである。なお、本実施形態の水処理方法で得られる処理水W5は、飲料水として用いられるものとする。
【0090】
まず、地下水や河川水などの原水W1を、水処理システム1に供給する(ステップS1)。
【0091】
次に、原水W1のアンモニア濃度、金属イオン濃度、pH、遊離炭酸濃度および硫酸イオン濃度からなる群から選ばれる少なくとも一種を測定装置63により測定する(ステップS2)。ステップS2で得られたデータは制御部40に出力される。
【0092】
次に、ステップS2で得られた結果に基づいて、制御部40にて原水W1の遊離炭酸の濃度が25mg/L以下、かつ、pHが4.0以上7.0未満か否か(判定A1)判定する(ステップS3)。原水W1における遊離炭酸の所望の濃度範囲は、処理水W5の目標水質と、後段の処理性能とに応じて定められる。
【0093】
次に、ステップS3において、制御部40が、原水W1の遊離炭酸の濃度が所望の濃度範囲よりも低いと判定した場合(ステップS3:NO)、制御部40がpH調整手段35を駆動させる。具体的に、前処理槽61にて、pH調整手段35により原水W1に酸を添加して、供給水W2のpHを酸性側とする(ステップS32)。
【0094】
図2に示すように、原水W1のpHを酸性側にすることで、重炭酸イオンの濃度が減少し、遊離炭酸の濃度が上昇する。遊離炭酸は、逆浸透膜モジュール21の逆浸透膜を透過しやすいことから、酸性条件下で次のステップS4を行うことにより、脱塩水W3における遊離炭酸の濃度を上昇させることができる。
【0095】
また、ステップS32において硫酸を用いる場合、2価のイオンである硫酸イオンは、逆浸透膜モジュール21の逆浸透膜で捕捉されやすいことから、次のステップS4で得られる脱塩水W3中に硫酸イオンが残存しにくい。そのため、本実施形態の水処理方法によれば、処理水W5における硫酸イオンの水質基準を満たしやすい。
【0096】
ここで、遊離炭酸の濃度から図2のグラフを用いることで、重炭酸イオンの濃度を算出することができる。一つの側面として、ステップS3では、制御部40にて原水W1の重炭酸イオンの濃度が所望の濃度範囲を満たしているか否か判定する。制御部40が、原水W1の重炭酸イオンの濃度が所望の濃度範囲よりも高く、もしくはpHが高いと判定した場合(ステップS3:NO)、制御部40が、pH調整手段35および曝気装置36を駆動させる。具体的に、前処理槽61にて、pH調整手段35および曝気装置36を用いて、酸性条件下で原水W1を曝気し、脱炭酸処理する(ステップS33)。原水W1に対して脱炭酸処理することにより、原水W1における全炭酸の濃度を低くできる。その結果、原水W1の重炭酸イオンの濃度を低くできる。原水W1における重炭酸イオンの所望の濃度範囲は、処理水W5の目標水質と、後段の処理性能とに応じて定められる。
【0097】
次に、脱塩処理部20の逆浸透膜モジュール21に供給された供給水W2を、逆浸透膜を用いて、脱塩処理する(ステップS4)。ステップS4の後、得られた脱塩水W3は第2の流路23を流通する。
【0098】
次に、脱塩水W3のpH、遊離炭酸濃度および硫酸イオン濃度からなる群から選ばれる少なくとも一種を測定装置24により測定すると共に、調整水W4のpH、遊離炭酸濃度および硫酸イオン濃度からなる群から選ばれる少なくとも一種を測定装置17により測定する(ステップS5)。ステップS5で得られたデータは制御部40に出力される。
【0099】
次に、ステップS5で得られた結果のうち、調整水W4のpHの結果に基づいて、制御部40にて調整水W4が上記(a)を満たしているか否か(判定A2)判定する(ステップS6)。
【0100】
ステップS6において、制御部40が、調整水W4が上記(a)を満たしていないと判定した場合(ステップS6:NO)、pH調整手段31を駆動させる。具体的に、調整水W4のpHが4.0以上7.0未満となるように、pH調整手段31を用いて、調整槽16にて、脱塩水W3に酸またはアルカリを混合する(ステップS61)。ステップS61においては、必要に応じて、脱塩水W3のpH、遊離炭酸濃度および硫酸イオン濃度からなる群から選ばれる少なくとも一種のデータに基づいてpH調整手段31を制御してもよい。
【0101】
一方、ステップS6において、制御部40が、調整水W4が上記(a)を満たしていると判定した場合(ステップS6:YES)、ステップS5で得られた結果のうち、調整水W4における遊離炭酸の濃度の結果に基づいて、調整水W4が上記(b)を満たしているか否か(判定A3)判定する(ステップS7)。
【0102】
ステップS7において、制御部40が、調整水W4が上記(b)を満たしていないと判定した場合(ステップS7:NO)、調整水W4における遊離炭酸の濃度が25mg/Lを上回るか、または5mg/Lを下回るか(判定A31)判定する(ステップS71)。
【0103】
ステップS71において、制御部40が、調整水W4における遊離炭酸の濃度が25mg/Lを上回ると判定した場合(ステップS71:YES)、pH調整手段31および曝気装置32を駆動させる。具体的に、調整水W4における遊離炭酸の濃度が25mg/L以下となるように、pH調整手段31および曝気装置32を用いて、調整槽16にて、酸性条件下で脱塩水W3を曝気し、脱炭酸処理する(ステップS72)。ステップS72においては、必要に応じて、脱塩水W3のpH、遊離炭酸濃度および硫酸イオン濃度からなる群から選ばれる少なくとも一種のデータに基づいてpH調整手段31および曝気装置32を制御してもよい。
【0104】
図2に示すように、脱塩水W3のpHを酸性側にすることで、重炭酸イオンの濃度が減少し、遊離炭酸の濃度が上昇する。pHを酸性側とした脱塩水W3を曝気することで、遊離炭酸が二酸化炭素として空気中に放出され、調整水W4における遊離炭酸の濃度が減少する。したがって、脱塩水W3を酸性条件下で曝気することで、調整水W4における全炭酸の濃度が減少する。
【0105】
一方、ステップS71において、制御部40が、調整水W4における遊離炭酸の濃度が5mg/Lを下回ると判定した場合(ステップS71:NO)、二酸化炭素供給手段38を駆動させる。具体的に、調整水W4における遊離炭酸の濃度が5mg/L以上となるように、二酸化炭素供給手段38を用いて、調整槽16にて、脱塩水W3に二酸化炭素を供給する(ステップS73)。ステップS73においては、必要に応じて、脱塩水W3のpH、遊離炭酸濃度および硫酸イオン濃度からなる群から選ばれる少なくとも一種のデータに基づいて二酸化炭素供給手段38を制御してもよい。
【0106】
ステップS7に戻り、制御部40が上記(b)を満たしていると判定した場合(ステップS7:YES)、反応槽11にて、調整水W4を上述の炭酸塩粒子に接触させる(ステップS8)。
炭酸塩粒子に接触させる速度SVは、40(1/hr)以下であることが好ましく、30(1/hr)以下であることがより好ましく、20(1/hr)以下であることがさらに好ましい。SVが高すぎると、調整水W4と炭酸塩粒子に接触する時間が短いため、調整水W4と炭酸塩粒子との間の平衡反応(式(1))が不十分であり、処理水の遊離炭酸濃度が高く、腐蝕性が高くなる。
また、SVは、3(1/hr)以上であることが好ましく、5(1/hr)以上であることがより好ましく、10(1/hr)以上であることがさらに好ましい。SVが低すぎると、調整水W4と炭酸塩粒子に接触する時間が長いため、調整水W4と炭酸塩粒子との間の平衡反応(式(1))で生成された重炭酸(HCO )が多く、腐蝕性も高くなる。
【0107】
SVや、pHと遊離炭酸の濃度は、接触処理の効果に影響を与えるため、調製水W4の遊離炭酸濃度(ただし、炭酸カルシウムとして。)およびpHは、以下のように調整してもよい。
SVが10(1/hr)未満である場合:遊離炭酸の濃度が5mg/L超25mg/L以下、かつ、pHが4.0以上7.0未満。
SVが10以上30(1/hr)未満である場合:遊離炭酸の濃度が5mg/L超20mg/L未満、かつ、pHが5.5以上7.0以下。
SVが30以上40(1/hr)以下である場合:遊離炭酸の濃度が5mg/L超15mg/L以下、かつ、pHが6.0以上7.5未満。
【0108】
次に、測定装置15を用いて、ステップS8で得られる処理水W5のpH、遊離炭酸濃度および硫酸イオン濃度からなる群から選ばれる少なくとも一種を測定する(ステップS9)。
【0109】
次に、制御部40が、測定装置15での測定の結果に基づいて、処理水W5の硫酸イオンの濃度が飲料水に適した硫酸イオンの濃度の下限値以上であるか否か(判定A4)判定する(ステップS10)。
【0110】
ステップS10において、制御部40が処理水W5の硫酸イオンの濃度が飲料水に適した硫酸イオンの濃度の下限値を満たしていないと判定した場合(ステップS10:NO)、処理水W5に上述の硫酸、硫酸塩、亜硫酸塩および重亜硫酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種を添加する(ステップS101)。これにより、硫酸イオンの濃度を上昇させ、飲料水に適した処理水W5を得ることができる。
【0111】
一方、ステップS10において、制御部40が処理水W5の硫酸イオンの濃度が飲料水に適した硫酸イオンの濃度の下限値以上であると判定した場合(ステップS10:YES)、ステップS8で得られる処理水W5を貯留槽51にて貯留する。
【0112】
なお、ステップ4およびステップ5において、調整水W4が上記(a)および上記(b)を満たしていると判定した場合(ステップS6:YES、ステップS7:YES)、ステップS5で得られた脱塩水W3を、そのままステップS8の調整水W4として用いることができる。
【0113】
なお、本実施形態の水処理方法では、ステップS33の代わりに、pH調整手段35により原水W1にアルカリを添加して、供給水W2のpHをアルカリ性側としてもよい(ステップS31)。
【0114】
図2に示すように、供給水W2のpHをアルカリ性側にすることで、炭酸イオンの濃度が上昇する。2価のイオンである炭酸イオンは、逆浸透膜モジュール21の逆浸透膜で捕捉されやすいことから、アルカリ性条件下でステップS4を行うことにより、脱塩水W3における炭酸イオンの濃度を減少させることができる。したがって、アルカリ性条件下でステップS4を行うことにより、全炭酸の濃度が減少する。
【0115】
上述したように、調整水W4のpHは、脱塩水W3における重炭酸イオンの濃度と、脱塩水W3のpH調整の際に混合される酸(例えば、硫酸)またはアルカリの量と、によって制御される。1つの側面として、脱塩水W3における重炭酸イオンの濃度があまり高いと、脱塩水W3のpHを酸性側に調整するために混合する硫酸の量が多くなり、調整水W4における硫酸イオンの濃度が30mg/Lを超えることがある。
【0116】
しかし、調整水W4における硫酸イオンの濃度が30mg/Lを超えると、処理水W5中に硫酸イオンが多く残存し、処理水W5が水質基準を満たさないおそれがある。そのため、本実施形態の水処理システム1においては、調整水W4における硫酸イオンの濃度が30mg/L以下であることが好ましい。
【0117】
これに対し、本実施形態の水処理方法では、調整水W4における硫酸イオンの濃度が30mg/Lを超える場合に、原水W1に対して脱炭酸処理(ステップS33)することにより、脱塩水W3における全炭酸の濃度を低くする。その結果、本実施形態の水処理方法では、重炭酸イオンの濃度を低くすることができる。これにより、処理水W5における硫酸イオンの濃度を水質基準以下に制御することができる。
【0118】
別の側面として、上述したように、調整水W4と炭酸塩粒子との反応を効率的に進行させるためには、調整水W4における遊離炭酸の濃度が5mg/L以上となるように制御することが好ましい。ステップS71において、制御部40が調整水W4における遊離炭酸の濃度が5mg/Lを下回ると判定した場合(ステップS71:NO)、ステップS1とステップS4との間に戻り、制御部40がpH調整手段35を駆動させる。具体的に、前処理槽61にて、pH調整手段35により原水W1に酸を添加して、供給水W2のpHを酸性側とする(ステップS32)。この供給水W2に対してステップS4を行うことにより、脱塩水W3における遊離炭酸の濃度を上昇させることができる。
【0119】
第1実施形態によれば、配管や設備の腐食を容易に抑制することができる水処理方法および水処理システムが提供される。また、第1実施形態によれば、処理水W5における硫酸イオンの水質基準を満たしやすい。
【0120】
<第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態における水処理方法および水処理システムについて、図面に基づき説明する。
【0121】
図4は、第2実施形態の水処理システム2の概略構成を示す図である。図4に示すように、本実施形態の水処理システム2は、接触処理部10と、脱塩処理部20と、制御部40と、貯留槽51と、第1調整部160と、第3調整部340と、を有している。
【0122】
すなわち、第2実施形態の水処理システム2は、第2調整部60を備えていない。つまり、本実施形態では、ステップS1で供給した原水W1を、そのまま次のステップS4の供給水W2として用いることを想定している。
【0123】
以下、上述の水処理システム2を用いた水処理方法について、図5に基づき説明する。図5は、第2実施形態の水処理方法の各工程を示すフローチャートである。なお、本実施形態の水処理方法で得られる処理水W5は、飲料水として用いられるものとする。
【0124】
まず、地下水や河川水などの原水W1を、水処理システム1に供給する(ステップS1)。
【0125】
次に、脱塩処理部20の逆浸透膜モジュール21に供給された供給水W2(原水W1)を、逆浸透膜を用いて、脱塩処理する(ステップS4)。ステップS4の後、得られた脱塩水W3は第2の流路23を流通する。
【0126】
次に、脱塩水W3のpH、遊離炭酸濃度および硫酸イオン濃度からなる群から選ばれる少なくとも一種を測定装置24により測定すると共に、調整水W4のpH、遊離炭酸濃度および硫酸イオン濃度からなる群から選ばれる少なくとも一種を測定装置17により測定する(ステップS5)。ステップS5で得られたデータは制御部40に出力される。
【0127】
次に、ステップS5で得られた結果のうち、調整水W4のpHの結果に基づいて、制御部40にて調整水W4が上記(a)を満たしているか否か(判定A2)判定する(ステップS6)。
【0128】
ステップS6において、制御部40が、調整水W4が上記(a)を満たしていないと判定した場合(ステップS6:NO)、pH調整手段31を駆動させる。具体的に、調整水W4のpHが4.0以上7.0未満となるように、pH調整手段を用いて、調整槽16にて、脱塩水W3に酸またはアルカリを混合する(ステップS61)。
【0129】
一方、ステップS6において、制御部40が、調整水W4が上記(a)を満たしていると判定した場合(ステップS6:YES)、ステップS5で得られた結果のうち、調整水W4における遊離炭酸の濃度の結果に基づいて、調整水W4が上記(b)を満たしているか否か(判定A3)判定する(ステップS7)。
【0130】
ステップS7において、制御部40が、調整水W4が上記(b)を満たしていないと判定した場合(ステップS7:NO)、調整水W4における遊離炭酸の濃度が25mg/Lを上回るか、または5mg/Lを下回るか、(判定A31)判定する(ステップS71)。
【0131】
ステップS71において、制御部40が、調整水W4における遊離炭酸の濃度が25mg/Lを上回ると判定した場合(ステップS71:YES)、pH調整手段31および曝気装置32を駆動させる。具体的に、調整水W4における遊離炭酸の濃度が25mg/L以下となるように、pH調整手段31および曝気装置32を用いて、調整槽16にて、酸性条件下で脱塩水W3を曝気し、脱炭酸処理する(ステップS72)。
【0132】
一方、ステップS71において、制御部40が、調整水W4における遊離炭酸の濃度が5mg/Lを下回ると判定した場合(ステップS71:NO)、二酸化炭素供給手段38を駆動させる。具体的に、調整水W4における遊離炭酸の濃度が5mg/L以上となるように、二酸化炭素供給手段38を用いて、調整槽16にて、脱塩水W3に二酸化炭素を供給する(ステップS73)。
【0133】
ステップS7に戻り、制御部40が上記(b)を満たしていると判定した場合(ステップS7:YES)、反応槽11にて、調整水W4を上述の炭酸塩粒子に接触させる(ステップS8)。
【0134】
次に、測定装置15を用いて、ステップS8で得られる処理水W5の硫酸イオンの濃度を測定する(ステップS9)。
【0135】
次に、制御部40が、測定装置15での測定の結果に基づいて、処理水W5の硫酸イオンの濃度が飲料水に適した硫酸イオンの濃度の下限値以上であるか否か(判定A3)判定する(ステップS10)。
【0136】
ステップS10において、制御部40が処理水W5の硫酸イオンの濃度が飲料水に適した硫酸イオンの濃度の下限値を満たしていないと判定した場合(ステップS10:NO)、処理水W5に上述の硫酸、硫酸塩、亜硫酸塩および重亜硫酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種を混合する(ステップS101)。これにより、硫酸イオンの濃度を上昇させ、飲料水に適した処理水W5を得ることができる。
【0137】
一方、ステップS10において、制御部40が処理水W5の硫酸イオンの濃度が飲料水に適した硫酸イオンの濃度の下限値以上であると判定した場合(ステップS10:YES)、ステップS8で得られる処理水W5を貯留槽51にて貯留する。
【0138】
第2実施形態によれば、配管や設備の腐食を容易に抑制することができる水処理方法および水処理システムが提供される。また、原水W1をそのまま供給水W2として使用できることが予め分かっている場合には、第2実施形態の水処理システムを適用することで、装置構成を簡略化できる。
【0139】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【0140】
例えば、上記実施形態の水処理システムにおいて、反応槽11の下部に第4の流路13の端部が接続され、反応槽11の上部に第3の流路12の端部が接続されていてもよい。この場合、反応槽11の内部を調整水W4が下向流で流れる。
【0141】
また、例えば上記実施形態の水処理システムにおいて、調整槽16と前処理槽61とのいずれか一方または両方を省略してもよい。調整槽16を省略する場合、反応槽11と逆浸透膜モジュール21との間で脱塩水W3のpHおよび遊離炭酸濃度を調整する。また、前処理槽61を省略する場合、逆浸透膜モジュール21までに原水W1のpHおよび遊離炭酸濃度を調整する。
【0142】
また、第2調整部60と第3調整部340とのいずれか一方または両方を省略してもよい。すなわち、上記実施形態の水処理方法において、第2調整工程と第3調整工程とのいずれか一方または両方を省略してもよい。
【実施例
【0143】
以下、実施例により、本発明の接触処理について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0144】
実施例A1
図1に示す水処理装置1を用いて、調製水W4を接触処理部と接触する際の接触速度をSV=5(1/hr)として設定したうえ、調製水W4の遊離炭酸濃度を14.70mg/L(ただし、炭酸カルシウムとして。)、pHを6.50として、調製水W4を接触処理部と接触させて処理した。
調製水W4の接触処理により得られた処理水W5の水質を表1に示す。
【0145】
実施例A2~A6、比較例A1~A2
調製水W4の遊離炭酸濃度、およびpHを、表1に示すように調整したほかは、実施例A1と同様に調製水W4を接触処理した。
調製水W4の接触処理により得られた処理水W5の水質を表1に示す。
【0146】
実施例B1~B7、比較例B1~B2
調製水W4を接触処理部と接触する際の接触速度をSV=10(1/hr)とし、調製水W4の遊離炭酸濃度、およびpHを、表2に示すように調整したほかは、実施例A1と同様に調製水W4を接触処理した。
調製水W4の接触処理により得られた処理水W5の水質を表2に示す。
【0147】
実施例C1、比較例C1~C8
調製水W4を接触処理部と接触する際の接触速度をSV=30(1/hr)とし、調製水W4の遊離炭酸濃度、およびpHを、表3に示すように調整したほかは、実施例A1と同様に調製水W4を接触処理した。
調製水W4の接触処理により得られた処理水W5の水質を表3に示す。
【0148】
なお、表中、「処理水(W5)水質」において、各指標は以下を意味する。
【0149】
<pH>
調製水W4の接触処理により得られた処理水W5のpHを常法に従って測定した。
【0150】
<M-アルカリ>
処理水W5におけるアルカリ度は、以下の方法で測定した。
処理水W5を、0.01mol/Lの硫酸溶液でpH4.8になるまで滴定し、以下の式に基づいて、M-アルカリを算出した。
M-アルカリ(単位:mg/L、CaCOとして)=
A1×(1000/S)×V ・・・(2)
なお、式(2)における記号は以下の意味を示す。
A1:終点までの0.01mol/Lの硫酸溶液の滴定量(mL)。
1000:単位換算係数(mL/L)。
S:試料採取量(mL)。
V:0.01mol/Lの硫酸溶液1mLの炭酸カルシウム相当量(mg)。
本発明においては、処理水W5のpHを7.0未満として調整するため、この領域においてM-アルカリ度は、重炭酸濃度と等しい。
【0151】
<遊離炭酸濃度>
処理水W5における遊離炭酸濃度を、二酸化炭素の量として常法に従って測定した。
【0152】
<Ca>
処理水W5に含まれるカルシウムイオン濃度を、イオンクロマトグラフ陽イオン一斉分析法に従って測定した。
【0153】
<蒸残値>
処理水W5を加熱し、水を含む揮発成分を蒸発させた後に残る蒸発乾固残渣の量を、処理水W5の1L当たりの量で表したものである。
【0154】
<水温>
処理水W5の水質の各指標を測定した際の水温を示す。
【0155】
【表1】
【0156】
【表2】
【0157】
【表3】
【符号の説明】
【0158】
1,2…水処理システム、10…接触処理部、11…反応槽、15,17,24,63…測定装置、16…調整槽、20…脱塩処理部、21…逆浸透膜モジュール、31,35…pH調整手段、32,36…曝気装置、34…硫酸イオン混合手段、38…二酸化炭素供給手段、40…制御部、51…貯留槽、61…前処理槽、W1…原水、W2…供給水、W3…脱塩水、W4…調整水、W5…処理水
図1
図2
図3
図4
図5