(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】水栓用ハンドル
(51)【国際特許分類】
E03C 1/042 20060101AFI20220613BHJP
【FI】
E03C1/042 C
(21)【出願番号】P 2018181751
(22)【出願日】2018-09-27
【審査請求日】2021-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000144072
【氏名又は名称】SANEI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 隆裕
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-184145(JP,A)
【文献】特開2001-220781(JP,A)
【文献】特開2000-28017(JP,A)
【文献】特開2018-62800(JP,A)
【文献】特開2000-220176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/042
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水栓本体に軸回転可能なように取り付けられるハンドル部と、該ハンドル部から径方向に張出し状に延びるレバー部と、を有する水栓用ハンドルであって、
前記ハンドル部及び前記レバー部の外観形状を成す表層部材と、
該表層部材と積層状に一体成形される積層部材と、を有し、
前記表層部材が、前記ハンドル部の外観形状を成すハンドル表層部と、前記レバー部の外観形状を成すレバー表層部と、を有し、
前記積層部材が、前記ハンドル表層部と積層状に一体成形されるハンドル積層部と、前記レバー表層部と積層状に一体成形されるレバー積層部と、前記ハンドル積層部と前記レバー積層部とをシームレスに繋ぐ繋ぎ積層部と、を有する水栓用ハンドル。
【請求項2】
請求項1に記載の水栓用ハンドルであって、
前記積層部材が、前記表層部材よりも剛性及び/又は強度の高い材料から成る水栓用ハンドル。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の水栓用ハンドルにおいて、
前記レバー積層部が、前記レバー表層部内に埋設されるようにインサート成形される水栓用ハンドル。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の水栓用ハンドルであって、
前記レバー表層部と前記レバー積層部とが、互いに平板積層状に一体成形される水栓用ハンドル。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の水栓用ハンドルであって、
更に、前記積層部材が、前記レバー積層部と前記ハンドル積層部との繋ぎの角部に肉盛り状のリブを有する水栓用ハンドル。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の水栓用ハンドルであって、
前記ハンドル積層部が、前記ハンドル表層部の裏側に積層されて前記ハンドル部の前記水栓本体に取り付けられる内周側の取付面を成す水栓用ハンドル。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の水栓用ハンドルであって、
当該水栓用ハンドルが、前記水栓本体に対して、取付方向に延びる中心軸線回りの回転による温調操作と、前記中心軸線とは交差する交差軸線回りの起倒回転による吐止水の切り換え操作と、が可能なように取り付けられるシングルレバーハンドルとされる水栓用ハンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水栓用ハンドルに関する。詳しくは、水栓本体に軸回転可能なように取り付けられるハンドル部を有する水栓用ハンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水栓用ハンドルにおいて、ハンドル部の樹脂成形に伴う引け(成形収縮)の発生を抑えるために、ハンドル部を内外2部品に分けて構成したものが知られている(特許文献1)。すなわち、ハンドル部の厚肉な部分を2部品に分けて構成することで、個々の肉厚を薄くすることができ、引けの発生を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、ハンドル部の部品点数が増大すると共に、2部品をトルク伝達が適切に行えるように組合わせるための構造が複雑となる。本発明は、上記問題を解決するものとして創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、水栓用ハンドルを合理的な構成により仕上がり良く成形することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の水栓用ハンドルは次の手段をとる。
【0006】
すなわち、本発明の水栓用ハンドルは、水栓本体に軸回転可能なように取り付けられるハンドル部と、ハンドル部から径方向に張出し状に延びるレバー部と、を有する水栓用ハンドルである。水栓用ハンドルは、ハンドル部及びレバー部の外観形状を成す表層部材と、表層部材と積層状に一体成形される積層部材と、を有する。表層部材が、ハンドル部の外観形状を成すハンドル表層部と、レバー部の外観形状を成すレバー表層部と、を有する。積層部材が、ハンドル表層部と積層状に一体成形されるハンドル積層部と、レバー表層部と積層状に一体成形されるレバー積層部と、ハンドル積層部とレバー積層部とをシームレスに繋ぐ繋ぎ積層部と、を有する。
【0007】
上記構成によれば、ハンドル部及びレバー部を表層部材と積層部材とから成る多層構造とすることで、個々の層の肉厚を薄くして、成形収縮に伴う引けの発生を抑えることができる。なおかつ、上記多層構造を一体成形により形成することで、各層を合理的に強固に一体化することができる。また、積層部材がハンドル積層部とレバー積層部とをシームレスに繋ぐ繋ぎ積層部を有することで、表層部材に部分的な厚肉部が形成されにくくなる。それにより、水栓用ハンドルを仕上がり良く成形することができる。
【0008】
また、本発明の水栓用ハンドルは、更に次のように構成されていてもよい。積層部材が、表層部材よりも剛性及び/又は強度の高い材料から成る。
【0009】
上記構成によれば、ハンドル部から張出し状に延びるレバー部を備えた水栓用ハンドルの剛性及び/又は強度を合理的に高めることができる。また、表層部材を積層部材と一体成形する際に、積層部材を成形材料の射出圧力に対して撓ませにくくすることができる。それにより、水栓用ハンドルをより仕上がり良く成形することができる。
【0010】
また、本発明の水栓用ハンドルは、更に次のように構成されていてもよい。レバー積層部が、レバー表層部内に埋設されるようにインサート成形される。
【0011】
上記構成によれば、レバー部をより見栄え良く仕上げることができる。また、レバー表層部とレバー積層部との接合強度をより高めることができる。
【0012】
また、本発明の水栓用ハンドルは、更に次のように構成されていてもよい。レバー表層部とレバー積層部とが、互いに平板積層状に一体成形される。
【0013】
上記構成によれば、レバー表層部の天板形状を、平板状に見栄え良く仕上げることができる。
【0014】
また、本発明の水栓用ハンドルは、更に次のように構成されていてもよい。更に、積層部材が、レバー積層部とハンドル積層部との繋ぎの角部に肉盛り状のリブを有する。
【0015】
上記構成によれば、ハンドル部から張出し状に延びるレバー部の曲げ剛性を適切に高めることができる。また、表層部材を積層部材と一体成形する際に、積層部材を成形材料の射出圧力に対して撓ませにくくすることができる。それにより、水栓用ハンドルをより仕上がり良く成形することができる。
【0016】
また、本発明の水栓用ハンドルは、更に次のように構成されていてもよい。ハンドル積層部が、ハンドル表層部の裏側に積層されてハンドル部の水栓本体に取り付けられる内周側の取付面を成す。
【0017】
上記構成によれば、ハンドル積層部のハンドル表層部とは別個に成形される構成を利用して、水栓本体に取り付けられる取付面の成形自由度を高めることができる。
【0018】
また、本発明の水栓用ハンドルは、更に次のように構成されていてもよい。水栓用ハンドルが、水栓本体に対して、取付方向に延びる中心軸線回りの回転による温調操作と、上記中心軸線とは交差する交差軸線回りの起倒回転による吐止水の切り換え操作と、が可能なように取り付けられるシングルレバーハンドルとされる。
【0019】
上記構成によれば、シングルレバーハンドルのようにレバー部が長尺状に延び、かつ、広い天板面を有する構成に対して、特に効果的にレバー部を仕上がり良く成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1の実施形態の水栓用ハンドルの概略構成を表した斜視図である。
【
図2】水栓用ハンドルを水栓本体から外した分解斜視図である。
【
図7】水栓用ハンドルを一体成形する工程を表した要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0022】
《第1の実施形態》
始めに、本発明の第1の実施形態に係る水栓用ハンドル(レバーハンドル10)が適用された混合水栓1の構成について、
図1~
図7を用いて説明する。なお、以下の説明において、前後上下左右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。
【0023】
図1に示すように、本実施形態に係る混合水栓1は、シンクの天板T上に設置される、いわゆる台付きタイプの水栓金具として構成されている。上記混合水栓1は、天板Tの下側から供給される湯と水とを内部で混合して吐出することのできる機能を備える。具体的には、混合水栓1は、上記供給される湯水の混合割合を調節する温調機能と、混合した湯水の吐水・止水を切り替える切替機能と、吐出する湯水の吐出量を調節する吐出量の調節機能と、を備える。
【0024】
上記温調機能と吐止水の切替機能と吐出量の調節機能とは、それぞれ、水栓本体2の向かって右側の側部に取り付けられた1本のレバーハンドル10によって操作されるようになっている。同レバーハンドル10は、
図2~
図3に示すように、水栓本体2に装着されたカートリッジ4から右側へ延びるレバー軸4Aに右側から差し込まれて一体に取り付けられている。上記レバー軸4Aは、カートリッジ4に対して、その中心軸線A1の回りに回転できるように連結されている。それにより、上記レバー軸4Aに取り付けられるレバーハンドル10も、
図1に示すように、水栓本体2に対して、上記レバー軸4Aの中心軸線A1の回りに回転操作が行える状態に連結されている。
【0025】
上記レバー軸4Aは、カートリッジ4に対して、更に上記中心軸線A1とは直交する交差軸線A2の回りにも回転可能なように連結されている。それにより、レバーハンドル10も、上記水栓本体2に対して、交差軸線A2の回りにも回転操作が行える状態に連結されている。
【0026】
上記混合水栓1は、使用者がレバーハンドル10を上記中心軸線A1の回りの所望の回転位置に合わせることにより、水栓本体2内のカートリッジ4が操作されて、水栓本体2の内部で混合される湯水の混合割合が回転位置に応じた設定温度となるように調節されるようになっている。また、上記混合水栓1は、使用者がレバーハンドル10を図示された所定の止水位置P1から交差軸線A2の回りに右側へと倒す形に回転させることにより、その回転移動量に応じた量の湯水を、水栓本体2から上向きに延びる逆J字形状の吐出管3の吐出口3Aから吐出するようになっている。
【0027】
具体的には、上記混合水栓1は、レバーハンドル10が
図1の実線で示す止水位置P1、すなわちレバー部10Bが鉛直上向きとなる回転位置から、中心軸線A1の回りに後側(図示奥側)へ回されることにより、その回転移動量に応じて、水栓本体2の内部で混合される湯の混合割合が漸次増大していくように調節される。一方、上記レバーハンドル10の
図1の実線で示す止水位置P1から中心軸線A1の回りに前側(図示手前側)へ回される回転領域は、その回転位置によらず、水のみが吐出される領域となっている。
【0028】
上記レバーハンドル10の中心軸線A1の回りの回転移動は、カートリッジ4に設けられた不図示の回転規制構造により、
図1の仮想線で示す湯側調節位置P3と水側調節位置P4との間の可動範囲内に規制されるようになっている。そして、上記レバーハンドル10が所望の回転位置に合わされたところから右側へ倒される形に回されることにより、上記回転位置に応じて調節された所定温度の湯水が吐出口3Aから吐出される。上記レバーハンドル10の交差軸線A2の回りの回転移動は、カートリッジ4に設けられた不図示の回転規制構造により、
図1の実線で示す止水位置P1と仮想線で示す吐水位置P2との間の可動範囲内に規制されるようになっている。
【0029】
上記レバーハンドル10は、
図2~
図3に示すように、上記カートリッジ4のレバー軸4Aに横から差し込まれて取り付けられる略有天円筒形状のハンドル部10Aと、ハンドル部10Aから径方向に張出し状に延びる略平板形状のレバー部10Bと、を有する形状とされている。上記レバー部10Bは、
図4に示すように、ハンドル部10Aの直径と略同一の板幅でハンドル部10Aの天板面10Aaと面一状の形となって径方向に張り出す形状とされている。詳しくは、上記レバー部10Bは、
図5に示すように、ハンドル部10Aからハンドル部10Aの直径よりも長く径方向に張出し状に延びる形状とされている。上記レバー部10Bの天板面10Baと、ハンドル部10Aの天板面10Aaとは、互いに連続した面一状の平坦面を成す形に形成されている。
【0030】
上記レバーハンドル10は、
図5~
図6に示すように、ABS樹脂製の表層部材11と、同表層部材11よりも比強度の高いガラス繊維強化ナイロン樹脂(ガラス繊維45%強化)製の積層部材12と、が互いに積層状に一体成形された多層構造により形成されている。具体的には、表層部材11は、
図7に示すように、積層部材12の成形後に、同積層部材12を成形型内にセットして、同積層部材12の周囲に成形材料が積層状に充填される形に射出成形されて形成されている。上記成形により、表層部材11は、積層部材12の周囲に広く一体的に接着された形となって形成されている。
【0031】
上記表層部材11は、
図5に示すように、ハンドル部10Aの外観形状を成す略有天円筒形状のハンドル表層部11Aと、レバー部10Bの外観形状を成す略平板形状のレバー表層部11Bと、をシームレスに一体的に有する形に形成されている。また、積層部材12は、上記ハンドル表層部11Aと積層状に一体成形される略有天円筒形状のハンドル積層部12Aと、上記レバー表層部11Bと積層状に一体成形される略平板形状のレバー積層部12Bと、上記ハンドル積層部12Aとレバー積層部12Bとをシームレスに繋ぐ繋ぎ積層部12Cと、を一体的に有する形に形成されている。
【0032】
上記積層部材12のハンドル積層部12Aは、ハンドル表層部11Aの裏側に積層されて、上記ハンドル部10Aのレバー軸4Aに差し込まれて取り付けられる内周側の凹形状の取付面10Abを成す構成とされている。すなわち、ハンドル部10Aは、その略有天円筒形状の外筒部分を表層部材11のハンドル表層部11Aが成し、内筒部分を積層部材12のハンドル積層部12Aが成す、内外2重の積層構造に形成されている。上記構成により、ABS樹脂から成る表層部材11のハンドル表層部11Aによって、ハンドル部10Aが見栄えの良い外観形状に形成されている。
【0033】
なおかつ、ハンドル部10Aは、そのガラス繊維強化ナイロン樹脂から成る比強度の高い積層部材12のハンドル積層部12Aによって、レバー軸4Aに対する高い取り付け強度を備えた構成とされている。更に、上記ハンドル部10Aは、その外周面と内周面(取付面10Ab)との間の大きな肉厚部分が、上記ハンドル表層部11Aとハンドル積層部12Aとから成る多層構造から成ることにより、個々の層の肉厚が薄くされて、射出成形後の成形収縮に伴う引けが発生しにくい構成とされている。
【0034】
詳しくは、上記ハンドル部10Aを構成するハンドル表層部11A及びハンドル積層部12Aは、それぞれ、ハンドル部10Aの周壁部や天板部等の一般面部を成す部分の肉厚が互いに略同一かつ略均一となる形に形成されている。上記構成により、ハンドル部10Aを構成するハンドル表層部11A及びハンドル積層部12Aは、それぞれ、部分的に厚肉化されて引けの発生しやすい構成とされることなく、全体が引けの発生しにくい構成とされている。
【0035】
上記ハンドル積層部12Aには、更に、その内周側の取付面10Abにレバー軸4Aが差し込まれた後、ハンドル部10Aをレバー軸4Aに固定するために、ハンドル部10Aの外側(図示下側)から締結用のビスBが螺着される雌ねじの付いた丸孔形状の締結面10Acが形成されている。上記のように締結面10Acがガラス繊維強化ナイロン樹脂から成る比強度の高い積層部材12のハンドル積層部12Aに形成されていることで、ハンドル部10Aがレバー軸4Aに対して高い取り付け強度で固定されるようになっている。
【0036】
上記積層部材12のレバー積層部12Bは、
図5~
図6に示すように、その全周がレバー表層部11Bによって被覆されるようにレバー表層部11B内に埋め込まれた形に積層されている。上記構成により、ABS樹脂から成る表層部材11のレバー表層部11Bによって、レバー部10Bが全周面に亘って見栄えの良い外観形状に形成されている。なおかつ、レバー部10Bは、そのガラス繊維強化ナイロン樹脂から成る比強度の高い積層部材12のレバー積層部12Bによって、強度及び剛性が高められた構成とされている。更に、上記レバー部10Bは、その略平板形状の肉厚部分が、表裏2層のレバー表層部11Bの間にレバー積層部12Bが介在する多層構造から成ることにより、個々の層の肉厚が薄くされて、射出成形後の成形収縮に伴う引けが発生しにくい構成とされている。
【0037】
詳しくは、上記レバー積層部12Bは、肉厚が略均一の略平板形状に形成されている。上記レバー積層部12Bの略平板形状に延びる周囲面は、裏側に向かってRの付いた湾曲面形状に丸められている。そして、上記レバー積層部12Bの全周に被覆される形に積層されるレバー表層部11Bは、その構成層の肉厚が、レバー積層部12Bの肉厚(板厚)と略同一かつ略均一となる形に形成されている。上記構成により、レバー部10Bを構成するレバー表層部11B及びレバー積層部12Bは、それぞれ、部分的に厚肉化されて引けの発生しやすい構成とされることなく、全体が引けの発生しにくい構成とされている。
【0038】
上記レバー積層部12Bの天板面と、ハンドル積層部12Aの天板面とは、互いに連続した面一状の平坦面を成す形に形成されている。そして、上記レバー積層部12Bとハンドル積層部12Aとの繋ぎの内角部には、同角部を面取り状に肉盛りする形に張り出すリブ12Dが形成されている。上記リブ12Dは、
図4に示すように、レバー積層部12Bの板幅方向に2つ、横並び状に隣り合う形に形成されている。上記リブ12Dにより、
図5に示すように、ハンドル積層部12Aから張出し状に延びるレバー積層部12Bの曲げ剛性や強度が適切に高められる。それにより、レバー部10Bに板厚方向に曲げられるような力が掛けられて使用されるレバーハンドル10の使用荷重に対する構造強度を適切に高めることができる。
【0039】
また、
図7に示すように、表層部材11を積層部材12と一体成形する際に、成形型内にセットした積層部材12のレバー積層部12Bが、その平板形状の表裏面上を流れる各成形材料の流れ速度(射出圧力)の違いによって板厚方向に反られるような曲げの負荷(図示黒塗りの矢印参照)を受けても、上記リブ12Dによる補強によって板厚方向に大きく曲げ撓まされないようになっている。それにより、レバー部10Bとハンドル部10Aの両天板面10Ba,10Aaが互いに連続した面一状の広い平坦面を持つ形とされたレバーハンドル10を、引けや変形等の成形不具合を生じさせることなく、仕上がり良く成形することができる。
【0040】
なお、本実施形態のように積層部材12が表層部材11によって外部から見えない形に被覆される構成の場合には、積層部材12に多少の引けが生じても、表層部材11によってその引けの厚みを吸収して、レバーハンドル10を仕上がり良く成形することができる。したがって、積層部材12の厚みを表層部材11よりも厚くして、レバーハンドル10の構造強度を効果的に高めるような構成を簡便に得ることができる。
【0041】
以上をまとめると、第1の実施形態に係るレバーハンドル10は次のような構成となっている。すなわち、水栓本体(2)に軸回転可能なように取り付けられるハンドル部(10A)と、ハンドル部(10A)から径方向に張出し状に延びるレバー部(10B)と、を有する水栓用ハンドル(10)である。水栓用ハンドル(10)は、ハンドル部(10A)及びレバー部(10B)の外観形状を成す表層部材(11)と、表層部材(11)と積層状に一体成形される積層部材(12)と、を有する。
【0042】
表層部材(11)が、ハンドル部(10A)の外観形状を成すハンドル表層部(11A)と、レバー部(10B)の外観形状を成すレバー表層部(11B)と、を有する。積層部材(12)が、ハンドル表層部(11A)と積層状に一体成形されるハンドル積層部(12A)と、レバー表層部(11B)と積層状に一体成形されるレバー積層部(12B)と、ハンドル積層部(12A)とレバー積層部(12B)とをシームレスに繋ぐ繋ぎ積層部(12C)と、を有する。
【0043】
上記構成によれば、ハンドル部(10A)及びレバー部(10B)を表層部材(11)と積層部材(12)とから成る多層構造とすることで、個々の層の肉厚を薄くして、成形収縮に伴う引けの発生を抑えることができる。なおかつ、上記多層構造を一体成形により形成することで、各層を合理的に強固に一体化することができる。また、積層部材(12)がハンドル積層部(12A)とレバー積層部(12B)とをシームレスに繋ぐ繋ぎ積層部(12C)を有することで、表層部材(11)に部分的な厚肉部が形成されにくくなる。それにより、水栓用ハンドル(10)を仕上がり良く成形することができる。
【0044】
また、積層部材(12)が、表層部材(11)よりも剛性及び/又は強度の高い材料から成る。上記構成によれば、ハンドル部(10A)から張出し状に延びるレバー部(10B)を備えた水栓用ハンドル(10)の剛性及び/又は強度を合理的に高めることができる。また、表層部材(11)を積層部材(12)と一体成形する際に、積層部材(12)を成形材料の射出圧力に対して撓ませにくくすることができる。それにより、水栓用ハンドル(10)をより仕上がり良く成形することができる。
【0045】
また、レバー積層部(12B)が、レバー表層部(11B)内に埋設されるようにインサート成形される。上記構成によれば、レバー部(10B)をより見栄え良く仕上げることができる。また、レバー表層部(11B)とレバー積層部(12B)との接合強度をより高めることができる。
【0046】
また、レバー表層部(11B)とレバー積層部(12B)とが、互いに平板積層状に一体成形される。上記構成によれば、レバー表層部(11B)の天板形状を、平板状に見栄え良く仕上げることができる。
【0047】
また、更に、積層部材(12)が、レバー積層部(12B)とハンドル積層部(12A)との繋ぎの角部に肉盛り状のリブ(12D)を有する。上記構成によれば、ハンドル部(10A)から張出し状に延びるレバー部(10B)の曲げ剛性を適切に高めることができる。また、表層部材(11)を積層部材(12)と一体成形する際に、積層部材(12)を成形材料の射出圧力に対して撓ませにくくすることができる。それにより、水栓用ハンドル(10)をより仕上がり良く成形することができる。
【0048】
また、ハンドル積層部(12A)が、ハンドル表層部(11A)の裏側に積層されてハンドル部(10A)の水栓本体(2)に取り付けられる内周側の取付面(10Ab)を成す。上記構成によれば、ハンドル積層部(12A)のハンドル表層部(11A)とは別個に成形される構成を利用して、水栓本体(2)に取り付けられる取付面(10Ab)の成形自由度を高めることができる。
【0049】
また、水栓用ハンドル(10)が、水栓本体(2)に対して、取付方向に延びる中心軸線(A1)回りの回転による温調操作と、上記中心軸線(A1)とは交差する交差軸線(A2)回りの起倒回転による吐止水の切り換え操作と、が可能なように取り付けられるシングルレバーハンドルとされる。上記構成によれば、シングルレバーハンドルのようにレバー部(10B)が長尺状に延び、かつ、広い天板面(10Aa,10Ba)を有する構成に対して、特に効果的にレバー部(10B)を仕上がり良く成形することができる。
【0050】
《その他の実施形態について》
以上、本発明の実施形態を1つの実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態のほか、以下に示す様々な形態で実施することができるものである。
【0051】
1.本発明の水栓用ハンドルは、上記実施形態で示したようなシングルレバーハンドルの他、様々なタイプの水栓用ハンドルとして適用することができるものである。具体的には、水栓用ハンドルは、特開2017-48644号公報等の文献に開示されるように、ハンドル部が水栓本体に対して鉛直方向に延びる軸回りに回転可能となるように取り付けられるタイプのシングルレバーハンドルとして適用されても良い。また、水栓用ハンドルは、特開2015-010636号公報等の文献に開示されるように、ハンドル部が水栓本体の右側部又は左側部に対して水平方向に延びる軸回りに回転可能となるように取り付けられるタイプのハンドル(温調ハンドル又は吐止水の切替ハンドル)として適用されても良い。また、水栓用ハンドルは、上記のような混合水栓の操作ハンドルの他、単水栓の操作ハンドルとして適用されても良い。すなわち、水栓用ハンドルは、水栓本体に軸回転可能なように取り付けられるハンドル部と、ハンドル部から径方向に張出し状に延びるレバー部と、を有する様々なタイプの水栓用ハンドルに適用することができるものである。
【0052】
2.表層部材と積層状に一体成形される積層部材は、そのハンドル積層部が表層部材のハンドル表層部内に完全に埋設される形にインサートされて成形されるものであってもよい。また、積層部材は、必ずしもそのレバー積層部が表層部材のレバー表層部によって全周が被覆される形に埋設されるものでなくてもよく、一部分が外部に露出したり一面全体が外部に露出したりする形に積層されるものであってもよい。
【0053】
3.表層部材と積層部材とは、上記実施形態で示した材料以外の樹脂材料、金属材料、又は複合材料から成るものであっても良い。上記表層部材と積層部材とは、互いに同一材料から成るものであっても良い。また、表層部材が積層部材よりも剛性及び/又は強度の高い材料から成るものであっても良い。
【0054】
4.レバー部とハンドル部とは、必ずしも互いの天板面が互いに面一状の平坦面を成す形状から成るものでなくても良い。すなわち、レバー部の天板面とハンドル部の天板面との間に段差があるものや、レバー部の中央に指を掛け入れるための引掛孔が空いたもの等であっても良い。また、レバー部の天板面が凸湾曲面状や凹湾曲面状に湾曲したものや、レバー部がハンドル部から丸棒状や角棒状に張り出す形に延びるものであってもよい。
【0055】
5.リブは、レバー積層部とハンドル積層部との繋ぎの角部に肉盛り状に形成されるものであれば良く、これらの内角部の他、外角部に形成されていても良い。
【符号の説明】
【0056】
1 混合水栓
2 水栓本体
3 吐出管
3A 吐出口
4 カートリッジ
4A レバー軸
10 レバーハンドル(水栓用ハンドル)
10A ハンドル部
10Aa 天板面
10Ab 取付面
10Ac 締結面
10B レバー部
10Ba 天板面
11 表層部材
11A ハンドル表層部
11B レバー表層部
12 積層部材
12A ハンドル積層部
12B レバー積層部
12C 繋ぎ積層部
12D リブ
A1 中心軸線
A2 交差軸線
P1 止水位置
P2 吐水位置
P3 湯側調節位置
P4 水側調節位置
T 天板
B ビス