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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0587 20100101AFI20220613BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20220613BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20220613BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20220613BHJP
   H01M 10/052 20100101ALN20220613BHJP
【FI】
H01M10/0587
H01M10/0566
H01M4/13
H01M4/62 Z
H01M10/052
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018185113
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020057458
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】余語 純一
(72)【発明者】
【氏名】村岡 将史
(72)【発明者】
【氏名】南 圭亮
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-063893(JP,A)
【文献】特開2006-278182(JP,A)
【文献】特開2016-081605(JP,A)
【文献】特開2005-310617(JP,A)
【文献】特開2007-157560(JP,A)
【文献】特開2018-085180(JP,A)
【文献】特開2014-203561(JP,A)
【文献】特開2015-220216(JP,A)
【文献】特開2009-252349(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0325885(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01M 4/00- 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極合材層を含む正極と負極合材層を含む負極がセパレータを介して巻回され、平坦部及び一対の湾曲部を有する扁平状に成形された巻回型の電極体と、非水電解液と、前記電極体及び前記非水電解液を収容する電池ケースとを備えた非水電解質二次電池であって、
前記負極合材層は、前記電極体の前記平坦部に位置する第1領域と、前記一対の湾曲部に位置する第2領域とを含み、前記第1領域の充填密度(A)に対する前記第2領域の充填密度(B)の比率(B/A)が、0.75以上0.95以下であり、
前記電極体の軸方向中央を通る当該軸方向に垂直な断面において、前記平坦部の断面積(SA)に対する前記一対の湾曲部の断面積(SB)の比率(SB/SA)が、0.28以上0.32以下である、非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記電極体の軸方向及び厚み方向に垂直な方向の長さ(W)に対する、前記軸方向に沿った前記正極合材層の長さ(K)の比率(K/W)は、1.6以上である、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記比率(B/A)は、0.78以上0.93以下である、請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
前記第1領域の空隙率は、38%以上48%以下であり、
前記第2領域の空隙率は、48%以上59%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
【請求項5】
前記負極合材層は、体積基準のメジアン径が8μm以上12μm以下の負極活物質と、スチレン-ブタジエンゴムと、カルボキシメチルセルロース又はその塩とを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
【請求項6】
前記電池ケースには、55g以上75g以下の量の前記非水電解液が収容されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、正極と負極がセパレータを介して巻回され、平坦部及び一対の湾曲部を有する扁平状に成形された巻回型の電極体を備える非水電解質二次電池が知られている。特許文献1には、電池の充放電に伴う極板の歪みを抑制することを目的として、負極合材層の充填密度を電極体の平坦部よりも湾曲部で小さくした負極を備える非水電解質二次電池が開示されている。なお、特許文献1には、平坦部及び湾曲部における充填密度の差を5%以内とすることが好ましい、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-278182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、平坦部及び湾曲部を有する扁平状の巻回型電極体を備えた非水電解質二次電池では、充放電に伴って電極体が膨張すると、電極体に含浸される非水電解液が電極体の外部に押し出されて液量が大きく減少し、サイクル特性が低下するという課題がある。特に、平坦部は充放電に伴う体積変化が大きいため、平坦部で電解液量が減少し易く、電池反応に必要な電解液が不足する、或いは電解液が枯渇する所謂液枯れが発生する場合がある。特許文献1に開示された技術を含む従来の技術は、電極体の平坦部に含浸される電解液量の減少に起因するサイクル特性の低下の抑制について、未だ改良の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様である非水電解質二次電池は、正極合材層を含む正極と負極合材層を含む負極がセパレータを介して巻回され、平坦部及び一対の湾曲部を有する扁平状に成形された巻回型の電極体と、非水電解液と、前記電極体及び前記非水電解液を収容する電池ケースとを備える。前記負極合材層は、前記電極体の前記平坦部に位置する第1領域と、前記一対の湾曲部に位置する第2領域とを含み、前記第1領域の充填密度(A)に対する前記第2領域の充填密度(B)の比率(B/A)が、0.75以上0.95以下であり、前記電極体の軸方向中央を通る当該軸方向に垂直な断面において、前記平坦部の断面積(SA)に対する前記一対の湾曲部の断面積(SB)の比率(SB/SA)が、0.28以上0.32以下である。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様によれば、平坦部及び湾曲部を有する扁平状の巻回型電極体を備えた非水電解質二次電池において、サイクル特性を向上させることができる。本開示に係る非水電解質二次電池は、サイクル試験後の容量維持率及び出力が高く、負極表面におけるリチウムの析出が起こり難い。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態の一例である非水電解質二次電池の正面図であって、電池ケース及び絶縁シートの正面部分を取り除いた状態を示す。
図2】実施形態の一例である非水電解質二次電池の平面図である。
図3】実施形態の一例である電極体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の一態様によれば、上述のように、平坦部及び湾曲部を有する扁平状の巻回型電極体を備えた非水電解質二次電池において、サイクル特性を向上させることができる。本開示に係る非水電解質二次電池では、充電時の負極の膨張に起因して電極体が膨張したときに電極体の平坦部から押し出された非水電解液が、効果的に電極体の湾曲部にストックされる。そして、平坦部の体積が収縮したときに湾曲部にストックされた非水電解液が平坦部に戻ることで、平坦部における電解液不足が抑制される。したがって、本開示に係る非水電解質二次電池によれば、電極体の平坦部に含浸される電解液量の減少に起因するサイクル特性の低下を抑制できると考えられる。
【0009】
以下、本開示の実施形態の一例について詳細に説明する。本実施形態では、角形の金属製ケースである電池ケース200を備えた角形電池を例示するが、電池ケースは角形に限定されず、例えば金属層及び樹脂層を含むラミネートシートで構成された電池ケースであってもよい。なお、本明細書において、「略~」との記載は略同一を例に説明すると、完全に同一の状態、及び実質的に同一であると認められる状態の両方を意味する。
【0010】
図1及び図2に例示するように、非水電解質二次電池100は、正極と負極がセパレータを介して巻回され、平坦部及び一対の湾曲部を有する扁平状に成形された巻回型の電極体3と、非水電解液と、電極体3及び非水電解液を収容する電池ケース200とを備える。電池ケース200は、開口を有する有底筒状の角形外装体1、及び角形外装体1の開口を封口する封口板2を含む。角形外装体1及び封口板2はいずれも金属製であり、アルミニウム製又はアルミニウム合金製であることが好ましい。
【0011】
角形外装体1は、底面視略長方形状の底部、及び底部の周縁に立設した側壁部を有する。側壁部は、底部に対して垂直に形成される。角形外装体1の寸法は特に限定されないが、一例としては、横方向長さが130mm以上160mm以下、高さが60mm以上70mm以下、厚みが15mm以上18mm以下である。本明細書では、説明の便宜上、角形外装体1の底部の長手方向に沿った方向を当該外装体の「横方向」、側壁部が延びる底部に垂直な方向を「高さ方向」、横方向及び高さ方向に垂直な方向を「厚み方向」とする。
【0012】
非水電解液は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む。非水溶媒には、例えばエステル類、エーテル類、ニトリル類、アミド類、及びこれらの2種以上の混合溶媒等を用いてもよい。非水溶媒は、これら溶媒の水素の少なくとも一部をフッ素等のハロゲン原子で置換したハロゲン置換体を含有していてもよい。電解質塩には、例えばLiPF6等のリチウム塩が使用される。電池ケース200(角形外装体1)には、55g以上75g以下の量の非水電解液が収容されていてもよい。特に、角形外装体1が上記寸法を有する場合、非水電解液の量は55g以上75g以下が好ましい。
【0013】
正極は、金属製の正極芯体と、芯体の両面に形成された正極合材層とを有する長尺体であって、短手方向における一方の端部に長手方向に沿って正極芯体が露出する帯状の芯体露出部4aが形成されたものである。同様に、負極は、金属製の負極芯体と、芯体の両面に形成された負極合材層とを有する長尺体であって、短手方向における一方の端部に長手方向に沿って負極芯体が露出する帯状の芯体露出部5aが形成されたものである。電極体3は、軸方向一端側に正極の芯体露出部4aが、軸方向他端側に負極の芯体露出部5aがそれぞれ配置された状態で、セパレータを介して正極及び負極が巻回された構造を有する。
【0014】
正極の芯体露出部4aの積層部には正極集電体6が、負極の芯体露出部5aの積層部には負極集電体8がそれぞれ接続される。好適な正極集電体6は、アルミニウム製又はアルミニウム合金製である。好適な負極集電体8は、銅又は銅合金製である。正極端子7は、封口板2の電池外部側に配置される鍔部7aと、封口板2に設けられた貫通穴に挿入される挿入部とを有し、正極集電体6と電気的に接続されている。また、負極端子9は、封口板2の電池外部側に配置される鍔部9aと、封口板2に設けられた貫通穴に挿入される挿入部とを有し、負極集電体8と電気的に接続されている。
【0015】
正極端子7及び正極集電体6は、それぞれ内部側絶縁部材10及び外部側絶縁部材11を介して封口板2に固定される。内部側絶縁部材10は、封口板2と正極集電体6の間に配置され、外部側絶縁部材11は封口板2と正極端子7の間に配置される。同様に、負極端子9及び負極集電体8は、それぞれ内部側絶縁部材12及び外部側絶縁部材13を介して封口板2に固定される。内部側絶縁部材12は封口板2と負極集電体8の間に配置され、外部側絶縁部材13は封口板2と負極端子9の間に配置される。
【0016】
電極体3は、絶縁シート14に覆われた状態で角形外装体1内に収容される。封口板2は、角形外装体1の開口縁部にレーザー溶接等により接続される。封口板2は電解液注液孔16を有し、この電解液注液孔16は電池ケース200内に非水電解液を注液した後、封止栓17により封止される。封口板2には、電池内部の圧力が所定値以上となった場合にガスを排出するためのガス排出弁15が形成されている。
【0017】
以下、図3を参照しながら、電極体3について、特に電極体3を構成する負極5及びセパレータ30について詳説する。図3は、電極体3の軸方向中央を通る当該軸方向に垂直な断面(以下、「断面X」という場合がある)を示す。
【0018】
図3に例示するように、電極体3は、正極4と負極5がセパレータ30を介して巻回され、平坦部20及び一対の湾曲部21を有する扁平状に成形された巻回型の電極体である。本明細書では、説明の便宜上、平坦部20と一対の湾曲部21が並ぶ方向を電極体3の「幅方向」とし、軸方向及び幅方向に垂直な方向を「厚み方向」とする。本実施形態では、電極体3の軸方向が角形外装体1の横方向に沿い、電極体3の幅方向が角形外装体1の高さ方向に沿った状態で、電極体3が角形外装体1内に収容されている。
【0019】
平坦部20は、極板(正極4及び負極5)が湾曲することなく、幅方向に沿って略平行に配置された部分である。一対の湾曲部21は、極板が円弧状に湾曲した部分であって、湾曲部21において、極板は、幅方向外側に凸となるように湾曲している。一対の湾曲部21は、平坦部20を挟むように電極体3の幅方向両側に形成されている。断面視(断面X)において、平坦部20は略長方形状を有し、各湾曲部21は略半円形状を有する。湾曲部21の各々の半径は、例えば互いに同等であり、かつ半径の2倍の値が平坦部20の厚み(d)と同等である(即ち、湾曲部21の半径はd/2)。
【0020】
電極体3では、上述の通り、正極4の芯体露出部4aが軸方向一端側に、負極5の芯体露出部5aが軸方向他端側にそれぞれ配置されている。また、正極合材層41の全域がセパレータ30を介して負極合材層51と対向している。詳しくは後述するが、電極体3は、正極4と負極5がセパレータ30を介して円筒状に巻回されてなる巻回体を径方向に所定の圧力でプレスし、扁平状に成形することで製造される。
【0021】
電極体3は、例えば、正極4を挟むように配置された2枚の長尺状のセパレータ30を含み、電極体3の巻内側から、セパレータ30/正極4/セパレータ30/負極5の順に配置されている。この場合、各セパレータ30の長さは、少なくとも正極4の長さより長いことが好ましい。また、セパレータ30の幅は、電極体3の軸方向長さ(L)より短く、かつ少なくとも正極合材層41の幅(電極体3の軸方向に沿った正極合材層41の長さK)よりも長い。セパレータ30の幅は、負極合材層51の幅より長くてもよい。
【0022】
電極体3は、断面Xにおいて、平坦部20の断面積(SA)に対する一対の湾曲部21の断面積(SB)の比率(SB/SA)が、0.28以上0.32以下である。断面積比(SB/SA)が0.28未満である場合、湾曲部21による非水電解液のストック機能が十分に発現せず、電池のサイクル特性が低下する。他方、断面積比(SB/SA)が0.32を超える場合、電池の出力特性が低下する。断面積比(SB/SA)は、0.29以上0.31以下が特に好ましい。
【0023】
断面積(SA,SB)は、電極体3の軸方向中央における厚み(d)と幅(W)を計測し、下記の式から算出される。d/2は、湾曲部21の半径を意味する。
SA=d×(W-d)
SB=((d/2)×(d/2))×π
なお、断面積(SA,SB)は、断面Xの画像解析により計測することもできる。
【0024】
電極体3の幅方向長さ(W)に対する、電極体3の軸方向に沿った正極合材層41の長さ(K)の比率(K/W)は、1.6以上であることが好ましい。ここで、幅方向長さとは、電極体3の軸方向及び厚み方向に垂直な方向の長さである。以下、比率(K/W)をアスペクト比という場合がある。アスペクト比(K/W)が1.6以上になると、充電時に電解液が平坦部20の長さ方向両端(電極体3の軸方向両端)から押し出され難くなり、また、電解液が平坦部20の幅方向両端から湾曲部21の方向に押し出されやすくなり、湾曲部21による非水電解液のストック機能が発現し易くなる。アスペクト比(K/W)の上限値は特に限定されないが、好ましくは3.0以下である。
【0025】
[正極]
正極4は、上述のように、正極芯体40と、正極芯体40の両面に形成された正極合材層41とを有する。正極芯体40には、アルミニウム、アルミニウム合金など、正極4の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。正極合材層41は、正極活物質、導電材、及び結着材を含む。正極4は、正極芯体40上に正極活物質、導電材、結着材、及び分散媒等を含む正極合材スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させて分散媒を除去した後、塗膜を圧縮して正極合材層41を正極芯体40の両面に形成することにより製造できる。
【0026】
正極活物質は、リチウム含有遷移金属複合酸化物を主成分として構成される。リチウム含有遷移金属複合酸化物に含有される金属元素としては、Ni、Co、Mn、Al、B、Mg、Ti、V、Cr、Fe、Cu、Zn、Ga、Sr、Zr、Nb、In、Sn、Ta、W等が挙げられる。好適なリチウム含有遷移金属複合酸化物の一例は、Ni、Co、Mnの少なくとも1種を含有する複合酸化物である。なお、リチウム含有遷移金属複合酸化物の粒子表面には、酸化アルミニウム、ランタノイド含有化合物等の無機化合物粒子などが固着していてもよい。
【0027】
正極合材層41に含まれる導電材としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛等の炭素材料が例示できる。正極合材層41に含まれる結着材としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリオレフィンなどが例示できる。これらの樹脂と、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はその塩等のセルロース誘導体、ポリエチレンオキシド(PEO)などが併用されてもよい。
【0028】
[負極]
負極5は、上述のように、負極芯体50と、負極芯体50の両面に形成された負極合材層51とを有する。負極芯体50には、銅、銅合金など、負極5の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。負極芯体50の厚みは、例えば5μm以上20μm以下である。負極合材層51は、負極活物質及び結着材を含む。負極合材層51の厚みは、負極芯体50の片面側で、例えば50μm以上150μm以下であり、好ましくは80μm以上120μm以下である。負極5は、負極芯体50上に負極活物質及び結着材を含む負極合材スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させて分散媒を除去した後、塗膜を圧縮して負極合材層51を負極芯体50の両面に形成することにより製造できる。
【0029】
負極合材層51には、負極活物質として、例えばリチウムイオンを可逆的に吸蔵、放出する炭素系活物質が含まれる。好適な炭素系活物質は、鱗片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛等の天然黒鉛、塊状人造黒鉛(MAG)、黒鉛化メソフェーズカーボンマイクロビーズ(MCMB)等の人造黒鉛などの黒鉛である。また、負極活物質には、Si及びSi含有化合物の少なくとも一方で構成されるSi系活物質が用いられてもよく、炭素系活物質とSi系活物質が併用されてもよい。
【0030】
負極合材層51に含まれる結着材には、正極4の場合と同様に、PTFE、PVdF等の含フッ素樹脂、PAN、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリオレフィンなどを用いてもよいが、好ましくはスチレン-ブタジエンゴム(SBR)が用いられる。また、負極合材層51には、CMC又はその塩、ポリアクリル酸(PAA)又はその塩、PVAなどが含まれていてもよい。CMC又はその塩は、負極合材スラリーを適切な粘度範囲に調整する増粘材として機能し、またSBRと同様に結着材としても機能する。
【0031】
負極合材層51の好適な一例は、体積基準のメジアン径が8μm以上12μm以下の負極活物質と、SBRと、CMC又はその塩とを含む。体積基準のメジアン径は、レーザー回折散乱法で測定される粒度分布において体積積算値が50%となる粒径であって、50%粒径(D50)又は中位径とも呼ばれる。負極合材層51の充填密度は、主に負極活物質の充填密度によって決定され、負極活物質のD50、粒度分布、形状等が充填密度に大きく影響する。SBR、CMC又はその塩の含有量は、負極合材層51の質量に対して、それぞれ、0.1質量%以上5質量%以下が好ましく、0.5質量%以上3質量%以下がより好ましい。
【0032】
負極合材層51は、電極体3の平坦部20に位置する第1領域51Aと、一対の湾曲部21に位置する第2領域51Bとを含み、第1領域51Aの充填密度(A)に対する第2領域51Bの充填密度(B)の比率(B/A)が、0.75以上0.95以下である。換言すると、電極体3の湾曲部21における負極合材層51の充填密度は、平坦部20における当該充填密度の0.75倍以上0.95倍以下である。充填密度比(B/A)が当該範囲から外れる場合、後述の実施例・比較例で示すように、良好なサイクル特性を確保することができない。充填密度比(B/A)は、0.78以上0.93以下がより好ましく、0.80以上0.92以下が特に好ましい。
【0033】
第1領域51Aの空隙率は、38%以上48%以下であることが好ましく、40%以上46%以下であることがより好ましい。第2領域51Bの空隙率は、48%以上59%以下であることが好ましく、50%以上57%以下であることがより好ましい。このような範囲にあると、より効果的にサイクル特性が向上する。
【0034】
負極合材層51における非水電解液の保持性は、充填密度が低い第2領域51B(湾曲部21)の方が、充填密度が高い第1領域51A(平坦部20)よりも良好である。充填密度比(B/A)が0.75以上0.95以下である場合に、平坦部20から押し出された非水電解液を湾曲部21に効率良くストックでき、平坦部20の体積が収縮したときに湾曲部21にストックされた電解液が平坦部20に素早く戻る。これにより、平坦部20の電解液不足、及びそれに起因するサイクル特性の低下を抑制できる。
【0035】
第1領域51A及び第2領域51Bの充填密度(A,B)は、上記充填密度比(B/A)を満たす限り特に限定されないが、電池容量等の観点から、いずれも0.9g/cm3以上が好ましく、1.0g/cm3以上がより好ましい。第1領域51Aの充填密度(A)は、例えば1.15g/cm3以上1.35g/cm3以下、又は1.20g/cm3以上1.30g/cm3以下である。第2領域51Bの充填密度(B)は、例えば0.95g/cm3以上1.15g/cm3以下、又は1.00g/cm3以上1.10g/cm3以下である。
【0036】
第1領域51Aの充填密度(A)は、第1領域51Aの全体において略均一であることが好ましい。同様に、第2領域51Bの充填密度(B)は、第2領域51Bの全体において略均一であることが好ましい。但し、第1領域51Aの一部に充填密度が他よりも低い部分、又は高い部分が存在していてもよい(第2領域51Bについても同様)。充填密度(A,B)は、負極芯体50の単位面積あたりの負極合材層51の質量、及び負極合材層51の厚みを計測し、当該質量を厚みで除して求められる。
【0037】
充填密度比(B/A)は、正極4、負極5、及びセパレータ30の巻回体を扁平状に成形する際のプレス条件によって、0.75以上0.95以下の範囲に制御できる。具体的には、プレス温度、プレス圧、プレス時間を適宜変更することで、充填密度比(B/A)を制御できる。負極合材スラリーの塗布量を、負極芯体50の第1領域51Aになる部分と、第2領域51Bになる部分とで変更し、充填密度比(B/A)を制御することも可能であるが、生産性等の観点から、充填密度が略均一な負極合材層51を形成した後、プレス条件を変更することで、充填密度比(B/A)を制御することが好ましい。上記断面積比(SB/SA)についても、当該プレス条件によって制御できる。
【0038】
プレス温度の一例は、60℃以上90℃以下、又は70℃以上80℃以下である。プレス時間の一例は、5分以上、又は15分以上、又は30分以上である。プレス時間の上限は特に限定されないが、生産性等の観点から、60分以下が好ましい。プレス温度及び時間が同じ条件である場合、プレス圧を高くするほど、第1領域51Aの充填密度(A)が高くなり、充填密度比(B/A)が小さくなり易い。他方、プレス圧を低くするほど、第1領域51Aの充填密度(A)が低くなり、充填密度比(B/A)が大きくなり易い。プレス圧の一例は、90kN以上115kN以下である。また、プレス圧を高くするほど断面積比(SB/SA)は小さく、プレス圧を低くするほど断面積比(SB/SA)は大きくなり易い。
【0039】
[セパレータ]
セパレータ30には、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔性シートが用いられる。セパレータ30(多孔性シート)は、例えばポリオレフィン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミド、及びアラミドから選択される少なくとも1種を主成分とする多孔質基材を含む。中でも、ポリオレフィンが好ましく、特にポリエチレン、及びポリプロピレンが好ましい。
【0040】
セパレータ30は、樹脂製の多孔質基材のみで構成されていてもよく、多孔質基材の少なくとも一方の面に無機物粒子等を含む耐熱層などが形成された複層構造であってもよい。また、樹脂製の多孔質基材が、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン等の複層構造を有していてもよい。セパレータ30の厚みは、例えば10μm以上30μm以下である。セパレータ30は、例えば、平均孔径が0.02μm以上5μm以下、空孔率が30%以上70%以下である。一般的に、電極体3は2枚のセパレータ30を含むが、各セパレータ30には同じものを用いることができる。
【0041】
セパレータ30は、電極体3の平坦部20に位置する第1領域と、一対の湾曲部21に位置する第2領域とを含み、第1領域の透気度(C)に対する第2領域の透気度(D)の比率(D/C)が、0.5以上0.9以下であってもよい。換言すると、電極体3の湾曲部21におけるセパレータ30の透気度は、平坦部20における当該透気度の0.5倍以上0.9倍以下であってもよい。透気度比(D/C)を当該範囲内であれば、湾曲部21における非水電解液の保持性がさらに向上し、サイクル特性のさらなる改善を図ることができる。透気度比(D/C)は、0.52以上0.86以下がより好ましく、0.6以上0.8以下が特に好ましい。セパレータ30の透気度(s/100cc)は、透気度測定装置(熊谷理機工業製 王研式平滑度・透気度試験機:製品番号 No.2040-C)を用いて測定できる。
【0042】
セパレータ30の上記第1領域の透気度(C)は、上記透気度比(D/C)を満たす限り特に限定されないが、250s/100cc以上450s/100cc以下が好ましい。セパレータ30の上記第2領域の透気度(D)についても同様に、上記透気度比(D/C)を満たす限り特に限定されないが、150s/100cc以上250s/100cc以下が好ましい。透気度(C,D)が当該範囲内であれば、出力特性及び絶縁性を良好に維持しつつ、サイクル特性の改善を図ることができる。
【実施例
【0043】
以下、実施例により本開示をさらに説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0044】
<実施例1>
[正極の作製]
正極活物質として、LiNi0.35Co0.35Mn0.302で表されるリチウム含有遷移金属複合酸化物を用いた。正極活物質と、アセチレンブラックと、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、97:2:1の固形分質量比で混合し、分散媒にN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を用いた正極合材スラリーを調製した。次に、当該正極合材スラリーを、幅127mmの帯状のアルミニウム箔からなる正極芯体の両面に塗布(塗布幅110mm=電極体の軸方向に沿った正極合材層の長さ(K))し、塗膜を乾燥させた後、塗膜を圧縮して芯体の両面に正極合材層を形成した。当該芯体を所定の電極サイズに切断して正極を作製した。
【0045】
[負極の作製]
負極活物質として、黒鉛を用いた。負極活物質と、CMCのナトリウム塩と、SBRのディスパージョンとを、98.7:0.7:0.6の固形分質量比で混合し、分散媒に水を用いた負極合材スラリーを調製した。次に、当該負極合材スラリーを、幅130mmの帯状の銅箔からなる負極芯体の両面に塗布し(塗布幅115mm)、塗膜を乾燥させた後、塗膜を圧縮して芯体の両面に、充填密度が1.07g/cm3の負極合材層を形成した。当該芯体を所定の電極サイズに切断して負極を作製した。
【0046】
[電極体の作製]
上記正極及び上記負極を、幅120mmの帯状のセパレータを介して巻回した後、巻回体を径方向にプレスして扁平状に成形し、巻回型の電極体を作製した。巻回体は、セパレータ/正極/セパレータ/負極の順に重ね合わせたものを、円筒状の巻芯に巻き付けて形成した(2枚のセパレータには同じものを用いた)。また、正極及び負極を、それぞれの芯体露出部が互いに巻回体の軸方向反対側に位置するように巻回した。巻回体のプレス条件は、プレス温度75℃、プレス圧100kN、プレス時間30分とした。同じ方法で3つの電極体を作製し、電極体の軸方向及び幅方向中央で厚みを測定したところ、平均厚み(d)は15.7mmであった。電極体の軸方向長さは144mm、幅(W)は57.1mm、アスペクト比(K/W)は1.93であった。
【0047】
[非水電解液の調製]
エチレンカーボネート(EC)と、エチルメチルカーボネート(EMC)と、ジエチルカーボネート(DEC)とを、3:3:4の体積比(25℃、1気圧)で混合した混合溶媒に、LiPF6を1mol/Lの濃度になるように添加し、さらにビニレンカーボネートを0.3質量%の濃度となるように添加して、非水電解液を調製した。
【0048】
[非水電解質二次電池の作製]
上記電極体、上記非水電解液、及び角形の電池ケースを用いて、非水電解質二次電池(角形電池)を作製した。電池ケースを構成する封口板に正極端子を取り付けると共に、正極端子に正極集電体を接続した。また、封口板に負極端子を取り付けると共に、負極端子に負極集電体を接続した。そして、正極の芯体露出部に正極集電体を、負極の芯体露出部に負極集電体をそれぞれ溶接した。封口板と一体化された電極体を、箱状に成形した絶縁シート内に配置した状態で、電池ケースを構成する角形有底筒状の外装缶(横方向長さ148.0mm(内寸146.8mm)、厚み17.5mm(内寸16.5mm)、高さ65.0mm(内寸64.0mm))内に収容し、外装缶の開口部を封口板で塞いだ。封口板の電解液注液孔から、65gの電解液を注液した後、電極体に非水電解液を十分浸漬させたのち、仮性充電を行い、注液孔に封止栓を取り付けて、非水電解質二次電池(電池容量:8Ah)を得た。
【0049】
<実施例2>
電極体の作製において、巻回体のプレス前における負極合材層の充填密度が1.01g/cm3である負極を用い、巻回体のプレス圧を115kNに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、電極体及び非水電解質二次電池を作製した。電極体の厚みは15.2mm、幅(W)は57.5mmであった。
【0050】
<実施例3>
電極体の作製において、巻回体のプレス前における負極合材層の充填密度が1.11g/cm3である負極を用い、巻回体のプレス圧を90kNに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、電極体及び非水電解質二次電池を作製した。電極体の厚みは16.4mm、幅(W)は56.9mmであった。
【0051】
<比較例1>
電極体の作製において、巻回体のプレス前における負極合材層の充填密度が1.01g/cm3である負極を用い、巻回体のプレス圧を110kNに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、電極体及び非水電解質二次電池を作製した。電極体の厚みは15.8mm、幅(W)は57.5mmであった。
【0052】
<比較例2>
電極体の作製において、巻回体のプレス圧を122kNに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、電極体及び非水電解質二次電池を作製した。電極体の厚みは14.8mm、幅(W)は57.1mmであった。
【0053】
<比較例3>
電極体の作製において、巻回体のプレス圧を89kNに変更したこと以外は、比較例1と同様の方法で、電極体及び非水電解質二次電池を作製した。電極体の厚みは16.7mm、幅(W)は57.1mmであった。
【0054】
<比較例4>
電極体の作製において、巻回体のプレス前における負極合材層の充填密度が1.13g/cm3である負極を用い、巻回体のプレス圧を106kNに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、電極体及び非水電解質二次電池を作製した。電極体の厚みは15.7mm、幅(W)は56.7mmであった。
【0055】
<比較例5>
電極体の作製において、巻回体のプレス圧を122kNに変更したこと以外は、比較例1と同様の方法で、電極体及び非水電解質二次電池を作製した。電極体の厚みは14.8mm、幅(W)は57.5mmであった。
【0056】
[負極合材層の充填密度(A,B)]
実施例及び比較例の各電池を解体し、電極体の平坦部及び湾曲部における負極の厚みをマイクロメーターで測定した。このとき、平坦部における負極の厚みは、平坦部の長さ方向及び幅方向の中央において、電極体の外周面に最も近い負極の最外周部から内側に2層目の位置で測定した。湾曲部における負極の厚みについても、平坦部の場合と同様に、負極の最外周部から内側に2層目の位置で測定した。下記の式により、平坦部における負極合材層の充填密度、及び湾曲部における負極合材層の充填密度(A,B)を求めた。求められた充填密度(A,B)及び充填密度比(B/A)を表1に示す。
(充填密度)=(単位面積あたり負極合材層の質量)÷(負極厚み-芯体厚み)
【0057】
[断面積SA,SB]
解体した実施例及び比較例の各電池について、電極体の厚み(d)及び幅(W)から下記の式を用いて算出される。求められた断面積比(SB/SA)を表1に示す。
SA=d×(W-d)
SB=((d/2)×(d/2))×π
【0058】
[容量維持率の評価]
実施例及び比較例の各電池を、25℃において、8.0Aの定電流で電池電圧が4.1Vになるまで充電した後、8.0Aの定電流で電池電圧が2.5Vになるまで放電を行った。この充放電サイクルを100サイクル繰り返し、1サイクル目の放電容量に対する100サイクル目の放電容量の比率(容量維持率)を求めた。実施例1の電池の容量維持率を100とする相対値として、各電池の容量維持率を表1に示す。
【0059】
[出力の評価]
100サイクル後の電池について、25℃の条件下において、電池の充電深度(SOC)が50%となるまで充電した。次に、25℃において、60A、120A、180A、240Aの電流値でそれぞれ10秒間放電を行い、電池電圧を測定した。そして、各電流値と電池電圧とをプロットした線形線から3.0Vにおける電流値を計算し、出力値を算出した。なお、放電によりずれた充電深度は8.0Aの定電流で充電することにより元の充電深度に戻した。実施例1の電池の出力を100とする相対値として、各電池の出力を表1に示す。
【0060】
[リチウム析出の評価]
サイクル試験後の各電池を解体し、負極表面を目視で確認して、Li析出の有無を評価した。負極の全長にわたってLiの析出が確認されなかった場合を〇、Liの析出が確認された場合を×として、評価結果を表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
表1に示す評価結果から理解されるように、実施例の電池はいずれも、比較例の電池と比べてサイクル特性に優れる。実施例の電池は、上記サイクル試験後の容量維持率及び出力が高い。また、実施例の電池では、負極表面にLiの析出が確認されなかった。他方、比較例の電池は、サイクル試験後の容量維持率及び/又は出力が低く、また比較例3の電池を除き、負極表面にLiの析出が確認された。
【0063】
比較例1の電池では、実施例1の電池と断面積比(SB/SA)は同等であるが、平坦部Aと湾曲部Bにおける負極合材層の充填密度比(B/A)が0.70と小さい。即ち、相対的に平坦部における負極合材層の充填密度が大きくなり、充放電に伴う電極体の体積変化に対して湾曲部への電解液の押し出し及び戻りが小さくなったとみられる。この結果、平坦部の電解液が不足又は枯渇し、容量維持率及び出力が低下すると共に、負極表面にLiが析出したと考えられる。なお、比較例3以外の比較例では、負極の全長に渡って平坦部にLiの析出が確認された。特に、体積変化が大きい電極体の軸方向及び幅方向の中央部で析出が顕著であった。
【0064】
比較例2の電池では、実施例1の電池と充填密度比(B/A)は同等であるが、断面積比(SB/SA)が0.275と小さい。この場合、湾曲部にストック可能な電解液量が減少するため、平坦部で電解液が不足又は枯渇し、サイクル試験において、容量維持率及び出力が低下すると共に、負極表面にLiが析出したと考えられる。
【0065】
比較例3の電池では、実施例1の電池と充填密度比(B/A)は同等であるが、断面積比(SB/SA)が0.325と大きい。この場合、湾曲部に電解液が十分にストックされるので、サイクル試験後の容量維持率が良好で、負極表面にLiの析出は確認されなかった。一方、湾曲部では平坦部よりも正極と負極の極間距離が長いため、電解液中のイオン伝導度の関係から抵抗が高くなる傾向がある。比較例3の電池では、大きな湾曲部に起因して、出力が低下したものと考えられる。
【0066】
比較例4の電池では、実施例1の電池と断面積比(SB/SA)は同等であるが、充填密度比(B/A)が0.98と大きい。即ち、相対的に平坦部の充填密度が小さいことで、充放電による電極体の膨収縮に対して電極体の巻回軸方向、その垂直方向へ電解液の押し出し量が大きい。この場合、湾曲部による電解液のストック機能が十分に発現せず、平坦部で電解液が不足又は枯渇し、サイクル試験において、容量維持率及び出力が低下すると共に、負極表面にLiが析出したと考えられる。
【0067】
比較例5の電池も、平坦部の電解液が不足又は枯渇し、容量維持率及び出力が低下すると共に、負極表面にLiが析出したと考えられる。
【0068】
<実施例4>
電極体の作製において、正極合材スラリーの塗布幅を92.0mm、負極合材スラリーの塗布幅を94.1mmとして、アスペクト比(K/W)を1.61に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、電極体及び非水電解質二次電池を作製した(電池容量:6.5Ah)。負極表面にLiの析出は確認されなかった。
【0069】
<実施例5>
電極体の作製において、正極合材スラリーの塗布幅を85.0mm、負極合材スラリーの塗布幅を83.6mmとして、アスペクト比(K/W)を1.49に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、電極体及び非水電解質二次電池を作製した(電池容量:5.8Ah)。負極表面にLiの析出は確認されなかった。
【0070】
【表2】
【0071】
表2に示すように、実施例5の電池では、実施例1,4の電池と充填密度比(B/A)及び断面積比(SB/SA)が同等で、実施例1,4の電池よりもアスペクト比(K/W)が小さい。即ち、相対的に平坦部の軸方向長さが短く、充電に伴い電極体が膨張したときに、電解液が正極合材層の形成範囲を超えて電極体の軸方向両側に押し出されやすくなったと考えられる。このため、電極体から押し出された電解液は、電極体の中心部に戻り難くなり、サイクル特性が若干低くなったと考えられる。
【符号の説明】
【0072】
1 角形外装体、2 封口板、3 電極体、4 正極、4a,5a 芯体露出部、5 負極、6 正極集電体、7 正極端子、7a,9a 鍔部、8 負極集電体、9 負極端子、10,12 内部側絶縁部材、11,13 外部側絶縁部材、14 絶縁シート、15 ガス排出弁、16 電解液注液孔、17 封止栓、20 平坦部、21 湾曲部、30 セパレータ、40 正極芯体、41 正極合材層、50 負極芯体、51 負極合材層、51A 第1領域、51B 第2領域、100 非水電解質二次電池、200 電池ケース
図1
図2
図3