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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】タービン静翼
(51)【国際特許分類】
   F01D 9/02 20060101AFI20220613BHJP
   F01D 11/00 20060101ALI20220613BHJP
   F02C 7/18 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
F01D9/02 102
F01D11/00
F02C7/18 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018201707
(22)【出願日】2018-10-26
(65)【公開番号】P2020067062
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】猪亦 麻子
(72)【発明者】
【氏名】谷川 慎次
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 岩太郎
(72)【発明者】
【氏名】前田 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】関根 悟
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 和孝
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-059486(JP,A)
【文献】特開平11-022409(JP,A)
【文献】特開2017-036710(JP,A)
【文献】特開2018-031320(JP,A)
【文献】特開2006-336464(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0123676(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0189569(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 9/00- 9/08
F01D 11/00-11/24
F02C 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に中空部を有する翼有効部と、
前記翼有効部の径方向外側に設けられた外側平板フランジ部と、前記外側平板フランジ部から径方向外側に突出し、前縁側および後縁側に周方向に設けられた一対の外側取付部とを有する外側シュラウドと、
前記翼有効部の径方向内側に設けられた内側平板フランジ部を有する内側シュラウドと、
前記外側平板フランジ部に形成された径方向に貫通する貫通孔を介して前記翼有効部の前記中空部に冷却媒体を導入する第1の冷却媒体導入通路と、
前記外側平板フランジ部の肉厚内に前記外側平板フランジ部の表面に沿う方向に形成されるとともに、冷却媒体を導入する入口が前記外側平板フランジ部における前縁側の端面および前縁側の側面に形成され、前記翼有効部の前記中空部に冷却媒体を導入する複数の第2の冷却媒体導入通路と
を具備することを特徴とするタービン静翼。
【請求項2】
前記外側シュラウドが、
周方向に隣接する前記外側シュラウドのタービンロータ軸方向に延びる側面間に設けられ、前記外側シュラウド間をシールする第1の板状部材を備え、
前記第2の冷却媒体導入通路は、前記第1の板状部材よりも径方向外側に形成されていることを特徴とする請求項1記載のタービン静翼。
【請求項3】
前記外側平板フランジ部の肉厚内に前記外側平板フランジ部の表面に沿う方向に形成され、前記中空部内の冷却媒体を外部に排出する第1の冷却媒体排出通路を備え、
前記第1の冷却媒体排出通路は、前記第1の板状部材よりも径方向内側に形成されていることを特徴とする請求項2記載のタービン静翼。
【請求項4】
前記第1の冷却媒体排出通路は、前記タービン静翼の後縁側に設けられていることを特徴とする請求項3記載のタービン静翼。
【請求項5】
前記内側シュラウドが、
周方向に隣接する前記内側シュラウドのタービンロータ軸方向に延びる側面間に設けられ、前記内側シュラウド間をシールする第2の板状部材と、
前記内側平板フランジ部の肉厚内に前記内側平板フランジ部の表面に沿う方向に形成され、前記中空部内の冷却媒体を外部に排出する第2の冷却媒体排出通路と
を備え、
前記第2の冷却媒体排出通路は、前記第2の板状部材よりも径方向外側に形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のタービン静翼。
【請求項6】
前記内側シュラウドが、初段のタービン静翼における内側シュラウドであり、
前記内側シュラウドと前記内側シュラウドの上流側に隣接する第1のタービン部材との間をシールする第3の板状部材を備え、
前記第2の冷却媒体排出通路は、前記第3の板状部材よりも径方向外側に形成されていることを特徴とする請求項5記載のタービン静翼。
【請求項7】
前記外側シュラウドが、初段のタービン静翼における外側シュラウドであり、
前記外側シュラウドと前記外側シュラウドの上流側に隣接する第2のタービン部材との間をシールする第4の板状部材を備え、
前記第2の冷却媒体導入通路は、前記第4の板状部材よりも径方向外側に形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載のタービン静翼。
【請求項8】
前記第2の冷却媒体導入通路は、前記タービン静翼の前縁側に設けられていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載のタービン静翼。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、タービン静翼に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素の削減や省資源などの要求から、発電プラントの高効率化が進められている。そのため、ガスタービン発電プラントにおいては、作動流体の高温化などが積極的に進められている。この作動流体の高温化に対応するために、静翼や動翼などの冷却に関して様々な試みがなされている。
【0003】
近年において、燃焼器において生成した二酸化炭素を作動流体として系統内に循環させる発電プラントが検討されている。具体的には、この発電プラントは、酸素および炭化水素などの燃料を燃焼させる燃焼器を備える。作動流体として燃焼器に導入された二酸化炭素は、燃焼によって生成した燃焼ガス(二酸化炭素および水蒸気)とともにタービンに導入される。タービンは、これらの導入された燃焼ガスおよび作動流体によって駆動される。そして、タービンの駆動を利用して発電機で発電を行う。
【0004】
タービンから排出されるタービン排気(二酸化炭素および水蒸気)は、熱交換器によって冷却されることで水分が除去され、二酸化炭素(作動流体)となる。二酸化炭素は、圧縮機によって昇圧されて超臨界流体となる。昇圧された二酸化炭素の大部分は、上記の熱交換器によって加熱され、燃焼器に循環される。昇圧された二酸化炭素のうち、外部から供給された燃料と酸素の燃焼によって生じた二酸化炭素に相当する分は、例えば回収され、他の用途に利用される。
【0005】
このような超臨界の二酸化炭素を作動流体とするタービン入口圧力は、従来のガスタービンにおけるタービン入口圧力の20倍程度となる。なお、超臨界の二酸化炭素を作動流体とするタービンを以下において、COタービンという。
【0006】
また、COタービンのタービン入口における作動流体の温度は、1000℃を超え、現状のガスタービンのタービン入口における作動流体の温度と同等である。そして、COタービンでは、上記したようにタービン入口圧力は高いため、従来のガスタービンに比べて、静翼などの翼面における熱伝達率が増大する。
【0007】
COタービンでは、従来のガスタービンの場合と同様に、温度が350~550℃程度の冷却媒体を静翼および動翼の内部に設けられた冷却流路に導いて、静翼および動翼を冷却している。
【0008】
例えば、静翼は、翼有効部と、翼有効部の外周側に設けられた外側シュラウドと、翼有効部の内周側に設けられた内側シュラウドとを備える。
【0009】
従来の静翼において、静翼を冷却するための全量の冷却媒体は、ケーシングに設けられた導入口を介して外側シュラウドに形成された径方向に貫通する貫通孔から翼有効部内に導かれる。そして、翼有効部内に導かれた冷却媒体は、翼有効部内の通路を流れて翼有効部を冷却する。翼有効部を冷却した冷却媒体は、静翼の外側シュラウドおよび内側シュラウドの肉厚内に表面に沿う方向に形成された冷却孔を通り、翼外部に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2015-59486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記したように、COタービンにおいては、静翼などの翼面における熱伝達率は増加する。そこで、翼の冷却を促進するため、翼に導入する冷却媒体の供給量を増加することが考えられるが、発電システムの効率向上の観点から妥当ではない。
【0012】
また、従来の静翼では、熱負荷の大きい外側シュラウドを翼有効部を冷却した後の冷却媒体によって冷却している。そのため、従来の静翼では、外側シュラウドを十分に冷却することができなかった。
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、冷却媒体の供給量を増加することなく、翼の冷却を促進することができるタービン静翼を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
実施形態のタービン静翼は、内部に中空部を有する翼有効部と、前記翼有効部の径方向外側に設けられた外側平板フランジ部と、前記外側平板フランジ部から径方向外側に突出し、前縁側および後縁側に周方向に設けられた一対の外側取付部とを有する外側シュラウドと、前記翼有効部の径方向内側に設けられた内側平板フランジ部を有する内側シュラウドとを備える。
【0015】
また、タービン静翼は、前記外側平板フランジ部に形成された径方向に貫通する貫通孔を介して前記翼有効部の前記中空部に冷却媒体を導入する第1の冷却媒体導入通路と、前記外側平板フランジ部の肉厚内に前記外側平板フランジ部の表面に沿う方向に形成されるとともに、冷却媒体を導入する入口が前記外側平板フランジ部における前縁側の端面および前縁側の側面に形成され、前記翼有効部の前記中空部に冷却媒体を導入する複数の第2の冷却媒体導入通路とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施の形態の静翼が設けられたタービンを備えるガスタービン設備の系統図である。
図2】実施の形態の静翼が設けられたタービンの縦断面の一部を示した図である。
図3】実施の形態の静翼の縦断面を示す図である。
図4図3のA-A断面を示す図である。
図5図3のB-B断面を示す図である。
図6図3のC-C断面を示す図である。
図7】実施の形態における、タービン段落が第2段以降の静翼について、図3のA-A断面に相当する断面の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、実施の形態の静翼が設けられたタービンを備えるガスタービン設備1の系統図である。なお、ここでは、燃焼器2で生成された二酸化炭素を作動流体として循環させるCOタービンを例示して説明する。
【0019】
図1に示すように、ガスタービン設備1は、燃焼器2と、タービン3と、発電機4と、熱交換器5と、凝縮器6と、圧縮機7とを備える。
【0020】
ガスタービン設備1において、酸素および燃料が燃焼器2に供給される。そして、燃焼器2において燃焼が生じることによって、二酸化炭素および水蒸気が生成される。また、燃焼器2には、ガスタービン設備1を循環する二酸化炭素が熱交換器5を介して導入される。
【0021】
燃料および酸素の流量は、例えば、それぞれが完全に混合した状態において量論混合比(理論混合比)となるように調整されている。燃料としては、例えば、天然ガス、メタンなどの炭化水素や、石炭ガス化ガスなどが使用される。
【0022】
タービン3においては、燃焼器2で生成された二酸化炭素および水蒸気と、熱交換器5を介して燃焼器2に導入された二酸化炭素とを含む燃焼ガスが、燃焼器2から導入される。タービン3に作動流体として導入された燃焼ガスは、タービン3において膨張仕事を行う。これによって、タービン3に連結された発電機4が駆動し、発電が行われる。
【0023】
タービン3から排出された燃焼ガスは、熱交換器5を通過後に、凝縮器6を通過する。凝縮器6では、タービン3から排出された燃焼ガスに含まれる水蒸気が凝縮され、液体の水になる。その水は、凝縮器6を通過した燃焼ガスが流れる配管から分岐された分岐管8を通って、外部に排出される。
【0024】
燃焼ガスは、凝縮器6で水蒸気と分離されてドライな作動流体、すなわち二酸化炭素となる。この二酸化炭素は、圧縮機7で昇圧され、超臨界流体となる。圧縮機7の出口において、二酸化炭素の圧力は、例えば、30MPa程度となる。
【0025】
圧縮機7で昇圧された二酸化炭素の一部は、熱交換器5において加熱され、燃焼器2に供給される。燃焼器2に導入された二酸化炭素は、例えば、燃焼器2の上流側から燃料および酸化剤(酸素)とともに燃焼領域(図示しない)に噴出されたり、燃焼器ライナ(図示しない)を冷却した後に希釈孔などを介して燃焼領域の下流側に噴出される。
【0026】
また、超臨界流体である二酸化炭素の一部は、熱交換器5内の流路の途中から分岐された分岐管9を介して、冷却媒体としてタービン3に導入される。この冷却媒体の温度は、タービン3に導入される燃焼ガスの温度よりも低い温度である。この冷却媒体の温度は、冷却対象物に対する冷却効果と冷却対象物に生ずる熱応力とを考慮して、例えば、350℃~550℃程度であることが好ましい。
【0027】
圧縮機7で昇圧された二酸化炭素の残りは、系統の外部に排出される。系統の外部には、例えば、燃焼器2において燃焼により生成した二酸化炭素に相当する量の二酸化炭素が排出される。
【0028】
外部に排出された作動ガスは、例えば、回収装置により回収される。また、外部に排出された二酸化炭素は、例えば、石油採掘現場で用いられているEOR(Enhanced Oil Recovery)にも利用することができる。
【0029】
次に、実施の形態の静翼30(タービン静翼)が設けられたタービン3の構成について説明する。
【0030】
図2は、実施の形態の静翼30が設けられたタービン3の縦断面の一部を示した図である。図2に示された断面は、周方向に隣接する静翼30間における断面を示している。
【0031】
図2に示すように、タービン3は、円筒形状の外部ケーシング15と、外部ケーシング15の内側に設けられた、円筒形状の内部ケーシング16とを備える。内部ケーシング16の内側には、周方向に複数の静翼30が配置され、静翼翼列を構成している。なお、静翼30は、内部ケーシング16に支持されている。
【0032】
また、静翼翼列の直下流側には、タービンロータ17のロータディスク18に周方向に複数の動翼19(タービン動翼)を植設して構成された動翼翼列が配置されている。静翼翼列と動翼翼列は、タービンロータ軸方向に沿って交互に配設されている。静翼翼列と、この静翼翼列の直下流の動翼翼列とで一つのタービン段落を構成している。
【0033】
ここで、タービンロータ軸方向(以下、軸方向Xという)は、タービンロータ17の回転軸Oの延びる方向である。軸方向Xで、作動流体の流れの上流側(燃焼器側)を上流側Xu、作動流体の流れの下流側(タービン出口側)を下流側Xdとする。周方向は、タービンロータ17の回転軸Oを中心とした周方向である。
【0034】
また、回転軸Oに対して垂直な方向を径方向Rとする。径方向Rで、回転軸Oに近づく側を径方向内側Ri、回転軸Oから遠ざかる側を径方向外側Roとする。
【0035】
動翼19の外周は、例えば、シュラウドセグメント20で包囲されている。このシュラウドセグメント20は、燃焼ガスから内部ケーシング16への入熱を防止するとともに、動翼19の先端との隙間を調整し、適正な隙間を維持するためのものである。シュラウドセグメント20は、例えば、図2に示すように、内部ケーシング16に固定された静翼30によって支持されている。この場合、シュラウドセグメント20と、内部ケーシング16との間に、径方向および周方向に空隙部21が形成される。
【0036】
内部ケーシング16の内側において、静翼翼列および動翼翼列を備える空間には、円環状の燃焼ガス通路22が形成される。
【0037】
外部ケーシング15の上流側Xuには、図1に示した分岐管9が貫通している。そして、分岐管9は、内部ケーシング16の上流側Xuに連結されている。
【0038】
図2に示すように、内部ケーシング16において、静翼30を係止する係合溝23の径方向外側Roには、軸方向Xに、冷却媒体が導かれる導入孔24が形成されている。この導入孔24の上流側Xuの端部には、オリフィス24aが設けられている。オリフィス24aは、中央に開口を有し、導入孔24に導入される冷却媒体の流量を調整する。
【0039】
なお、導入孔24に導入される冷却媒体の流量は、オリフィス24aの開口径などによって調整される。このオリフィス24aを備えた導入孔24は、例えば、内部ケーシング16の周方向に複数設けられてもよい。
【0040】
分岐管9から内部ケーシング16内に流入した冷却媒体の一部は、オリフィス24aを通り、導入孔24に流入する。
【0041】
また、内部ケーシング16には、静翼30を備える位置に対応して径方向Rに貫通孔25が形成されている。導入孔24に流入した冷却媒体は、貫通孔25を通り静翼30(翼有効部40)内に導入される。
【0042】
ここで、各タービン段落の静翼30に導かれる冷却媒体の流量は、各静翼30に対応して形成された貫通孔25の孔径を変えることで調整される。換言すれば、貫通孔25を介して各静翼30に導入される冷却媒体の圧力は、各静翼30に対応して形成された貫通孔25の孔径を変えることで調整される。
【0043】
なお、ここでは、一つの導入孔24に導入された冷却媒体を、各貫通孔25を介して各静翼30に導いているが、この構成に限られない。
【0044】
例えば、各タービン段落の静翼30に対して導入孔24をそれぞれ設けてもよい。具体的には、例えば、タービン段落の初段の静翼30に対して、オリフィス24aを備える導入孔24が内部ケーシング16に、軸方向Xに形成される。また、タービン段落の第2段の静翼30に対して、オリフィス24aを備える導入孔24が内部ケーシング16に、軸方向Xに形成される。これらの各導入孔24は、例えば、内部ケーシング16の周方向に複数設けられてもよい。
【0045】
そして、分岐管9から内部ケーシング16内に流入した冷却媒体の一部は、オリフィス24aを介して各導入孔24に流入し、各貫通孔25を介して各静翼30に導かれる。この場合、各静翼30に導かれる冷却媒体の流量は、オリフィス24aの開口径、周方向に設けられる導入孔24の数などによって調整される。
【0046】
次に、実施の形態の静翼30の構成について説明する。
【0047】
図3は、実施の形態の静翼30の縦断面を示す図である。ここで、図3は、翼有効部40のキャンバーラインに沿った縦断面である。図4は、図3のA-A断面を示す図である。図5は、図3のB-B断面を示す図である。図6は、図3のC-C断面を示す図である。
【0048】
なお、図3図6では、冷却媒体の流れを矢印で示している。また、図4図6において、翼有効部40の外形を一点鎖線で示している。さらに、図4図6において、周方向に隣接する静翼30の一部も示している。
【0049】
図2および図3に示すように、静翼30は、翼有効部40と、外側シュラウド50と、内側シュラウド60とを備える。翼有効部40、外側シュラウド50および内側シュラウド60は、例えば、一体的に形成さている。翼有効部40は、例えば、前縁側(例えば、図3の左側)が湾曲断面形状を有し、後縁側(例えば、図3の右側)が先細断面形状を有する、翼型形状に構成されている。
【0050】
翼有効部40の周方向の隙間は、燃焼ガス通路22の一部を構成している。そして、翼有効部40の周囲を燃焼ガスが通過する。
【0051】
翼有効部40の径方向内側Riは、開口し、その開口は、内側シュラウド60の内側平板フランジ部61によって封鎖されている。翼有効部40の径方向外側Roは、開口し、外側シュラウド50が設けられている。具体的には、翼有効部40の径方向外側Roには、外側シュラウド50の外側平板フランジ部51が設けられている。
【0052】
外側シュラウド50の外側平板フランジ部51には、径方向外側Roに突出する一対の外側取付部52、53が設けられている。外側取付部52は、静翼30の前縁側に周方向に設けられ、外側取付部53は、静翼30の後縁側に周方向に設けられている。この外側取付部52、53は、図2に示す内部ケーシング16の係合溝23に係止される。これによって、静翼30が内部ケーシング16に支持される。
【0053】
ここで、本実施の形態の静翼30において、タービン段落の初段の静翼30と、第2段以降の静翼30とでは、上流側Xuの構成が若干異なる。ここでは、まず、初段の静翼30について説明する。そして、第2段以降の静翼30については、初段の静翼30の一連の説明後、初段の静翼30と異なる構成について主に説明する。
【0054】
(シール部の構成)
ここで、周方向に設けられた静翼30間、静翼30と静翼30の上流側Xuのタービン部材との間、静翼30と静翼30の下流側Xdのタービン部材との間には、シールプレートが設けられている。なお、図2に示された断面図において、溝部11、12、80、81、82、83、84、85、100、101、102に嵌合されたシールプレート90、91、92、93、94、95、96、97は、便宜上、線で示されている。
【0055】
シールプレート90、91、92、93、94、95、96、97は、燃焼ガス通路22を流れる燃焼ガスの燃焼ガス通路22の外部への漏洩や、静翼30内に導入される冷却媒体の燃焼ガス通路22への漏洩を防止する。
【0056】
まず、周方向に設けられた静翼30間のシール部の構成について説明する。
【0057】
図2および図3に示すように、周方向に隣接する外側シュラウド50の対向する側面50a、50bには、溝部80、81、82が形成されている。溝部80、81、82は、スリット状に形成されている。
【0058】
溝部80は、外側平板フランジ部51の側面50aに形成されている。具体的には、溝部80は、軸方向Xに延びる側面50aに、所定の溝幅を有して軸方向Xに延設されている。
【0059】
溝部81は、外側平板フランジ部51の側面50aおよび外側取付部52、53の側面50bに形成されている。具体的には、溝部81は、側面50aおよび径方向Rに延びる側面50b(外側取付部52、53の側面50b)に、所定の溝幅を有して径方向Rに延設されている。
【0060】
なお、上流側Xuに形成された溝部81は、溝部80の上流側端部から径方向外側Roに延設されている。
【0061】
溝部82は、外側平板フランジ部51の側面50aに形成されている。具体的には、溝部82は、側面50aに、溝部80の下流側端部から径方向外側Roに所定の溝幅を有して延設されている。この溝部82は、図2に示すように、シュラウドセグメント20の上流端側に径方向Rに延設された溝部100と繋がるように形成されている。
【0062】
周方向に隣接する外側シュラウド50のそれぞれの溝部80、81には、シールプレート90、91がそれぞれ嵌合されている。そして、周方向に隣接する外側シュラウド50間をシールする。
【0063】
シールプレート90、91を備えることで、燃焼ガス通路22を流れる燃焼ガスと、静翼30内に導入される冷却媒体との混合を防止できる。
【0064】
また、周方向に隣接する、外側シュラウド50の溝部82およびシュラウドセグメント20の溝部100には、シールプレート92が嵌合されている。そして、周方向に隣接する外側シュラウド50の下流端側とシュラウドセグメント20の上流端側との間をシールする。
【0065】
シールプレート92を備えることで、燃焼ガス通路22を流れる燃焼ガスがシュラウドセグメント20と内部ケーシング16との間の空隙部21に流入することを防止する。
【0066】
また、周方向に隣接する内側シュラウド60の内側平板フランジ部61の対向する側面60aには、溝部83が形成されている。溝部83は、軸方向Xに延びる側面60aに、所定の溝幅を有して軸方向Xに延設されている。
【0067】
周方向に隣接する内側シュラウド60のそれぞれの溝部83には、シールプレート93が嵌合されている。そして、周方向に隣接する内側シュラウド60間をシールする。
【0068】
シールプレート93を備えることで、燃焼ガス通路22を流れる燃焼ガスが、タービンロータ17と静翼30との間の空間に流出することを防止できる。
【0069】
ここで、シールプレート90、91、92、93は、板状部材で構成される。軸方向Xに延びる側面50aに形成された溝部80に嵌合されたシールプレート90は、第1の板状部材として機能する。軸方向Xに延びる側面60aに形成された溝部83に嵌合されたシールプレート93は、第2の板状部材として機能する。
【0070】
次に、静翼30と静翼30の上流側Xuのタービン部材との間のシール部の構成について説明する。なお、このシール部は、初段の静翼30に備えられる。
【0071】
ここで、初段の静翼30の場合、静翼30の上流側Xuのタービン部材は、図2に示すように、燃焼器2の下流端部材となる。具体的には、燃焼器2のトランジションピース10の下流端部材となる。
【0072】
なお、燃焼器2のトランジションピース10の下流端部材は、第1のタービン部材、第2のタービン部材として機能する。
【0073】
初段の静翼30の場合、図2および図3に示すように、上流側Xuに隣接するトランジションピース10の下流側端面10a、およびこの下流側端面10aに対向する外側シュラウド50の外側平板フランジ部51の上流側端面51aには、溝部11、84が形成されている。溝部11、84は、スリット状に形成されている。
【0074】
溝部11は、周方向に延びる下流側端面10aに、所定の溝幅を有して周方向に延設されている。溝部84は、周方向に延びる上流側端面51aに、所定の溝幅を有して周方向に延設されている。
【0075】
この対向するそれぞれの溝部11、84には、シールプレート94が嵌合されている。そして、下流側端面10aと上流側端面51aとの間を周方向に亘ってシールする。なお、シールプレート94の構成は、前述した他のシールプレートの構成と同じである。また、シールプレート94は、第4の板状部材として機能する。
【0076】
また、初段の静翼30の場合、図2および図3に示すように、上流側Xuに隣接するトランジションピース10の下流側端面10b、およびこの下流側端面10bに対向する内側シュラウド60の内側平板フランジ部61の上流側端面61aには、溝部12、85が形成されている。溝部12、85は、スリット状に形成されている。
【0077】
溝部12は、周方向に形成される下流側端面10bに、所定の溝幅を有して周方向に延設されている。溝部85は、周方向に形成される上流側端面61aに、所定の溝幅を有して周方向に延設されている。
【0078】
この対向するそれぞれの溝部12、85には、シールプレート95が嵌合されている。そして、下流側端面10bと上流側端面61aとの間を周方向に亘ってシールする。なお、シールプレート95の構成は、前述した他のシールプレートの構成と同じである。また、シールプレート95は、第3の板状部材として機能する。
【0079】
シールプレート94、95を備えることで、燃焼ガス通路22を流れる燃焼ガスが、内部ケーシング16内の空間に流出することを防止できる。
【0080】
次に、周方向に設けられたシュラウドセグメント20間のシール部の構成について説明する。
【0081】
ここで、シュラウドセグメント20においては、上流側Xuにおいて周方向に設けられたシュラウドセグメント20間をシールする前述したシールプレート92以外にも、シールプレート96、97が設けられている。
【0082】
図2に示すように、シールプレート96は、周方向に設けられたシュラウドセグメント20間に設けられている。このシールプレート96は、燃焼ガス通路22を流れる燃焼ガスが、シュラウドセグメント20と内部ケーシング16との間の空隙部21に流入することを防止する。
【0083】
周方向に隣接するシュラウドセグメント20の対向する側面20aには、前述した溝部100以外にも、溝部101、102が形成されている。溝部101、102は、スリット状に形成されている。
【0084】
具体的には、溝部101は、軸方向Xに延びる側面20aに、所定の溝幅を有して軸方向Xに延設されている。溝部101の上流端は、溝部100の径方向外側Roの端部に繋がっている。
【0085】
溝部102は、シュラウドセグメント20の下流側端部に、所定の溝幅を有して径方向Rに延設されている。溝部102の径方向外側Roの端部は、溝部101の下流端に繋がっている。なお、溝部102は、後述するタービン段落が2段以降の静翼30の外側平板フランジ部51の上流側Xuに形成される溝部86と繋がるように形成されている。
【0086】
(冷却媒体導入通路および冷却媒体排出通路の構成)
外側シュラウド50の外側平板フランジ部51は、例えば、図4に示すように、多角形状の平板形状を有している。この外側平板フランジ部51には、図3に示すように、翼有効部40の中空部41、42、43に対応する開口部54、55、56が形成されている。開口部54、55は、例えば、それぞれ中空部41、42の形状と同じ開口形状に形成されている。また、開口部56は、複数の中空部43が形成された領域全体に開口するように形成されている。
【0087】
なお、開口部54、55、56は、外側平板フランジ部51に形成された径方向Rに貫通する貫通孔である。また、外側平板フランジ部51の開口部54、55を介して翼有効部40の中空部41、42、43に冷却媒体を導入する通路は、第1の冷却媒体導入通路として機能する。
【0088】
外側平板フランジ部51には、図3に示すように、冷却媒体を開口部54および中空部41に導く冷却媒体導入通路57が形成されている。また、外側平板フランジ部51には、中空部43および開口部56内の冷却媒体を静翼30に外部に排出する冷却媒体排出通路58が形成されている。
【0089】
なお、冷却媒体導入通路57は、第2の冷却媒体導入通路として機能する。また、冷却媒体排出通路58は、第1の冷却媒体排出通路として機能する。
【0090】
冷却媒体導入通路57は、図3に示すように、外側平板フランジ部51の肉厚内に外側平板フランジ部51の表面に沿う方向に形成されている。換言すると、冷却媒体導入通路57は、外側平板フランジ部51の肉厚部を水平方向に貫通して形成されている。
【0091】
また、冷却媒体導入通路57は、図4に示すように、静翼30の前縁側に設けられている。冷却媒体導入通路57は、少なくとも1つ形成され、図4に示すように、複数形成されてもよい。
【0092】
なお、前縁側とは、翼有効部40の中央よりも前縁側をいい、後縁側とは、翼有効部40の中央よりも後縁側をいう。翼有効部40の中央としては、例えば、翼有効部40のキャンバーラインの中央などが例示される。
【0093】
ここで、図4に示すように、シールプレート90を備えることで、周方向に隣接する外側平板フランジ部51間には、所定の間隙が形成される。この間隙を備えることで、冷却媒体導入通路57の入口が外側平板フランジ部51の周方向の側面50aに形成されていても、冷却媒体導入通路57に冷却媒体を導入することができる。
【0094】
冷却媒体導入通路57は、図2に示すように、軸方向Xに延びる側面50aに形成された溝部80に嵌合されたシールプレート90よりも径方向外側Roに形成されている。また、冷却媒体導入通路57は、トランジションピース10の下流側端面10aと外側平板フランジ部51の上流側端面51aとの間をシールするシールプレート94よりも径方向外側Roに形成されている。
【0095】
ここで、図4に示すように、シールプレート94を備えることで、下流側端面10aと上流側端面51aとの間には、所定の間隙が形成される。冷却媒体は、この隙間から冷却媒体導入通路57を通り開口部54内へ流れる。また、下流側端面10aと上流側端面51aとの間に流れる冷却媒体は、シールプレート94に遮られ、燃焼ガス通路22内へ流れない。さらに、シールプレート94を備えることで、燃焼ガス通路22を流れる燃焼ガスは、内部ケーシング16内の空間に流出しない。
【0096】
冷却媒体排出通路58は、図3に示すように、外側平板フランジ部51の肉厚内に外側平板フランジ部51の表面に沿う方向に形成されている。換言すると、冷却媒体排出通路58は、外側平板フランジ部51の肉厚部を水平方向に貫通して形成されている。
【0097】
また、冷却媒体排出通路58は、図5に示すように、静翼30の後縁側に設けられている。冷却媒体排出通路58は、少なくとも1つ形成され、図5に示すように、複数形成されてもよい。
【0098】
ここで、図5に示すように、シールプレート90を備えることで、周方向に隣接する外側平板フランジ部51間には、所定の間隙が形成される。この間隙を備えることで、冷却媒体排出通路58の出口が外側平板フランジ部51の周方向の側面50aに形成されていても、冷却媒体排出通路58から外部に冷却媒体を排出することができる。
【0099】
さらに、冷却媒体排出通路58は、図3に示すように、冷却媒体導入通路57よりも径方向内側Riに形成されている。また、冷却媒体排出通路58は、図2に示すように、軸方向Xに延びる側面50aに形成された溝部80に嵌合されたシールプレート90よりも径方向内側Riに形成されている。
【0100】
また、冷却媒体排出通路58は、シールプレート92よりも径方向内側Riに形成されている。
【0101】
冷却媒体排出通路58をシールプレート90よりも径方向内側Riに設けることで、静翼30から排出された冷却媒体は、再度静翼30の内部へ流入することなく、燃焼ガス通路22内へ流出する。
【0102】
さらに、冷却媒体排出通路58をシールプレート90、92よりも径方向内側Riに設けることで、静翼30から排出された冷却媒体は、シュラウドセグメント20と内部ケーシング16との間の空隙部21に流入することもない。
【0103】
内側シュラウド60の内側平板フランジ部61は、外側平板フランジ部51と同様に、例えば、図6に示すように、多角形状の平板形状を有している。この内側平板フランジ部61には、図3に示すように、翼有効部40の中空部41、42、43に対応する凹部62、63、64が形成されている。
【0104】
凹部62、63は、例えば、それぞれ中空部41、42の形状と同じ形状に形成されている。凹部64は、複数の中空部43が形成された領域全体に対応して窪みを有するように形成されている。凹部63と凹部64は、軸方向Xに連通している。
【0105】
内側平板フランジ部61には、図3に示すように、中空部41および凹部62内の冷却媒体を静翼30の外部に排出する冷却媒体排出通路65が形成されている。さらに、内側平板フランジ部61には、中空部43および凹部64内の冷却媒体を静翼30の外部に排出する冷却媒体排出通路66が形成されている。なお、冷却媒体排出通路65、66は、第2の冷却媒体排出通路として機能する。
【0106】
冷却媒体排出通路65、66は、図3に示すように、内側平板フランジ部61の肉厚内に内側平板フランジ部61の表面に沿う方向に形成されている。換言すると、冷却媒体排出通路65、66は、内側平板フランジ部61の肉厚部を水平方向に貫通して形成されている。また、冷却媒体排出通路65と冷却媒体排出通路66は、例えば、同じ径方向位置に形成される。
【0107】
冷却媒体排出通路65は、図6に示すように、静翼30の前縁側に設けられている。また、冷却媒体排出通路66は、静翼30の後縁側に設けられている。冷却媒体排出通路65、66は、少なくとも1つ形成され、図6に示すように、複数形成されてもよい。
【0108】
ここで、図6に示すように、シールプレート93を備えることで、周方向に隣接する内側平板フランジ部61間には、所定の間隙が形成される。この間隙を備えることで、冷却媒体排出通路65、66の出口が内側平板フランジ部61の周方向の側面60aに形成されていても、冷却媒体排出通路65、66から外部に冷却媒体を排出することができる。
【0109】
また、図6に示すように、シールプレート95を備えることで、下流側端面10bと内側平板フランジ部61の上流側端面61aとの間には、所定の間隙が形成される。冷却媒体排出通路65から排出された冷却媒体は、この隙間を通り燃焼ガス通路22内へ流出する。
【0110】
冷却媒体排出通路65、66は、図2に示すように、軸方向Xに延びる側面60aに形成された溝部83に嵌合されたシールプレート93よりも径方向外側Roに形成されている。これによって、冷却媒体排出通路65、66から排出された冷却媒体は、燃焼ガス通路22内へ流出する。なお、冷却媒体排出通路65、66から排出された冷却媒体は、タービンロータ17と静翼30との間の空間に流出することもない。
【0111】
また、冷却媒体排出通路65は、トランジションピース10の下流側端面10bと内側平板フランジ部61の上流側端面61aとの間をシールするシールプレート95よりも径方向外側Roに形成されている。これによって、静翼30から排出された冷却媒体は、内部ケーシング16内の空間に流出することなく、燃焼ガス通路22内へ流出する。
【0112】
次に、翼有効部40の内部の構成について説明する。
【0113】
図3に示すように、翼有効部40の内部には、中空部41、42、43が形成されている。この中空部41、42、43には、翼有効部40の内部に導入された冷却媒体を流すための流路が形成されている。換言すれば、中空部41、42、43は、翼有効部40の内部に径方向Rに形成された貫通孔である。
【0114】
なお、図3に示す翼有効部40内の冷却媒体の流路は一例であり、これに限られるものではない。
【0115】
中空部41は、例えば、図3に示すように、翼有効部40の前縁側に形成されている。中空部41の横断面形状は、特に限定されるものではないが、例えば、前縁側の翼有効部40の外形形状に対応する形状としてもよい。
【0116】
中空部42は、翼有効部40の中央に形成され、中空部43は、翼有効部40の後縁側に形成されている。中空部42、43の横断面形状も特に限定されるものではない。ここでは、中空部42の横断面形状として半楕円形状、中空部43の横断面形状として円形形状を例示している。
【0117】
後縁側に形成される中空部43は、少なくとも1つ形成される。ここでは、中空部43が複数形成された一例を示している。
【0118】
中空部41および開口部54、55には、図3に示すように、インサート部材70が配置されている。このインサート部材70は、板状部71と、筒体部75とを備える。
【0119】
板状部71は、開口部54、55を覆うように外側平板フランジ部51に設けられている。板状部71には、開口部54に連通する開口72および開口部55に連通する開口73が形成されている。板状部71は、例えば、図3に示すように、外周縁の一部を外側平板フランジ部51に支持されて、所定の位置に固定されている。
【0120】
筒体部75は、径方向外側Roが開口し、径方向内側Riが閉鎖された筒体である。筒体部75の径方向外側Roの開口の周囲には、軸方向Xに延びるフランジ部77を備える。フランジ部77の外周側面77aは、開口部54の内壁54aに接触している。
【0121】
また、フランジ部77の一部から径方向外側Roに延びる支持板78は、板状部71に固定されている。これによって、筒体部75は、板状部71に支持される。また、筒体部75の、中空部41の内壁41aと面する箇所(筒体部75の側壁)には、複数の噴出孔76が形成されている。
【0122】
ここで、図3に示したタービン段落の初段の静翼30において、筒体部75の底壁に噴出孔76を備えない一例を示したが、底壁に複数の噴出孔76を備えてもよい。また、図示していないが、タービン段落の第2段以降の静翼30においては、筒体部75の底壁にも噴出孔76が備えられている。
【0123】
筒体部75は、開口部54の内壁54aおよび中空部41の内壁41aと所定の空隙をあけて、開口部54および中空部41内に挿入されている。そして、フランジ部77によって、筒体部75の内部の空間と、筒体部75と内壁54aおよび内壁41aの空間とが区画されている。
【0124】
また、外側平板フランジ部51に形成された冷却媒体導入通路57は、フランジ部77よりも径方向外側Roに位置している。換言すると、冷却媒体導入通路57の出口は、フランジ部77よりも径方向外側Roに位置している。
【0125】
フランジ部77を備えることで、冷却媒体導入通路57から開口部54内に導入された冷却媒体は、まず、筒体部75の内部に導かれる。
【0126】
また、内側平板フランジ部61に形成された冷却媒体排出通路65は、筒体部75と凹部62の内壁62aとの空間に連通している。これによって、筒体部75の噴出孔76から中空部41の内壁41aに向かって噴出された冷却媒体は、冷却媒体排出通路65を通り外部に排出される。
【0127】
複数の中空部43が形成された領域全体に開口する開口部56は、平板79によって塞がれている。
【0128】
図3に示すように、外側平板フランジ部51に形成された冷却媒体排出通路58は、開口部56に連通している。また、内側平板フランジ部61に形成された冷却媒体排出通路66は、凹部64に連通している。そのため、開口部56内の冷却媒体は、冷却媒体排出通路58を通り外部に排出される。凹部64内の冷却媒体は、冷却媒体排出通路66を通り外部に排出される。
【0129】
次に、実施の形態の静翼30における冷却媒体の流動について、図2図6を参照して説明する。
【0130】
なお、冷却媒体としては、例えば、前述したように、熱交換器5内の流路の途中から抽気された超臨界流体の二酸化炭素が使用される(図1参照)。
【0131】
熱交換器5内の流路の途中から分岐された冷却媒体は、図2に示すように、分岐管9を介して内部ケーシング16内に導入される。内部ケーシング16内に導入された冷却媒体の一部は、オリフィス24aを通り、導入孔24に流入する。
【0132】
導入孔24に流入した冷却媒体は、内部ケーシング16の貫通孔25を通り、静翼30側に流れる。貫通孔25を通り静翼30側に流れる冷却媒体は、外側取付部52、53、外側平板フランジ部51、内部ケーシング16およびシールプレート90、91で囲まれた環状の空間110に流れる。
【0133】
空間110に流入した冷却媒体の一部は、図3に示すように、径方向Rに貫通する板状部71の開口72、73を通り、翼有効部40内に流入する。具体的には、板状部71の開口72を通った冷却媒体は、筒体部75内に流入する。板状部71の開口73を通った冷却媒体は、中空部42に流入する。
【0134】
空間110に流入した冷却媒体の残部は、図2図3図4に示すように、空間110に入口が開口する冷却媒体導入通路57を通り、開口部54に流入する。開口部54に流入した冷却媒体は、筒体部75内に流入する。
【0135】
一方、内部ケーシング16内に導入された冷却媒体の残部は、トランジションピース10の下流側端面10aと外側平板フランジ部51の上流側端面51aとの間の隙間から冷却媒体導入通路57を通り開口部54内へ流れる。なお、これらの冷却媒体導入通路57の入口は、環状の燃焼器2が設けられた内部ケーシング16内の空間111に開口している。そのため、これらの冷却媒体導入通路57には、空間111から直接冷却媒体が導入される。開口部54内へ流れた冷却媒体は、筒体部75内に流入する。
【0136】
ここで、上記したように、複数設けられた冷却媒体導入通路57には、空間111から冷却媒体が導入されるものと、空間110から冷却媒体が導入されるものがある。
【0137】
そして、冷却媒体が冷却媒体導入通路57を通過する際、外側平板フランジ部51は冷却される。
【0138】
ここで、分岐管9を介して内部ケーシング16内に導入される冷却媒体の流量は、従来の静翼を冷却するための冷却媒体の流量と同じである。そして、本実施の形態では、冷却媒体は、径方向Rから導入される冷却媒体導入通路と、外側平板フランジ部51の肉厚内に外側平板フランジ部51の表面に沿って形成された冷却媒体導入通路57とに分かれて流れる。すなわち、径方向Rから導入される冷却媒体導入通路から翼有効部40内に流入する冷却媒体の流量と、冷却媒体導入通路57から翼有効部40内に流入する冷却媒体の流量との合計は、従来の静翼を冷却するための冷却媒体の流量と同じである。
【0139】
筒体部75内に流入した冷却媒体は、図3に示すように、噴出孔76から中空部41の内壁41aに向けて噴出され、内壁41aに衝突する。冷却媒体を内壁41aに衝突させることで、内壁41aと冷却媒体との間の熱伝達が促進され、翼有効部40が効率よく冷却される。
【0140】
内壁41aに衝突した冷却媒体は、内側平板フランジ部61の冷却媒体排出通路65、トランジションピース10の下流側端面10bと内側平板フランジ部61の上流側端面61aとの間の隙間を通り燃焼ガス通路22内へ流出する。
【0141】
冷却媒体が冷却媒体排出通路65を通過する際、内側平板フランジ部61は冷却される。
【0142】
燃焼ガス通路22内へ流出した冷却媒体は、燃焼ガス通路22を流れる燃焼ガスとともに下流側Xdへ流れる。
【0143】
一方、外側平板フランジ部51の開口部55、翼有効部40の中空部42に流入した冷却媒体は、中空部42を構成する壁面を冷却しつつ、径方向内側Riへ流れる。そして、冷却媒体は、内側平板フランジ部61の凹部63、64を通り、翼有効部40の中空部43を流れる。
【0144】
内側平板フランジ部61の凹部63、64を流れる冷却媒体の一部は、内側平板フランジ部61の冷却媒体排出通路66を通り燃焼ガス通路22内へ流出する。冷却媒体が冷却媒体排出通路66を通過する際、内側平板フランジ部61は冷却される。
【0145】
翼有効部40の中空部43を径方向外側Roへ流れる冷却媒体は、開口部56に流入する。開口部56に流入した冷却媒体は、外側平板フランジ部51の冷却媒体排出通路58を通り燃焼ガス通路22内へ流出する。冷却媒体が冷却媒体排出通路58を通過する際、外側平板フランジ部51は冷却される。
【0146】
(タービン段落が第2段以降の静翼の構成)
ここで、タービン段落が第2段以降の静翼30について、初段の静翼30の構成と異なる構成部分について説明する。
【0147】
図2に示すように、タービン段落が第2段以降の静翼30では、外側シュラウド50の外側平板フランジ部51の上流側Xuにおける周方向のシール部の構成が、初段の静翼30における外側平板フランジ部51の上流側Xuにおける周方向のシール部の構成と異なる。ここでは、この異なる構成について主に説明する。
【0148】
なお、第2段以降の静翼30における他のシール部の構成は、初段の静翼30におけるシール部の構成と同じである。
【0149】
図7は、実施の形態における、タービン段落が第2段以降の静翼30について、図3のA-A断面に相当する断面の一部を示す図である。なお、ここでは、図2に示された第2段の静翼30および図7を主に参照する。また、図7において、初段の静翼30の構成と同一の構成部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略または簡略する。
【0150】
タービン段落が第2段以降の静翼30において、図2および図7に示すように、外側平板フランジ部51の周方向の側面50aの上流側端部には、所定の溝幅を有する溝部86が径方向Rに延設されている。図2に示すように、溝部86の径方向内側Riの端部は、外側平板フランジ部51の側面50aに形成されている溝部80の上流端と繋がっている。
【0151】
なお、溝部86は、前述したように、シュラウドセグメント20の下流端側に径方向Rに延設された溝部102と繋がるように形成されている。そして、溝部86と溝部102に、シールプレート97が勘合されている。
【0152】
シールプレート92、96、97を備えることで、燃焼ガス通路22を流れる燃焼ガスがシュラウドセグメント20と内部ケーシング16との間の空隙部21に流入することを防止する。
【0153】
このように、第2段以降の静翼30では、外側シュラウド50および内側シュラウド60の上流側Xuには、周方向の静翼30間をシールするシール部を備えている。一方、第2段以降の静翼30では、外側シュラウド50と外側シュラウド50の上流側Xuに隣接するタービン部材との間をシールするシール部材、および内側シュラウド60と内側シュラウド60の上流側Xuに隣接するタービン部材との間をシールするシール部材は備えていない。
【0154】
内部ケーシング16の貫通孔25の静翼30側には、外側取付部52、53、外側平板フランジ部51、内部ケーシング16およびシールプレート90、91で囲まれた環状の空間110を有する。
【0155】
ここで、内部ケーシング16の導入孔24に流入した冷却媒体は、貫通孔25を通り、静翼30側に流れる。貫通孔25を通り静翼30側に流れる冷却媒体は、環状の空間110に流れる。
【0156】
空間110に流入した冷却媒体の一部は、径方向Rに貫通する板状部71の開口72、73を通り、翼有効部40内に流入する。具体的には、板状部71の開口72を通った冷却媒体は、筒体部75内に流入する。板状部71の開口73を通った冷却媒体は、中空部42に流入する。
【0157】
空間110に流入した冷却媒体の残部は、空間110に入口が開口する冷却媒体導入通路57を通り、開口部54に流入する。開口部54に流入した冷却媒体は、筒体部75内に流入する。
【0158】
ここで、第2段以降の静翼30では、冷却媒体導入通路57のすべてが、空間110に入口が開口している。
【0159】
なお、冷却媒体の流動については、前述した初段の静翼30における流動と同様である。
【0160】
上記したように、実施の形態の静翼30によれば、径方向Rに貫通する板状部71の開口72、73を介して翼有効部40内に冷却媒体を導入する冷却媒体導入通路以外にも、外側平板フランジ部51に形成された冷却媒体導入通路57を介して翼有効部40内に冷却媒体を導入することができる。
【0161】
冷却媒体導入通路57には、分岐管9から内部ケーシング16内に流入した冷却媒体が流れる。すなわち、冷却媒体導入通路57を流れる冷却媒体の温度は、冷却媒体排出通路58、65、66を流れる冷却媒体の温度よりも低い。そのため、外側平板フランジ部51の冷却を促進することができる。
【0162】
ここで、静翼30において、上流側Xuの部位は、下流側Xdの部位よりも高温の燃焼ガスに曝される。そこで、冷却媒体導入通路57を静翼30の前縁側に設けることで、高温の燃焼ガスと接触する静翼30の上流側Xuを積極的に冷却することができる。
【0163】
また、冷却媒体導入通路57を介して翼有効部40内に冷却媒体を導入することで、冷却媒体の流量が従来の静翼に導入される冷却媒体の流量と同じであっても、従来の動翼よりも効果的に静翼30を冷却することができる。
【0164】
さらに、翼有効部40を冷却した冷却媒体を外側シュラウド50および内側シュラウド60の冷却に使用することで、冷却媒体の流量を抑制しつつ、冷却媒体の冷却能力を最大限に利用することができる。これによっても、静翼30を効率よく冷却することができる。
【0165】
ここで、実施の形態の静翼30の構成は、上記した構成に限られない。燃焼ガス通路22を流れる燃焼ガス(作動流体)に曝される静翼30の翼面に、例えば、遮熱コーティング(TBC)を施してもよい。
【0166】
遮熱コーティング層は、例えば、耐環境性に優れた金属ボンド層と、低熱伝導性のセラミックストップ層とから構成される。なお、遮熱コーティング層の構成は、特に限定されるものではなく、使用する環境に応じて、一般的に使用されている構成を適用することができる。
【0167】
このように遮熱コーティング層を備えることで、燃焼ガスからの入熱量が低減され、冷却媒体の流量を低減することができる。
【0168】
なお、ここでは、COタービンを例示して説明したが、他のガスタービンにも本実施の形態の構成を適用することもできる。
【0169】
以上説明した実施形態によれば、冷却媒体の供給量を増加することなく、翼の冷却を促進することが可能となる。
【0170】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0171】
1…ガスタービン設備、2…燃焼器、3…タービン、4…発電機、5…熱交換器、6…凝縮器、7…圧縮機、8、9…分岐管、10…トランジションピース、10a、10b…下流側端面、11、12…溝部、15…外部ケーシング、16…内部ケーシング、17…タービンロータ、18…ロータディスク、19…動翼、20…シュラウドセグメント、20a、50a、50b、60a…側面、21…空隙部、22…燃焼ガス通路、23…係合溝、24…導入孔、24a…オリフィス、25…貫通孔、30…静翼、40…翼有効部、41、42、43…中空部、41a、54a、62a…内壁、50…外側シュラウド、51…外側平板フランジ部、51a、61a…上流側端面、52、53…外側取付部、54、55、56…開口部、57…冷却媒体導入通路、58、65、66…冷却媒体排出通路、60…内側シュラウド、61…内側平板フランジ部、62、63、64…凹部、70…インサート部材、71…板状部、72、73…開口、75…筒体部、76…噴出孔、77…フランジ部、77a…外周側面、78…支持板、79…平板、80、81、82、83、84、85、86、100、101、102…溝部、90、91、92、93、94、95、96、97…シールプレート、110、111…空間。
図1
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図7