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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】表示装置、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/22 20060101AFI20220613BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220613BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20220613BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20220613BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20220613BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
H05B33/22 Z
H05B33/14 A
H01L27/32
H05B33/12 B
H05B33/10
G09F9/30 309
G09F9/30 365
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018210428
(22)【出願日】2018-11-08
(65)【公開番号】P2020077535
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小亀 平章
【審査官】藤岡 善行
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-113104(JP,A)
【文献】特開2004-6764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/22
H01L 51/50
H01L 27/32
H05B 33/12
H05B 33/10
G09F 9/30
H05B 33/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素が配列された表示領域を有する基板を備えた表示装置であって、
前記表示領域を覆い平面形状が略矩形である有機膜と、
前記有機膜の縁に沿って位置し、前記表示領域側に向いた壁面を備えたダム部と、を有し、
前記略矩形は、第1の方向に沿った辺と当該第1の方向に直交する第2の方向に沿った辺とからなる矩形にて、前記第1及び第2の方向に対して傾斜した輪郭をなす変形部を設けた形状であり、
前記壁面は、前記第1の方向に沿った複数の第1の部分壁面と前記第2の方向に沿った複数の第2の部分壁面とからなり、
前記複数の第1の部分壁面は第1の単位長の整数倍の長さを有し、前記複数の第2の部分壁面は第2の単位長の整数倍の長さを有し、
前記略矩形の前記変形部において、前記第1の部分壁面と前記第2の部分壁面とはジグザグにつながること、
を特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表示装置において、
前記変形部は、前記矩形の少なくとも1つの角に設けられた面取り部であること、を特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の表示装置において、
前記面取り部の概略の平面形状が外向きに凸の円弧である場合に、
当該面取り部に隣接する前記略矩形の2辺のうち前記第1の方向の辺から前記第2の方向の辺へ向かう順に、当該面取り部における前記壁面を構成する前記第1の部分壁面の長さは広義単調減少し、一方、前記第2の部分壁面の長さは広義単調増加すること、
を特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の表示装置において、
有機材料からなる発光層を含み前記表示領域に配列された発光素子と、
前記発光素子の上に位置する第1の前記有機膜と、
前記第1の有機膜の縁に沿った第1の前記ダム部と、
前記発光素子と前記第1の有機膜との間、及び前記第1の有機膜の上にそれぞれ設けられ、前記第1の有機膜の縁の外側にて互いに接して当該第1の有機膜を包み込む2つの無機膜と、
を有することを特徴とする表示装置。
【請求項5】
請求項4に記載の表示装置において、
前記第1の有機膜及び前記無機膜の上に位置し、前記第1のダム部より外側まで延在した第2の前記有機膜と、
前記第2の有機膜の縁に沿った第2の前記ダム部と、
を有することを特徴とする表示装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載の表示装置において、
前記有機膜の厚さの前記ダム部の前記壁面に沿った変化における最小厚みは最大厚みの1/2以上であること、を特徴とする表示装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1つに記載の表示装置において、
前記第1の単位長と前記第2の単位長とは等しいこと、を特徴とする表示装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7に記載の表示装置を製造する方法であって、
前記有機膜をインクジェット方式で滴下し前記基板に塗布する工程を有し、
前記第1及び第2の単位長はそれぞれ前記第1及び第2の方向におけるインクジェットの滴下ピッチに応じて定められていること、
を特徴とする表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機エレクトロルミネッセンス(electroluminescence:EL)素子を用いた表示装置である有機EL表示装置が実用化されている。有機EL素子は一般にOLED(organic light emitting diode)と称される。OLEDを構成する有機材料は水分に対して脆弱であり、そのため有機EL表示装置はOLEDの水分による劣化でダークスポット等の点灯不良が生じるおそれがあった。また、液晶表示装置においても、浸入した水分の影響を受けて薄膜トランジスタ(thin film transistor:TFT)の特性が変動し、表示品位の劣化が発生する問題が生じていた。
【0003】
この問題に対し、特許文献1は、表示素子を封止する平坦化封止膜を表示領域に設けることで、表示品位の劣化を防止した表示装置を開示している。当該平坦化封止膜は樹脂膜からなる平坦化層の上下を封止層で挟んだ多層構造を有する。ここで、樹脂膜はインクジェット法などにより流動性を有する樹脂を滴下し、硬化することで形成される。その際、樹脂を滴下する領域の周囲には当該樹脂を堰き止めるダム部が設けられる。
【0004】
図5は従来の表示装置の模式的な部分平面図であり、ダム部2のレイアウト及びインクジェット法による樹脂の滴下位置(吐出位置)4を示している。表示装置の基板面に樹脂膜を形成するインクジェットプリンタは、吐出ノズルを表示装置の基板面に対して相対的に移動させる機構を備える。x方向、y方向を基板面に沿った互いに直交する方向とすると、当該機構はノズルの位置をx方向、y方向それぞれについて所定ピッチで変えることができる。つまり、基板面に対する樹脂の滴下位置4は、x方向とy方向とにそれぞれ所定ピッチで2次元配列されたグリッド6を単位として制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-147165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
表示領域は基本的に矩形またはそれに近い形状とされることが多く、それに対応して平坦化封止膜の平面形状及び、ダム部のレイアウトは略矩形とされ得、上述のx方向、y方向は基本的に矩形に対応する辺8に沿って設定される。よって、辺8に沿った部分ではグリッド6及びダム部2は共にx方向又はy方向に沿って直線的に配置され、当該部分では両者の間隔は一定となる。
【0007】
一方、略矩形は矩形とは相違する部分(非矩形部分)を含む。図5では矩形の角の円弧状の面取り部10が非矩形部分となる。非矩形部分ではダム部2はx方向及びy方向に沿わずに斜行したり湾曲したりした形状とされ、グリッド6のx方向及びy方向の並びと並行しない。その結果、滴下位置4を含むグリッド6の2次元配列の輪郭とダム部2との距離は非矩形部分では均一ではなくなり、樹脂膜の端部の位置制御が難しくなるという問題があった。例えば、樹脂膜がダム部2まで達しない部分やダム部2からはみ出す部分が生じ、当該部分にて平坦化封止膜の機能が損なわれ、表示品位の低下の原因となり得る。
【0008】
本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、非矩形部分での樹脂膜の端部の位置制御を容易とし、表示品位の低下防止を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係る表示装置は、複数の画素が配列された表示領域を有する基板を備えた表示装置であって、前記表示領域を覆い平面形状が略矩形である有機膜と、前記有機膜の縁に沿って位置し、前記表示領域側に向いた壁面を備えたダム部と、を有し、前記略矩形は、第1の方向に沿った辺と当該第1の方向に直交する第2の方向に沿った辺とからなる矩形にて、前記第1及び第2の方向に対して傾斜した輪郭をなす変形部を設けた形状であり、前記壁面は、前記第1の方向に沿った複数の第1の部分壁面と前記第2の方向に沿った複数の第2の部分壁面とからなり、前記複数の第1の部分壁面は第1の単位長の整数倍の長さを有し、前記複数の第2の部分壁面は第2の単位長の整数倍の長さを有し、前記略矩形の前記変形部において、前記第1の部分壁面と前記第2の部分壁面とはジグザグにつながる。
【0010】
(2)本発明に係る表示装置の製造方法は、前記有機膜をインクジェット方式で滴下し前記基板に塗布する工程を有し、前記第1及び第2の単位長はそれぞれ前記第1及び第2の方向におけるインクジェットの滴下ピッチに応じて定められている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る表示装置の模式的な平面図である。
図2】本発明の実施形態に係る表示装置の模式的な垂直断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る表示装置の模式的な部分平面図である。
図4】滴下された樹脂材料が基板面に沿って広がる過程を模式的に示す平面図である。
図5】従来の表示装置の模式的な部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。但し、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0013】
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。
【0014】
さらに、本発明の詳細な説明において、ある構成物と他の構成物の位置関係を規定する際、「上に」「下に」とは、ある構成物の直上あるいは直下に位置する場合のみでなく、特に断りの無い限りは、間にさらに他の構成物を介在する場合を含むものとする。
【0015】
以下に説明する実施形態は有機EL表示装置である。有機EL表示装置は、アクティブマトリクス型表示装置であり、テレビ、パソコン、携帯端末、携帯電話等に搭載される。
【0016】
表示装置の画像表示領域には、画像を構成する複数の画素が2次元配列される。以下の説明では、3次元の直交座標系であるxyz座標系を用い、画像に対応する2次元の直交座標系に対応してx軸、y軸を設定する。例えば、x軸を画像の水平方向、y軸を画像の垂直方向とする。また、z軸は後述するアレイ基板の厚み方向とする。
【0017】
図1は本実施形態に係る表示装置100の模式的な平面図である。表示装置100は可撓性を有した基板を用いて形成された表示パネルであり、表示領域101a、周辺領域101b、屈曲領域101c及び端子領域101dを有する。
【0018】
表示領域101aは画像を表示するための領域である。表示領域101aは略矩形であり、本実施形態では、表示領域101aは、矩形の4つの角が円弧状に面取りされた形状を有する。これに対応して、表示パネルの平面形状も図1に示すように面取りされた略矩形となっている。表示領域101aには、複数の画素102がx方向及びy方向に沿って行列状に配列されている。複数の画素102にはそれぞれOLEDが設けられている。
【0019】
周辺領域101bは表示領域101aの周縁に接し、表示領域101aを囲む領域である。周辺領域101bには、複数の画素102の発光を制御するための駆動回路が配置されてもよい。
【0020】
屈曲領域101cは表示装置100を折り曲げることを意図して設けられた領域であり、表示装置100の一辺にて周辺領域101bと端子領域101dとの間に設けられる。屈曲領域101cにて表示装置100を折り曲げることにより、端子領域101dを表示領域101aの表示面の裏側に折り畳むことができる。
【0021】
端子領域101dは表示装置100とフレキシブル印刷回路基板(FPC基板)103等とを接続するための領域であり、表示装置100の一辺に設けられる。具体的には、端子領域101dには表示領域101a及び周辺領域101bから引き出された一群の配線が配置される。また、端子領域101dには、当該配線群を外部回路に接続するための接続端子104が配置され、例えばFPC基板103が接続端子104に接続される。なお、FPC基板103は制御装置などの回路等に接続されたり、その上にIC105を搭載されたりする。
【0022】
図2は本実施形態に係る表示装置100の模式的な垂直断面図であり、図1に示すII-II線に沿った部分断面図である。
【0023】
基板110は、その一表面側に配置される回路層112や複数の画素102等の各種素子を支持する。基板110は例えば、可撓性を有する絶縁材料で形成される。具体的には基板110の材料として、例えばポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネートに例示される高分子材料を用いることができる。また、基板110はガラス、石英、プラスチック、金属、セラミック等で形成することもできる。
【0024】
回路層112は基板110の一表面に設けられ、アンダーコート層114、TFT116及び層間絶縁膜118を含む。回路層112には更に、TFT116を含む画素回路、駆動回路等が設けられる(図示せず)。画素回路は表示領域101a内に配列された複数の画素102の各々に設けられ、OLED122の発光を制御する。駆動回路は周辺領域101bに設けられ、画素回路を駆動する。
【0025】
アンダーコート層114は基板110の一表面側に積層され、基板110が含有する不純物に対するバリアとなる。アンダーコート層114はシリコン酸化膜、シリコン窒化膜等からなり、それらの積層構造であっても良い。
【0026】
TFT116は半導体層116a、ゲート絶縁膜116b、ゲート電極116c、ソース/ドレイン(S/D)電極116d等を含む。半導体層116aはアンダーコート層114の上に積層され、当該半導体層116aによりTFT116のチャネル領域、ソース領域及びドレイン領域が形成される。半導体層116aの形成後、シリコン酸化物等でゲート絶縁膜116bが形成され、その上に積層した金属膜をパターニングしてTFTのゲート電極116cなどが形成される。
【0027】
ゲート電極116c等を覆って、層間絶縁膜118として無機膜が積層される。なお、無機絶縁材料は屈曲によってクラック等の欠陥を生じやすく、それを起点に水分の浸入経路が生じることが懸念される。そこで、アンダーコート層114、ゲート絶縁膜116b及び層間絶縁膜118はエッチング等によって屈曲領域101cから除去される。
【0028】
しかる後、基板の表面には金属膜が形成され、当該金属膜を用いてTFTのS/D電極116dが層間絶縁膜118の上に形成される。S/D電極116dは、ゲート絶縁膜116b、層間絶縁膜118を貫通するコンタクトホールを介して、TFTの半導体層116aに電気的に接続する。また、当該金属膜を用いて配線を形成することができ、例えば、端子領域101dの端子配線120が形成される。
【0029】
層間絶縁膜118及びその表面に形成されたS/D電極116d等を覆って、有機材料からなる平坦化絶縁層124が積層される。平坦化絶縁層124としてポリイミド、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の有機絶縁材料を用いることができる。平坦化絶縁層124はOLED122が形成される面を平坦にする。
【0030】
一方、当該平坦化絶縁層124などからOLED122への水分浸入を防止するために、平坦化絶縁層124の上に無機膜126が形成される。無機膜126は防湿性及び絶縁性を有する材料で形成される。例えば、無機膜126はシリコン窒化膜や、シリコン窒化膜とシリコン酸化膜との積層膜を用いて形成される。なお、屈曲領域101cにて平坦化絶縁層124の上に形成された無機膜126は、上述したクラック防止のために除去される。
【0031】
表示領域101aでは、無機膜126の表面上にOLED122の画素電極122aが配置される。画素電極122aは無機膜126及び平坦化絶縁層124を貫通するコンタクトホールを介して、TFT116のS/D電極116dに電気的に接続される。なお、画素電極122aは、OLEDの発光を表示面側に反射する反射膜を含む構造とすることができる。例えば、画素電極122aは、酸化インジウム・スズ(Indium Tin Oxide:ITO)や酸化インジウム亜鉛(Indium Zinc Oxide:IZO)などの透明導電材と、銀(Ag)などの反射材との積層構造とすることができる。
【0032】
画素電極122aが形成された無機膜126の表面に、絶縁材料からなるバンク130が形成される。バンク130は画素の周囲に沿って形成され、画素電極122aの端部を覆うとともにOLEDの発光面の位置に開口部を有する。当該開口部の底部には画素電極122aの上面が露出し、その表面に発光層を含む有機層である有機材料層122bが積層される。バンク130はポリイミド、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の有機絶縁材料で形成される。
【0033】
有機材料層122bの上にOLEDの対向電極122cが形成される。画素電極122aが画素ごとに分離した電極であるのに対し、対向電極122cは表示領域101aの全体の画素に亘る共通電極とすることができる。なお、対向電極122cは有機材料層122bから出射される光を透過する材料で形成される。具体的には、対向電極122cは、有機材料層122bへ電子を効率的に注入できるように仕事関数の低い金属で、かつ半透明に形成された薄膜であり、例えば、MgAg合金で形成される。
【0034】
画素電極122a、有機材料層122b及び対向電極122cからなるOLED122が形成された表示領域101aに、OLED122の上面を封止しOLED122の水分による劣化を防止する封止膜132が形成される。ちなみに封止膜132の形成領域は表示領域101aを包含し、端部は周辺領域101bに位置する。本実施形態では当該封止膜132は、2つの無機膜132a,132bと有機膜132cとからなる多層構造であり、有機膜132cは表示領域101aにて無機膜132aと無機膜132bとの間に挟まれる。
【0035】
封止膜132は上述した平坦化封止膜であり、無機膜132a,132bは主としてOLED122への水分浸入を阻止する機能を担い、一方、有機膜132cは平坦化の機能を担う。よって、無機膜132a,132bは、透湿性の低い絶縁材料で形成することが好ましく、例えば、シリコン窒化膜で形成される。一方、有機膜132cはアクリルなどの樹脂で形成される。
【0036】
無機膜132aは表示領域101aにて対向電極122cの表面に積層される。無機膜132aはそれが被覆するバンク130等に起因して表面に凹凸を生じる。有機膜132cは無機膜132aの上に積層され、当該凹凸を平坦化する。無機膜132bは有機膜132cの上に積層される。有機膜132cの表面が平坦化されていることにより、無機膜132bの凹凸が抑制され、凹凸部分でのクラック等による無機膜132bの欠陥が生じにくくなる。
【0037】
有機膜132cはインクジェット法で形成される。すなわち、有機膜132cの製造方法は、液状の樹脂材料をインクジェット方式で滴下し基板上に塗布する工程を含む。また、当該製造方法は塗布した樹脂材料を熱や紫外線などで硬化する工程を含み得る。
【0038】
第1のダム部134は周辺領域101bにて、有機膜132cの形成予定領域の縁に沿って形成される。ダム部134は表示領域101a側に向いた壁面134wを備え、表示領域101a側に滴下される有機膜132cの液状の樹脂材料を堰き止める。例えば、ダム部134はバンク130を形成する層で作ることができ、この場合、表示領域101aにて最外殻に位置するバンク130とダム部134との間に溝部134tが形成される。溝部134tは基本的に表示領域101aを囲むように配置される。
【0039】
無機膜132aは上述のように表示領域101aにて対向電極122cを覆って形成され、さらに周辺領域101bに設けられたダム部134にまで達する。ちなみに図2に示す例では、無機膜132aは周辺領域101bと屈曲領域101cとの境界まで延在されている。なお、ダム部134は、無機膜132aによって平坦化されない高さを有する。
【0040】
無機膜132aの形成後、有機膜132cが形成される。上述のダム部134の機能により、有機膜132cの端部は基本的にダム部134の表示領域101a側の壁面134w又はダム部134の上面内に位置する。
【0041】
無機膜132bは有機膜132cを包含する領域に形成され、無機膜132a,132bは有機膜132cを包み込む。ちなみに図2に示す例では、無機膜132bは、無機膜132aと同様、周辺領域101bと屈曲領域101cとの境界まで延在されている。無機膜132aと無機膜132bとは、有機膜132cより外側にて直に接して重なる接触領域を有する。当該接触領域で無機膜132a,132bが接合されることで、有機膜132cへの水分浸入が防止される。
【0042】
ここで、有機膜132cが広がりすぎると無機膜132a,132bの接触領域が設けられず水分が浸入する不具合が生じ得るが、ダム部134が有機膜132cを堰き止めることで当該不具合を防止している。
【0043】
無機膜132bの上には保護層136が積層される。保護層136は透明樹脂からなる有機膜であり、表示領域101aを保護する機能を有する。また、保護層136は接続端子104を覆う封止膜132の無機膜132a,132bをエッチング除去する際のマスクとして用いられる。すなわち、無機膜132a,132bは上述した屈曲領域101c及び端子領域101dにも一旦は積層されるが、表示領域101a及び周辺領域101bに形成された保護層136をエッチングマスクとしてエッチング処理を行うことで屈曲領域101c及び端子領域101dからは除去される。その結果、無機膜132a,132bの端部の位置は保護層136の端部と整合する。なお、封止膜132の縁には上述の無機膜132a,132bの接触領域を設けるため、保護層136は第1のダム部134より外側まで延在される。
【0044】
保護層136は基本的に有機膜132cと同様に、インクジェット法を用いた製造方法により形成される。有機膜132cに対して第1のダム部134を設けたのと同様に、保護層136に対して第2のダム部138が設けられる。すなわち、第2のダム部138は周辺領域101bにて保護層136の形成予定領域の縁に沿って形成される。ダム部138は表示領域101a側に向いた壁面138wを備え、ダム部138より内側領域に滴下される保護層136の液状の樹脂材料を堰き止める。例えば、ダム部138はバンク130及びダム部134を形成する層で作ることができ、この場合、第1のダム部134と第2のダム部138との間に溝部138tが形成される。溝部138tは基本的に表示領域101aを囲むように配置される。
【0045】
ここで、接続端子104を露出させる際の無機膜132a,132bのエッチングにて保護層136の端部は後退する。その後退量が大きすぎると、例えば、封止膜132において有機膜132cに接した無機膜132bがエッチングされ有機膜132cが露出し、そこから浸入する水分によりOLED122が劣化してダークスポットが発生するリスクが高まる。この点、ダム部138を設けることで、溝部138tにより保護層136の端部近傍の膜厚を厚くし、エッチングの際の端部の後退量を抑制することができる。
【0046】
また、保護層136の樹脂が屈曲領域101cから先に広がると、保護層136をマスクとしたエッチングで無機膜132a,132bが屈曲領域101cに残存し、屈曲で生じたクラック等の無機膜の欠陥が水分の浸入経路となるという上述の問題を生じ得る。また、接続端子104の露出が阻害されることも起こり得る。この点、ダム部138は保護層136の樹脂を堰き止め、これらの不都合を防止し得る。
【0047】
上述のダム部134,138それぞれの機能を確保するために、例えば、溝部134t,138tの幅は10μm以上とし、ダム部134,138の高さは1μm以上とすることが好ましい。ダム部134,138を形成する加工方法を考慮すると、十分な高さのダム部134,138を形成する上でダム部134,138の幅は例えば5μm以上が好適である。なお、これらの寸法に対しては他の観点から制限が加えられ得る。例えば、狭額縁化を図る上では、ダム部134,138や溝部134t,138tの幅は小さくすることが好ましい。
【0048】
端子領域101dにおいて、接続端子104は無機膜126及び平坦化絶縁層124を貫通するコンタクトホールを介して、端子配線120に電気的に接続される。また、接続端子104は例えば異方性導電膜140等によりFPC基板103と接続される。
【0049】
図3は表示装置100の模式的な部分平面図である。この図は有機膜132c又は保護層136の樹脂のインクジェット法による滴下位置と、当該樹脂に対するダム部のレイアウトとを示しており、図5に示した従来の表示装置と対比される本発明の表示装置の特徴を表している。具体的には、図3に示すダム部200は上述した第1のダム部134又は第2のダム部138であり、ダム部200が第1のダム部134である場合には、滴下位置202は有機膜132cの樹脂の滴下位置であり、ダム部200が第2のダム部138である場合には、滴下位置202は保護層136の樹脂の滴下位置である。
【0050】
有機膜132c及び保護層136は略矩形の平面形状に形成される。ここで、略矩形は、第1の方向に沿った辺と当該第1の方向に直交する第2の方向に沿った辺とからなる矩形にて、第1及び第2の方向に対して傾斜した輪郭をなす変形部を設けた形状である。例えば、変形部は矩形の少なくとも1つの角に設けられた面取り部である。本実施形態では、上述のように表示領域101aが矩形の各角を面取り部とした略矩形であり、これに対応して、有機膜132c及び保護層136は上記第1の方向及び第2の方向をx方向及びy方向とした矩形にて各角を面取り部とした略矩形とされる。図3の部分平面図は当該略矩形の1つの角部の面取り部210とその近傍を示している。
【0051】
インクジェットプリンタはx方向、y方向にそれぞれ所定ピッチで2次元配列されたグリッド204を単位として滴下位置202を制御し、略矩形の樹脂膜を形成する。具体的には、インクジェットプリンタは滴下位置202にドット状に液状の樹脂材料を吐出し、吐出された樹脂材料が基板面に沿って広がることで樹脂膜が形成される。図4は滴下された樹脂材料が基板面に沿って広がる過程を模式的に示す平面図であり、図4(a)のドット220が滴下直後の樹脂材料を表している。当該樹脂材料は広がり、隣接するドット220同士がつながる。図4(b)はこの状態を示しており、隣接する滴下位置間で樹脂212がつながる一方、基板面にはまだ樹脂212で覆われていない部分が残っている。さらに樹脂が広がるとダム部200の内側の基板面の全体が図4(c)に示すように樹脂膜214で覆われる。
【0052】
ここで、滴下位置202がグリッド204を単位として制御されることに起因して、上述の変形部における傾斜した輪郭は詳細には、グリッド204のスケールに応じた凹凸を有した形状となり得る。これに対応して、ダム部200の表示領域101a側に向いた壁面200w、つまりダム部134,138における壁面134w,138wも変形部にてジグザグに形成される。具体的には、壁面200wは基本的に、x方向に沿った複数の第1の部分壁面200xとy方向に沿った複数の第2の部分壁面200yとからなり、少なくとも略矩形の変形部にて、複数の第1の部分壁面200xは第1の単位長の整数倍の長さを有し、複数の第2の部分壁面200yは第2の単位長の整数倍の長さを有する。そして、略矩形の変形部においては、第1の部分壁面200xと第2の部分壁面200yとは交互に、かつジグザグにつながる。すなわち、壁面200wの平面形状を壁面200wに沿って辿った場合に、壁面200wは変形部では交互に逆向きに折れ曲がり、グリッド204の配列の輪郭に沿って配置される。
【0053】
第1及び第2の単位長はそれぞれx方向、y方向におけるインクジェットの樹脂の滴下ピッチに応じて定められる。具体的には、第1の単位長は滴下位置202のx方向の間隔Pxとし、第2の単位長は滴下位置202のy方向の間隔Pyに設定することができる。Px,Pyは有機膜132cや保護層136の形成に用いるインクジェットプリンタに応じて基本的に定まるが、例えば、数十ミクロンメートルである。例えば、PxとPyとは共通の値に設定することができる。滴下位置202の2次元配列の縁と壁面200wとの距離が基本的に一定とされることで、樹脂膜214の厚さtに関しダム部の壁面200wに沿った変化が抑制され、例えば、壁面200wに沿った厚さtにおける最小値は最大値の1/2以上とすることができる。
【0054】
上述のように、ダム部200の壁面200wはグリッド204の輪郭に沿って配置される。具体的には、グリッド204の輪郭のうちx方向に沿った部分には、x方向に延在する部分壁面200xが配置され、グリッド204の輪郭のうちy方向に沿った部分には、y方向に延在する部分壁面200yが配置される。各部分壁面200xについての輪郭との距離(dyとする)は基本的に共通とすることができ、同様に、各部分壁面200yについての輪郭との距離(dxとする)は基本的に共通とすることができる。また、dyとdxは基本的には同じ距離に設定することができる。特に、図4(c)に示すように広がった樹脂膜214の端部と内側領域とでの厚みの差を小さくする、言い換えれば、樹脂膜214が十分な厚みで壁面200wに達するようにするために、距離dx,dyはそれぞれPx,Pyより小さく設定することができ、例えば、図3図4ではdx,dyは0としている。
【0055】
上述のように表示領域101aの面取り部が外向きに凸の円弧であることに対応して、図3及び図4に示すように本実施形態では、上述の略矩形の変形部である面取り部210の概略の平面形状も外向きに凸の円弧としている。ここで、面取り部210の平面形状は詳細には上述のようにジグザグ形状であり、面取り部210における壁面200wはジグザグに接続された部分壁面の列からなる。面取り部210における壁面200wを構成する当該部分壁面列において、面取り部210に隣接する略矩形の2辺のうちx方向の辺222xからy方向の辺222yへ向かう順に、第1の部分壁面200xの長さは広義単調減少し、一方、第2の部分壁面200yの長さは広義単調増加する。具体的には、図3の例では、面取り部210の壁面200wを辺222x側から辺222y側へ辿る際に現れる第1の部分壁面200xの長さは、Pxを単位として順に、3,2,1,1,1,1となり、また第2の部分壁面200yの長さは、Pyを単位として順に、1,1,1,1,2,3となる。
【0056】
上記実施形態では略矩形の変形部は矩形の角に設けられた面取り部210である例を説明した。しかし、変形部は、矩形の角、つまり略矩形のx方向の辺222xの端部又はy方向の辺222yの端部に位置するものに限られず、略矩形の辺222x,222yの途中に位置するものであってもよい。
【0057】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、実施形態で説明した構成は、実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
【符号の説明】
【0058】
100 表示装置、101a 表示領域、101b 周辺領域、101c 屈曲領域、101d 端子領域、102 画素、103 FPC基板、104 接続端子、110 基板、112 回路層、114 アンダーコート層、116 TFT、116a 半導体層、116b ゲート絶縁膜、116c ゲート電極、116d ソース/ドレイン電極、118 層間絶縁膜、120 端子配線、122 OLED、122a 画素電極、122b 有機材料層、122c 対向電極、124 平坦化絶縁層、126,132a,132b 無機膜、130 バンク、132 封止膜、132c 有機膜、134,138,200 ダム部、134t,138t 溝部、134w,138w,200w 壁面、136 保護層、140 異方性導電膜、202 滴下位置、204 グリッド、210 面取り部、212 樹脂、214 樹脂膜、220 ドット、222x,222y 辺。
図1
図2
図3
図4
図5