(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】光ファイバ心線
(51)【国際特許分類】
G02B 6/44 20060101AFI20220613BHJP
【FI】
G02B6/44 336
G02B6/44 301A
(21)【出願番号】P 2018559001
(86)(22)【出願日】2017-12-12
(86)【国際出願番号】 JP2017044495
(87)【国際公開番号】W WO2018123556
(87)【国際公開日】2018-07-05
【審査請求日】2020-06-22
(31)【優先権主張番号】P 2016252795
(32)【優先日】2016-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003263
【氏名又は名称】三菱電線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 正俊
(72)【発明者】
【氏名】山川 禎貴
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 秀明
(72)【発明者】
【氏名】田部井 大輝
【審査官】奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-510609(JP,A)
【文献】特表2005-505013(JP,A)
【文献】特開平08-194139(JP,A)
【文献】特表平07-503079(JP,A)
【文献】特開平04-066905(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0085772(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/02- 6/036
G02B 6/44
A61B 1/00- 1/32
C03C 25/00-25/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、前記コアを被覆するように設けられた前記コアよりも屈折率が低いクラッドと、を有する光ファイバと、
前記光ファイバを被覆するように設けられた前記クラッドよりも屈折率が低く且つショアD硬さがD/20.0/1以上である第1バッファ層と、
前記第1バッファ層を被覆するように設けられた前記第1バッファ層よりもショアD硬さが高
く且つ前記ショアD硬さがD/40.0/1以上である第2バッファ層と、
前記第2バッファ層を被覆するように設けられた
前記第2バッファ層よりもショアD硬さが高く且つ前記ショアD硬さがD/50.0/1以上D/110/1以下であるジャケットと、
を備
え、
前記第2バッファ層のショアD硬さと前記第1バッファ層のショアD硬さとの差が10.0以上50.0以下であり、且つ前記ジャケットのショアD硬さと前記第2バッファ層のショアD硬さとの差が3.00以上30.0以下である光ファイバ心線。
【請求項2】
請求項1に記載された光ファイバ心線において、
前記コアと前記第1バッファ層との比屈折率差が5.5%以上である光ファイバ心線。
【請求項3】
請求項2に記載された光ファイバ心線において、
前記コアと前記第1バッファ層との比屈折率差が6.0%以上である光ファイバ心線。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載された光ファイバ心線において、
前記第1バッファ層の屈折率が前記クラッドの屈折率よりも低い光ファイバ心線。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載された光ファイバ心線において、
前記第1バッファ層がフッ素含有ポリマー樹脂で形成されている光ファイバ心線。
【請求項6】
請求項1乃至
5のいずれかに記載された光ファイバ心線において、
前記第2バッファ層がフッ素含有ポリマー樹脂で形成されている光ファイバ心線。
【請求項7】
請求項1乃至
6のいずれかに記載された光ファイバ心線において、
前記ジャケットがフッ素系樹脂で形成されている光ファイバ心線。
【請求項8】
請求項1乃至
7のいずれかに記載された光ファイバ心線において、
内視鏡装置に用いられる光ファイバ心線。
【請求項9】
請求項1乃至
8のいずれかに記載された光ファイバ心線において、
前記光ファイバ心線の全長に渡って、前記第2バッファ層が前記第1バッファ層を被覆するように設けられている光ファイバ心線。
【請求項10】
請求項1乃至
9のいずれかに記載された光ファイバ心線において、
前記ジャケットが前記第2バッファ層の直上に設けられている光ファイバ心線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ心線に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバが複数の樹脂層で被覆された光ファイバ心線が知られている。例えば、特許文献1には、石英製の光ファイバが低硬度のウレタンアクリレート樹脂で形成された内側の第1被覆層及び高硬度のウレタンアクリレート樹脂で形成された外側の第2被覆層で被覆された光ファイバ心線が開示されている。特許文献2には、ポリマークラッド光ファイバがパーフルオロエーテルポリマー構造を有する熱硬化型シリコーン樹脂組成物で形成された内側の第1被覆層及び熱硬化型シリコーン樹脂組成物で形成された内側の第1被覆層で被覆された光ファイバ心線が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-194139号公報
【文献】特開2016-110009号公報
【発明の概要】
【0004】
本発明は、コアと、前記コアを被覆するように設けられた前記コアよりも屈折率が低いクラッドとを有する光ファイバと、前記光ファイバを被覆するように設けられた前記クラッドよりも屈折率が低く且つショアD硬さがD/20.0/1以上である第1バッファ層と、前記第1バッファ層を被覆するように設けられた前記第1バッファ層よりもショアD硬さが高く且つ前記ショアD硬さがD/40.0/1以上である第2バッファ層と、前記第2バッファ層を被覆するように設けられた前記第2バッファ層よりもショアD硬さが高く且つ前記ショアD硬さがD/50.0/1以上D/110/1以下であるジャケットとを備え、前記第2バッファ層のショアD硬さと前記第1バッファ層のショアD硬さとの差が10.0以上50.0以下であり、且つ前記ジャケットのショアD硬さと前記第2バッファ層のショアD硬さとの差が3.00以上30.0以下である光ファイバ心線である。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】実施形態に係る光ファイバ心線の横断面図である。
【
図2】純粋石英の25℃における測定波長と屈折率との関係を示すグラフである。
【
図3】焼損率を求めるための試験方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、実施形態について詳細に説明する。
【0007】
図1は実施形態に係る光ファイバ心線10を示す。実施形態に係る光ファイバ心線10は、例えば尿路結石や腎臓結石にレーザ光を照射して破砕する治療用の内視鏡装置に用いられるものである。
【0008】
実施形態に係る光ファイバ心線10は、光ファイバ11、第1及び第2バッファ層121,122、並びにジャケット13を備える。また、光ファイバ11は、コア111及びクラッド112を有する。実施形態に係る光ファイバ心線10は、これらの光ファイバ11のコア111及びクラッド112、第1及び第2バッファ層121,122、並びにジャケット13が同心状に設けられ、以下に記載する構成を有することにより曲げ直径の小さな曲げが加えられたときの曲げ損失が低く、且つジャケット13の剥離性が優れるものである。光ファイバ心線10の外径は例えば0.25mm以上1.5mm以下であり、光ファイバ11の外径は例えば0.15mm以上1.0mm以下である。
【0009】
光ファイバ11のコア111は、ファイバ中心に設けられている。コア111は石英で形成されていることが好ましい。コア111は、純粋石英で形成されていてもよく、また、ゲルマニウム等の屈折率を高くするドーパントがドープされた石英で形成されていてもよい。
【0010】
コア111の横断面形状は一般的には円形であり、その直径は例えば130μm以上950μm以下である。コア111の屈折率は、後述のクラッド112よりも高く、例えば1.458以上1.502以下である。ここで、屈折率は、温度25℃において、波長589nm(d線)の光を用いて測定されるものである(以下、同様)。
【0011】
光ファイバ11のクラッド112は、コア111の直上にコア111を被覆するように層状に一体に設けられている。クラッド112は、コア111が純粋石英で形成されている場合、フッ素等の屈折率を低くするドーパントがドープされた石英で形成されていることが好ましい。クラッド112は、コア111が純粋石英よりも高屈折率の場合、純粋石英で形成されていてもよい。
【0012】
クラッド112の厚さは例えば5.0μm以上50μm以下である。クラッド112の屈折率は、コア111よりも低く、例えば1.430以上1.458以下である。コア111とクラッド112との比屈折率差は例えば0.70%以上4.0%以下である。ここで、この比屈折率差は、コア111の屈折率からクラッド112の屈折率を引いた差をコア111の屈折率で除して100倍した百分率で求められる。
【0013】
第1バッファ層121は、光ファイバ11の直上に光ファイバ11を被覆するように層状に設けられている。第1バッファ層121は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂などの光硬化性樹脂等の樹脂材料で形成されていることが好ましく、加工性が優れるという観点から、光硬化性樹脂で形成されていることがより好ましく、紫外線硬化性樹脂で形成されていることが更に好ましい。第1バッファ層121は、フッ化アクリレート樹脂のような分子中にフッ素を含むフッ素含有ポリマー樹脂で形成されていることが好ましい。
【0014】
第1バッファ層121の厚さは、屈曲性を損なわずに曲げ直径の小さな曲げが加えられたときの曲げ損失を低くする観点から、好ましくは5.0μm以上40μm以下、より好ましくは10μm以上30μm以下である。
【0015】
第1バッファ層121の屈折率(測定波長λ:852nm及び測定温度:25℃)は、曲げ直径の小さな曲げが加えられたときの曲げ損失を低くする観点から、光ファイバ11のクラッド112の屈折率よりも更に低く、好ましくは1.370以下、より好ましくは1.360以下である。測定波長λ:852nm及び測定温度:25℃としたときの光ファイバ11のコア111と第1バッファ層121との比屈折率差は、好ましくは、5.5%以上、より好ましくは6.0%以上、更に好ましくは6.7%以上である。ここで、この比屈折率差は、光ファイバ11のコア111の屈折率から第1バッファ層121の屈折率を引いた差をコア111の屈折率で除して100倍した百分率で求められる。
【0016】
第1バッファ層121のショアD硬さはD/20.0/1以上である。第1バッファ層121のショアD硬さは、屈曲性を損なわずに優れたジャケット13の剥離性を得る観点から、好ましくはD/20.0/1以上D/100/1以下、好ましくはD/30.0/1以上D/80.0/1以下である。ここで、このショアD硬さは、ASTMD2240に基づいて、測定温度を23±2℃及び測定時間を1秒として測定されるものである(以下、同様)。
【0017】
第2バッファ層122は、第1バッファ層121の直上に第1バッファ層121を被覆するように層状に設けられている。第2バッファ層122は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂などの光硬化性樹脂等の樹脂材料で形成されていることが好ましく、加工性が優れるという観点から、光硬化性樹脂で形成されていることがより好ましく、紫外線硬化性樹脂で形成されていることが更に好ましい。第1バッファ層121は、フッ化アクリレート樹脂のような分子中にフッ素を含むフッ素含有ポリマー樹脂で形成されていることが好ましい。
【0018】
第2バッファ層122の厚さは、屈曲性を損なわずに優れたジャケット13の剥離性を得る観点から、好ましくは10μm以上50μm以下、より好ましくは15μm以上40μm以下である。第1及び第2バッファ層122の厚さは、同一であってもよく、また、異なっていてもよい。
【0019】
第2バッファ層122の屈折率(測定波長λ:589nm及び測定温度:25℃)は、好ましくは1.450以下、より好ましくは1.420以下である。
【0020】
第2バッファ層122のショアD硬さは、屈曲性を損なわずに優れたジャケット13の剥離性を得る観点から、好ましくはD/40.0/1以上D/100/1以下、好ましくはD/50.0/1以上D/80.0/1以下である。第2バッファ層122のショアD硬さは、第1バッファ層121のショアD硬さよりも高く、その差は、優れたジャケット13の剥離性を得る観点から、好ましくは10.0以上70.0以下、好ましくは20.0以上50.0以下である。第1バッファ層121のショアD硬さに対する第2バッファ層122のショアD硬さの比(第2バッファ層122のショアD硬さ/第1バッファ層121のショアD硬さ)は、優れたジャケット13の剥離性を得る観点から、好ましくは1.25以上2.70以下、好ましくは1.50以上2.40以下である。
【0021】
ジャケット13は、第2バッファ層122の直上に第2バッファ層122を被覆するように層状に設けられている。ジャケット13は、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂の樹脂材料で形成されていることが好ましい。ジャケット13は、優れた剥離性を得る観点から、分子中にフッ素を含む熱可塑性樹脂のフッ素系樹脂で形成されていることが好ましい。かかるフッ素系樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体樹脂(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、ポリフッ化ビニル樹脂(PVF)等が挙げられる。これらのうちエチレンテトラフルオロエチレン共重合体樹脂(ETFE)が好ましい。
【0022】
ジャケット13の厚さは、屈曲性を損なわずに優れたジャケット13の剥離性を得る観点から、好ましくは0.030mm以上0.30mm以下、より好ましくは0.040mm以上0.20mm以下である。
【0023】
ジャケット13のショアD硬さは、屈曲性を損なわずに優れたジャケット13の剥離性を得る観点から、好ましくはD/50.0/1以上D/110/1以下、好ましくはD/65.0/1以上D/90.0/1以下である。ジャケット13のショアD硬さは、第2バッファ層122のショアD硬さよりも若干高いことが好ましく、その差は、優れたジャケット13の剥離性を得る観点から、好ましくは3.00以上30.0以下、好ましくは5.00以上10.0以下である。第2バッファ層122のショアD硬さに対するジャケット13のショアD硬さの比(ジャケット13のショアD硬さ/第2バッファ層122のショアD硬さ)は、優れたジャケット13の剥離性を得る観点から、好ましくは1.04以上1.75以下、好ましくは1.07以上1.40以下である。
【0024】
ところで、尿路結石や腎臓結石にレーザ光を照射して破砕する治療に用いられる光ファイバ心線では、体内で曲げ直径の小さな曲げが加えられると大きな曲げ損失が生じるため、その状態でレーザ光の照射を継続すると漏れ光によって光ファイバを被覆する樹脂製のジャケットが焼損する虞がある。また、光ファイバ心線には、光ファイバとジャケットとの間に樹脂製のバッファ層が設けられた構造を有するものがあり、かかる構造の光ファイバ心線では、光コネクタ等への組み付けのための端部の加工容易性の観点から、端部においてバッファ層を残したままジャケットだけを剥離できることが好ましい。
【0025】
しかしながら、以上の構成の実施形態に係る光ファイバ心線10によれば、光ファイバ11とジャケット13との間に内側の第1バッファ層121及び外側の第2バッファ層122が設けられており、第1バッファ層121が光ファイバ11のクラッド112よりも屈折率が低いので、曲げ直径の小さな曲げが加えられたときにコア111から光は漏洩するものの、第1バッファ層121が光ファイバ11のクラッド112よりも屈折率が低いため、この第1バッファ層121の内側にコア111から漏洩した光を閉じ込めながら出力端まで伝送することで実質的に曲げ損失を抑えることができ、また、第1バッファ層121のショアD硬さがD/20/1以上であると共に第2バッファ層122が第1バッファ層121よりもショアD硬さが高いので、ジャケット13の剥離性が優れ、第1及び第2バッファ層122を残したままジャケット13だけを容易に剥離することができる。
【0026】
実施形態に係る光ファイバ心線10は、例えば、石英製の母材から光ファイバ11を線引きするのに続いて、その外周面に紫外線硬化性樹脂を付着させて紫外線を照射することにより硬化させて第1及び第2バッファ層121,122を連続して形成したものを一旦巻き取り、次に、それを押出機に通してジャケット13を形成することにより製造することができる。
【実施例】
【0027】
(フッ化アクリレート樹脂)
以下の樹脂1~樹脂4の4種のフッ化アクリレート樹脂を準備した。それぞれの構成を表1に示す。
【0028】
<樹脂1>
硬化後の屈折率(測定波長λ:852nm及び測定温度:25℃)が1.340及びショアD硬さがD/12.5/1の紫外線硬化性のフッ化アクリレート樹脂を樹脂1とした。
【0029】
<樹脂2>
硬化後の屈折率(測定波長λ:852nm及び測定温度:25℃)が1.349及びショアD硬さがD/37.5/1の紫外線硬化性のフッ化アクリレート樹脂を樹脂2とした。
【0030】
<樹脂3>
硬化後の屈折率(測定波長λ:852nm及び測定温度:25℃)が1.363及びショアD硬さがD/40.0/1の紫外線硬化性のフッ化アクリレート樹脂を樹脂3とした。
【0031】
<樹脂4>
硬化後の屈折率(測定波長λ:589nm及び測定温度:25℃)が1.402及びショアD硬さがD/64.0/1の紫外線硬化性のフッ化アクリレート樹脂を樹脂4とした。
【0032】
【0033】
(光ファイバ心線)
以下の実施例1及び2並びに比較例の光ファイバ心線を作製した。それぞれの構成を表2に示す。
【0034】
<実施例1>
実施形態と同様の構成であって、樹脂2を用いて第1バッファ層を形成すると共に、樹脂4を用いて第2バッファ層を形成した光ファイバ心線を作製し、それを実施例1とした。
【0035】
光ファイバ心線の外径は0.43mmであり、光ファイバの外径は0.28mmであった。光ファイバは、純粋石英で形成された横断面における直径が240μmコアと、フッ素がドープされた石英で形成された厚さが20μmのクラッドとを有し、測定波長λ:589nm及び測定温度:25℃でのコアの屈折率が1.458及びクラッドの屈折率が1.441であった。従って、このときのコアとクラッドとの比屈折率差は1.2%である。
【0036】
また、
図2に示す純粋石英の25℃における測定波長λと屈折率との関係によれば、測定波長λ:852nmでのコアの屈折率は1.452である。このことから、測定波長λ:852nm及び測定温度:25℃としたときのコアと第1バッファ層との比屈折率差は(1.452-1.349)/1.452≒7.1%である。
【0037】
第1バッファ層の厚さは20μmであった。第2バッファ層の厚さは15μmであった。ジャケットは、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体樹脂(ETFE)で形成した。ジャケットの厚さは40μmであった。ジャケットのショアD硬さはD/72.0/1であった。
【0038】
<実施例2>
樹脂3を用いて第1バッファ層を形成したことを除いて実施例1と同様にして光ファイバ心線を作製し、それを実施例2とした。
【0039】
<比較例>
樹脂1を用いて第1バッファ層を形成したことを除いて実施例1と同様にして光ファイバ心線を作製し、それを比較例とした。
【0040】
【0041】
(試験方法)
<焼損率>
実施例1及び2並びに比較例のそれぞれの光ファイバ心線について、
図3に示すように、光ファイバ心線10の一端をHo:YAGレーザLに接続し且つ他端部を水Wに浸漬して曲げ直径が1.5cmとなるようにU字状に曲げた状態で、Ho:YAGレーザLから1パルス当たりのエネルギーが1.5Jである波長2.1μmのパルスレーザー光を周波数30Hzで1分間出力し(平均出力45W)、そのときの光ファイバの断線等の損傷の有無を確認した。この試行を20回行い、損傷が確認された試行の回数の割合を焼損率として評価した。また、曲げ直径が1.0cmとなるようにU字状に曲げた場合についても同様の試験を行った。
【0042】
<ジャケット剥離性>
実施例1及び2並びに比較例のそれぞれの光ファイバ心線について、ジャケット剥離具(マイクロエレクトロニクス社製)を用いて心線端から5cmの長さのジャケットを剥離し、露出した第2バッファ層の損傷の有無を確認した。そして、損傷がない場合をA及びある場合をBと評価した。
【0043】
(試験結果)
試験結果を表3に示す。
【0044】
【0045】
表3によれば、第1バッファ層がクラッドよりも屈折率が低く、第1バッファ層のショアD硬さがD/20/1以上であり、且つ第2バッファ層が第1バッファ層よりもショアD硬さが高い実施例1及び2では、焼損率が低く、また、ジャケット剥離性が優れることが分かる。
【0046】
一方、第1バッファ層がクラッドよりも屈折率が低く、且つ第2バッファ層が第1バッファ層よりもショアD硬さが高いものの、第1バッファ層のショアD硬さがD/20/1よりも低い比較例では、焼損率は低いが、ジャケット剥離性が劣ることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、光ファイバ心線の技術分野について有用である。
【符号の説明】
【0048】
10 光ファイバ心線
11 光ファイバ
111 コア
112 クラッド
121 第1バッファ層
122 第2バッファ層
13 ジャケット