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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】二酸化チタン生成物
(51)【国際特許分類】
   C09C 1/36 20060101AFI20220613BHJP
   C01G 23/04 20060101ALI20220613BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20220613BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20220613BHJP
   C09D 11/02 20140101ALI20220613BHJP
【FI】
C09C1/36
C01G23/04 B
C09D7/61
C09D201/00
C09D11/02
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2018564777
(86)(22)【出願日】2017-06-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-08-15
(86)【国際出願番号】 GB2017051678
(87)【国際公開番号】W WO2017212286
(87)【国際公開日】2017-12-14
【審査請求日】2020-06-03
(31)【優先権主張番号】1610194.1
(32)【優先日】2016-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】517283503
【氏名又は名称】ベネター マテリアルズ ユーケー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】エドワーズ ジョン ラランド
(72)【発明者】
【氏名】ロブ ジョン
(72)【発明者】
【氏名】テンパリー ジョン
(72)【発明者】
【氏名】エヴァンス ラッセル マーク
【審査官】岩下 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-278442(JP,A)
【文献】特開平09-188518(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第2308118(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09C1
C01G23
C09D7
C09D201
C09D11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化チタン、ドープ二酸化チタン、及び、それらの混合物からなるグループから選択される顔料微粒子材料であって、前記微粒子材料は、0.35~0.5ミクロンの範囲内の平均結晶サイズと、前記微粒子材料の40wt%以上が0.3~0.5ミクロンの範囲内の結晶サイズを有するような結晶サイズ分布と、を有し、平均粒子サイズの前記平均結晶サイズに対する比率は、1.25以下である、微粒子材料。
【請求項2】
前記微粒子材料は、前記微粒子材料の50wt%以上が、0.3~0.5ミクロンの範囲内の結晶サイズを有するような結晶サイズ分布を有する、請求項1に記載の微粒子材料。
【請求項3】
前記微粒子材料は、前記微粒子材料の45wt%以上が、0.5ミクロン以下の結晶サイズを有するような結晶サイズ分布を有する、請求項1または請求項2に記載の微粒子材料。
【請求項4】
前記微粒子材料は、前記微粒子材料の0.5wt%~40wt%が、0.2~0.3ミクロンの範囲内の結晶サイズを有するような結晶サイズ分布を有する、請求項1~3の何れか一項に記載の微粒子材料。
【請求項5】
前記平均粒子サイズの前記平均結晶サイズに対する前記比率は、1.2以下である、請求項1~4の何れか一項に記載の微粒子材料。
【請求項6】
前記平均粒子サイズの前記平均結晶サイズに対する前記比率は、0.8~1.2である、請求項5に記載の微粒子材料。
【請求項7】
前記平均粒子サイズの前記平均結晶サイズに対する前記比率は、1.0~1.15である、請求項6に記載の微粒子材料。
【請求項8】
媒剤中に分散した請求項1~7の何れか一項に記載の前記微粒子材料を含む組成物。
【請求項9】
前記微粒子材料が、30vol%以上量で存在する、請求項に記載の組成物。
【請求項10】
前記微粒子材料は、40~75vol%の量で存在する、請求項に記載の組成物。
【請求項11】
請求項10の何れか一項に記載の組成物から形成される膜であって、前記膜は、20ミクロン以下の厚さを有する、膜。
【請求項12】
前記膜が、15ミクロン以下の厚さを有する、請求項11に記載の膜。
【請求項13】
請求項10の何れか一項に記載の組成物、または、請求項11または請求項12に記載の膜にて少なくとも部分的に被覆される基材を含む、生成物。
【請求項14】
前記組成物または前記膜は、インク、プライマ塗膜、または、プラスチック膜である、請求項13に記載の生成物。
【請求項15】
前記基材は反射面を備える、請求項13または請求項14に記載の生成物。
【請求項16】
インク、塗料、金属用のプライマ塗膜、または、プラスチック膜における請求項1~7の何れか一項に記載の前記微粒子材料の使用。
【請求項17】
前記インクは、印刷用インク、セキュリティインク、及び/または、紫外線硬化され得るインクである、請求項1に記載の使用。
【請求項18】
組成物に改善された不透明度を与えるための、媒剤中に分散した顔料材料を含む前記組成物における、請求項1~7の何れか一項に記載の前記微粒子材料の前記顔料材料としての使用。
【請求項19】
組成物の不透明度に悪影響を及ぼすことなく、低濃度の顔料材料が用いられることを可能にするための、媒剤中に分散した前記顔料材料を含む前記組成物における、請求項1~7の何れか一項に記載の前記微粒子材料の前記顔料材料としての使用。
【請求項20】
組成物の不透明度に悪影響を及ぼすことなく、より厚さの薄い前記組成物が、基材上で被覆として用いられることを可能にするための、媒剤中に分散した顔料材料を含む前記組成物における、請求項1~7の何れか一項に記載の前記微粒子材料の前記顔料材料としての使用。
【請求項21】
3ミクロン以下の組成物の厚さにて、55%以上の不透明度値Y(B)を得るための、媒剤中に分散した顔料材料を含む前記組成物における、請求項1~7の何れか一項に記載の前記微粒子材料の前記顔料材料としての使用であって、
前記不透明度値Y(B)は、ケアリー(Cary)5000分光器を用いて反射率モードで測定した、黒色背景上での前記厚さの組成物の反射率である、使用
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、概して、チタニア微粒子に関し、特に薄膜におけるチタニア微粒子の使用に関する。
[発明の背景]
二酸化チタン(TiO)は、一般に、商業的に主要な白色顔料であると見なされる。二酸化チタンは、並外れて高い屈折率、ごくわずかな色彩を有し、また、不活性である。二酸化チタンは、概して、市場において、アナターゼ型またはルチル型の2つの主要な多形体の何れかで存在し、商業的用途の大部分のためには、ルチル型が好ましい形態である。
【0002】
二酸化チタンは、塗料、紙、プラスチック、セラミック、インクなどの乳白剤として有用であるとして周知である。
原料の顔料用二酸化チタンを作成するための2つの主要なプロセス、つまり、硫酸塩法及び塩化物法がある。硫酸塩法は、濃硫酸中のイルメナイトまたはチタニアスラグの蒸解に基づく。硫酸鉄として鉄分を除去した後、溶液が加熱され、水で希釈される。チタンが加水分解して、オキシ硫酸チタンの沈殿物を形成し、これは、TiO顔料を生成するためにさらに処理される。塩化物法は、低鉄含チタン鉱石または中間生成物のカーボクロリネーションに基づいてTiClを形成し、その後TiClの気相酸化が行われる。
【0003】
二酸化チタンは、分散系のpH調整により、二酸化チタンを含む分散系から凝集及び/または沈殿させられてもよい。任意の周知の方法により得られるような二酸化チタンのための仕上げ工程は、乾式粉砕、湿式粉砕、分類、ろ過、洗浄、乾燥、蒸気微粉化、及び、包装のうちの1つ以上を含んでもよい。概して、商業的な工程において、二酸化チタン分散系は、好ましい粒子サイズ分布を達成するために、粉砕され、微粉化されるのが常である。
【0004】
従来のルチル型TiOは、0.17μm~0.29μmの平均結晶サイズを有し、一方、従来のアナターゼ型TiOは、0.10μm~0.25μmの平均結晶サイズを有する。
【0005】
結晶サイズは、粒子サイズとは区別される。粒子サイズは、それが用いられるシステムにおける顔料の分散の効率によって決まる。
粒子サイズは、結晶サイズ、及び、例えば、乾式、湿式、または、統合方式粉砕などの粉砕技術、のような因子により決定される。従来のルチル型TiOの粒子サイズは、0.25μm~0.35μmであり、一方、従来のアナターゼ型TiOは、0.15μm~0.30μmの粒子サイズを有する。結晶が「凝集する」ような技術が用いられる場合には、より大きな粒子サイズとなり得る。
【0006】
市販される二酸化チタンは、概して、150nm~350nm(0.15μm~0.35μm)の平均粒子サイズを有する。
大部分の塗料に関して、従来、平均粒子サイズ(ブルックヘブン BI-XDC X線ディスク遠心分離機システムを用いて特定され得る)は、幾何標準偏差が1.45未満で、0.29ミクロンから0.32ミクロンの範囲内にあるべきであると認められている。当業者が理解し得るように、粒子サイズ分布は、対数正規分布としてモデル化される。同じことが、結晶サイズ分布に適用される。
【0007】
粒子サイズ分布の測定は、ブルックヘブン BI-XDC X線ディスク遠心分離機システム(XDC)を用いて、以下のようにされてもよい。つまり、乾燥TiO材料(0.92g)が、0.625gpl(g/L)のケイ酸ナトリウム溶液(16.80g)及び脱イオン水(5.28g)と、ボッシュ(Bosch)のミルポット内で混合され、固体が4%以下の希釈懸濁液を与える。pHは、水酸化ナトリウム溶液(20gpl)2滴にて、10~10.5の間に調整される。サンプルは、その後、ボッシュの高速インペラを用いて、10分間しっかりと粉砕される。この方法は、大部分の塗料及びインクの製造において用いられる機械的エネルギを代表するような設計である。
【0008】
上述したように、TiOの結晶サイズ分布及び粒子サイズ分布は、本来、対数正規となる傾向がある。分布曲線が対称となり得る値の正規分布とは対照的に、対数正規分布は、大きい側に長いしっぽのある分布曲線を有する。しかしながら、このような対数正規分布のために、微粒子の頻度がサイズの対数に対してプロットされる場合には、対称的な分布曲線が得られる。正規分布は、68wt%の結晶/粒子が、「平均+1標準偏差」と、「平均-1標準偏差」と、の間にあるような、重み付き標準偏差(arithmetic weight standard deviation)により特徴付けられる。対照的に、対数正規分布は、68wt%の結晶/粒子が、「平均×1標準偏差」と、「平均/1標準偏差」との間にあるような、重み付き幾何標準偏差(geometric weight standard deviation: GWSD)により特徴付けられる。
【0009】
商業的用途に用いられるような、従来の顔料ルチル型TiOは、約0.25ミクロンの平均結晶サイズを有するが、これは、当該技術分野において、この値が、不透明度及び白色度などの特性のために最適であると一般的に認められているからである。不透明度は、入射光の全ての波長の散乱の結果であり、所与の波長の光の最も高効率な散乱は、当該光の波長の半分の結晶サイズを有するTiOが用いられる場合に生じるという考えに基づき、容認される結晶サイズの選択が行われる。
【0010】
例えば、US2014/073729は、「ミー理論によれば、電磁放射線は、電磁放射線の波長の半分に相当する粒子サイズを有する微粒子により最適に反射される。顔料用二酸化チタン微粒子は、それゆえに、可視光(380~780nm)の波長の半分に相当する、およそ0.2~0.4μmの粒子サイズ分布を有する。」と述べている。
【0011】
従って、例えば、0.25ミクロンの平均粒子サイズは、通常、(太陽のスペクトルの最大放射強度が生じる)500nmの可視光を最適に散乱するための選択と言えるであろう。
【0012】
0.25ミクロンの平均結晶サイズを有する材料は、通常は、0.20~0.30ミクロンの範囲内の結晶の占める割合が高い。概して、結晶の68wt%(つまり、平均±1重み付き幾何標準偏差)が、0.19ミクロンから0.33ミクロンのサイズ範囲内にある。結晶サイズ分布は、結晶の電子顕微鏡写真の画像解析により特定されてもよい。
【0013】
顔料チタニアの使用例が、従来技術に見られる。例えば、GB 2 322 366は、改良された顔料特性を有するアナターゼ型チタニアを説明し、このチタニアは、結晶サイズの重み付き幾何標準偏差が、概して、1.30~1.50の範囲内である一方で、0.2より大きく0.28μm未満の平均結晶サイズを有する。EP 0 779 243は、(1つ以上の結晶を含む)微粒子の狭いサイズ分布を有し、良好な光学効率を備えるルチル型チタニア微粒子を生成するための工程を開示する。粒子は、0.17μm~0.32μmの範囲内の平均結晶サイズを有し、好ましい平均結晶サイズは、0.22μm~0.26μmであるとして説明される。GB 2 276 157は、改良された顔料特性を有するアナターゼ型チタニア微粒子を説明し、そこでは、少なくとも90%が、0.20μm~0.30μmの範囲内の平均結晶サイズ、及び、1.31~1.35の重み付き幾何標準偏差を有する。
【0014】
印刷用インクなどの薄膜に関する用途において、0.25ミクロンの平均結晶サイズは未だ用いられている。しかしながら、良好な隠蔽を達成するために、薄膜はより大きな課題を与えるので、例えば、そのような顔料中の68wt%の結晶が、0.20~0.31ミクロンの範囲内にあるというような、非常に狭い結晶サイズ分布が通常である。そのような膜において良好な隠蔽のための十分な不透明度を達成するために、高濃度のチタニアが通常必要とされる。
【0015】
大結晶サイズのチタニア材料の使用もまた知られている。そのような生成物の1つの例は、高い赤外反射のために、堺化学工業株式会社により市場に出されたR-38Lであり、これは、TEM(透過型電子顕微鏡)顕微鏡写真の画像解析により測定された場合に、0.56μmの平均結晶サイズを有する。TEM顕微鏡写真の画像解析により測定された場合に、0.308~0.508μmの範囲内のR-38L結晶の(重量)パーセントは、29.45%である。
【0016】
WO2009/136141は、0.40μmより大きいサイズの平均結晶サイズ、及び、30%以上の微粒子が1μm未満であるような粒子サイズ分布を有することを必要とされるNIR(近赤外)散乱微粒子材料を説明し、好ましくは、NIR散乱微粒子材料は、0.40μmより大きく1.20μm以下、例えば0.45~1.1μm、より好ましくは0.50~1.1μm、例えば0.60~1.0μm、例えば0.70~1.0μm、の平均結晶サイズを有する。WO2009/136141にて用いられる大結晶TiO生成物は、0.79の平均結晶サイズ、及び、1.38の重み付き幾何標準偏差を有するルチル型チタニアを含む。この材料は、使用中に太陽に晒される生成物の耐久性及び/または寿命を改善する。
【0017】
GB 2 477 930は、0.5μm~2.0μm、より好ましくは、0.7μm~1.4μmの平均粒子サイズを有するルチル型チタニアの、着色太陽光反射システムにおける使用を説明する。結晶サイズは、開示されていない。GB2477930において、有用な二酸化チタンは、可視光の低散乱及び低吸収をももたらす一方で、近赤外線(NIR)を散乱することができるものとして述べられている。
【0018】
GB 2 477 931は、実質的にルチル型の晶癖、及び、0.5μm以上の平均粒子サイズ、を有する、機能性被覆微粒子材料の使用を説明する。ルチル型チタニアとしてよいこの材料は、紫外線遮断組成物を提供するために、溶剤中に体積で1~20%の濃度で用いられる。この組成物は、いくつかの二酸化チタン組成物にて見られる、紫外線により活性化される光触媒効果を増大することなく、基材を紫外線(300~400nm)から保護する。
【0019】
GB 2 477 931は、ハンツマン製チタニア生成物TR60(登録商標)にも言及する。この生成物は、測定された結晶サイズが0.240~0.248の範囲内であり、結晶の21.1%は、平均で、0.30~0.50ミクロンの範囲内のサイズを有し、測定された粒子サイズと結晶サイズとの比率は、1.254~1.510の範囲内である。
【0020】
印刷用インク、(例えばコイル被覆工程における)金属用のプライマ塗膜、及び、プラスチック膜(例えば、包装、及び、特に食品包装用)などのチタニア含有生成物において、生成物の厚さを薄く維持すること、つまり、生成物を薄膜にすることが必要とされる。生成物をより軽量にし、用いられる材料の量を削減するために、これまでより薄い膜を手に入れるという継続する要求があり、これは、削減されたコスト及び改善された環境保護証明といった利益をもたらす。しかしながら、これは、被覆を通して後ろが見えないことを確実にするために、良好な隠蔽力の必要性とバランスが取られなければならない。それゆえに、下層の基材に起因する背景色の好適な隠蔽のために十分な不透明度をもたらす一方で、どこまで膜を薄くし得るかということには限度がある。
【0021】
TiOが高充填された薄膜は、透過が減衰されるかまたは拡散されなければならない用途(例えば、温室内の減衰膜、及び、照明器具またはバックライト付きのディスプレイなど)においても有益である。
[発明の概要]
本発明は、第1態様において、二酸化チタン、ドープ二酸化チタン、及び、それらの混合物からなるグループから選択される顔料微粒子材料を提供し、微粒子材料は、0.3~0.5ミクロンの範囲内の平均結晶サイズと、微粒子材料の40wt%以上が、0.3~0.5ミクロンの範囲内の結晶サイズを有するような結晶サイズ分布と、を有し、さらに、平均粒子サイズの平均結晶サイズに対する比率は、1.25以下である。
【0022】
一実施形態において、微粒子材料は、0.35~0.5ミクロンの範囲内の平均結晶サイズと、微粒子材料の40wt%以上が、0.3~0.5ミクロンの範囲内の結晶サイズを有するような結晶サイズ分布と、を有する。
【0023】
一実施形態において、微粒子材料は、0.4~0.5ミクロンの範囲内の平均結晶サイズと、微粒子材料の40wt%以上が、0.3~0.5ミクロンの範囲内の結晶サイズを有するような結晶サイズ分布と、を有する。
【0024】
驚くべきことに、第1態様の材料は、従来の顔料チタニア材料と比べて改善された不透明度をもたらすために用い得ることが分かった。さらに、このような材料は、従来の顔料チタニア材料と比べて改善された明度をもたらすために用い得る。これは、実施例に見ることができる。
【0025】
例えば、従来の顔料チタニアを含む薄膜と比べて、約10%の不透明度の改善が、第1態様の材料を含む薄膜(例えば塗料またはインクの薄層)にて提供され得る。これは実施例に見ることができる。
【0026】
それゆえに、これは、最適なTiOのサイズは、散乱される光の波長の半分に等しい結晶サイズであるという従来の常識に反している。ウェーバの法則は、最適なTiOサイズは、光の波長の半分であるべきで、それゆえに、550nmの緑色太陽光に対して約0.275ミクロンであるべきであると示唆している。0.275ミクロンよりも大幅に大きい平均結晶サイズを有するチタニアを用い、結晶サイズが、最適として考えられたサイズから離れる全体的な分布を用いることにより、従来材料に匹敵することは言うまでもなく、より良好な生成物が得られ得ることは、予測されなかったであろう。
【0027】
TiO顔料生成物における一般的な公差は、+/-0.005ミクロンである。それゆえに、結晶サイズにおける0.275ミクロンから0.3ミクロン以上への増加は、重要である。
【0028】
本発明は、標準の顔料サイズよりも大きい範囲、つまり、0.3~0.5ミクロンの範囲内の平均結晶サイズを有することにより、さらに、微粒子材料の40wt%以上が0.3~0.5ミクロンの範囲内の結晶サイズを有するように、標準の顔料サイズからは離れた、特定の制御された結晶サイズ分布を有することにより、技術的に有益な特性が達成されることを特定した。このようなチタニア材料を含む薄膜は、優れた不透明度及び明度を有することが示された。
【0029】
以前は隠すことが困難であった基材を隠蔽できるようにするオプションを提供するだけでなく、より少ない被覆組成物を用いながらも同様の不透明度を達成するという別のオプションも提供し、それゆえに、コストを削減すると共に環境面に利点をもたらすので、従来の顔料チタニア材料を用いることと比べて10%の不透明度の改善は重要である。
【0030】
この点に関し、第1態様の材料は、所与の厚さの膜に対する改善された不透明度及び/または明度、及び、組成物内のTiO濃度、を有する被覆組成物を提供するために用いられてもよい。それゆえに、膜は、不透明度に関して妥協することなく、より薄くされてもよく、及び/または、より少ないチタニアを用いてもよい。このことは、膜が、より軽量になり、必要とされる材料の量を削減することにつながり、環境面への利点だけでなく、関連するコストの削減をももたらす。
【0031】
代替として、膜は、同じ厚さでありながら、不透明度及び/または明度の観点から改善された特性を有するものとして用いられ得る。これは、下層の基材が強いかまたは濃い色、または、反射面を有する最終用途に有益であり、それゆえに、改善された不透明度が、下層の色/反射率を隠蔽するための膜の遮蔽特性を向上し得る。
【0032】
平均粒子サイズの平均結晶サイズに対する比率が1.25以下である微粒子の使用は、この微粒子が薄膜にて利用され得ることを確実にするために重要である。より大きな比率を有する生成物は、本発明における用途を想定した薄膜の形成に適切でないであろう。
【0033】
当業者が理解し得るように、粒子サイズ(ミクロン):結晶サイズ(ミクロン)比率が1.25であることは、各微粒子の「直径」が、結晶よりも25%大きいことを示す。これは、粒子体積が、結晶体積よりも、(1.25)倍大きい、つまり、約2倍大きいことを意味する。換言すれば、この比率において、1粒子当たり平均で2つの結晶が存在する。それゆえに、本発明のこの比率を超えることは、2または3次元に拡大する微粒子をもたらす。概念的に、結晶体積の2倍より大きい粒子体積を有することは、不規則形状の効果的な細密充填が困難であることを意味すると、技術知識を有する読者により理解されるであろう。
【0034】
本発明による微粒子は密に充填され得る。本発明による微粒子は、薄膜で成功裏に用いられ得る。驚くべきことに、密な充填を用いることは、当技術分野において従来持たれた考えに反して、本発明における可視光散乱に悪影響を及ぼさないことが明らかにされた。具体的にクレームされたチタニアの形態は、膜組成物に改善された不透明度をもたらす。
【0035】
加えて、結晶体積の2倍より大きい粒子体積を有することは、表面インクの外観(光沢)を損ない得る表面粗さをもたらす可能性もある。
それゆえに、本発明において、平均粒子サイズの平均結晶サイズに対する比率が1.25以下であることは、技術的に有利である。
【0036】
本発明は、平均結晶サイズ、サイズ分布、及び、粒子サイズの結晶サイズに対する比率に関して具体的にクレームされた形態のチタニアが、膜組成物に対して改善された不透明度をもたらすことを特定した。これは、特に、高濃度のTiO(30vol%以上)を用いる組成物にて明らかにされた。
【0037】
本発明において、粒子サイズの結晶サイズに対する比率に関してだけでなく、平均結晶サイズ及びその多分散性(結晶サイズの分布)の両方に関しても制御されることは重要である。
【0038】
驚くべきことに、顔料生成物における結晶サイズ及び分布からは離れる、これらのより大きな結晶サイズ及び分布は、比較的高濃度のチタニアを有する薄膜に備えられる場合には、可視光の散乱のために許容され得るというだけでなく、実際に最適であるということが明らかにされてきた。
【0039】
従来、結晶サイズが0.10~0.29ミクロン(好ましくは、0.23~0.27ミクロン)の範囲内であるTiO顔料は、可視領域において、光の反射に有用性があることが明らかにされてきた。平均結晶サイズが0.3ミクロンを超える範囲のチタニアは、一般的に、可視光を反射するために不適切であると考えられてきた。このより大きいサイズにて材料を生成する動機は、近赤外放射を反射する(温度管理の)必要があることにより突き動かされてきた。
【0040】
それゆえに、より大きい結晶のチタニアの極めて重要な従来の用途は、NIR(近赤外)散乱に関連するものであった。いくつかの有用性が、紫外線(300~400nm)からの保護を提供することにおいても見出された。
【0041】
当業者が理解し得るように、太陽のスペクトルは幅広く、狭い分布は、幅広い範囲の波長を反射するための必要条件とは食い違うであろう。
驚くべきことに、本発明において、(i)比較的大きい結晶サイズ、つまり、0.3~0.5ミクロンの範囲内の平均結晶サイズ、を、(ii)比較的狭い分布、つまり、微粒子材料の40wt%以上が、0.3~0.5ミクロンの範囲内の結晶サイズを有するような結晶サイズ分布、と併用し、更に、(iii)平均粒子サイズの平均結晶サイズに対する比較的低い比率、つまり、1.25以下、と併用することは、驚くほど良好な可視光の散乱を引き起こし、これは、良好な不透明度及び明度を有する被覆組成物が生成され得ることを意味する。これは、特に、薄膜を生成するために用いられ得る。
【0042】
それゆえに、本発明はまた、第2態様において、媒剤中に分散した第1態様の微粒子材料を含む組成物を提供する。この媒剤は、例えば、樹脂及び/または結合剤を含んでもよい。
【0043】
一実施形態における組成物は、インク(例えば、印刷用インク)、塗料、(例えば、コイル被覆工程において用いるための)金属用のプライマ塗膜、または、薄プラスチック膜(例えば、包装用)であってもよい。
【0044】
この組成物は、30vol%以上、または35vol%以上、例えば40vol%以上、例えば40~75vol%、の量のチタニアを含んでもよい。これは、TiO材料の濃度が10vol%であることが一般的な従来の被覆組成物と比べて遜色がない。可視光の最適な散乱の効果は、チタニアの充填が30vol%以上である組成物にて、特に見出されてきた。
【0045】
概して、第1態様の微粒子材料は、薄膜、特に20ミクロン以下の厚さ、例えば15ミクロン以下の厚さ、または10ミクロン以下の厚さ、好ましくは5ミクロン以下の厚さの膜、にて用いられる場合に特に有利である。このような膜は、十分な不透明度、それゆえに、そこに良好な隠蔽力がもたらされることを達成するために、高濃度のTiOを必要とする。
【0046】
それゆえに、本発明はまた、第3態様において、第2態様の組成物から形成される膜を提供し、当該膜は、20ミクロン以下、例えば15ミクロン以下、または10ミクロン以下、好ましくは5ミクロン以下の厚さを有する。薄膜の厚さは、例えば、偏光解析法のような当技術分野において周知の技術を用いて測定されてもよい。
【0047】
第1態様の微粒子材料の最終用途は、インク(例えば、印刷用インク)、塗料、(例えば、コイル被覆工程における)金属用のプライマ塗膜、及び、薄プラスチック膜(例えば、包装用)を含む。
【0048】
ただし、第1態様の微粒子材料は、顔料チタニアが一般的に利用される他の用途、例えば、白色の太陽光反射被覆、プラスチック部品、及び、屋根板、の用途においても、利用されてもよい。
【0049】
本発明の第4態様において、第2態様の組成物または第3態様の膜にて少なくとも部分的に被覆される基材を含む生成物が提供される。当該組成物または膜は、インク、プライマ塗膜、または、プラスチック膜であってもよく、それゆえに、一実施形態において、当該生成物は、インク、プライマ塗膜またはプラスチック膜にて少なくとも部分的に被覆される基材を含む。例えば、この生成物は、外表面を有してもよく、また、その外表面の一部、大部分、または、全体が、インク、プライマ塗膜、または、プラスチック膜にて被覆されてもよい。
【0050】
一実施形態において、基材は、反射面を有してもよく、例えば、それは、金属または金属表面のある生成物であってもよい。それは、金属コイル、例えば、スチールコイルまたはアルミニウムコイルであってもよく、または、金属箔であってもよい。この文脈において、金属は、金属元素または合金である。
【0051】
一実施形態において、基材は、包装、例えば、食品用の包装である。
一実施形態において、基材は、バーコードであってもよく、または、バーコードを含んでもよい。バーコードの白色部分に改善された明度を有することは、黒色部分とのコントラストの助けとなり、さらに、赤外線バーコードリーダによるバーコードの読み取りを支援できる。
【0052】
第1態様の微粒子材料のさらなる利点は、紫外線硬化が実施可能になることである。従来のルチル型TiOは、紫外線を遮断する効率が非常に良く、それゆえに、いかなる紫外線ベースの硬化処理をも妨げる。対照的に、第1態様の材料は、紫外線波長の幅広い範囲にて改善された透過率を有し、それゆえに、紫外線硬化が可能である。それゆえに、第1態様の材料は、紫外線硬化されるインクに用いられてもよい。
【0053】
それゆえに、一実施形態において、第2態様の組成物は、紫外線硬化可能なインクである。
第5態様において、本発明は、第1態様の微粒子材料の、インク、塗料、金属用のプライマ塗膜またはプラスチック膜における使用を提供する。インクは、印刷用インク、セキュリティインク、及び/または、紫外線硬化可能なインクであってもよい。
【0054】
第6態様において、本発明は、組成物に改善された不透明度をもたらすための、媒剤中に分散した顔料材料を含む組成物における、第1態様の微粒子材料の顔料材料としての使用を提供する。
【0055】
第7態様において、本発明は、組成物の不透明度に悪影響を及ぼすことなく、低濃度の顔料材料が用いられることを可能にするための、媒剤中に分散した顔料材料を含む組成物における、第1態様の微粒子材料の顔料材料としての使用を提供する。
【0056】
第8態様において、本発明は、組成物の不透明度に悪影響を及ぼすことなく、より厚さの薄い組成物が基材上で被覆として用いられることを可能にするための、媒剤中に分散した顔料材料を含む組成物における、第1態様の微粒子材料の顔料材料としての使用を提供する。
【0057】
第9態様において、本発明は、3ミクロン以下の組成物の厚さにて、550nmで55%以上の不透明度値Y(B)(黒色背景上の反射率)を得るための、媒剤中に分散した顔料材料を含む組成物における、第1態様の微粒子材料の顔料材料としての使用を提供する。例えば、本発明は、2.8ミクロン以下、または2.6ミクロン以下、または2.4ミクロン以下の組成物の厚さにて、550nmで55%以上の不透明度値Y(B)(黒色背景上の反射率)を得るために用いられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】本開示によるチタニア微粒子材料を含む2種類の白色インク膜、及び、従来のチタニア微粒子材料を含む2種類の白色インク膜の、550nmでのY(B)(黒色上の反射率)の結果を示すグラフである。
図2】本開示によるチタニア微粒子材料を含む2種類の白色インク膜、及び、従来のチタニア微粒子材料を含む2種類の白色インク膜の、波長範囲にわたる透過率の結果を示すグラフである。
図3図1の550nmでのY(B)(黒色上の反射率)の結果を示すグラフであり、本開示によるチタニア微粒子材料を含む2種類の白色インク膜の結果は、平均化され、1本の線で示される。
図4】異なる結晶サイズのチタニア微粒子材料を含むアルキド塗膜の、10μmの膜厚でのY(B)(黒色上の反射率)の結果を示すグラフである。
図5】異なる結晶サイズのチタニア微粒子材料を含む紫外線硬化インクを示し、硬化インクは、過マンガン酸カリウムで処理されており、そのため、変色が少ないほど、硬化がより良好であることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0059】
図1~3のグラフにおいて、当業者は、本開示による生成物と従来生成物との間のY軸方向における差が、不透明度の差を表し、それゆえに本発明を用いることによる改善された品質の可能性を示し、一方、X軸方向におけるこの差が、必要とされる材料の量の差を表し、それゆえに本発明を用いることによる材料及びコストの節約の可能性を示す、ことを理解するであろう。
[発明の詳細な説明]
本開示の顔料微粒子材料は、0.3~0.5ミクロンの範囲内の平均結晶サイズ、及び、微粒子材料の40wt%以上が、0.3~0.5ミクロンの範囲内の結晶サイズを有するような結晶サイズ分布、を有し、平均粒子サイズの平均結晶サイズに対する比率は、1.25以下である。0.4ミクロンサイズ付近に集まるこの結晶サイズ分布の微粒子材料を備えることは、予測できなかった特性を引き起こし、特に、平均結晶サイズが約0.25ミクロンの微粒子材料と比較して改善された不透明度を備え、このことは、強力な隠蔽力が必要とされる薄膜において、材料を特に有用にする。
【0060】
微粒子材料の結晶サイズ分布は、本来、対数正規的、または、ほぼ対数正規的である。
一実施形態において、微粒子材料は、0.35~0.5ミクロンの範囲内の平均結晶サイズ、及び、微粒子材料の40wt%以上が、0.3~0.5ミクロンの範囲内の結晶サイズを有するような結晶サイズ分布を有する。
【0061】
一実施形態において、微粒子材料は、0.4~0.5ミクロンの範囲内の平均結晶サイズ、及び、微粒子材料の40wt%以上が、0.3~0.5ミクロンの範囲内の結晶サイズを有するような結晶サイズ分布を有する。
【0062】
一実施形態において、結晶サイズ分布は、微粒子材料の45wt%以上、例えば50wt%以上が、0.3~0.5ミクロンの範囲内の結晶サイズを有するようにされている。一実施形態において、結晶サイズ分布は、微粒子材料の40wt%~95wt%、例えば45wt%~90wt%、または50wt%~85wt%が、0.3~0.5ミクロンの範囲内の結晶サイズを有するようにされている。
【0063】
一実施形態において、結晶サイズ分布は、微粒子材料の40wt%以上が、0.3~0.5ミクロンの範囲内の結晶サイズを有することに加え、微粒子材料の50wt%以上、例えば55wt%以上または60wt%以上または70wt%以上、例えば75wt%以上または80wt%以上、例えば50~99wt%または55~95wt%または60~90wt%が、0.6ミクロン以下の結晶サイズを有するようにされている。
【0064】
一実施形態において、結晶サイズ分布は、微粒子材料の45wt%以上、例えば50wt%以上、例えば45~95wt%、または48~90wt%、または50~85wt%が、0.5ミクロン以下の結晶サイズを有するようにされている。
【0065】
一実施形態において、結晶サイズ分布は、微粒子材料の0.5wt%以上、例えば1wt%以上、または1.5wt%以上、例えば2wt%以上、または3wt%以上、または4wt%以上、または5wt%以上が、0.2~0.3ミクロンの範囲内の結晶サイズを有するようにされている。一実施形態において、結晶サイズ分布は、微粒子材料の0.5wt%~40wt%、例えば1wt%~30wt%、または1.5wt%~25wt%、または2wt%~20wt%が、0.2~0.3ミクロンの範囲内の結晶サイズを有するようにされている。
【0066】
一実施形態において、結晶サイズ分布は、微粒子材料の50wt%以上、例えば60wt%以上、または65wt%以上が、0.29~0.56ミクロンの範囲内の結晶サイズを有するようにされている。一実施形態において、結晶サイズ分布は、微粒子材料の68wt%以上が、0.29~0.56ミクロンの範囲内の結晶サイズを有するようにされている。
【0067】
本発明において、粒子サイズと結晶サイズとの比率に関してだけでなく、平均結晶サイズ及び多分散性(結晶サイズの分布)の両方に関しても、制御されることが重要である。それは、特にチタニア濃度が30vol%以上の薄膜において、驚くほど効果的な可視光散乱を有する材料につながる3つの因子全ての制御である。
【0068】
当業者は、本技術分野において、平均粒子サイズは、幾何平均の計算により特定されることを承知しているであろう。
当業者が承知しているように、結晶サイズは粒子サイズとは区別される。結晶サイズは、微粒子材料を形成する基本的な結晶のサイズに関連する。これらの結晶は、その後、ある程度まで集合して、より大きな粒子を形成する場合がある。本開示において、平均粒子サイズの平均結晶サイズに対する比率は1.25以下であるので、平均粒子サイズは平均結晶サイズに近い。
【0069】
一実施形態において、平均粒子サイズの平均結晶サイズに対する比率は、1.0~1.25であってもよい。一実施形態において、平均粒子サイズの平均結晶サイズに対する比率は、1.0~1.2、または1.0~1.15、または1.1~1.2、または1.1~1.15である。
【0070】
粒子サイズと結晶サイズとの両方が同時に測定された場合、粒子サイズは結晶サイズより大きくなるはずである。一実施形態において、平均粒子サイズの平均結晶サイズに対する比率は、1.0より大きく、1.25以下である。
【0071】
二酸化チタンの結晶サイズ及び粒子サイズは、当業者に周知の方法により特定されてもよい。例えば、結晶サイズは、擦り取られたサンプルについての透過電子顕微鏡法(TEM)により、結果として生じる写真の画像解析を用いて特定されてもよい。結晶サイズの結果は、latex NANOSPHERE(商標)サイズ標準(Thermo Scientificより入手可能)を用いた参照により、さらに正当性が確認されてもよい。二酸化チタンの粒子サイズの特定のために用い得る方法は、X線沈降である。結晶サイズ分布は、結晶の電子顕微鏡写真の画像解析により特定されてもよい。
【0072】
本開示の二酸化チタンは、白色または半透明(透光性)であってもよい。好ましくは、二酸化チタンは白色である。それゆえに、一実施形態において、二酸化チタンは、95より大きい明度L(CIE L色空間)、5未満のa値及び5未満のb値、を有する。
【0073】
本開示において用いられる二酸化チタンは、硫酸塩法、フッ化物法、水熱法、エアロゾル法、浸出法、または、塩化物法により生成されてもよい。一実施形態において、二酸化チタンは、硫酸塩法または塩化物法により生成される。
【0074】
二酸化チタンは、ルチル型またはアナターゼ型の結晶形の何れかであってもよい。本開示において、そのより高い屈折率のために、ルチル型の結晶形が好ましいであろう。一実施形態において、二酸化チタンは、ルチル型が50重量%以上、例えば60wt%以上、例えば70wt%以上、好ましくは80wt%以上、より好ましくは90wt%以上、最も好ましくは95wt%以上、例えば99wt%以上、例えば99.5wt%以上である。
【0075】
二酸化チタンは、例えば20wt%以下、特に15wt%以下、または10wt%以下、例えば8wt%以下、例えば5wt%以下、の水準の不純物を含んでもよい。これらの不純物は不完全な精製に起因し、例えば、二酸化チタンの原料中に通常存在する、鉄、シリカ、ニオビアまたは他の不純物であってもよい。一実施形態において、二酸化チタンは、0.5wt%以下、例えば0.1wt%以下、例えば0.01wt%以下、の水準の不純物を含んでもよく、これらの不純物は、例えば、二酸化チタンの原料中に通常存在する、鉄、リン、ニオビアまたは他の不純物であってもよい。
【0076】
好ましくは、二酸化チタンは、90wt%以上、例えば92wt%以上、例えば93wt%以上のTiO含有量を有する。より好ましくは、二酸化チタンは、95wt%以上、例えば99wt%以上、例えば99.5wt%以上のTiO含有量を有する。
【0077】
一実施形態において、微粒子材料は、二酸化チタンである。別の実施形態において、微粒子材料は、ドープ二酸化チタン、または、二酸化チタンとドープ二酸化チタンとの混合物である。技術知識を有する読者が理解し得るように、ドープ二酸化チタンは、二酸化チタンの調製の間に取り込まれる1つ以上のドーパントを有する。ドーパントは、周知のプロセスにより取り込まれてもよく、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、バナジウム、クロム、ニッケル、アルミニウム、アンチモン、ニオブ、リン、または、セシウム、を含んでもよく、これらに限定されない。ドーパントは、二酸化チタンの総重量に基づいて、30重量%以下、好ましくは15重量%以下、さらに、より好ましくは5重量%以下の量で取り込まれてもよい。例えば、ドーパントは、二酸化チタンの総重量に対して、0.1~30重量%、または0.5~15重量%、または1~5重量%の量で取り込まれてもよい。
【0078】
ドープ二酸化チタンは、ルチル型またはアナターゼ型の結晶形の何れかであってもよい。好ましくは、ドープ二酸化チタンは、ルチル型の結晶構造を有する。当業者が理解し得るように、これは、必ずしも、ドープ二酸化チタンがルチル型であることを意味するものではなく、ルチル型の構造異性体の材料であってもよい。
【0079】
一実施形態において、微粒子材料を被覆剤にて処理して、被覆二酸化チタンまたは被覆ドープ二酸化チタンを形成してもよい。当技術分野において、チタニアの被覆は周知である。
【0080】
上述したように、結晶サイズは、電子顕微鏡法を用いて特定されてもよい。この技術を用いる場合、十分な結晶を含む像は、ほとんどの被覆を観察するために必要とされる倍率よりも低い倍率を必要とする。例えば、5wt%被覆は、約0.01ミクロン厚でしかないであろう。厚い被覆は、結晶の周囲に低コントラストの光の輪として見えるであろう。それゆえに、電子顕微鏡法を介して結晶サイズを評価する場合には、そこで被覆が観察されるが、被覆は、無視されるべきである。つまり結晶のサイズ決定は、被覆無しの結晶(高コントラスト領域)に基づくべきである。
【0081】
使用に適した被覆剤は、微粒子の表面に無機酸化物または水和酸化物を塗布するのに一般的に用いられるものを含む。典型的な無機酸化物及び水和酸化物は、シリコン、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、マグネシウム、亜鉛、セリウム、リン、または、スズ、のうちの1つ以上の酸化物及び/または水和酸化物、例えば、Al、SiO、ZrO、CeO、P、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、アルミン酸ナトリウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、または、これらの混合物を含む。二酸化チタンまたはドープ二酸化チタンの表面上に塗布される被覆の量は、二酸化チタンまたはドープ二酸化チタンの総重量に対して、約0.1重量%~約20重量%の範囲の無機酸化物及び/または水和酸化物としてもよい。
【0082】
二酸化チタンの生成における粉砕段階にて、有機表面処理が選択的に適用されてもよい。これらは、ポリオール、アミン、アルキルホスホン酸、及び/または、シリコン誘導体を用いる処理を含む。例えば、有機表面処理は、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、トリエタノールアミン、n-オクチルホスホン酸、または、トリメチロールエタンを用いてもよい。
【0083】
一実施形態において、微粒子材料は、特定のサイズ区分を選択的に取り除くために処理されてもよい。例えば、直径5μm以上の全ての微粒子が取り除かれてもよく、一実施形態において、直径3μm以上の全ての微粒子が取り除かれてもよく、または、直径1μm以上の全ての微粒子が取り除かれてもよい。このような微粒子は、例えば、遠心分離処理により取り除かれてもよい。
【0084】
本開示は、媒剤中に分散した本発明の微粒子材料を含む組成物をも提供する。媒剤は、その材料が分散され得る任意の成分または成分の組み合わせであってもよい。微粒子材料の量は、組成物の総体積に基づいて、微粒子材料が0.5体積%~約75体積%となることが好適である。
【0085】
一実施形態において、組成物は、薄膜としての用途のためのものであり、組成物の総体積に基づいて、30vol%以上、例えば40vol%以上、例えば40~75vol%の微粒子材料を含む。
【0086】
驚くべきことに、平均結晶サイズ、サイズ分布、及び、粒子サイズと結晶サイズとの比率の観点から具体的にクレームされた形態のチタニアは、膜組成物に改善された不透明度をもたらすことが明らかになった。これは、高濃度(30vol%以上)のTiOを用いる薄膜にて明らかにされた。それゆえに、クレームされたより大きい結晶サイズ及び分布は、顔料生成物における結晶サイズ及び分布からは離れるが、比較的高濃度のチタニアを有する薄膜において与えられる場合には、可視光散乱のために許容され得るだけでなく、実際に最適であることが確認された。顔料用TiOと比較して、不透明度における10%の改善が観測された。
【0087】
不透明度における10%の改善は、当該技術分野において重要である。この差は、以前は隠すことが困難であった基材が十分に隠蔽され得ることを意味するのに十分であろう。同じく、同程度の被覆率を維持しながら、被覆組成物材料の量が相応に削減されることを意味する。原材料における数パーセントの削減でさえ、環境に対する利点を潜在的に有するだけでなく、コスト削減の観点から、有益であろう。
【0088】
一実施形態によれば、媒剤は、合成樹脂または天然樹脂であるか、またはこれを含む。樹脂は、ポリオレフィン樹脂、ポリビニルエステル樹脂(ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニルコポリマー樹脂(polyvinyl chloride acetate resin)、ポリビニルブチラール樹脂を含む)、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、フッ素重合体、または、エポキシ樹脂であってもよいが、これらに限定されるものではない。セルロース誘導体は、例えば、セルロースエステル(ニトロセルロース、酢酸セルロースなど)、また特にセルロースエーテル、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、プロピオニトリルセルロース、エチルセルロース、及び、ベンジルセルロース、などが考慮されてもよい。他の多糖類の対応する誘導体もまた用いられてもよい。
【0089】
別の実施形態において、媒剤は、キャリアであるか、または、これを含む。キャリアは、水性溶媒、例えば水であってもよいが、これに限定されるものではない。キャリアはまた、非水溶媒、例えば、石油蒸留物、アルコール、ケトン、エステル、グリコールエーテルなどの有機溶媒であってもよい。一実施形態において、溶媒は、脂肪族アルコール(例えば、メタノールまたはエタノール)、ケトン、アルデヒド、エーテル、エステル、グリコール、グリコールエーテル、炭化水素、及び、ラクトンから選択されてもよい。
【0090】
さらに別の実施形態において、媒剤は、結合剤であるか、または、これを含む。結合剤は、金属ケイ酸塩結合剤、例えば、アルミノケイ酸塩結合剤であってもよいが、これに限定されるものではない。結合剤はまた、ポリマー結合剤、例えば、アクリルポリマーまたはアクリル共重合体結合剤であってもよい。
【0091】
一実施形態において、媒剤は、樹脂とキャリア(例えば溶媒)を足したもの、または、結合剤とキャリア(例えば溶媒)を足したものである。
組成物は、1つ以上の慣例の添加物をさらに含んでもよい。使用に適した添加物は、増粘剤、安定剤、乳化剤、風合い調整剤(texturizers)、接着促進剤、紫外線安定剤、艶消し剤、分散剤、消泡剤、浸潤剤、合体剤、及び、バイオサイド/殺菌剤を含むが、これらに限定されるものではない。
【0092】
組成物は、組成物内に含まれる材料を均等配置するかまたは支持するのに有用な1つ以上のスペーサ微粒子を含んでもよい。スペーサ微粒子は、中空ビーズ状またはマイクロスフェア(微小球)状の、シリカ、ケイ酸塩、アルミン酸塩、硫酸塩、炭酸塩、粘土、または、ポリマー微粒子であってもよい。
【0093】
組成物は、例えば、塗料、インク、液体塗膜、粉体塗膜などの、被覆組成物として用いられてもよく、また、物品が、鋳造、押し出し成形、または、他の周知のプロセスにより形成され得る、例えば、プラスチックまたはポリマー成形体のような組成物として用いられてもよい。
【0094】
一実施形態において、組成物は薄膜の形態で用いられてもよい。これは、基材上の被覆の形態、または、独立して形成される物品の形態をとってもよい。組成物から形成される薄膜は、20ミクロン以下、例えば15ミクロン以下、または10ミクロン以下、好ましくは5ミクロン以下、例えば4ミクロン以下、または3ミクロン以下、または2ミクロン以下、または1ミクロン以下、の厚さを有する。一実施形態において、薄膜は、0.4ミクロン~20ミクロン、例えば0.4ミクロン~15ミクロン、または0.4ミクロン~10ミクロン、または0.4ミクロン~5ミクロン、の厚さである。一実施形態において、薄膜は、0.5ミクロン~20ミクロン、例えば0.5ミクロン~15ミクロン、または0.5ミクロン~10ミクロン、または0.5ミクロン~5ミクロンの厚さである。
【0095】
概して、組成物は、任意の種類の用途に用いられてもよく、材料または基材の任意の1つ以上の表面に塗布されてもよい。組成物は、例えば、インク、塗膜(例えばプライマ塗膜)、プラスチック(例えば薄プラスチック膜)、塗料、ニス、または、ゴムであってもよい。
【0096】
さらに、本開示の組成物が(任意の周知の方法により)塗布され得る潜在的な基材及びその表面は制限されず、食品用の包装を含む、紙、段ボール及びプラスチック包装、金属コイルを含む金属部品、建物の表面、自動車、給水塔、携帯コンテナ、路面、布地、飛行機、ボート、船、他の種類の船舶、窓枠、サイディング、看板、家具、柵、敷板、及び、レール、を含む、被覆され得る任意の基材または表面を含み、これらに限定されるものではない。
【0097】
本開示は、本発明の組成物または本発明の薄膜にて、少なくとも部分的に被覆される基材を含む生成物を提供する。この組成物または薄膜は、インク、プライマ塗膜、または、プラスチック膜であってもよく、それゆえに、一実施形態において、生成物は、少なくとも部分的に、インク、プライマ塗膜、または、プラスチック膜にて被覆される基材を含む。例えば、この生成物は、外表面を備えてもよく、この外表面は、一部、大部分または全体が、インク、プライマ塗膜またはプラスチック膜にて被覆されてもよい。
【0098】
本開示の実施形態は、インク(例えば、印刷用インク及びセキュリティインク)、塗料、(例えば、コイル被覆工程における)金属用のプライマ塗膜及び薄プラスチック膜(例えば包装用)に、特定の用途を見出す。
【0099】
しかしながら、顔料チタニアが一般的に利用される他の用途、例えば、白色の太陽光反射被覆、プラスチック部品、及び、屋根板の用途、において利用されてもよい。
[実施例]
本開示の実施形態が、非限定的な態様で、以下の実施例を参照してさらに説明される。
[実施例1]
140種類の従来の顔料チタニア材料について電子顕微鏡の画像解析が行われ、それらの結晶サイズ及び重み付き幾何標準偏差(GWSD)が特定された。最小、最大、及び、平均が特定された。
【0100】
画像解析は、商業的に入手可能な3種類の大結晶チタニア生成物に関しても実施された。それらの結晶サイズ及び幾何標準偏差が記録された。
表1は、画像解析の結果を示す。
【0101】
【表1】
【0102】
次に、様々な平均結晶サイズ及び重み付き幾何標準偏差の値を有する生成物の結晶サイズ分布に関して、対数正規分布を有する材料に基づいて計算がなされた。平均結晶サイズ及び重み付き幾何標準偏差としてとられた値は、従来技術における単一の生成物を直接反映するというより、むしろ例示することを意図する。
【0103】
表2は、平均結晶サイズ及び重み付き幾何標準偏差に基づいて、材料内の結晶分布の差を示す。
【0104】
【表2】
【0105】
それゆえに、本開示にて用いられる材料が、両方の従来の顔料チタニアと比較して、また、市販の大結晶チタニアと比較して、明確に区別される結晶分布を有すると理解されるであろう。
[実施例2]
それぞれ0.397ミクロン及び0.386ミクロンの平均結晶サイズを有するTiO微粒子が調製され、白色インクにて試験された。
[方法]
ルチル型二酸化チタン材料が、硫酸塩法(ブルーメンフェルトの変形(Blumenfeld variant))を用いて生成された。従来の処理が、鉱石粉砕、蒸解、浄化、沈殿、及び浸出段階で実施された。目的は、従来よりも大きい結晶サイズを生成することであったので、浸出後のメタチタン酸パルプに1.00%のブルーメンフェルトルチル核(チタン酸ナトリウムから生成される)が添加された。有核材料には、(硫酸アルミニウムとして)0.10%Al及び(硫酸カリウムとして)0.2%KOがさらに添加された。結果として生じる材料は、約12時間にわたりセ氏960度の温度にて焼成された。
【0106】
焼成炉から取り出された物が、約0.45ミクロンの粒子サイズまで粉砕、分散、及び、サンドミルされ、その後、2.7%高密度シリカ及び2.4%アルミナにて被覆される。
【0107】
被覆された材料は、ろ過、洗浄、乾燥、及び、約0.2%トリメチロールプロパンと共にジェットミルされ、微細な白色粉末が生成される。
「/30」及び「/40」として参照される2種類の材料が得られた。これらの二酸化チタン材料の特性は、以下の表3に示される。
【0108】
【表3】
【0109】
白色インクは、それぞれの被覆チタニアから調製される。
比較のための白色インクもまた2種類の標準顔料、つまりRDI-S及びRDE2、を用いて調製された。これらは、顔料産業において認められており、Huntsman P&A UK社により製造される。両方とも、平均サイズ0.24ミクロンのベースの結晶(base crystal)を有し、後に被覆される。
【0110】
インクは、以下のように調製された。
[開始溶液]
・溶液1は、298gのMowital(登録商標)B20H(Kuraray Specialities Europeから入手可能な低粘度ポリビニルブチラール樹脂)を1192gの1-プロパノールに溶解することにより調製された。
・溶液2は、700gの1-プロパノールを用いて700gの溶液1を希釈することにより調製された。
[ミルベース]
207gTiO顔料が70gの溶液2中に手撹拌された。結果として生じる混合物は、40mm刃が装備された高速インペラミルにて5000rpmで5分間、カバーがされて分散された。さらなる65gの溶液2がその後添加され、その後、低減された2000rpmの速度で、さらに2分間の混合が実施された。
[インク]
207gのミルベースが、168gの溶液1に添加された。結果として生じる混合物は、高速インペラミルにて2000rpmで2分間分散された。
[レットダウン]
インクの粘度が印刷に適するように調整された。粘度は、既知の体積がフローカップオリフィス(flow cup orifice)を通過するために要する時間(秒)として定量化される。室温において、ザーンカップ2(Zahn2 cup)で25秒の粘度が、全ての場合において用いられた。必要とされる実際の体積がサンプルによって異なるので、粘度を調整するために溶液が添加された。
[ドローダウン]
様々な範囲の膜厚を実現するために、ワイヤが巻き付けられたアプリケータを用いてインクのドローダウンが行われた。
【0111】
6、12、及び24ミクロン厚の湿潤膜を塗布するアプリケータが用いられた。インクの固形分は、全て約14%で、その結果、実際の厚さは、0.8、1.7及び3.4ミクロンであった。
[スペクトル]
異なる膜厚で、黒色上での反射率、及び、波長範囲にわたる透過率が測定された。これに関して、スペクトルは、ケアリー(Cary)5000分光器を用いて、反射率及び透過率モードで測定された。
[結果]
図1は、4種類の被験インクについての黒色上での反射率を、膜厚範囲にわたって示す。
【0112】
本開示の生成物に基づくインク(「/30」及び「40/」)は、試験されたそれぞれの厚さにおいて、従来のチタニアに基づくインクよりも高い不透明度を有することが分かる。
【0113】
以下の表4は、被験材料の不透明度値Y(B)を、3種類の異なる膜厚にて示す。それぞれの場合において、Y(B)値は、本発明に従う膜に対して最大であること、つまり、本発明の膜は、市販の生成物よりも高い不透明度を有することが分かる。
【0114】
【表4】
【0115】
開示された実施形態の利点は、不透明度の設定値を達成するためにそれぞれのインクに必要とされる厚さを分析することによって定量化されてもよい。
以下の表5は、それぞれの生成物に対して55%のY(B)を達成するために必要とされる膜厚を示す。
【0116】
【表5】
【0117】
その結果、サンプル/40は、市販の生成物RDI-Sに対して10.4%の改善をもたらす。
それゆえに、本開示による材料が、市場で流通する市販の生成物に比べて改善された不透明度を実現することは明らかである。
【0118】
図2は、4種類の被験インクのそれぞれに対する透過率を、波長範囲にわたって示す。
以下のことが分かる。
・「生成物/30及び/40」に関して、透過率は、可視にて(平均で)、及び、近赤外にて、従来の生成物よりも低い。
・「生成物/30及び/40」に関して、インクは、青色透過率を有する(従来のインクは、赤色透過率を有する)。
・紫外線領域において、本発明の生成物は本技術の生成物と比べて約4倍の透過率を示すので、「生成物/30及び/40」に関して、紫外線領域(<400nm)における透過率は、従来生成物と比較して高い。
【0119】
図3は、4種類の被験インクに対する黒色上の反射率を、膜厚範囲にわたって示すが、本発明(/30及び/40)による2種類のサンプルに対する値は平均がとられており、「Exptal」とラベル付けられた単一の線として示される。この線は、試験された膜厚範囲にわたり、常に、従来のチタニア生成物に基づく2種類のインクに対する線の上方を走ることが分かる。このことは、改善された不透明度が本開示により達成され、薄膜生成物において最適な結晶サイズが約0.25ミクロンであるという従来の常識が誤りであるという明確な証拠を提供する。
[実施例3]
平均結晶サイズが0.28、0.32及び0.36ミクロンであるTiO微粒子がそれぞれ調製され、アルキド塗料中で試験された。
[方法]
硫酸塩法におけるメタチタン酸の量が、3つの部分に分割された。これらは、それぞれ、1.88%、1.26%及び0.89%のルチル核が添加された。
【0120】
それぞれの部分はまた、(硫酸アルミニウムとして)0.07%Al、(硫酸カリウムとして)0.20%KO、及び、(リン酸一アンモニウムとして)0.20%Pにて処理された。
【0121】
3つの部分は、それぞれ、ルチル含有量>99%が測定されるまで、毎分1度上昇する温度にて個別に焼成された。その時点にて、焼成が停止された。
3つの部分は、それぞれ、0.28、0.32及び0.36ミクロンの平均結晶サイズのチタニアを有した。
【0122】
これらの二酸化チタン材料の特性は、以下の表6に示される。
【0123】
【表6】
【0124】
3つの焼成炉から取り出された物のそれぞれは、その後、以下の表7に詳述される3種類の異なる粒子サイズに粉砕された。
【0125】
【表7】
【0126】
結果として生じる9種類のスラリーのそれぞれは、その後、1.25%硫酸アルミニウム、その後、1.25%アルミン酸ナトリウム、が添加され、オキシ水酸化アルミニウムの2.5%被覆が適用された結果となる。残りの硫酸塩は、pH10.5で被覆を硬化することにより取り除かれ、その後、被覆は、全ての場合にて中和された。
【0127】
スラリーは、その後、それぞれろ過、洗浄、及び、乾燥され、次に、0.4%トリメチロールプロパン(TiOに対するwt/wtで)と共にジェットミルされた。
以下の表8は、乾燥粉末生成物についてミクロン単位で測定された粒子サイズを詳述する。
【0128】
それぞれの場合において、わずかな成長は、無機被覆の塗布に関連する凝集に起因する。
【0129】
【表8】
【0130】
これらの粉末のそれぞれは、アルキド塗料に、乾燥塗料内の顔料濃度が35vol%となるように取り入れられた。
この点については、アルキド塗膜は、常乾アルキド樹脂(Sobral P470)を、高充填(乾燥体積で35%の顔料)で用いて調製された。
【0131】
塗料は、Melinex(登録商標)透明ポリエステル膜の上にドローダウンされた。緑色反射率(CIE D65,10°観測装置)が、黒色タイル上で測定された。
[結果]
それぞれの被験塗膜に対するY(B)(黒色上の反射率)の結果が図4に示される。
【0132】
不透明度の最良の結果が、0.36ミクロンのサイズの結晶生成物に基づく生成物にて達成されたこと、つまり、最適な結晶サイズは約0.25ミクロンであるという従来の常識から外れたことが分かる。
【0133】
良好な結果はまた0.32ミクロンのサイズの結晶生成物に関しても達成された。
それゆえに、本開示による両方の材料は、それらが、生成物の厚さを薄く維持することが必要とされる、印刷用インク、(例えばコイル被覆工程における)金属用のプライマ塗膜、及び、プラスチック膜(例えば、包装、特に食品包装用)などの用途において用いられることを可能にし得る不透明度特性を有する。
[実施例4]
平均結晶サイズが0.23、0.25及び0.40ミクロンであるTiO微粒子が、それぞれ、ポリビニルブチラールインクにて試験された。
[方法]
ポリビニルブチラールインクは、次の4段階を含む合成にて調製された。
・第1粉砕溶液を作成すること。
・第1粉砕溶液の一部を用いて第2粉砕溶液を生成すること。
・TiO及び第2粉砕溶液からミルベースを形成すること。
・ミルベース及び第1粉砕溶液からインクを形成すること。
【0134】
試験された3種類のTiO生成物は、以下であった。
A.標準顔料:SACHTLEBEN(登録商標)RDI-S。これは、Venator Materials社から入手可能なアルミナ表面処理されたルチル型二酸化チタン顔料である。
B.市販生成物:Tronox(登録商標)R-KB-2。これは、Venator Materials社から入手可能な、アルミニウム及びシリコン化合物にて被覆された、微粉末ルチル型二酸化チタン顔料である。
C.本開示による生成物。これは、シリカ及びアルミナ表面処理されたルチル型二酸化チタン顔料である。このTiO生成物は、実施例2に示されたものと同一の方法により生成された。
【0135】
TiO生成物の特性が試験された。平均結晶サイズは、擦り取られたサンプルについての透過電子顕微鏡法(TEM)により、結果として生じる写真の画像解析を用いて特定された。結晶サイズ分布もまた、結晶の電子顕微鏡写真の画像解析により特定された。二酸化チタンの平均粒子サイズは、X線沈降により特定され、平均粒子サイズと平均結晶サイズとの比率が計算された。
【0136】
結果が以下の表9に示される。
【0137】
【表9】
【0138】
[方法]
[粉砕溶液1]
298gのMowital(登録商標)B20H(Kuraray Specialities Europeから入手可能な低粘度ポリビニルブチラール樹脂)が、2リットル瓶内で1192gの1-プロパノールに添加された。
【0139】
300gのグラスバロティーニ(glass ballotini)が添加され、その瓶に蓋がされ、テープにて密閉されて、24時間回転され(trundled)、粉砕溶液1を得た。
[粉砕溶液2]
700gの粉砕溶液1が、2リットル瓶内で700gの1-プロパノールに添加された。
【0140】
300gのグラスバロティーニ(glass ballotini)が添加され、その瓶に蓋がされ、テープにて密閉されて、24時間回転され(trundled)、粉砕溶液2を得た。
[ミルベース]
207gのTiOが、70gの粉砕溶液2中に手撹拌された。これは、試験される3種類の二酸化チタン顔料A、B及びCのそれぞれに対して行われた。
【0141】
それぞれの場合において、結果として生じるスラリーにカバーがされ、その後、40mm刃を備える高速インペラミルを用いて、5000rpmにて分散された。
それぞれの場合において、さらに65gの粉砕溶液2が添加され、2000rpmで2分間撹拌されて、安定化ミルベースに達した。
[インク]
インクは、試験される3種類の二酸化チタン顔料A、B及びCのそれぞれに対して、2種類の濃度で調製された。それぞれの場合において、粉砕溶液1の重量が、207gのミルベースに対して添加されて、ミルベースを希釈し、表10に示されるような、所望のTiOの濃度に達した。
【0142】
【表10】
【0143】
[試験]
調合された6種類のインクのそれぞれは、高速インペラミルにて、2000rpmで2分間粉砕された。
[i)表面膜]
それぞれのインクは、12ミクロンの湿潤膜厚を達成するために、No.2クローズバウンドアプリケータ(close bound applicator)(K-bar)を用いて、黒色背景上にドローダウンされた。
【0144】
6種類の白色膜のそれぞれの不透明度が、黒色背景上の白色膜の黒色上の反射率(Y)として測定された。
[ii)積層膜]
リバースラミネートインキのために、処理は、樹脂をインクの細孔に押し込むことを含み、このことは、不透明度を下げる。
【0145】
それゆえに、再びNo.2 K-barを用いて、透明な長油性常乾アルキドが、i)の膜のそれぞれに塗布された。
6種類の白色膜のそれぞれの不透明度は、黒色背景上の白色膜の黒色上の反射率(Y)として、その後再び測定された。
[結果]
それぞれの膜に対して測定された黒色上の反射率(Y)の値が、表11に示される。
【0146】
【表11】
【0147】
標準表面膜及び積層膜の両方に関して、本開示による生成物は、55%の充填にて達成される標準/市販の従来技術生成物よりも高い黒色上の反射率(Y)を、50%の濃度にて有した。
【0148】
それゆえに、良好な不透明度を達成しながら、より低い濃度のTiOが用いられ得る。
それゆえに、本開示よる薄膜生成物は、チタニアに対するサイズ基準が満たされない薄膜生成物と比べて、改善された不透明度を明らかに有する。
[実施例5]
平均結晶サイズが0.23、0.25及び0.40ミクロンのTiO微粒子が、それぞれ、紫外線硬化インク中にて試験された。
[方法]
紫外線硬化インクは、3種類の二酸化チタン顔料のそれぞれを用いて次のように調製された。これらのチタニア顔料A、B及びCは、実施例4にて用いられたものと同一であった。
[開始剤溶液]
10gのジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドに、12.22gのジエチレングリコールモノエチルエーテルがビーカー内で添加され、これに軽く蓋がされて、(オーブン内で)120℃まで加熱され、溶解に達した。溶液は、その後室温まで冷却された。
【0149】
この冷却された溶液(22.22g)に、14.81gの1-ヒドロキシクロヘキシルフェニルケトンが添加された。この混合物は、軽く蓋をされて溶解を活性化するために80℃まで加熱され、その後、室温に冷却され、開始剤溶液を得た。
[紫外線硬化性白色上塗り剤]
第1混合物が、20ml容器内において以下の成分を混合することにより形成された。
・3.57g Neorad(商標)U-25-20D 脂肪族ウレタンアクリレート(DSM Coating Resins社から)
・1.19g Agisyn(商標)230-A2 脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー(DSM Coating Resins社から)
・5.00gTiO顔料(A、BまたはC)
この第1混合物が、Speedmixer(商標)(Flacktek社)にて、2500rpmで150秒間粉砕された。
【0150】
第2混合物が、20ml容器内で以下の成分を混合することにより形成された。
・1.98g Agisyn(商標)2811(DSM Coating Resin社からのトリメチロールプロピルアクリレート)
・3.97g Agisyn(商標)2833(DSM Coating Resin社からのジプロピレングリコレートジアクリレート)
・0.26g Agisyn(商標)008(DSM Coating Resin社からの反応性アミン添加剤)
この第2混合物が、Speedmixer(商標)(Flacktek社)にて、2500rpmで120秒間粉砕された。
【0151】
この第1混合物及び第2混合物は、その後、容器内で0.66gの開始剤溶液と共に混合された。この混合された混合物が、Speedmixer(商標)(Flacktek社)にて、2500rpmで30秒間粉砕され、液体被覆が生成された。
【0152】
このような液体被覆は、3種類のチタニア顔料A、B及びCのそれぞれのために調製された。
液体被覆は、アプリケータに巻かれたNo.6「k-bar」ワイヤを用いてカード上にドローダウンされ、(3種全ての場合において)公称厚さ60ミクロンの膜を与えた。
【0153】
未硬化膜が、それぞれが120W/cmの強度を有する水銀及びガリウムランプが装備された、Baltron(登録商標)BE20 UV-IR実験用乾燥機に、6メートル/分の速さで通された。
【0154】
硬化の程度が、水溶液中に1.5gの1%KMnOを含む試験溶液を用いて試験された。この試験溶液は、それぞれの膜上の2.5cm×2.5cmの領域にわたり擦りこまれ、300秒間留置された後、冷水で洗い流された。
【0155】
本技術において、膜の変色は、残留不飽和(二重結合)の試験として用いられ、硬化処理の成功の指標である。より少ない変色は、より十分な硬化を示す。
[結果]
被験パネルの写真が図5に示される。パネルCが左側、パネルBが中央、パネルAが右側である。
【0156】
パネルCが最も少ない変色を有し、つまり、紫外線処理により他の2種類のパネルよりも完全に硬化されたことが分かる。
このタイプの変色は、3つの色度、つまりL(白色度)、a(赤色度)、及び、b(黄色度)における変化(Δ)により特徴付けられる。知覚色空間(変色)における正味の距離が、ΔEとしてまとめられることが多い。
【0157】
3種類の硬化された試験膜に対する値が表12に示される。
【0158】
【表12】
その結果、測定値は、写真に見られることを確証した、つまり、本開示によれば、膜の変色は少なく、このことは、市販/標準チタニアを用いる他の2種類の膜よりも、紫外線処理により、完全に硬化されたことを示す。
図1
図2
図3
図4
図5