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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】画像に基づく検体分析
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/00 20060101AFI20220613BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20220613BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20220613BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
G02B21/00
G01N37/00 101
G01N21/64 F
G01N21/64 E
G01N21/27 A
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2018565757
(86)(22)【出願日】2017-06-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-25
(86)【国際出願番号】 EP2017064711
(87)【国際公開番号】W WO2017216310
(87)【国際公開日】2017-12-21
【審査請求日】2020-05-27
(31)【優先権主張番号】1610434.1
(32)【優先日】2016-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516371483
【氏名又は名称】キュー-リネア エービー
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤルビウス、ヨナス
(72)【発明者】
【氏名】グラーヴェ、ヤン
【審査官】瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0293270(US,A1)
【文献】特表2007-503323(JP,A)
【文献】特開2006-258444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 19/00 - 21/36
G01N 35/00 - 37/00
G01N 21/00 - 21/01
G01N 21/17 - 21/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像に基づく複数検体の分析方法であって、
複数の測定対象区域と、各々が一つ以上の前記複数の測定対象区域に組み合わされた複数の合焦構造と、を有する検体ホルダであって、前記複数検体が前記複数の測定対象区域に亘って分散している前記検体ホルダを使用することと、
前記複数の測定対象区域の各デジタル画像領域を取得しそれによって、前記デジタル画像領域の各々が少なくとも一つの前記測定対象区域および少なくとも一つの前記合焦構造を含んだ、前記複数検体の分析に使用するための複数のデジタル画像領域を取得することと、
複数の前記デジタル画像領域を取得した後に、画像処理アルゴリズムを使用して前記デジタル画像領域の各々を分析し、前記デジタル画像領域に鮮明に合焦していることを前記合焦構造が示しているかどうかを確認することと、
合焦していないデジタル画像領域があると前記画像処理アルゴリズムが示す場合、それを表示するか、および/または、是正措置を行うことと、を含み、
前記デジタル画像領域は、それぞれ、ラインカメラで撮像された単一行の画素であるフレームが複数存在する、複数のフレームの合成物であって、
前記複数のフレームの取得は、高速連続合焦機構により、前記ラインカメラで撮像する行に対して相対的に前記検体ホルダを移動することによって行われ、フレーム毎に前記合焦構造を介して合焦を確認することは行わない
ことを特徴とする分析方法。
【請求項2】
前記合焦構造が、前記検体の鮮明な撮像に必要な合焦面内にある場合、前記合焦構造が鮮明に撮像されているのを確認することを、または
前記合焦構造が、前記検体の鮮明な撮像に必要な前記合焦面の外にある場合に要求される前記合焦面にふさわしいやり方で、前記合焦構造が撮像されているのを確認することを、含む
ことを特徴とする、請求項1に記載の分析方法。
【請求項3】
前記検体は、その中に微小物体が存在することおよび/またはその量を、または存在しないことを決定することが必要となる検体である
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の分析方法。
【請求項4】
前記デジタル画像領域内に微小物体が存在するかどうかを決定することを、含む
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の分析方法。
【請求項5】
前記微小物体は、検体流体に含まれる物体であり、前記検体ホルダ上の前記測定対象区域は、複数の前記検体の検体流体を含む領域である
ことを特徴とする、請求項4に記載の分析方法。
【請求項6】
前記測定対象区域は、前記検体を含む領域を提供する前記検体ホルダの中または上の液溜まりおよび/または流路を含む
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の分析方法。
【請求項7】
各合焦構造は、一つ以上の対応する測定対象区域の前記領域に隣接しており、前記測定対象区域にある前記検体と同じデジタル画像領域に収まるよう十分に前記領域の端部に近い
ことを特徴とする、請求項6に記載の分析方法。
【請求項8】
像装置および前記検体ホルダは、前記撮像装置が前記測定対象区域からなる前記領域を、対応する前記合焦構造が同一のデジタル画像領域内に収まった状態で撮像できるように、両者が一組となって配置される
ことを特徴とする、請求項7に記載の分析方法。
【請求項9】
前記検体ホルダは、光学的平坦面を有する
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の分析方法。
【請求項10】
前記合焦構造は、前記検体ホルダ中のピットまたは突起として形成された三次元形状を備える
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の分析方法。
【請求項11】
前記合焦構造は、前記合焦構造を取り囲む材料の屈折率に基づいて設定された角度を有する角度付き側面を備え、前記合焦構造の下からの入射光の全部または半分以上が内部反射される
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の分析方法。
【請求項12】
前記検体は、微小物体が存在することおよび/またはその量、または存在しないこと、が試験結果に依存する試験検体である
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項11のいずれかに記載の分析方法。
【請求項13】
薬物感受性試験に用いられる
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項12のいずれかに記載の分析方法。
【請求項14】
画像に基づく、顕微鏡検査による抗生物質感受性試験のための複数検体の分析方法であって、請求項1乃至請求項13のいずれかに記載の分析方法を含む
ことを特徴とする分析方法。
【請求項15】
前記検体ホルダは、複数の異なる抗生物質および/または異なる濃度の抗生物質に関連する複数の関心検体と一緒に使用され、
前記デジタル画像領域は、細菌などの微生物の有無、および/または微生物の量を決定するためのものであり、それによってどの抗生物質および/またはどの濃度が微生物の増殖を抑制するのに有効であるかを識別する
ことを特徴とする、請求項14に記載の分析方法。
【請求項16】
画像に基づく複数の検体の分析装置で実行される命令を含むコンピュータプログラム製品であって、前記分析装置は、
複数の測定対象区域と、各々が前記複数の測定対象区域のうち一つ以上と対応する複数の合焦構造と、を有する検体ホルダであって、使用中には前記複数の検体が前記複数の測定対象区域に亘って分散される検体ホルダと、
撮像装置と、
画像処理システムと、を備え、
前記命令は、実行されると、
前記撮像装置を使用し、前記複数の測定対象区域について、少なくとも一つの前記測定対象区域および少なくとも一つの前記合焦構造を各々が含むデジタル画像領域を取得し、
複数の前記デジタル画像領域を取得した後に、前記デジタル画像領域の各々を分析して前記デジタル画像領域が鮮明に合焦していることを前記少なくとも一つの合焦構造が示すかどうかを確認し、
合焦していないデジタル画像領域があることを前記画像処理アルゴリズムが示す場合は表示するか、および/または是正措置を行うように、前記装置を構成し、
前記デジタル画像領域は、それぞれ、ラインカメラで撮像された単一行の画素であるフレームが複数存在する、複数のフレームの合成物であって、
前記複数のフレームの取得は、高速連続合焦機構により、前記ラインカメラで撮像する行に対して相対的に前記検体ホルダを移動することによって行われ、フレーム毎に前記合焦構造を介して合焦を確認することは行わない
ことを特徴とするコンピュータプログラム製品。
【請求項17】
前記命令は、請求項1乃至請求項15のいずれかで設定されたステップを実行するように前記分析装置を構成する
ことを特徴とする、請求項16に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項18】
画像に基づく複数の検体の分析装置であって、前記分析装置は、
複数の測定対象区域と、各々が前記複数の測定対象区域のうち一つ以上と対応する複数の合焦構造と、を有する検体ホルダであって、使用中には前記複数の検体が前記複数の測定対象区域に亘って分散される検体ホルダと、
前記複数の測定対象区域について、少なくとも一つの前記測定対象区域および少なくとも一つの前記合焦構造を各々が含むデジタル画像領域を取得するように構成された撮像装置と、
複数の前記デジタル画像領域を取得した後に、前記デジタル画像領域の各々を分析して前記デジタル画像領域が鮮明に合焦していることを前記合焦構造が示すかどうかを確認し、合焦していないデジタル画像領域があることを前記画像処理アルゴリズムが示す場合は表示するか、および/または是正措置を行うように構成された画像処理システムと、を備え、
前記デジタル画像領域は、それぞれ、ラインカメラで撮像された単一行の画素であるフレームが複数存在する、複数のフレームの合成物であって、
前記複数のフレームの取得は、高速連続合焦機構により、前記ラインカメラで撮像する行に対して相対的に前記検体ホルダを移動することによって行われ、フレーム毎に前記合焦構造を介して合焦を確認することは行わない
ことを特徴とする分析装置。
【請求項19】
複数の前記測定対象区域において、検体流体中に含まれる微小物体を含む複数の検体を、備える
ことを特徴とする、請求項18に記載の分析装置。
【請求項20】
前記検体ホルダは、
光学的平坦面と、
前記光学的平坦面の全域に亘って分散された複数の測定対象区域であって、使用中には各々が前記複数の検体のうち一つの検体の位置に対応する複数の測定対象区域と、
前記複数の測定対象区域に組み合わされた複数の合焦構造と、を備え、前記合焦構造は、各々が、前記光学的平坦面に少なくとも一つのピラミッド状くぼみを備える
ことを特徴とする、請求項18または19に記載の分析装置。
【請求項21】
前記合焦構造の各々は、前記光学的平坦面内に複数のピラミッド状空洞を備えて、前記ピラミッドの各々は、前記合焦構造が複数の前記ピラミッドの頂点を介して複数の合焦参照点を有するような、同じ深さを有する
ことを特徴とする、請求項20に記載の分析装置。
【請求項22】
前記検体ホルダ上の前記測定対象区域は、複数の前記検体の検体流体を含む領域であって、前記合焦構造は、対応する測定対象区域の前記領域に隣接していて、前記検体と同じデジタル画像領域に収まるよう十分に前記領域の端部に近くてもよい
ことを特徴とする、請求項20まは21に記載の分析装置。
【請求項23】
前記測定対象区域は、流路に沿って間隔を空けて配置された複数の液溜まりから成って、前記流路は、前記液溜まり間の流体通路となり、前記合焦構造は前記流路の端部に隣接する
ことを特徴とする、請求項20乃至請求項22のいずれかに記載の分析装置。
【請求項24】
複数の流路を有し、各流路には複数の液溜まりが、前記流路に沿って間隔を空けて配置され前記流路によって接続されて、各流路は対応する合焦構造を有する
ことを特徴とする、請求項23に記載の分析装置。
【請求項25】
前記検体ホルダまたは前記分析装置は、薬剤感受性試験用である
ことを特徴とする、請求項20乃至請求項24のいずれかに記載の分析装置。
【請求項26】
薬剤感受性試験用の前記検体ホルダは、複数の液溜まりを備え、それらの中には、検体流体と共に使える状態にある抗生物質が存在する
ことを特徴とする、請求項25に記載の分析装置。
【請求項27】
前記液溜まりは粉末状の前記抗生物質を含み、液溜まりが異なれば異なる抗生物質および/または異なる濃度の抗生物質を含む
ことを特徴とする、請求項26に記載の分析装置。
【請求項28】
抗生物質感受性試験のためのシステムであって、
請求項18乃至請求項27のいずれかに記載の分析装置を備える
ことを特徴とするシステム。
【請求項29】
抗生物質感受性試験および病原体識別のためのシステムであって、
請求項18乃至請求項27のいずれかに記載の分析装置を備える
ことを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像に基づく複数検体の分析のための各方法および各装置、および画像に基づくそのような検体分析に使用するための検体ホルダに関する。いくつかの例では、画像に基づく検体分析には、検体中に生物学的微小物体などのような微小物体が存在することおよび/またはその量を、または存在しないことを検出することが含まれる。
【背景技術】
【0002】
様々な分野において、複数の検体を迅速かつ効率的に分析できること、特に、バイオ粒子、分子、細胞などの小さな対象物を検出および/または計数できることは、重要である。 バイオテクノロジーにおいて、例えば、DNAの複製/増幅に関連して、RCA(Rolling Circle Amplification)増幅産物(RCP)のような分子要素を検出できることは重要となる可能性がある。医学では、微生物製剤によって引き起こされる病状は、通常、患者から採取された検体の試験を行うことによって診断される。重要な目的(特に敗血症のような急速な進行速度で進み生命を脅かす状態を伴う場合)は、微生物を識別し、適切かつ標的を定めた治療を施すことができるように、できるだけ迅速に検体を分析することである。したがって、微小物体を含む可能性のある検体を分析する、迅速で信頼性のある方法に対して明らかなニーズがある。
【0003】
微小物体を検出するための一つの既知システムはフローサイトメトリーである。 これは、細胞計数、細胞選別、バイオマーカー検出、およびタンパク質工学において使用される、レーザ利用の生物物理学的技術である。細胞は、流体の流れの中に懸濁されて電子的検出装置を通過する。フローサイトメトリーによって、毎秒数千粒子までの物理的および化学的特性の同時・多様性分析が可能になる。しかし、フローサイトメトリーは複雑な分析方法である。
【0004】
米国特許出願公開第2015/293270号広報において、本願の出願人は、流体検体用の複数流路と、当該流路に隣接する合焦構造と、を有する検出ディスクを使用する微小物体検出用機器を提案した。この合焦構造は、光学的に平坦な検体ホルダの成形中に形成される溝であることに優位性があり、当該の溝は、シリコンテンプレートの結晶構造を利用することによって正確な寸法で形成される。この シリコンテンプレートは光学的平坦面を有し、シリコンの結晶面と平行な溝を形成するようにエッチングされる。次いで、このテンプレートは、例えばニッケルの電気メッキによるマスターの作成に使用され、このマスターが検体ホルダ用の鋳型となることによって、検体ホルダは光学的平坦面および正確に成形された合焦構造を有する。米国特許出願公開第2015/293270号広報の好ましい実施形態で提案されている撮像方法には、溝の正確な深さに基づいて合焦面を確立する専用の合焦カメラと、流路内の微小物体が正しいピントを有するように同じ合焦面で流路の画像を撮る第二カメラと、が使用される。この機器および検体ホルダには、従来技術のシステムと比較して著しい利点があり、特に、流路内の個々の微小物体に確実に合焦して検出する能力がある。しかし、この分野における方法、装置および検体ホルダの能力をさらに改善するニーズはまだ残っている。
【発明の概要】
【0005】
第一の態様から見ると、本発明は、画像に基づく複数検体の分析方法を提供するものであって、前記方法は、複数の測定対象区域と、各々が一つ以上の前記複数の測定対象区域に組み合わされた複数の合焦構造と、を有する検体ホルダであって、前記複数検体が前記複数の測定対象区域に亘って分散している前記検体ホルダを使用することと、前記複数の測定対象区域の各画像領域を取得しそれによって、前記画像領域の各々が少なくとも一つの前記測定対象区域および少なくとも一つの前記合焦構造を含んだ、前記複数検体の分析に使用するための複数のデジタル画像領域を取得することと、画像処理アルゴリズムを使用して前記画像領域の各々を分析し、前記画像領域に鮮明に合焦していることを前記合焦構造が示しているかどうかを確認することと、合焦していないデジタル画像領域があると前記画像処理アルゴリズムが示す場合、それを表示するか、および/または、是正措置を行うことと、を含む。
【0006】
画像領域は、複数のフレームの合成物であってもよい。例えば、ラインカメラを使用してもよく、その各フレームは単一行の画素であり、複数のフレームに沿って走査しそれらから構成される合成物を出力する。ラインカメラが複数の測定対象区域およびこれらに組み合わされる合焦構造に沿って走査する場合、前記画像領域は、走査された複数の測定対象区域およびこれらに組み合わされる合焦構造のすべてを含む合成物であってもよい。あるいは、前記合成物は、セグメント化して複数の画像領域に分割され、各画像領域が測定対象区域およびこれらに組み合わされる合焦構造の部分集合(例えば、一つだけの測定対象区域およびこれに組み合わされる合焦構造)を含んでもよい。
【0007】
画像領域は単一のフレームであってもよい。例えば、エリアカメラを使用して各測定対象区域をこれらに組み合わされる合焦構造と一緒にして別々に撮像し、各フレームが単一の測定対象区域およびこれに組み合わされる合焦構造を示すようにしてもよい。別々の各フレームは画像領域に対応する。あるいは、複数の測定対象区域をこれらに組み合わされる合焦構造と一緒に単一フレーム内に撮像し、この単一フレームが単一画像領域を構成してもよい。
【0008】
画像領域は、単一フレームの部分集合であってもよい。エリアカメラを使用して複数の測定対象区域およびこれらに組み合わされる合焦構造を単一フレーム内に撮像し、次いでこの単一フレームをセグメント化して複数の画像領域に分割し、各画像領域が測定対象区域およびこれらに組み合わされる合焦構造の部分集合(例えば、一つだけの測定対象区域およびこれに組み合わされる合焦構造)を含んでもよい。
【0009】
画像領域は、エリアカメラで撮像された複数のフレームの合成物であってもよい。
【0010】
前述の説明から明らかなように、画像領域は、少なくとも一つの測定対象区域および少なくとも一つの合焦構造を含むフレーム、フレームの部分集合、または複数のフレームの合成物である。これ以降、「画像領域」は「デジタル画像」または単に「画像」と称する。
【0011】
この方法を用いれば、合焦構造の画像を確認することによって画像の正確さが自動的に確認されることを保証しながら、できるだけ迅速に多数の測定対象区域に亘って画像を集めることができる。合焦構造は、合焦参照構造という場合もある。米国特許出願公開第2015/293270号広報の方法と違って、画像処理に長い時間が必要となりかねない、各画像ごとに別々の合焦ステップは存在しない。多数の検体と、検体ホルダ上の位置と、が必要になると、時間がかなり追加される恐れがある。各画像は、検体の位置だけでなく、測定対象区域とこれに組み合わされる一つ以上の合焦構造を含むので、(必要に応じて、同じ検体ホルダの後続のデジタル画像の撮像と並行して)デジタル画像の収集が完了した後に、画像処理アルゴリズムを介して各画像ごとの合焦を確認することもできる。これは、合焦構造が鮮明に撮像されていることを確認することによって行うことができ、この場合、合焦構造は、検体の鮮明な撮像に必要な合焦面内にある。あるいは、場合によっては、合焦構造が合焦面の外にあってもよく、この場合、各画像ごとの合焦は、合焦構造が、所要の合焦面にふさわしいやり方で撮像されているのを確認することを含めてもよい。提案された方法は、複数の検体について複数の画像のピントを取得して確認するのに掛かる時間を大幅に短縮することができ、一つ以上の画像のピントがずれて是正措置が必要な場合でも時間を節約することができる。
【0012】
前記方法は、複数の前記画像を取得するために予め設定された合焦面を有する撮像装置の使用を含んでもよい。こうすれば、前記検体ホルダと前記機器とが十分に平行になって前記撮像装置に対して平らな合焦面を提示するという前提に基づいて、可能な限り迅速に画像を取得することが可能になる。すべての所要の前記画像は、予め設定された前記合焦面の予め設定されたピントに基づいて集めることができ、この処理の速度は撮像装置自体の速度によってのみ制限される。あるいは、撮像装置は、できればいずれの合焦構造からも独立して、連続的に合焦して画像を取得してもよい。高速連続合焦装置が利用可能であり、これによって前記画像を取得する速度に影響があるかもしれないが、それでも、第一の態様の前記方法を使えば、各撮像ステップごとに前記合焦構造を介して合焦を確認することが必要となる従来技術の方法よりも処理が速くなる。前記画像を取得する間は連続的に合焦する場合であっても、その後、合焦処理が正しく完了したことを保証するために合焦が確認される。
【0013】
提案された前記方法は、前記検体の分析に際して所定の特徴が存在するか否かを確認することが必要となる状況において、特に、鮮明で信頼性のある画像を得るのに正確な合焦が非常に重要である微小物体の撮像の場合に、大きな利点を提供する。前記検体は、その中に微小物体が存在することおよび/またはその量を、または存在しないことを決定することが必要となる検体であってもよい。したがって、前記撮像は、微小物体の撮像に適した倍率および/または高解像度で撮像してもよい。この方法には、例えば前記画像処理アルゴリズムまたは別の画像処理アルゴリズムを使用して、微小物体が前記画像内に存在するかどうかを決定することを含んでもよい。所定の特徴が存在しないことをピントがずれた画像から識別することは、特に微小物体が関与する場合には、困難または不可能である可能性がある。各測定対象区域とこれらに組み合わされる少なくとも一つの合焦構造を使用することによって、前記画像が合焦していることと、したがって前記画像内に所定の特徴が存在しないのはこの特徴が前記検体には存在しないという信頼できる指標であることと、を画像解析アルゴリズムを介して確認できる。このようにすれば、偽陰性の恐れを最小にすることができ、前記検体の分析からの陰性結果には高度の信頼性がある。微小物体が存在するかどうかを決定するとき、および/または微小物体の量を決定するときに同じ合焦確認処理を使えば、同様に高い信頼度があることを意味する。
【0014】
前記微小物体は、検体流体に含まれる物体であってもよく、したがって、前記検体ホルダ上の前記測定対象区域は、複数の前記検体の前記検体流体を含む領域であってもよい。前記検体流体は、典型的には、物体が中に懸濁している液体である。あるいは、前記物体は、前記検体流体を含む前記領域の表面、例えば底面に主として位置してもよい。したがって、前記領域には、焦点深度方向の深さ、および前記デジタル画像の平面に対応する二次元平面内の断面がある場合が多い。前記測定対象区域は、前記検体流体を含む前記領域を提供する前記検体ホルダの中または上の液溜まりおよび/または流路を含んでもよい。上述のように、各デジタル画像は、前記測定対象区域およびこれに組み合わされる一つ以上の合焦構造を含む。
【0015】
前記これに組み合わされる合焦構造は、それぞれの前記測定対象区域にごく近接しているのが好ましい。前記合焦構造は、例えば前記領域の基部など、前記測定対象区域の前記領域内に配置されてもよい。あるいは、前記合焦構造は、前記領域に隣接し、同一の画像に含まれるのに十分なだけ前記領域の縁部に近くであってもよい。したがって、前記撮像装置および前記検体ホルダは、前記撮像装置が前記測定対象区域からなる前記領域および前記合焦構造を同一の画像領域内に撮像できるように、両者が一組となって配置される。
【0016】
前記画像領域は、撮像装置によって撮像されたフレームか、フレームの部分集合か、複数のフレームの合成物である。
【0017】
前記撮像装置は、測定対象区域およびこれに組み合わされる合焦構造に沿って走査することによって複数のフレームを撮像し、前記複数のフレームから構成される合成物を出力するラインカメラであってもよい。その場合、所与の合焦構造に合焦しているかいないかという情報は、同じラインの他の部分にしか適用できないかもしれない。前記合焦構造の前後に撮像されたラインは合焦情報を含まないと考えられる。
【0018】
前記画像領域がエリアカメラによって撮像された単一フレームである場合、より大きい視野の撮像装置が選択されれば、前記合焦構造は前記測定対象区域にそれほど近くにある必要はないが、前記合焦構造が前記測定対象区域に非常に近接するように前記検体ホルダが製造できるのであれば、前記撮像装置の性能に対する制約が少なくなる。以下でより詳細に説明されるように、一例としての検体ホルダは、流路に沿って間隔を空けて配置された複数の液溜まりを有し、前記流路が前記液溜まり間の流体通路となる。前記液溜まりの幅は、例えば1~5mm、好ましくは1~3.5mm、より好ましくは1.5~3mmであり、深さは最大5mmである。前記合焦構造は、前記流路の端部に隣接し、前記撮像装置が前記流路およびこれに組み合わされる前記合焦構造を含む画像を撮ることができるのに十分な距離内にある場合が多い。前記合焦構造は、前記流路の端部から、前記液溜まりの幅の三倍または四倍以内に位置してもよい。
【0019】
合焦構造を各流路の端部に隣接して設ける代わりに、前記合焦構造を隣接する液溜まり間に設けてもよい。前記合焦構造は、前記液溜まりの最も外側の幅よりも内側に配置してもよく、ここで、「幅」とは、複数の前記液溜まりが並ぶ線に垂直な方向における前記液溜まりの広さである。このような配置は、ラインカメラを使用する場合に特に有利である。
【0020】
ラインカメラを撮像に使用する場合、複数の合焦構造は、前記ラインカメラによって撮像された、例えば、10ラインごと、50ラインごと、または100ラインごとに見えるように配置されてもよい。あるいは、各流路は、視野の範囲内であって前記ラインカメラの移動方向と平行に前記流路の長さに沿って延びる溝または線を備える単一の合焦構造と対応させてもよい。その場合、前記合焦構造の一部は、前記ラインカメラによって撮像された各ラインに存在してもよい。
【0021】
前記方法は、粒子(特にバイオ粒子)、細胞、細菌等の微生物、ウイルスや真菌性病原体等の他の病原体、および/または高分子などの分子を含む微小物体が含まれる可能性がある検体に使用してもよい。前記微小物体は、前記物体の、または前記物体に塗布される蛍光組成物の蛍光を使用することを潜在的に含めて、サイズが適度に小さくて撮像方法に基づいて検出することができる任意の物体を含むことができる。いくつかの例では、前記物体が、RCPなどの散乱特性を有さない半透明の物体である場合、前記物体は、サイズが10μm以下、おそらく5μm以下のサイズであってもよい。前記物体は、最大寸法が2μm以下、おそらく1.5μm以下、1μm以下、場合によっては0.5μm以下であってもよい。
【0022】
いくつかの代表的な実施形態では、前記検体ホルダは使用後に処分することができる消耗品の使い捨て製品である。こうすれば、前記検体ホルダの洗浄を必要とせずに前記方法で同じ撮像装置を繰り返し使用することが可能になり、検体の汚染の危険性が最小限に抑えられる。前記方法は、第一検体ホルダを用いる第一検体セットの画像に基づく分析と、および第二検体セットの、そして必要に応じて別の検体ホルダを用いる別の検体セットの、画像に基づく後続の分析と、を含んでもよい。
【0023】
前記検体ホルダは、光学的平坦面を有してもよく、透明材料を含んでもよい。前記検体ホルダは、すべての前記検体およびすべての前記測定対象区域を保持するための単一部分を備えてもよく、この場合、前記検体ホルダの形状および製造は、米国特許出願公開第2015/293270号広報のものと同様であってもよい。あるいは、前記検体ホルダは、前記合焦構造を備え、前記検体を含む領域にとって基盤となる光学的平坦面を有する第一層と積層されてもよく、前記領域は、光学的平坦層である前記第一層の上面にある第二層内に囲い込まれる。前記光学的平坦層は、それ自体が前記光学的平坦層と同様の形状を有するテンプレートから得られるマスターを使用して製造してもよい。したがって、前記光学的平坦層はCDと同様の手法で製造してもよい。こうすれば、光学的平坦面と、合焦構造の、および必要に応じて前記光学的平坦層の他の表面的特徴の、正確な成形と、が可能になる。CD型製造工程は消耗品の使い捨て製品の場合に特に有用であって、その理由は、当該製造工程を使用して、光学的平坦面と、正確に成形され配置された合焦構造と、を有する、前記検体ホルダまたは前記検体ホルダ用の層を高い費用効率で大量生産できるからである。
【0024】
層状構造を使用する場合、前記領域の上面を囲い込む第三層、好ましくは前記撮像システムと適合性のある層、例えば可視光に対して透明な層があってもよい。前記第三層は、ガス透過性材料を含んでもよいし、および/または、前記検体から気体を放出するための開口部を備えてもよい。前記第三層は、必要に応じてガス透過性膜で覆われた、通気孔または穴を有する場合もある。こうすれば、前記検体ホルダに検体を充填しながらガスを逃がすことができる。
【0025】
前記合焦構造は、正しい前記合焦面について所要の深さで、少なくとも一つの鋭いエッジまたは頂点を有する形状であってもよい。こうすれば、前記デジタル画像において鮮明なコントラストを有する特徴が生まれるので、前記画像が正しく合焦していれば前記画像処理アルゴリズムによって容易かつ確実に識別することができるという画像特徴が提供される。前記合焦構造は三次元形状を備えることが好ましく、この形状は前記検体ホルダ中のピットまたは突起として形成されてもよい。前記合焦構造は、透過光撮像および反射光撮像の両方について十分なコントラスト分解能を提供するように成形することができる。有益な例では、前記三次元形状は、前記光学的平坦層の下にある材料を通過する光が屈折および/または反射されるように構成されて、鮮明なコントラストを有する光のパターンを前記撮像装置に伝達する。例えば、前記合焦構造は、前記合焦構造を取り囲む材料の屈折率に基づいて設定された角度を有する角度付き側面を備え、前記合焦構造の下からの入射光の全部または半分以上が内部反射されて、前記合焦構造から前記光学検出システムに入る光量が大幅に削減される。
【0026】
いくつかの代表的な実施形態では、前記合焦構造は、前記検体ホルダ内に溝またはピラミッド状空洞を備える。ピラミッド状空洞の頂点または溝の底部によって、前記デジタル画像において必要となる鮮明なコントラストが提供される。第一の態様の前記方法は、米国特許出願公開第2015/293270号広報と同様に、溝と共に使用すれば上述の利点を提供することができるので、前記方法は、米国特許出願公開第2015/293270号広報と同様の流路・溝配置を有する検体ホルダを使用することを含んでもよい。
【0027】
前記方法は、テンプレートまたはマスターの結晶面を利用して形成された特徴に基づいて、例えば逆幾何学形状を有するマスターを形成するために用いられるシリコンテンプレートのエッチングによって、成形された合焦構造を有する検体ホルダの使用を含んでもよく、前記検体ホルダまたはその層(上述の光学的平坦層など)は、マスターを基にした成形によって形成される。シリコンの前記結晶面は、前記合焦構造の側壁と前記光学的平坦面との間に54.7°の角度をなすことが可能なので、前記合焦構造の周りに透明材料を用いて、前記合焦構造の下から輝く光の全反射を生じさせることができる様々な材料、例えば、以下に説明するようなZeonor(登録商標)ポリマー等の材料が利用可能である。米国特許出願公開第 2015/293270号広報に提案されているものと同様のCD型製造工程を使用してこの層を製造してもよい。なお、好ましい実施形態はCDと同様の円形形状を使用するが、これは本質的な特徴ではなく、光学的平坦面および正確に形成される合焦構造を保証するためにCD形式の成形処理を依然として使用しつつ、別の形状を使用する場合もあることに留意されたい。
【0028】
各測定対象区域に組み合わされる合焦構造内に複数の溝および/またはピラミッドがあってもよく、前記複数の溝および/またはピラミッドの各々は同じ深さなので、同じ焦点深度で鮮明なコントラストを有する特徴が提供される。一つ以上のピラミッド状合焦構造を使用した検体ホルダの例は、そのような検体ホルダの製造方法と共に以下にさらに詳細に説明する。以下に説明するように、前記合焦構造は各々が複数のピラミッドを含んでもよいので、所要の前記合焦面上に間隔を空けて配置された合焦参照点として複数の頂点があるので利点をもたらす。
【0029】
前記合焦構造はまた、局所的なx ― y参照の基準マークとしても使用されてもよい。
【0030】
前記検体は、微小物体が存在することおよび/またはその量、または存在しないこと、が試験結果に依存する試験検体であってもよい。前記方法の一つの用途は、抗生物質感受性試験(AST)などの薬物感受性試験であり、この場合、複数の検体の分析のために複数の画像を迅速に取得する能力が非常に重要となり得る。したがって、好ましい実施形態の前記方法は、顕微鏡検査によるASTのための、画像に基づく複数の検体の分析方法であってもよい。ASTの場合、前記検体ホルダは、複数の異なる抗生物質および/または異なる濃度の抗生物質に関連する複数の関心検体と一緒に使用されてもよく、この場合、前記デジタル画像は細菌などの微生物の有無、および/または微生物の量を決定するためのものであり、それによってどの抗生物質および/またはどの濃度が微生物の増殖を抑制するのに有効であるかを識別する。前記検体の分析は、前記画像処理アルゴリズムまたは別の画像処理アルゴリズムを使用して、どの検体が微生物を含むか、そしてできれば前記検体中の微生物の量を識別することを含んでもよい。前記方法は、前記微生物の増殖速度を確立するために複数の画像セットを異なるタイミングで撮ることを含むことができるので、抗生物質の最小阻止濃度(MIC)等のパラメータが確立できるようにすることができる。前記方法は、以下にさらに詳細に説明するように、顕微鏡検査によるAST等の薬物試験のための特徴を有する検体ホルダを使用することを含んでもよい。
【0031】
予め設定された合焦面を使用する場合、前記予め設定された合焦面は、前記検体ホルダの標準化されたフォーマットおよび位置に基づいて設定される、前記撮像装置のパラメータであってもよい。あるいは、前記画像を取得する前に、例えば一つ以上の前記合焦構造を用いて一つ以上の前記参照画像を撮影し、前記参照画像に基づいて前記撮像装置の最良のピントを決定することによって、前記予め設定された合焦面を設定してもよい。
【0032】
前記方法が非合焦の各画像の表示を行うことを含む場合、前記表示は、前記画像をさらなる分析および/または確認(すなわち検証)を必要とする画像として識別することを含んでもよい。代替的または追加的に、前記表示は、前記画像を潜在的に信頼できないものとして識別することを含んでもよい。場合によっては、合焦した残りの前記画像から、非合焦の画像があっても無視できる十分な情報が得られるかもしれない。この場合、それ以上の是正措置は必要がなくなる。例えば、画像に基づく前記検体分析がASTに使用されていて、高濃度の同じ抗生物質が有効ではなかったことを示す鮮明な画像があるときに、非合焦の前記画像が低濃度の抗生物質に関与する場合、非合焦の前記画像は、使用する抗生物質の必要濃度を決定することとは無関係かもしれないので、対処する必要はないかもしれない。
【0033】
前記方法が是正措置を講ずることを含む場合、前記是正措置は、元の前記画像のピントがずれていた前記測定対象区域を再撮像することか、画像処理を用いて非合焦領域を除去することか、または元の前記デジタル画像のデータを調整して前記デジタル画像を改善することか、であってもよい。
【0034】
前記撮像装置は、所要の倍率でデジタル画像を撮像するために必要となる光学要素および電子要素を備えることができる。前記撮像装置は、CCDまたはCMOSセンサ等の二次元デジタル画像センサを用いる従来のデジタルカメラであってもよい。前記検体ホルダおよび前記デジタル画像センサは、前記デジタル画像センサが前記検体ホルダ上のすべての測定対象区域でデジタル画像を撮像することができるように互いに対して移動させてもよい。例えば、前記検体ホルダを回転させ前記撮像装置を並進させて、前記検体ホルダの円形領域上の任意の点で画像を取得してもよい。あるいは、前記撮像装置は、線形CCDセンサ等の線形デジタル画像センサを備えたラインカメラであってもよい。この場合、前記検体ホルダおよび前記デジタル画像センサは、各画像の撮像中ならびに異なる測定対象区域間を移動中に、互いに対して移動させてもよい。前記方法は、前記検体を撮像する処理をさらに高速化するために、複数の撮像装置を使用することを含む場合もある。
【0035】
前記画像領域が単一の測定対象区域およびこれに組み合わされる合焦構造を示す単一のフレームであるエリアカメラを使用する場合、撮像処理は以下のように行われてもよい。
1.測定対象区域まで移動する
2.前記画像センサも前記検体ホルダも動かないように、一時停止して前記のシステ ムを安定させる
3.前記画像センサによって自動合焦処理が行われる
4.関心領域を撮像する
5.測定対象区域ごとに手順1~4を繰り返す
【0036】
複数の測定対象区域を撮像する場合、エリアカメラの代わりに、自動焦点追跡機能と共にライン走査撮像手法を用いることが有利である(より単純でより速い)。その処理は次のとおりである。
1.測定対象区域の最初のラインに移動する
2.測定対象区域のライン全体を一度に撮像し、ピントを連続的に調整しながら撮像 ラインと交差して測定対象区域のラインを移動させる
【0037】
前記カメラは、複数の前記フレームから合成画像を作成するフレーム取り込みカードに一連のフレーム(すなわち、単一ラインのピクセル)を出力してもよい。この合成画像は、合焦している部分と合焦していない部分とを含む可能性がある。前記合成画像は、画像解析ソフトウェアに渡され、前記画像解析ソフトウェアが、前記合成画像を切り取ったり切り捨てたりして、関連部分に、すなわち、各々が測定対象区域とそれに組み合わされた合焦構造を含んだ複数の画像領域にする。その後、前記画像領域は前記ソフトウェアによって分析してもよい。
【0038】
上記した前記方法のいずれにおいても、ピントは二点間で外挿してもよい。このためには、ラインカメラの場合、前記ラインカメラのラインに沿って外挿すればよいだけであるが、エリアカメラの場合、測定された多数の点の間の領域に対して外挿が関わる必要がある。後者には、消耗品の平坦度および品質についてより高い要求度が設定される。したがって、消耗品の観点からは、ラインカメラでの外挿が有益である。
【0039】
さらに別の代替方法は、オンザフライ領域撮像である。ここで、測定対象区域は、ライン撮像の場合と同様に、撮像ラインに沿って連続的に移動させることができる。しかし、エリア走査カメラを使用し、走査中に各関与時間において露光させる。露光時間は画質を維持するのに十分に短く、撮像の頻度は前記エリア走査カメラのフレームレートに準拠している。露光時間は、前記カメラ自体によって、または前記測定対象区域が視野内にあるのと同期して間欠的に照明を行うことによって、設定してもよい。
【0040】
第二の態様から見ると、本発明は、画像に基づく複数の検体の分析装置で実行される命令を含むコンピュータプログラム製品を提供するものであって、前記装置は、複数の測定対象区域と、各々が前記複数の測定対象区域のうち一つ以上とこれらに組み合わされる複数の合焦構造と、を有する検体ホルダであって、使用中には前記複数の検体が前記複数の測定対象区域に亘って分散される検体ホルダと、撮像装置と、画像処理システムと、を備え、前記命令は、実行されると、前記撮像装置を使用し、前記複数の測定対象区域について、少なくとも一つの前記測定対象区域および少なくとも一つの前記合焦構造を各々が含むデジタル画像領域を取得し、前記デジタル画像領域の各々を分析して前記デジタル画像領域が鮮明に合焦していることを前記少なくとも一つの合焦構造が示すかどうかを確認し、合焦していないデジタル画像領域があることを前記画像処理アルゴリズムが示す場合は表示するか、および/または是正措置を行うように、前記装置を構成する。
【0041】
第一の態様に関して詳細に説明したように、画像領域は、フレームか、フレームの部分集合か、または各々が少なくとも一つの測定対象区域および少なくとも一つの合焦構造を含む複数のフレームの合成物であってもよい。以下、「画像領域」は「デジタル画像」または単に「画像」と称する。
【0042】
前記命令はまた、例えば、追加の画像を撮ることによって是正措置を行うように前記撮像装置を制御することによって、上述の方法の各ステップのいずれかを実行するように前記装置を構成するように設定されてもよい。画像に基づく複数の検体の分析装置は、以下に記載するような特徴を有してもよく、また、後述するように、前記画像に基づく複数の検体の分析装置は、互いに分離されているか互いに離れている複数の別々の要素で構成されてもよい。例えば、前記画像処理システムは、遠隔地から前記撮像装置と通信する別個のコンピュータシステム等の、前記撮像装置とは異なる物理的システムの一部であるかもしれない。
【0043】
第三の態様から見ると、本発明は、画像に基づく複数の検体の分析装置を提供するものであって、前記装置は、複数の測定対象区域と、各々が前記複数の測定対象区域のうち一つ以上とこれらに組み合わされる複数の合焦構造と、を有する検体ホルダであって、使用中には前記複数の検体が前記複数の測定対象区域に亘って分散される検体ホルダと、前記複数の測定対象区域について、少なくとも一つの前記測定対象区域および少なくとも一つの前記合焦構造を各々が含む画像領域を取得するように構成された撮像装置と、前記デジタル画像領域の各々を分析して前記デジタル画像領域が鮮明に合焦していることを前記合焦構造が示すかどうかを確認し、合焦していないデジタル画像領域があることを前記画像処理アルゴリズムが示す場合は表示するか、および/または是正措置を行うように構成された画像処理システムと、を備える。
【0044】
前記第一の態様に関して詳細に説明したように、画像領域は、フレームか、フレームの部分集合か、または少なくとも一つの前記測定対象区域および少なくとも一つの前記合焦構造を含む複数のフレームの合成物であってもよい。以下、「画像領域」は、「デジタル画像」または単に「画像」と称する。
【0045】
前記撮像装置は、測定対象区域およびそれに組み合わされた合焦構造に沿って走査することによって複数のフレームを撮像し、前記複数のフレームから構成される合成物を出力するように構成されたラインカメラであってもよい。
【0046】
この装置は前記第一の態様の方法に従って動作させることができて、同様の利点を提供する。したがって、前記装置は、前記撮像装置と並行して使用される別個の合焦カメラがなくてもよい。前記装置は、前記検体中に微小物体が存在することおよび/またはその量を、または存在しないことを決定することが必要な検体と共に使用するためのものであってもよい。したがって、前記撮像装置は、微小物体の撮像に適した倍率および/または高解像度で撮像するように構成されてもよい。前記画像処理システムは、前記画像内に微小物体が存在するかどうかを決定するように構成されてもよい。
【0047】
画像に基づく複数の検体の分析装置は、前記検体を含んでもよいし、前記検体は、例えば上述の微小物体のように、検体流体中に含まれる微小物体を含んでもよい。前記流体は、前記微小物体が懸濁状態で保持されている液体であってもよい。あるいは、前記微小物体は、前記検体流体を保持する検体ホルダまたは検体スライドの表面、例えば底面、上に配置されてもよい。前記検体流体は、臨床検体または臨床検体由来の材料を含んでもよく、前記臨床検体は、血液、血清、血漿、血液画分、関節液、尿、精液、唾液、糞便、脳脊髄液、胃内容物、膣分泌物、粘液、組織生検検体、組織ホモジネート、骨髄吸引物、骨ホモジネート、痰、吸引物、創傷滲出物、鼻咽頭拭い液などの拭い液および拭いすすぎ液、他の体液などを含むが、これらに限定されない。前記検体流体は培地を含んでもよいし、複数の臨床検体または複数の臨床検体から由来する材料と、培地と、の混合物である場合もある。前記検体は、上述のように試験検体であってもよい。前記検体は、それぞれ異なる培地にさらされる画分/アリコート/部分に分けられてもよい。
【0048】
前記検体ホルダ上の前記測定対象区域は、前記複数の検体の検体流体を含む領域であってもよい。前記領域は上述したようなものであってもよいので、液溜まりおよび/または流路を備えている場合もある。前記検体ホルダは、上記のように前記測定対象区域に近接して合焦構造を有してもよい。
【0049】
いくつかの代表的な実施形態では、前記検体ホルダは使用後に処分することができる消耗品の使い捨て製品である。画像に基づく複数の検体の分析装置は、例えばカセットシステム内および/またはターンテーブル上で、前記撮像装置に対し前記検体ホルダを支持するように構成してもよい。前記検体ホルダと前記撮像装置とは互いに解放自在に、例えば前記検体ホルダを前記撮像装置から手で外すことができるように接続していてもよい。コンパクトディスクをコンパクトディスク読み取り機に保持するために使用するものと同様の結合部品を使用するかもしれない。
【0050】
前記検体ホルダは、上述したようなものであってもよいし、また第四の態様に関して以下に述べるような特徴を有する場合もある。
【0051】
画像に基づく複数の検体の分析装置は、前記画像を取得する前に前記予め設定された合焦面を決定するように構成されてもよい。例えば、前記撮像装置は、一つ以上の前記合焦構造の一つ以上の参照画像を撮像するように構成されてもよく、前記画像処理システムは、前記参照画像に基づいて前記撮像装置のための最良のピントを決定するように構成されてもよい。
【0052】
前記画像処理システムは、元の前記画像では合焦していなかった測定対象区域の追加の画像を撮ることによって、前記撮像装置に是正措置を行うことを促すように構成してもよい。画像に基づく複数の検体の分析装置は、互いに分離されているか互いに離れている複数の別々の要素で構成されていてもよい。例えば、前記画像処理システムは、遠隔地から前記撮像装置と通信する別個のコンピュータシステム等の、前記撮像装置とは異なる物理的システムの一部であるかもしれない。前記画像処理システムは、それ自体が異なるハードウェア要素に亘って分散されていて、例えば、あるサブシステムは合焦確認ステップを実行し、別のサブシステムは合焦確認後に前記画像内に微小物体が存在するかどうかを決定してもよい。
【0053】
前記撮像装置は、所要の倍率でデジタル画像を撮像するために必要となる光学要素および電子要素を備えてもよい。前記撮像装置は、CCDまたはCMOSセンサ等の二次元デジタル画像センサを用いる従来のデジタルカメラであってもよい。前記検体ホルダおよび前記デジタル画像センサは、前記センサが前記検体ホルダ上のすべての測定対象区域でデジタル画像を撮像することができるように互いに対して移動させてもよい。あるいは、前記撮像装置は、線形CCDセンサ等の線形デジタル画像センサを備えたラインカメラであってもよい。この場合、前記検体ホルダおよび前記画像センサは、各画像の撮像中ならびに異なる前記測定対象区域間を移動中に、互いに対して動かしてもよい。前記方法は、前記検体を撮像する処理をさらに高速化するために、複数の画像化装置を使用することを含む場合もある。
【0054】
第四の態様から見ると、本発明は、画像に基づく複数の検体の分析装置に使用するための検体ホルダを提供するものであって、当該装置は上述のような装置であってもよく、前記検体ホルダは、光学的平坦面と、前記光学的平坦面の全域に亘って分散された複数の測定対象区域であって、使用中には各々が前記複数の検体のうち一つの検体の位置に対応する複数の測定対象区域と、前記複数の測定対象区域に組み合わされた複数の合焦構造と、を備え、前記合焦構造は、各々が、前記光学的平坦面に少なくとも一つのピラミッド状くぼみを備える。
【0055】
ピラミッドの使用は、それ自体が特許請求の範囲に含まれてもよいが、米国特許出願公開第2015/293270号広報には開示されていない。本発明者らは、ピラミッドが、上述した第一~第三の態様に関連し、必要に応じて合焦を確認する能力に悪影響を及ぼすことなく製造の容易さという観点から利点をもたらすことを認識した。合焦構造として作用するために求められる精度で製造するには、ピラミッドの方が溝よりも複雑ではない形状である可能性がある。例えば、ピラミッドは、シリコン等の結晶材料の中にもっと容易にエッチングして形成することができるので、前記検体ホルダの前記光学的平坦面を成形するためのマスターの製造に使用することができる。ピラミッドであれば、マスクに形成された円形の穴を介してエッチングすることができるが、溝の場合は前記マスクに細長い穴を必要とし、正確に形成することがより困難である可能性がある。したがって、前記光学的平坦面および前記合焦構造は、エッチングされたテンプレートに基づいて製造してもよく、前記合焦構造の表面および平面は、例えばシリコンの結晶面のような、テンプレート材料の結晶面と平行にする。ピラミッド構造の使用は、多数のまたは高密度の合焦構造が必要とされる場合にも有益である。前記合焦構造の少なくとも一つが各画像領域内に見えることが必要なので、前記検体ホルダ上の多くの異なる測定対象区域で生物学的構造を分析するために高倍率が必要な場合、多くの合焦構造が必要になる場合もある。ピラミッド状の前記合焦構造は製造が容易であるので、この形状の合焦構造を使用することの利点は、合焦構造の数が大きくなるほど増す。
【0056】
前記検体ホルダは、消耗品の使い捨て製品であることが好ましく、上述した前記方法および/または前記装置と共に使用すればよい。前記検体ホルダは、複数の他の同様の検体ホルダと積み重ねるように配置してもよい。
【0057】
いくつかの代表的な実施形態では、前記合焦構造の各々は、前記光学的平坦面内に複数のピラミッド状空洞を備えて、前記ピラミッドの各々は、前記合焦構造が複数の前記ピラミッドの頂点を介して複数の合焦参照点を有するような、同じ深さを有する。一例では前記合焦構造はピラミッドのみを備えて溝は備えないが、前記合焦構造には例えば溝などの追加の特徴があってもよい。前記ピラミッドの各々の深さは同じでもよく、この深さは固定の(すなわち、予め決定された、予め知られた、または任意ではない)値を有してもよい。前記ピラミッドが、結晶面と平行にエッチングで形成されたピラミッドを有するテンプレートに基づいて形成される場合、前記ピラミッドの深さは前記ピラミッドの底辺のサイズに直接関連し、前記ピラミッドは、製造工程の許容範囲内でサイズおよび形状がすべて同一であってもよい。前記ピラミッドは、例えば、5,10,20,30,40,60,80,または100μmの深さなど、5~100μmの深さで、一辺の長さが同様のサイズの範囲の正方形状底部を有してもよい。シリコンの結晶面を使用する場合、基線長は、深さの二倍をtan(54.7)で割った値に等しくなるであろう。
【0058】
当然のことながら、上述したようなCD型の製造工程を使用することができ、前記検体ホルダの好ましい実施形態は、CDと同様の円形形状を有するディスク状である。これは有利な特徴であるが本質的な特徴ではなく、光学的平坦面および正確に形成された合焦構造を確実にするために同様のテンプレートおよびマスター成形工程を依然として利用しながらも、代替の形状を使用する場合もある。
【0059】
前記検体ホルダ上の前記測定対象区域は、複数の前記検体の検体流体を含む領域であってもよい。前記領域は上述したものであってもよいので、液溜まりおよび/または流路を含む場合もある。前記検体ホルダは、上述のように、前記測定対象区域に近接した合焦構造を有してもよく、各合焦構造に複数のピラミッドがある場合には、各ピラミッド間の間隔は前記測定対象区域から前記合焦構造の間隔以下である。
【0060】
一例としての実施形態では、各合焦構造は、複数のピラミッド状くぼみ、できれば少なくとも四つの対称的に間隔が空いたピラミッド状くぼみを含み、これらのくぼみは、前記合焦構造に組み合わされた前記測定対象区域にある領域の幅の三倍以下、必要に応じて前記幅のせいぜい二倍または一倍の距離だけ互いに離間している。 前記合焦構造が前記領域の幅よりも小さい場合、前記合焦構造は領域内に、例えば前記領域の底部(すなわち底面)に配置されてもよい。あるいは、前記合焦構造は、前記領域に隣接していてもよく、例えば、同じ画像に収まるよう十分に前記領域の端部に近くてもよい。前記合焦構造の前記領域からの間隔は、前記領域の幅のせいぜい四倍、必要に応じて前記領域の幅のせいぜい三倍であってもよい。すなわち、前記領域の幅をWとすると、前記領域の端部と前記合焦構造との間隔は4W以下、必要に応じて3W以下である。例えば、正方形または長方形の四隅に間隔を空けて四つのピラミッド状くぼみがあってもよい。各領域の各端部に二つのピラミッド状くぼみがあってもよく、その領域の前記合焦構造がそれらの四つのくぼみを備えてもよい。このように少なくとも四つのピラミッド状くぼみを使用することによって、前記光学的平坦面上で二次元的に離間している複数の合焦参照用特徴が存在し、これは、前記光学的平坦面である平面の両方の軸を参照して画像の合焦を確認できることを意味する。したがって、前記光学的平坦面に対する撮像装置の前記合焦面内に望ましくない傾斜があれば検出することができる。これは、上述のように、画像に基づく検体の分析方法の実行中、および/または所要の前記合焦面が撮像装置に対して予め設定されている最中であるかもしれない。前記合焦構造は、前記ピラミッド状くぼみの周りに円形の特徴をさらに備えてもよい。こうすれば、肉眼で、または倍率の低い画像において、前記くぼみの場所を見つけやすくなる。
【0061】
上述のように、一例としての検体ホルダは、流路に沿って間隔を空けて配置された複数の液溜まりを有して、前記流路が前記液溜まり間の流体通路となり、前記合焦構造は、同じ画像内に収まるよう十分に前記流路の端部に近い。前記流路に沿った前記液溜まりは測定対象区域であり、複数の検体を前記液溜まりに入れてもよい。複数の液溜まりが一本の流路によって接続されていれば、複数の液溜まりを満たすために前記検体流体を一つの位置に注入するだけでよいし、そのような構造であれば閉じる必要があるかもしれない開口部がより少ないので、有利である。液溜まりの数に対する注入位置の比は、1対1よりかなり小さく、例えば、各注入位置ごとに五個以上の液溜まりであることが好ましい。前記注入位置は、前記液溜まりおよび前記流路の各上面を囲む被覆層内に開口部、例えば、以下に記載されるような層状検体ホルダの第三層内の開口部であってもよい。
【0062】
この種の形状は、ASTのような薬剤感受性試験を含む検体試験方法に使用される場合もあり、この場合、一種類の検体流体を化学的薬剤または生物学的薬剤の複数の異なる組成物と組み合わせて試験する必要がある。したがって、例えば、ASTでは、流路に沿った液溜まりに複数の異なる種類の抗生物質または複数の異なる濃度の抗生物質を提供する場合もあり、前記液溜まりには検体流体を、例えば、臨床検体または臨床検体由来の物質(例えば、上記した臨床検体)を含む検体流体を充填することができる。前記臨床検体は、感染症に罹患している患者からのものである場合もある。前記流路を用いて前記液溜まり間に前記検体を注入する。次に、必要に応じて前記検体ホルダを、所要の温度および/または所要の撹拌などの所要のインキュベーション条件にさらすことを含めて一定期間後、前記検体ホルダ中の前記検体を上記のように撮像し分析してもよい。これらのステップを、複数の液溜まりを有する検体ホルダを用いる上述の前記方法と組み合わせれば、AST用の、画像に基づく複数の検体の分析方法を提供することができる。
【0063】
ASTなどの薬剤感受性試験用であり得る一つの特に好ましい検体ホルダは複数の流路を有し、各流路には複数の液溜まりが、前記流路に沿って間隔を空けて配置され前記流路によって接続されて、各流路は対応する合焦構造を有する。前記流路は、円形の検体ホルダの半径に沿って延在する円形配列状に配置されてもよく、前記合焦構造は前記流路の外側端部にあるので前記検体ホルダの外周の周り(または前記検体ホルダの中心に対して同心円の周り)にある。
【0064】
同様の検体ホルダにおいて、各流路は、ただ一つの対応する合焦構造を有するのではなく、前記合焦構造が前記検体ホルダの中心を中心とする各同心円に沿って並ぶように、前記検体ホルダの中心から所定の間隔で離間した、複数の対応する合焦構造を有してもよい。ラインカメラを使用する場合、複数の前記合焦構造は、前記ラインカメラによって撮像された、例えば、10ラインごと、50ラインごと、または100ラインごとに見えるように配置されてもよい。
【0065】
あるいは、各流路は、視野の範囲内であって前記ラインカメラの移動方向と平行に前記流路の長さに沿って延びる溝または線を備える合焦構造と対応させてもよい。その場合、前記合焦構造の一部は、前記ラインカメラによって撮像された各ラインに存在してもよい。
【0066】
ASTのような薬剤感受性試験用の検体ホルダは、複数の液溜まりを備え、それらの中には、検体流体と共に使える状態にある抗生物質が存在してもよい。例えば、前記液溜まりは粉末状の前記抗生物質を含み、異なる液溜まりは異なる抗生物質および/または異なる濃度の抗生物質を含んでもよい。
【0067】
前記検体ホルダは、透明材料から成っていてもよく、前記透明材料は、前記光学的平坦面および前記合焦構造の材料とすることができる。これは、透明な射出成形ポリマー、例えば、UVグレードPMMA、PMMA、PC、または他のCOCポリマー系材料であってもよい。シリコンまたは同様の材料の結晶面を使用して前記合焦構造を形成する場合(前記光学的平坦面と前記合焦構造の側壁とが成す角度が54.7°となるので)、および光が空中から前記検体ホルダに入射する場合、前記材料の屈折率は約1.22(すなわち1/sin(54.7°))より大きいことが好ましい。可能性のある材料としては、屈折率1.5を有するZeonor(登録商標)1060R、または硬化PDMS(屈折率1.4)が挙げられる。例えば、光が水を介して入射する場合、屈折率はより高い(約1.63よりも大きい)必要がある。 °
【0068】
前記検体ホルダは、すべての前記検体およびすべての前記測定対象区域を保持するための単一部品から成っていてもよく、その場合、前記検体ホルダの形状および製造は、米国特許出願公開第2015/293270号広報のものと同様である可能性がある。あるいは、前記検体ホルダは、前記合焦構造を備えた前記光学的平坦面を有し、前記検体を含む前記領域にとっての基部を提供する第一層で積層され、前記領域が、光学的平坦層である前記第一層の上面にある第二層の中に囲まれてもよい。前記光学的平坦層は、それ自体が前記光学的平坦層と同様の形状を有するテンプレートから得られるマスターを使用して製造してもよい。したがって、前記光学的平坦層はCDと同様の方法で製造してもよい。こうすれば、光学的平坦面、および合焦構造ならびに必要に応じて前記光学的平坦層の他の表面特徴部の正確な成形が可能になる。CD型製造工程は、光学的平坦面と、正確に成形されて位置決めされた複数の合焦構造と、を有する、前記検体ホルダまたは前記検体ホルダ用の層を高い費用効率で大量生産できるので、消耗品の使い捨て製品の場合に特に有用である。
【0069】
層状構造を用いる場合、前記領域の上面を包み込む第三層、できれば前記撮像システムに対して透明な層、例えば可視光に対して透明な層があってもよい。前記第三層はガス透過性材料を含んでもよいし、および/または前記検体から出るガスを放出するための開口部を備えていてもよい。前記第三層は通気孔または穴を有し、必要に応じてガス透過性膜で覆われる場合もある。こうすれば、前記検体ホルダが前記検体で満たされている間はガスを逃がすことができる。前記第三層は、検体流体を前記測定対象区域にある前記領域内に注入するための開口部を有していてもよい。上記のような理由で、開口部は測定対象区域よりもかなり少なくしか存在せずに、例えば前述した前記流路および前記液溜まりの配置のように、流体経路を通じて各開口部が複数の測定対象区域につながっていることが好ましい。
【0070】
本発明はさらに、検体ホルダ用の前記光学的平坦面および前記合焦構造を作製するために、または検体ホルダ用の前記光学的平坦面および前記合焦構造の作製に使用されるマスターを作製するために、使用されるテンプレートにまで及んで、このテンプレートは、光学的平坦面と、複数の合焦構造またはこれらの鏡像と、を備え、前記合焦構造は、前記光学的平坦面上に分散されて複数の測定対象区域に組み合わされるように配置されて、前記検体ホルダの表面にある複数のピラミッド状くぼみからなる。
【0071】
このテンプレートは、第四の態様に係る前記検体ホルダの前記光学的平坦面および前記合焦構造を作製するためのものであってもよい。前記テンプレートは、例えば射出成形を使用して前記検体ホルダを成形するのに使用されるマスターを形成するためのテンプレートであることが好ましく、この場合、前記テンプレートは結晶化した材料から形成されるのが好都合であり、前記結晶化した材料の結晶面を利用して前記ピラミッド状合焦構造の配列を設定してもよい。一つの具体例として、シリコンを使用しその結晶面がすべて前記ピラミッドの前記光学的平坦面および傾斜した側壁を形成するように整列することが挙げられるのが分かるであろう。前記シリコンの(100)面は、四つのピラミッド側壁が前記シリコンのそれぞれの{111}面と平行になった前記光学的平坦面であってもよい。前記ピラミッドのサイズおよび配置は上述の通りであり得る。
【0072】
本発明の別の態様は、画像に基づく複数の検体の分析装置において使用するための検体ホルダの製造方法を提供するものであって、前記装置は上述した装置であってもよく、前記検体ホルダは、光学的平坦面と、前記光学的平坦面に亘って分散されて、使用中は各々が前記複数の検体のうち一つの検体の位置に対応する複数の測定対象区域と、前記複数の測定対象区域に組み合わされた複数の合焦構造と、を備え、前記方法は、少なくとも一つのピラミッド状くぼみとして前記光学的平坦面に各合焦構造を形成することを含む。
【0073】
前記方法は、上述した特徴を有する、前記合焦構造および/または前記測定対象区域を形成することを含んでもよい。前記検体ホルダ上の前記測定対象区域は、前記複数の検体の検体流体を含む領域であってもよい。前記領域は上述したようなものであってもよいので、前記方法は、液溜まりおよび/または流路を含めて、上述したような領域を形成することを含んでもよい。前記検体ホルダは、上記のように前記測定対象区域に近接した前記合焦構造を有するように形成してもよく、この場合、各合焦構造内に複数のピラミッドがあるので、各ピラミッド間の間隔は、焦前記合焦構造の前記測定対象区域からの間隔以下である。
【0074】
例えば、前記検体ホルダは、流路に沿って間隔を空けて配置された複数の液溜まりを備え、前記流路が前記液溜まり間の流体通路となってもよく、前記合焦構造は、前記流路の端からは前記液溜まりの幅の三倍または四倍の範囲内にある。前記方法は、検体流体と共に使用できる状態にある抗生物質を内包する複数の液溜まりを提供することを含んでもよい。例えば、前記液溜まりは粉末状の抗生物質を含み、液溜まりが異なれば異なる抗生物質および/または異なる濃度の抗生物質を含んでもよい。
【0075】
前記方法は、テンプレートまたはマスターの材料の結晶面を使用して形成された特徴に基づいて、例えば、マスターを形成するために使用するシリコンテンプレートを逆幾何学的にエッチングすることによって、前記合焦構造のピラミッド状くぼみを成形することを含んでもよく、この場合、前記検体ホルダまたはその層(上述の前記光学的平坦層など)が前記マスターを基にした成形によって形成される。
【0076】
前記方法は、できれば結晶性材料の結晶面と平行にして、光学的平坦面を有するテンプレートを形成することと、所定の位置で前記ピラミッド用の円形の穴を備えたマスクを前記表面に塗布することと、前記テンプレートをエッチングして前記ピラミッドを形成することと、前記マスクを除去することと、を含んでもよい。前記方法は、次に、前記テンプレートとは逆形状のマスターを作製すること、続いて、前記マスターを用いて前記検体ホルダのための前記光学的平坦面および前記合焦構造を形成することと、を含んでもよい。テンプレート材料はシリコンであってもよい。前記マスターは、前記シリコンの電気メッキによって作製してもよい。前記検体ホルダのための前記光学的平坦面および前記合焦構造は、前記マスターを使用し、例えば射出成形によって、成形することによって形成してもよい。
【0077】
CD型の製造工程を使用することができるので、前記検体ホルダはCDと同様の円形形状を有するディスク形状として形成してもよい。上述のように、これは有利な特徴であるが本質的な特徴ではなく、光学的平坦面および正確に形成された合焦構造を保証するために同様のテンプレートおよびマスター成形工程を依然として利用しながら、代替の形状を使用する場合もある。
【0078】
前記方法は、前記検体ホルダの少なくとも一部に透明材料を使用することを含んでもよく、前記検体ホルダの少なくとも一部は、前記光学的平坦面および前記合焦構造であってもよい。前記方法は、前記検体ホルダに関連して上述の説明で例示したような材料について前記光学的平坦面および前記合焦構造体の射出成形を行うことを含んでもよい。
【0079】
前記方法は、前記検体ホルダの第一層の上に前記光学的平坦面および前記合焦構造を形成することを含んでもよく、前記第一層は、使用中に前記検体を含むことになる前記領域のための底面ともなる。前記方法は、次に、光学的平坦層である前記第一層の上面に第二層を設けることを含み、前記第二層が前記領域の側壁を形成してもよい。前記光学的平坦層は、それ自体が上述したような前記光学的平坦層と同様の形状を有するテンプレートから得られるマスターを使用して製造してもよい。前記第二層の上に第三層があってもよく、第三層は前記領域の上面を囲む。前記第三層は、例えば、上で説明したような画像の前記分析方法および画像の前記分析装置において使用されるような撮像システムに対して透明な層であることが好ましい。前記第三層はガス透過性材料を含んでもよく、および/または前記検体から出るガスを放出するための開口部を含んでいてもよい。前記第三層は、通気孔または穴を有し、必要に応じてガス透過性膜で覆われる場合もある。
【0080】
本発明は、上記のような前記検体ホルダまたは装置を備えた、抗生物質感受性試験のためのシステムにまで及ぶ。
【0081】
本発明はまた、上記のような前記検体ホルダまたは装置を備えた、抗生物質感受性試験および病原体識別のためのシステムにまでも及ぶ。
【0082】
なお、誤解を避けるために、第四の態様およびそれ以降の前記検体ホルダは、前記第一の態様の方法で使用したり、同様に、前記第二の態様のコンピュータプログラム製品が使用したりする場合もある。前記検体ホルダは、前記第三の態様の装置の一部として提供されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
次に、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。
図1】層状構造を有する検体ホルダを示す図である。
図2図1の一部の拡大図であって、検体を保持するための液溜まりを含む。
図3図1の一部の拡大図であって、図1で見るには小さすぎる合焦構造を示す。
図4】ピラミッド状くぼみを用いた合焦構造の拡大図である。
図5】ピラミッド状くぼみに向けられた光線、およびこの結果として生じる光線の反射および屈折を示す図である。
図6】高速蛍光検出を使用して検体ホルダ内の対象物を検出する装置例を示す図である。
図7】液溜まりおよび合焦構造の概略配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0084】
図1~4に示すように、代表的な実施形態は、画像に基づく検体分析において、検体ホルダを使用する。この方法は、デジタルカメラの形をした撮像装置を含めた、適切な装置を用いて実施される。画像に基づく検体分析装置の例を、図6に関連付けながら以下に説明する。検体は微小物体を含むので、微小物体の有無、または数/量を確実に決定することができるように、カメラが検体に正しく合焦することを保証する必要がある。したがって、検体ホルダには、後に画像分析システムが正しく合焦していることを確認できるようにする合焦構造が設けられている
【0085】
<検体ホルダ>
図1で示すように、検体ホルダ100は三つの層を有する。光学的平坦層である第一層10は底面層を形成し、図3および4の拡大図に示すように、この層は合焦構造12を含む。第二層14は、第一層10の上面に配置され、検体流体を保持する領域が、流路18を介してつながっている液溜まり16内に存在する。それぞれ独自の液溜まり16を有する複数の流路18がある。第一層10で液溜まり16の底部は閉鎖されている。第三層20は、液溜まり16および流路18の上面を覆っている。第三層20は、流路18の両端の各々に開口部22を備えて、検体流体を各流路18内に注入できるようにし、次に流路18に沿って流れてすべての液溜まり16を満たすことができる。第三層20はまた、流路18の各々の他端に通気孔24を備えて、流路18が検体流体で満たされた際にガスが流路18から出られるようにしている。通気孔24および必要に応じて開口部22もガス透過性膜で覆われていてもよい。図2は、第二層14および第三層20の拡大詳細図である。流路18は液溜まり16の上部をつないでいる。各流路18の端部には、過剰な検体流体用の貯液槽28がある。
【0086】
層10、14、20は、すべて、中央穴26を有しており、この穴は、検体の画像を撮るための装置に検体ホルダ100を装填中する際に使用される。この例では、検体ホルダ100は円形の形状を有し、CDと同様に保持することができるので、スピンドル円盤上に支持され、検体ホルダ100の上方および/または下方の撮像素子と共に回転するように保持される。中央保持部26は、検体ホルダ100をスピンドル円盤に結合するための取り付け部を形成する。流路18は、検体ホルダ100の中心から外周に向かって外向きに延設されて、当該の中心を中心として放射状直線に沿い間隔を空けて配置され、一連の一番目の流路18は始点と終点が検体ホルダ100の中心からさらに離れ、各二番目の流路18は検体ホルダ100の中心のより近くで開始し終了するという交互配列になっている。あるいは、流路は、交互に配列されずに、各流路が検体ホルダ100の中心から同じ距離で始まり、検体ホルダ100の中心から同じ距離で終わってもよい。第一層10および第三層20は、検体を撮像するために使用される波長の光に対して透明であるべきであり、通常は可視光に対して透明である。第二層14は、透明である必要はないが、透明であってもよい。第一層の製造方法を以下に記載する。第二層14は射出成形することができる。第三層20は、一般に比較的薄くシート材料から切り取られ、開口部22および通気口24が当該シートを貫通して切り取られるかもしれない。代替として、第三層20がガス透過性である場合、通気孔24は省かれるかもしれない。
【0087】
蛍光分析に使用する場合、第一層10、第二層14、および第三層20は関連する波長領域(例えば450~700nm)では非蛍光性でなければならない。
【0088】
<合焦構造>
流路18の一部または全部の端部において、合焦構造12が光学的平坦層である第一層10の表面に形成されている。合焦構造12は、各流路18の端部にあってもよい。光学的平坦面および合焦構造12を形成する方法を以下に説明する。合焦構造12は、流路18および一つ以上の液溜まり16の画像と同じ画像内に撮像されるように、流路18の端部の近くに配置されてもよい。別の構成では、合焦構造12が、各液溜まり16の基部に(すなわち流体の下の光学的平坦面に)存在するかもしれないし、各液溜まり16に隣接するか各流路18に隣接している場合もあって、後者は米国特許出願公開第2015/293270号広報の配置に似ている。合焦構造12の配置がどのようなものであれ、検体ホルダ100上の測定対象区域と共に合焦構造12が各画像内に存在するように検体ホルダ100が撮像され、当該の測定対象区域は、この例では各液溜まり内の検体流体の領域である。
【0089】
別の構成では、各流路18は、合焦構造が検体ホルダの中心を中心とする同心円に沿って並ぶように、検体ホルダの中心から所定の設定距離を置いて配置された複数の対応する合焦構造12を有してもよい。合焦構造12は、液溜まりの外幅から内側方向に間隔を空けて、隣接する液溜まり間に設けられてもよい。合焦構造は、ラインカメラが撮像のために使用される際に、例えば、10ラインごと、50ラインごと、または100ラインごとに現れるように間隔を空けて配置されてもよい。
【0090】
合焦構造12は、画像内の合焦を確認するために、以下に説明する方法で使用される。画像は予め設定された合焦面を用いて撮像するか、必要に応じて、画像を撮像しながら連続的に短時間で合焦させる機構を使用するかもしれない。予め設定された合焦面は、カメラを合焦構造12上に合焦させることに基づいて決定できるが、他の手段によって決定するかもしれない。合焦面を設定するために使用するカメラは、検体ホルダ100上の検体の分析のために画像を撮るのに使用するカメラと同じであってよい。または、例えば以下の図6に示すように、専用の合焦カメラを使用するかもしれない。
【0091】
図5は、ピラミッド状くぼみ30の動作を示した図であって、当該くぼみは、ピラミッドが光学的平坦面に対して垂直に近い光線で下方から照射されたときに鮮明なコントラストを有する画像特徴を提供する。図5の(a)は、以下に記載する方法でシリコンの結晶面と平行にして形成されたときの光学的平坦面およびピラミッド状くぼみ30の側面の形状を示している。側壁は平坦面に対して54.7°である。 図5の(b)に示すように、第一層12の材料の屈折率が約1.22(つまり、1/sin(54.7°))より大きければ、平坦面に対して垂直な平行光ビームはピラミッド30の側壁で全反射を生じさせる。完全に平行光ビームまでには至らない場合、反射は完全ではないかもしれないが、以下に詳述するように、コントラスト検出にはそれでも十分である。
【0092】
全反射の結果として、上面から見たときに、ピラミッド状くぼみ30の領域の大部分は暗く見える。撮像カメラが、当該底部で側壁同士が交わりピラミッド状くぼみ30の先端を形成する、ピラミッド状くぼみ30の底部に正確に合焦している場合、輝点が現れる。この輝点とピラミッドの周囲部分のより暗い領域との間のコントラストは、合焦面の変化と共に急速に変化するので、コントラストに基づく正確な合焦が可能になる。
【0093】
<合焦構造の製造>
合焦構造12は、検体ホルダ100の第一層10内のくぼみ30、32のパターンから成る。第一層は、製造マスターを用い射出成形によって、例えば、シリコンテンプレートから作製されたニッケル内に製造される。この工程は、データおよび音楽の格納に使用されるようなコンパクトディスクの製造に使用される工程と同じである。実際に、CD成形機を使用して各ディスクを作成してもよい。シリコンテンプレートは、必要となる合焦構造12と全く同じ形状をしたくぼみでエッチングされる。第一層10の特徴について本明細書で使用するのと同じ参照番号を以下で用いて、シリコンテンプレートの対応する特徴を示すことにする。
【0094】
当該テンプレートは、複製マスター(製造マスタープレート、またはマスター)を形成するために逆方向性を有するテンプレートとして機能するために使用され、複製マスターそれ自体は、光学的平坦面および合焦構造12を有する第一層10の製造に使用される。複製工程は、例えば熱可塑性射出成形または一体成型であり得る。製造マスタープレートはニッケルを含んでもよく、電気メッキによって製造してもよい。一つの好ましい実施形態では、CDに基づく熱可塑性射出成形で複製マスターを使用し、上述のような合焦構造12を有するCD状第一層10を生成する。
【0095】
シリコンウェハを用いてテンプレートの光学的平坦面を形成し、この平坦面が、第一層10の光学的平坦面に対応し、シリコンの(100)面になる。ピラミッド30はシリコン結晶ウェハの{111}面に沿ってエッチングで形成される。こうすると、マスターの表面と{111}面との間の角度は54.7°になる。ピラミッド状くぼみ30を形成する前に、ピラミッド状くぼみ30の周囲に位置する円32を、深反応性イオンエッチング(DRIE)を用いて、シリコン基板内の結晶軸の配向とは無関係にエッチングする。この場合、普通は、引き続いてピラミッド構造が形成されることになる液溜まりの底部を画定する埋め込み酸化物層を使用するためにSIOシリコンを使用する。最初の凹部を形成する目的は、液溜まりのサイズを画定すること、そして例えば最初の射出成形構造物の中に既に薬物または化合物を堆積させることができるようにすることであり、つまり、液溜まりおよび合焦構造の両方を同じ成形構造物で、同じ成形サイクルにおいて、形成することができるので、液溜まりを形成するために二番目の構造物を何ら組み合わせる必要がない。これは、米国特許出願公開第2015/293270号広報の先行技術の開示における流路および合焦構造を形成するための工程と同様である。あるいは、ピラミッド30は、{111}面に従った縁部を有する{100}面に直接エッチングすることができ、事前のDRIEエッチングなどは不要である。ピラミッド30をシリコンの上面に直接エッチングするような場合、図1~4に示すように、例えば、貫通孔を備える二番目の構造物を接合することによって、第二層14に液溜まりを形成する。この二番目の構造物は、合焦構造12を含む底部層10に接着または他の方法で取り付けられると、液溜まりを有する構造物を形成する。この場合、射出成形構造は合焦構造のみを備え、液溜まり18は後で追加する。
【0096】
ピラミッド状くぼみ30は、例えば水酸化カリウム(KOH)を用いたウェットエッチングによってエッチングする。ピラミッド状くぼみ30の深さは、ウェットエッチングに使用するマスクの開口部の直径によって定義される。このマスクにある円形の穴を高い精度で形成すれば、ピラミッド状くぼみ30のエッチングも同じ高い精度で行うことができる。したがって、合焦構造12は、検体に隣接する合焦参照点となり、この基準点によって、検体の画像に合焦していることを直接に確認することができる。なお、合焦構造の深さと検体画像のための所望の合焦面との間の関係は、互いに対し所定の位置ずれがある状態で設定することができる。合焦構造は、ピラミッドの先端が所要の合焦面と同じ高さになるように、底上げしたプラットフォーム上に存在することもあり得る。あるいは、合焦構造によっては、合焦面から規定距離だけ離れた位置に先端を有するかもしれない。こうすれば、画像が合焦位置からどれだけ離れているかを決定するのに役立ち、必要に応じて画像再構成を行う可能性をもたらす。なお、図1~4では、スケールがいくらか誇張されていることにも留意されたい。ピラミッド状くぼみ30は非常に浅くて、所要の焦点深度が光学的平坦面またはそれよりわずかに上にある場合でも焦点深度内にあってもよい。さらに、各ピラミッドは常に深さが同一であるので、ピラミッド状くぼみ30の先端が検体の所要の合焦面と全く同じ合焦面にない場合でも、各ピラミッドは合焦に関して情報を提供することができる。この場合の合焦構造の像を、ピラミッドの先端における合焦から同じだけずれた同じ合焦構造の像と対比させて確認することができるので、検体上の合焦が正しいことを確認できる。
【0097】
射出成形された第一層12を製造するために使用される材料は、1.5の屈折率を有するZeonor(登録商標)1060R、または硬化PDMS(屈折率1.4)でもよい。材料の屈折率は、下から合焦構造12に入射する光の内部反射があるように、約1.22(1/sin(54.7°))より大きい値であるべきである。例えば、UVグレードPMMA、PMMA、PC、または他のCOCポリマー系材料のような、他の適切な材料ももちろん検出ディスクに使用できる。なるべく鮮明に合焦する構造を得るために、優れた形状充填性および流動性を有する熱可塑性材料を使用することが好ましい。
【0098】
<画像に基づく検体分析装置>
図6は、画像に基づく検体分析のために検体ホルダ100を利用することができる装置の一例を示す。検体ホルダ100は、図1~4に示すように円形のディスクであり、CDと同様にスピンドルプラッタ上に回転可能に保持される。検体ホルダ100が回転すると、異なる流路18が当該装置の各光学系と平行に並ぶことになる。各光学系には、撮像すべき検体の性質に基づいて設定された波長を有する一つ以上のレーザ42の形態の照明側光学系が含まれる。レーザビームは個々に合焦可能なビーム拡大器44を介してコリメートされ、ビーム直径は最大約8mm(1/e2)になる。各ビームは共線化され、共線ビームは、高開口対物レンズ(Zeiss Fluar 40x、開口数1.3:スウェーデンのストックホルムにあるCarl Zeiss AB社製)と連動しつつ、すべての液溜まり16を併合する流路18の全長に沿って照明光のスペクトル線輪郭を生成するように設計されたビーム整形レンズ46を通過する。最後に、対物入射瞳の直前に、レーザ光は、レーザを通すダイクロイックミラー48(ニューヨーク州ロチェスターにあるSemrock Inc社製)を通過する。
【0099】
各光学系はさらに、検体からの放射光を処理するための検出側光学系を含む。対物レンズを通って集光された放射光は、ダイクロイックミラー52を通りフルミラー54で反射されて、その後、一つ以上のCCDライン検出器40(DALSA Spyder 3、1024ピクセル、ラインレート5kHz:スウェーデンのストックホルムにあるParameter AB社製)によって集光される。ダイクロイックミラーおよび帯域フィルタ(図示せず)を使用して、レンズ58を介し特定波長の光を検出器40に導くことができる。撮像中に各光学系および検体ホルダ100が互いに対して移動させてもよく、その結果ラインカメラ40は、液溜まり16および合焦構造12を含む領域の画像を取得することができる。この移動は、回転移動または並進移動の場合もある。
【0100】
図7は、単一の流路18(図示せず)に沿った、液溜まり16、およびピラミッド状くぼみ30(ここでは概略的に十字形として示す)を備える合焦構造12,12'の概略レイアウトを示している。ラインカメラ40は、複数の液溜まりからなる列に沿って矢印Aで示す方向に走査する。ラインカメラの有効長(すなわち、単一ピクセル幅の各フレームにおいてカメラが撮像するライン長)は、矢印Lによって示す。ラインカメラ40によって得た合成画像は、当該流路に沿ったすべての液溜まり16と、すべての合焦構造12,12'と、を含むが、この合成画像を画像処理アルゴリズムによって処理し、各々が一つの液溜まりおよびそれぞれの合焦構造12,12'を含む別々の画像領域に分割してもよい。一例では、所与の液溜まり16に組み合わされる合焦構造12は、その液溜まりの各端部に二つずつピラミッド状くぼみ30を備える。別の例では、各液溜まり16の端部に四つのピラミッド状くぼみ30を含む合焦構造12'がある。いずれの場合も、幾何学的形状(すなわちピラミッド状くぼみ30のレイアウト)は(図7に示すように)同じとしてよいが、その後に撮像処理において合焦構造12,12'を液溜まり16と対応付ける手法が異なってくる。
【0101】
流路の整列および事前合焦ができるようにするために、蛍光のごく一部を、ビームサンプラー56によってCCDエリア検出器60(μEye UI-1545LE-M:スウェーデンのストックホルムにあるParameter AB社製)に向け直すことができる。検体ホルダ100の下のLED62は、事前合焦用の光源として使用することができる。焦点を変えるために、検体ホルダ100と各光学系とを互いに対し相対的に移動させるモータ64があってもよい。
【0102】
合焦は、専用の合焦カメラ60を用いることもでき、当該装置用のテストサイクルの一部として自動的に実行して、ラインカメラ40を介し取得する画像の合焦面を設定することができる。合焦カメラ60は、CCDエリア撮像チップであってもよい。これはエリアカメラ、すなわち二次元画像を撮像するカメラである。合焦は適切なアルゴリズムによって実行することができる。一つのアルゴリズムを以下に説明する。
【0103】
当該装置はさらに、検体流体を注入し廃液を収集するための各流体構成要素を備える。試験の種類に応じて、異なる流体構成を実施するかもしれない。一般に、一つ以上の検体流体48の供給源および一つの廃液貯留部50があると考えられる。
【0104】
当該装置の使用に際して、検体ホルダには、検体ホルダ上の測定対象区域内に、例えば液溜まり16に適切な検体を提供する。ラインカメラ40を使用して検体の画像を収集し、予め設定した合焦面、または必要に応じて、上述のように、高速連続合焦機構を使用してもよい。この作業の目的にとって重要なことは、画像の撮像後に合焦構造12を用いて画像の合焦を確認することである。画像解析システムは各画像を確認して、合焦構造12を識別し、上述のように、各画像が合焦しているかまたは合焦していないが誤りではない程度であることを確認することによって、各画像が合焦していることを保証する。合焦していない画像がある場合、その旨をユーザに知らせるか、および/または是正措置を行うことができる。画像分析システムはまた、例えば、微小物体の有無やその量を決定するために、および/または微小物体の種類を決定するために、さらに画像分析を行ってもよい。
【0105】
<合焦アルゴリズム>
ラインカメラ40の予め設定されたピントの合焦面(予め設定されたピントが使用されるとき)は、以下に説明するような方法を使用して決定できる。まず、合焦面をピラミッド状くぼみ30の底部の位置に対して既知の位置に置く。すなわち、ピラミッドには合焦していないが、合焦構造12の各ピラミッド状くぼみ30の暗い領域を識別できるためには十分に近い位置であることが分かっている。また、実際の合焦位置が所要の合焦面から遠い方にあるのか近い方にあるのかも分かっている。
【0106】
最初に、当該アルゴリズムはピラミッドの暗い領域を見つけ、これをマスクする。次に、当該アルゴリズムは、既定のしきい値を用いて、暗い領域内に含まれる比較的明るい領域を見つけようとする。それが成功すると、コントラスト値を計算する。次に、当該アルゴリズムは、合焦面を規定のステップ幅だけ溝底に近づけるように動かす手順を繰り返し、コントラスト値が増加するうちは、合焦面を同じ方向に移動させる。前回よりも小さいコントラスト値が計算されると、移動方向が逆になり、ステップ幅が半分になる。この処理は、可能な最小限のステップ幅を用いて最大ピント値に達するまで続く。すると、ピラミッド状くぼみ30の先端のステップは、1μm未満、さらには0.5μm未満の範囲で合焦する。
【0107】
別のより速いアルゴリズムを以下に説明する。まず、上記のように、当該アルゴリズムはピラミッドの暗い領域を見つけてそれをマスクし、既定のしきい値を用いて暗い領域内に含まれる比較的明るい領域を見つけようとする。それが成功すると、コントラスト値を計算する。次に、当該アルゴリズムは、合焦面を一定のステップ幅で溝底に近づけるように動かす手順を繰り返す。ここで、一定のステップ幅は、上述のアルゴリズムで使用する最初のステップ幅よりも小さい。コントラスト値が所定の既定値を超えると、前記アルゴリズムは停止する。
【0108】
<顕微鏡用AST>
図6に示したような装置の一つの用途は顕微鏡検査によるASTである。この例では、図1~4のような検体ホルダ100を使用し、液溜まり16には各々ASTで使用する抗生物質が供給されている。一例では、流路18に沿った一連の液溜まり16は、同じ種類であるが異なる濃度の抗生物質を有し、異なる流路18は異なる種類の抗生物質を含む。当該抗生物質は、例えばそれらを粉末形態で添加するか、および/またはそれらを液溜まり16の壁に付着させることによって、検体ホルダ100の製造中に液溜まり16に提供してもよい。したがって、検体ホルダ100は、ASTで使える状態にある一組の抗生物質を用いて大量生産してもよく、そうすれば、画像に基づく迅速なASTについての、本明細書に記載の方法で使用できる便利な消耗品を提供できる。検体流体は、図6の装置によって、例えば流体48の源から液溜まり16に添加することができるが、あるいは検体ホルダ100を当該装置に取り付ける前に添加してもよい。検体がASTで使える状態になると、図6の装置を用いて各組の液溜まり16の画像を取得し、これらの画像は対応する合焦構造12も含んでいる。当該画像は次に画像分析システムに渡され、画像分析システムが合焦構造12を自動的に識別して確認する。当該画像がよく合焦していることが合焦構造12で確認できた場合、さらに分析するために当該画像を次へ回すことができる。画像が合焦していないことが分かった場合、その旨をユーザに知らせ、および/または是正措置を行う。当該画像分析システムは、微生物の有無やその量を決定するために当該画像をさらに分析してもよい。次に、この分析の結果を用いて、どの抗生物質が最も効果的であるかを確立することができる。微小物体が存在しないことを正確に決定する必要があるこの種の分析では、画像に合焦していることを保証できることが特に重要である。合焦が保証できない場合、非合焦画像が誤って微生物が存在しないことを示す画像として解釈されるかもしれないというリスクがある。
【0109】
<高蛍光によるRCP検出>
図6に示すような、合焦構造12および上述の合焦確認方法を利用する装置の他の用途は、RCPの検出である。標識されたRCPを含有する溶液は、図6のライン検出器40を以下に説明するような専用の高速蛍光検出装置として適合させることによって分析できる。検体ホルダ100は、米国特許出願公開第2015/293270号広報のものと同様の場合もあるので、液溜まり16の存在しない流路18を有し、米国特許出願公開第2015/293270号広報の溝の代わりに上述の合焦構造12を好都合に利用することによって、適合させることができる。検体溶液は、200×40μm(W×H)の断面を有する流路18を通って押し出される。このような寸法はもちろん限定的なものではない。流路18は、例えば、1000×100μm未満または5000×50μm未満の断面を有してもよい。流路18は、検体ホルダ100としてのCD型プラスチックディスク上で放射状に、適切な光学的に透明な蓋および流体界面と位置合わせすることによって、機能不良または目詰まりの場合には流路18の迅速な交換ができる。
【0110】
この例では、それぞれが488nm(Calypso、100mW:スウェーデンのソルナにあるCobolt AB社製)、532nm(Samba、300mW:同じくCobolt AB社製)、および640nm(Cube640、40mW:カリフォルニア州サンタクララにあるCoherent Inc社製)の波長を有する三つのレーザ42が、個々に合焦可能なビーム拡大器44を介してコリメートされ、ビーム直径を最大約8mm(1/e2)にする。各ビームは共線化され、共線ビームは、高開口対物レンズ(Zeiss Fluar 40x、開口数 1.3:スウェーデンのストックホルムにあるCarl Zeiss AB社製)と連動しつつ、流路にある調査対象の領域を横切って照明光のスペクトル線輪郭を生成するように設計されたビーム整形レンズ46を通過する。最後に、対物入射瞳の直前に、レーザ光は、レーザを通すダイクロイックミラー48(ニューヨーク州ロチェスターにあるSemrock Inc社製)を通過する。
【0111】
注射器ポンプ48(Tecan XLP6000:スウェーデンのメンダールにあるTecan Nordic AB社製)を使用し調査対象領域の全域に注入されたRCPから蛍光が放射され、検体の廃液流体は廃液貯留部50に送られる。放出波長は、RCPに結合した蛍光標識の放出スペクトルに対応する。対物レンズを通って集光された放射光は、ダイクロイックミラー52を通りフルミラー54で反射されて、その後、CCDライン検出器40(DALSA Spyder 3、1024ピクセル、ラインレート5kHz:スウェーデンのストックホルムにあるParameter AB社製)によってさらに集光される。ダイクロイックミラーおよび帯域フィルタ(図示せず)を使用して、レンズ58を介し各特定の蛍光色素分子(フルオロフォア)からの光を特定の検出器40に導くことができる。流路の整列および事前合焦ができるようにするために、蛍光のごく一部をビームサンプラー56によってCCDエリア検出器60(μEye UI ― 1545LE ? M:スウェーデンのストックホルムにあるParameter AB社製)に向け直すことができる。検体ホルダ100の下のLED62は、事前合焦用の光源として使用することができる。ピントを変えるために、検体ホルダ100と光学系とを互いに対し相対的に移動させるモータ64があってもよい。
【0112】
各検出器40からは、各検体試験の結果が一連のx―t画像として記録され、当該画像の画像分析を通して各RCPが識別される。この画像分析は、バックグラウンド減算、パターン認識、RCPおよび非特異的事象について多重蛍光物体を識別するための各検出器にまたがるパターンマッチング、およびRCP計数からなる。各試薬について、陽性検体を指定するためにRCPの数についての閾値が設定される。各画像について、合焦構造12を識別すると、画像解析アルゴリズムはピラミッド状くぼみ30に合焦していることを確認する。合焦していない画像がある場合は是正措置を行うことができる。撮像前に各画像の合焦を確認・設定するのではなく、撮像後に画像の合焦を確認することによって、当該処理が米国特許出願公開第2015/293270号広報の処理よりもかなり速くなり、さらに、本願で提案された、ピラミッド状くぼみを有する合焦構造12を用いれば、検体ホルダ100の製造がより簡単でより正確になることがよく分かるであろう。
【0113】
<別の実施例と変形例>
図6の装置の特徴は、合焦確認方法および合焦構造12に関する新規特徴を活用したままでも、変えられる場合もあることがよく分かるであろう。例えば、光学系および撮像装置40は、検体および合焦構造体30のデジタル画像を取得するための他のシステムによって置き換えられる場合もある。任意の適切な画像技術が使用される場合もある。さらに、本発明の新規特徴から得られる利点は、顕微鏡検査によるASTおよびRCPの検出に関して上述した使用例に限定されるものではなく、その代わりに他の薬剤感受性試験、ならびに画像に基づく分析のために合焦が保証された検体画像を取得することが要求される任意の分野、特に検体内にある微小物体の場合における検体分析に適用される場合もある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7