(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】電気化学セルの構成要素のためのコーティング
(51)【国際特許分類】
H01M 50/446 20210101AFI20220613BHJP
H01M 50/451 20210101ALI20220613BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20220613BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20220613BHJP
H01M 50/431 20210101ALI20220613BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20220613BHJP
H01M 50/46 20210101ALI20220613BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20220613BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20220613BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20220613BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20220613BHJP
C01G 35/00 20060101ALI20220613BHJP
C07F 9/00 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
H01M50/446
H01M50/451
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M50/431
H01M50/414
H01M50/46
H01M10/058
H01M10/052
H01M4/134
H01M4/38 Z
C01G35/00 C
C07F9/00 Z CSP
(21)【出願番号】P 2018566848
(86)(22)【出願日】2017-06-19
(86)【国際出願番号】 US2017038103
(87)【国際公開番号】W WO2017222967
(87)【国際公開日】2017-12-28
【審査請求日】2020-05-25
(32)【優先日】2016-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500287732
【氏名又は名称】シオン・パワー・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョンチュン・ワン
(72)【発明者】
【氏名】ホイ・ドゥ
(72)【発明者】
【氏名】チャリクリー・スコーディリス-ケリー
(72)【発明者】
【氏名】トレイシー・アール・ケリー
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-515893(JP,A)
【文献】特表2017-504932(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0155538(US,A1)
【文献】特開2011-210413(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0115484(US,A1)
【文献】特開2015-099776(JP,A)
【文献】特表2016-526757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40-50/497
H01M 10/05-10/0587
H01M 4/00- 4/62
C07F 9/00
C01G 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気活性材料としてリチウムを含む電極;および
該電極の表面に近接する無機材料および有機ポリマーを含むハイブリッド層
を含む、物品であって、
該ハイブリッド層が、更にフッ化リチウム
および金属タンタルを含み、
該物品が、その上に前記ハイブリッド層を付着させたセパレータを更に含み、
該電極がアノードであり、
該ハイブリッド層が、前記セパレータおよびアノードの間に配置されており、
該物品が、リチウム二次電池用である、物品。
【請求項2】
前記ハイブリッド層が、無機ナノ粒子および有機ポリマーの架橋網目構造を含む、請求項1記載の物品。
【請求項3】
前記有機ポリマーがポリエーテルアミン種を含む、請求項1または2記載の物品。
【請求項4】
前記無機ナノ粒子がアルミナナノ粒子を含む、請求項2または3記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電気化学セルの構成要素のためのコーティングが、一般的に記載されている。
【背景技術】
【0002】
電気化学セルの構成要素のためのコーティングは、保護層用などの種々の目的に有用である可能性がある。再充電可能な一次電気化学セルは、しばしば電気活性表面を保護するために、1つ以上の保護層を含む。具体的な保護層に依存して、保護層は、電気化学セル内の電解質および/または他の構成要素との相互作用から、下層の電気活性表面を分離する。保護層を形成するための技術は存在するが、電気化学セルの性能を向上させる;および/または単純化された、および/またはより信頼できる、および/またはより経済的に効率的な製造方法を提供する保護層の形成を可能にする方法が有用である。
【発明の概要】
【0003】
電気化学セルの構成要素のためのコーティングが、一般的に記載されている。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される物品は、セパレータまたは他の膜上に配置された無機材料および有機ポリマーを含有するハイブリッド層を含む。上記物品は、電極を保護するために使用することができる。関連する化合物、システム、および方法がまた、一般的に記載されている。
【0004】
1つ以上の実施形態によれば、一連の化合物が提供される。1つ以上の実施形態において、以下の式:
TaX5-y-z(A)y(OH)z
(式中、XはF、Br、Cl、またはIであり;yは0~5であり、zは0~5であり、y+zは1~5であり;Aは酸素系アニオンである。)
で表される化合物を提供する。
【0005】
1つ以上の実施形態によると、一連の物品を提供する。1つ以上の実施形態において、電極および電極の表面に近接するハイブリッド層を含む物品を提供する。上記電極は、電気活性材料としてリチウムを含む。ハイブリッド層は、無機材料および有機ポリマーを含み、更にタンタル含有化合物を含んでもよい。
【0006】
1つ以上の実施形態において、孔を含むセパレータを含む物品を提供する。上記物品は、上記セパレータの孔の少なくとも一部に含まれるタンタル含有化合物を更に含有する。
【0007】
1つ以上の実施形態によれば、一連の方法が提供される。1つ以上の実施形態において、方法は、電気化学セル中で行われる。電気化学セルは、電気活性材料としてリチウムを含む電極を備える。上記電極は、更に表面を含む。上記電気化学的セルは、上記電極の表面に近接する第1の層を含む。第1の層は、フッ化タンタル含有化合物を含む。上記方法は、電気化学セルを充電して、上記電極の表面に近接するLiFを含む第2の層を形成する工程を行うことを含む。
【0008】
1つ以上の実施形態において、提供される方法は、多孔質セパレータ上にゲル層を形成して、被覆セパレータを形成する工程を含む。上記ゲル層は、無機ナノ粒子および有機ポリマーの架橋網目構造を含む。上記方法は、上記被覆セパレータに金属ハロゲン化物を含む溶液を塗布する工程を更に含む。
【0009】
上記のように定義した実施形態の実施形態の具体的特徴を、以下により詳細に説明または検討する。
【0010】
添付の図面と併せて考慮するとき本発明の他の利点および新規な特徴は、本発明の種々の非限定的な実施形態の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。本明細書および参照により組み込まれた文書が相反するおよび/または矛盾する開示を含む場合には、本明細書が支配します。参考として援用される2つ以上の文書が互いに相反するおよび/または矛盾する開示を含む場合は、本明細書が優先するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の非限定的な実施形態は、概略的であり、一定の縮尺で描かれることを意図されていない添付の図面を参照して一例として説明する。図面において、図示の同一またはほぼ同一の各構成要素は、通常、単一の数字で表される。明瞭にするために、必ずしもすべての構成要素は、すべての図においてラベル付け、また図は、当業者が本発明を理解できるようにする必要がない場合に示された本発明の各実施形態の全ての構成要素である。図面において:
【
図1】いくつかの実施形態に従った、セパレータ層の例示的な概略図である。
【
図2】いくつかの実施形態に従った、被覆セパレータ層の例示的な概略図である。
【
図3】いくつかの実施形態に従った、被覆セパレータ層の例示的な概略図である。
【
図4】いくつかの実施形態に従った、強化された被覆セパレータ層の例示的な概略図である。
【
図5】いくつかの実施形態に従った、セパレータを被覆するのに使用される前駆体溶液の配合設計の例示的な工程系統図である。
【
図6】いくつかの実施形態に従った、強化された被覆セパレータ層の形成の例示的な工程系統図である。
【
図7B】リチウムアノードの表面のエネルギー分散型X線分析(EDX)元素マッピングの例示的な画像である。
【
図7C】リチウムアノードの例示的なEDXスペクトルである。
【
図8】未被覆セパレータを含むセルおよびいくらかの実施形態に従った、強化されたコーティング層を有するセパレータを含むセルの性能を比較するグラフ図である。
【
図9】未被覆セパレータを含むセルおよびいくらかの実施形態に従った、強化されたコーティング層を有するセパレータを含むセルの性能を比較するグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
電気化学セルの構成要素のためのコーティングが、一般的に記載されている。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される物品は、セパレータまたは他の膜上に配置された無機材料および有機ポリマーを含有するハイブリッド層を含む。上記物品を、電極を保護するために使用してもよい。1つ以上の実施形態によれば、電気化学セル中のコーティングおよび他の用途として有用であるハイブリッド層のための組成物(例えば、無機材料および有機ポリマーを含有する層)が、一般的に開示されている。1つ以上の実施形態によれば、組成物および/またはコーティングを製造するための方法もまた、一般的に開示されている。例えば、ゾル‐ゲル法によって形成された1つ以上の層を含む物品が、一般的に記載されている。
【0013】
1つ以上の実施形態によれば、開示された物品は、電気化学セルを形成しても、または電気化学セルに組み立てられてもよい。1つ以上の実施形態によれば、上記物品は、同様に電気活性材料としてリチウムを含む電極(例えば、アノード)を含んでもよい。上記物品は、電極の表面に近接する層を更に含んでもよい。上記層は、金属含有化合物(例えば、タンタル含有化合物)を含有するハイブリッド層を含んでもよい。
【0014】
1つ以上の実施形態によれば、開示された物品は、孔を含むセパレータを含む。上記物品は、上記セパレータの孔の少なくとも一部に含まれる金属含有化合物(例えば、タンタル含有化合物)を更に含有する。
【0015】
1つ以上の実施形態によれば、層(例えば、ハイブリッド層)を、(例えば、リチウム電池またはリチウムイオン電池の)電気化学セルにおける電極(例えば、リチウムアノード)の保護コーティングとして使用するためのセパレータ層上に付着させてもよい。1つ以上の実施形態によれば、開示された層は、それらの材料に関連した安全上のリスクを低減することによって、電気化学セルの安全性を改善し、電気化学セルに有用な材料の使用を容易にすることができる。例えば、リチウム金属は、非常に高い理論比容量(3860mAh/g)、低い密度(0.59g/cm3)および最も低い負の電気化学ポテンシャル(標準水素電極に対して-3.040V)を有する。しかしながら、電気化学セル内の電極としてのリチウム金属の利用は、繰り返し充放電工程時のリチウムデンドライトの成長により生じる潜在的な内部短絡に関連する安全上の問題によって制限されてきた。
【0016】
1つ以上の実施形態によれば、コーティングは、リチウム電池またはリチウムイオン電池におけるリチウムアノードの保護層として使用するためのセパレータ層上に直接形成してもよい。一般的に本明細書中に開示される方法およびコーティングは、スパッタリング、電子ビーム蒸着などの真空蒸着法によってコーティングを形成するなどの、他のアプローチの代替として役に立つ。
【0017】
1つ以上の実施形態によれば、保護コーティングは、化学結合によってそれらの間に3次元架橋を有する有機ポリマーおよび無機セラミックナノ粒子のナノ複合材料を含む有機‐無機ハイブリッドコーティングである。1つ以上の実施形態によれば、コーティングは非常に柔軟かつ堅牢であり、破壊および/またはセパレータ基材から剥離することなく、セル組み立て時の取り扱いおよびセルのサイクル時の体積変化に耐えることができる。
【0018】
1つ以上の実施形態によれば、コーティングはセパレータ層表面のすぐ下の孔に部分的に浸透して、セパレータ層基材との接着性を向上させる。1つ以上の実施形態によれば、コーティングは、多孔質であり、膨潤性であり、イオン導電性材料で構成されており、従って上記セルに対して比較的低いインピーダンスを導入している。
【0019】
1つ以上の実施形態によれば、保護コーティングを作製する方法は、ゾル‐ゲル法に基づくものである。ゾル‐ゲル法の1つ以上の工程は、低温(例えば、80℃以下)で実施してもよい。上記方法は、真空を組み込むことなく行うことができるので、真空法に関連するコストを節約する。1つ以上の実施形態によれば、溶液用配合物は溶媒として、安価であり、十分に入手可能であり、環境に優しい、水を使用する。
【0020】
1つ以上の実施形態によれば、上記コーティング方法は、別の方法と比較して、ピンホールおよび角欠けなどの欠陥の形成の低減を促進し、結果的に高い再現性が得られ、セルの生産における歩留まりを向上させる。
【0021】
1つ以上の実施形態によれば、開示された方法は、保護コーティングに金属ハロゲン化物溶液を塗布する工程を含み、それによってコーティング中に残存するヒドロキシル基(‐OH)基および水をセルの性能に有害でない化学種に変換し、電気化学セル(例えば、リチウム電池またはリチウムイオン電池)の製造方法にゾル‐ゲル法を組み込むことに対する長く未解決の問題を解決する。
【0022】
工程時にTaF5を含む金属ハロゲン化物溶液の使用を組み込む1つ以上の実施形態によれば、TaF5を塗布する工程により、有利に、最終的に、結果として電極の表面上にフッ素含有種を組み込むことになる。このような溶液は、上記セルの初期充電時にリチウムアノードの表面上にフッ化リチウム(LiF)を含む保護層を形成するための固体形態のフッ素の供給源として役に立つ。
【0023】
工程時にTaF5を含む金属ハロゲン化物溶液の使用を組み込む1つ以上の実施形態によれば、TaBr5を塗布する工程により、有利に、結果としてコーティング中に臭化物イオンを組み込むことになる。結果として臭化物種は、電気化学セル内の溶液中に導入される。特定の理論に限定されるものではないが、この方法は最終的に、セル中のリチウムデンドライト形成を阻害するBr2/Br-レドックスシャトルの形成をもたらし、従って、セルのサイクル寿命をかなり延ばすと考えられている。
【0024】
1つ以上の実施形態によれば、新規な化合物および物品が開示されている。
【0025】
1つ以上の実施形態によれば、新規な物品は、孔を含むセパレータ;およびセパレータの孔の少なくとも一部に含まれているタンタル含有化合物を含んでもよい。
【0026】
図1には、1つ以上の実施形態に従った、例示的なセパレータ100を示す。セパレータ100は、ポリマー材料110および孔115を含んでもよい。上記セパレータ100は、ミクロ多孔質セパレータであってもよい。上記セパレータは、様々な無機、有機、および天然材料から製造されてもよく、いくつかの実施形態によれば、直径が50~100Åより大きい孔を一般的に含んでもよい。いくつかの実施形態では、例示的なセパレータ層は、商品名「CELGARD(登録商標)」で市販されている。
図1には、以下に記載の1つ以上のコーティング(例えば、ハイブリッド層)を塗布する前のセパレータ100を示す。
【0027】
図2は、1つ以上の実施形態に従った、形成の第1段階後の例示的な被覆セパレータ200を示す。上記被覆セパレータ200は、例えば、
図1に示すようなセパレータ100および、いくつかの実施形態に従ってゾル‐ゲル法により形成してもよいハイブリッド層220を含む。ハイブリッド層220は、孔225を含んでもよい。上記ハイブリッド層(コーティング層とも呼ぶ)220は、1つ以上の無機材料(例えば、無機ナノ粒子種)および1つ以上の有機ポリマー種を含んでもよく、従って、本明細書中でハイブリッド層と呼ばれてもよい。いくつかの実施形態において、上記無機材料は、ハイブリッド層中の上記有機ポリマーに架橋された粒子の形態である。上記ハイブリッド層は、有機‐無機ハイブリッドナノ複合材料を形成することができる。
【0028】
図3には、例示的な物品300を示す。いくつかの実施形態において、上記物品300は、形成の第2段階後に、被覆セパレータを含んでもよい。物品300は、材料110(例えば、ポリマー材料)を含むセパレータ100および孔115を含む。
図3に示す実施形態では、改質ハイブリッド層220を形成するために、ハイブリッド層(例えば、
図2の層220)を改質した。上記改質ハイブリッド層220を、セパレータ100に近接して配置してもよい。上記改質ハイブリッド層220は、更なる金属含有化合物(例えば、タンタル含有化合物)330を含むハイブリッド層である。上記金属含有化合物330(例えば、タンタル含有化合物)を、上記層220中の異なる反応部位に配置してもよい。上記層220は、孔225もまた含んでもよい。いくらかの実施形態によれば、改質ハイブリッド層220を製造するための方法は、後述のように、ハイブリッド層に金属ハロゲン化物溶液を塗布する工程を含む。
図3には明確には示されていないが、上記ハイブリッド層220はまた、いくらかの実施形態によれば、少なくとも部分的に、セパレータ100の孔115内に拡張していてもよい。いくつかの実施形態では、この拡張により、ハイブリッド層220およびセパレータ100の間の接着性の向上を支援する。金属含有化合物330(例えば、タンタル含有化合物)が、ハイブリッド層220によって被覆されていない多孔質部115内のセパレータ100に更に接着してもよい。
【0029】
いくらかの実施形態によれば、以下の化学式:
TaX5-y-z(A)y(OH)z
(式中、Xはハロゲン種であり;yは0~5であり、zは0~5であり、y+zは1~5であり;Aは酸素系アニオンである。)
で表される新規なタンタル含有化合物が開示されている。
【0030】
いくつかの実施形態では、「z」の値は0であってもよい。「A」は、電子供与体として働く酸素系リガンド種であってもよい。いくつかの場合、「A」はエノラートであってもよい。いくつかの実施形態では、「A」は、炭素数1~8を有するアルコキシド、アセチルアセトネート、2‐エチルヘキシルオキシド、およびアセテートからなる群から選択される化学種であってもよい。いくつかの実施形態では、「A」はOCH
3であってもよい。前述のように、「X」はハロゲン種である。いくつかの実施形態では、「X」は、フッ素であってもよい。いくつかの実施形態では、「X」は、臭素であってもよい。再び
図3を参照すると、上記化合物330は、上記式を有する1つ以上の化合物を含んでもよい。
【0031】
いくらかの実施形態によれば、タンタル含有化合物は、以下の化学式:
Al‐O‐TaX
5-y-z(A)
y(OH)
z
(式中、XはF、Br、Cl、またはIであり;yは0~5であり、zは0~5であり、y+zは1~5であり;Aは酸素系アニオンである。)
にしたがって、アルミニウムおよび酸素(例えば、本明細書中に記載のセパレータの一部)に結合していてもよい。いくつかの実施形態では、「z」の値は0であってもよい。「A」は、電子供与体ドナーとして働く酸素系リガンド種であってもよい。「A」は、エノラートであってもよい。
いくつかの実施形態では、「A」は、炭素数1~8を有するアルコキシド、アセチルアセトネート、2‐エチルヘキシルオキシド、およびアセテートからなる群から選択される化学種であってもよい。いくつかの実施形態では、「A」はOCH
3であってもよい。前述のように、「X」はハロゲン種である。いくつかの実施形態では、「X」は、フッ素であってもよい。いくつかの実施形態では、「X」は、臭素であってもよい。再び
図3を参照すると、上記化合物330は、上記式を有する1つ以上の化合物を含んでもよい。
【0032】
有利なことに、上記の2つの一般的な化合物の各々は、全ての他の要因は等しく、金属ハロゲン化物の塗布工程が存在しないゾル‐ゲル法から得られるものなどの別の化合物に比べて、例えば、電気化学セルの動作中に、低減された反応性を示す。上記化合物の利点としては、(1)コーティング工程の間、周囲の湿気に対してより安定であること;(2)一旦、電気化学セルの内部に組み立てられると、これらの誘導体は、穏やかにまたは制御可能にアノード(例えば、リチウムアノード)表面と反応することができること、が挙げられる。対照的に、金属ハロゲン化物塗布工程が存在しない、いくつかの別の実施形態においては、反応性化合物は、激しくまたは制御不能に反応して結果的にセルの非常に高いインピーダンスをもたらす、ハイブリッド層の表面上に存在する。
【0033】
1つ以上の実施形態によれば、電気化学セルを構成することができる、または電気化学セルに組み立てることができる物品が開示されている。上記物品は、電極を含んでもよい。上記電極は、電気活性材料としてリチウムを含んでもよい。いくつかの実施形態では、上記電極はアノードである。上記物品は、無機材料および有機ポリマーを含むハイブリッド層などの、電極の表面に近接する層を更に含んでもよい。上記層(例えば、ハイブリッド層)は、本明細書中に記載されるようなタンタル含有化合物を含んでもよい。
【0034】
例えば、
図4には、例示的な物品400を示す。上記物品400は、電気化学セルを含んでもよい。上記物品400は、材料110および孔115を含むセパレータ100を含んでもよい。上記物品は、金属含有化合物330(例えば、タンタル含有化合物)を含むハイブリッド層220を含んでもよい。上記物品は、第1の電極440および/または第2の電極450を含んでもよい。第1の電極440はアノードであってもよい。第2の電極450はカソードであってもよい。第1の電極440および/または第2の電極450は、1つ以上の実施形態によれば、電気活性材料としてリチウムを含んでもよい。ハイブリッド層220は、第1の電極440および/または第2の電極450の表面に近接してもよい。電解液は、上記セパレータの孔115またはハイブリッド層220の孔225の中にあってもよい。
【0035】
1つ以上の実施形態によれば、基材(例えば、多孔質セパレータ)上にハイブリッド層コーティングを形成する方法は、一般的に開示されている。更に、化合物(例えば、タンタル含有化合物)を含むハイブリッド層を形成する方法が一般的に開示されている。上記基材は、電気化学セルでの使用のために設計されたセパレータであってもよい。上記ハイブリッド層は、保護コーティングとして機能することができる。この方法は、被覆セパレータを形成するために、無機ナノ粒子および有機ポリマーの架橋網目構造を含むハイブリッド層のコーティングを多孔質セパレータ上に形成する工程を含んでもよい。改質または強化されたハイブリッド層を形成するために、金属ハロゲン化物を含む溶液を被覆セパレータに塗布してもよい。
【0036】
ハイブリッド層のコーティングを形成する工程には、基材(例えば、多孔質セパレータ)に前駆体溶液を塗布し、上記前駆体溶液を固体ハイブリッド層に硬化させることを含んでもよい。
【0037】
例えば、
図5には、無機材料および有機ポリマーを含む前駆体溶液を形成し、前駆体溶液を熟成させて無機ナノ粒子および有機ポリマーの架橋網目構造を形成するための代表的な方法500のための概略工程系統図を示す。上記前駆体溶液および/または得られるハイブリッド層を、ゾル‐ゲル法により形成してもよい。
【0038】
用語に関して、上記コーティング材料は、一般的に、基材(例えば、セパレータ)に塗布する前および塗布する時の前駆体溶液を意味する。上記コーティング材料は、一般的に、基材に塗布された後のゲル層を意味するが、硬化前である。上記コーティング材料は、一般的には、固体状態である硬化後のハイブリッド層(無機材料および有機ポリマーを含む層)を意味する。金属ハロゲン化物溶液をコーティング材料に塗布する実施形態では、硬化後の強化された材料は、一般的に、タンタルが異なる金属に置換されてもよいタンタル含有化合物を含むハイブリッド層、またはハロゲン化されたハイブリッド層(例えば、フッ素化されたハイブリッド層または臭素化されたハイブリッド層)を意味する。ハイブリッド層の語はまた、依然としてゲル状態であるコーティング材料を意味する。液体からゲル、固体まで、様々な段階への移行は、連続的に発生する可能性があるので、いくらかの層は、複数の物理的状態を有してもよい。
【0039】
図5の段階510において、溶媒(例えば、水)中に無機ナノ粒子(例えば、アルミナナノ粒子)のコロイド分散液を含む溶液を合成してもよい。いくつかの実施形態において、溶媒は水であってもよいが、他の好適な溶媒(例えば、水性溶媒)を使用してもよい。
【0040】
上記溶液は、1種以上の無機ナノ粒子を含んでもよい。例えば、上記溶液は、アルミナナノ粒子、例えば、AlO(OH)を含んでもよい。上記アルミナナノ粒子は、特定の結晶相(例えば、ベーマイト)を有してもよい。代替的にまたは付加的に、上記溶液は、酸化ジルコニウム(ZrO2)を含んでもよい。上記溶液は、同様に、他の材料を含んでもよい。
【0041】
上記無機ナノ粒子は、平均最大断面寸法を有してもよい。いくつかの実施形態では、溶液中の無機ナノ粒子の平均最大断面寸法は約14nmであってもよい。いくつかの実施形態において、上記平均最大断面寸法は、50nm以下、25nm以下、10nm以下、5nm以下、または1nm以下であってもよい。いくつかの実施形態では、上記平均最大断面寸法は、1nmより大きい、5nmより大きい、10nmより大きい、または25nmより大きくてもよい。上記範囲の組み合わせ(例えば、25μm以下および10nmより大きい平均最大断面寸法)も可能である。他の値も可能である。
【0042】
複数の粒子の平均最大断面寸法を、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)で粒子の画像を形成することによって、決定してもよい。上記画像は、複数の粒子の全体的な寸法に依存して、約10倍から約100,000倍の間の倍率で取得してもよい。当業者であれば、試料の画像を形成するための好適な倍率を選択することができる。複数の粒子の平均最大断面寸法は、画像中の各粒子の最長断面寸法を取得し、上記最長断面寸法を平均することにより(例えば、50個の粒子に対して上記最長断面寸法を平均することにより)決定することができる。
【0043】
上記溶液は、特定の濃度の無機ナノ粒子を有してもよい。いくつかの実施形態では、溶液中の無機ナノ粒子の濃度は、上記溶液の少なくとも10%重量および80重量%以下であってもよい。例えば、いくつかの実施形態では、無機ナノ粒子の濃度は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、または70%であってもよい。いくつかの実施形態では、無機ナノ粒子の濃度は、80%、70%、60%、50%、40%、30%、または20%以下であってもよい。上記範囲の組合せ(例えば、少なくとも30%および50%以下)も可能である。他の濃度も可能である。
【0044】
段階520において、架橋剤を、コロイド溶液中に導入する。コロイド溶液に導入される架橋剤は、予め加水分解されたGLYMO(グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)を含んでもよい。GLYMOは、反応性有機エポキシ基と加水分解性無機メトキシシリル基を有する2官能性オルガノシランである。その反応性の二面性により、GLYMOを無機材料と有機ポリマーの両方に化学的に結合させることを可能にし、それによって架橋剤として機能する。代替的にまたは付加的に、上記架橋剤は、3(グリシジルオキシプロピル)トリエトキシシランおよび3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートのいずれかを含んでもよい。他の2官能性架橋剤を使用してもよい。
【0045】
溶液中の濃度が、いくつかの実施形態によれば、上記溶液の少なくとも0.01重量%および20重量%以下となるように、架橋剤をコロイド溶液に導入してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、架橋剤の濃度は、少なくとも0.01%、0.1%、1%、2%、5%、10%、または15%であってもよい。いくつかの実施形態では、架橋剤の濃度は、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、2%以下、1%以下、または0.1%以下であってもよい。上記範囲の組合せ(例えば、少なくとも1%および2%以下)も可能である。他の濃度も可能である。
【0046】
段階530において、上記混合物を撹拌する。上記混合物を、例えば、結合を促進するのに好適な時間、例えば約30分間撹拌してもよい。得られた混合物は、無機ナノ粒子(例えば、アルミニウムナノ粒子)に結合した架橋剤(例えば、GLYMO)を含んでもよい。
【0047】
段階540において、有機ポリマー種を上記混合物に導入する。いくつかの実施形態では、上記有機ポリマー種は、ポリエーテルアミン種であってもよい。例えば、上記ポリマー種は、商標JEFFAMINE(登録商標)ED 2003で市販されている化合物であってもよい。JEFFAMINE EDシリーズの製品は、主に、ポリエチレングリコール(PEG)骨格に基づくポリエーテルジアミンである。上記ポリマー種は、水溶性であってもよい。ポリマー種として上記溶液に代替的にまたは付加的に添加してもよい他の成分には、限定されないが、ポリビニルアルコール(例えば、ポリアルキルアルコール)、ポリエチレングリコール(例えば、ポリアルキレングリコール)、またはポリエチレンオキシド(例えば、ポリアルキレンオキシド)が挙げられる。
【0048】
上記溶液中のその濃度が、いくつかの実施形態によれば、上記溶液の少なくとも1重量%および80重量%以下となるように、上記ポリマー種を上記溶液に導入してもよい。例えば、いくつかの実施形態において、上記ポリマーの濃度は、少なくとも1%、10%、20%、30%、50%、60%、または70%であってもよい。いくつかの実施形態では、上記ポリマーの濃度は、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、30%以下、20%以下、または10%以下であってもよい。上記範囲の組合せ(例えば、少なくとも1%および10%以下)も可能である。他の濃度も可能である。
【0049】
上記ポリマー種の添加後、架橋を促進するのに十分な時間、例えば、約60分間、上記溶液を撹拌してもよい。
【0050】
その後、上記溶液を一定期間熟成させてもよい。いくつかの実施形態では、上記溶液を約1日間熟成させる。熟成すると、上記溶液は、無機ナノ粒子と有機ポリマーの架橋網目構造を形成する。
【0051】
得られる溶液(または前駆体溶液)を次いで、保護コーティングを形成するための方法の一部として、(固体層を形成するために後に硬化されてもよい)ゲル層を形成するために、基材(例えば、多孔質セパレータ)に塗布してもよい。例えば、上記基材は、
図1に示され、かつ前述のようなセパレータであってもよい。上記方法は、多孔質セパレータ上に、無機ナノ粒子および有機ポリマーを含むゲル層などのコーティングを形成する工程を含んでもよい。上記材料の架橋により、固体の被覆セパレータを形成するために、結果的に無機ナノ粒子と有機ポリマーの架橋網目構造をもたらすことができる。金属ハロゲン化物を含む溶液を、次いで、被覆セパレータに塗布してもよい。
【0052】
例えば、
図6には、1つ以上の実施形態によれば、セパレータ上にゲル層を形成する代表的な方法600の工程系統図を示す。
【0053】
段階610において、
図5に関連して前述したように、無機ナノ粒子および有機ポリマーの架橋網目構造を含む前駆体溶液を、ゾル‐ゲル法により合成してもよい。
【0054】
段階620において、段階610で形成された溶液をセパレータ上に付着させて、上記セパレータ上にハイブリッドゲル層を形成してもよい。上記溶液を、多数の方法のいずれかにより、例えば、ドロップキャスティング法またはドクターブレード技術によって、上記セパレータ上に付着させてもよい。
【0055】
上記セパレータを上記溶液でコーティングした後、上記コーティングを十分な時間乾燥させてもよい。
【0056】
例えば、コーティングがアルミナナノ粒子を含むいくらかの実施形態において、上記コーティングは、化学種が容易に通過できるように、比較的高い気孔率を有してもよく、それは吸着または化学反応のための部位として機能することができる非常に高い内部表面積を有する。
【0057】
いくつかの実施形態によれば、基材として使用されるセパレータは、熱に敏感であってもよく、従って、潜在的に損傷を受けることなく、ある一定の温度を超える加熱には一般的に適していない。いくつかの実施形態では、上記コーティングおよび/またはセパレータの熱に敏感な性質により、被覆セパレータを、ある一定の温度、例えば約80℃を超えて安全に加熱することはできない。結果として、いくつかの実施形態において、長時間の真空乾燥後でさえ、上記コーティング中にかなりの量のヒドロキシル基(‐OH)および残留水が存在してもよい。これらの残りのヒドロキシル基および残留水分子は、セルのサイクル寿命に有害である。
【0058】
金属ハロゲン化物を含む溶液を被覆セパレータに塗布することにより、残留ヒドロキシル基およびと残留水を(例えば、異なる種に変換された)コーティングから除去することができることが、本開示の文脈の中で発見された。金属ハロゲン化物溶液を、当業者に既知の任意の技術により塗布してもよい。例えば、被覆セパレータを金属ハロゲン化物溶液中に浸漬してもよく、或いは、金属ハロゲン化物溶液を、被覆セパレータ上に、噴霧、刷毛塗り、拭き取り塗りなどを行ってもよい。この知見は、多くの利点を提供する。例えば、前述したように、他の技術よりも経済的かつ効果的である、ゾル‐ゲル法によって、コーティングをセパレータに適用することを可能にする。熱に弱いが、別のセパレータよりも効果的および/または経済的であるセパレータと共に、ゾル‐ゲル法を使用することを可能にする。更に、付加的な利点がまた、被覆セパレータに金属ハロゲン化物を塗布すること、例えば、後述のように、電気化学セルの動作時に、溶液中またはセパレータ上のコーティングの1つ以上の層に組み込まれた有利な化学種の形成から生ずることがある。
【0059】
段階630において、金属ハロゲン化物を含む溶液を、組み合わせたセパレータおよび層(即ち、被覆セパレータ)に塗布してもよい。金属ハロゲン化物を含む溶液に、被覆セパレータを完全にまたは部分的に浸漬することにより、上記溶液を塗布してもよい。あるいは、上記溶液を、被覆セパレータ上に、噴霧、刷毛塗り、拭き取り塗りまたは他の既知の技術によって被覆セパレータ上に塗布してもよい。いくつかの実施形態において、上記金属ハロゲン化物溶液を、混合を促進するため、塗布前または塗布時に撹拌してもよい。
【0060】
いくつかの実施形態において、金属ハロゲン化物溶液用の溶媒には、好適な有機溶媒、例えば、無水メタノールを含んでもよい。他の無水アルコールなどの他の溶媒を使用してもよい。いくつかの実施形態において、金属ハロゲン化物の金属成分は、タンタルを含んでもよい。(例えば、金属ハロゲン化物に)使用してもよい他の金属には、ニオブ、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、マンガン、モリブデン、タングステン、スズ、およびアンチモンが挙げられる。いくつかの実施形態では、ハロゲン成分はフッ素または臭素を含んでもよい。使用してもよい他のハロゲンには、塩素またはヨウ素が挙げられる。いくつかの実施形態において、金属ハロゲン化物は、式MX5(式中、Mは、Ta、Nb、Ti、Zr、HF、Mn、Mo、W、SnおよびSbからなる群から選択される金属であり、XはF、Br、Cl、およびIからなる群から選択されるハロゲンである。)を有する化学種を含む。例えば、金属ハロゲン化物は、TaF5またはTaBr5を含んでもよい。他の金属ハロゲン化物種を用いてもよい。
【0061】
いくつかの実施形態において、上記金属ハロゲン化物は、金属ハロゲン化物溶液中の特定の濃度を有してもよい。金属ハロゲン化物溶液中の金属ハロゲン化物の濃度は、いくつかの実施形態によれば、少なくとも0.001Mおよび2M以下であってもよい。例えば、いくつかの実施形態において、金属ハロゲン化物の濃度は、少なくとも0.001M、少なくとも0.01M、少なくとも0.1M、少なくとも0.5M、少なくとも1.0M、少なくとも1.25M、または少なくとも1.5Mであってもよい。いくつかの実施形態において、金属ハロゲン化物の濃度は、2M以下、1.5M以下、1.25M以下、1.0M以下、0.5M以下、0.1M以下、または0.01M以下であってもよい。上記範囲の組み合わせ(例えば、少なくとも0.1Mおよび0.5M以下)も可能である。他の濃度も可能である。被覆セパレータを金属ハロゲン化物溶液中に浸漬するいくつかの実施形態において、試料を、溶液から引き出される前に十分な時間、例えば、1分間浸漬してもよい。
【0062】
いくつかの実施形態において、金属ハロゲン化物溶液を、乾燥室環境において、被覆セパレータに塗布してもよい。
【0063】
金属ハロゲン化物溶液を被覆セパレータに塗布後、強化された被覆セパレータは、ある一定時間乾燥させてもよい。
【0064】
被覆した基材(例えば、被覆セパレータ)を、金属ハロゲン化物への曝露後、硬化するため真空オーブンに入れてもよい。上記オーブンに設定された温度は、セパレータ基材の要求に部分的に基づいていてもよい。例えば、いくつかの基材は、熱に敏感であってもよく、従って、オーブンを一定温度以下に保つことが必要である。上記オーブンを、材料の要求に基づいた十分な温度、例えば約80℃以下、約75℃以下、約70℃以下、約60℃以下、または約50℃以下に設定してもよい。上記物品を、十分な時間、例えば12時間または24時間硬化してもよい。
【0065】
特定の理論に拘束されるものではないが、金属ハロゲン化物がタンタルおよびフッ素または臭素を含む実施形態では、以下の式:
TaX5+yCH3OH→TaX5-y(OCH3)y+yHX,
TaX5-y(OCH3)y+zH2O→TaX5-y-z(OCH3)y(OH)z+zHX
(式中、XはF、Br、Cl、またはIであり;yは0~5であり、zは0~5であり、y+zは1~5である。)
は、原料化合物、即ち、TaX5からの反応工程を説明するために使用することができると考えられている。
【0066】
同様の式を、例えば、Taを本明細書中に記載された金属Mと置き換えた、タンタル以外の金属、または別のハロゲン化物に適用する。また、他の実施形態では、CH3OHを、本明細書中に記載されるような、1~8の炭素数を有するアルコキシドの形成をもたらす可能性のある好適なアルコールに置き換えてもよい。
【0067】
この段階によって、コーティング中の残存ヒドロキシル基および水の実質的な部分は、一連の非加水分解ゾル‐ゲル反応によって完全に変換されたと考えられる。
【0068】
被覆セパレータを乾燥させた後、使用するための準備、例えば電気化学セルに組み込むための準備ができた状態とすることができる。
【0069】
前述した方法によって、セパレータ上のハイブリッド層コーティングを形成してもよい。上記ハイブリッド層コーティングは、無機ナノ粒子および有機ポリマーの架橋網目構造を含んでもよい。
【0070】
特定の理論に拘束されるものではないが、ハイブリッド層がセパレータ表面下の孔中に部分的に浸透され、ハイブリッド層およびセパレータの間の強力な接着力を促進すると考えられる。
【0071】
動作中に、電気化学セルは放電および充電のサイクルプロセスを経てもよい。リチウムを含むアノードの存在下での充電の作用により、既に説明したものに加えて化合物を生成する反応を引き起こす可能性がある。
【0072】
いくつかの実施形態では、タンタル酸リチウム(LiTaO3)を含む層を、上記セルのサイクルの間、例えば、被覆セパレータの一部の上に形成してもよい。このような層を形成する方法には、アルミニウム、酸素およびタンタルを含む有効量の化合物を有効量のリチウムに暴露してタンタル酸リチウムを形成する工程を含んでもよい。
【0073】
いくらかの実施形態によれば、電池のサイクリングに次いで、リチウムイオン伝導性材料(例えば、LiTaO3)を形成してもよい。リチウムイオン伝導性材料(例えば、LiTaO3)を、Al‐O‐Taの結合に基づいて、AlO(OH)ナノ粒子の表面上に化学的に吸着させてもよい。
【0074】
特定の理論に拘束されるものではないが、タンタル酸リチウムの形成は、3段階の反応工程を含んでもよい。
【0075】
段階1において、非晶質のTa2O5を、以下の反応:
2TaX5-y(OCH3)y+5H2O → Ta2O5+2yCH3OH+(10-2y)HX,
2TaX5-y(OCH3)y(OH)z+(5-2z)H2O → Ta2O5+2yCH3OH+(10-2y-2z)HX
(式中、XはF、Br、Cl、またはIであり;yは0~5であり、zは0~5であり、y+zは1~5である。)
により、加水分解によって形成する。
【0076】
段階2において、酸化リチウム物を、以下の反応:
Ta2O5+10Li++10e- → 2Ta+5Li2O
により、電気化学リチオ化によって形成する。
【0077】
段階3において、タンタル酸リチウム(LiTaO3)を、以下の反応:
Li2O+Ta2O5 → 2LiTaO3
により、形成する。
【0078】
いくつかの実施形態によれば、フッ化リチウム(LiF)を含む層を形成するための方法を開示する。上記方法を、電気化学セル中で行ってもよい。上記電気化学セルは、電気活性材料としてリチウムを含む電極を含んでもよい。上記電極は、更に表面を含んでもよい。上記電気化学セルは更に、電極の表面に近接する(例えば、隣接または直接的に隣接する)第1の層を含んでもよい。第1の層は、フッ化タンタル含有化合物を含んでもよい。上記方法は、フッ化リチウムを含む第2の層を形成するために、電気化学セルのサイクル工程(例えば、充電および/または放電)を含んでもよい。第2の層は、電極の表面に近接していてもよい。
【0079】
いくつかの実施形態では、フッ化リチウムを含む層は、電極の表面(例えば、リチウム金属層の表面)を不動態化する。フッ化リチウム層を、樹状突起形成からリチウムアノードを効果的に保護することができる。
【0080】
本明細書中に記載されるように、金属フッ化物溶液を被覆セパレータに塗布した後、かなりの量のフッ素含有種を、コーティング層に充填する。フッ化物充填量を、上記溶液の濃度、および/または浸漬の滞留時間を調節することによって制御してもよい。上記コーティングの高い気孔率および内部表面積は、潜在的な吸着および/または化学反応のための部位を多数設けることにより、フッ化物充填を容易にする。フッ化物の存在により、例えば、上記セルの初期充電時および/または上記セルのサイクル時に、電極(例えば、リチウムアノード)の表面上に形成されるフッ化リチウムの層をもたらすことができる。
【0081】
LiFの形成は、以下の反応:
TaF5-x(OCH3)x+5Li++5e- → Ta+(5-x) LiF+xCH3OLi
(式中、xは0~4である。)
に従って、電気化学リチオ化によるものであってもよい。
【0082】
塗布された金属ハロゲン化物溶液のハロゲン種が臭素(例えば、TaBr5)であるいくつかの実施形態では、上記セルの動作(例えば、サイクル)の間、臭化リチウムを含む溶液を生成してもよい。臭化リチウム溶液は、レドックスシャトル、リチウムイオン電池の安全性を高めるための過充電保護機構としてはたらくことができる電解液添加剤として機能することにより、リチウムアノードを保護するのを助けることができる。Br2/Br-レドックスシャトルは、セル内でのリチウムデンドライトの形成を阻害または低減し、セルのサイクル寿命を延ばすことができる。一方、リチウムアノードに隣接する保護層(例えば、セパレータを被覆するハイブリッド層)は、レドックスシャトルの大部分または実質的に全てがリチウムアノードを通って浸透することを防止することができ、改善されたサイクル効率を促進する。
【0083】
いくつかの実施形態によれば、開示されたセパレータは、ポリマー材料を含んでもよい。本明細書中に記載されているように、自立型多孔質セパレータ層を、その上にハイブリッド層が付着された(deposited)ポリマーマトリックスとして使用してもよい。多孔質セパレータ層は、イオンに対して伝導性または非伝導性であってもよい。上記層を通過する穴経路は、いくつかの実施形態において、非常に蛇行していてもよい。いくらかの実施形態では、上記層を通過する穴経路は、上記層を完全に通過する。この自立層を、次いでハイブリッド層で被覆してもよい。
【0084】
前述および本明細書中に記載の電気化学セルを含むいくつかの実施形態において、セパレータはイオン伝導性であり、セパレータの25℃での平均イオン伝導度は、好ましくは、少なくとも10-7[S/cm]である。例えば、(即ち、乾式セパレータ用)電解質および/または溶媒の不存在下で、1kHzで動作する導電性ブリッジ(即ち、インピーダンス測定回路)を使用して、導電率(例えば、乾燥導電率)を、室温(例えば、25℃)で測定してもよい。上記セパレータは、25℃で少なくとも約104[Ω・m]のバルク電気抵抗率を有してもよい。平均イオン伝導率およびバルク電気抵抗率の他の範囲を、以下により詳細に説明する。
【0085】
前述および本明細書中に記載の電気化学セルを含むいくつかの実施形態において、セパレータおよびセパレータと接触するハイブリッド層は複合体を構成し、上記複合体は、好ましくは5μm~40μmの厚さを有する。上記複合体は、いくつかの実施形態では、自立構造体であってもよい。他の厚さを、以下に、より詳細に説明する。
【0086】
前述および本明細書中に記載の電気化学セルを含むいくつかの実施形態では、セパレータおよび上記セパレータと接触するハイブリッド層の間の接着強度は、少なくとも350[N/m]である。他の範囲または接着力を、以下に、より詳細に説明する。
【0087】
不織布繊維などの材料(例えば、ナイロン、綿、ポリエステル、ガラス)、ポリマーフィルム(例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)、ポリ(塩化ビニル)(PVC))、および天然に存在する物質(例えば、ゴム、アスベスト、木材)を周囲温度および低温(<100℃)で動作する電池中の微孔性セパレータに使用してもよい。微多孔ポリオレフィン(PP、PE、またはPPとPEの積層体)(例えば、Celgard 2325)を、リチウム系非水電池に使用してもよい。
【0088】
本明細書中に記載されるセパレータは、様々な材料から形成してもよい。上記セパレータは、いくつかの場合において、ポリマーであってもよく、または他の場合には、無機材料(例えば、ガラス繊維濾紙)から形成されてもよい。好適なセパレータ材料の例には、それらに限定されないが、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリ(ブテン‐1)、ポリ(n‐ペンテン‐2)、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン)、ポリアミン(例えば、ポリ(エチレンイミン)およびポリプロピレンイミン(PPI));ポリアミド類(例えば、ポリアミド(Nylon)、ポリ(ε-カプロラクタム)(Nylon 6)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(Nylon 66))、ポリイミド類(例えば、ポリイミド、ポリニトリル、およびポリ(ピロメリットイミド‐1,4‐ジフェニルエーテル)(Kapton;登録商標)(NOMEX;登録商標)(KEVLAR;登録商標));ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);ビニルポリマー(例えば、ポリアクリルアミド、ポリ(2‐ビニルピリジン)、ポリ(N‐ビニルピロリドン)、ポリ(メチルシアノアクリレート)、ポリ(エチルシアノアクリレート)、ポリ(ブチルシアノアクリレート)、ポリ(イソブチルシアノアクリレート)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(2‐ビニルピリジン)、ビニルポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン、およびポリ(イソヘキシルシアノアクリレート));ポリアセタール;ポリエステル(例えば、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヒドロキシブチレート);ポリエーテル(ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(プロピレンオキシド)(PPO)、ポリ(テトラメチレンオキシド)(PTMO));ビニリデンポリマー(例えば、ポリイソブチレン、ポリ(メチルスチレン)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(フッ化ビニリデン));ポリアラミド(例えば、ポリ(イミノ‐1,3‐フェニレンイミノイソフタロイル)およびポリ(イミノ‐1,4‐フェニレンイミノテレフタロイル));ポリヘテロ芳香族化合物(例えば、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリベンゾビスオキサゾール(PBO)およびポリベンゾビスチアゾール(PBT));多複素環化合物(例えば、ポリピロール);ポリウレタン;フェノール系ポリマー(例えば、フェノール‐ホルムアルデヒド);ポリアルキン(例えば、ポリアセチレン);ポリジエン(例えば、1,2‐ポリブタジエン、シスまたはトランス‐1,4‐ポリブタジエン);ポリシロキサン(例えば、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)、ポリ(ジエチルシロキサン)(PDES)、ポリジフェニルシロキサン(PDPS)、およびポリメチルフェニルシロキサン(PMPS));並びに無機ポリマー(例えば、ポリホスファゼン、ポリホスホネート、ポリシラン、ポリシラザン)が挙げられる。いくつかの実施形態において、ポリマーは、ポリ(n‐ペンテン‐2)、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド類(例えば、ポリアミド(Nylon)、ポリ(ε-カプロラクタム)(Nylon 6)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(Nylon 66))、ポリイミド類(例えば、ポリイミド、ポリニトリル、およびポリ(ピロメリットイミド‐1,4‐ジフェニルエーテル)(Kapton;登録商標)(NOMEX;登録商標)(KEVLAR;登録商標));ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0089】
これらのポリマーの機械的特性および電子的特性(例えば、伝導率、抵抗率)は既知である。従って、当業者は、それらの機械的および/または電子的特性(例えば、イオン伝導性および/または電子伝導性/抵抗率)に基づいて、好適な材料を選択することができ、および/または本明細書中の記載と組み合わせて、当該技術分野の知識に基づいて、このようなポリマーをイオン伝導性(例えば、単一のイオンに対して伝導性)および/または電子伝導性に変性することができる。例えば、前述の、および明細書中に記載されたポリマー材料は、必要であれば、イオン伝導性を向上させるために、更に塩、例えば、リチウム塩(例えば、LiSCN、LiBr、LiI、LiClO4、LiAsF6、LiSO3CF3、LiSO3CH3、LiBF4、またはLiB(Ph)4、LiPF6、LiC(SO2CF3)3、およびLiN(SO2CF3)2)を含んでもよい。
【0090】
いくらかの実施形態では、セパレータは、ポリマーバインダおよびセラミック材料またはガラス状/セラミック材料を含む充填剤を含んでもよい。
【0091】
使用するのに好適なセパレータおよびセパレータ材料の更なる例には、発明の名称「Separators for electrochemical cells」の、1997年12月19日に出願された、米国特許第6,153,337号明細書および1998年12月17日提出された、発明の名称「Separators for electrochemical cells」の、米国特許第6,306,545号明細書に記載されているように、自立膜として提供されても、または電極の1つ上への直接コーティング塗布によって提供されてもよい、微孔性キセロゲル層、例えば微孔擬ベーマイト層を含むものである。固体電解質およびゲル電解質は、それらの電解質機能に加えて、セパレータとして機能してもよい。有用なゲルポリマー電解質の例には、それらに限定されないが、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリシロキサン、ポリイミド、ポリホスファゼン、ポリエーテル、スルホン化ポリイミド、全フッ素化膜(NAFION樹脂)、ポリジビニルポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、それらの誘導体、それらの共重合体、それらの架橋構造体および網目状構造体、およびそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上のポリマー、並びに任意に1つ以上の可塑剤を含むものが挙げられる。
【0092】
セパレータの全てまたは一部を形成するために使用され得る他の好適な材料は、発明の名称「Electrode Protection in Both Aqueous and Non-Aqueous Electrochemical Cells, including Rechargeable Lithium Batteries」の、2010年7月1日に出願し、2010年12月30日に公開された、米国特許出願公開第2010/0327811号明細書に記載のセパレータ材料が挙げられ、すべての目的のために、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0093】
本開示を与えられた当業者は、セパレータとして使用するための好適な材料を選択することができる。そのような選択を行う際に考慮される可能性がある関連要因は、セパレータ材料のイオン伝導性;電気化学セル内の他の材料の上に、または他の材料と共にセパレータ材料を付着させるか、他の方法でセパレータ材料を形成する能力;セパレータ材料の可撓性;セパレータ材料の多孔質(例えば、全体の気孔率、平均孔径、孔径分布、および/または屈曲度);電気化学セルを形成するために使用される製造プロセスとのセパレータ材料の適合性;電気化学セルの電解質とセパレータ材料との相溶性;および/またはセパレータ材料をゲル材料に接着する能力;を含む。いくらかの実施形態において、セパレータ材料は、機械的欠陥なしに、ゲル付着プロセスを継続する能力に基づいて選択することができる。
【0094】
当業者は、候補物質から好適なセパレータ材料を選択するための簡単なスクリーニング試験を用いることができる。1つの簡単なスクリーニング試験は、電子の分離を維持しながら、機能するために、材料を横切って(例えば、材料の孔を通って)イオン種の通過を必要とする電気化学セルにおけるセパレータとしての材料を配置することを含む。上記材料が、この試験において、実質的にイオン伝導性である場合、電気化学セルの放電時に電流を発生する。別の簡単なスクリーニング試験は、本明細書中に記載の種々の方法によって、セパレータの表面エネルギーを増加させる能力を含む。スクリーニング試験は、本明細書中に記載のようにセパレータとイオン伝導体層との接着性を試験することを含んでもよい。別のスクリーニング試験は、電気化学セルに使用される電解質の存在下で膨潤しないセパレータの能力を試験することを含んでもよい。当業者によって、他の簡単な試験を行うことができる。
【0095】
セパレータは、電気化学セルの短絡をもたらす可能性がある、第1の電極と第2の電極との間の物理的接触を阻害する(例えば、防止する)ように構成することができる。上記セパレータは、電気化学セルの短絡を引き起こす程度を抑制することができるように、電子的に非伝導性であるように実質的に構成することができる。いくらかの実施形態では、セパレータの全てまたは一部は、少なくとも約104[Ω・m]、少なくとも約105[Ω・m]、少なくとも約1010[Ω・m]、少なくとも約1015[Ω・m]、または少なくとも約1020[Ω・m]のバルク電気抵抗率を有する材料で形成することができる。バルク電気抵抗率は、室温(例えば、25℃)で測定してもよい。
【0096】
他の実施形態では、セパレータは実質的にイオン非伝導性であるが、いくつかの実施形態において、セパレータはイオン伝導性であってもよい。いくつかの実施形態では、セパレータの平均イオン伝導度は、少なくとも約10-7[S/cm]、少なくとも約10-6[S/cm]、少なくとも約10-5[S/cm]、少なくとも約10-4[S/cm]、少なくとも約10-2[S/cm]、少なくとも約10-1[S/cm]である。いくらかの実施形態では、セパレータの平均イオン伝導度は、約1[S/cm]以下、約10-1[S/cm]以下、約10-2[S/cm]以下、約10-3[S/cm]以下、約10-4[S/cm]以下、約10-5[S/cm]以下、約10-6[S/cm]以下、約10-7[S/cm]以下、または約10-8[S/cm]以下であってもよい。上記範囲の組合せ(例えば、少なくとも約10-8[S/cm]および約10-1[S/cm]以下の平均イオン伝導度)もまた可能である。例えば、(即ち、乾式セパレータ用)電解質および/または溶媒の不存在下で、1kHzで動作する導電性ブリッジ(即ち、インピーダンス測定回路)を使用して、導電率(例えば、乾燥導電率)を、室温(例えば、25℃)で測定してもよい。
【0097】
いくつかの実施形態において、セパレータは、固体であってもよい。セパレータは、電解質溶媒がそれを通過できるように多孔質であってもよい。いくつかのケースでは、セパレータは、実質的に通過またはセパレータの孔中に存在することができる溶媒を除いて、(ゲル中のような)溶媒を含まない。
【0098】
セパレータの厚さが変化してもよい。セパレータの厚さは、例えば、5μmから40μmの範囲にわたって変化し得る。例えば、セパレータの厚さは10~20μmの間、20~30μmの間、または20~40μmの間であってもよい。セパレータの厚みは、例えば、より少ないまたはより少ないまたはより少ないまたは10μmに等しい、またはそれより少ないまたは9μmに等しい25μmに等しい30μmに等しい40μm以下であってもよい。いくつかの実施形態において、セパレータは、厚さ少なくとも9μm、少なくとも10μmの厚さ、少なくとも20μmの厚さ、少なくとも25μmの厚さ、少なくとも30μmの厚さ、または少なくとも40μmの厚さである。他の厚さもまた可能である。上記範囲の組合せも可能である。
【0099】
本明細書中に記載されているように、セパレータは、滑らかな表面を有していてもよい。いくつかの実施形態では、セパレータのRMS表面粗さは、例えば、1μm未満であってもよい。いくらかの実施形態では、そのような表面のRMS表面粗さは、例えば0.5nm~1μm(例えば、0.5nm~10nm、10nm~50nm、10nm~100nm、50nm~200nm、10nm~500nm)であってもよい。いくつかの実施形態では、RMS表面粗さは、0.9μm以下、0.8μm以下、0.7μm以下、0.6μm以下、0.5μm以下、0.4μm以下、0.3μm以下、0.2μm以下、0.1μm以下、75nm以下、50nm以下、25nm以下、10nm以下、5nm以下、2nm以下、1nm以下であってもよい。いくつかの実施形態では、RMS表面粗さは、1nm、5nm、10nm、50nm、100nm、200nm、500nm、または700nmより大きくてもよい。上記範囲の組み合わせも可能である(例えば、0.5μm以下および10nmより大きいRMS表面粗さ)。他の値も可能である。
【0100】
本明細書中に記載されているように、セパレータは、多孔質であってもよい。いくつかの実施形態では、セパレータの平均孔径(または最大孔径)は、例えば、5μm未満であってもよい。いくらかの実施形態では、セパレータの平均孔径(または最大孔径)は、50nm~5μm、50nm~500nm、100nm~300nm、300nm~1μm、500nm~5μmであってもよい。いくつかの実施形態では、上記平均孔径(または最大孔径)は、5μm以下、1μm以下、500nm以下、300nm以下、100nm以下、または50nm以下であってもよい。いくつかの実施形態では、上記平均孔径(または最大孔径)は、50nm、100nm、300nm、500nm、または1μmより大きくてもよい。他の値も可能である。上記範囲の組合せ(例えば、300nm未満および100nmより大きい)も可能である。
【0101】
いくらかの実施形態では、電気化学セルは、電気活性材料を含む第1の電極、第2の電極、並びに第1および第2の電極の間に位置する複合体を含む。上記複合体は、平均孔サイズを有する孔を含むセパレータ、および上記セパレータに結合したハイブリッド層を含む。上記セパレータは、少なくとも104[Ω・m](例えば、少なくとも1010[Ω・m]、または少なくとも1015[Ω・m]、例えば、1010[Ω・m]~1015[Ω・m])のバルク電気抵抗率を有してもよい。上記ハイブリッド層は、少なくとも10-6[S/cm]のリチウムイオン伝導率を有し、0.1~20重量%の酸化物含有量を有するリチウムオキシスルフィドを含む。
【0102】
いくつかの実施形態では、例示的なセパレータ層は、CELGARD(登録商標)で市販されている。CELGARD(登録商標)2500は、55%の気孔率、直径64nmの平均孔径を有する。
【0103】
いくつかの実施形態において、ハイブリッド層材料(例えば、明細書中に記載されているようなセパレータ上のコーティング)の平均イオン伝導率(例えば、リチウムイオン伝導性)は、少なくとも約10-7[S/cm]、少なくとも約10-6[S/cm]、または少なくとも約10-5[S/cm]である。上記平均イオン伝導度は、約10-4[S/cm]以下、約10-5[S/cm]以下、または10-6[S/cm]以下であってもよい。上記ハイブリッド層が乾燥状態にあるとき、導電率は、室温(例えば、25℃)で測定してもよい。電解質および/または溶媒の不存在下で、1kHzで動作する導電性ブリッジ(即ち、インピーダンス測定回路)を使用して、導電率(例えば、乾燥導電率)を、室温(例えば、25℃)で測定してもよい。
【0104】
前述のおよび本明細書中に記載の電気化学セルを含むいくつかの実施形態では、セパレータおよびハイブリッド層の間の接着強度は、少なくとも350[N/m]、少なくとも500[N/m]、または以下により詳細に説明するような別の範囲である。いくつかの場合、セパレータとハイブリッド層との接着強度はASTM規格D3359‐02に従ったテープ試験に合格する。本明細書中に記載されているように、セパレータ層の表面上に前駆体溶液を付着させることにより、保護構造の形成を含むいくつかの実施形態では、ハイブリッド層およびセパレータ層の接合または接着強度を増加させることが望ましい。上記層間の接着力の増加の結果として、上記層間の剥離の可能性を低減することができ、上記セルのサイクル工程時に、ハイブリッド層の機械的安定性を改善することができる。例えば、得られる複合体は、加圧されたセル内に配置されているときに遭遇する機械的応力に耐えるハイブリッド層の能力を高めることができる。
【0105】
2つの層の間の相対的な接着強度を決定するために、テープ試験を行うことができる。簡単に言うと、テープ試験は、第1の層(例えば、セパレータ層)および第2の層(例えば、イオン伝導層)の間の接着力を定性的に評価するために感圧テープを使用する。このような試験において、第1の層(例えば、セパレータ層)を通って第2の層(例えば、ハイブリッド層)まで、Xカットを作製することができる。感圧テープをカット領域上に貼り付けて、剥がすことができる。上記セパレータ層が、イオン伝導層上から離れない(またはその逆の)場合、接着力が良好である。上記セパレータ層がテープ片と共に剥離する場合、接着力が悪いものである。上記テープ試験は、ASTM D3359-02規格に従って行ってもよい。いくつかの実施形態において、上記セパレータおよびハイブリッド層の間の接着強度は、ASTM規格 D3359-02に従った上記テープ試験をパスし、これは試験中に、上記ハイブリッド層が上記セパレータ層から剥離しないことを意味する。いくつかの実施形態では、上記テープ試験は、2つの層(例えば、ハイブリッド層などの第2の層に対する、セパレータ層などの第1の層)がリチウム‐硫黄セルまたは本明細書中に記載の任意の他の好適なセルなどのセル中に含まれ、少なくとも5回、少なくとも10回、少なくとも15回、少なくとも20回、少なくとも50回、または少なくとも100回繰り返した後に行われ、上記2つの層は、上記セルから除去された後、テープ試験を合格する(例えば、第1の層が試験中に第2の層から剥離しない)。
【0106】
剥離試験には、[N/m]単位で、引張試験装置または他の好適な装置を用いて測定することができ、第2の層(例えば、ハイブリッド層)の単位長さから第1の層(例えば、セパレータ層)を除去するのに必要な接着性または力を測定することを含む。このような実験は、溶媒および/または成分の接着性への影響を決定するために、必要に応じて溶媒(例えば、電解質)または他の成分の存在下で行ってもよい。
【0107】
いくつかの実施形態では、2つの層(例えば、セパレータ層などの第1の層およびハイブリッド層などの第2の層)の間の接着強度は、例えば、100~2000[N/m]であってもよい。いくらかの実施形態では、接着強度は、少なくとも50[N/m]、少なくとも100[N/m]、少なくとも200[N/m]、少なくとも350[N/m]、少なくとも500[N/m]、少なくとも700[N/m]、少なくとも900[N/m]、少なくとも1000[N/m]、少なくとも1200[N/m]、少なくとも1400[N/m]、少なくとも1600[N/m]、または少なくとも1800[N/m]であってもよい。いくらかの実施形態では、上記接着強度は、2000[N/m]以下、1500[N/m]以下、1000[N/m]以下、900[N/m]以下、700[N/m]以下、500[N/m]以下、350[N/m]以下、200[N/m]以下、100[N/m]以下、または50[N/m]以下であってもよい。他の接着強度も可能である。
【0108】
ハイブリッド層の厚さは変化してもよい。ハイブリッド層の厚さは、例えば1nm~7μmの範囲にわたって変化してもよい。例えば、ハイブリッド層の厚さは、1~10nm、10~100nm、10~50nm、30~70nm、100~1000nm、または1~7μmであってもよい。ハイブリッド層の厚さは、例えば、7μm以下、5μm以下、2μm以下、1000nm以下、600nm以下、500nm以下、250nm以下、100nm以下、70nm以下、50nm以下、25nm以下、または10nm以下であってもよい。いくつかの実施形態では、ハイブリッド層は、少なくとも10nm厚、少なくとも20nm厚、少なくとも30nm厚、少なくとも100nm厚、少なくとも400nm厚、少なくとも1μm厚、少なくとも2.5μm厚、または少なくとも5μm厚である。他の厚さもまた可能である。上記範囲の組合せも可能である。
【0109】
本明細書中に記載されるように、ハイブリッド層に隣接して配置されるセパレータの平均孔径に対するハイブリッド層の相対的厚さは、2つの層の接着強度の程度に影響を及ぼす可能性がある。例えば、ハイブリッド層の厚さは、セパレータの平均孔径(または最大孔径)より大きくてもよい。いくらかの実施形態では、ハイブリッド層の平均厚さは、ハイブリッド層に隣接するセパレータの平均孔径(または最大孔径)の少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.7倍、少なくとも2倍、少なくとも2.5倍、少なくとも2.7倍、少なくとも2.8である倍、少なくとも3.0倍、少なくとも3.2倍、少なくとも3.5倍、少なくとも3.8倍、少なくとも4.0倍、少なくとも5.0倍、少なくとも7.0倍、少なくとも10.0倍、または少なくとも20.0倍である。いくらかの実施形態では、ハイブリッド層の平均厚さは、ハイブリッド層に隣接するセパレータの平均孔径(または最大孔径)の20.0倍以下、10.0倍以下、7.0以下、5.0倍以下、4.0倍以下、3.8倍以下、3.5倍以下、3.2倍以下、3.0倍以下、2.8倍以下、2.5倍以下、または2倍以下であってもよい。平均孔径およびハイブリッド層の厚さの他の組合せも可能である。
【0110】
セパレータの平均孔径に対するハイブリッド層の厚さの比は、例えば、少なくとも1:1(例えば、1.1:1)、少なくとも2:1、少なくとも3:2、少なくとも3:1、少なくとも4:1、少なくとも5:1、または少なくとも10:1であってもよい。セパレータの平均孔径に対するハイブリッド層の厚さの比は、10:1以下、5:1以下、3:1以下、2:1以下(例えば、1.1:1)、または1:1以下であってもよい。他の比も可能である。上記範囲の組合せも可能である。
【0111】
いくつかの実施形態では、電気化学セルにおいて、ハイブリッド層は、電気活性材料(例えば、リチウム金属)と相互作用する液体電解質の可能性を防止または減少するように作用する溶媒バリアとして機能してもよい。いくつかの実施形態では、バリアとして作用する複合ハイブリッド層セパレータの能力は、空気透過試験(例えば、Gurley Test)によって一部は測定することができる。Gurley Testは、上記材料の標準領域を通って流れる空気の比体積のために必要な時間を決定する。このように、より大きな空気透過時間(Gurley‐秒)は、一般的により良好なバリア特性に対応する。
【0112】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される複合体(例えば、ハイブリッド層‐セパレータ複合体)の空気透過時間は、少なくとも1,000[Gurley‐秒]、少なくとも5,000[Gurley‐秒]、少なくとも10,000[Gurley‐秒]、少なくとも20,000[Gurley‐秒]、少なくとも40,000[Gurley‐秒]、少なくとも60,000[Gurley‐秒]、少なくとも80,000[Gurley‐秒]、少なくとも100,000[Gurley‐秒]、少なくとも120,000[Gurley‐秒]、少なくとも140,000[Gurley‐秒]、少なくとも160,000[Gurley‐秒]、少なくとも180,000[Gurley‐秒]、少なくとも200,000[Gurley‐秒]、少なくとも500,000[Gurley‐秒]、または少なくとも106[Gurley‐秒]であってもよい。いくつかの実施形態において、上記複合体は、実質的に不透過性である。いくつかの実施形態では、空気透過時間は、106[Gurley‐秒]以下、500,000[Gurley‐秒]以下、200,000[Gurley‐秒]以下、150,000[Gurley‐秒]以下、120,000[Gurley‐秒]以下、80,000[Gurley‐秒]以下、40,000[Gurley‐秒]以下、20,000[Gurley‐秒]以下、10,000[Gurley‐秒]以下、または5,000[Gurley‐秒]以下であってもよい。本明細書中に記載の上記空気透過時間およびGurley試験は、3kPaの圧力差および1平方インチの試料サイズを含む、TAPPI Standard T 536 om-12に準拠して行われるものを言う。
【0113】
本明細書中に記載のように、ハイブリッド層/セパレータ複合体を形成するために、種々の方法を使用してもよい。複合体の厚さは、例えば、5μmから40μmの範囲にわたって変化してもよい。例えば、複合体の厚さは、10~20μm、20~30μm、または20~40μmであってもよい。複合体の厚さは、例えば、40μm以下、30μm以下、25μm以下、10μm以下、9μm以下、または7μm以下であってもよい。いくつかの実施形態において、上記複合体は、少なくとも5μm厚、少なくとも7μm厚、少なくとも9μm厚、少なくとも10μm厚、少なくとも20μm厚、少なくとも25μm厚、少なくとも30μm厚、または少なくとも40μm厚である。他の厚さもまた可能である。上記範囲の組合せも可能である。
【0114】
ハイブリッド層の気孔率は、例えば、10~30体積%の範囲にわたって変化してもよい。ハイブリッド層の気孔率は、例えば、30%以下、25%以下、20%以下、または15%以下であってもよい。いくつかの実施形態では、ハイブリッド層の気孔率は、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、または少なくとも25%である。他の気孔率もまた可能である。上記範囲の組合せも可能である。
【0115】
平均気孔率は、例えば、水銀ポロシメータを用いて測定することができる。簡潔に述べると、平均気孔率は(例えば、液体と細孔との間の表面張力の対向力に抗して)孔に液体(例えば、水銀)を強制的に押し込むのに必要な外部圧力を測定することによって決定することができる。当業者は、選択された粒子に基づいて、外部圧力の好適な範囲を選択することができる。
【0116】
ハイブリッド層内の平均孔径(または最大孔径)は、例えば、1~20nmの範囲にわたって変化してもよい。ハイブリッド層内の平均孔径(または最大孔径)は、例えば、20nm以下、15nm以下、10nm以下、または5nm以下であってもよい。いくつかの実施形態では、ハイブリッド層内の平均孔径(または最大孔径)は、少なくとも1nm、少なくとも5nm、少なくとも10nm、または少なくとも15nmである。その他の平均孔サイズの値も可能である。上記範囲の組合せも可能である。
【0117】
ハイブリッド層およびセパレータを含む本明細書中に記載の複合構造体は、(必要に応じて、処理用の基材として好適な要素で)単独で包装してもよいし、電気活性材料と共に保護電極を形成するために、自立構造であってもよいし、または電気化学セルに組み立ててもよい。
【0118】
本明細書中に記載の複合体は、様々な電気化学セルに使用してもよいが、一組の実施形態において、上記複合体は、リチウム‐硫黄セルなどのリチウムセルに含まれる。従って、第1の電極は、第1の電気活性材料として、リチウム金属および/またはリチウム合金などのリチウムを含んでもよく、第2の電極は第2の電気活性材料として硫黄を含む。
【0119】
前述のおよび本明細書中に記載の電気化学セルを含むいくつかの実施形態では、第1の電気活性材料は、リチウムを含み、例えば、第1の電気活性材料は、リチウム金属および/またはリチウム合金を含んでもよい。
【0120】
リチウムが電気活性材料として記載されているいずれの場合にも、(本明細書中の他の箇所に記載された他のものを含む)他の好適な電気活性材料を置換してもよい、と解されるべきである。
【0121】
いくつかの実施形態では、第1の電極(例えば、
図4の電極440)などの電極は、リチウムを含む電気活性材料を含む。リチウムを含む好適な電気活性材料には、それらに限定されないが、リチウム金属(例えば、導電性基材上に付着させたリチウム箔および/またはリチウム)およびリチウム金属合金(例えば、リチウム‐アルミニウム合金およびリチウム‐スズ合金)が挙げられる。いくつかの実施形態では、電極の電気活性リチウム含有材料は、50重量%より多いリチウムを含む。いくつかの場合において、電極の電気活性リチウム含有材料は、75重量%より多いリチウムを含む。更に他の実施形態では、電極の電気活性リチウム含有材料は、90重量%より多いリチウムを含む。(例えば、負極であってもよい第1の電極に)使用することができる電気活性材料の他の例には、それらに限定されないが、他のアルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム)、アルカリ土類金属(例えば、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム)などが挙げられる。いくつかの実施形態では、第1の電極は、リチウムイオン電気化学セル用の電極である。いくつかの場合において、第1の電極はアノードまたは負電極である。
【0122】
第2の電極(例えば、
図4の電極450)は、種々の好適な電気活性材料の多様を含むことができる。いくつかの場合において、第2の電極はカソードまたは正電極である。
【0123】
いくつかの実施形態では、電極内(例えば、正の電極内)の電気活性材料は、金属酸化物を含むことができる。いくつかの実施形態では、インターカレーション電極(例えば、リチウムインターカレーションカソード)を用いてもよい。電気活性材料のイオン(例えば、アルカリ金属イオン)を挿入することができる好適な材料の非限定的な例には、酸化物、硫化チタン、および硫化鉄が挙げられる。更なる例には、LixCoO2、LixNiO2、LixMnO2、LixMn2O4、LixCoPO4、LixMnPO4、LiCoxNiyMn(l-x-y)(例えば、LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2)、LixNiPO4(ここで、0<x≦1)、LiNixMnyCozO2(ここで、x+y+z=1)、およびそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態において、例えば、電極内(例えば、正極内)の電極活性材料は、リチウム遷移金属リン酸塩(例えば、LiFePO4)を含んでもよく、いくらかの実施形態において、それらはホウ酸塩および/またはケイ酸塩で置換することができる。
【0124】
いくらかの実施形態において、電極内(例えば、正極内)の電気活性材料は、電気活性遷移金属カルコゲン化物、電気活性導電性ポリマー、および/または電気活性硫黄含有材料、並びにこれらの組み合わせ含むことができる。本明細書中で使用されるように、用語「カルコゲン化物」は、酸素、硫黄、およびセレンの元素の1つ以上を含む化合物に関する。好適な遷移金属カルコゲン化物の例としては、それらに限定されないが、Mn、V、Cr、Ti、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Hf、Ta、W、Re、Os、およびIrからなる群から選択される遷移金属の電気活性酸化物、硫化物、およびセレン化物が挙げられる。1つの実施形態において、遷移金属カルコゲン化物は、ニッケル、マンガン、コバルト、およびバナジウムの電気活性酸化物、および鉄の電気活性硫化物からなる群から選択される。1つの実施形態において、電極(例えば、正極)は、電気活性導電性ポリマーを含んでもよい。好適な電気活性導電性ポリマーの例には、それらに限定されないが、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフェニレン、ポリチオフェン、およびポリアセチレンからなる群から選択される電気活性および電子伝導性ポリマーが挙げられる。いくらかの実施形態において、伝導性ポリマーとして、ポリピロール、ポリアニリン、および/またはポリアセチレンを使用することが望ましいかもしれない。
【0125】
いくらかの実施形態において、電極内(例えば、正極内)の電極活性材料は、硫黄を含んでもよい。いくつかの実施形態において、電極内の電気活性材料は、電気活性硫黄含有材料を含んでもよい。本明細書中で使用される「電気活性硫黄含有材料」の語は、電気化学的活性が硫黄原子または部分の酸化または還元を包含する、任意の形態での元素硫黄を含む電極活性材料を意味する。1つの例として、上記電気活性硫黄含有材料は、元素硫黄(例えば、S8)を含んでもよい。いくつかの実施形態において、電気活性硫黄含有材料は、元素硫黄および硫黄含有ポリマーの混合物を含む。従って、好適な電気活性硫黄含有材料には、これらに限定されないが、元素硫黄;有機または無機であってもよい(例えば、アルカリ金属の)硫化物または多硫化物;並びにポリマーであってもなくてもよい、硫黄原子および炭素原子を含有する有機材料;が挙げられる。好適な有機材料には、それらに限定されないが、ヘテロ原子、導電性ポリマーセグメント、複合材料、および導電性ポリマーを更に含むものが挙げられる。いくつかの実施形態において、電極(例えば、正極)内の電気活性硫黄含有材料は、少なくとも約40重量%の硫黄を含む。場合によっては、上記電気活性硫黄含有材料は、少なくとも約50重量%、少なくとも約75重量%、または少なくとも約90重量%の硫黄を含む。
【0126】
いくらかの実施形態において、(例えば、酸化された形態での)硫黄含有材料は、共有結合性Sm部分、イオン性Sm部分およびイオン性Sm2‐部分からなる群から選択されるポリスルフィド部分Smを含む(ここで、mは3以上の整数である。)。いくつかの実施形態では、上記硫黄含有ポリマーのポリスルフィド部分Smのmは、6以上の整数、または8以上の整数である。いくつかの場合、硫黄含有材料は、硫黄含有ポリマーであってもよい。いくつかの実施形態では、硫黄含有ポリマーはポリマー主鎖を有し、ポリスルフィド部分Smを、側基としての末端硫黄原子の一方または両方によって、上記ポリマー主鎖に共有結合する。いくらかの実施形態では、硫黄含有ポリマーはポリマー主鎖を有し、ポリスルフィド部分Smを、上記ポリスルフィド部分の末端硫黄原子の共有結合によって、上記ポリマー主鎖に組み込む。
【0127】
硫黄含有ポリマーの例には、Skotheimらの米国特許第5,601,947号明細書および同5,690,702号明細書;Skotheimらの米国特許第5,529,860号明細書および同6,117,590号明細書;2001年3月13日交付のGorkovenkoらの米国特許第6,201,100号明細書;および国際公開第99/33130号に記載されたものが挙げられる。他の好適な多硫化物結合を含有する電気活性硫黄含有材料は、Skotheimらの米国特許第5,441,831号明細書;Perichaudらの米国特許第4,664,991号明細書;並びにNaoiらの米国特許第5,723,230号明細書、同5,783,330号明細書、同5,792,575号明細書および同5,882,819号明細書に記載されている。電気活性硫黄含有材料の更なる例には、例えば、Armandらの米国特許第4,739,018号明細書;共にDe Jongheらの米国特許第4,833,048号明細書および同4,917,974号明細書;共にViscoらの米国特許第5,162,175号明細書および同5,516,598号明細書;並びにOyamaらの米国特許第5,324,599号明細書に記載されたジスルフィド基を含有するものが挙げられる。
【0128】
硫黄は(例えば、多孔質正極であってもよい)第2の電極における電気活性種として主に記載されているが、硫黄が、本明細書中で、電極内の電気活性材料の成分として記載されている場合はいつでも、どんな好適な電気活性種を用いてもよいと理解されるべきである。例えば、いくらかの実施形態において、第2の電極(例えば、多孔質正極)内の電気活性種は、一般にニッケル水素電池に使用されるものなどの水素吸蔵合金を含んでもよい。本開示を提供された当業者は、本明細書中に記載の着想物を、他の活性物質を用いた電極を含む電気化学セルにまで拡張することができる。
【0129】
本明細書中に記載の実施形態を、リチウム系電気化学セル(例えば、リチウム‐硫黄電気化学セル、リチウムイオン電気化学セル)などの任意のタイプの電気化学セルと関連して使用してもよい。いくらかの実施形態において、上記電気化学セルは、一次(非充電式)電池であってもよい。他の実施形態において、上記電気化学セルは、二次(再充電式)電池であってもよい。いくらかの実施形態は、リチウム再充電式電池に関する。いくらかの実施形態において、上記電気化学セルは、リチウム‐硫黄再充電式電池を含む。しかしながら、リチウム電池が本明細書中に記載されている場合はいつでも、如何なる類似したアルカリ金属電池を使用してもよいと理解すべきである。更に、本発明の実施形態は、リチウムアノードを保護するために特に有用であるが、本明細書中に記載の実施形態を、電極保護が望まれる他の用途にも適用可能である。
【0130】
任意の好適な電解質を、本明細書中に記載の電気化学セルに使用してもよい。一般に、電解質の選択は、電気化学セルの化学的性質、特に電気化学セル内の電極間で輸送されるイオン種に依存する。好適な電解質は、いくつかの実施形態において、イオン伝導率を提供する1つ以上のイオン性電解質塩および1つ以上の液体電解質溶媒、ゲルポリマー材料、または他のポリマー材料を含んでもよい。有用な非水性液体電解質溶媒の例には、それらに限定されないが、非水性有機溶媒、例えば、N-メチルアセトアミド、アセトニトリル、アセタール、ケタール、エステル、カルボネート、スルホン、スルフィット、スルホラン、脂肪族エーテル、環式エーテル、グライム、ポリエーテル、リン酸エステル、シロキサン、ジオキソラン(例えば、1,3‐ジオキソラン)、N-アルキルピロリドン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、それらの置換した形、およびそれらのブレンドが挙げられる。上記のもののフッ素化誘導体も、液体電解質溶媒として有用である。場合によっては、水性溶媒を、リチウムセル用の電解質として使用してもよい。水性溶媒には、イオン性塩などの他の成分を含有することができる、水を挙げることができる。いくつかの実施形態において、上記電解質は、水酸化リチウムなどの化学種、または電解質中の水素イオン濃度を低減するように、電解質を塩基性にする他の化学種を含んでもよい。
【0131】
上記電解質には、イオン伝導性を提供するために、1つ以上のイオン性電解質塩を含んでもよい。いくつかの実施形態において、1つ以上のリチウム塩(例えば、LiSCN、LiBr、LiI、LiClO4、LiAsF6、LiSO3CF3、LiSO3CH3、LiBF4、LiB(Ph)4、LiPF6、LiC(SO2CF3)3、およびLiN(SO2CF3)2)を含んでもよい。有用である他の電解質塩には、リチウムポリスルフィド(Li2Sx)、および有機イオン性ポリスルフィドのリチウム塩(LiSxR)n、(式中、xは1~20の整数であり、nは1~3の整数であり、そしてRは有機基である)、並びにLeeらの米国特許第5,538,812号明細書に開示のものが挙げられる。溶媒中のイオン性リチウム塩の濃度範囲は、例えば、約0.2m~約2.0m(mは溶媒のモル/kgである)で用いてもよい。いくつかの実施形態において、約0.5m~約1.5mの範囲の濃度が使用される。Li/Sセルの放電時に、形成されるリチウムスルフィドまたはポリスルフィドが通常は電解質にイオン伝導性を提供し、イオン性リチウム塩の添加を不要にすることができる点で、溶媒へのイオン性リチウム塩の添加は任意である。
【0132】
図面に示される電気化学セルおよび構成要素は例示であり、構成要素の向きを変えることができることを理解すべきである。更に、非平面構成、示されたものとは異なる材料の割合を有する構成、および他の代替的な構成は、本発明のいくらかの実施形態に関して有用である。典型的な電気化学セルはまた、例えば、収納構造体、電流コレクタ、外部回路などを含むことができる。当業者は、図面に示され、本明細書中に記載の一般的な概略構成で利用することができる多くの構成をよく知っている。
【0133】
本明細書で使用されるように、別の層「の上に」、「の上面に」または「に隣接して」あると言及されるとき、上記層の上に、上記層の上面に、または上記層に隣接して直接存在することができる、或いは介在層が存在してもよい。別の層「の直接上にある」、別の層「に直接隣接する」または別の層「に接触している」層は、介在層が存在しないことを意味する。同様に、2つの層「の間に」置かれた層は、介在層が存在せずに上記2つの層の間に直接存在してもよく、または介在層が存在してもよい。
【0134】
以下の実施例は、本発明のいくらかの実施形態を説明することを意図しているが、本発明の全範囲を例示するものではない。
【実施例】
【0135】
(実施例1)
リチウムまたはリチウムイオン電池におけるリチウムアノードの保護層として使用するCELGARD(登録商標)2500セパレータ層上にハイブリッド層(例えば、有機‐無機ハイブリッドナノ複合材料コーティング)を作製するために、以下の工程を実施した。
【0136】
Boehmite、AlO(OH)の結晶相を有する(約14nmの平均直径を有する)アルミナナノ粒子のコロイドを、水中に形成した。
【0137】
次いで、水系コーティング溶液を調製した。予備加水分解したGlymoを、アルミナナノ粒子コロイド溶液に添加した。上記溶液を30分間撹拌した。Jeffamine(ED 2003)を上記混合物に加え、1時間撹拌した。上記溶液を室温で1日間熟成させた。
【0138】
上記熟成した溶液を、セパレータ層上に直接ドロップキャストして、コーティングを形成した。上記コーティングを、室温および大気圧で約15分間乾燥させた。上記コーティング試料を次いで、75℃に予め設定された真空オーブンに入れて、一晩、更に乾燥または硬化した。厚さ約1~3μmを有するハイブリッドコーティングを得た。特定の理論に拘束されないが、上記コーティング溶液がセパレータ層表面下の孔内に部分的に浸透し、セパレータ層上に非常に強い接着力を有するハイブリッドコーティングを提供したと考えられる。
【0139】
基材の感熱性により、上記コーティングは、約80℃以上には加熱されなかった。結果として、長時間の真空乾燥後でも依然としてコーティング中にかなりの量の‐OH基および残留水が存在していた。
【0140】
乾燥室内において、上記試料を、穏やかに撹拌された無水メタノール中のTaF5溶液の容器中に浸漬した。1分後、試料を容器から取り出した。上記試料を、乾燥室内の雰囲気温度および圧力で乾燥させた。この工程の後、一連の非加水分解ゾル‐ゲル反応によって、コーティング中の残りの-OH基および水が完全に変換されたと考えられる。
【0141】
(実施例2)
実施例1と同様にして、フッ素化ゾル‐ゲルコーティングされたCELGARD(登録商標)2500セパレータ層を含む電気化学セルを組み立てた。上記セルを、充電/放電サイクルによってサイクル試験を行った。サイクル後のセルのリチウムアノードの表面のEDX元素マッピングは、
図7A~
図7Cに示すように、リチウム金属アノードの表面上に形成されたLiFを含む層の存在を確認する、タンタルおよびフッ素の両方の均一な分布を示した。
【0142】
(実施例3)
実施例1と同様の方法によって形成されたTaF5変性した25μmCELGARD(登録商標)2500セパレータ層を、電気化学セル中に組み立て、性能について試験した。
【0143】
以下の構成:PET/PVOH/銅/真空蒸着Liアノード、およびリン酸鉄リチウム(LFP)カソードを有する小型フラットセルを組み立てた。コーティングされていない、未変性のCELGARD(登録商標)2500セパレータ層を使用して、対照グループのセルも組み立てた。
【0144】
上記セルを、1/4インチ幅ポリイミドテープで固定し、バッグ(カリフォルニア州San LeandroのSealrite Films社から入手可能なポリマー被覆されたアルミニウム箔からなる包装材料)に入れた。エチレンカーボネートおよびジメチルカーボネート(50:50体積比)中の1MのLiPF
6溶液0.35mLを、電解質として添加し、そしてセルを真空密封した。2.5Vの電圧に対して0.265mA/cm
2の放電電流で、および4.2Vの電圧に対して0.166mA/cm
2の充電電流で、試験を行った。
図8に示すように、ゾル‐ゲルコーティングされ、TaF
5処理されたセパレータを有する上記セルは、未変性セパレータを有する対照セルよりも長いサイクル寿命および高い放電容量を示した。
【0145】
(実施例4)
正常と、CELGARD(登録商標)2500セパレータ層を、TaF5溶液に代わるTaBr5溶液でうまくコーティングするため、実施例1と同様の工程を行った。
【0146】
(実施例5)
実施例4と同様の方法により形成されたTaBr5変性25μmCELGARD(登録商標)2500セパレータ層を、電気化学セル中に組み立て、性能について試験した。以下の構成:PET/PVOH/銅/真空蒸着Liアノード、臭素化ゾル‐ゲルコーティングされたCELGARD(登録商標)2500セパレータ層、およびNi-Mn-Co酸化物(NMC)カソードを有する中型フラットセルを組み立てた。コーティングされていない、未変性のCELGARD(登録商標)2500セパレータ層を使用して、対照グループのセルも組み立てた。
【0147】
上記セルを、1/4インチ幅ポリイミドテープで固定し、バッグ(カリフォルニア州San LeandroのSealrite Films社から入手可能なポリマー被覆されたアルミニウム箔からなる包装材料)に入れた。エチレンカーボネートおよびジメチルカーボネート(50:50体積比)中の1MのLiPF
6溶液0.55mLを、電解質として添加し、そしてセルを真空密封した。3.2Vの電圧に対して0.80mA/cm
2の放電電流で、および4.35Vの電圧に対して0.50mA/cm
2の充電電流で、試験を行った。
図9に示すように、ゾル‐ゲルコーティングされ、TaBr
5処理されたセパレータを有する上記セルは、未変性セパレータを有する対照セルよりも非常に長いサイクル寿命を示した(初期放電容量の80%で、対照セル60サイクルに対して、試料セルに関して230サイクルを終了した)。
【0148】
(実施例6)
セパレータ上のハイブリッド層の可撓性を説明するために、試料を後述する方法に従って作製し、上記試料に関して曲げ試験を行った。
【0149】
リチウムまたはリチウムイオン電池におけるリチウムアノードの保護層として使用するCELGARD(登録商標)2500セパレータ層上にハイブリッド層コーティングを作製するために、以下の工程を実施した。上記方法は、金属ハロゲン化物溶液中に浸漬する工程を行わない以外は、実施例1および4と同様である。
【0150】
Boehmite、AlO(OH)の結晶相を有する(約14nmの平均直径を有する)アルミナナノ粒子のコロイドを、水中に形成した。
【0151】
次いで、水系コーティング溶液を調製した。予備加水分解したGlymoを、アルミナナノ粒子コロイド溶液に添加した。上記溶液を30分間撹拌した。Jeffamine(ED 2003)を上記混合物に加え、1時間撹拌した。上記溶液を室温で1日間熟成させた。
【0152】
上記熟成した溶液を、セパレータ層上に直接ドロップキャストして、コーティングを形成した。上記コーティングを、室温および大気圧で約15分間乾燥させた。上記コーティング試料を次いで、75℃に予め設定された真空オーブンに入れて、一晩、更に乾燥または硬化した。厚さ約1~3μmを有するハイブリッド層を得た。
【0153】
次いで、柔軟性と耐クラック性を実証するために、上記試料について曲げ試験を行った。は、小さい方の端部で直径3mmおよび広い方の端部で直径7mmを有する長さ5mmのフェルール上に上記試料を置き、直径の周りに曲げた。端におけるおよび屈曲の直径とフェルール5ミリメートルで覆われました。試験は、直径が3、4、5、6、7mmであるフェルールに沿って1mm毎に行った。上記試料は割れなかった。
【0154】
曲げ試験における上記試料の良好な性能は、形成されたハイブリッド層の優位な可撓性を実証する。
【0155】
図に示される電気化学セルおよび構成要素は例示であり、上記構成要素の向きを変えることができると理解されるべきである。また、非平面構成、示されたものとは異なる材料の割合を有する構成、および他の代替的な構成は、本発明のいくらかの実施形態に関して有用である。典型的な電気化学セルはまた、例えば、収納構造体、電流コレクタ、外部回路などを含むことができる。当業者は、図面に示され、本明細書中に記載の一般的な概略構成で利用することができる多くの構成をよく知っている。
【0156】
本明細書で使用されるように、別の層「の上に」、「の上面に」または「に隣接して」あると言及されるとき、上記層の上に、上記層の上面に、または上記層に隣接して直接存在することができる、或いは介在層が存在してもよい。別の層「の直接上にある」、別の層「に直接隣接する」または別の層「に接触している」層は、介在層が存在しないことを意味する。同様に、2つの層「の間に」置かれた層は、介在層が存在せずに上記2つの層の間に直接存在してもよく、または介在層が存在してもよい。
【0157】
本発明のいくつかの実施形態が本明細書中に記載および例示してきたが、当業者は、容易に機能を実行および/または結果を得るおよび/または1つ以上のための他の手段および/または構造の多様性を想定する利点は、本明細書中に記載され、そしてそのような変形および/または修正の各々は、本発明の範囲内であるとみなされる。より一般的に、当業者は、本明細書中に記載の全てのパラメータ、寸法、材料、および構成が例示的であることを意味することを理解するであろうし、実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構成は、特定の用途に依存することそのため、本発明の教示は/使用される。当業者が認識し、または日常的な実験のみを用いて確認することができるであろう、本明細書中に記載の本発明のいくらかの実施形態に対する多くの等価物。これは、前述の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内で、本発明は、具体的に記載および請求以外の方法で実施することができる、ほんの一例として、それによって提示されることが理解されるべきことである。本発明は、本明細書中に記載の個々の特徴、システム、物品、材料、および/または方法を対象とする。また、任意の組み合わせそのような特徴、システム、物品、材料、および/または方法が互いに矛盾しない場合、2つ以上のそのような特徴、システム、物品、材料、および/または方法の、本発明の範囲に含まれる。
【0158】
明細書中および特許請求の範囲において使用されるように、不定冠詞「a」および「an」は、明確に示されない限り、「少なくとも1つ」を意味すると解されるべきである。
【0159】
明細書中および特許請求の範囲において使用されるように、句「および/または」は、結合した要素、即ち、ある場合には結合して存在し、他方で分離して存在する要素の「いずれかまたは両方」を意味すると解されるべきである。明確に示されない限り、具体的に識別されたそれらの要素に関連するかまたは関連しないかを、「および/または」の文節によって具体的に識別された要素以外に、他の要素が任意に存在してもよい。従って、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」は、「~を含む」などのオープンエンドの語と合わせて使用される場合、1つの実施形態において、BなしのA(任意にB以外の要素を含む);別の実施形態において、AなしのB(任意にA以外の要素を含む);更に別の実施形態において、AおよびBの両方(任意に他の要素を含む);などを意味する。
【0160】
明細書中および特許請求の範囲において使用されるように、「または」は、上記定義した「および/または」と同じ意味を有すると解されるべきである。例えば、1つのリスト中の項目を分離する場合、「または」または「および/または」は包括的である、即ち、
多くの要素または要素のリストの、1つより多いも含む少なくとも1つ、任意に、リストに挙げられていない更なる項目を含むと解釈されるべきである。明確に示されている項目のみ、例えば、「~の内の1つのみ」または「~の内の正確に1つ」、或いは特許請求の範囲において使用される場合の「~から成る」は、多くの要素または要素のリストの内の正確に1つを含むことを意味する。一般的に、本明細書中で用いられる用語「または」は、「どちらか」、「~の内の1つ」、「~の内の1つのみ」または「~の内の正確に1つ」などの排他性を有する用語が先行する場合、排他的選択肢(即ち、「一方、または両方でない他方」)を示すものとして解釈されるのみである。特許請求の範囲において使用される場合の「本質的に~から成る」は、特許法の分野で使用されるようなその通常の意味を有する。
【0161】
明細書中および特許請求の範囲において使用されるように、1つ以上の要素の1つのリストに関する語句「少なくとも1つ」は、要素のリスト中の1つ以上の要素から選択される少なくとも1つの要素を意味すると解されるべきであるが、要素のリスト内に具体的に挙げられたそれぞれの要素の少なくとも1つを必ずしも含んでおらず、かつ要素のリスト中の要素どうしの組み合わせを必ずしも除外しない。この定義はまた、語句「少なくとも1つ」が、具体的に識別されたそれらの要素に関連するかまたは関連しないかを意味する要素のリスト内で具体的に識別された要素以外に、要素が任意に存在してもよいことを可能にする。従って、非限定的な例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(同等に、「AまたはBの少なくとも1つ」、或いは同等に、「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、1つの実施形態において、任意に1つより多いことを含む少なくとも1つ、Bが存在しないA(任意にB以外の要素を含む);別の実施形態において、任意に1つより多いことを含む少なくとも1つ、Aが存在しないB(任意にA以外の要素を含む);更に別の実施形態において、任意に1つより多いことを含む少なくとも1つ、Aおよび任意に1つより多いことを含む少なくとも1つ、B(任意に他の要素を含む);などを意味することができる。
【0162】
明細書中と同様に特許請求の範囲において、このような「~を含有する(comprising)」、「~を含む(including)」、「~を有する(carrying)」、「~を有する(having)」、「~を含有する(containing)」、「~を含む(involving)」、「~を含む(holding)」などのすべての移行句は、オープンエンドである、即ち、それらに限定されないことを含むことを意味すると解される。移行句「~から成る」および「本質的に~から成る」だけは、「United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures,Section 2111.03」に記載されているように、それぞれクローズまたはセミクローズな移行句である。
【符号の説明】
【0163】
100 … セパレータ
110 … ポリマー材料
115、225 … 孔
200 … 被覆セパレータ
220 … ハイブリッド層
300 … 物品
330 … 金属含有化合物