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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】ハニカム担体評価装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/00 20060101AFI20220613BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20220613BHJP
   B01D 46/00 20220101ALI20220613BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
F01N3/00 G
B01J35/04 301Z
B01D46/00 302
B01D53/94 100
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019064927
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020165347
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2020-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】大森 智史
(72)【発明者】
【氏名】阿部 真之
【審査官】二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-064069(JP,A)
【文献】特許第5313732(JP,B2)
【文献】特開2005-195010(JP,A)
【文献】特開2016-200117(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0054281(US,A1)
【文献】特開2005-163621(JP,A)
【文献】特開平04-103818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00- 3/38
F01N 9/00-11/00
B01J 35/04
B01D 46/00
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼ガスを発生させるためのバーナーと、
前記燃焼ガスが送入されるための配管と、
前記配管内に配置されているハニカム担体と、
前記配管に設けられるとともに、前記燃焼ガスの流れ方向において前記ハニカム担体の上流側に配置され、前記燃焼ガスが前記ハニカム担体に到達する前に前記燃焼ガスを拡散させるための拡散部材と
を備え、
前記バーナーの前記燃焼ガスをエンジンの排気ガスに代えて前記ハニカム担体に供給するハニカム担体評価装置であり、
前記拡散部材は、
前記拡散部材の径方向における外周側に設けられた周辺部と、
前記配管の径方向における中央部に配置され、前記燃焼ガスの流通を阻害する流通阻害部と、
前記拡散部材の径方向において前記流通阻害部と前記周辺部との間に延在され、前記燃焼ガスの流通を許容する流通許容部と
を有している円板状の部材であり
前記配管には、前記バーナーの先端の周囲を覆う燃焼管、前記ハニカム担体を格納するハウジング、及び前記燃焼管と前記ハウジングとの間を接続する接続管が設けられており、
前記拡散部材の前記周辺部は、前記接続管及び前記ハウジングの内縁よりも外側に位置するとともに、前記接続管と前記ハウジングとの間に挟み込まれている、
ハニカム担体評価装置。
【請求項2】
前記拡散部材に隣接する位置における前記配管の内径(D1)に対する前記流通阻害部の外径(D2)の比率(D2/D1)は、45%以上かつ65%以下である、
請求項1記載のハニカム担体評価装置。
【請求項3】
前記拡散部材は、前記燃焼ガスの流れ方向に関する前記ハニカム担体の上流側端面から80mm以上かつ120mm以下の位置に配置されている、
請求項1又は請求項2に記載のハニカム担体評価装置。
【請求項4】
前記流通許容部は、互いに離間して設けられた複数の開口を有している、
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のハニカム担体評価装置。
【請求項5】
前記流通阻害部の外縁と前記拡散部材に隣接する位置における前記配管の内縁との間に位置する円環領域の全面積(A1)に対する前記複数の開口の合計開口面積(A2)の比率(A2/A1)は、20%以上かつ40%以下である、
請求項4記載のハニカム担体評価装置。
【請求項6】
前記燃焼ガスの流れ方向における前記拡散部材の上流側に配置され、前記拡散部材とは異なる形状を有する第2拡散部材
をさらに備える、
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のハニカム担体評価装置。
【請求項7】
前記第2拡散部材は、
筒部と、
前記筒部の内側に設けられた軸部と、
前記筒部の内周壁と前記軸部との間に延在されるとともに、前記筒部の周方向に互いに間隔をおいて配置された複数の羽部と
を有しており、
前記複数の羽部は、
前記燃焼ガスの流れ方向に関する上流側に配置された上流端と、
前記燃焼ガスの流れ方向に関する下流側に配置された下流端と、
をそれぞれ有しており、
前記上流端と前記下流端とが前記筒部の周方向に互いにずれて位置するように、前記筒部の軸方向にねじれて延在されている、
請求項6記載のハニカム担体評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DPF又は触媒担体等に利用されるハニカム担体の評価を行うためのハニカム担体評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリン車用のハニカム担体の評価項目の一つとして、エンジンを使用した耐熱衝撃性の確認(高温排気ガスと低温排気ガスとを交互にハニカム担体に供給し、ハニカム担体の破損有無の確認)を長時間行う冷熱耐久試験がある。エンジンを用いて冷熱耐久試験を行うと時間及び設備費用がかかる。下記の特許文献1では、エンジンの代わりにバーナーを用いてハニカム担体の試験を行うことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許5313732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らの検討の結果、エンジンの代わりにバーナーを用いてハニカム担体の試験を行ったところ、エンジンの排気ガスをハニカム担体に供給した場合と、バーナーの燃焼ガスをハニカム担体に供給した場合とで、ハニカム担体の内部の温度分布が変わるという新たな課題があることがわかった。具体的には、エンジンの排気ガスをハニカム担体に供給した場合、ハニカム担体の径方向における中央部と周辺部との間の温度差は50℃程度である。一方、バーナーの燃焼ガスをハニカム担体に供給した場合、ハニカム担体の径方向における周辺部の温度が上がらず、ハニカム担体の径方向における中央部と周辺部との間の温度差が150℃程度となった。すなわち、バーナーを用いる試験では、ハニカム担体が車両に搭載された際の温度分布を再現できず、評価精度が低くなっており、改善の余地があるものであった。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的の一つは、エンジンの代わりにバーナーを用いつつ、ハニカム担体の評価精度を向上できるハニカム担体評価装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るハニカム担体評価装置は、一実施形態において、燃焼ガスを発生させるためのバーナーと、燃焼ガスが送入されるための配管と、配管内に配置されたハニカム担体と、配管に設けられるとともに、燃焼ガスの流れ方向においてハニカム担体の上流側に配置され、燃焼ガスがハニカム担体に到達する前に燃焼ガスを拡散させるための拡散部材とを備え、バーナーの燃焼ガスをエンジンの排気ガスに代えてハニカム担体に供給するハニカム担体評価装置であり、拡散部材は、拡散部材の径方向における外周側に設けられた周辺部と、配管の径方向における中央部に配置され、燃焼ガスの流通を阻害する流通阻害部と、拡散部材の径方向において流通阻害部と周辺部との間に延在され、燃焼ガスの流通を許容する流通許容部とを有している円板状の部材であり、配管には、バーナーの先端の周囲を覆う燃焼管、ハニカム担体を格納するハウジング、及び燃焼管とハウジングとの間を接続する接続管が設けられており、拡散部材の周辺部は、接続管及びハウジングの内縁よりも外側に位置するとともに、接続管とハウジングとの間に挟み込まれている
【発明の効果】
【0007】
本発明のハニカム担体評価装置の一実施形態によれば、配管の径方向における中央部に配置され、燃焼ガスの流通を阻害する流通阻害部と、流通阻害部の周囲に配置され、燃焼ガスの流通を許容する流通許容部とを有する拡散部材をハニカム担体の上流に配置する。このため、バーナーの燃焼ガスをハニカム担体に供給してもハニカム担体の温度分布の偏りを低減でき、エンジンの代わりにバーナーを用いつつ、ハニカム担体の評価精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態によるハニカム担体評価装置を示す構成図である。
図2図1の第1拡散部材4を示す正面図である。
図3図1の第2拡散部材5を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。本発明は各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0010】
図1は、本発明の実施の形態によるハニカム担体評価装置を示す構成図である。図1に示すように、本実施の形態のハニカム担体評価装置には、バーナー1、配管2、ハニカム担体3、第1拡散部材4及び第2拡散部材5が設けられている。第1拡散部材4は本発明の拡散部材を構成し、第2拡散部材5は本発明の第2拡散部材を構成する。
【0011】
本実施の形態のバーナー1は、燃焼ガス1aを発生させるための機器である。本実施の形態のバーナー1には空気供給源10及び可燃ガス供給源11が接続されている。バーナー1は、空気供給源10からの空気10aと可燃ガス供給源11からの可燃ガス11aとを燃焼させて燃焼ガス1aを発生させる。空気供給源10は例えばコンプレッサー又はボンベ等により構成することができ、空気10aは圧縮空気であり得る。可燃ガス11aとしては、例えば液化天然ガス(LNG)等を使用することができる。
【0012】
バーナー1からの燃焼ガス1aは配管2に送入される。本実施の形態の配管2には、燃焼管20、接続管21及びハウジング22が設けられている。
【0013】
燃焼管20は、バーナー1の先端の周囲を覆うとともに、バーナー1からの燃焼ガス1aを接続管21に案内するための管である。
【0014】
本実施の形態の燃焼管20には、バイパス管200が接続されている。バイパス管200は、バーナー1を介さずに空気供給源10からの空気10aを燃焼管20に供給するための配管である。バイパス管200から燃焼管20に供給される空気10aを二次エアーと呼ぶ。二次エアーの供給量を調節することにより、燃焼ガス1aの温度及び燃焼ガス1aの空気過剰率λを調整することができる。バーナー1による燃焼ガス1aの発生が止められて、二次エアーのみが配管2内に送られてもよい。
【0015】
接続管21は、燃焼管20とハウジング22との間を接続するための管である。バーナー1からの燃焼ガス1aは、接続管21を通過してハウジング22に向かう。本実施の形態の接続管21の内径は、燃焼管20の内径及びハニカム担体3の外径よりも小さい。ハニカム担体3の外径が100mm程度であるとき、接続管21の内径が55mm程度であり得る。なお、ハニカム担体3の外径は、50~500mmの範囲内のものが用いられ、接続管21は、他の内径及び長さを有する他の接続管21に交換することができる。
【0016】
ハウジング22は、ハニカム担体3を格納する筐体である。ハウジング22には、筒部22a及び拡径部22bが設けられている。筒部22aは、ハニカム担体3の外径と同程度の内径を有する筒状部である。ハニカム担体3は、筒部22aの内側に収められている。拡径部22bは、燃焼ガス1aの流れ方向における下流側に向けて接続管21の内径から筒部22aの内径まで内径が徐々に拡がる筒状部である。本実施の形態では、燃焼ガス1aの流れ方向における下流側のハウジング22の端部は開放されている。
【0017】
本実施の形態のハニカム担体3は、柱状の構造体である。ハニカム担体3の素材としては、セラミックス又は金属が使用され得る。ハニカム担体3には、ハニカム担体3の長手方向に延びる複数のセルがハチの巣状に設けられている。複数のセルは、隔壁により互いに区画されて形成されており、ハニカム担体3の第1端面から第2端面までハニカム担体3を貫通している。また、複数のセルは、ハニカム担体3の内部において流体の流路を形成する。本実施の形態のハニカム担体3は、触媒を担持していてもよい。触媒としては、例えば、ハニカム担体3が車両の排気ガスの浄化に使用される場合、排気ガスを酸化又は還元する機能を有する触媒を用いることができる。触媒としては、貴金属(例えば、白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウム、インジウム、銀、金など)、アルミニウム、ニッケル、ジルコニウム、チタン、セリウム、コバルト、マンガン、亜鉛、銅、スズ、鉄、ニオブ、マグネシウム、ランタン、サマリウム、ビスマス、バリウムなどが挙げられる。これらの元素は、金属単体、金属酸化物、及びそれ以外の金属化合物であってもよい。また、触媒は、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
ハニカム担体3は、本実施の形態のハニカム担体評価装置により評価試験が行われる対象である。評価試験には、耐熱衝撃性の確認(高温ガスと低温ガスとを交互にハニカム担体3に供給し、ハニカム担体3の破損有無の確認)を長時間行う冷熱耐久試験が含まれる。冷熱耐久試験は、バーナー1からの燃焼ガス1a、二次エアー並びに燃焼ガス1a及び二次エアーの混合ガスがハニカム担体3に供給されることにより実施され得る。
【0019】
第1及び第2拡散部材4,5は、配管2に設けられるとともに、燃焼ガス1aの流れ方向においてハニカム担体3の上流側に配置されており、燃焼ガス1aがハニカム担体3に到達する前に燃焼ガス1aを拡散させるための部材である。第2拡散部材5は、第1拡散部材4よりも上流側に配置されている。第2拡散部材5は、第1拡散部材4と異なる形状を有することが好ましい。但し、第2拡散部材5の形状が第1拡散部材4の形状と同じであってもよい。本実施の形態では、第1拡散部材4は接続管21とハウジング22との間に挟み込まれており、第2拡散部材5は燃焼管20と接続管21との間に挟み込まれている。
【0020】
次に、図2は、図1の第1拡散部材4を示す正面図である。図2に示すように、本実施の形態の第1拡散部材4は、円板状の部材である。第1拡散部材4には、周辺部40、流通阻害部41及び流通許容部42が設けられている。
【0021】
周辺部40は、第1拡散部材4の径方向における外周側に設けられた円環状の部分である。周辺部40には、周方向に互いに離間する複数の貫通孔400が設けられている。周辺部40は、接続管21とハウジング22との間に挟み込まれる。第1拡散部材4を接続管21及びハウジング22に固定する際に、ボルト及びナット等の締結部材が貫通孔400に通される。第1拡散部材4が接続管21及びハウジング22に取り付けられた際、第1拡散部材4、接続管21及びハウジング22が互いに同軸であることが好ましい。また、第1拡散部材4が接続管21及びハウジング22に取り付けられた際、周辺部40は、図2において二点鎖線で示す接続管21及びハウジング22の内縁21a,22cよりも外側に位置する。周辺部40(接続管21及びハウジング22の内縁21a,22c)の内側に流通阻害部41及び流通許容部42が設けられている。
【0022】
流通阻害部41は、配管2(接続管21及びハウジング22)の径方向における中央部に配置されており、燃焼ガス1aの流通を阻害するための部分である。本実施の形態の流通阻害部41は、第1拡散部材4の中央部に設けられた孔に取り付けられた円板体によって構成されている。流通阻害部41は、後述の開口420が設けられていない非開口部等の他の態様を採ってもよい。
【0023】
流通許容部42は、流通阻害部41の周囲に配置され、燃焼ガス1aの流通を許容するための部分である。本実施の形態の流通許容部42は、互いに離間して設けられた複数の開口420を有している。本実施の形態の開口420は、複数の列をなすように配置されている。図2では、鉛直方向に対して45度傾斜する複数の平行線に沿って開口420が配置されている。また、開口420は千鳥配置されている。すなわち、第1列の開口420は、第1列の隣に位置する第2列の開口420に対して第1及び第2列の延在方向にずれて配置されている。但し、開口420の配置は、任意であり、例えば放射状等の他の配置であってもよい。
【0024】
第1拡散部材4が設けられている位置を燃焼ガス1aが通過する際、接続管21及びハウジング22の径方向における中央部の燃焼ガス1aの流れが流通阻害部41によって阻害される。燃焼ガス1aは、流通阻害部41を迂回して、流通許容部42を通って下流に向かう。このとき、接続管21及びハウジング22の径方向における中央部の燃焼ガス1aが、接続管21及びハウジング22の径方向における周辺部の燃焼ガス1aと攪拌される。このため、第1拡散部材4の下流側では、ハウジング22の径方向における燃焼ガス1aの温度分布が一様となるか又は一様に近づけられる。バーナー1の燃焼ガス1aをハニカム担体3に直接供給すると、ハニカム担体3の径方向における周辺部の温度が上がらず、ハニカム担体の径方向における中央部と周辺部との間の温度差が大きくなることがある。本実施の形態のように、第1拡散部材4を用いることにより、バーナー1の燃焼ガス1aをハニカム担体3に供給してもハニカム担体3の温度分布の偏りを低減でき、エンジンの代わりにバーナー1を用いつつ、ハニカム担体3の評価精度を向上できる。
【0025】
第1拡散部材4に隣接する位置における配管2(接続管21及びハウジング22)の内径D1に対する流通阻害部41の外径D2の比率D2/D1は、45%以上かつ65%以下であることが好ましい。比率D2/D1が45%以上であると、流通阻害部41を迂回する燃焼ガス1aの流れが適度となり、燃焼ガス1aの流れの攪拌作用がより向上する。一方、比率D2/D1が65%を超えると、流通阻害部41による燃焼ガス1aの流れの阻害が過多となり、ハニカム担体中央部の温度が上がりにくくなる虞がある。なお、図2では、内径D1が55mmであり、外径D2が30mmであり、比率D2/D1が約55%の態様を示している。
【0026】
第1拡散部材4は、燃焼ガス1aの流れ方向に関するハニカム担体3の上流側端面3a(図1参照)から80mm以上かつ120mm以下の位置に配置されていることが好ましい。第1拡散部材4とハニカム担体3の上流側端面3aとの離間距離が80mm未満であると、ハニカム担体外周部の温度が上がりにくくなる虞がある。一方、離間距離が120mmを超えると、ハニカム担体外周部の温度が上がりにくくなる虞がある。なお、ハニカム担体3側の第1拡散部材4の端面を基準として離間距離を測定することができる。
【0027】
流通阻害部41の外縁41aと第1拡散部材4に隣接する位置における配管2の内縁(接続管21及びハウジング22の内縁21a,22c)との間に位置する円環領域の全面積A1に対する複数の開口420の合計開口面積A2の比率A2/A1は、20%以上かつ40%以下であることが好ましい。比率A2/A1が20%未満であると、抵抗が大きくなりバーナーが燃焼しなくなる虞がある。一方、比率A2/A1が40%を超えると、ハニカム担体外周部の温度が上がりにくくなる虞がある。
【0028】
開口420は、流通阻害部41の外縁41aと第1拡散部材4に隣接する位置における接続管21及びハウジング22の内縁21a,22cとの間に位置する円環領域に均一に分散されていることが好ましい。均一に分散されているとは、円環領域を複数の区画に分けた際に、各区画の開口率の差が所定範囲内に収まることと理解することができる。各区画の開口率は、各区画の全面積に対する開口420の合計開口面積である。例えば、円環領域の中心で直交する2つ直線により円環領域を4つの区画に分けた際に、各区画の開口率の差が20%以内に収まる場合に、開口420が均一に分散されていると理解することができる。
【0029】
次に、図3は、図1の第2拡散部材5を示す構成図である。図3の(a)は第2拡散部材5の正面図であり、(b)は第2拡散部材5の右側面図であり、(c)は第2拡散部材5の背面図である。図3に示すように、本実施の形態の第2拡散部材5は、ボビン形状の部材である。第2拡散部材5には、筒部50、第1フランジ51、第2フランジ52、軸部53及び複数の羽部54が設けられている。
【0030】
筒部50は、第2拡散部材5に隣接する位置における燃焼管20及び接続管21の内径と同じ内径を有する筒状の部分である。
【0031】
第1及び第2フランジ51,52は、筒部50の軸方向における両端において筒部50の外周面から径方向外方に突出された円環状の部分である。第1及び第2フランジ51,52には、周方向に互いに離間して設けられた複数の貫通孔510,520がそれぞれ設けられている。燃焼管20に設けられたフランジと第1フランジ51とが隣接された後、ボルト及びナット等の締結部材が貫通孔510に通されて、第2拡散部材5が燃焼管20に取り付けられる。同様に、接続管21に設けられたフランジと第2フランジ52とが隣接された後、ボルト及びナット等の締結部材が貫通孔520に通されて、第2拡散部材5が接続管21に取り付けられる。第2拡散部材5が燃焼管20及び接続管21に取り付けられた際、第2拡散部材5の筒部50、燃焼管20及び接続管21が同軸であることが好ましい。
【0032】
軸部53は、筒部50の内側に設けられている。軸部53は、筒部50の径方向中心において筒部50の軸方向に延在されている。
【0033】
複数の羽部54は、筒部50の内周壁500と軸部53との間に延在されるとともに、筒部50の周方向に互いに間隔をおいて配置された板状の部分である。複数の羽部54は、燃焼ガス1aの流れ方向に関する上流側に配置された上流端540u(図3の(a)参照)と、燃焼ガス1aの流れ方向に関する下流側に配置された下流端540d(図3の(c)参照)とをそれぞれ有している。複数の羽部54は、上流端540uと下流端540dとが筒部50の周方向に互いにずれて位置するように、筒部50の軸方向燃焼ガスの流れ方向にねじれて延在されている。
【0034】
例えば、図3の(a)において、上流端540uの端部が時計の12時位置に設けられた羽部54を第1羽部541と呼ぶ。図3の(a)のように第2拡散部材5を正面から見たとき、第1羽部541は下流側に向かうにつれて時計の9時位置に近づくようにねじれながら延在する。図3(c)のように第2拡散部材5を背面から見たとき、上流端540uの端部は時計の3時位置(正面から見たときの9時位置)に位置している。図3の(a)及び(c)に示すように筒部50の一端側から第2拡散部材5を軸方向に沿って見たとき、筒部50の内側は各羽部54で占められており、筒部50の他端側は見えない。図3の(a)及び(c)では、上流端540u及び下流端540dに隣接して描いた白抜きの扇形により、各羽部54が奥行を有していることを表現している。また、白抜きの扇形に隣接した網掛けの扇形により各羽部54の表面を表現している。筒部50内には、燃焼ガス1aのねじれた流路が形成されている。図3の(a)及び(c)では、各羽部54がねじれる方向及びねじれた流路に沿って進む燃焼ガス1aの流れを二点鎖線の矢印にて表現している。ねじれた流路に沿って燃焼ガス1aが流れることにより、燃焼ガス1aが攪拌される。
【0035】
なお、図3の(a)及び(c)において、上流端540u及び下流端540dを長方形で示しているが、上流端540u及び下流端540dはうねりを持ったより複雑な形状とすることができる。
【0036】
次に、実施例を挙げる。実施例として、図1に示すハニカム担体評価装置にてハニカム担体3の温度分布調査を行った。実施例の具体的な条件は、以下の通りである。
【0037】
すなわち、ハニカム担体3の上流側端面3aを基準に100mmの位置に第1拡散部材4を配置し、1100mmの位置に第2拡散部材5を配置した。
【0038】
第1拡散部材4としては、板厚3mmの円板状の部材を使用した。その部材の中心直径30mmの範囲に流通阻害部41を形成するとともに、その周囲25mmの円環領域に流通許容部42を形成した。流通許容部42は、上下左右3mm間隔で直径5mmの開口420を均一に設けることにより形成した。
【0039】
第2拡散部材5としては、内径55mmの筒部50の内側に4枚の羽部54を設けたものを使用した。羽部54の形状は、厚さ2mm、高さ27mm、長さ60mmとした。各羽部54は、燃焼ガス1aの流れ方向に関する第2拡散部材5の上流側と下流側との間で90度ねじられている。
【0040】
接続管21の内径は55mmとした。燃焼ガス1aの流量V1と二次エアーの流量V2との割合V1:V2を8:2とした。
【0041】
また、比較例として、第1及び第2拡散部材4,5を省略して、ハニカム担体3の温度分布調査を行った。その他の条件は、実施例と同様である。
【0042】
比較例では、ハニカム担体3の径方向における周辺部の温度が上がらず、ハニカム担体3の径方向における中央部と周辺部との間の温度差が150℃程度となった。一方、実施例では、ハニカム担体3の径方向における中心部のみならず周辺部の温度も上がり、ハニカム担体3の径方向における中央部と周辺部との間の温度差が50℃程度となった。この温度差50℃程度は、バーナー1を用いずにエンジンからの排気ガスをハニカム担体3に供給した場合と同程度である。
【0043】
本実施の形態のようなハニカム担体評価装置では、配管2の径方向における中央部に配置され、燃焼ガス1aの流通を阻害する流通阻害部41と、流通阻害部41の周囲に配置され、燃焼ガス1aの流通を許容する流通許容部42とを有する第1拡散部材4をハニカム担体3の上流に配置するので、バーナー1の燃焼ガス1aをハニカム担体3に供給してもハニカム担体3の温度分布の偏りを低減でき、エンジンの代わりにバーナー1を用いつつ、ハニカム担体3の評価精度を向上できる。
【0044】
また、第1拡散部材4に隣接する位置における配管2の内径D1に対する流通阻害部41の外径D2の比率D2/D1が45%以上かつ65%以下であるので、十分な燃焼ガス1aの流れの攪拌作用を確保しつつ、ハニカム担体3の温度分布をより均一にできる。
【0045】
また、第1拡散部材4は、燃焼ガスの流れ方向に関するハニカム担体の上流側端面から80mm以上かつ120mm以下の位置に配置されているので、ハニカム担体3の温度分布をより均一にできる。
【0046】
また、流通許容部42は、互いに離間して設けられた複数の開口を有しているので、容易に流通許容部42を形成でき、第1拡散部材4の部品コストを低減できる。
【0047】
また、流通阻害部41の外縁41aと第1拡散部材4に隣接する位置における配管2の内縁との間に位置する円環領域の全面積A1に対する複数の開口420の合計開口面積A2の比率A2/A1が20%以上かつ40%以下であるので、ハニカム担体3の温度分布をより均一にできる。
【0048】
また、燃焼ガス1aの流れ方向における第1拡散部材4の上流側に第1拡散部材4とは異なる形状を有する第2拡散部材5が配置されているので、第1及び第2拡散部材4,5において異なる方式で燃焼ガス1aの攪拌を行うことができ、ハニカム担体3の温度分布の偏りをより確実に低減できる。
【0049】
また、上流端540uと下流端540dとが筒部50の周方向に互いにずれて位置するように、筒部50の軸方向にねじれて延在された複数の羽部54を第2拡散部材5が有しているので、より確実に第1及び第2拡散部材4,5において異なる方式で燃焼ガス1aの攪拌を行うことができる。
【0050】
なお、実施の形態では、第1拡散部材4の上流に第2拡散部材5が設けられるように説明したが、第2拡散部材は省略されてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 バーナー、1a 燃焼ガス、2 配管、3 ハニカム担体、4 第1拡散部材、41 流通阻害部、42 流通許容部、420 開口、5 第2拡散部材、50 筒部、53 軸部、54 羽部、540d 下流端、540u 上流端、500 内周壁
図1
図2
図3