(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】履物製品のアッパー
(51)【国際特許分類】
A43B 23/02 20060101AFI20220613BHJP
A43B 1/04 20220101ALI20220613BHJP
【FI】
A43B23/02 101A
A43B1/04
(21)【出願番号】P 2019072241
(22)【出願日】2019-04-04
(62)【分割の表示】P 2015560293の分割
【原出願日】2014-02-27
【審査請求日】2019-04-11
(32)【優先日】2013-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514144250
【氏名又は名称】ナイキ イノベイト シーブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】デュア,ブペシュ
(72)【発明者】
【氏名】ハッファ,ブルース
(72)【発明者】
【氏名】メイア,エイドリアン
(72)【発明者】
【氏名】シェイファー,ベンジャミン,エイ.
【審査官】新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-512698(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0118018(US,A1)
【文献】特表2010-508994(JP,A)
【文献】国際公開第2011/043998(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2003/0200679(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 23/00-23/26
A43B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニット構成要素を備えるアッパーであって、
前記ニット構成要素は、
前記アッパーの外側面、および前記外側面の反対側の内側面であって空洞を画定する内側面の少なくともどちらかの部分を画定するニット要素と、
前記アッパーのスロート区域を通って
前記アッパーのカラー領域から足先領域まで延びる一体型ニットのベロであり、
前記アッパーと、前記スロート区域で、外側
側部の少なくとも一部において、および、内側
側部の少なくとも一部において、結合されて
いる、一体型ニットのベロと、
前記スロート区域の前記外側
側部に沿って前記ニット要素の前記外側面の上に所定の高さで延びる第1の一体型ニットの隆起要素、および、
前記スロート区域の前記内側
側部に沿って延びる第2の一体型ニットの隆起要素であり、平らな状態のときに前記一体型ニットのベロの領域に重なる、第1の一体型ニットの隆起要素および第2の一体型ニットの隆起要素と、を含む、
履物製品用のアッパー。
【請求項2】
前記第1の一体型ニットの隆起要素、前記第2の一体型ニットの隆起要素、および前記ニット要素は、共通のヤーンを共有している、請求項1に記載のアッパー。
【請求項3】
前記第1の一体型ニットの隆起要素および前記第2の一体型ニットの隆起要素は、締めひもを受容するように構成された少なくとも1つの締めひも開口部をさらに備える、請求項1に記載のアッパー。
【請求項4】
前記一体型ニットのベロは、前記ニット要素と少なくとも部分的に一体の部分と自由部分とを備え、
前記部分的に一体の部分は、前記スロート区域の前方部において前記ニット要素と共通のヤーンを共有し、
前記自由部分は、前記部分的に一体の部分と共通のヤーンを共有し、かつ前記ニット要素の残りの部分には取り付けられないままである、請求項1に記載のアッパー。
【請求項5】
前記ニット要素は、第1の種類のヤーンを含み、
前記一体型ニットのベロは、第2の種類のヤーンを含み、前記第2の種類のヤーンは前記第1の種類のヤーンとは異なる特性を有する、請求項1に記載のアッパー。
【請求項6】
前記第2の種類のヤーンは弾性糸である、請求項5に記載のアッパー。
【請求項7】
前記ニット構成要素は、少なくとも2つのニット要素層を備え、
前記少なくとも2つのニット要素層は、
前記外側面を形成している前記ニット構成要素の一部を含む第1のニット要素層と、
前記内側面を形成している前記ニット構成要素の一部を含む第2のニット要素層と、を含み、
前記第2のニット要素層は前記ベロを含む、請求項1に記載のアッパー。
【請求項8】
前記第1のニット要素層および前記第2のニット要素層の少なくとも第1の部分は、前記アッパーの前記スロート区域に沿って分離されている、請求項7に記載のアッパー。
【請求項9】
前記第1のニット要素層および前記第2のニット要素層の少なくとも第2の部分は、前記アッパーの前記スロート区域に沿って接合されている、請求項8に記載のアッパー。
【請求項10】
ニット構成要素を備えるアッパーであって、
前記ニット構成要素は、
前記アッパーの外側面、および前記外側面の反対側の内側面であって空洞を画定する内側面の少なくともどちらかの部分を画定するニット要素を含み、
前記ニット要素は、前記アッパーのスロート区域に沿って
前記アッパーのカラー領域から足先領域まで延び、かつ、前記アッパーのスロート区域を画定する一体型ニットのベロを含み、前記一体型ニットのベロは、
前記アッパーと、前記前記スロート区域で、外側
側部の少なくとも一部において、および、内側
側部の少なくとも一部において、結合されており、
ニット構成要素は、さらに、
前記ニット要素の前記外側面の上に所定の高さで延び、かつ
前記スロート区域の前記外側
側部に沿って所定の長さで延びている第1の一体型ニットの隆起要素と、
前記ニット要素の前記外側面の上に所定の高さで延び、かつ
前記スロート区域の前記内側
側部に沿って所定の長さで延びている第2の一体型ニットの隆起要素と、を含み、
前記第1の一体型ニットの隆起要素は、前記スロート区域の前記外側
側部を通って延び、前記アッパーの外側側部で前記ニット要素に及ぶ第1のヤーンを含み、
前記第2の一体型ニットの隆起要素は、前記スロート区域の前記内側
側部を通って延び、前記アッパーの内側側部で前記ニット要素に及ぶ第2のヤーンを含む、
履物製品用のアッパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、履物製品用のアッパーに関し、より詳細には、ニット構成要素を組み込んだ履物製品用のアッパーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の履物製品は、一般に、2つの主な構成要素、すなわち、アッパーと、ソール構造とを含む。アッパーは、ソール構造に固定され、足を快適にかつ安定して受け入れるために、履物の内部に空洞を形成する。ソール構造は、それによってアッパーと地面との間に位置するように、アッパーの下側区域に固定されている。例えば、運動用の履物では、ソール構造は、ミッドソールとアウトソールとを含んでいてもよい。ミッドソールは、多くの場合、地面の反力を弱めて、歩くとき、走るとき、および他の歩行活動中に足および脚にかかる応力を低減するポリマー発泡材料を含んでいる。さらに、ミッドソールは、力をさらに弱め、安定性を高め、または足の動きに影響を与える液体充填チャンバ、プレート、モデレータ、または他の要素を含んでいてもよい。アウトソールは、ミッドソールの下面に固定されて、ゴムなどの耐久性のある耐摩耗性材料で形成されたソール構造の地面係止部を提供する。ソール構造は、履物の快適性を高めるために、空洞内に配置され、足の下面に近接する中敷きも含んでいてもよい。
【0003】
アッパーは大略的に、足の甲およびつま先の区域にわたり、足の内側側部および外側側部に沿って、足の下、ならびに足のかかと区域の周りに延びている。バスケットボール用履物およびブーツなどいくつかの履物製品では、アッパーは上方に、足首の周りに延びて、足首に支持または保護を与えてもよい。アッパーの内部の空洞へのアクセスは一般に、履物のかかと区域にある足首開口部によって提供される。アッパーの履き心地を調整するために、しばしば締めひもシステムがアッパーに組み込まれ、それによりアッパー内の空洞に足を入れ、足を抜くことが可能になる。締めひもシステムにより、着用者がアッパーの特定の寸法、特に周長を調節して、さまざまな寸法の足を収容することもできる。加えて、アッパーは、締めひもシステムの下に延びて、履物の調節可能性を高めるベロを含んでいてもよく、アッパーは、かかとの動きを制限するために、ヒールカウンタを組み込んでいてもよい。
【0004】
さまざまな材料要素(例えば、織物、ポリマー発泡体、ポリマーシート、革、合成皮革)が、従来、アッパーを製造する際に利用されている。例えば、運動用の履物では、アッパーは、それぞれがさまざまな接合材料要素を含む複数の層を有していてもよい。例として、材料要素は、耐伸縮性、耐摩耗性、柔軟性、通気性、圧縮性、快適性および速乾性をアッパーの異なる区域に付与するように選択してもよい。アッパーの異なる区域に異なる特性を付与するために、材料要素を所望の形状に切断してから、通常は、縫製または接着剤で互いに接合することが多い。また、材料要素は、同じ区域に複数の特性を付与するために層状構成で接合されることが多い。アッパーに組み込まれる材料要素の数および種類が増えるにつれ、材料要素の輸送、保管、切断および接合に関連する時間および費用も増加することがある。切断および縫製プロセスから出る廃材も、アッパーに組み込まれる材料要素の数および種類が増えるにつれて、さらに多く蓄積する。さらに、アッパーの材料要素の数が多くなるほど、種類および数が少ない材料要素から形成されているアッパーよりもリサイクルが難しくなることがある。そのため、アッパーに利用する材料要素の数を減らすことにより、アッパーの製造効率およびリサイクル性を高めながら、廃棄物を少なくすることができる。
【0005】
したがって、一体型ニットベロを有するニット構成要素を組み込んだ履物製品に対するニーズが存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開第2010/0154256号明細書
【文献】米国特許出願公開第2012/0233882号明細書
【文献】米国特許第8,621,891号明細書
【文献】米国特許第8,448,474号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
履物製品のさまざまな構成は、アッパーと、そのアッパーに固定されたソール構造とを有してもよい。アッパーおよび一体型ニットベロを含むニット構成要素が、履物製品に組み込まれる。アッパーおよび一体型ニットベロは、ワンピースニット要素として形成される。ニット要素は、アッパーの外側面の一部と、アッパーの反対側の内側面を画定し、その内側面は、足を収容するための空洞を画定している。一体型ニットベロは、ワンピースニット要素としてアッパーを有する一体ニット構造から形成され、アッパーのスロート区域を通って延びている。一体型ニットベロは、締めひもシステムのために締めひも開口部を提供する隆起要素を組み込んでいる。
【0008】
一態様において、本発明は、アッパーとアッパーに固定されたソール構造を有し、ニット構成要素を組み込んだ履物製品を提供する。履物製品は、ニット構成要素のアッパーを画定する部分と、アッパーを有する一体ニット構造から形成されニット構成要素のスロート区域を通って延びている一体型ニットベロとを備え、アッパーはニット構成要素の外側面および反対側の内側面の少なくともどちらかの部分を含み、内側面は足を収容するための空洞を画定し、一体型ニットベロはアッパーの前方部分から足首開口部まで延びているニット構成要素のスロート区域の外側側部および内側側部の一部に少なくとも沿って、スロート区域の前方部分に接合されている。
【0009】
別の態様では、本発明は、履物製品のためのニット構成要素を提供する。ニット構成要素は、ニット構成要素のアッパーを画定する部分と、アッパーを有する一体ニット構造から形成されニット構成要素のスロート区域を通って延びている一体型ニットベロとを備え、アッパーはニット構成要素の外側面および反対側の内側面の少なくともどちらかの部分を含み、内側面は足を収容するための空洞を画定するように構成され、一体型ニットベロはアッパーの前方部分から足首開口部まで延びているニット構成要素のスロート区域の外側側部および内側側部の一部に少なくとも沿って、スロート区域の前方部分に接合されている。
【0010】
別の態様では、本発明は、履物製品のためのニット構成要素を提供する。ニット構成要素は、アッパーと、アッパーを有する一体ニット構造から形成されニット構成要素のスロート区域を通って延びている一体型ニットベロとを備え、ニット構成要素は、ニット構成要素の外側面の一部を含む第1のニット要素層と、外側面と反対側に位置し足を収容するための空洞を画定するように構成されたニット構成要素の内側面の一部を備える第2のニット要素層とを含む少なくとも2つのニット要素層を備え、一体型ニットベロはアッパーの前方部分から足首開口部まで延びているニット構成要素のスロート区域の外側側部および内側側部の一部に少なくとも沿って、スロート区域の前方部分に接合されている。
【0011】
本発明のその他のシステム、方法、特徴および利点は、以下の図面および発明を実施するための形態を考察することによって当業者には明らかであるか、または明らかになるであろう。このような追加のシステム、方法、特徴および利点はすべて、本明細書および本概要に包含され、本発明の範囲内であり、以下の特許請求の範囲により保護されることが意図される。
【0012】
本発明は以下の図面および記述を参照することにより、より良く理解することができる。図面内の構成要素は必ずしも縮尺通りではなく、むしろ本発明の原理を示すにあたり強調されている。さらに、図中において、同様の参照番号は、異なる図面を通して対応する部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】履物製品の例示的実施形態の外側面図である。
【
図3】履物製品の例示的実施形態の内側面図である。
【
図4A】
図2および
図3の切断線4Aで定義される履物製品の断面図である。
【
図4B】
図2および
図3の切断線4Bで定義される履物製品の断面図である。
【
図5】一体型ニットベロを有するニット構成要素の例示的実施形態の平面図である。
【
図6】
図5の切断線6で定義される一体型ニットベロを有するニット構成要素の断面図である。
【
図7】ニット構成要素の一体型ニットベロの拡大模式図である。
【
図8】一体型ニットベロを有するニット構成要素の代替的実施形態の平面図である。
【
図9】
図8の切断線9で定義される、一体型ニットベロを有するニット構成要素の断面図である。
【
図10】部分的に一体の部分を有する一体型ニットベロを有するニット構成要素の代替的実施形態の平面図である。
【
図11】部分的に一体の部分を有するニット構成要素の一体型ニットベロの拡大模式図である。
【
図12】
図11の切断線12で定義される、部分的に一体の部分を有する一体型ニットベロを有するニット構成要素の断面図である。
【
図13】部分的に分離したニット要素を有する一体型ニットベロを有するニット構成要素の代替的実施形態の平面図である。
【
図14】
図13の切断線14で定義される、部分的に分離したニット要素を有するニット構成要素の一体型ニットベロの断面図である。
【
図15】
図13の切断線15で定義される、部分的に分離したニット要素を有するニット構成要素の一体型ニットベロの断面図である。
【
図16】一体型ニットベロの例示的実施形態のループ図である。
【
図18】動作中の編み機の内部部品の模式図である。
【
図19】一体型ニットベロを有するニット構成要素を製造するための、動作中の編み機の内部部品の模式図である。
【
図20】一体型ニットベロを有するニット構成要素を製造するための、動作中の編み機の内部部品の模式図である。
【
図21】一体型ニットベロを有するニット構成要素を製造するための、動作中の編み機の内部部品の模式図である。
【
図22】部分的に一体の部分を有する一体型ニットベロを有するニット構成要素を製造するための、動作中の編み機の内部部品の模式図である。
【
図23】部分的に一体の部分を有する一体型ニットベロを有するニット構成要素を製造するための、動作中の編み機の内部部品の模式図である。
【
図24】部分的に一体の部分を有する一体型ニットベロを有するニット構成要素を製造するための、動作中の編み機の内部部品の模式図である。
【
図25】部分的に一体の部分を有する一体型ニットベロを有するニット構成要素を製造するための、動作中の編み機の内部部品の模式図である。
【
図26】部分的に分離したニット層を有する一体型ニットベロを有するニット構成要素を製造するための、動作中の編み機の内部部品の模式図である。
【
図27】部分的に分離したニット層を有する一体型ニットベロを有するニット構成要素を製造するための、動作中の編み機の内部部品の模式図である。
【
図28】部分的に分離したニット層を有する一体型ニットベロを有するニット構成要素を製造するための、動作中の編み機の内部部品の模式図である。
【
図29】部分的に分離したニット層を有する一体型ニットベロを有するニット構成要素を製造するための、動作中の編み機の内部部品の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の考察および添付の図面は、ニット構成要素およびニット構成要素の製造に関連する種々の概念を開示する。ニット構成要素は種々の製品に使用されてもよいが、ニット構成要素のうち1つを組み込んだ履物製品が一例として以下で開示される。履物の他に、ニット構成要素は他の種類の衣料品(例えば、シャツ、ズボン、靴下、上着、下着)、運動用品(例えば、ゴルフバッグ、野球およびフットボール用のグローブ、サッカーボールの規制構造体)、入れ物(例えば、バックパック、バッグ)、および家具の装飾用品(例えば、椅子、ソファ、カーシート)に利用してもよい。ニット構成要素はベッドカバーリング(例えば、シーツ、毛布)、テーブルカバーリング、タオル、旗、テント、帆およびパラシュートに利用してもよい。ニット構成要素は、自動車および航空宇宙産業用の構造物、フィルタ材料、医療用の布(例えば、包帯、綿棒、インプラント)、堤防を補強するためのジオテキスタイル、作物を保護するためのアグロテキスタイル、ならびに熱および放射から保護または絶縁する工業用衣料品を含む、産業用の工業用布として利用してもよい。したがって、本明細書で開示されるニット構成要素および他の概念は、個人用および産業用の両方の目的のための種々の製品に組み込んでもよい。
【0015】
履物の構成
図1から
図15は、本明細書で説明され示される原理による種々の履物の構成を示す。特に、
図1から
図4Bは、アッパーと一体型ニットベロとを含むニット構成要素を組み込んだ履物製品の例示的実施形態を示す。
【0016】
図1から
図4Bは、単純に履物100とも呼ぶ、履物製品100の例示的実施形態を示す。いくつかの実施形態では、履物製品100は、ソール構造110とアッパー120とを含んでもよい。履物100は、走るのに適した全体的構成を有して示されているが、履物100に関連する概念は、例えば野球靴、バスケットボールシューズ、サイクリングシューズ、フットボールシューズ、テニスシューズ、サッカーシューズ、トレーニングシューズ、ウォーキングシューズ、およびハイキングブーツを含め、さまざまな他の運動用の履物の種類にも適用することができる。この概念は、ドレスシューズ、ローファー、サンダルおよび作業靴を含め、一般に非運動用と考えられる履物の種類にも適用することができる。したがって、履物100に関して開示される概念は、多様な履物の種類に適用することができる。
【0017】
参考のために、
図1、
図2、および
図3に示されるように、履物100は大略的に、足先領域101、中足領域102、およびかかと領域103の3つの領域に分割してもよい。足先領域101は、大略的に、つま先、および中足骨と指骨とを接続する関節に対応する履物100の部分を含んでいる。中足領域102は、大略的に、足のアーチ区域に対応する履物100の部分を含んでいる。かかと領域103は、大略的に、踵骨を含む足の後部に対応している。履物100は外側側部104および内側側部105も含んでおり、足先領域101、中足領域102、およびかかと領域103のそれぞれを通って延びており、履物100の両側に対応する。より具体的には、外側側部104は足の外側部位に対応し(つまり、反対の足から遠ざかる方を向く面)、内側側部105は足の内側部位に対応する(つまり、反対の足の方を向く面)。足先領域101、中足領域102、およびかかと領域103、ならびに外側側部104、内側側部105は履物100の厳密な区域を区切ることを意図していない。むしろ、足先領域101、中足領域102、およびかかと領域103、ならびに外側側部104、内側側部105は、以下の説明における一助となるように、履物100の大略的な区域を表すことを目的としている。履物100に加えて、足先領域101、中足領域102、およびかかと領域103、ならびに外側側部104、内側側部105はソール構造110、アッパー120およびそれらの個々の要素に適用してもよい。
【0018】
例示的実施形態において、ソール構造110はアッパー120に固定されていて、履物100を履いたときに足と地面との間に延びる。いくつかの実施形態では、ソール構造110の主要な要素はミッドソール111、アウトソール112、および中敷き113である(
図4Aおよび
図4Bに示される)。ミッドソール111はアッパー120の下面に固定されて、歩いているとき、走っているとき、または他の歩行活動中に足と地面との間で圧縮されると、地面の反力を弱める(つまり、クッション材となる)圧縮可能なポリマー発泡体要素(例えば、ポリウレタンまたはエチルビニルアセテート発泡体)から形成してもよい。その他の実施形態では、ミッドソール111は、さらに力を弱め、安定性を高め、もしくは足の動きに影響を与えるプレート、モデレータ、液体充填チャンバ、ラスティング要素、もしくはモーションコントロール部材を組み込んでもよく、またはミッドソール111は主に液体充填チャンバから形成してもよい。アウトソール112はミッドソール111の下面に固定されて、牽引力を付与するように織られた耐摩耗性のゴム材料から形成してもよい。中敷き113はアッパー120内に配置されていて、足の下面の下に延びて履物100の快適性を高めるように位置付けられている。ソール構造110のこの構成はアッパー120と接続して使用してもよいソール構造の一実施例を提供しているが、ソール構造110のさまざまな他の従来の構成または従来にない構成も利用してもよい。したがって、その他の実施形態では、ソール構造110またはアッパー120とともに利用される任意のソール構造の特徴は変わってもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、アッパー120は、ソール構造110に対して足を収容し固定するための空洞を履物100内に画定する。空洞は足を収容するような形状にされており、足の外側側部に沿い、足の内側側部に沿い、足の上、かかとの周り、さらに足の下に延びている。空洞へのアクセスは、少なくともかかと領域103に配置されている足首開口部121により提供される。いくつかの実施形態では、スロート区域123がかかと領域103の足首開口部121から足の甲に対応する区域の上、そして足先領域101に隣接する区域まで延びている。例示的実施形態において、一体型ニットベロ140は、アッパー120を有する一体ニット構造から形成され、アッパー120のスロート区域123を通って外側側部104と内側側部105との間に延びている。
【0020】
締めひも122が一体型ニットベロ140の隆起要素142内のさまざまな締めひも開口部143を通って延びており、着用者がアッパー120の寸法を調整してさまざまな大きさの足を収容できるようにする。さらに具体的には、締めひも122は着用者が足の周りにアッパー120を締めつけることができるようにし、締めひも122によって空洞からの(つまり、足首開口部121を通して)足の出し入れを容易にするために、着用者がアッパー120を緩めることができる。さらに、アッパー120の一体型ニットベロ140は締めひも122の下に延びて履物100の快適性を高める。さらなる構成では、アッパー120は、(a)かかと領域103に安定性を高めるヒールカウンタ、(b)足先領域101に耐摩耗性材料で形成されているつま先ガード、ならびに(c)ロゴ、商標、ならびに注意書きおよび材料情報を記載した札のような追加の要素を含んでいてもよい。
【0021】
従来の履物のアッパーの多くは、例えば縫製または接着により接合されている複数の材料要素(例えば、織物、ポリマー発泡体、ポリマーシート、革、合成皮革)から形成されている。対照的に、アッパー120の大部分はニット構成要素130から形成されており、足先領域101、中足領域102、およびかかと領域103のそれぞれを通って、外側側部104および内側側部105の両方に沿い、足先領域101の上、さらにかかと領域103の周りに延びている。加えて、ニット構成要素130はアッパー120の外側面および反対側の内側面の両方の部分を形成している。このように、ニット構成要素130はアッパー120内の空洞の少なくとも一部を画定している。いくつかの構成では、ニット構成要素130は足の下にも延びていてもよい。しかし、
図4Aおよび
図4Bを参照すると、ストローベル式中敷き125がニット構成要素130およびミッドソール111の上面に固定されており、それにより中敷き113の下に延びているアッパー120の一部を形成している。
【0022】
いくつかの実施形態では、ニット構成要素130は、一体ニット構造から形成されるアッパー120および一体型ニットベロ140を含んでもよい。アッパー120および一体型ニットベロ140を含むニット構成要素は、比較的小さい数の材料要素で形成してもよい。前記背景技術セクションで述べたように、アッパーを形成するのに使用する材料要素の数を減らすことによって、廃棄物を少なくするとともに、アッパーの製造効率およびリサイクル性を高めることができる。従来のアッパーの、ベロおよびカラーなどのその他の部分は、後に接合される複数の別個の材料要素から形成することが多い。しかしながら、さらに詳細に以下で論じるように、一体型ニットベロ要素は主に、廃棄物を減らしかつ製造効率およびリサイクル性を高める(ステッチ&ターン法ではなく)編みプロセスを通して形成してもよい。加えて、一体型ニットベロ要素140の構造は、より少ない数の継ぎ目またはその他の切れ目を組み込んでもよいため、履物100の全体的な快適性が向上する。
【0023】
編みプロセス中に一体型ニットベロ140を構成するさらなる利点およびアッパー120を有する一体ニット構造のさらなる利点としては、より効率的な製造および共通特性を提供することが挙げられる。より具体的には、製造効率は、より一層のニット構成要素130を編みプロセス中に形成して、多くの場合、人の手で実行されるさまざまな工程(例えば、独立したベロを形成する工程、そのベロを固定する工程)をなくすことによって向上させることができる。一体型ニットベロ140およびアッパー120は、同じヤーン(または、同じ種類のヤーン)から、または同様のニット構造で形成した場合、共通の特性を有することができる。例えば、一体型ニットベロ140およびアッパー120の両方に同じヤーンを用いることにより、同様の耐久性、強度、伸縮性、耐摩耗性、生物分解性、熱特性および疎水性が与えられる。物理的特性に加えて、一体型ニットベロ140およびアッパー120の両方に同じヤーンを用いることにより、色、光沢および質感などの共通の美的または触覚特性を与えてもよい。また、一体型ニットベロ140およびアッパー120の両方に同じニット構造を用いることにより、共通の物理特性および美的特性をさらに与えてもよい。これらの利点は、一体型ニットベロ140の少なくとも一部と、アッパー120の少なくとも一部とが、共通のヤーン(または、共通の種類のヤーン)から、または、共通のニット構造で形成される場合に存在することができる。
【0024】
ニット構成要素の構造
図5から
図15は、
図1から
図4Bの例示的実施形態と類似の方法で履物製品に組み込むことができるニット構成要素のさまざまな実施形態を示す。
図5から
図15に示されるニット構成要素は、履物100の残りの部分とは別に図示される。しかしながら、本明細書に記載されているニット構成要素の各実施形態は、上述の履物100の要素と組み合わせて、ニット構成要素を組み込んだ履物製品を形成することができると理解すべきである。
【0025】
ここで
図5を参照すると、第1ニット構成要素500の例示的実施形態が平面図で示されている。第1ニット構成要素500は、上述のニット構成要素130と実質的に似ていてもよい。いくつかの実施形態では、第1ニット構成要素500は、アッパー502を画定する第1の部分と、一体型ニットベロ512を画定する第2の部分とを含む。例示的実施形態において、第1ニット構成要素500は、一体ニット構造から形成されるアッパー502および一体型ニットベロ要素512を組み込んでいる。本明細書および特許請求の範囲で使用するとき、ニット構成要素(例えば、第1ニット構成要素500、または本明細書に記載されるその他のニット構成要素)は、編みプロセスによってワンピース要素として形成された場合、「一体ニット構造」から形成されるものとして定義される。すなわち、編みプロセスによって、重要な追加の製造工程またはプロセスを必要とすることなく第1ニット構成要素500のさまざまな特徴および構造を実質的に形成する。構造もしくは要素が、少なくとも1つのコースを共通して含み(すなわち、共通のヤーンを共有し)、および/または構造もしくは要素のそれぞれの間が実質的に連続しているコースを含むように、接合されるヤーンまたはその他のニット材料の1つまたは複数のコースを含む構造または要素(アッパー502および一体型ニットベロ512を含む)を有するニット構成要素を形成するために一体ニット構造を使用してもよい。この構成では、一体ニット構造から構成されるワンピース要素が提供される。
【0026】
第1ニット構成要素500の部分は編みプロセス後に互いに接合してもよいが(例えば、第1ニット構成要素500の縁部を互いに接合する)、第1ニット構成要素500は、ワンピースニット要素として形成されるため、依然として一体ニット構造から形成されたままである。さらに、第1ニット構成要素500は、編みプロセス後にその他の要素(例えば、締めひも、ロゴ、商標、注意書きおよび材料情報を記載した札、構造的要素)を追加しても、依然として一体ニット構造から形成されたままである。
【0027】
例示的実施形態において、第1ニット構成要素500の主な要素は、アッパー502および一体型ニットベロ512を形成するニット要素である。ニット要素は、さまざまなコースおよびウェールを画定する複数の互いにかみ合うループを形成するように操作される(例えば、編み機を用いて)少なくとも1本のヤーンから形成されてもよい。すなわち、第1ニット構成要素500を形成するニット要素は、ニット布地の構造を有する。下記の実施形態を含むニット構成要素のその他の実施形態は、ニット要素および少なくとも1つの引張要素を含んでよい。
【0028】
第1ニット構成要素500は、外周および内周により輪郭が描かれる略U字形状を有する。本実施形態では、外周には、前周縁部503、外側周縁部504、内側周縁部505、ならびに外側かかと縁部506および内側かかと縁部507を含む一対のかかと縁部が含まれる。第1ニット構成要素500の内周は、外側内縁部508、内側内縁部509、および前方内縁部510を含む。履物100を含む履物製品に組み込まれる場合、前周縁部503、外側周縁部504、内側周縁部505、ならびに外側かかと縁部506および内側かかと縁部507の少なくとも一部は、ミッドソールの上面に配置され、ストローベル式中敷き(例えば、上述のミッドソール111およびストローベル式中敷き125)に接合される。加えて、外側かかと縁部506および内側かかと縁部507は一緒に接合され、かかと領域に垂直に延びている。履物の構成によっては、材料要素は外側かかと縁部506と内側かかと縁部507との間の継ぎ目を覆って、継ぎ目を補強するとともに、履物の美的な魅力を高めることができる。総合すれば、外側内縁部508、内側内縁部509、および前方内縁部510が、上述の足首開口部121を含む足首開口部を形成し、一体型ニットベロ512が位置しているスロート区域520の方へ前方へと延びている。加えて、いくつかの実施形態では、スロート区域520は、締めひもと、締めひもを受容するための締めひも開口部をさらに含んでよい。
【0029】
加えて、第1ニット構成要素500は、第1の表面530と、反対側の第2の表面532を有してもよい。第1の表面530は、アッパー502の外側面の一部を形成し、第2の表面532はアッパー502の内側面の一部を形成するため、アッパー502内の空洞の少なくとも一部を画定する。
【0030】
各種実施形態では、ニット構成要素は、アッパーの別の区域に異なる特性を与えるさまざまな種類のヤーンを組み込んでよい。例えば、第1ニット構成要素500のある区域は、第1の組の特性を付与する第1の種類のヤーンから形成されてよく、第1ニット構成要素500の別の区域は、第2の組の特性を付与する第2の種類のヤーンから形成されてもよい。この構成では、第1ニット構成要素500の異なる区域に対して特定のヤーンを選択することによってアッパー502全体で特性を変えてもよい。
【0031】
特定の種類のヤーンがニット構成要素のある区域に付与することになる特性は、ヤーン内にさまざまなフィラメントおよび繊維を形成している材料に部分的に依存する。例えば、綿は柔らかな手触り、自然な美的特性、および生物分解性を提供する。エラステインおよび伸縮性ポリエステルは、それぞれかなりの伸縮性および復元力を提供し、伸縮性ポリエステルはリサイクル性も提供する。レーヨンは光沢に優れ、吸湿性を提供する。ウールも断熱性および生物分解性に加えて、高い吸湿性を提供する。ナイロンは耐久性があり耐擦過性材料で、比較的強度が高い。ポリエステルは疎水性の材料で、比較的高い耐久性も提供する。
【0032】
材料に加えて、ニット構成要素のために選択されるヤーンの他の側面がアッパーの特性に影響することもある。例えば、第1ニット構成要素500を形成するヤーンは単繊維ヤーンまたは多繊維ヤーンであってもよい。ヤーンはそれぞれ異なる材料から形成される個別のフィラメントを含んでいてもよい。加えて、ヤーンは、鞘芯構成を有するフィラメントまたは異なる材料から形成される2種類のフィラメントを半分ずつ用いた複合ヤーンのような、それぞれ2種類以上の異なる材料から形成されるフィラメントを含んでいてもよい。撚りおよび捲縮の程度を異ならせること、ならびにデニールを異ならせることでもアッパー502の特性に影響を与えてもよい。したがって、ヤーンを形成する材料およびヤーンの他の側面の両方を、アッパー502の個別区域にさまざまな特性を付与するように選択してもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、一体型ニットベロ512は第1ニット構成要素500のスロート区域520の中心に位置してもよく、かかと領域の足首開口部から、足の甲に対応する区域の上、そして足先領域に隣接する区域まで延びていてもよく、また第1ニット構成要素の外側側部と内側側部との間に延びている。例示的実施形態において、一体型ニットベロ512は、第1ニット構成要素500のスロート区域520の前方部分で、アッパー502を有する一体ニット構造から形成される。つまり、一体型ニットベロ512およびアッパー502が少なくとも1つのコースを共通して含み、および/またはスロート区域520の前方部分で一体型ニットベロ512とアッパー502とが実質的に連続しているコースを含むように、一体型ニットベロ512は、編むことによってスロート区域520の前方部分でアッパー502に接合される。
【0034】
例示的実施形態において、一体型ニットベロ512はさらに、第1ニット構成要素500のスロート区域520の長さに沿って延びている一体型ニットベロ512の側部に沿ったアッパー502を有する一体ニット構造から形成されてもよい。したがって、一体型ニットベロ512およびアッパー502が少なくとも1つのコースを共通して含み、および/またはスロート区域520を通って延びている側部に沿って一体型ニットベロ512とアッパー502とが実質的に連続しているコースを含むように、一体型ニットベロ512は、編むことによってスロート区域520の外側側部および内側側部のそれぞれに沿ってアッパー502に接合される。
【0035】
いくつかの実施形態では、一体型ニットベロ512は、スロート区域520の両側に配置され一体型ニットベロ512の長さに沿って延びている隆起要素を含んでよい。隆起要素は、アッパー502の第1の表面530から外向きに延びる一体型ニットベロ512のフラップまたは突き出し部分となるように編みプロセスによって形成される一体型ニットベロ512の部分であってもよい。
図5に示すように、一体型ニットベロ512は、外側隆起要素514および内側隆起要素515を含む。例示的実施形態において、外側隆起要素514および内側隆起要素515は、下記の方法に従って、一体型ニットベロ512およびアッパー502を有する一体ニット構造から形成される。この構成によって、外側隆起要素514および内側隆起要素515は、1つもしくは複数の共通のコース、および/または一体型ニットベロ512およびアッパー502と実質的に連続しているコースを含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、一体型ニットベロ512と関連する外側隆起要素514および内側隆起要素515を含めた、一体型ニットベロと関連する隆起要素は、締めひもを受容するために隆起要素に沿ってさまざまな位置に配置されている1つまたは複数の締めひも開口部を含んでよい。場合によっては、締めひも開口部は、締めひもを通すことができるのに十分な隆起要素を形成するニット構造内の空洞または開口部であってもよい。その他の場合、締めひも開口部は、隆起要素を形成する材料から切断または除去された孔または開口部であってもよい。さらに他の場合には、締めひも開口部は、ループ、グロメット、ひも穴、アイフック、またはその他の好適な締めひも受容部材を含むがこれらに限定されない追加の要素を含んでもよい。
【0037】
ここで
図6を参照すると、一体型ニットベロ512の断面図が示されている。例示的実施形態において、隆起要素は、第1ニット構成要素500がワンピース要素であるように、一体型ニットベロ512およびアッパー502を有する一体ニット構造から形成される。本実施形態では、外側隆起要素514は第1の近位端600にてアッパー502と接合され、内側隆起要素515は第2の近位端601にてアッパー502と接合される。各隆起要素は、アッパー502の第1の表面530からフラップ状構成で外向きに延びており、一体型ニットベロ512の突き出し部分を形成する。本実施形態では、外側隆起要素514は第1の近位端600から第1の遠位端602まで外向きに延びており、第1の外向きの面604および第1の内向きの面606を含む。同様に、内側隆起要素515は、第2の近位端601から第2の遠位端603まで外向きに延びており、第2の外向きの面605および第2の内向きの面607を含む。例示的実施形態において、第1の外向きの面604および/または第2の外向きの面605は第1ニット構成要素500の各側部の方を向いていてもよいのに対し、第1の内向きの面606および/または第2の内向きの面607は、一体型ニットベロ512が位置する第1ニット構成要素500の中心部の方に向いていてもよい。
【0038】
加えて、
図6に示すように、外側隆起要素514および内側隆起要素515は、第1の内向きの面606および/または第2の内向きの面607が第1の表面530の方を向くように平坦な形状で示されている。しかしながら、各種実施形態では、外側隆起要素514および内側隆起要素515を含む隆起要素は、直立形状で配置されてもよい。ここで
図7を参照すると、外側隆起要素514および内側隆起要素515は、第1の内向きの面606および/または第2の内向きの面607が第1の表面530に対して略垂直または起立した角度で配向されるように、直立形状で示されている。いくつかの実施形態では、(例えば、第1ニット構成要素500とソール構造とを接合して履物製品を形成することによって)アッパー502を一体型ニットベロ512の両側にきつく引っ張るプロセスにより、外側隆起要素514および内側隆起要素515をそれぞれ、平坦形状から直立形状になるように移動させることができる。
【0039】
例示的実施形態において、一体型ニットベロ512の外側隆起要素514および内側隆起要素515は、第1ニット構成要素500の第1の表面530上に第1の高さH1で延びていてもよい。いくつかの実施形態では、外側隆起要素514および内側隆起要素515の直立形状を使用して、締めひも開口部を一体型ニットベロ512に組み込んでもよい。本実施形態では、複数の締めひも開口部700が示されているが、外側隆起要素514および内側隆起要素515のそれぞれの側に沿って配置されており、第1の外向きの面604から第1の内向きの面606まで、また第2の外向きの面605から第2の内向きの面607まで通って延びている。場合によっては、複数の締めひも開口部700は、隆起要素を形成する一体型ニットベロ512のニット構造内の空洞または開口部であってもよい。その他の場合、複数の締めひも開口部700は、上述の締めひも開口部に好適な構造のいずれかを含む異なる構造を有してもよい。
【0040】
ここで
図8および
図9を参照すると、第2ニット構成要素800の例示的実施形態が平面図で示されている。第2ニット構成要素800は、上述のニット構成要素130および/または第1ニット構成要素500と実質的に似ていてもよい。いくつかの実施形態では、第2ニット構成要素800は、アッパー802を画定する第1の部分と、一体型ニットベロ812を画定する第2の部分とを含む。例示的実施形態において、第2ニット構成要素800は、一体ニット構造から形成されるアッパー802および一体型ニットベロ要素812を組み込んでいる。
【0041】
第1ニット構成要素500と同様に、第2ニット構成要素800は、外周および内周により輪郭が描かれる略U字形状を有する。本実施形態では、外周には、前周縁部803、外側周縁部804、内側周縁部805、ならびに外側かかと縁部806および内側かかと縁部807を含む一対のかかと縁部が含まれる。第2ニット構成要素800の内周は、外側内縁部808および内側内縁部809を含み、これらにより足首開口部を形成できる。加えて、第2ニット構成要素800は、アッパー802の外側面の一部を形成する第1の表面830と、アッパー802の内側面の一部を形成する反対側の第2の表面832とを有してもよい。
【0042】
例示的実施形態において、第2ニット構成要素800は、足首開口部と関連する第2ニット構成要素800の部分に延びている上端部814を含む一体型ニットベロ812を含んでよい。上端部814は、第2ニット構成要素800の他の部分から大略的に自由であってもよい。一体型ニットベロ812は、第2ニット構成要素800のスロート区域820の前方部分において、スロート区域820の長さに沿って延びている一体型ニットベロ812の両側に沿って、アッパー802を有する一体ニット構造から形成されてもよい。例示的実施形態において、第2ニット構成要素800の一体型ベロ812は隆起要素を含まない。したがって、第1ニット構成要素500とは対照的に、第2ニット構成要素800は、一体型ニットベロ812の上に延びて外側内縁部816および内側内縁部817を形成するアッパー802の部分を含む。より詳細には、一体型ニットベロ812の縁部は、外側内縁部816および内側内縁部817から外向きに離間された第2ニット構成要素800の区域に編まれている。
【0043】
ここで
図9を参照すると、一体型ニットベロ812の断面図が示されている。例示的実施形態において、一体型ニットベロ812の縁部は、第2ニット構成要素800がワンピース要素であるように、アッパー802を有する一体ニット構造から形成される。本実施形態では、一体型ニットベロ812がアッパー802の外側内縁部816および内側内縁部817の下に延びるように、一体型ニットベロ812の第1の縁部900および第2の縁部902は、アッパー802の第2の表面832と接合される。この構成によって、一体型ニットベロ812の上面は、外側内縁部816および内側内縁部817の外方に延びているアッパー802の部分に配置されている第2ニット構成要素800の第2の表面832の方に向けられてもよい。例示的実施形態において、第2ニット構成要素800に含まれている一体型ニットベロ812の形状は、略平坦な状態になるように提供されてもよい。
【0044】
各種実施形態では、着用者が履物製品の足首開口部から足を入れおよび/または出すのを補助するようにニット構成要素内に準備をしてもよい。いくつかの実施形態では、ニット構成要素の一体型ニットベロは、より大きな足首開口部を可能とするように変形されてもよい。
図10から
図15は、履物製品に組み込まれたときにより大きな足首開口部を可能とする機構が備えられたニット構成要素の代替的実施形態を示す。
【0045】
図10から
図12は、履物製品に組み込まれたときにより大きな足首開口部を可能とする機構を含むニット構成要素の代替的実施形態を示す。ここで
図10を参照すると、部分的に一体の部分を有する一体型ニットベロを有するニット構成要素の代替的実施形態の平面図が示されている。いくつかの実施形態では、第3ニット構成要素1000は、アッパー1002を画定する第1の部分と、一体型ニットベロ1010を画定する第2の部分とを含む。第3ニット構成要素1000は、上述のニット構成要素130、第1ニット構成要素500、および/または第2ニット構成要素800と実質的に似ていてもよい。第1ニット構成要素500および/または第2ニット構成要素800と同様に、第3ニット構成要素1000は、外周および内周により輪郭が描かれる略U字形状を有してもよい。本実施形態では、外周には、前周縁部1003、外側周縁部1004、内側周縁部1005、ならびに外側かかと縁部1006および内側かかと縁部1007を含む一対のかかと縁部が含まれる。第3ニット構成要素1000の内周は、外側内縁部1008および内側内縁部1009を含み、これらにより足首開口部を形成できる。加えて、第3ニット構成要素1000は、アッパー1002の外側面の一部を形成する第1の表面1030と、アッパー1002の内側面の一部を形成する反対側の第2の表面1032とを有してもよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、第3ニット構成要素1000は、追加の構造をさらに含んでもよい。例示的実施形態において、第3ニット構成要素1000は、第3ニット構成要素1000のニット構造内に挿入されている少なくとも1つの引張要素1040を含んでよい。引張要素1040のための好適な材料は、フィラメント(例えば、単繊維)、スレッド、ロープ、帯、または鎖の形状のヤーンもしくはインレイストランドを含んでよいが、これらに限定されない。引張要素1040は、第3ニット構成要素1000を通って延びており、第3ニット構成要素1000に形成されているニット構造1042内のさまざまなループ間を通っている。引張要素1040は大略的に、ニット構造内のコースに沿って延びているが、引張要素1040はまた、ニット構造1042内のウェールに沿って延びていてもよい。引張要素1040の利点としては、支持、安定性、および構造を提供することが挙げられる。例えば、引張要素1040は足周りにアッパー1002を固定することで補助し、アッパー1002の区域における変形を制限し(例えば、耐伸縮性を付与して)、締めひもと連動して作用して、第3ニット構成要素を組み込んだ履物製品の履き心地を高める。
【0047】
本明細書で説明する実施形態で使用するためのインレイストランドまたは他の適した要素としての伸張要素、ならびにインレイストランドおよびニット構造を組み込んでいるニット構成要素を製造する方法は、2008年12月18日に出願され、2010年6月24日に特許文献1として公開された「ニット構成要素を組み込んだアッパーを有する履物製品」と題する、発明者Dua他、所有者が共通の米国特許出願第12/338,726号、および2011年3月15日に出願され、2012年9月20日に特許文献2として公表された「ニット構成要素を組み込んだ履物製品」と題する、発明者Huffa他の米国特許出願第13/048,514号の1つ以上に開示されており、これら出願の両方を参照によりその全体をこれに組み込む(本明細書において総称的に「インレイストランド案件」という)。
【0048】
例示的実施形態において、第3ニット構成要素1000は、アッパー1002の少なくとも一部および一体型ニットベロ1010の一部とがワンピース要素となるように、一体ニット構造から形成されるアッパー1002および一体型ニットベロ1010を組み込んでいる。一実施形態では、一体型ニットベロ1010は、一体型ニットベロ1010の両側に沿ってアッパー1002を有する一体ニット構造から形成された第1の部分と、第1の部分とは一体だが他の部分はアッパー1002から自由な一体ニット構造から形成された第2の部分とをさらに含んでよい。本実施形態では、第3ニット構成要素1000は、部分的に一体の部分1012および自由部分1014を有する一体型ニットベロ1010を含む。
【0049】
例示的実施形態において、部分的に一体の部分1012は、第3ニット構成要素1000のスロート区域1020の中心に位置してもよく、かかと領域の足首開口部に隣接する距離D1から、足の甲に対応する区域の上、そして足先領域に隣接する区域まで延びていてもよく、また第3ニット構成要素1000の外側側部と内側側部との間に延びている。一実施形態では、部分的に一体の部分1012は、スロート区域1020の前方区域において、第3ニット構成要素1000のスロート区域1020の長さに沿って延びている側部に沿って、アッパー1002を有する一体ニット構造から形成される。したがって、部分的に一体の部分1012およびアッパー1002が少なくとも1つのコースを共通して含み、および/または実質的に連続しているコースを含むように、部分的に一体の部分1012は、前方部分ならびにスロート区域1020の外側側部および内側側部のそれぞれに沿って、編むことによってアッパー1002に接合されている。
【0050】
例示的実施形態では、一体型ニットベロ1010は、スロート区域1020の両側に配置され、一体型ニットベロ1010の長さに沿って延びている隆起要素を含んでよい。隆起要素は、アッパー1002の第1の表面1030から外向きに延びる一体型ニットベロ1010のフラップまたは突き出し部分となるように編みプロセスによって形成される一体型ニットベロ1010の部分であってもよい。
図10および
図11に示すように、一体型ニットベロ1010は、アッパー1002を有する一体ニット構造および一体型ニットベロ1010の部分的に一体の部分1012から形成される外側隆起要素1016および内側隆起要素1015を含む。外側隆起要素1016および/または内側隆起要素1015は、上述の外側隆起要素514および内側隆起要素515と実質的に似ており、またこれらと同様に形成されてもよい。
【0051】
ここで
図11を参照すると、例示的実施形態において、自由部分1014は、足首開口部に隣接した第3ニット構成要素1000のスロート区域1020の上端部に配置されてもよい。一実施形態では、自由部分1014は、スロート区域1020の後方部分1100において部分的に一体の部分1012とは一体だが、アッパー1002および/または第3ニット構成要素1000のその他の部分には接合または取り付けられていない一体ニット構造から形成される。この構成により、足首開口部は、第3ニット構成要素1000のスロート区域1020に沿って足首開口部から距離D1だけ延びている、一体型ニットベロ1010の部分的に一体の部分1012の後方部分1100の位置に相当するより大きな開口部を備えてもよい。一体型ニットベロ1010の自由部分1014は、足首開口部内に配置される着用者の足を被覆するのに役立ち、第3ニット構成要素1000を組み込んだ履物製品の快適性を高める。
【0052】
いくつかの実施形態では、一体型ニットベロ1010の部分的に一体の部分1012は、異なる種類のニット構造を含めた複数のニット構造を含んでよい。例えば、部分的に一体の部分1012は、第1のニット構造1102および第2のニット構造1104を含んでもよい。第1のニット構造1102は第1のニットの種類と関連してよく、中央に位置して、スロート区域1020の後方部分1100から前方部分まで一体型ニットベロ1010に沿って延びてもよい。第2のニット構造1104は第2のニットの種類と関連してよく、一体型ニットベロ1010の周辺側部に沿って、第1のニット構造1102とスロート区域1020の後方部分1100から前方部分まで同様に延びている外側隆起要素1016および内側隆起要素1015との間に位置してもよい。一実施形態では、第1のニット構造1102および第2のニット構造1104は、異なるニット構造であっても、または異なる種類のニット構造であってもよい。例えば、場合によっては、第1のニット構造1102はメッシュまたは類似のニットの種類であってよく、第2のニット構造1104はジャージまたは類似のニットの種類であってもよい。その他の場合、第1のニット構造1102は、ダブルニットジャージ構造であってよく、第2のニット構造1104はシングルニットジャージ構造であってもよい。
図12に示すように、第1のニット構造1102は、一体型ニットベロ1010の部分的に一体の部分1012の長さに沿って延びている第1のニット構造1102のどちらかのの周辺側部に配置される第2のニット構造1104より大きい厚さを有してもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、締めひもを受容するための締めひも開口部は、引張要素1040によって提供されてもよい。例示的実施形態において、複数の締めひもループ1110は、第3ニット構成要素1000のスロート区域1020の両側の外側隆起要素1016および内側隆起要素1015に隣接するニット構造1042から外に延びている引張要素1040の部分に配置されてもよい。この構成では、締めひも(図示せず)は、複数の締めひもループ1110を通って配置され、第3ニット構成要素1000を組み込んだ履物製品の着用者の足への固定を補助できる。その他の実施形態では、締めひも開口部は、上述の締めひも開口部に好適な構造のいずれかを含む異なる構造を有してもよい。
【0054】
図13から
図15は、履物製品に組み込まれたときにより大きな足首開口部を可能とする機構を有するニット構成要素の代替的実施形態を示す。ここで
図13を参照すると、部分的に分離したニット要素を有する一体型ニットベロを有するニット構成要素の代替的実施形態の平面図が示されている。いくつかの実施形態では、第4ニット構成要素1300は、アッパー1302を画定する第1の部分と、一体型ニットベロ1310を画定する第2の部分とを含む。第4ニット構成要素1300は、上述のニット構成要素130、第1ニット構成要素500、第2ニット構成要素800、および/または第3ニット構成要素1000と実質的に類似した特徴を一つ以上共有していてもよい。先に述べたニット構成要素の実施形態と同様に、第4ニット構成要素1300は、外周および内周により輪郭が描かれる略U字形状を同様に有してもよい。本実施形態では、外周には、前周縁部1303、外側周縁部1304、内側周縁部1305、ならびに外側かかと縁部1306および内側かかと縁部1307を含む一対のかかと縁部が含まれる。第4ニット構成要素1300の内周は、外側内縁部1308および内側内縁部1309を含み、これらにより足首開口部を形成できる。加えて、第4ニット構成要素1300は、アッパー1302の外側面の一部を形成する第1の表面1330と、アッパー1302の内側面の一部を形成する反対側の第2の表面1332とを有してもよい。
【0055】
いくつかの実施形態では、第4ニット構成要素1300は、第4ニット構成要素1300のニット構造1342内に挿入されている少なくとも1つの引張要素1340を含む追加の構造をさらに含んでよい。引張要素1340は、インレイストランド案件に開示される引張要素およびニット構造を組み込んだニット構成要素を製造する好適な材料および方法を含む、上述の引張要素1040に実質的に似ていてもよい。例示的実施形態において、引張要素1340は、締めひもを受容するように構成されてもよい複数の締めひもループ1344をさらに含んでよい。複数の締めひもループ1344は、ニット構造1342から外に延びている引張要素1340の部分に配置されてよく、また上述の締めヒモループ1110と実質的に類似の構造を有してもよい。場合によっては、締めひもループ1344は締めひもを受容するための締めひも開口部として機能することができる。その他の場合、締めひもループ1344は、締めひもを受容するために一体型ニットベロ1310の隆起要素に配置されている1つまたは複数の締めひも開口部と連携してもよい。さらに他の場合には、締めひもループ1344は、隆起要素に配置される締めひも開口部を通って配置されてよく、アッパー1302のスロート区域1320を通って延びている締めひもを受容してもよい。
【0056】
例示的実施形態において、第4ニット構成要素1300は、アッパー1302の少なくとも一部および一体型ニットベロ1310の一部とがワンピース要素となるように、一体ニット構造から形成されるアッパー1302および一体型ニットベロ1310を組み込んでいる。一実施形態では、アッパー1302の部分は、複数のニット要素層から形成されてもよい。したがって、一体型ニットベロ1310は、ニット要素層のうち少なくとも1つを有する一体ニット構造から形成されてもよい。
【0057】
いくつかの実施形態では、一体型ニットベロ1310は第4ニット構成要素1300のスロート区域1320の中心に位置してもよく、かかと領域の足首開口部に隣接する上端部1314から、足の甲に対応する区域の上、そして足先領域に隣接する区域まで延びていてもよく、またアッパー1302の外側側部と内側側部との間に延びている。例示的実施形態において、一体型ニットベロ1310は、スロート区域1320の前方部分で、第4ニット構成要素1300のスロート区域1320の長さに沿って延びている両端に沿って、アッパー1302と関連する少なくとも1つのニット要素層を有する一体ニット構造から形成される。
【0058】
例示的実施形態において、第4ニット構成要素1300は、スロート区域1320の両側に配置され、一体型ニットベロ1310の長さに沿って延びている隆起要素をさらに含んでよい。
図13から
図15に示すように、第4ニット構成要素1300は、アッパー1302の少なくとも1つのニット要素層を有する一体ニット構造から形成される外側隆起要素1312および内側隆起要素1313を含む。外側隆起要素1312および/または内側隆起要素1313は、上述の外側隆起要素514、1016および/または内側隆起要素515、1015と実質的に似ていてよく、またこれらと同様に形成されてもよい。
【0059】
いくつかの実施形態では、一体型ニットベロ1310を形成する第4ニット構成要素1300の部分は、第4ニット構成要素1300の残りの部分とは異なる材料から製造されてもよい。例示的実施形態において、一体型ニットベロ1310は大きな弾性を有する弾性糸から製造されてもよいのに対し、第4ニット構成要素1300の残りの部分は、実質的に非弾性であるかまたは弾性糸と比較して弾性が小さい通常のヤーンから製造されてもよい。この構成により、第4ニット構成要素1300の一体型ニットベロ部分1310は、第4ニット構成要素1300を組み込んだ履物製品の足首開口部を通して入れられた着用者の足を収容するために伸縮できるスロート区域1320を有して構成されてもよい。
【0060】
また、いくつかの実施形態では、第2のニット要素層からは部分的に分離している第4ニット構成要素1300の第1のニット要素層を有する一体ニット構造から構成される一体型ニットベロ1310を形成することによって、スロート区域1320はさらに、第4ニット構成要素1300を組み込んだ履物製品においてより大きな足首開口部が可能となるように伸縮可能であってもよい。第1のニット要素層と第2のニット要素層との部分的な分離は
図14および
図15に示されてもよい。
【0061】
ここで
図14および
図15を参照すると、本実施形態では、アッパー1302は、第4ニット構成要素1300の第1の表面1330と関連する第1のニット要素層1400と、第4ニット構成要素1300の第2の表面1332と関連する第2のニット要素層1402とを含んでよい。例示的実施形態において、第1のニット要素層1400および第2のニット要素層1402は、一体型ニットベロ1310と関連する第4ニット構成要素1300の部分にて部分的に分離されてもよい。すなわち、第4ニット構成要素1300の他の部分は、片面では第1の表面1330を有する単一のニット要素を、反対側の面では第2の表面1332を含んでよいのに対し、第4ニット構成要素1300の部分的に分離した部分は、別個の第1のニット要素層1400と、第2のニット要素層1402とを含む。第1のニット要素層1400と、第2のニット要素層1402とは互いに隣接して配置されているが、その表面全体に沿って接合はされていない。したがって、第1の表面1330は第1のニット要素層1400の片面に配置され、第2の表面1332は第2のニット要素層1402の片面に配置される。第4ニット構成要素1300の他の部分では、第1のニット要素層1400および第2のニット要素層1402は、第4ニット構成要素1300の残りの部分を通って延びている単一のニット要素を形成するために編みプロセスによって互いに再接合されてもよい。
【0062】
例示的実施形態において、一体型ニットベロ1310は、少なくとも1つのニット要素層を有する一体ニット構造から形成されてもよい。一実施形態において、一体型ニットベロ1310は第2のニット要素層1402を有する一体ニット構造から形成される。
図14および
図15に示すように、一体型ニットベロ1310および第2のニット要素層1402が、少なくとも1つのコースを共通して含み、および/または一体型ニットベロ1310と第2のニット要素層1402との間がスロート区域1320を通って延びているアッパー1302の両側に沿って実質的に連続しているコースを含むように、一体型ニットベロ1310は、スロート区域1320の外側側部および内側側部のそれぞれに沿ってアッパー1302の第2のニット要素層1402に編むことによって接合されている。同様に、例示的実施形態において、外側隆起要素1312および内側隆起要素1313を含む隆起要素は、第1のニット要素層1400を有する一体ニット構造から形成されてもよい。
【0063】
いくつかの実施形態では、一体型ニットベロ1310は、上述のような異なる種類のニット構造を含む、複数のニット構造を含んでもよい。例えば、一体型ニットベロ1310は、第1のニット構造1410および第2のニット構造1412を含んでよい。第1のニット構造1410は第1のニットの種類と関連してよく、中央に位置して、スロート区域1320の後方部分から前方部分まで一体型ニットベロ1310に沿って延びてもよい。第2のニット構造1412は第2のニットの種類と関連してよく、一体型ニットベロ1310の周辺側部に沿って、第1のニット構造1410とスロート区域1320の後方部分から前方部分まで同様に延びている外側隆起要素1312および内側隆起要素1313との間に位置してもよい。本実施形態では、第1のニット構造1410および第2のニット構造1412は同様に弾性糸から製造されてもよいが、第1のニット構造1410は、ダブルニットジャージ構造であってよく、第2のニット構造1412はシングルニットジャージ構造であってもよい。
図14および
図15に示すように、第1のニット構造1410は第2のニット構造1412よりも大きい厚さを有してもよい。
【0064】
いくつかの実施形態では、第1のニット要素層1400および第2のニット要素層1402を一体型ニットベロ1310に沿った所望の位置で固定するために、第1のニット要素層1400の一部と第2のニット要素層1402の一部とが接合されてもよい。
図14に示すように、第1のヤーン1404を使用して、外側隆起要素1312が一体型ニットベロ1310の上で外側に延び始める第1の端部1406において第1のニット要素層1400を第2のニット要素層1402に接合してもよい。同様に、第2のヤーン1403を使用して、内側隆起要素1313が一体型ニットベロ1310の上で外側に延び始める第2の端部1405において第1のニット要素層1400を第2のニット要素層1402に接合してもよい。場合によっては、第1のヤーン1404および/または第2のヤーン1403は、編みプロセス中に第1のニット要素層1400を第2のニット要素層1402に接合する第4ニット構成要素1300のうちの単一のヤーンまたは複数のヤーンを含んでよい。その他の場合、第1のヤーン1404および/または第2のヤーン1403は、編みプロセス後に第1のニット要素層1400を第2のニット要素層1402に接合するために使用される1つ以上の縫い目を含んでよい。
【0065】
一実施形態では、第1のヤーン1404および/または第2のヤーン1403の位置は、引張要素1340の締めひもループ1344のうち1つまたは複数と一致するように選択されてもよい。この構成により、第1のニット要素層1400および第2のニット要素層1402は、締めひもを使用して第4ニット構成要素1300を組み込んだ履物製品の着用者の足に適合するようにアッパー1302のスロート区域1320を固定できる場所に対応する位置で互いに固定されてもよい。対照的に、
図15に示される第4ニット構成要素1300の部分的に分離した部分は、第1のニット要素層1400を第2のニット要素層1402に接合する第1のヤーン1404および/または第2のヤーン1403を含まない。したがって、部分的に分離した部分では、第1のニット要素層1400および第2のニット要素層1402は互いから独立して動くことができる。一体型ニットベロ1310を形成する第2のニット要素層の1つまたは複数の部分を形成するための弾性糸を用いるとともに、この構成によって、スロート区域1320は、第4ニット構成要素1300を組み込んだ履物製品においてより大きな足首開口部が可能となるように伸縮可能である。
【0066】
ニット構成要素のための編みプロセス
図16から
図29は、本明細書に記載される原理に従ってニット構成要素を製造するために使用できるさまざまな編みプロセスを示す。本明細書に記載される各種実施形態において、特定のニット構成要素の異なるニット構造は、ニットの種類およびヤーンの種類を含むさまざまな種類のニット構造を用いて製造することができる。
【0067】
例示的実施形態において、内側側部および外側側部に沿って隆起要素を含むニット構成要素の一体型ニットベロは、特定の編みプロセスを使用して形成してもよい。参考のため、
図16は、隆起要素142、隆起要素514、515、隆起要素1015、1016、および/または隆起要素1312、1313のいずれかなどを含む一体型ニットベロと関連する隆起要素が編みプロセス1600により形成される方法のループ図を描写している。
【0068】
図16に示すように、隆起要素を有する一体型ニットベロのための編みプロセス1600は、一体型ニットベロを製造するために実行される編み操作の方向および種類を示すループ図を含むことができる。ニット構成要素の残りの部分は、任意の好適な編みプロセスに従って製造されてよく、編みプロセス1600は、ニット構成要素全体の一体型ニットベロ部分のための例示的な編みプロセスについて詳述していると理解すべきである。したがって、第1のステップ1601では、ヤーンを編み機の後針床に移動させる。次に、第2のステップ1602では、ヤーンを示されているような第1の方向に沿って編み、次に第3のステップ1603では第2の逆の方向に沿って戻す。次に、第4のステップ1604では、ヤーンを編み機の前針床に移動させ、第5のステップ1605ではヤーンを第1の方向に沿って編む。このプロセスにより、一体型ニットベロの片側に沿った隆起要素を形成する。例示的なニットの種類が、一体型ニットベロの中心部分を形成できる第5のステップ1605のために示されているが、任意の好適なニットの種類を使用して、任意の所望のニット構造を有する一体型ニットベロの中心部分を製造してもよい。
【0069】
同様に、第5のステップからは、一体型ニットベロの反対側に配置される隆起要素をさらに形成できる。
図16に示すように、第5のステップ1605に関連する編みを完了した後に、ヤーンを第6のステップ1606にて、編み機の後針床に移動させてよく、ヤーンを第7のステップ1607に示されるような第2の方向に沿って編み、次に第8のステップにおいて反対の第1の方向に沿って戻す。次に、ヤーンを第9のステップ1609にて、編み機の前針床に移動させて戻してよく、ヤーンを第10のステップ1610において、一体型ニットベロの幅全体に沿って第2の方向に沿って編む。ニット構成要素に沿って所望の長さを有する隆起要素を有する一体型ニットベロを製造するために、例示的な編みプロセス1600を複数回繰り返すことができる。同様に、一体型ニットベロの一部は、編みプロセス1600に関連する針の数を変更することによってより幅広またはより幅狭にすることができる。例えば、第5のステップ1605および/または第10のステップ1610を含む編みプロセス1600の一部は、より多い数またはより少ない数の針を含んで、それに対応して一体型ニットベロの幅を増大させるかまたは低減させるように変更してもよい。加えて、上で述べたように、ここでは図示されていないその他の編みプロセスを使用して、ニット構成要素の残りの部分を製造してもよい。
【0070】
また、
図16に示されるニットの種類は例示的なものであり、異なる実施形態では変更してもよい。例えば、編みプロセス1600に示すように、各隆起要素はダブルジャージハーフゲージニットから製造されるのに対し、一体型ニットベロの中心部分はシングルジャージハーフゲージニットから製造される。しかしながら、その他の実施形態では、1つまたは複数のニットの種類を変えてもよい。例えば、場合によっては、一体型ニットベロの中心部分は、フルゲージ(または「全針」)のシングルジャージニットまたはダブルジャージニットの1つまたは複数の部分を含んでよい。その他の場合には、一体型ベロの中心部分に沿ったさまざまなニットの種類の幅は、例えば上述のように異なる数の針を使用することによって、繰返し変えてもよい。さらに他の場合は、編み、タック編み、または浮き編みの各種組み合わせを用いたニットの種類および/またはニット構造の組み合わせを含んでよい。
【0071】
編みは手で行ってもよいが、ニット構成要素の商業的製造は一般に、編み機によって行われる。
図17は、ニット構成要素130、第1ニット構成要素500、第2ニット構成要素800、第3ニット構成要素1000、および/または第4ニット構成要素1300、ならびに明示的に示されるかまたは記述されてはいないが本明細書に記載される原理に従って製造される他の構成のニット構成要素を含む、先に述べた実施形態に記述されるニット構成要素のいずれかを製造するのに適している編み機1700の例示的実施形態を示す。本実施形態では、編み機1700は、例示目的でVベッド型横編み機の構成を有しているが、ニット構成要素またはニット構成要素の一部のいずれかを他の種類の編み機で製造してもよい。
【0072】
例示的実施形態において、編み機1700は互いに対して角度を成すことによりVベッドを形成している、前針床1701および後針床1702を含む2つの針床を含んでよい。前針床1701および後針床1702はそれぞれ、前針床1701と関連する針1703および後針床1702と関連する針1704を含めた、共通平面上にある複数の個々の針を含む。すなわち、前針床1701からの針1703は第1の平面にあり、後針床1702からの針1704は第2の平面にある。第1の平面および第2の平面(すなわち、2つの針床1701、702)は互いに対して角度を成しており、相交わって編み機1700の幅の大部分に沿って延びている交差部を形成する。以下でさらに詳細に説明するように、針1703、1704はそれぞれ後退する第1の位置と、延伸する第2の位置とを有する。第1の位置において、針1703、1704は第1の平面と第2の平面とが相交わる交差部から離れている。しかしながら、第2の位置では、針1703、1704は第1の平面と第2の平面とが相交わる交差部を通過する。
【0073】
前方レール1710および後方レール1711を含む1対のレールが針床1701、1702の交差部の上にかつ平行に延びており、複数の標準フィーダー1720およびコンビネーションフィーダー1722の装着ポイントを提供する。各レール1710、1711は2つの側部を有し、そのそれぞれが1つの標準フィーダー1720または1つのコンビネーションフィーダー1722のいずれかを収容する。本実施形態では、レール1710、1711は前側1712および裏側1714を含む。そのため、編み機1700は、合計で4つのフィーダー1720および1722を含んでよい。図示されているように、最前列のレールである前方レール1710は対向する側部に1つのコンビネーションフィーダー1722および1つの標準フィーダー1720を含み、最後列のレールである後方レール1711は対向する側部に2つの標準フィーダー1720を含んでいる。2本のレール1710、1711が図示されているが、編み機1700のさらなる構成は追加のレールを組み込んで、より多くの標準フィーダー1720および/またはコンビネーションフィーダー1722のための装着ポイントを提供してもよい。
【0074】
キャリッジ1730の作用により、フィーダー1720および1722はレール1710、1711および針床1701、1702に沿って移動し、それによって針1703、1704にヤーンを供給する。
図17に示すように、ヤーン1724はスプール1726によってコンビネーションフィーダー1722に供給されている。より具体的には、ヤーン1724はスプール1726からさまざまなヤーンガイド1728、ヤーン引きばねおよびヤーンテンショナーに延びてから、コンビネーションフィーダー1722に進入する。図示していないが、ヤーンをスプール1726と実質的に類似の方法でフィーダー1720に供給するために、追加のスプールを利用してもよい。
【0075】
標準フィーダー1720は、編み機1700などのVベッド型横編み機で従来から利用されている。すなわち、既存の編み機は標準フィーダー1720を組み込んでいる。各標準フィーダー1720は針1703、1704が編み、タック編みおよび浮き編みするために操作するヤーンを供給する能力を有する。比較として、コンビネーションフィーダー1722は針1703、1704が編み、タック編みおよび浮き編みするヤーン(例えば、ヤーン1724)を供給する能力を有し、コンビネーションフィーダー1722はさらにヤーンを挿入する能力を有する。また、コンビネーションフィーダー1722は、ヤーンまたはその他の種類のストランド(例えば、フィラメント、スレッド、ロープ、帯、ケーブル、または鎖)を含むさまざまな異なる引張要素を挿入する能力を有する。したがって、コンビネーションフィーダー1722は各標準フィーダー1720よりも優れた汎用性を示す。
【0076】
標準フィーダー1720およびコンビネーションフィーダー1722は、それらの開示が前記参照により組み込まれる、2012年5月17日出願の「ベロを有するニット構成要素を組み込んだ履物製品」と題する特許文献3、および2012年2月20日出願の「ベロを有するニット構成要素を組み込んだ履物製品」と題する特許文献4に記述される標準フィーダーおよびコンビネーションフィーダーの構造と実質的に類似した構成を有してもよい。
【0077】
編み機1700のニット構成要素を製造するための動作方法を以下で説明する。さらに、以下の考察は、編みプロセス中の1つまたは複数の標準フィーダー1720および/またはコンビネーションフィーダー1722の動作を示す。本明細書に述べられる編みプロセスは、上述の実施形態のニット構成要素に類似したニット構成要素を含む、いかなるニット構成要素であってもよいさまざまなニット構成要素の形成に関する。考察のために、ニット構造を示すことができるように、ニット構成要素の比較的小さいセクションのみが図中に示される。さらに、編み機1700およびニット構成要素の各種要素の縮尺および比率は、編みプロセスをより良く示すために強調されてもよい。ニット構成要素は針床1701、1702の間で形成されているが、
図18から
図29における図示のため(a)編みプロセスの考察の間、より明確であるように、また(b)互いに対する、また針床1701、1702に対するニット構成要素の部分の位置を示すために、ニット構成要素は針床1701、1702に隣接して示されることが理解されよう。さらに、1本のレールならびに限られた数の標準フィーダーおよびコンビネーションフィーダーが図示されているが、追加のレール、標準フィーダー、およびコンビネーションフィーダーを使用してもよい。したがって、編み機1700の全体構造は編みプロセスを説明する目的で簡略化されている。
【0078】
図18から
図21は、上述の第1ニット構成要素500の形態のニット構成要素を編むことの例示的プロセスを示す。
図18を参照すると、前針床1701と関連する針1703、後針床1702と関連する針1704、および前方レール1710を含む編み機1700の部分が示される。また、本実施形態では、編み機1700は、上述の標準フィーダー1720と実質的に似ている第1の標準フィーダー1800および第2の標準フィーダー1802を含んでよい。第1の標準フィーダー1800は前方レール1710の前側に固定されてよく、第2の標準フィーダー1802は前方レール1710の後側に固定されてもよい。その他の実施形態では、追加のフィーダーが使用されてもよく、前方レール1710および/または後方レール1711の前側または後側に位置してもよい。
【0079】
本実施形態では、スプール(図示せず)からの第1のヤーン1801は第1の標準フィーダー1800を通過し、ヤーン1801の端部は、第1の標準フィーダー1800の端部にある供給先端部から外向きに延びている。ヤーン1801が図示されているが、任意の他のストランド(例えば、フィラメント、スレッド、ロープ、帯、ケーブル、鎖、またはヤーン)が第1の標準フィーダー1800を通過してもよい。第2のヤーン1803は同様に第2の標準フィーダー1802を通過し、供給先端部から外向きに延びている。例示的実施形態において、第1のヤーン1801および第2のヤーン1803を使用して、第1ニット構成要素500の一部を形成できる。本実施形態では、第1のヤーン1801のループが第1ニット構成要素500の内側かかと縁部507の最上部のコースを形成して示されており、針1703および針1704の端部に位置するフックによって保持されている。同様に、第2のヤーン1803のループを使用して、第1ニット構成要素の外側かかと縁部506を形成できる。
【0080】
次に、
図19に示すように、編み機1700は第1ニット構成要素500を形成する材料にさらなるコースを追加するために同様のプロセスを使用して、一体型ニットベロ512の外側周縁部504、内側周縁部505、外側内縁部508、内側内縁部509、および前方内縁部510を含むさらなる部分を形成できる。本実施形態では、第1の標準フィーダー1800および第2の標準フィーダー1802は、前記
図16に示されるようなループ図に従って一体型ニットベロ512を形成してもよい。
図20は、アッパー502を形成する第1ニット構成要素500の一体型ニットベロ512、外側隆起要素514、内側隆起要素515、および残りの一部を編むことと関連してコースを完成させる編み機1700を示す。
図21は、第1ニット構成要素を形成する編みプロセスがほぼ完了した編み機1700を示す。同様のプロセスを使用してさらなるコースを追加することによって、第1ニット構成要素500を完成させることができる。
【0081】
図22から
図25は、上述の第3ニット構成要素1000の形態のニット構成要素を編むことの例示的プロセスを示す。
図22を参照すると、前針床1701と関連する針1703、後針床1702と関連する針1704、および前方レール1710を含む編み機1700の部分が示される。また、本実施形態では、編み機1700は、上述の標準フィーダー1720と実質的に似ている第1の標準フィーダー2200および第2の標準フィーダー2204、ならびに上述のコンビネーションフィーダー1722と実質的に似ているコンビネーションフィーダー2202を含んでよい。第1の標準フィーダー1800およびコンビネーションフィーダー2202は前方レール1710の前側に固定されてよく、第2の標準フィーダー2204は前方レール1710の後側に固定されてもよい。その他の実施形態では、追加のフィーダーが使用されてもよく、前方レール1710および/または後方レール1711の前側または後側に位置してもよい。
【0082】
本実施形態では、スプール(図示せず)からの第1のヤーン2201は第1の標準フィーダー2200を通過し、ヤーン2201の端部は、第1の標準フィーダー2200の端部にある供給先端部から外向きに延びている。ヤーン2201が図示されているが、任意の他のストランド(例えば、フィラメント、スレッド、ロープ、帯、ケーブル、鎖、またはヤーン)が第1の標準フィーダー2200を通過してもよい。第2のヤーン2205は同様に第2の標準フィーダー2204を通過し、供給先端部から外向きに延びている。第3のヤーン2203はコンビネーションフィーダー2202を通って供給先端部まで進む。例示的実施形態において、第3のヤーン2203は、第1のヤーン2201および/または第2のヤーン2205とは異なる種類のヤーンであってもよい。本実施形態では、第3のヤーン2203は引張要素またはその他のインレイストランドであってもよい。例示的実施形態において、第1のヤーン2201および第2のヤーン2205を使用して、第3ニット構成要素1000のニット要素の一部を形成できるのに対して、第3のヤーン2203は第3ニット構成要素1000の引張要素としてニット要素に挿入されてもよい。しかしながら、その他の実施形態では、第3のヤーン2203を使用して、第3ニット構成要素1000のニット要素の一部を形成してもよい。
【0083】
本実施形態では、第1のヤーン2201のループおよび第2のヤーン2205のループは第3ニット構成要素1000の一体型ニットベロ1010の自由部分1014を形成して示されており、針1703および針1704の端部に位置するフックにより保持されている。また、
図23は、自由部分1014を形成するコースを完成させる編み機1700を示す。いくつかの実施形態では、少なくとも自由部分1014の最終コースは、一体型ニットベロ1010の残りの部分と接合される編みプロセスの後の段階中に、一体型ニットベロ1010の自由部分1014が確実に針1701、1702に適切に配置されたままになるように、比較的堅くまたは密に編んだクロスタック編みを含んでもよい。
【0084】
編み機1700はここで、上述の類似の編みプロセスに従って、第3ニット構成要素1000を形成するニット要素の残りの部分を形成するプロセスを始める。例示的実施形態において、第1のヤーン2201のループは次に、第3ニット構成要素1000の内側かかと縁部1007の最上部のコースを形成し始めてよく、第2のヤーン2205のループを使用して、第3ニット構成要素1000の外側かかと縁部1006を形成してもよい。
【0085】
ここで
図24を参照すると、編みプロセスが続くにつれ、第1の標準フィーダー2200および第2の標準フィーダー2204は引き続き、一体型ニットベロ1010の外側周縁部1004、内側周縁部1005、外側内縁部1008、内側内縁部1009、および部分的に一体の部分1012を含む第3ニット構成要素1000にコースを追加し続けることができる。本実施形態では、第1の標準フィーダー2200および第2の標準フィーダー2204は、前記
図16に示されるようなループ図に従って一体型ニットベロ1010の部分的に一体の部分1012を形成してもよい。加えて、本実施形態では、
図24に示すように、またインレイストランド案件で考察される編みプロセスに従って、コンビネーションフィーダー2202は第3のヤーン2203を挿入して、引張要素1040を形成する。
【0086】
例示的実施形態において、
図23と
図24とに図示される編みプロセスの間、第3ニット構成要素1000の部分が下方に移動し、連続的なコースが第3ニット構成要素1000に形成されるにつれて自由部分1014に重なり合ってもよいときは、一体型ニットベロ1010の自由部分1014は、針床1701、1702に対して固定されたままであってもよい。このことは、第3ニット構成要素1000の残りで形成される一体型ニットベロ1010の部分的に一体の部分1012に自由部分1014を接合することが意図されているコースが形成されるまで続く。
図25は、第3ニット構成要素1000を形成する編みプロセスがほぼ完了した編み機1700を示す。同様のプロセスを使用してさらなるコースを追加することによって、第3ニット構成要素1000を完成させることができる。
【0087】
加えて、
図22から
図25に示される編みプロセスでは、各種フィーダーの第1のレール1710における相対位置によって、それぞれ対応するフィーダーによって形成できる第3ニット構成要素1000の部分を制限できる。例えば、コンビネーションフィーダー2202の配置故に、第1の標準フィーダー2200は、内側側部に沿って一体型ニットベロ1010の部分的に一体の部分1012全体に、第3ニット構成要素1000の前方部分および後方部分(それぞれ、第1の表面1030および第2の表面1032と対応する)の両方を形成できるが、外側側部に沿った第3ニット構成要素1000の部分の形成が制限されてもよい。同様に、第2の標準フィーダー2204は、外側側部に沿って一体型ニットベロ1010の部分的に一体の部分1012全体に、第3ニット構成要素1000の前方部分および後方部分の両方を形成できるが、外側側部に沿った第3ニット構成要素1000の部分の形成が制限されてもよい。この構成により、
図22から
図25に示される編みプロセスは、特定のフィーダーを使用して第3ニット構成要素1000の特定の部分を形成することを必要としてもよい。
【0088】
図26から
図29は、上述の第4ニット構成要素1300に類似したニット構成要素を編むことの例示的プロセスを示す。
図26を参照すると、前針床1701と関連する針1703、後針床1702と関連する針1704、および前方レール1710を含む編み機1700の部分が示される。加えて、本実施形態では、編み機1700は、上述の標準フィーダー1720と実質的に似ている第1の標準フィーダー2600、第2の標準フィーダー2602、および第3の標準フィーダー2604を含んでよい。加えて、第4ニット構成要素1300が引張要素を含む実施形態では、上述のコンビネーションフィーダー1722に実質的に似ているコンビネーションフィーダー(図示せず)は、第3ニット構成要素1000の編みプロセスに関して前述されたプロセスに従って、またインレイストランド案件に記述されているように、引張要素1340を形成するために含まれてもよい。したがって、例示を簡単にする目的で、第4ニット構成要素1300は引張要素1340を有していない
図26から
図29に示される。
【0089】
ここで
図26を再び参照すると、第1の標準フィーダー2600および第2の標準フィーダー2602は前方レール1710の前側に固定されてよく、第3の標準フィーダー2604は前方レール1710の後側に固定されてもよい。その他の実施形態では、追加のフィーダーが使用されてもよく、前方レール1710および/または後方レール1711の前側または後側に位置してもよい。
【0090】
本実施形態では、スプール(図示せず)からの第1のヤーン2601は第1の標準フィーダー2600を通過し、ヤーン2601の端部は、第1の標準フィーダー2600の端部にある供給先端部から外向きに延びている。ヤーン2601が図示されているが、任意の他のストランド(例えば、フィラメント、スレッド、ロープ、帯、ケーブル、鎖、またはヤーン)が第1の標準フィーダー2600を通過してもよい。第2のヤーン2603は同様に第2の標準フィーダー2602を通過し、供給先端部から外向きに延びている。第3のヤーン2605もまた、同様にして第3の標準フィーダー2604を通って供給先端部まで進む。例示的実施形態において、第2のヤーン2603は、第1のヤーン2601および/または第3のヤーン2605とは異なる種類のヤーンであってもよい。本実施形態では、第2のヤーン2603は、実質的に非弾性のヤーンまたは弾性率が小さい弾性糸であってもよい第1のヤーン2601および/または第3のヤーン2605よりも弾性率が大きい弾性糸であってもよい。例示的実施形態において、第1のヤーン2601および第3のヤーン2605を使用して、第4ニット構成要素1300を形成するニット要素の外側部および内側部を形成できるのに対し、第2のヤーン2603を使用して、第4ニット構成要素1300のスロート区域1320の中心に位置する一体型ニットベロ1310の弾性部分を形成できる。しかしながら、その他の実施形態では、第2のヤーン2603をさらに使用して、第4ニット構成要素1300のニット要素の他の部分を形成してもよい。
【0091】
ここで
図27を参照すると、第1のヤーン2601のループは、第4ニット構成要素1300の内側かかと縁部1307の最上部のコースを形成して示され、第3のヤーン2605のループを使用して、第4ニット構成要素1300の外側かかと縁部1306を形成してもよい。第2のヤーン2603は、第4ニット構成要素1300のいずれかの部分を形成するために使用されなくてもよい。次に、
図28に示すように、編み機1700は第4ニット構成要素1300を形成する材料にさらなるコースを追加するために同様のプロセスを使用して、外側周縁部1304、内側周縁部1305、外側内縁部1308および内側内縁部1309を含むさらなる部分を形成できる。加えて、この時点で、第2の標準フィーダー2602は、第2のヤーン2603を使用して、一体型ニットベロ1310を含む第4ニット構成要素1300の一部を形成し始めていてもよく、この一体型ニットベロ1310は針床1701、1702から完成済みの上端部1314まで延びている。
【0092】
本実施形態では、第2の標準フィーダー2602は、第4ニット構成要素1300のスロート区域1320が伸縮可能となるように、弾性糸を使用して一体型ニットベロ1310を形成してもよい。加えて、第4ニット構成要素1300は、前述したように、1つまたは複数の分離したニット層を有して形成されてもよい。
図29は、一体型ニットベロ1310およびアッパー1302を形成する第4ニット構成要素1300の残りを編むことと関連してコースを完成させる編み機1700を示す。同様のプロセスを使用してさらなるコースを追加することによって、第4ニット構成要素1300を完成させることができる。
【0093】
加えて、
図26から
図29に示される編みプロセスでは、各種フィーダーの第1のレール1710における相対位置によって、それぞれ対応するフィーダーによって形成できる第4ニット構成要素1300の部分を制限できる。例えば、弾性の第2のヤーン2603で一体型ニットベロ1310を形成するのに第2の標準フィーダー2602の配置が必要とされるため、第1の標準フィーダー2600は、第4ニット構成要素1300の内側側部のみに沿って第4ニット構成要素1300の前方部分および後方部分(それぞれ、第1の表面1330および第2の表面1332と対応する)の両方を形成できるようにしてもよい。同様に、第3の標準フィーダー2604は、第4ニット構成要素1300の外側側部のみに沿って、第4ニット構成要素1300の前方部分および後方部分の両方を形成できるようにしてもよい。したがって、第2の標準フィーダー2602を使用して、第4ニット構成要素1300の外側側部と内側側部との間に広がる一体型ニットベロ1310を形成できる。この構成により、
図26から
図29に示される編みプロセスは、特定のフィーダーを使用して第4ニット構成要素1300の特定の部分を形成することを必要としてもよい。
【0094】
上述の、
図16から
図29に示されているニット構成要素を編むプロセスおよび方法は例示的なものであり、包括的であることを意図したものではない。したがって、本明細書に記載される実施形態の特徴を含むさらなるニット構成要素、および本明細書に明示的に記載されていない類似のニット構成要素は、上述のおよび/またはインレイストランド案件に記述されるニット構成要素のための編む方法に実質的に類似した1つまたは複数の編みプロセスを使用して製造されてもよいと理解すべきである。
【0095】
本発明の各種実施形態について説明したが、本明細書は限定的なものではなく例示的なものであることを意図しており、本発明の範囲内でさらに多くの実施形態および実施態様が可能であることが当業者には明らかであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲およびその均等を考慮する以外は限定されない。さらに、さまざまな改変および変更が添付の特許請求の範囲内でなされてもよい。
(関連出願の相互参照)
本願は、2012年5月17日出願の「ベロを有するニット構成要素を組み込んだ履物製品」と題する同時係属の米国特許出願番号第13/474,531号の一部継続出願であり、この出願は、2012年2月20日出願の「ベロを有するニット構成要素を組み込んだ履物製品」と題する米国特許出願番号第13/400,511号の継続出願である。これらの出願は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれるものとする。