(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】電力供給線保護方法、マスター装置、及び電力供給システム
(51)【国際特許分類】
H02H 5/04 20060101AFI20220613BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220613BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
H02H5/04 110
H02J7/00 S
B60R16/02 650S
(21)【出願番号】P 2019105856
(22)【出願日】2019-06-06
【審査請求日】2021-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】中村 吉秀
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-041198(JP,A)
【文献】特開2010-283977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 5/04
H02J 7/00
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリと、前記バッテリから電力を供給されるマスター装置と、前記マスター装置から第1の電力供給線を介して電力を供給されるスレーブ装置と、を備え、
前記マスター装置が前記第1の電力供給線を介した給電を制御する制御部を有し、前記スレーブ装置が負荷に第2の電力供給線を介して電力を供給
し、前記スレーブ装置が前記第2の電力供給線を介した給電を制御する制御部を有する電力供給システムにおける電力供給線保護方法であって、
前記マスター装置の制御部により、前記第1の電力供給線の温度を推定するステップと、
前記マスター装置の制御部により、前記推定された第1の電力供給線の温度が第1の遮断閾値より大きいときに、前記第1の電力供給線を介した給電を遮断するステップと、
前記マスター装置
の制御部により、前記第2の電力供給線の温度を推定するステップと、
前記マスター装置の制御部により、前記推定された第2の電力供給線の温度が第2の遮断閾値より大きいときに、
前記第2の電力供給線を介した給電を遮断する要求を、前記スレーブ装置の制御部に出力するステップと、
前記スレーブ装置の制御部により、前記要求を受けったときに、前記第2の電力供給線を介した給電を遮断するステップと、を含む電力供給線保護方法。
【請求項2】
バッテリと、前記バッテリから電力を供給されるマスター装置と、前記マスター装置から第1の電力供給線を介して電力を供給されるスレーブ装置と、を備え、
前記マスター装置が前記第1の電力供給線を介した給電を制御する制御部を有し、前記スレーブ装置が負荷に第2の電力供給線を介して電力を供給
し、前記スレーブ装置が前記第2の電力供給線を介した給電を制御する制御部を有する電力供給システムのマスター装置であって、
前記マスター装置は、前記第2の電力供給線の温度を推定する制御部を備え、
前記制御部は、
前記第1の電力供給線の温度を推定し、前記推定された第1の電力供給線の温度が第1の遮断閾値より大きいときに、前記第1の電力供給線を介した給電を遮断し、
前記スレーブ装置から取得した前記第2の電力供給線の電流の値に基づき、前記第2の電力供給線の温度を推定し、前記推定された第2の電力供給線の温度が第2の遮断閾値より大きいときに
、前記第2の電力供給線を介した給電を遮断する
要求を前記スレーブ装置の制御部に出力する、マスター装置。
【請求項3】
バッテリと、
前記バッテリから電力を供給されるマスター装置と、
前記マスター装置から第1の電力供給線を介して電力を供給されるスレーブ装置と、を備え、
前記マスター装置が前記第1の電力供給線を介した給電を制御する制御部を有し、
前記スレーブ装置が負荷に第2の電力供給線を介して電力を供給
し、
前記スレーブ装置が前記第2の電力供給線を介した給電を制御する制御部を有する電力供給システムであって、
前記第2の電力供給線を介した電力の供給/遮断を切り換えるスイッチをさらに備え
、
前記
マスター装置の制御部は、
前記第1の電力供給線の温度を推定し、前記推定された第1の電力供給線の温度が第1の遮断閾値より大きいときに、前記第1の電力供給線を介した給電を遮断し、
前記第2の電力供給線の温度を推定し、前記推定された第2の電力供給線の温度が第2の遮断閾値より大きいときに、
前記第2の電力供給線を介した給電を遮断する要求を前記スレーブ装置の制御部に出力し、
前記スレーブ装置の制御部は、前記マスター装置から前記要求を受け取ったときに、前記スイッチをオフにし、前記第2の電力供給線を介した給電を遮断する、電力供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力供給線を保護する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
過電流から電気回路を保護するために、ヒューズが用いられる。ヒューズは、電流が流れることにより発生するジュール熱により所定の温度以上になると溶け、回路を遮断する。また、ヒューズを用いる代わりに、電力供給線の温度を推定する手段と、スイッチと、を有し、ヒューズの特性を模擬して、推定された温度が所定の値より大きくなったときに、スイッチをオフにし、回路を遮断することで、過電流から電気回路を保護する技術も存在する(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-85469号公報
【文献】特開2018-93624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の自動車は電子化が進み、自動車に搭載される電装部品の数が増えてきており、配線の増加やコストの上昇を抑えるために、マスター・スレーブ方式が用いられてきている。マスター・スレーブ方式では、個々の電装部品を制御するスレーブ装置とは別に、複数のスレーブ装置をまとめて制御するマスター装置を設けることで、スレーブ装置の機能を低いものに抑え、コストの上昇を抑えている。
【0005】
マスター・スレーブ方式では、負荷にはスレーブ装置から電力が供給される。このため過電流から負荷やスレーブ装置を保護するために、過電流が生じた場合に負荷とスレーブ装置の間の電力供給線を遮断する機能が必要である。しかしながら、特許文献1、2に開示された技術は、マスター・スレーブ方式を考慮した技術ではない。このため、特許文献1、2に開示された技術をマスター・スレーブ方式のシステムに単純に適用した場合、スレーブ装置が、負荷への電力供給線を遮断する機能に加え、電力供給線の温度を推定する機能も有することになり、スレーブ装置の機能が増加し、コストが上昇する。
【0006】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、マスター・スレーブ方式のシステムおいて、スレーブ装置の機能を増加することなく、電力供給線を保護することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る電力供給線保護方法は、バッテリと、前記バッテリから電力を供給されるマスター装置と、前記マスター装置から第1の電力供給線を介して電力を供給されるスレーブ装置と、を備え、前記スレーブ装置が負荷に第2の電力供給線を介して電力を供給する電力供給システムにおける電力供給線保護方法であって、前記マスター装置により、前記第2の電力供給線の温度を推定するステップと、前記推定された第2の電力供給線の温度が第2の遮断閾値より大きいときに、前記第2の電力供給線を介した給電を遮断するステップと、を含む。前記電力供給線保護方法は、前記マスター装置により、前記第1の電力供給線の温度を推定するステップと、前記推定された第1の電力供給線の温度が第1の遮断閾値より大きいときに、前記第1の電力供給線を介した給電を遮断するステップと、をさらに含むようにしても良い。
【0008】
本発明の一実施形態に係るマスター装置は、バッテリと、前記バッテリから電力を供給されるマスター装置と、前記マスター装置から第1の電力供給線を介して電力を供給されるスレーブ装置と、を備え、前記スレーブ装置が負荷に第2の電力供給線を介して電力を供給する電力供給システムのマスター装置であって、前記マスター装置は、前記第2の電力供給線の温度を推定する制御部を備え、前記制御部は、前記スレーブ装置から取得した前記第2の電力供給線の電流の値に基づき、前記第2の電力供給線の温度を推定し、前記推定された第2の電力供給線の温度が第2の遮断閾値より大きいときに、前記第2の電力供給線を介した電力の供給/遮断を切り換えるスイッチをオフにし、前記第2の電力供給線を介した給電を遮断する。
【0009】
本発明の一実施形態に係る電力供給システムは、バッテリと、前記バッテリから電力を供給されるマスター装置と、前記マスター装置から第1の電力供給線を介して電力を供給されるスレーブ装置と、を備え、前記スレーブ装置が負荷に第2の電力供給線を介して電力を供給する電力供給システムであって、前記第2の電力供給線を介した電力の供給/遮断を切り換えるスイッチをさらに備え、前記マスター装置は、前記第2の電力供給線の温度を推定する制御部を備え、前記制御部は、前記第2の電力供給線の温度を推定し、前記推定された第2の電力供給線の温度が第2の遮断閾値より大きいときに、前記スイッチをオフにし、前記第2の電力供給線を介した給電を遮断する。
【発明の効果】
【0010】
上記で説明した態様によれば、マスター・スレーブ方式のシステムおいて、スレーブ装置の機能を増加することなく、電力供給線を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る通信・電力供給システム100を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係るマスター装置120を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係るスレーブ装置130を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態に係る電力供給線保護方法を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態に係るマスター装置120の処理動作の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図5のステップS502の第1の電力供給線PL1の遮断判定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図5のステップS504の第2の電力供給線PL2の遮断判定処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<電力供給システム100>
図1は、本発明の一実施形態に係る通信・電力供給システム100を示す図である。電力供給システム100は、バッテリ110と、複数のマスター装置120と、複数のスレーブ装置130と、を有する。
【0013】
マスター装置120は、バッテリ電源供給線PLBを介して、バッテリ110から電力の供給を受ける。1つのマスター装置120には、第1の電力供給線PL1を介して、複数のスレーブ装置130が接続しており、この第1の電力供給線PL1により接続したマスター装置120と複数のスレーブ装置130は、1つのサブネットワークを形成している。
【0014】
複数のスレーブ装置130の各々には、1つの第1の電力供給線PL1が対応しており、スレーブ装置130は、この対応する第1の電力供給線PL1を介して、マスター装置120から電力の供給を受ける。また、スレーブ装置130は、第2の電力供給線PL2を介して、少なくとも1つの負荷200に接続している。少なくとも1つの負荷200の各々には、1つの第2の電力供給線PL2が対応しており、負荷200は、対応する第2の電力供給線PL2を介して、スレーブ装置200から電力の供給を受ける。
【0015】
また、複数のマスター装置120は、第1の通信ラインCL1に接続しており、この第1の通信ラインCL1を介して、互いに通信を行う。第1の通信ラインCL1は、例えば、CAN(Contoroller Area Network)や、MOST(Media Oriented System Transport)、FlexRayなどのプロトコル用の通信ラインである。また、マスター装置120には、第2の通信ラインCL2を介して、自身のサブネットワーク内の複数のスレーブ装置130が接続しており、マスター装置120は、この第2の通信ラインCL2を介して、サブネットワーク内のスレーブ装置130の通信を制御する。スレーブ装置130は、この通信に基づいて、第2の電力供給線PL2で接続された負荷200の制御を行う。第2の通信ラインCL2は、例えば、LIN(Local Interconnect Network)などのプロトコル用の通信ラインであり、スレーブ装置130は、LINにおけるスレーブノードとして機能し、マスター装置120は、LINにおけるマスターノードとして機能する。なお、スレーブ装置130も、マスター装置120が接続した第1の通信ラインCL1に接続するようし、マスター装置120は、第1の通信ラインCL1を介して、スレーブ装置130を制御するようにしても良い。
【0016】
図2は、本発明の一実施形態に係るマスター装置120を示す図である。マスター装置120は、複数の第1のスイッチ300と、第1のスイッチ300のオンオフを制御する制御部121と、を有している。複数の第1のスイッチ300の各々は、第1の電源供給線PL1の1つに対応しており、対応する第1の電源供給線PL1の上流に配置され、例えば、
図2に示すように、電源供給線を介して、対応する第1の電源供給線PL1が接続する端子に接続している。
【0017】
よって、第1のスイッチ300がオンのときは、対応する第1の電力供給線PL1に電力が供給され、この対応する第1の電力供給線PLに接続したスレーブ装置130に電力が供給される。第1のスイッチ300がオフのときは、対応する第1の電力供給線PL1への電力の供給が遮断され、この対応する第1の電力供給線PL1に接続したスレーブ装置130への電力の供給が遮断される。
【0018】
図3は、本発明の一実施形態に係るスレーブ装置130を示す図である。スレーブ装置130は、少なくとも1つの第2のスイッチ400と、第2のスイッチ400のオンオフを制御する制御部131と、を有している。少なくとも1つの第2のスイッチ400の各々は、第2の電源供給線PL2の1つに対応しており、対応する第2の電源供給線PL2の上流に配置され、例えば、
図3に示すように、電源供給線を介して、対応する第2の電源供給線PL2が接続する端子に接続している。
【0019】
よって、第2のスイッチ400がオンのときは、対応する第2の電力供給線PL2に電力が供給され、この対応する第2の電力供給線PLに接続した負荷200に電力が供給される。第2のスイッチ400がオフのときは、対応する第2の電力供給線PL2への電力の供給が遮断され、この対応する第2の電力供給線PL2に接続した負荷200への電力の供給が遮断される。
【0020】
よって、例えば、マスター装置120は、第1のスイッチ300のオンオフを制御することにより、スレーブ装置130の電源のオンオフを制御し、スレーブ装置130は、第2のスイッチ400のオンオフを制御することにより、負荷200の電源のオンオフを制御する。
【0021】
例えば、マスター装置120やスレーブ装置130は、オンにしたい負荷200がある場合には、その負荷200を制御するスレーブ装置130に、負荷200をオンしたいことを示す負荷制御信号を出力する。この負荷制御信号には、オンにしたい負荷200を制御するスレーブ装置130のIDが含まれており、マスター装置120は、このIDにより、この負荷制御信号が、自身のサブネットワークに含まれるスレーブ装置130のものであるかを判定する。そして、もし自身のサブネットワークに含まれるスレーブ装置130のものである場合には、このスレーブ装置130に電力を供給する第1の電力供給線PL1に対応する第1のスイッチ300をオンにし、このスレーブ装置130に電力を供給し、このスレーブ装置130をオンにする。オンになったスレーブ装置130は、第2の通信ラインCL2を介して、負荷制御信号をマスター装置120から受取り、この負荷制御信号に基づいて、オンにすべき負荷200に電力を供給する第2の電力供給線PL2に対応する第2のスイッチ400をオンにする。これにより、負荷200に、電力が供給され、負荷200がオンになる。
【0022】
回路内で短絡などにより過電流が生じた場合、マスター装置120や、スレーブ装置130、負荷200、電力供給線PL1、PL2などが破損する可能性がある。このため、電力供給線PL1、PL2にヒューズなどの遮断手段を設け、過電流が生じたときに電力供給線PL1、PL2を遮断することができるようにする必要がある。そこで、本実施形態の電力供給システム100は、電力供給線の温度を推定し、推定された温度が所定の値より大きくなったときに、スイッチをオフにし、電力供給線を遮断する機能を有する。
【0023】
具体的には、本実施形態のマスター装置120の制御部121は、第1の電力供給線PL1の温度と第2の電力供給線PL2の温度を推定する。制御部121は、例えば、特許文献1に記載された方法を用いて、第1の電力供給線PL1の温度と第2の電力供給線PL2の温度を推定する。第1の電力供給線PL1の温度と第2の電力供給線PL2の温度を推定する際に用いる電流の値は、例えば、第1の電流供給線PL1の各々と、第2の電力供給線PL2の各々に、電流計を設けるようにすると良い。
【0024】
また、第1のスイッチ300、第2のスイッチ400を、例えば、IPD(Intelligent Power Device)や、シャント抵抗+MOSFET、電流検出機能が付いたセンスMOSFETなどの、スイッチ機能に加え、電力供給線を流れる電流の値を測定する機能を有するものにすると良い。このようにすることで、別個に電流計を設けることなく、電力供給線の温度を推定するために用いる電流の値を得ることが可能になる。
【0025】
そして、制御部121は、推定された第1の電力供給線PL1の温度を第1の遮断閾値と比較し、推定された第1の電力供給線PL1の温度が第1の遮断閾値より大きい場合に、この第1の電力供給線を介した給電を遮断する。具体的には、例えば、制御部121は、推定された第1の電力供給線PL1の温度が第1の遮断閾値より大きい場合に、この第1の電力供給線PL1に対応する第1のスイッチ300をオフにし、この第1の電力供給線PL1を介した給電を遮断する。つまり、本実施形態では、第1の遮断閾値に相当する温度に達したときに切断されるヒューズを第1の電力供給線PL1に設けた場合と同じ効果が得られる。
【0026】
よって、本実施形態では、第1の電力供給線PL1が高温になることを防ぐことが可能であり、第1の電力供給線PL1を保護することが可能になる。また、第1の遮断閾値は、例えば、特許文献1のように、第1の電力供給線PL1の発煙温度に基づいて決定すると良い。このようにすることで、第1の電力供給線PL1が発煙するまで加熱することを防ぐことが可能である。また、ヒューズを用いるのとは異なり、第1の遮断閾値(つまり、遮断される際の電流量)を負荷200の特性に合わせて設定することが可能になり、従来よりも細径化した電線を第1の電力供給線PL1として用いることが可能になる。結果、車両全体の軽量化が可能になる。
【0027】
また、制御部121は、推定された第2の電力供給線PL2の温度を第2の遮断閾値と比較し、推定された第2の電力供給線PL2の温度が第2の遮断閾値より大きい場合に、この第2の電力供給線を介した給電を遮断する。具体的には、例えば、制御部121は、推定された第2の電力供給線PL2の温度が第2の遮断閾値より大きい場合に、この第2の電力供給線PL2に対応する第2のスイッチ400をオフにする要求を、この第2のスイッチ400を制御するスレーブ装置130に出力する。そして、この要求を受け取ったスレーブ装置130が、この第2のスイッチ400をオフにし、この第2の電力供給線PL2を介した給電を遮断する。つまり、本実施形態では、第2の遮断閾値に相当する温度に達したときに切断されるヒューズを第2の電力供給線PL2に設けた場合と同じ効果が得られる。
【0028】
よって、本実施形態では、第2の電力供給線PL2が高温になることを防ぐことが可能であり、第2の電力供給線PL2を保護することが可能になる。また、本実施形態では、マスター装置120の制御部121が、第2の電力供給線PL2の温度を推定するため、電力供給線の保護のために、スレーブ装置130に新たな機能を追加する必要がない。よって、本実施形態では、スレーブ装置130の機能を増加することなく、電力供給線を保護することが可能である。結果、本実施形態では、スレーブ装置130を小型化することが可能である。また、第2の遮断閾値は、例えば、特許文献1のように、第2の電力供給線PL2の発煙温度に基づいて決定すると良い。このようにすることで、第2の電力供給線PL2が発煙するまで加熱することを防ぐことが可能である。また、ヒューズを用いるのとは異なり、第2の遮断閾値(つまり、遮断される際の電流量)を負荷200の特性に合わせて設定することが可能になり、従来よりも細径化した電線を第2の電力供給線PL2として用いることが可能になる。結果、車両全体の軽量化が可能になる。
【0029】
第1の電力供給線PL1、第2の電力供給線PL2は、電力の供給が遮断された後は、放熱することで冷えていく。そこで、制御部121は、第1の電力供給線PL1の各々、第2の電力供給線PL2の各々に対して、上記の温度の推定および電力の供給の遮断・遮断解除の判定を、所定の時間間隔で繰り返し行うようにすると良い。そして、第1の電力供給線PL1の各々、第2の電力供給線PL2の各々について、電力の供給を遮断するという遮断判定がされたときに、遮断判定がされた状態であることを記憶するようにすると良い。そして、遮断判定がされた状態である電力供給線が、所定の値より小さくなったときに、遮断判定を解除し、この電力供給線が、遮断判定がされた状態でないことを記憶するようにすると良い。
【0030】
例えば、制御部121は、第1の電力供給線PL1への給電を遮断するとの遮断判定がされた後に、推定された第1の電力供給線PL1の温度が、第1の遮断解除温度より小さくなった場合に、遮断判定を解除し、この第1の電力供給線PL1は、遮断判定がされた状態でないと記憶するようにすると良い。また、このとき、もし他のマスター装置120やスレーブ装置130からこの第1の電力供給線PL1に対応する第1のスイッチ300をオンにする要求があるならば、この第1のスイッチ300をオンにし、この第1の電力供給線PL1への給電を再開するようにしても良い。第1の遮断解除温度は、第1の遮断温度よりも小さい値にすると良い。
【0031】
また、制御部121は、第2の電力供給線PL2への給電を遮断するとの遮断判定がされた後に、推定された第2の電力供給線PL2の温度が、第2の遮断解除温度より小さくなった場合に、遮断判定を解除し、この第2の電力供給線PL2は、遮断判定がされた状態でないと記憶するようにすると良い。また、このとき、もし他のマスター装置120やスレーブ装置130からこの第2の電力供給線PL2に対応する第2のスイッチ400をオンにする要求がならば、この第2のスイッチ400をオンにし、この第2の電力供給線PL1への給電を再開するようにしても良い。第2の遮断解除温度は、第2の遮断温度よりも小さい値にすると良い。
【0032】
このようにすることで、電力供給線が冷えたときに、この電力供給線を介した電力の供給を再開することが可能になる。
【0033】
上記の実施形態では、第1のスイッチ300は、マスター装置120が備えているが、第1のスイッチ300は、対応する第1の電力供給線PL1を介した給電を遮断することができる位置であれば、どこに配置されても良く、例えば、マスター装置120の外部において、第1の電力供給線PL1の途中に配置されても良い。また、第2のスイッチ400も、対応する第2の電力供給線PL2を介した給電を遮断することができる位置であれば、どこに配置されても良く、例えば、スレーブ装置130の外部において、第2の電力供給線PL2の途中に配置されても良い。
【0034】
また、上記の実施形態では、マスター装置120の制御部121は、第1の電力供給線PL1の温度を推定しているが、第1のスイッチ300から第1の電力供給線PL1が接続する端子まで延びる電力供給線の温度を推定するようにし、上述した方法で、この電力供給線を保護するようにしても良い。また、マスター装置120の制御部121は、第2のスイッチ400から第2の電力供給線PL2が接続する端子まで延びる電力供給線の温度を推定するようにし、上述した方法で、この電力供給線を保護するようにしても良い。
【0035】
<電力供給線保護方法>
図4は、本発明の一実施形態に係る電力供給線保護方法を示すフローチャートである。マスター装置により、第1の電力供給線PL1の温度を推定する(ステップS401)。推定された第1の電力供給線の温度が第1の遮断閾値より大きいときに(ステップS402、YES)、第1の電力供給線を介した給電を遮断する(ステップS403)。第2の電力供給線の温度を推定する(ステップS404)。推定された第2の電力供給線の温度が第2の遮断閾値より大きいときに(ステップS405、YES)、第2の電力供給線を介した給電を遮断する(ステップS406)。
【0036】
<マスター装置120での処理動作>
図5は、本実施形態に係るマスター装置120の処理動作の一例を示すフローチャートである。この処理動作は、所定の時間間隔で繰り返し行われる。複数の第1の電力供給線PL1の電流の値を取得する(ステップS501)。複数の第1の電力供給線PL1の各々に対して、後述する第1の電力供給線PL1の遮断判定処理を行う(ステップS502)。複数の第2の電力供給線PL2の電流の値を複数のスレーブ装置130から取得する(ステップS503)。複数の第2の電力供給線PL2の各々に対して、後述する第2の電力供給線PL2の遮断判定処理を行う(ステップS504)。
【0037】
図6は、
図5のステップS502の第1の電力供給線PL1の遮断判定処理の一例を示すフローチャートである。この第1の電力供給線PL1の遮断判定処理は、複数の第1の電力供給線PL1の各々に対して行われる。判定対象の第1の電力供給線PL1の温度を推定する(ステップS601)。この第1の電力供給線PL1に対応する第1のスイッチ300がオンであるのか否かを確認する(ステップS602)。
【0038】
この第1の電力供給線PL1に対応する第1のスイッチ300がオンである場合(ステップS602、YES)、推定された第1の電力供給線PL1の温度が、第1の遮断閾値より大きいか否かを確認する(ステップS603)。推定された第1の電力供給線PL1の温度が第1の遮断閾値より大きい場合(ステップS603、YES)、第1の電力供給線PL1を介した給電を遮断するとの遮断判定し、この第1の電力供給線PL1が遮断判定された状態であることを記憶し(ステップS604)、第1の電力供給線PL1に対応する第1のスイッチ300をオフにし(ステップS605)、処理を終了する。推定された第1の電力供給線PL1の温度が第1の遮断閾値より大きくない場合(ステップS603、NO)、第1の電力供給線PL1に対応する第1のスイッチ300をオフにする要求が他のマスター装置120やスレーブ装置130からあるならば(ステップS606、YES)、第1の電力供給線PL1に対応する第1のスイッチ300をオフにし(ステップS605)、処理を終了し、第1の電力供給線PL1に対応する第1のスイッチ300をオフにする要求が他のマスター装置120やスレーブ装置130からないならば(ステップS606、NO)、そのまま処理を終了する。
【0039】
第1の電力供給線PL1に対応する第1のスイッチ300がオフである場合(ステップS602、NO)、この第1の電力供給線PL1に対して、遮断判定がされた状態か否かを確認する(ステップS607)。ここで、遮断判定がされた状態とは、前回の処理動作までに、推定された第1の電力供給線PL1の温度が第1の遮断閾値より大きいために、第1の電力供給線を介した給電を遮断するとの遮断判定がされたが、前回の処理動作までに、推定された第1の電力供給線PL1の温度が第1の遮断解除閾値より小さくなっておらず、第1の電力供給線を介した給電の遮断を解除するとの遮断判定が解除されていない状態である。
【0040】
第1の電力供給線PL1に対して遮断判定がされた状態である場合(ステップS607、YES)、推定された第1の電力供給線PL1の温度が、第1の遮断解除閾値より小さいか否かを確認する(ステップS608)。推定された第1の電力供給線PL1の温度が第1の遮断解除閾値より小さい場合(ステップS608、YES)、遮断判定を解除し、この第1の電力供給線PL1が遮断判定された状態でないことを記憶し(ステップS609)、第1の電力供給線PL1に対応する第1のスイッチ300をオンにする要求が他のマスター装置120やスレーブ装置130からあるならば(ステップS610、YES)、第1の電力供給線PL1に対応する第1のスイッチ300をオンにし(ステップS611)、処理を終了し、第1の電力供給線PL1に対応する第1のスイッチ300をオンにする要求が他のマスター装置120やスレーブ装置130からないならば(ステップS610、NO)、そのまま処理を終了する。推定された第1の電力供給線PL1の温度が第1の遮断閾値より小さくない場合(ステップS608、NO)、そのまま処理を終了する。
【0041】
第1の電力供給線PL1に対して遮断判定がされた状態でない場合(ステップS607、NO)、第1の電力供給線PL1に対応する第1のスイッチ300をオンにする要求が他のマスター装置120やスレーブ装置130からあるならば(ステップS610、YES)、第1の電力供給線PL1に対応する第1のスイッチ300をオンにし(ステップS611)、処理を終了し、第1の電力供給線PL1に対応する第1のスイッチ300をオンにする要求が他のマスター装置120やスレーブ装置130からないならば(ステップS610、NO)、そのまま処理を終了する。
【0042】
図7は、
図5のステップS504の第2の電力供給線PL2の遮断判定処理の一例を示すフローチャートである。この第2の電力供給線PL2の遮断判定処理は、複数の第2の電力供給線PL2の各々に対して行われる。第1のスイッチ300がオフとなり、電力が供給されていないスレーブ装置130に接続された第2の電力供給線PL2は電力の供給がなく、遮断判定の必要がない。そこで、この第2の電力供給線PL2の遮断判定処理は、電力が供給されているスレーブ装置130に接続された第2の電力供給線PL2に対して行われる。
【0043】
判定対象の第2の電力供給線PL2の温度を推定する(ステップS701)。この第2の電力供給線PL2に対応する第2のスイッチ400がオンであるのか否かを確認する(ステップS702)。
【0044】
この第2の電力供給線PL2に対応する第2のスイッチ400がオンである場合(ステップS702、YES)、推定された第2の電力供給線PL2の温度が、第2の遮断閾値より大きいか否かを確認する(ステップS703)。推定された第2の電力供給線PL2の温度が第2の遮断閾値より大きい場合(ステップS703、YES)、第2の電力供給線PL2を介した給電を遮断するとの遮断判定し、この第2の電力供給線PL1が遮断判定された状態であることを記憶し(ステップS704)、第2の電力供給線PL2に対応する第2のスイッチ400をオフにする要求を、この第2のスイッチ400を制御するスレーブ装置130に出力し(ステップS705)、処理を終了する。推定された第2の電力供給線PL2の温度が第2の遮断閾値より大きくない場合(ステップS703、NO)、第2の電力供給線PL2に対応する第2のスイッチ400をオフにする要求が他のマスター装置120やスレーブ装置130からあるならば(ステップS706、YES)、第2の電力供給線PL2に対応する第2のスイッチ400をオフにする要求を、この第2のスイッチを制御するスレーブ装置130に出力し(ステップS705)、処理を終了し、第2の電力供給線PL2に対応する第2のスイッチ400をオフにする要求が他のマスター装置120やスレーブ装置130からないならば(ステップS706、NO)、そのまま処理を終了する。
【0045】
第2の電力供給線PL2に対応する第2のスイッチ400がオフである場合(ステップS702、NO)、この第2の電力供給線PL2に対して、遮断判定がされた状態か否かを確認する(ステップS707)。
【0046】
第2の電力供給線PL2に対して遮断判定がされた状態である場合(ステップS707、YES)、推定された第2の電力供給線PL2の温度が、第2の遮断解除閾値より小さいか否かを確認する(ステップS708)。推定された第2の電力供給線PL2の温度が第2の遮断解除閾値より小さい場合(ステップS708、YES)、遮断判定を解除し、この第2の電力供給線PL2が遮断判定された状態でないことを記憶し(ステップS709)、第2の電力供給線PL2に対応する第2のスイッチ400をオンにする要求が他のマスター装置120やスレーブ装置130からあるならば(ステップS710、YES)、第2の電力供給線PL2に対応する第2のスイッチ400をオンにする要求を、この第2のスイッチを制御するスレーブ装置130に出力し(ステップS711)、処理を終了し、第2の電力供給線PL2に対応する第2のスイッチ400をオンにする要求が他のマスター装置120やスレーブ装置130からないならば(ステップS710、NO)、そのまま処理を終了する。推定された第2の電力供給線PL2の温度が第2の遮断閾値より小さくない場合(ステップS708、NO)、そのまま処理を終了する。
【0047】
第2の電力供給線PL2に対して遮断判定がされた状態でない場合(ステップS707、NO)、第2の電力供給線PL2に対応する第2のスイッチ400をオンにする要求が他のマスター装置120やスレーブ装置130からあるならば(ステップS710、YES)、第2の電力供給線PL2に対応する第2のスイッチ400をオンにし(ステップS711)、処理を終了し、第2の電力供給線PL2に対応する第2のスイッチ400をオンにする要求が他のマスター装置120やスレーブ装置130からないならば(ステップS710、NO)、そのまま処理を終了する。
【0048】
以上、本発明の好適な実施の形態により本発明を説明した。ここでは特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に記載した本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正および変更が可能である。
【符号の説明】
【0049】
100 電力供給システム
110 バッテリ
120 マスター装置
121 制御部
130 スレーブ装置
200 負荷
300 第1のスイッチ
400 第2のスイッチ
PL1 第1の電力供給線
PL2 第2の電力供給線