(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】鞍乗型電動車両
(51)【国際特許分類】
B62J 43/00 20200101AFI20220613BHJP
H01M 50/20 20210101ALI20220613BHJP
【FI】
B62J43/00
H01M50/20
(21)【出願番号】P 2019192186
(22)【出願日】2019-10-21
【審査請求日】2020-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢崎 勝也
(72)【発明者】
【氏名】望月 利紀
(72)【発明者】
【氏名】内澤 昭憲
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2013/098893(JP,A1)
【文献】特開2010-232084(JP,A)
【文献】特開2010-83333(JP,A)
【文献】特開平5-330465(JP,A)
【文献】特開2016-210328(JP,A)
【文献】国際公開第2012/063292(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/090241(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0048630(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第3477756(EP,A1)
【文献】国際公開第2012/066601(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 43/00
H01M 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動モータと、
シートと、
前記駆動モータへ電力を供給するためのバッテリセルを含み、前記シートの下方で車幅方向の中央に位置して少なくとも前進方向及び後進方向に交差する前面及び後面を含んで前記バッテリセルを収納するバッテリーケースを含み、前記前面及び前記後面の少なくとも一方に
位置する排気口を通して前記バッテリーケースの内部の圧抜きを可能にする排気構造を含むバッテリと、
を
含み、
前記排気構造は、ラビリンス構造で前記排気口に至る流路を含む、鞍乗型電動車両。
【請求項2】
請求項1に記載された鞍乗型電動車両において、
前記排気構造の前記排気口の範囲内に、前記鞍乗型電動車両の、前記車幅方向の中心が位置する、鞍乗型電動車両。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された鞍乗型電動車両において、
前記バッテリーケースは、アルミニウム製又は樹脂製であり、
前記バッテリーケースに前記排気構造が取り付けられ
ている、鞍乗型電動車両。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載された鞍乗型電動車両において、
前輪及び後輪をさらに含み、
前記排気構造の前記排気口は、前記前輪及び前記後輪の少なくとも一方に対向している、鞍乗型電動車両。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載された鞍乗型電動車両において、
前記排気構造の前記排気口は、斜め上方及び斜め下方のいずれかを向いている、鞍乗型電動車両。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載された鞍乗型電動車両において、
前記車幅方向に間隔をあけた一対のダウンチューブを含むフレームをさらに含み、
前記バッテリは、前記フレームの前記一対のダウンチューブの間にある、鞍乗型電動車両。
【請求項7】
請求項6に記載された鞍乗型電動車両において、
前記排気構造の前記排気口は、前記フレームに対向しない方向を向いている、鞍乗型電動車両。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載された鞍乗型電動車両において
、
前記流路は、粒子を捕獲可能なフィルタが配置されている主流路と、前記フィルタを避けるように前記主流路から分岐している迂回流路と、を含む、鞍乗型電動車両。
【請求項9】
請求項
8に記載された鞍乗型電動車両において、
前記迂回流路は、
前記排気構造の前記排気口の手前で前記主流路に合流するようになっている、鞍乗型電動車両。
【請求項10】
請求項
8又は
9に記載された鞍乗型電動車両において、
前記フィルタに外側で対向している金属メッシュをさらに含む、鞍乗型電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
電動車両は、バッテリを収容したバッテリーケースを備えている(特許文献1)。バッテリーケースには、内部が高圧となったときに内圧を逃がすために、排気口が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高温時にはバッテリーケース内外の圧力差により、排気口から熱風が排出されるとライダーの快適性に影響を与えるという課題がある。
【0005】
本発明は、快適性の低下を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る鞍乗型電動車両は、駆動モータと、シートと、前記駆動モータへ電力を供給するためのバッテリセルを含み、前記シートの下方で車幅方向の中央に位置して少なくとも前進方向及び後進方向に交差する前面及び後面を含んで前記バッテリセルを収納するバッテリーケースを含み、前記前面及び前記後面の少なくとも一方にある排気口を通して前記バッテリーケースの内部の圧抜きを可能にする排気構造を含むバッテリと、を含む。
【0007】
本発明によれば、排気口が、バッテリーケースの前面及び後面の少なくとも一方にあり、ライダーに向かないようになっているので、快適性の低下を防止することができる。
【0008】
(2)(1)に記載された鞍乗型電動車両において、前記排気口の範囲内に、前記鞍乗型電動車両の、前記車幅方向の中心が位置してもよい。
【0009】
(3)(1)又は(2)に記載された鞍乗型電動車両において、前記バッテリーケースは、アルミニウム製又は樹脂製であり、前記排気構造が取り付けられる開口を有してもよい。
【0010】
(4)(1)から(3)のいずれか1項に記載された鞍乗型電動車両において、前輪及び後輪をさらに含み、前記排気口は、前記前輪及び前記後輪の少なくとも一方に対向していてもよい。
【0011】
(5)(1)から(4)のいずれか1項に記載された鞍乗型電動車両において、前記排気口は、斜め上方及び斜め下方のいずれかを向いていてもよい。
【0012】
(6)(1)から(5)のいずれか1項に記載された鞍乗型電動車両において、前記車幅方向に間隔をあけた一対のダウンチューブを含むフレームをさらに含み、前記バッテリは、前記フレームの前記一対のダウンチューブの間にあってもよい。
【0013】
(7)(6)に記載された鞍乗型電動車両において、前記排気口は、前記フレームに対向しない方向を向いていてもよい。
【0014】
(8)(1)から(7)のいずれか1項に記載された鞍乗型電動車両において、前記排気構造は、ラビリンス構造で前記排気口に至る流路を含んでもよい。
【0015】
(9)(1)から(8)のいずれか1項に記載された鞍乗型電動車両において、前記流路は、粒子を捕獲可能なフィルタが配置されている主流路と、前記フィルタを避けるように前記主流路から分岐している迂回流路と、を含んでもよい。
【0016】
(10)(9)に記載された鞍乗型電動車両において、前記迂回流路は、前記排気口の手前で前記主流路に合流するようになっていてもよい。
【0017】
(11)(9)又は(10)に記載された鞍乗型電動車両において、前記フィルタに外側で対向している金属メッシュをさらに含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態に係る鞍乗型電動車両の側面図である。
【
図2】
図1に示す鞍乗型電動車両の内部構造の側面図である。
【
図4】
図2に示す内部構造の、前輪を除いた正面図である。
【
図5】
図1に示す鞍乗型電動車両のV-V線断面図である。
【
図7】
図1に示す鞍乗型電動車両の一部を拡大した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。但し、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0020】
図1は、実施形態に係る鞍乗型電動車両の側面図である。鞍乗型電動車両は、電動二輪車であるが、車輪の数は問わない。鞍乗型電動車両は、例えば不整地走行用の四輪車両であってもよい。鞍乗型電動車両は、オンロードタイプであっても、オフロードタイプであっても、スクータタイプであってもよい。
【0021】
本実施形態において、方向は、鞍乗型電動車両の直進方向を基準にする。例えば、
図1の矢印F及びBは、それぞれ、前方向及び後方向を示す。上下方向は、前方向を基準とした上下方向であり、左右方向は、前方向を基準とした左右方向である。
【0022】
図2は、
図1に示す鞍乗型電動車両の内部構造の側面図である。鞍乗型電動車両はフレーム10を備えている。フレーム10の前端部にはフロントフォーク12が左右方向に回転可能に支持されている。フロントフォーク12の下端部には前輪14が回転可能に支持されている。フロントフォーク12の上端部には操舵のためのハンドル16(
図1)が設けられている。フレーム10の後下部にはリアユニット18が上下方向に揺動可能に支持されている。リアユニット18の後端部には後輪20が回転可能に支持されている。フレーム10の後上部には運転者が座るシート22(
図1)が設けられている。
【0023】
鞍乗型電動車両は、駆動輪である後輪20を駆動する駆動モータ24を備えている。駆動モータ24は例えば三相交流モータである。駆動モータ24はフレーム10に支持されている。駆動モータ24の駆動力はベルト26等の伝達部材を介して後輪20に伝達される。これに限らず、駆動モータ24は前輪14を駆動してもよいし、前輪14と後輪20の両方を駆動してもよい。
【0024】
鞍乗型電動車両は、バッテリ28を備えている。バッテリ28はシート22の下方向に配置されている。充電コネクタ30が、ケーブル32を介してバッテリ28と電気的に接続されている。充電時において、充電コネクタ30には、給電プラグ(図示せず)が挿入されて充電を行えるようになっている。バッテリ28は、
図3に示すバッテリセル34を内蔵する。
【0025】
図3は、バッテリセル34の斜視図である。バッテリ28は、駆動モータ24へ電力を供給するためのバッテリセル34(例えばリチウムイオン電池)を含む。一般的なリチウムイオン電池には、コバルト酸リチウムが使用されており、結晶構造が崩壊する際にガス(酸素)及び粒子が放出される。
【0026】
図4は、
図2に示す内部構造の、前輪を除いた正面図である。フレーム10は、車幅方向に間隔をあけた一対のダウンチューブ36を含む。バッテリ28は、フレーム10の一対のダウンチューブ36の間にある。つまり、バッテリ28は、その外側にあるダウンチューブ36によって保護されている。バッテリ28は、シート22の下方で車幅方向の中央に位置する。
【0027】
図5は、
図1に示す鞍乗型電動車両のV-V線断面図である。バッテリ28は、センタートンネル38に配置されている。センタートンネル38は、車体カバー40によって区画された空間である。
【0028】
図6は、バッテリ28の詳細な斜視図である。バッテリ28は、バッテリーケース42を含む。バッテリーケース42にバッテリセル34(
図3)が収納されている。バッテリーケース42は、アルミニウム製又は樹脂製であってもよいし、その他の材料から構成されてもよい。バッテリーケース42は、シート22の下方で車幅方向の中央に位置する(
図5)。バッテリーケース42は、少なくとも前進方向(
図1の矢印F)を向くように配置される前面44を含む。バッテリーケース42は、少なくとも後進方向(
図1の矢印B)を向くように配置される後面46を含む。バッテリ28は、排気口48を有し、バッテリーケース42の内部の圧抜きが可能になっている。
【0029】
図7は、
図1に示す鞍乗型電動車両の一部を拡大した斜視図である。排気口48は、前輪14及び後輪20の少なくとも一方に対向している。排気口48は、斜め上方及び斜め下方のいずれかを向いていてもよい。排気口48は、フレーム10に対向しない方向を向いている。排気口48の範囲内に、車幅方向の中心が位置する。排気口48は、車幅方向を向かないようになっている。本実施形態によれば、排気口48が、ライダーに向かないようになっているので、快適性の低下を防止することができる。
【0030】
図8は、バッテリ28の一部拡大断面図である。バッテリ28は、排気構造50を含む。バッテリーケース42の開口に排気構造50が取り付けられている。排気構造50は、排気口48を通してバッテリーケース42の内部の圧抜きを可能にする。排気口48は、バッテリーケース42の前面44及び後面46の少なくとも一方にある。
【0031】
排気構造50は、ラビリンス構造で排気口48に至る流路52を含む。流路52は、主流路54を含む。主流路54には、排気口48に向けて直進する流れを遮るパーティション56が設けられており、流路52が屈曲するようになっている。主流路54は、屈曲した流路52よりも下流では、排気口48に向かって真っすぐな流路になっている。主流路54には粒子を捕獲可能なフィルタ58が配置されている。パーティション56は、間隔をあけてフィルタ58と対向している。主流路54を流動する流体は、必ず、フィルタ58を通るようになっている。
【0032】
流路52は、迂回流路60を含む。迂回流路60は、フィルタ58を避けるように主流路54から分岐している。フィルタ58の目詰まりによって主流路54が塞がれたときに、迂回流路60によって外部への通気経路が確保される。迂回流路60も、屈曲した流路になっている。迂回流路60は、排気口48の手前(フィルタ58よりも下流側)で主流路54に合流するようになっている。
【0033】
主流路54においてフィルタ58に外側で対向するように、金属メッシュ62が設けられている。金属メッシュ62は、フィルタ58よりも目が粗く、主として異物の挿入防止のために設けられる。なお、金属メッシュ62の外側には、空気を通すが水を通さないメンブレン(図示せず)が貼り付けられている。金属メッシュ62の外側には、排気カバー64が設けられている。排気口48は、排気カバー64に形成された穴である。
【0034】
[実施形態の概要]
(1)鞍乗型電動車両は、駆動モータ24と、シート22と、前記駆動モータ24へ電力を供給するためのバッテリセル34を含み、前記シート22の下方で車幅方向の中央に位置して少なくとも前進方向及び後進方向に交差する前面44及び後面46を含んで前記バッテリセル34を収納するバッテリーケース42を含み、前記前面44及び前記後面46の少なくとも一方にある排気口48を通して前記バッテリーケース42の内部の圧抜きを可能にする排気構造50を含むバッテリ28と、を含む。
【0035】
(2)(1)に記載された鞍乗型電動車両において、前記排気口48の範囲内に、前記鞍乗型電動車両の、前記車幅方向の中心が位置してもよい。
【0036】
(3)(1)又は(2)に記載された鞍乗型電動車両において、前記バッテリーケース42は、アルミニウム製又は樹脂製であり、前記排気構造50が取り付けられる開口を有してもよい。
【0037】
(4)(1)から(3)のいずれか1項に記載された鞍乗型電動車両において、前輪14及び後輪20をさらに含み、前記排気口48は、前記前輪14及び前記後輪20の少なくとも一方に対向していてもよい。
【0038】
(5)(1)から(4)のいずれか1項に記載された鞍乗型電動車両において、前記排気口48は、斜め上方及び斜め下方のいずれかを向いていてもよい。
【0039】
(6)(1)から(5)のいずれか1項に記載された鞍乗型電動車両において、前記車幅方向に間隔をあけた一対のダウンチューブ36を含むフレーム10をさらに含み、前記バッテリ28は、前記フレーム10の前記一対のダウンチューブ36の間にあってもよい。
【0040】
(7)(6)に記載された鞍乗型電動車両において、前記排気口48は、前記フレーム10に対向しない方向を向いていてもよい。
【0041】
(8)(1)から(7)のいずれか1項に記載された鞍乗型電動車両において、前記排気構造50は、ラビリンス構造で前記排気口48に至る流路52を含んでもよい。
【0042】
(9)(1)から(8)のいずれか1項に記載された鞍乗型電動車両において、前記流路52は、粒子を捕獲可能なフィルタ58が配置されている主流路54と、前記フィルタ58を避けるように前記主流路54から分岐している迂回流路60と、を含んでもよい。
【0043】
(10)(9)に記載された鞍乗型電動車両において、前記迂回流路60は、前記排気口48の手前で前記主流路54に合流するようになっていてもよい。
【0044】
(11)(9)又は(10)に記載された鞍乗型電動車両において、前記フィルタ58に外側で対向している金属メッシュ62をさらに含んでもよい。
【0045】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、実施形態で説明した構成は、実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
【符号の説明】
【0046】
10 フレーム、12 フロントフォーク、14 前輪、16 ハンドル、18 リアユニット、20 後輪、22 シート、24 駆動モータ、26 駆動力ベルト、28 バッテリ、30 充電コネクタ、32 ケーブル、34 バッテリセル、36 ダウンチューブ、38 センタートンネル、40 車体カバー、42 バッテリーケース、44 前面、46 後面、48 排気口、50 排気構造、52 流路、54 主流路、56 パーティション、58 フィルタ、60 迂回流路、62 金属メッシュ、64 排気カバー。