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7086919エレベータおよびエレベータ利用者への避難支援情報提供方法
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  • -エレベータおよびエレベータ利用者への避難支援情報提供方法 図1
  • -エレベータおよびエレベータ利用者への避難支援情報提供方法 図2
  • -エレベータおよびエレベータ利用者への避難支援情報提供方法 図3
  • -エレベータおよびエレベータ利用者への避難支援情報提供方法 図4
  • -エレベータおよびエレベータ利用者への避難支援情報提供方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】エレベータおよびエレベータ利用者への避難支援情報提供方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 3/00 20060101AFI20220613BHJP
【FI】
B66B3/00 G
B66B3/00 F
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019227121
(22)【出願日】2019-12-17
(65)【公開番号】P2021095243
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2019-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】森本 信子
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-024383(JP,A)
【文献】特開平10-120319(JP,A)
【文献】特開2013-010579(JP,A)
【文献】特開2019-227121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの乗りかごに設置された投影装置と、
エレベータが設置された建物の避難階の避難経路情報を含む避難支援情報を記憶する避難支援情報記憶部と、
非常事態発生時に、前記避難支援情報記憶部から前記避難支援情報を取得し、前記乗りかご内の利用者に提供するために、前記乗りかごが戸閉中であれば、前記投影装置から前記乗りかごのかごドアに投影させ、前記乗りかごが戸開中であれば、前記投影装置から戸開した階の乗場に投影させる避難支援情報出力制御部とを備えることを特徴とするエレベータ。
【請求項2】
エレベータの乗りかごに設置された投影装置と、
エレベータが設置された建物の避難階の避難経路情報を含む避難支援情報を記憶する避難支援情報記憶部と、
非常事態発生時に、前記避難支援情報記憶部から前記避難支援情報を取得し、前記乗りかご内の利用者に提供するために前記投影装置から投影させる避難支援情報出力制御部とを備え、
前記避難支援情報記憶部に記憶される避難支援情報は、戸開した前記乗りかご内から前記避難階の乗場を撮影した乗場撮像情報と、前記避難経路情報としての前記避難階の乗場から非常口に向かう方向を示す非常口方向情報、および前記避難階の乗場から非常口までの距離を示す非常口距離情報を含み、
前記避難支援情報出力制御部は、非常事態発生時に前記乗りかごが戸閉中であれば、取得した避難支援情報に含まれる乗場撮像情報を、前記投影装置から前記乗りかごのかごドアに被写体が実物大になるように投影させ、これに前記非常口方向情報および前記非常口距離情報を重畳させる
ことを特徴とするエレベータ。
【請求項3】
前記避難支援情報出力制御部は、非常事態発生時に前記乗りかごが前記避難階で戸開中であるとき、または、前記乗りかごが前記避難階に着床して戸開したときには、取得した避難支援情報に含まれる非常口方向情報および非常口距離情報を、前記投影装置から前記避難階の乗場に投影させる
ことを特徴とする請求項1または2に記載のエレベータ。
【請求項4】
前記避難支援情報記憶部に記憶される避難支援情報は、前記避難階のフロア平面図情報、および避難に関する情報を保持する外部機関に通信接続するための外部接続情報をさらに含み、
前記避難支援情報出力制御部は、前記避難階のフロア平面図情報および前記外部接続情報を含む避難支援情報を前記投影装置から投影させる
ことを特徴とする請求項1~3いずれか1項に記載のエレベータ。
【請求項5】
前記乗りかご内に設置されたかご内スピーカ装置をさらに備え、
前記避難支援情報記憶部は、前記避難支援情報を報知するための音声情報をさらに記憶し、
前記避難支援情報出力制御部は、前記避難支援情報記憶部から取得した避難支援情報の音声情報を、前記かご内スピーカ装置から出力させる
ことを特徴とする請求項1~4いずれか1項に記載のエレベータ。
【請求項6】
前記乗りかご内に設置されたかご内表示装置をさらに備え、
前記避難支援情報出力制御部は、前記避難支援情報記憶部から取得した避難支援情報を前記かご内表示装置に表示させる
ことを特徴とする請求項1~5いずれか1項に記載のエレベータ。
【請求項7】
前記避難支援情報出力制御部は、前記避難支援情報内の、各階床の乗場から非常口に向かう方向を示す非常口方向情報および各階床の乗場から非常口までの距離を示す非常口距離情報と、該当する階床のフロア平面図情報と、避難に関する情報を保持する外部機関に通信接続するための外部接続情報とを、所定時間ごとに切り替えて、前記かご内表示装置に順次表示させる
ことを特徴とする請求項6に記載のエレベータ。
【請求項8】
エレベータが設置された建物の避難階の避難経路情報を含む避難支援情報を記憶する避難支援情報記憶部を有するエレベータが、
非常事態発生時に、前記避難支援情報記憶部から前記避難支援情報を取得し、前記エレベータの乗りかご内の利用者に提供するために、前記乗りかごが戸閉中であれば、前記乗りかごに設置された投影装置から前記乗りかごのかごドアに投影させ、前記乗りかごが戸開中であれば、前記投影装置から戸開した階の乗場に投影させる
ことを特徴とするエレベータ利用者への避難支援情報提供方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータおよびエレベータ利用者への避難支援情報提供方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物内で、地震や火事、停電などによる非常事態が発生した場合、当該建物内にいる人は非常口から屋外に避難することができる。避難する人が非常口までの経路を把握しやすくするために、建物内には、非常口へ誘導するための案内看板が複数設置されている。
【0003】
また、非常事態発生時に、建物内の部屋や廊下などの所定位置に、非常口に向かう方向を示す案内情報を投影する技術もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-55282号公報
【文献】特開2015-53031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、非常事態が発生したときに、エレベータの乗りかごに乗車している人は、上述したような案内情報等を視認することができない。そのため、次に着床した階床でかごドアが戸開した際にどの方向のどのあたりに非常口があるのかを直ちに認識できず、避難行動が遅れる場合があるという問題があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、建物内で非常事態が発生した際に、エレベータの乗りかご内の利用者に、避難行動を支援するための情報を提供することが可能な、エレベータおよびエレベータ利用者への避難支援情報提供方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための実施形態によればエレベータは、乗りかごに設置された投影装置と、避難支援情報記憶部と、避難支援情報出力制御部とを備える。避難支援情報記憶部は、エレベータが設置された建物の避難階の避難経路情報を含む避難支援情報を記憶する。避難支援情報出力制御部は、非常事態発生時に避難支援情報記憶部から避難支援情報を取得し、乗りかご内の利用者に提供するために、乗りかごが戸閉中であれば、投影装置から乗りかごのかごドアに投影させ、乗りかごが戸開中であれば、投影装置から戸開した階の乗場に投影させる
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態によるエレベータの構成を示す全体図。
図2】一実施形態によるエレベータの乗りかごのかごドアに避難支援情報が投影された状態を示す正面図。
図3】一実施形態によるエレベータ制御装置の動作を示すフローチャート。
図4】一実施形態によるエレベータの乗場に避難支援情報が投影された状態を示す上面図。
図5】一実施形態によるエレベータのかご内表示装置に順次表示される表示情報を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〈一実施形態によるエレベータの構成〉
本発明の一実施形態によるエレベータの構成について、図1および図2を参照して説明する。図1は、本実施形態によるエレベータ1の構成を示す全体図である。エレベータ1はn階建ての建物内に設置され、昇降路2内を走行する乗りかご3と、乗りかご3にテールコード4を介して接続されたエレベータ制御装置5とを備える。建物の各階には、乗りかご3が着床する乗場6-1~6-nが設けられている。図1内で乗りかご3は、横方向から見た状態を示す。また図2は、乗りかご3内からかごドア32方向を見た正面図を示す。
【0010】
乗りかご3は、図1および2に示すように、出力装置としての投影装置31と、かごドア32と、かご内スピーカ装置33と、第1かご内表示装置34-1と、第2かご内表示装置34-2とを有する。投影装置31は乗りかご3内の天井に設置され、かごドア32方向に所定の表示情報を投影する。
【0011】
エレベータ制御装置5は、建物内に設置された地震検知器61および火災検知器62に接続され、避難支援情報記憶部51と、災害検知情報取得部52と、停電検知部53と、運転モード切替部54と、運転状況情報取得部55と、避難支援情報出力制御部56とを有する。
【0012】
避難支援情報記憶部51は、当該建物の避難階の避難経路情報を含む避難支援情報を記憶する。本実施形態においては、避難階として、建物の出入り口がある1階が予め設定されている。避難支援情報には、戸開した乗りかご3内から避難階「1階」の乗場6-1を撮影した乗場撮像情報D1と、避難経路情報としての、避難階の乗場から非常口に向かう方向を示す非常口方向情報D2および避難階の乗場から非常口までの距離を示す非常口距離情報D3と、避難階「1階」のフロア平面図情報D4と、避難に関する情報を保持する外部機関に通信接続するための外部接続情報D5とが含まれる。外部接続情報D5は例えば、外部機関のWebサーバに通信接続するためのアドレス情報や電話番号等を含む2次元バーコード情報である。外部機関に保持される避難に関する情報は例えば、非常時連絡先、発生した災害に関する被害状況等である。
【0013】
災害検知情報取得部52は、地震検知器61で検知された地震検知情報、および火災検知器62で検知された火災検知情報を取得する。停電検知部53は、当該建物内の停電発生を検知する。運転モード切替部54は、災害検知情報取得部52で地震検知器61からの地震検知情報もしくは火災検知器62からの火災検知情報が取得されるか、または、停電検知部53で停電が検知されると、非常事態が発生したと判断してエレベータ1の運転モードを通常運転から管制運転に切り替える。管制運転に切り替えると、乗りかご3を予め設定された避難階である1階に着床させ、戸開させる。運転状況情報取得部55は、エレベータ1の運転状況に関する情報、例えば、乗りかご3の現在位置、走行方向、乗りかご3内の利用者数、呼び登録情報等を取得する。
【0014】
避難支援情報出力制御部56は、エレベータ1が管制運転に切り替えられ、乗りかご3内に利用者がいるときには、避難支援情報記憶部51から避難支援情報を取得する。そして、取得した避難支援情報を乗りかご3内の利用者に提供するために乗りかご3に送信し、投影装置31からかごドア32または着床した乗場6に投影させる。
【0015】
〈一実施形態によるエレベータ制御装置を用いたエレベータの動作〉
次に、本実施形態によるエレベータ1の動作について、図3のフローチャートを参照して説明する。エレベータ1の通常運転中に(S1)災害検知情報取得部52で、地震検知器61からの地震検知情報もしくは火災検知器62からの火災検知情報が取得されるか、または、停電検知部53で停電が検知されると、運転モード切替部54において建物内で非常事態が発生したと判定され、運転モードが通常運転から管制運転に切り替えられる(S2の「YES」)。
【0016】
エレベータ1が管制運転に切り替えられると、運転状況情報取得部55で取得された情報に基づいて、乗りかご3内に利用者がいるか否かが避難支援情報出力制御部56で判定される(S3)。ここで、乗りかご3内に利用者がいると判定されると(S3の「YES」)、避難支援情報出力制御部56により、避難支援情報記憶部51から避難支援情報が取得される(S4)。
【0017】
次に、運転状況情報取得部55で取得された情報に基づいて、乗りかご3が既に避難階「1階」に着床して戸開中であるか否かが避難支援情報出力制御部56で判定される(S5)。乗りかごが避難階「1階」で戸開中ではないと判定されると(S5の「NO」)、取得した避難支援情報を投影装置31からかごドア32に投影させるためのかごドア出力指示が生成され、当該避難支援情報とともに乗りかご3に送信される(S6)。
【0018】
乗りかご3では、エレベータ制御装置5から送信されたかごドア出力指示に基づいて、当該避難支援情報が投影装置31からかごドア32に投影される。このとき、図2に示すように、避難支援情報内の乗場撮像情報の被写体が実物大になるように投影装置31からかごドア32に投影され、これに非常口方向情報、非常口距離情報、該当階床のフロア平面図情報、および外部接続情報が重畳されて投影される。
【0019】
乗りかご3内の利用者は、投影された情報を視認することで、避難階「1階」に乗りかご3が到着して戸開した際にどちらの方向にどのくらい進めば非常口があるのかを認識することができる。また、外部接続情報として投影された2次元バーコードを、自身が所持する携帯端末で読み取ることで、避難に関する情報を保持する外部機関のWebサーバに通信接続するためのアドレス情報や電話番号を用いて当該外部機関と通信接続を行い、所望の情報を取得することができる。
【0020】
乗りかご3が避難階「1階」に着床して戸開すると(S7の「YES」)、避難支援情報出力制御部56により、避難支援情報を投影装置31から1階の乗場6-1に投影させるための乗場出力指示が生成され、乗りかご3に送信される(S8)。
【0021】
乗りかご3では、エレベータ制御装置5から送信された乗場出力指示に基づいて、図4に示すように、当該避難指示情報の非常口方向情報D2および非常口距離情報D3が投影装置31から戸開したかごドア32部分を介して乗場6-1に投影されるように切り替えられる。
【0022】
その後、非常事態が解消されるかまたは乗りかご3内が無人状態になると(S9の「YES」)、避難支援情報出力制御部56により投影停止指示が生成され、乗りかご3に送信される。乗りかご3では、エレベータ制御装置5から送信された投影停止指示に基づいて、投影処理が停止される。
【0023】
また、ステップS5において、乗りかごが避難階「1階」で戸開中であると判定されると(S5の「YES」)、取得した避難支援情報を投影装置31から乗場6-1に投影させるための乗場出力指示が生成され、当該避難支援情報とともに乗りかご3に送信される(S11)。
【0024】
乗りかご3では、エレベータ制御装置5から送信された乗場出力指示に基づいて、図4に示すように、当該避難指示情報の非常口方向情報D2および非常口距離情報D3が投影装置31から乗場6-1に投影され、ステップS9に移る。
【0025】
以上の第1実施形態によれば、建物内で非常事態が発生した際に、エレベータの乗りかご内の利用者に、避難階に到着した際の非常口までの避難経路等、避難行動を支援するための避難経路等の情報を提供することができる。
【0026】
上述した実施形態において、避難支援情報記憶部51に、避難支援情報を報知するための音声情報をさらに記憶しておき、エレベータ制御装置5の避難支援情報出力制御部56から送信されたかごドア出力指示または乗場出力指示が乗りかご3で取得されたときに、かご内スピーカ装置33から避難支援情報の音声情報をかご内スピーカ装置33から出力させるようにしてもよい。
【0027】
また、上述した実施形態において、エレベータ制御装置5の避難支援情報出力制御部56から送信されたかごドア出力指示または乗場出力指示が乗りかご3で取得されたときに、第1かご内表示装置34-1および第2かご内表示装置34-2に、所定の避難支援情報、例えば非常口方向情報D2、非常口距離情報D3、避難階のフロア平面図情報D4、および外部接続情報D5を表示させるようにしてもよい。
【0028】
その際、第1かご内表示装置34-1および第2かご内表示装置34-2はかごドア32に比べて表示領域が小さいため、図5に示すように、非常口方向情報D2および非常口距離情報D3を表示した表示情報P1と、避難階のフロア平面図情報D4を表示した表示情報P2と、外部接続情報D5を含む2次元バーコードを含む表示情報P3とを、所定時間ごとに切り替えて順次表示させるようにしてもよい。
【0029】
また、上述した実施形態においては、管制運転の際に乗りかご3を着床させる避難階が予め設定されている場合について説明したが、乗りかご3を最寄り階に着床させるようにしてもよい。その際は、避難支援情報記憶部51に各階床の避難支援情報を記憶しておき、避難支援情報出力制御部56は、非常事態発生時に乗りかご3が管制運転で着床する最寄り階の情報を取得し、当該階床の避難支援情報を取得して、乗りかご3に送信する。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0031】
1…エレベータ、2…昇降路、3…乗りかご、4…テールコード、5…エレベータ制御装置、6,6-1~6-n…乗場、31…投影装置、32…かごドア、33…かご内スピーカ装置、34-1,34-2…かご内表示装置、51…避難支援情報記憶部、52…災害検知情報取得部、53…停電検知部、54…運転モード切替部、55…運転状況情報取得部、56…避難支援情報出力制御部、61…地震検知器、62…火災検知器
図1
図2
図3
図4
図5