(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】IL-15/IL-15Rアルファ系コンジュゲートの精製方法
(51)【国際特許分類】
C07K 14/54 20060101AFI20220613BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20220613BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20220613BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220613BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220613BHJP
C07K 1/18 20060101ALI20220613BHJP
C07K 1/20 20060101ALI20220613BHJP
C07K 14/715 20060101ALI20220613BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220613BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20220613BHJP
C12N 15/24 20060101ALN20220613BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20220613BHJP
【FI】
C07K14/54
A61K38/20 ZNA
A61P31/00
A61P35/00
A61P37/02
C07K1/18
C07K1/20
C07K14/715
C07K19/00
C12N15/12
C12N15/24
C12N15/62 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019230617
(22)【出願日】2019-12-20
(62)【分割の表示】P 2016555459の分割
【原出願日】2015-03-03
【審査請求日】2020-01-09
(32)【優先日】2014-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513322899
【氏名又は名称】サイチューン ファーマ
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ベシャール,ダヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】デ・マルティノフ,ギー
【審査官】木原 啓一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-512433(JP,A)
【文献】国際公開第2012/175222(WO,A1)
【文献】特表2007-538006(JP,A)
【文献】特表平09-512165(JP,A)
【文献】J. Biol. Chem.,2006年,Vol. 281, No. 3,pp. 1612-1619
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルから単量体コンジュゲートを含む組成物を調製するための方法であって、該コンジュゲートが、
a)インターロイキン15又はその誘導体のアミノ酸配列を含むポリペプチドと、
b)IL-15Rαのsushiドメイン又はその誘導体のアミノ酸配列を含むポリペプチドと
を含み、
該コンジュゲートが、配列番号16又は配列番号17のアミノ酸配列を有する融合タンパク質であり、
該方法が、該サンプルに対してアニオン交換(AEX)クロマトグラフィー、その後、アンモニウム塩を含有するバッファ溶液において実施される疎水性相互作用(HIC)クロマトグラフィーを使用することを含み、
AEXクロマトグラフィーについて、ローディング工程が、7.0以上のpHを有するバッファ溶液において実施され、
AEXクロマトグラフィーの溶出工程が、生理食塩バッファを用いる勾配で実施され、
アンモニウム塩を含有するバッファ溶液が、0.75M~2.5Mの硫酸アンモニウムを含み、
該サンプルが、該コンジュゲートを発現する形質転換された宿主細胞の培養培地のサンプルに対応し、該宿主細胞が、CHO細胞、HEK293細胞、COS細胞、PER.C6(登録商標)細胞、SP2O細胞、NSO細胞、又はこれらに由来する任意の細胞を含む群において選択される哺乳動物細胞に対応し、
組成物中のコンジュゲートの少なくとも80%が単量体コンジュゲートである、方法。
【請求項2】
前記哺乳動物細胞に対応する宿主細胞が、CHO細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
a)前記サンプルをAEXクロマトグラフィーに供して第1の溶出液を製造する工程と、
b)該第1の溶出液をHICクロマトグラフィーに供して第2の溶出液を製造する工程と
を含む、請求項1又は2のいずれか一項記載の方法。
【請求項4】
AEXクロマトグラフィーの工程a)が、Q Sepharose(商標)(例えば、Q Sepharose Fast Flow(商標)、Q Sepharose XL(商標)、Q Sepharose big beads(商標)、Q Sepharose high performance(商標)、Q Sepharose XL(商標));DEAE Sephadex A-25(商標)、DEAE Sephadex A-50(商標)、QAE Sephadex A-25(商標)、QAE Sephadex A-50(商標)、Sourse 15Q(商標)、Sourse 30Q(商標)、Resourse Q(商標)、Capto Q(商標)、Capto DEAE(商標)、Mono Q(商標)、Toyopearl Super Q(商標)、Toyopearl DEAE(商標)、Toyopearl QAE(商標)、Toyopearl Q(商標)、Toyopearl GigaCap Q(商標)、TSKgel SuperQ(商標)、TSKgel DEAE(商標)、Fractogel EMD TMAE(商標)、Fractogel EMD TMAE HiCap(商標)、Fractogel EMD DEAE(商標)、Macroprep High Q(商標)、Macro-prep-DEAE(商標)、Unosphere Q(商標)、Nuvia Q(商標)、POROS HQ(商標)、POROS PI(商標)、DEAE Ceramic HyperD(商標)、Q Ceramic HyperD(商標)、DEAE Sepharose Fast Flow(商標)、及びANX Sepharose 4 Fast Flow(商標)を含む群から選択されるAEXカラム又は樹脂を用いて行われる、請求項
3記載の方法。
【請求項5】
AEXクロマトグラフィーの溶出工程が、生理食塩バッファを用いて、1Mから0M NaClまでの勾配で実施される、請求項
1~4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
前記サンプルをHICクロマトグラフィーに供する工程b)について、ロード工程が、硫酸アンモニウムを含有するバッファ溶液において実施される、請求項
3~5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
前記サンプルをHICクロマトグラフィーに供する工程b)について、前記ロード工程が、該クロマトグラフィーにおいて直接、前記第1の溶出液をローディングバッファと混合することによって実現される、請求項
3~6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
前記アンモニウム塩を含有するバッファ溶液が、1M~2M硫酸アンモニウムを含む、請求項
1~7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
医薬を調製するために、得られた前記コンジュゲートを使用する工程を更に含んだ、請求項
1~8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
請求項
1~9のいずれか一項記載の方法によって得ることができる医薬組成物であって、少なくとも80%の単量体コンジュゲートを含む、医薬組成物。
【請求項11】
被験体における癌、感染症、及び/又は免疫不全障害を処置するための、請求項
10記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本国際特許出願は、参照により本明細書中に援用される欧州特許出願第14000742.8号(2014年3月3日出願)の優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、生化学工学の分野に関する。より具体的には、本発明は、IL-15/IL-15Rアルファ系コンジュゲートを、リフォールディングし、単量体形態で回収することができる、改良された生化学的回収方法に関する。この組成物は、医薬製剤で用いることができる。
【背景技術】
【0003】
背景
免疫療法の中でも、サイトカインに基づくものは、特に興味深い。これらの分子(可溶性分子である)は、体液性及び/又は細胞性の免疫を制御している。これらの中でも、IL-2、IL-7、IL-12及びIL-15が特により興味深いが、その理由は、これらが、NK細胞の生存及び/又は増殖を誘導するためであり、したがって、感染症又は癌を処置するためのアジュバントとして興味深い。
【0004】
サイトカインであるインターロイキン-15(IL-15)は、元々、サル腎臓上皮細胞株CV-1/EBNA及びT細胞白血病細胞株HuT-102の培養上清物中で同定された。IL-15のcDNA配列は、長い48アミノ酸(aa)のペプチドリーダー及び114aaの成熟タンパク質からなる162aaの前駆体タンパク質をコードする。IL-2との配列相同性はないが、アミノ酸配列の解析により、IL-15は、IL-2と同様、4ヘリックスバンドルサイトカインファミリーのメンバーであると予測される。
【0005】
インターロイキン-15は、非常に有望な将来の薬物であると実際に考えられている。それにもかかわらず、その短い半減期及び他のパラメータに起因して、哺乳動物細胞株におけるその産生は、低い収量で実際には行われる。
【0006】
インターロイキン-15及びその受容体であるIL-15Rアルファ又はこれらの断片に基づく新規コンジュゲートは、特許文献1及び特許文献2中に記載されている。
【0007】
ここで、そして、たとえこれらコンジュゲートがはるかに良好な半減期を有するとしても、二量体複合体及び多量体複合体の形成によって、それらの精製は複雑なものとなっていた。更に、二量体凝集体及びオリゴマー凝集体の割合が高いことから、注入された生物学的製剤に対する免疫原性/アレルギー原性の反応(抗薬物抗体、ADA)へのそれらの関与の可能性に起因して、対応する精製された組成物を医薬として使用することはできない。
【0008】
したがって、医薬として使用することができるコンジュゲート組成物を得るための新規な精製方法が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第8,124,084号明細書
【文献】欧州特許第1,934,353号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発明の概要
単量体コンジュゲートの調製に有用な精製方法を提供する。この方法は、このような単量体コンジュゲートを含む液体医薬組成物を提供する。該方法は、回収プロセス中に該コンジュゲートのリフォールディングを恐らく増強する条件を含む。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、アニオン交換クロマトグラフィー続いて疎水性相互作用クロマトグラフィーを用いる精製プロセスにより、単量体形態のコンジュゲートを得ることができるが、疎水性相互作用クロマトグラフィー続いてアニオン交換クロマトグラフィーを用いる精製では得られないことをここに証明した。更に、本発明者らは、驚くべきことに、疎水性相互作用クロマトグラフィーのロード工程は、第1の溶出液をローディングバッファと共に、該クロマトグラフィーのカラムの混合チャンバ中に直接混ぜ入れることによって行わなければならないことを確立した。実際に、このようなロード手順は、クロマトグラフィー樹脂上へのその同時析出なく、単量体形態下、高濃度の活性な融合タンパク質を得ることを可能にする最も効率的な手順である。
【0012】
したがって、第1の局面では、本発明は、サンプルから単量体コンジュゲートを含む組成物を調製するための方法に関し、該コンジュゲートは、
a)インターロイキン15又はその誘導体のアミノ酸配列を含むポリペプチドと、
b)IL-15Rαのsushiドメイン又はその誘導体のアミノ酸配列を含むポリペプチドと
を含み、
該方法は、該サンプルに対してアニオン交換クロマトグラフィー、続いて、疎水性相互作用クロマトグラフィーを使用することを含む。
【0013】
第2の局面では、本発明は、このような単量体コンジュゲートを含む医薬組成物に関する。
【0014】
第3の局面では、本発明は、被験体における癌及び/又は感染症を処置するための、このような組成物の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、CHO細胞株におけるRLI産生の2つのクロマトグラフィー溶出プロファイルを示す。
【
図2】
図2は、CHO細胞株におけるRLI産生のサイズ排除クロマトグラフィープロファイルを示す。
【
図3】
図3は、CHO細胞株(レーン2~7)又はピキア・パストリス(Pichia pastoris)(レーン9及び10)において産生されたRLIに対する、IL-15抗体を用いたウエスタンブロットを示す。PNGaseによるRLIの脱グリコシル化は、レーン3、5、7及び10に対応する。
【
図4】
図4は、(光散乱についての)RLI産生物のSEC-MALLSクロマトグラムを示す。
【
図5】
図5は、kit225細胞株に対する異なるRLI産生の増殖活性を示す。
【
図6】
図6は、32DB細胞株に対する異なるRLI産生の増殖活性を示す。
【
図7】
図7は、幾つかのRLIサンプルをマウスに注射した後に得られた、マウスのNKの増殖を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な説明
本発明は、単量体コンジュゲートを含む医薬組成物を調製するための新規な方法に関する。
【0017】
用語「単量体」は、組成物中に存在するコンジュゲートの大部分が、凝集しているよりもむしろ、単量体であることを意図する。「凝集」とは、可溶性のままであるか又は溶液から析出し得る多量体(すなわち、二量体又はオリゴマー)を生じる、ポリペプチド分子間の物理的相互作用を意図する。ほとんどの場合、この凝集状態は不可逆的であり、そして、コンジュゲートの変性を生じる。その変性後には、コンジュゲートは強力な免疫原性を伴うかもしれないことに注意しなければならない。
【0018】
その組成物中の単量体形態下のコンジュゲートの(重量)百分率は、すなわちその凝集形態と対比して、少なくとも80%以上、好ましくは少なくとも90%以上、そして、より好ましくは少なくとも95%%以上である。
【0019】
用語「サンプル」とは、コンジュゲートを発現する形質転換された宿主細胞の培養培地のサンプルを指す。本発明のために使用される宿主細胞は、哺乳動物細胞、好ましくは、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞、例えば、CHO K1(ATCC番号CCL-31、CCL-61又はCRL-9618)、CHO-DHFR(ATCC CRL-9096)、CHO-DXB-11、ATCC番号ATCC CRL 1610又はCHO DG44を有するCHO細胞;HEK293(ヒト胚性腎臓)、例えば、293(ATCC番号CRL-1573)又はHEK-293.2sus(ATCC番号CRL-1573.3);COS細胞、例えば、COS-1(ATCC番号CRL-1650)及びCOS-7(ATCC番号CRL-1651);PER.C6(登録商標)細胞(ヒト網膜由来細胞株;DSM BIOLOGICS、CRUCELL);SP2O、例えば、SP2/0-Agl4細胞(ATCC受託番号CRL-1851)、NSO細胞、又はこれらに由来する任意の細胞である。
【0020】
好ましくは、該宿主細胞は、CHO細胞株に対応する。
【0021】
第1の好ましい実施態様では、本発明の方法は、
(a)サンプルをアニオン交換クロマトグラフィー(AEX)に供して第1の溶出液を製造する工程と、
(b)該第1の溶出液を疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)に供して第2の溶出液を製造する工程と
を含む。
【0022】
アニオン交換クロマトグラフィー(AEX)の第1の工程は、Q Sepharose(例えば、Q Sepharose Fast Flow、Q Sepharose XL、Q Sepharose big beads、Q sepharose high performance、Q sepharose XL)、DEAE Sephadex A-25、DEAE Sephadex A-50、QAE Sephadex A-25、QAE Sephadex A-50、Sourse 15Q、Sourse 30Q、Resourse Q、Capto Q、Capto DEAE、Mono Q、Toyopearl Super Q、Toyopearl DEAE、Toyopearl QAE、Toyopearl Q、Toyopearl GigaCap Q、TSKgel SuperQ、TSKgel DEAE、Fractogel EMD TMAE、Fractogel EMD TMAE HiCap、Fractogel EMD DEAE、Fractogel EMD DMAE、Macroprep High Q、Macro-prep-DEAE、Unosphere Q、Nuvia Q、POROS HQ、POROS PI、DEAE Ceramic HyperD、及びQ Ceramic HyperD、DEAE Sepharose Fast Flow、及びANX Sepharose 4 Fast Flowを含むか若しくはからなる群から選択されるAEXカラム又は樹脂を用いて行うことができる。
【0023】
有利には、AEX樹脂又はカラムは、Q Sepharose又はDEAE Sepharoseに、より好ましくはQ Sepharose等の強アニオン交換体に、対応する。
【0024】
ここで、この工程a)は、典型的には、当該カラム又は樹脂の平衡化、サンプルのスカウティング、及び溶出を含む多数の工程で実施される。ローディング後かつ溶出前に、1つ以上の洗浄工程が含まれていてもよい。
【0025】
平衡化工程は、製造業者の説明書に従って簡単に実施される。
【0026】
本発明者らが決定したとおり、スカウティング工程は、NaClバッファを用いて行われる。一例として、スカウティングバッファは、0.5M~1.5M NaCl、好ましくは0.75M~1.25M、そして、最も好ましくは1M NaClを含む。
【0027】
このスカウティング工程は、好ましくは、限外濾過カセットを用いることによって、濃縮された培養上清に対して及びダイアフィルトレーションされた培養上清に対して実施される。
【0028】
アニオン交換クロマトグラフィー(AEX)の製造業者は、精製されるべきタンパク質の等電点よりも少なくとも1pH単位低いpHを用いることを提案している。
【0029】
予想外なことに、RLI1(配列番号16)又はRLI2(配列番号17)は、ほぼ5.5の電気点を有するが、本発明者らは、工程a)をpH7.0以上、好ましくは7.5以上で実施しなければならないことを確立した。
【0030】
アニオン交換クロマトグラフィー(AEX)についての溶出工程は、生理食塩バッファを用いて、1M NaClから0M NaClまでの、好ましくは0.75M NaClから0M NaClまでの勾配で実施される。
【0031】
疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)の工程b)は、Phenyl Sepharose、Butyl Sepharose、Octyl Sepharose、ToyoPearl Hexyl-650、ToyoPearl Ether-650、Hydrocell C3、Hydreocell Phenyl 1500、又はHydrocell C4 1500を含むか若しくはからなる群から選択されるHICカラム又は樹脂を用いて行うことができる。
【0032】
有利には、HIC樹脂又はカラムは、Phenyl Sepharoseに対応する。
【0033】
工程a)に関しては、この工程b)は、典型的には、カラム又は樹脂の平衡化、サンプルのローディング、及び溶出を含む多数の工程を含む。ローディング後かつ溶出前に、1つ以上の洗浄工程が含まれていてもよい。
【0034】
また、平衡化工程は、製造業者の説明書に従って簡単に実施される。
【0035】
スカウティング工程については、バッファ溶液は、硫酸アンモニウム又は酢酸アンモニウム等のアンモニウム塩、好ましくは硫酸アンモニウムを含有する。一例として、スカウティングバッファは、0.75M~2.5M 硫酸アンモニウム、好ましくは1M~2M 硫酸アンモニウム、最も好ましくは1.5~2M 硫酸アンモニウムを含む。
【0036】
このスカウティング工程は、重要である。本発明者らにより実施された実験では、精製全てによって様々な量のコンジュゲートが得られるが、該コンジュゲートは主に凝集形態下にあった。
【0037】
予想外なことに、本発明者らは、工程a)から得られた第1の溶出液とスカウティングバッファとを前記クロマトグラフィーカラム又は樹脂において直接混合することによって、より特に、前記クロマトグラフィーカラム又は樹脂の混合チャンバ中に直接混ぜ入れることによって、単量体形態のコンジュゲートを得ることに成功した。
【0038】
溶出工程は、生理食塩バッファ溶液を用いて、2 硫酸アンモニウムから0M 硫酸アンモニウムまでの、好ましくは1.5M 硫酸アンモニウムから0M 硫酸アンモニウムまでの勾配で実施される。
【0039】
本発明の方法は、1つ以上の更なる工程を含んでもよい。
【0040】
一例として、本発明の方法は、第2の溶出液をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)に供して、第3の溶出液を製造する工程を含んでもよい。
【0041】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)のこの工程は、Superdex 200又はSuperdex 75のようなSECカラムを用いることによって行うことができる。
【0042】
別の例として、本発明の方法はまた、第2の溶出液を更に別のアニオン交換クロマトグラフィー(AEX)に供して、第3の溶出液を製造する工程を含んでもよい。
【0043】
アニオン交換クロマトグラフィーのこの工程は、既に記載したとおり行うことができる。
【0044】
更に好ましい実施態様では、本発明の方法は、更に、医薬を調製するために、得られたコンジュゲートを使用する工程を含む。
【0045】
用語「コンジュゲート」は、当技術分野におけるその一般的な意味で用いられ、そして、共有結合複合体又は非共有結合複合体、好ましくは共有結合複合体、最も好ましくは融合タンパク質を指す。
【0046】
用語「インターロイキン15」は、当技術分野におけるその一般的な意味であり、そして、IL-2に対して構造的類似性を有するサイトカインを指す(Grabstein et al., Science, vol.264(5161), p:965-968, 1994)。このサイトカインはまた、IL-15、IL15、又はMGC9721としても知られている。このサイトカイン及びIL-2は、多くの生物活性を共有しており、そして、これらは、共通のヘマトポイエチン受容体サブユニットに結合することが見出された。したがって、これらは、同じ受容体について競合して互いの活性を負に調節しうる。IL-15は、T細胞及びナチュラルキラー細胞の活性化及び増殖を調節すること、そして、CD8+メモリー細胞の数が、このサイトカインとIL2との間のバランスによって制御されることが示されることが確立された。IL-15活性は、実施例に開示するように、kit225細胞株におけるその増殖誘導を決定することによって測定することができる(HORI et al., Blood, vol.70(4), p:1069-72, 1987)。
【0047】
前記IL-15又はその誘導体は、kit225細胞株の増殖誘導に対して、ヒトインターロイキン-15の活性の少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%を有する。
【0048】
前記インターロイキン15は、哺乳動物のインターロイキン15、好ましくは霊長類のインターロイキン15、より好ましくはヒトのインターロイキン15である。
【0049】
哺乳動物のインターロイキン15は、当業者が簡単に同定することができる。一例として、イノシシ(Sus scrofa)(受託番号ABF82250)、ラット(Rattus norvegicus)(受託番号NP_037261)、マウス(Mus masculus)(受託番号NP_032383)、ウシ(Bos Taurus)(受託番号NP_776515)、ウサギ(Oryctolagus cuniculus)(受託番号NP_001075685)、ヒツジ(Ovies aries)(受託番号NP_001009734)、ネコ(Felis catus)(受託番号NP_001009207)、カニクイザル(Macaca fascicularis)(受託番号BAA19149)、ヒト(Homo sapiens)(受託番号NP_000576)、アカゲザル(Macaca Mulatta)(受託番号NP_001038196)、モルモット(Cavia porcellus)(受託番号NP_001166300)、又はミドリザル(Chlorocebus sabaeus)(受託番号ACI289)由来のインターロイキン15を引用することができる。
【0050】
本明細書で使用するとき、用語「哺乳動物のインターロイキン15」とは、コンセンサス配列である配列番号1を指す。
【0051】
霊長類のインターロイキン15は、当業者が簡単に同定することができる。一例として、イノシシ(受託番号ABF82250)、ウサギ(受託番号NP_001075685)、カニクイザル(受託番号BAA19149)、ヒト(受託番号NP_000576)、アカゲザル(受託番号NP_001038196)、又はミドリザル(受託番号ACI289)由来のインターロイキン15を引用することができる。
【0052】
本明細書で使用するとき、用語「霊長類のインターロイキン15」とは、コンセンサス配列である配列番号2を指す。
【0053】
ヒトのインターロイキン15は、当業者が簡単に同定することができ、そして、アミノ酸配列である配列番号3を指す。
【0054】
本明細書で使用するとき、用語「インターロイキン15の誘導体」とは、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3からなる群において選択されるアミノ酸配列と少なくとも92.5%(すなわち、約10個のアミノ酸置換に相当)、好ましくは少なくとも96%(すなわち、約5個のアミノ酸置換に相当)、そして、より好ましくは少なくとも98.5%(すなわち、約2個のアミノ酸置換に相当)又は少なくとも99%(すなわち、約1個のアミノ酸置換に相当)の同一性パーセントを有するアミノ酸配列を指す。このような誘導体は、当業者の個人的な知識及び本特許出願の教示を考慮して、当業者が簡単に同定することができる。このような誘導体の一例として、国際公開第2009/135031号に記載されているものを引用することができる。また、天然のアミノ酸を化学的に改変されたアミノ酸に置換してもよいことが理解される。典型的には、このような化学的に改変されたアミノ酸は、ポリペプチドの半減期を増大させる。
【0055】
本明細書で使用するとき、2つのアミノ酸配列間の「同一性パーセント」とは、当該配列間の最良のアラインメントで得られた、比較すべき2つの配列間の同一のアミノ酸の百分率を意味し、この百分率は、純粋に統計学的なものであり、そして、これら2つの配列間の差異は、そのアミノ酸配列全体にわたりランダムに広がっている。本明細書で使用するとき、「最良のアラインメント」又は「最適なアラインメント」とは、決定された同一性パーセント(以下を参照)が最も高いアラインメントを意味する。2つのアミノ酸配列間の配列比較は、通常、最良のアラインメントに従って既にアラインメントされているこれらの配列を比較することによって実現され;この比較は、局所領域の類似度を特定及び比較するために、比較のセグメントにおいて実現される。比較を実施するための最良の配列アラインメントは、手動ではなく、Smith及びWatermanによって開発されたグローバルホモロジーアルゴリズム(Ad. App. Math., vol.2, p:482, 1981)を用いることによって、Neddleman 及びWunschによって開発されたローカルホモロジーアルゴリズム(J. Mol. Biol., vol.48, p:443, 1970)を用いることによって、Pearson及びLipmanによって開発された類似性法(Proc. Natl. Acd. Sci. USA, vol.85, p:2444, 1988)を用いることによって、このようなアルゴリズムを用いるコンピュータソフトウェア(GAP、BESTFIT、BLAST P、BLAST N、FASTA、TFASTA(Wisconsin Genetics software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WI USA)を用いることによって、MUSCLEマルチプルアライメントアルゴリズム(Edgar, Robert C., Nucleic Acids Research, vol. 32, p:1792, 2004)を用いることによって、実現することができる。最良のローカルアラインメントを得るために、好ましくは、BLOSUM 62行列を用いるBLASTソフトウェアを使用することができる。アミノ酸の2つの配列間の同一性パーセントは、最適にアラインメントされたこれら2つの配列を比較することによって決定され、該アミノ酸配列は、これら2つの配列間の最適なアラインメントを得るために、レファレンス配列に関する付加又は欠失を包含することができる。同一性パーセントは、これら2つの配列間の同一の位置の数を決定し、この数を比較する位置の総数で除し、そして、得られた結果に100を乗じて、これら2つの配列間の同一性パーセントを得ることによって計算される。
【0056】
好ましくは、インターロイキン15誘導体は、IL-15のアゴニスト又はスーパーアゴニストである。当業者は、IL-15のアゴニスト又はスーパーアゴニストを簡単に同定することができる。IL-15のアゴニスト又はスーパーアゴニストの一例として、国際公開第2005/085282号又はZHU et al. (J. Immunol., vol.183 (6), p:3598-607, 2009)に開示されているものを引用することができる。
【0057】
更に好ましくは、前記IL-15のアゴニスト又はスーパーアゴニストは、(ヒトIL-15の配列(配列番号3)に関して)、L45D、L45E、S51D、L52D、N72D、N72E、N72A、N72S、N72Y、及びN72Pを含む/からなる群において選択される。
【0058】
本明細書で使用するとき、用語「IL-15Rαのsushiドメイン」は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、そして、IL-15Rαのシグナルペプチド後の最初のシステイン残基(C1)で始まり、そして、前記シグナルペプチドの後の4番目のシステイン残基(C4)で終わるドメインを指す。IL-15Rαの細胞外領域の一部に対応する前記sushiドメインは、IL-15へのその結合に必要である(WEI et al., J. Immunol., vol.167(1), p:277-282, 2001)。
【0059】
前記IL-15Rαのsushiドメイン又はその誘導体は、ヒトIL-15Rαのsushiドメインのヒトインターロイキン-15への結合活性の少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%を有する。前記結合活性は、WEIら(上記、2001)に開示されている方法によって簡単に求めることができる。
【0060】
前記IL-15Rαのsushiドメインは、哺乳動物のIL-15Rαのsushiドメイン、好ましくは霊長類のIL-15Rαのsushiドメイン、より好ましくはヒトのIL-15Rαのsushiドメインである。
【0061】
哺乳動物のIL-15Rαのsushiドメインは、当業者が簡単に同定することができる。一例として、ラット(受託番号XP_002728555)、マウス(受託番号EDL08026)、ウシ(受託番号XP_002692113)、ウサギ(受託番号XP_002723298)、カニクイザル(受託番号ACI42785)、ブタオザル(Macaca nemestrina)(受託番号ACI42783)、ヒト(受託番号CAI41081)、アカゲザル(受託番号NP_001166315)、スマトラオランウータン(Pongo abelii)(受託番号XP_002820541)、シロエリマンガベイ(Cercocebus torquatus)(受託番号ACI42784)、コモンマーモセット(Callithrix jacchus)(受託番号XP_002750073)、又はモルモット(受託番号NP_001166314)由来のIL-15Rαのsushiドメインを引用することができる。
【0062】
本明細書で使用するとき、用語「哺乳動物のIL-15Rαのsushiドメイン」とは、コンセンサス配列である配列番号4を指す。
【0063】
好ましくは、哺乳動物のIL-15Rαのsushiドメインのアミノ酸配列を含むポリペプチドは、コンセンサス配列である配列番号5を指す。
【0064】
霊長類のIL-15Rαのsushiドメインは、当業者が簡単に同定することができる。一例として、ウサギ、カニクイザル、ブタオザル、ヒト、アカゲザル、スマトラオランウータン、シロエリマンガベイ、又はコモンマーモセット由来のIL-15Rαのsushiドメインを引用することができる。
【0065】
本明細書で使用するとき、用語「霊長類のIL-15Rαのsushiドメイン」とは、コンセンサス配列である配列番号6を指す。
【0066】
好ましくは、霊長類のIL-15Rαのsushiドメインのアミノ酸配列を含むポリペプチドは、コンセンサス配列である配列番号7を指す。
【0067】
ヒトのIL-15Rαのsushiドメインは、当業者が簡単に同定することができ、そして、アミノ酸配列である配列番号8を指す。
【0068】
好ましくは、ヒトのIL-15Rαのsushiドメインのアミノ酸配列を含むポリペプチドは、配列番号9を指す。
【0069】
本明細書で使用するとき、用語「IL-15Rαのsushiドメインの誘導体」とは、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、及び配列番号9からなる群において選択されるアミノ酸配列と少なくとも92%(すなわち、約5個のアミノ酸置換に相当)、好ましくは少なくとも96%(すなわち、約2個のアミノ酸置換に相当)、より好ましくは少なくとも98%(すなわち、約1個のアミノ酸置換に相当)の同一性パーセントを有するアミノ酸配列を指す。このような誘導体は、L-15Rαのsushiドメインの4つのシステイン残基を含み、そして、当業者の一般的な知識及び本特許出願の教示を考慮して当業者が簡単に同定することができる。また、天然のアミノ酸を化学的に改変されたアミノ酸に置換してもよいことが理解される。典型的には、このような化学的に改変されたアミノ酸は、ポリペプチドの半減期を増大させることができる。
【0070】
好ましい実施態様によれば、コンジュゲートは、(ii)IL-15Rαのsushiドメイン及びヒンジドメイン、又はこれらの誘導体のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0071】
IL-15Rαのヒンジドメインは、sushiドメイン後の最初のアミノ残基で始まり、そして、最初の潜在的グリコシル化部位前の最後のアミノ酸残基で終わるアミノ酸配列として定義される。ヒトのIL-15Rαでは、ヒンジ領域のアミノ酸配列は、前記sushiドメインに対してC末端側の位置における、このIL-15Rアルファのsushiドメイン後に位置する14個のアミノ酸からなる、すなわち、前記IL-15Rアルファのヒンジ領域は、前記(C4)システイン残基後の最初のアミノ酸で始まり、そして、14個目のアミノ酸(標準的な「N末端からC末端への」配向で数える)で終わる。
【0072】
前記IL-15Rαのsushiドメイン及びヒンジドメインは、哺乳動物のIL-15Rαのsushiドメイン及びヒンジドメイン、好ましくは霊長類のIL-15Rαのsushiドメイン及びヒンジドメイン、より好ましくはヒトのIL-15Rαのsushiドメイン及びヒンジドメインである。
【0073】
哺乳動物のIL-15Rαのsushiドメイン及びヒンジドメインのアミノ酸配列は、当業者が簡単に同定することができる。本明細書で使用するとき、用語「哺乳動物のIL-15Rαのsushiドメイン及びヒンジドメイン」とは、コンセンサス配列である配列番号10を指す。
【0074】
霊長類のIL-15Rαのsushiドメイン及びヒンジドメインのアミノ酸配列は、当業者が簡単に同定することができる。本明細書で使用するとき、用語「霊長類のIL-15Rαのsushiドメイン及びヒンジドメイン」とは、コンセンサス配列である配列番号11を指す。
【0075】
ヒトのIL-15Rαのsushiドメイン及びヒンジドメインのアミノ酸配列は、当業者が簡単に同定することができる。本明細書で使用するとき、用語「ヒトのIL-15Rαのsushiドメイン及びヒンジドメイン」とは、コンセンサス配列である配列番号12を指す。
【0076】
本明細書で使用するとき、用語「IL-15Rαのsushiドメイン及びヒンジドメインの誘導体」とは、配列番号10、配列番号11、及び配列番号12からなる群において選択されるアミノ酸配列と少なくとも93%(すなわち、約5個のアミノ酸置換に相当)、好ましくは少なくとも97%(すなわち、約2個のアミノ酸置換に相当)、より好ましくは少なくとも98%(すなわち、約1個のアミノ酸置換に相当)の同一性パーセントを有するアミノ酸配列を指す。このような誘導体は、L-15Rαのsushiドメインの4つのシステイン残基を含み、そして、当業者の一般的な知識及び本特許出願の教示を考慮して当業者が簡単に同定することができる。また、天然のアミノ酸を化学的に改変されたアミノ酸に置換してもよいことが理解される。典型的には、このような化学的に改変されたアミノ酸は、ポリペプチドの半減期を増大させることができる。
【0077】
コンジュゲートの両ポリペプチドa)及びb)は、米国特許第8,124,084号明細書に開示されている複合体におけるように、非共有結合的に連結されていてもよい。前記コンジュゲート又は複合体は、適切な量のポリペプチドa)を提供し、適切な量のポリペプチドb)を提供し、適切なpH及びイオン条件下で、複合体(すなわち、コンジュゲート)を形成させるのに十分な時間、両ポリペプチドを混合し、そして、場合により、前記複合体を濃縮又は精製することによって、簡単に得ることができる。複合体(すなわち、コンジュゲート)のポリペプチドは、例えば、標準的な方法に従ってペプチド合成機を用いて;細胞又は細胞抽出物中で各ポリペプチドを別々に発現させ、次いで、該ポリペプチドを単離し精製することによって、形成できる。場合により、本発明の処置用ポリペプチド複合体は、同じ細胞又は細胞抽出物中でポリペプチドi)及びii)の両方を発現させ、次いで、例えば、リンホカイン部分、リンホカイン受容体部分、又は該複合体に対する抗体を用いるアフィニティクロマトグラフィー等のクロマトグラフィー技術を用いて、該複合体を単離し精製することによって形成できる。
【0078】
コンジュゲートの両ポリペプチドa)及びb)はまた、二官能性タンパク質カップリング剤を用いて、又は融合タンパク質において、共有結合されていてもよい。
【0079】
コンジュゲートのポリペプチドa)及びb)は、グリコシル化されていてもよく、グリコシル化されていなくてもよい。実際、本発明者らは、グリコシル化されているRLI又はグリコシル化されていないRLIの両方が、インビトロにおいて同じ特異的活性を有することを確立した。ここで、コンジュゲートのポリペプチドa)及びb)は、好ましくは、グリコシル化されている。
【0080】
二官能性タンパク質カップリング剤は、これらを用いる方法等、当業者に周知であり、そして、例として、N-スクシンイミジル(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、アジプイミド酸ジメチルHCL)、活性エステル(例えば、ジスクシンイミジルスベラート)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビスジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアナート(例えば、トリエン2,6ジイソシアナート)、及びビス-活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を含む。
【0081】
用語「融合タンパク質」とは、元々別個のタンパク質をコードしていた2つ以上の遺伝子の接合を通して作製されたタンパク質を指す。それは、キメラタンパク質としても知られている。この融合遺伝子の翻訳によって、元の各タンパク質に由来する機能特性を有する単一のポリペプチドが生じる。組み換え融合タンパク質は、生物学的研究又は処置において使用するための組み換えDNA技術によって人工的に作製される。組み換え融合タンパク質は、融合遺伝子の遺伝子操作を介して作製されたタンパク質である。これは、典型的には、第1のタンパク質をコードするcDNA配列から終止コドンを除去すること、次いで、ライゲーション又はオーバーラップエクステンションPCRを介して第2のタンパク質のcDNA配列をインフレームで付加することを含む。次いで、そのDNA配列を、単一のタンパク質として細胞によって発現させる。タンパク質は、両方の元のタンパク質の全配列を含むか、又はいずれかの一部のみを含むように操作できる。
【0082】
好ましい実施態様では、コンジュゲートは、融合タンパク質である。
【0083】
インターロイキン15又はその誘導体のアミノ酸配列は、IL-15Rαのsushiドメイン又はその誘導体のアミノ酸配列に対してC末端側の位置に存在しても、N末端側の位置に存在してもよい。好ましくは、インターロイキン15又はその誘導体のアミノ酸配列は、IL-15Rαのsushiドメイン又はその誘導体のアミノ酸配列に対してC末端側の位置に存在する。
【0084】
インターロイキン15又はその誘導体のアミノ酸配列、及びIL-15Rαのsushiドメイン又はその誘導体のアミノ酸配列は、「リンカー」アミノ酸配列によって分離されていてもよい。前記「リンカー」アミノ酸配列は、融合タンパク質が適切な二次構造及び三次構造を確実に形成するのに十分な長さであり得る。
【0085】
リンカーアミノ酸配列の長さは、融合タンパク質の生物活性に著しい影響を与えることがなければ、変更してもよい。典型的には、リンカーアミノ酸配列は、少なくとも1アミノ酸であるが30アミノ酸未満を含み、例えば、リンカーは、5~30アミノ酸、好ましくは10~30アミノ酸、より好ましくは15~30アミノ酸、更により好ましくは15~25アミノ酸、最も好ましくは18~22アミノ酸である。
【0086】
好ましいリンカーアミノ酸配列は、適切な立体構造(すなわち、IL-15Rベータ/ガンマシグナル伝達経路を介した適切なシグナル伝達活性を可能にする立体構造)をコンジュゲートに取らせるものである。
【0087】
最も適切なリンカーアミノ酸配列は、(1)柔軟で拡張された立体構造をとり、(2)融合タンパク質の機能性ドメインと相互作用し得る規則的な二次構造を発現する傾向を示さず、そして、(3)機能性タンパク質ドメインとの相互作用を促進し得る最低限の疎水性又は帯電特性を有する。
【0088】
好ましくは、リンカーアミノ酸配列は、Gly(G)、Asn(N)、Ser(S)、Thr(T)、Ala(A)、Leu(L)、及びGln(Q)を含む群において、最も好ましくは、Gly(G)、Asn(N)、及びSer(S)を含む群において、選択されるほぼ中性のアミノ酸を含む。
【0089】
リンカー配列の例は、米国特許第5,073,627号明細書及び同第5,108,910号明細書に記載されている。
【0090】
本発明に更に具体的に適した例示的な柔軟なリンカーは、配列番号13(SGGSGGGGSGGGSGGGGSLQ)、配列番号14(SGGSGGGGSGGGSGGGGSGG)、又は配列番号15(SGGGSGGGGSGGGGSGGGSLQ)の配列によってコードされるものを含む。
【0091】
更に好ましくは、コンジュゲートは、配列番号16又は配列番号17の配列を有する融合タンパク質である。
【0092】
第2の局面では、本発明は、薬学的に許容し得る担体と最終的に関連して、このような単量体コンジュゲートを含む医薬組成物に関する。
【0093】
「薬学的に許容し得る」という表現は、生理学的に耐容性があり、かつ典型的には、ヒトに投与したときにアレルギー反応、又は胃の不調、眩暈などといった類似の望ましくない反応を生じさせない分子実体及び組成物を指す。好ましくは、本明細書で使用するとき、「薬学的に許容し得る」という表現は、連邦政府若しくは州政府の規制当局によって承認可能であるか、又は米国薬局方若しくは動物、より具体的にはヒトにおける使用についての他の一般的に認められている薬局方に列挙されていることを意味する。
【0094】
用語「担体」とは、化合物と共に投与される溶媒、アジュバント、賦形剤、又はビヒクルを指す。このような薬学的担体は、滅菌液体、例えば、水、及び石油、動物、植物、又は合成起源のものを含む油、例えば、ピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油等であってもよい。
【0095】
本発明の組み合わせの投与経路は、好ましくは、非経口であり;本明細書で使用するとき、用語「非経口」は、静脈内、筋肉内、皮下、直腸内、膣内、又は腹腔内投与を含む。したがって、医薬組成物は、注射されるべきことを意図する製剤に薬学的に許容し得るビヒクルを含有する。これらは、特に、等張の滅菌生理食塩水(リン酸一ナトリウム若しくは二ナトリウム、塩化ナトリウム、カリウム、カルシウム、若しくはマグネシウム等、又はこのような塩の混合物)であってもよく、症例に応じて、滅菌水又は生理食塩溶液を添加したときに注射液を構成することができる、乾燥、特に凍結乾燥組成物であってもよい。適切な医薬担体は、E. W. MartinによるRemington's Pharmaceutical Sciencesに記載されている。
【0096】
これらの中でも、静脈内投与が最も好ましい。
【0097】
コンジュゲートは、バッファ若しくは水に可溶化させてもよく、又はエマルション、マイクロエマルション、ヒドロゲル(例えば、PLGA-PEG-PLGAトリブロックコポリマー系ヒドロゲル)、ミクロスフィア、ナノスフィア、マイクロ粒子、ナノ粒子(例えば、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)マイクロ粒子(例えば、ポリ乳酸(PLA);ポリ(ラクチド-コ-グリコール酸)(PLGA);ポリグルタミン酸ミクロスフィア、ナノスフィア、マイクロ粒子、又はナノ粒子)、リポソーム、若しくは他のガレヌス製剤に組み込んでもよい。全ての場合において、該製剤は、滅菌されていなければならず、そして、許容可能な注射針通過性(syringability)の程度にまで流体でなければならない。それは、製造及び保存条件下で安定でなければならず、そして、細菌及び真菌等の微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。
【0098】
また、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、これらの混合物中、及び油中で分散液を調製してもよい。通常の保存及び使用条件下で、これらの調製品は、微生物の成長を妨げるために保存剤を含有する。
【0099】
コンジュゲートは、中性又は塩の形態で組成物中に配合できる。薬学的に許容し得る塩は、(タンパク質の遊離アミノ基と形成される)酸付加塩を含み、これは、例えば、塩酸若しくはリン酸等の無機酸と、又は酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸等の有機酸と、形成される。また、遊離カルボキシル基と形成される塩は、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、又は第二鉄の水酸化物等の無機塩基、及びイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカイン等の有機塩基から誘導され得る。
【0100】
また、担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)、これらの適切な混合物、及び植物油を含有する溶媒又は分散媒であってもよい。また、本発明のコンジュゲートは、その生物活用性(biodisponibility)を増大させるために、一例としてペグ化によって改変され得る。
【0101】
例えば、レシチン等のコーティングを使用することによって、分散液の場合は必要な粒径を維持することによって、及び界面活性剤を使用することによって、適切な流動性を維持することができる。微生物の作用の防止は、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等の様々な抗菌剤及び抗真菌剤によって達成できる。多くの場合には、等張剤、例えば、糖又は塩化ナトリウムを含むことが好ましい。
【0102】
注射可能な組成物の長期の吸収は、吸収を遅延させる剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウム、ゼラチン、ポリオール、半減期を増強する共有結合性及び非共有結合性の製剤)を組成物中で使用することによって達成できる。
【0103】
ペプチドの不安定性又は分解には、加水分解及び変性を含む多数の原因が存在する。疎水性相互作用は、分子を互いに集塊させ得る(すなわち、凝集)。このような問題を低減するか又は防ぐために、安定化剤を添加してもよい。
【0104】
安定化剤は、シクロデキストリン及びその誘導体を含む(米国特許第5,730,969号明細書を参照)。また、最終製剤を安定化させるために、スクロース、マンニトール、ソルビトール、トレハロース、デキストラン、及びグリセリン等の適切な保存剤を添加してもよい。イオン性及び非イオン性の界面活性剤、D-グルコース、D-ガラクトース、D-キシロース、D-ガラクツロン酸、トレハロース、デキストラン、ヒドロキシエチルデンプン、及びこれらの混合物から選択される安定化剤を製剤に添加してもよい。アルカリ金属塩又は塩化マグネシウムの添加は、ペプチドを安定化し得る。また、デキストラン、コンドロイチン硫酸、デンプン、グリコーゲン、デキストリン、及びアルギン酸塩からなる群から選択される糖類をペプチドと接触させることによって、ペプチドを安定化し得る。添加することができる他の糖類は、単糖類、二糖類、糖アルコール類、及びこれらの混合物(例えば、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、スクロース、マルトース、ラクトース、マンニトール、キシリトール)を含む。ポリオールは、ペプチドを安定化し得、そして、水混和性又は水溶性である。適切なポリオールは、マンニトール、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチルグリコール、ビニルピロリドン、グルコース、フルクトース、アラビノース、マンノース、マルトース、スクロース、及びこれらのポリマーを含む、ポリヒドロキシアルコール類、単糖類、及び二糖類であり得る。また、血清アルブミン、アミノ酸、ヘパリン、脂肪酸及びリン脂質、界面活性剤、金属、ポリオール、還元剤、金属キレート剤、ポリビニルピロリドン、加水分解されたゼラチン、及び硫酸アンモニウムを含む、様々な賦形剤もペプチドを安定化し得る。
【0105】
第3の局面では、本発明は、被験体における癌、感染症、及び/又は免疫不全障害を処置するための、このような医薬組成物の使用に関する。
【0106】
本明細書で使用するとき、用語「被験体」は、げっ歯類、ネコ、イヌ、又は霊長類等の哺乳動物、最も好ましくはヒトを意味する。
【0107】
本発明の文脈では、用語「処置」とは、本明細書で使用するとき、このような用語が適用される障害若しくは状態、又はこのような障害若しくは状態の1つ以上の症状を正常に戻す、軽減する、その進行を阻害する、又は予防することを意味する。
【0108】
用語「癌の処置」とは、本明細書で使用するとき、癌細胞の増殖の阻害を意味する。好ましくは、このような処置はまた、腫瘍成長を後退させる、すなわち、測定可能な腫瘍のサイズを減少させる。最も好ましくは、このような処置は、腫瘍を完全に退縮させる。
【0109】
用語「感染症の処置」とは、本明細書で使用するとき、微生物の複製/増殖の阻害を意味する。
【0110】
用語「免疫不全障害の処置」とは、本明細書で使用するとき、NK細胞及び/又はT細胞の誘導を意味する。
【0111】
コンジュゲートの「有効量」は、腫瘍成長又は微生物の複製の後退を誘導するのに十分な量である。投与に用いられる用量は、様々なパラメータの関数として、特に、用いられる投与の態様、関連する病変、又は望ましい処置期間の関数として適合され得る。当然、医薬組成物の形態、投与経路、投与量、及びレジメンは、当然、処置されるべき状態、病気の重篤度、被験体の年齢、体重、及び性別等に依存する。以下に提供される有効な用量の範囲は、本発明を限定することを意図するものではなく、好ましい用量の範囲を示すものである。しかし、好ましい用量は、過度な実験なしに、当業者が理解し、そして、決定可能なように、個々の被験体に適合され得る。
【0112】
以下に、アミノ酸配列、核酸配列、及び実施例を参照して、本発明を更に詳細に記載する。しかし、実施例の詳細は、本発明を限定することを意図するものではない。むしろ、本発明は、本明細書における実施例において明示的には言及されないが、過度の努力なしに当業者が見出せる詳細を含む任意の実施態様に関する。
【実施例】
【0113】
1)RLI産生プロファイルの分析
RLI1及びRLI2(配列番号16及び配列番号17)をコードするヌクレオチド配列を、GENEARTによってpcDNA3.1プラスミドにおいてクローニングした。40kDa 線状PEIを、POLYSCIENCEから入手した。加熱しながらPEIを水に溶解させ、NaOHによって中和し、そして、0.22μm フィルタで濾過することによって滅菌することにより、1mg/mL ストック溶液を調製した。溶液ストックをアリコートし、そして、-20℃で保存した。トランスフェクションのためのプラスミドDNAを、製造業者のプロトコール(MACHEREY-NAGEL)に従ってプラスミド精製キットを用いて精製し、そして、0.22μm フィルタで濾過することによって滅菌した。
【0114】
常法により維持されていたCHO-S(Invitrogen)細胞を、1×106細胞/mLの密度でPowerCHO2培地(LONZA)に播種し、そして、5% CO2の振盪インキュベータ(100rpm)において37℃で一晩培養した。次いで、トランスフェクションのために、細胞をCD-CHO培地(Invitrogen)で2×106細胞/mLまで希釈した。トランスフェクション複合体を、150mM NaClを用いて培養体積の10%で調製した。発現コンストラクトDNA(培養体積1L当たり2.5mg)を、NaClで希釈したPEI(最終培養体積1L当たり10mg)と混合し、そして、10分間室温でインキュベートした後、培養物に添加した。細胞を振盪インキュベータ(130rpm)において37℃で5時間培養した後、培養体積をPowerCHO2培地で2倍にした。トランスフェクション後5日目に上清を回収した。
【0115】
回収した上清を4℃で20分間、3000rpmで遠心分離し、NaOHを用いてpH7.8で平衡化し、そして、0.22μm フィルタで濾過した後、分析した。RLIの発現パターンを、製造業者の説明書に従ってSUPERDEX 200 5/150 GLを用いて解析した。この解析のために、希釈したサンプル(0.15mg/mL)及び希釈していないサンプルを用いた。流速は0.2mL/分であり、ランニングバッファはPBSであった。タンパク質の溶出を215nmの吸光度によってモニタした。
【0116】
【0117】
【0118】
結果は、クロマトグラムにおける2つの明確なピークの存在を示す。第1のピークは、サイズが2000kDaを超える凝集体に対応する。第2のピークは、RLIのモノマーに対応する。ここで、この第2のピークは、時に、RLIの二量体を表し得るショルダー(矢印によって示す)を含む。
【0119】
したがって、RLI産生物は、わずかな比率の凝集体しか含有していない。IL15単独は培養上清において低レベルでしか凝集しないことが既に知られているので、この結果は驚くべきことではない。ここで、このような凝集体は、得られる組成物を医薬組成物として用いることができないので、問題である。
【0120】
文献によれば、凝集の原因は、複数存在し得る。このような凝集は、細胞培養プロセスから最終充填操作まで生じ得る。この凝集は、培地成分(宿主細胞のタンパク質、RLI濃度、又は溶存酸素に起因)、精製プロセス(精製技術(HIC、AEX、アフィニティ...)に起因)、溶出条件(pH、イオン強度、タンパク質濃度...)、限外濾過/ダイアフィルトレーションプロセス(剪断強度、表面濃度)、又は製剤(バッファ(pH、イオン強度、賦形剤...)に起因)の結果であり得る。このマルチパラメータの均衡のため、全プロセス中の凝集原因の特定は非常に困難な作業であり、この作業は、常に成功するという訳ではない。
【0121】
2)分画による分析
精製した成分のクロマトグラフィー挙動を決定するため、そして、各溶出ピークの内容を分析するため、先に精製したタンパク質のサンプルを、製造業者の説明書に従ってSUPERDEX 75 10/300 GLを用いて分析した。この分析のために、サンプル 50μLを用いた。流速は1mL/分であり、そして、ランニングバッファはPBSであった。タンパク質の溶出を215nmの吸光度によってモニタした。
【0122】
SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)のクロマトグラムを
図2に示し、幾つかの溶出画分のウエスタンブロット解析を
図3に示し、そして、この精製の結果を表IIに要約する。
【0123】
【0124】
結果は、カラムの排除限界に対応する第1のピークの存在を確認するものである(
図2)。このピークは、RLIタンパク質の可溶性凝集体(>110kDa)を含み、この凝集体は、グリコシル化されているRLIタンパク質とグリコシル化されていないRLIタンパク質の両方を含む(
図3)。第2のピークは、RLI二量体に対応し、そして、第3のピークは、RLIモノマーに対応する28.5kDa 球状タンパク質に対応する(
図2)。キャピラリー電気泳動は、この第3のピークが、グリコシル化形態及び非グリコシル化形態の両方を含むが、わずかに偏って溶出していることを示した(
図3)。対照として、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)から精製したタンパク質を用いた。予想どおり、グリコシル化形態が非グリコシル化形態の前に溶出する。
【0125】
最後に、種の分布は、49% オリゴマー及び/又は凝集体と51% 単量体という、以前の分析と一致している。
【0126】
保存温度、すなわち、4℃又は-80℃は、RLIのオリゴマー化状態に影響を与えないことが分かった。更に、これら結果は、RLIが、4℃で保存したとき非常に安定であり、また、-80℃で6サイクルの凍結/解凍後も非常に安定であることを示した。
【0127】
RLI産生物の凝集状態をよりよく特徴付けるための、SEC-MALLS(多角度光散乱検出器に連結したサイズ排除クロマトグラフィー)。この方法によって、タンパク質サンプルに含有されている異なる多量体種のサイズの分布を決定することが可能となる。この方法では、まず異なる種を分離し、SECによって希釈し、次いで、MALLSによって分析する。
【0128】
この分析のために、タンパク質 約35μgのサンプルを用いた。製造業者の説明書に従ってSHODEX(kW402.5-4F)においてSECバッファ(4.3mM Na2HPO4、1.4mM KH2PO4、2.7mM KCl、137mM NaCl)を用い、流速は、20℃で0.35mL/分であった。INFINITY 1260クロマトグラフィーシステムをHPLC検出器として用い、DAW-HELEOS 8+ (WYATT TECHNOLOGIES)をMALLS検出器として用い、そして、OPTILAB-rEXを用いた。
【0129】
図4は、(光散乱についての)RLI産生物のSEC-MALLSクロマトグラムの例を示す。
【0130】
表IIIは、室温の、そして、3時間インキュベートした後の、2つのRLIバッチについての異なるタンパク質ピークの分布を開示する。
【0131】
【0132】
結果は、サンプルの大部分において、PLIの異なる形態に対応する幾つかのマイナーピークと共に6つのタンパク質ピークの存在を確立した。ここで、これらのピークは、室温で3時間インキュベートした後、それらの分布の著しい変化を示さない。
【0133】
これらの結果は、単量体形態に関連する多量体形態の存在を確認する。
【0134】
3)第1の精製工程
この第1の精製工程は、ピキア・パストリスにおけるRLI産生のために開発された。第1の清澄化工程では、CHO細胞におけるRLI産生から得られた異なる上清を0.22μm メンブレン(セルロース)で濾過した。次いで、これらの上清をTris HCl(pH7.5)を用いてダイアフィルトレートした。次いで、結合バッファに対応する硫酸アンモニウム(AS=(NH4)2SO4)最終濃度1.5Mを得るために、ダイアフィルトレートした上清にASを溶解した。次いで、疎水性相互作用クロマトグラフィーカラム(Phenyl Sepharose FF)を、得られた結合バッファを用いてスカウティングした。
【0135】
次いで、製造業者の説明書に従って溶出を実施した。
【0136】
ピキア・パストリスの産生物と比べて、この第1の精製工程によると収量が非常に低く、そして、再現性が低い。
【0137】
正確でない実験であったため、アニオン交換クロマトグラフィー(AEX)を第1の工程に用いた。驚くべきことに、本発明者らは、この特定のクロマトグラフィーによって非常に良好な収量を得ることが可能であることを観察した。更なる実験の結果から、この非常に良好な収量が非常に良好な再現性とともに観察された。
【0138】
DEAE-SepharoseとQ-Sepharoseとの比較実験によって、最良の収量はQ-Sepharoseで得られること、Q-又はDEAE-Sepharoseにおけるスカウティングに最適なバッファは、20mM Tris HCl(pH7.5);1M NaClであることが示された。製造業者の説明書は、精製するタンパク質のpIよりも少なくとも1ユニット低いpHのスカウティングバッファを使用することを示唆しているが、予想外にも、結果は、RLIタンパク質よりも約2ユニット高いpHであるpH7.5以上(Tris HClバッファ)で最良のスカウティングが得られることを示した。ここで、より低いpHによると、スカウティングが非常に不十分になるので、RLIタンパク質の精製についての収量及び再現性も低くなる。
【0139】
更に、HO細胞のDNAはRLIに結合し、そして、この第1の精製工程後に得られた溶出液には、このDNAが混入しているようである。
【0140】
4)第2の精製工程
核酸とエンドトキシンを含まない組成物を得るために、本発明者らは、第2ラウンドの精製を開始した。
【0141】
20mM Tris HCl(pH7.5)-2M 硫酸アンモニウム(AS=(NH4)2SO4)を用いる疎水性相互作用クロマトグラフィーカラム(Phenyl Sepharose Butyl Sepharose、Octyl Sepharose)を用いて、最良の結果を得た。
【0142】
ここで、第1の精製工程の実験と同様に、これらの実験では、収量及び再現性が非常に低いRLI産生物しか得られない。
【0143】
幸運にも、本発明者らは、得られた後に混合物(すなわち、サンプルと硫酸アンモニウムとの混合物)をより速やかに帯電させれば、より優れた収量及び再現性になることを観察した。タンパク質の塩の安定性ウインドウは、精製プロセスに影響を与える温度を含む多くのパラメータに依存するようである。結果として、本発明者らは、硫酸アンモニウム(すなわち、0.75Mを超える(upon 0.75M))及び第1の溶出液を、スカウティング工程のための疎水性相互作用クロマトグラフィーカラムにおいて直接混合する。
【0144】
バッファ溶液A2(20mM Tris HCl、pH7.5)とバッファ溶液B2(20mM Tris HCl、2M 硫酸アンモニウム、pH7.5)との間のグラジエントを用いての洗浄工程及び溶出工程後、37.5%のグラジエントにおいて非常に良好な収量及び再現性でRLIタンパク質を得た。グリコシル化形態は、非グリコシル化形態のわずかに後に溶出され、そして、非グリコシル化形態の溶出ウインドウと部分的に重なっている。最後に、サンプルをMWCO 5kDaの限外濾過カセットにおいて0.5~1mg/Lまで濃縮し、そして、PBSバッファに対してダイアフィルトレートした。
【0145】
最後に、本発明者らの精製プロセスを用いて得られた結果は、検出可能なエンドトキシン、ヒートショック(heat choc)タンパク質、又は残留DNAを含まない、98%を超える純度のRLIタンパク質が得られたことを示した。更に、得られた組成物の分析は、RLIタンパク質の90%超が単量体形態であることを示し、これは医薬組成物でのその使用に十分である。
【0146】
5)得られた医薬組成物の増殖活性
精製したタンパク質のインターロイキン-15増殖活性を試験するために、該タンパク質に対するICKに対するKit225及び32Dβ細胞の増殖応答を[3H]チミジンの取り込みによって測定した。
【0147】
細胞を培養培地で3日間維持し、2回洗浄し、そして、それぞれKit225及び32Dβについて24時間又は4時間、サイトカインを含まない培地で飢餓状態にした。次いで、これらをマルチウェルプレートに100μL中104細胞/ウェルで播種し、そして、漸増濃度の幾つかのRLI CHOサンプルを補充した培地で48時間培養した。ヒトrIL-15、並びにバキュロウイルス由来及びピキア・パストリス由来のRLIをコントロールとして用いた。
【0148】
細胞を0.5μCi/ウェルの[3H]チミジンを用いて16時間パルスし、グラスファイバーフィルタに回収し、そして、細胞に関連する放射活性を測定した。
【0149】
図5及び6は、それぞれ、漸増濃度のrIL-15、バキュロウイルス由来のRLI、ピキア・パストリス由来のRLI、及び幾つかのCHO産生物から精製したRLIと共に培養したKit225細胞及び32Dβ細胞による[
3H]チミジンの取り込みを示す。
【0150】
結果は、本発明の精製方法を用いて精製したRLIタンパク質の生物活性が、部分的に精製されたRLIタンパク質に匹敵する活性を有することを示す。結果として、本発明の精製方法は、RLIの生物活性を変化させない。
【0151】
6)マウスインビボモデルにおける、得られた医薬組成物の生物活性
0日目及び1日目に、Harlan Laboratoriesから入手したC57BL/6マウスに、ネガティブコントロールとしてのPBS 100μL、バキュロウイルス由来のRLI(2μg/マウス)、ピキア・パストリス由来のRLI(2μg/マウス)、及びCHO産生物から精製したRLI(2μg/マウス)を腹腔内(i.p)注射した。1群当たり5匹のマウスを用いた。
【0152】
4日目に、頸椎脱臼によってマウスを屠殺し、そして、脾臓を摘出した。脾臓を、シリンジの背部を用いて100μm 細胞ストレーナー上の単一細胞懸濁液に解離させた。次いで、ACK溶液(アンモニウム-クロリド-カリウム)を用いて血液細胞を溶解させた。脾細胞を完全培地で2回洗浄し、そして、Kovaスライドを用いて生存細胞を数えた。200万個の脾細胞を、以下の抗体:抗CD3、CD4、CD8、Nkp46、及びLIVE/DEAD(登録商標)Fixable Aquaで染色して、生存細胞を選択した。次いで、製造業者のプロトコール(EBIOSCIENCE FOXP3透過処理バッファ)に従って、脾細胞を透過処理し、そして、抗FoxP3及びKi67で染色した。Ki67のアイソタイプを用いて、陽性細胞を同定した。染色された細胞を、FACSCANTO IIフローサイトメトリーで直ちに取得し、そして、FLOWJOソフトウェア(TREE STAR)を用いて解析を実施した。NK細胞は、CD3陰性NKp46陽性細胞である。
【0153】
図7は、増殖しているNK細胞、CD8
+ T細胞、Foxp3
+ CD4
+T細胞、及びFoxp3
- CD4
+ T細胞の比率を表す。
【0154】
図7は、各群についてのNK細胞の比及びNK細胞の絶対数を示す。
【0155】
また、
図7は、全NK細胞と比べた増殖性NK細胞の割合及び増殖性NK細胞の絶対数も示す。
【0156】
結果は、ピキア・パストリスにおいて産生されたRLIは、バキュロウイルスにおいて産生されたRLIに比べてインビボ活性が低いことを示す。満足のいくことに、CHOにおいて産生され、そして、本発明の方法によって精製されたRLIは、NK細胞に対して非常に良好なインビボ活性を示す。
【配列表】