(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】触媒製品
(51)【国際特許分類】
B01J 29/80 20060101AFI20220613BHJP
B01J 35/04 20060101ALI20220613BHJP
B01J 29/44 20060101ALI20220613BHJP
B01J 29/74 20060101ALI20220613BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20220613BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20220613BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20220613BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20220613BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
B01J29/80 A
B01J35/04 301E
B01J35/04 301L
B01J29/44 A ZAB
B01J29/74 A
B01J37/02 301L
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
B01D53/94 228
B01D53/94 400
F01N3/10 A
F01N3/28 301Q
F01N3/08 B
F01N3/08 A
(21)【出願番号】P 2019543086
(86)(22)【出願日】2018-02-07
(86)【国際出願番号】 IB2018050766
(87)【国際公開番号】W WO2018146603
(87)【国際公開日】2018-08-16
【審査請求日】2021-01-25
(32)【優先日】2017-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】スン,シヤン
(72)【発明者】
【氏名】ケゲル,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ノイマン,ビョルン
(72)【発明者】
【氏名】マッカンティ,パトリック ウィリアム
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-515086(JP,A)
【文献】特開平07-323215(JP,A)
【文献】特表2012-523313(JP,A)
【文献】特開2012-152744(JP,A)
【文献】特表2014-519975(JP,A)
【文献】特表2013-517934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
B01D 53/94
F01N 3/00 - 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素、一酸化炭素およびNOxの処理に使用可能であり、基材上に配置された触媒コーティングを含む触媒製品であって、触媒コーティングは、基材上にボトムコーティング層、およびボトムコーティング層上にトップコーティング層を含み、
ボトムコーティング層は、セリア含有モレキュラーシーブを含み、トップコーティング層は、耐火性金属酸化物支持体上の白金族金属を含むか;または
ボトムコーティング層は、耐火性金属酸化物支持体上の白金族金属を含み、トップコーティング層は、セリア含有モレキュラーシーブを含
み、及び
セリア含有モレキュラーシーブ中のセリアが、セリア含有モレキュラーシーブの総質量に対して、約1質量%から約50質量%まで存在することを特徴とする、触媒製品。
【請求項2】
セリア含有モレキュラーシーブが、小細孔モレキュラーシーブである、請求項1に記載の触媒製品。
【請求項3】
セリア含有モレキュラーシーブが、ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、KFI、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG、ZON、およびそれらの混合物または連晶からなる群から選択される骨格型を有する小細孔モレキュラーシーブを含む、請求項1に記載の触媒製品。
【請求項4】
セリア含有モレキュラーシーブが、CHA、LEV、AEI、AFX、ERI、SFW、KFI、DDR、ITE、およびそれらの混合物または連晶からなる群から選択される骨格型を有するモレキュラーシーブを含む、請求項1に記載の触媒製品。
【請求項5】
セリア含有モレキュラーシーブが、CeCHAである、請求項1に記載の触媒製品。
【請求項6】
セリア含有モレキュラーシーブが、AEL、AFO、AHT、BOF、BOZ、CGF、CGS、CHI、DAC、EUO、FER、HEU、IMF、ITH、ITR、JRY、JSR、JST、LAU、LOV、MEL、MFI、MFS、MRE、MTT、MVY、MWW、NAB、NAT、NES、OBW、PAR、PCR、PON、PUN、RRO、RSN、SFF、SFG、STF、STI、STT、STW、SVR、SZR、TER、TON、TUN、UOS、VSV、WEI、WENおよびそれらの混合物または連晶からなる群から選択される骨格型を有する中間細孔モレキュラーシーブを含む、請求項1に記載の触媒製品。
【請求項7】
セリア含有モレキュラーシーブが、FER、MEL、MFI、STT、およびそれらの混合物または連晶からなる群から選択される骨格型を有するモレキュラーシーブを含む、請求項1に記載の触媒製品。
【請求項8】
セリア含有モレキュラーシーブが、ZSM-5モレキュラーシーブを含む、請求項1に記載の触媒製品。
【請求項9】
セリア含有モレキュラーシーブが、基材の総容積に対して、約0.05g/in
3から約5.0g/in
3までの担持量で存在する、請求項1から
8のいずれか一項に記載の触媒製品。
【請求項10】
ボトム層が、炭化水素吸着モレキュラーシーブをさらに含む、請求項1から
9のいずれか一項に記載の触媒製品。
【請求項11】
セリア含有モレキュラーシーブが、銅、鉄、マンガン、マグネシウム、コバルト、ニッケル、白金、パラジウム、およびロジウムからなる群から選択される1種または複数の触媒活性金属をさらに含む、請求項1から
10のいずれか一項に記載の触媒製品。
【請求項12】
1種または複数の触媒活性金属が、基材の総容積に対して、約3g/ft
3~約100g/ft
3の担持量で存在する、請求項
11に記載の触媒製品。
【請求項13】
耐火性金属酸化物支持体が、アルミナ、チタニア、ジルコニア;アルミナと、チタニア、ジルコニアおよびセリアの内の1種または複数との混合物;アルミナ上にコーティングされたセリア;アルミナ上にコーティングされたチタニア;シリカ-アルミナ;アルミノシリケート;アルミナ-ジルコニア;アルミナ-クロミア;またはアルミナ-セリアを含む、請求項1から
12のいずれか一項に記載の触媒製品。
【請求項14】
白金族金属が、基材の総容積に対して、約2g/ft
3~約200g/ft
3の担持量で存在する、請求項1から
13のいずれか一項に記載の触媒製品。
【請求項15】
基材が、多孔質壁流フィルタである、請求項1から
14のいずれか一項に記載の触媒製品。
【請求項16】
基材が、フロースルーモノリスである、請求項1から
15のいずれか一項に記載の触媒製品。
【請求項17】
ボトムコーティング層が、基材と直接接触している、請求項1から
16のいずれか一項に記載の触媒製品。
【請求項18】
トップコーティング層が、ボトムコーティング層と直接接触している、請求項1から
17のいずれか一項に記載の触媒製品。
【請求項19】
触媒コーティングが、アンダーコート層を含む、請求項1から
16または
18のいずれか一項に記載の触媒製品。
【請求項20】
触媒コーティングが、オーバーコート層を含む、請求項1から
19のいずれか一項に記載の触媒製品。
【請求項21】
触媒コーティングが、トップコーティング層とボトムコーティング層との間に中間層を含む、請求項1から
17、
19または
20のいずれか一項に記載の触媒製品。
【請求項22】
触媒コーティングが、アンダーコート層、オーバーコート層または中間層を含み、前記層の内の1つまたは複数は、白金族金属成分を実質的に含まない、請求項1から
21のいずれか一項に記載の触媒製品。
【請求項23】
触媒コーティングが、基材の総容積に対して、約0.3g/in
3~約7g/in
3の担持量で存在する、請求項1から
22のいずれか一項に記載の触媒製品。
【請求項24】
トップコーティング層が、ボトムコーティング層全体を覆っている、請求項1から
23のいずれか一項に記載の触媒製品。
【請求項25】
ボトムコーティング層が、基材の軸長全体に延伸している、請求項1から
24のいずれか一項に記載の触媒製品。
【請求項26】
トップコーティング層が、基材の軸長全体に延伸している、請求項1から
25のいずれか一項に記載の触媒製品。
【請求項27】
ボトムコーティング層が、入口端または出口端のいずれかから、基材の軸長の約10%から約95%までに延伸している、請求項1から
24または
26のいずれか一項に記載の触媒製品。
【請求項28】
トップコーティング層が、入口端または出口端のいずれかから、基材の軸長の約10%から約95%までに延伸している、請求項1から
25または
27のいずれか一項に記載の触媒製品。
【請求項29】
内燃機関の下流に位置決めされ、内燃機関と流体連通している、請求項1から
28のいずれか一項に記載の触媒製品を含む排気ガス処理システム。
【請求項30】
尿素インジェクター、選択接触還元触媒、ディーゼル酸化触媒、煤煙フィルタ、アンモニア酸化触媒、およびリーンNOxトラップからなる群から選択される触媒製品をさらに含む、請求項
29に記載の排気ガス処理システム。
【請求項31】
炭化水素および/または一酸化炭素および/またはNOxを含む排気ガス流を処理する方法であって、請求項1から
30のいずれか一項に記載の触媒製品またはシステムに排気流を通流させる工程を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気ガス流を処理するための触媒製品、システム、および方法に、ならびにそれらを作製する方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気ガス流は、空気を汚す炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)および窒素酸化物(NOx)などの汚染物質を含有する。
【0003】
アルミニウムなどの、耐火性金属酸化物支持体上に分散された、白金族金属(PGM)などの、貴金属を含む酸化触媒が、炭化水素および一酸化炭素の両方のガス状汚染物質を、こういった汚染物質の酸化を触媒することによって、二酸化炭素および水に転換するために、内燃機関の排気を処理する際に使用される。通常には、酸化触媒は、その上に1種または複数の触媒コーティング組成物が堆積しているセラミック基材または金属基材上に形成されている。ガス状のHC排出およびCO排出の転換に加えて、PGMを含有する酸化触媒は、NOのNO2への酸化を促進する。触媒は、ライトオフ(light-off)温度または50%の転換が達成される温度、T50とも称されるが、によって通常には規定される。
【0004】
PGM触媒は硫黄による被毒にさらされる。触媒製品は、硫黄化合物を除去するために高温で再生することが可能である。この再生は普通には、煤煙フィルタ(soot filter)の再生期間中に、燃料またはエンジンのいずれかに由来し得るさらなる炭化水素をディーゼル酸化触媒上に注入して、フィルタ上の煤煙/粒子を燃焼するのに必要とされる発熱を生み出すことによって行われる。しかし、こういった再生プロセス自体が触媒に害をなす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
内燃機関の排気ガスを処理するためのさらにより効率的な触媒に対するニーズがある。特定のニーズとしては、COおよびNOxの優れた転換を提供し、繰り返して行われる高温脱硫酸化プロセスに対して安定である触媒が挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
パラジウムおよびセリアを含有するモレキュラーシーブを含む触媒製品が開示されている。本発明の触媒組成物は、突出した硫黄耐性を呈する。また、基材の上に配置された触媒コーティングを含む触媒製品であって、触媒コーティングは1つまたは複数のコーティング層を含み、少なくとも1つのコーティング層は、パラジウムおよびセリアを含有するモレキュラーシーブを含む触媒組成物を含む触媒コーティング層である、触媒製品も開示される。内燃機関の下流にあり、内燃機関と流体連通している触媒製品を含む排気ガス処理システムも開示され、ならびに、炭化水素および/または一酸化炭素および/またはNOxを含む排気ガス流を処理する方法であって、本明細書に記載の触媒製品またはシステムに排気流を通流させる工程を含む方法も開示される。
【0007】
したがって、基材の上に配置された触媒コーティングを含む触媒製品であって、触媒コーティングは、基材上にボトムコーティング層、およびボトムコーティング層上にトップコーティング層を含み、例えば、ボトムコーティング層は、セリア含有モレキュラーシーブを含み、トップコーティング層は、耐火性金属酸化物支持体上の白金族金属を含むか、またはボトムコーティング層は、耐火性金属酸化物支持体上の白金族金属を含み、トップコーティング層は、セリア含有モレキュラーシーブを含む、触媒製品が開示される。本発明の触媒製品を含む排気ガス処理システムも開示される。内燃機関の排気ガス流を処理する方法であって、ガス流を触媒製品または排気ガス処理システムに通流させる工程を含む方法も開示される。本開示の触媒製品は、突出した硫黄耐性を呈する。
【0008】
本開示の一態様では、基材上に配置された触媒コーティングを含む触媒製品であって、触媒コーティングは、基材上にボトムコーティング層、およびボトムコーティング層上にトップコーティング層を含み:ボトムコーティング層は、セリア(「遊離セリウム」)含有モレキュラーシーブを含み、トップコーティング層は、耐火性金属酸化物支持体上の白金族金属を含むか;またはボトムコーティング層は、耐火性金属酸化物支持体上の白金族金属を含み、トップコーティング層は、セリア含有モレキュラーシーブを含む、触媒製品が提供される。
【0009】
一部の実施形態では、セリア含有モレキュラーシーブは、小細孔モレキュラーシーブを含む。一部の実施形態における例示的な小細孔モレキュラーシーブは、それらに限定されないが、ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、KFI、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG、ZON、およびそれらの混合物または連晶からなる群から選択される骨格型を有する小細孔モレキュラーシーブを含む。ある特定の実施形態では、セリア含有モレキュラーシーブは、CHA、LEV、AEI、AFX、ERI、SFW、KFI、DDR、ITE、およびそれらの混合物または連晶からなる群から選択される骨格型を有するモレキュラーシーブを含む。例えば、ある特定の実施形態では、セリア含有モレキュラーシーブはCeCHAである。
【0010】
一部の実施形態では、セリア含有モレキュラーシーブは、中間細孔モレキュラーシーブを含む。一部の実施形態における例示的な中間細孔モレキュラーシーブは、それらに限定されないが、AEL、AFO、AHT、BOF、BOZ、CGF、CGS、CHI、DAC、EUO、FER、HEU、IMF、ITH、ITR、JRY、JSR、JST、LAU、LOV、MEL、MFI、MFS、MRE、MTT、MVY、MWW、NAB、NAT、NES、OBW、PAR、PCR、PON、PUN、RRO、RSN、SFF、SFG、STF、STI、STT、STW、SVR、SZR、TER、TON、TUN、UOS、VSV、WEI、WENおよびそれらの混合物または連晶からなる群から選択される骨格型を有する中間細孔モレキュラーシーブを含む。ある特定の実施形態では、セリア含有モレキュラーシーブは、FER、MEL、MFI、STT、およびそれらの混合物または連晶からなる群から選択される骨格型を有するモレキュラーシーブを含む。例えば、ある特定の実施形態では、セリア含有モレキュラーシーブはZSM-5モレキュラーシーブを含む。
【0011】
セリアの含有量は様々とすることができる。一部の実施形態では、セリア含有モレキュラーシーブ中のセリアは、セリア含有モレキュラーシーブの総質量に対して、約1質量%から約50質量%まで存在する。一部の実施形態では、セリア含有モレキュラーシーブは、基材の総容積に対して、約0.05g/in3から約5.0g/in3までの担持量で存在する。
【0012】
本開示の製品はさらなる要素を含むことができる。製品は、一部の実施形態では、炭化水素吸着モレキュラーシーブをさらに含む。例えば、一部の実施形態では、ボトム層は炭化水素吸着モレキュラーシーブをさらに含む。一部の実施形態では、セリア含有モレキュラーシーブは、銅、鉄、マンガン、マグネシウム、コバルト、ニッケル、白金、パラジウム、およびロジウムからなる群から選択される1種または複数の触媒活性金属をさらに含む。かかる1種または複数の触媒活性金属は、特定の実施形態では、基材の総容積に対して、約3g/ft3~約100g/ft3の担持量で存在する。
【0013】
耐火性金属酸化物支持体は、一部の実施形態では、アルミナ、チタニア、ジルコニア;アルミナと、チタニア、ジルコニアおよびセリアの内の1種または複数との混合物;アルミナ上にコーティングされたセリア;アルミナ上にコーティングされたチタニア;シリカ-アルミナ;アルミノシリケート;、アルミナ-ジルコニア;アルミナ-クロミア;またはアルミナ-セリアを含む。一部の実施形態では、白金族金属は、基材の総容積に対して、約2g/ft3~約200g/ft3の担持量で存在する。
【0014】
基材は様々とすることができる。一部の実施形態では、基材は多孔質壁流フィルタであり、一部の実施形態では、基材はフロースルーモノリスである。
【0015】
基材上の層のアセンブリも様々とすることができる。例えば、一部の実施形態では、ボトムコーティング層は基材と直接接触している。一部の実施形態では、トップコーティング層は、ボトムコーティング層と直接接触している。一部の実施形態では、触媒コーティングはアンダーコート層を含む。一部の実施形態では、触媒コーティングはオーバーコート層を含む。一部の実施形態では、触媒コーティングは、トップコーティング層とボトムコーティング層との間に中間層を含む。触媒コーティングは、ある特定の実施形態では、アンダーコート層、オーバーコート層または中間層を含み、前記層の内の1つまたは複数は、白金族金属成分を実質的に含まない。
【0016】
一部の実施形態では、トップコーティング層はボトムコーティング層全体を覆っている。一部の実施形態では、ボトムコーティング層は基材の軸長全体に延伸している。一部の実施形態では、トップコーティング層は基材の軸長全体に延伸している。一部の実施形態では、ボトムコーティング層は、入口端または出口端のいずれかから、基材の軸長の約10%から約95%までに延伸している。一部の実施形態では、トップコーティング層は、入口端または出口端のいずれかから、基材の軸長の約10%から約95%までに延伸している。一部の実施形態では、触媒コーティングは、基材の総容積に対して、約0.3g/in3~約7g/in3の担持量で存在する。
【0017】
本開示の別の態様では、内燃機関の下流に位置決めされ、内燃機関と流体連通している、本明細書に開示の触媒製品を含む排気ガス処理システムが提供される。排気ガス処理システムは、任意の数のさらなる要素を含むことができる。例えば、一部の実施形態では、システムは、尿素インジェクター、選択接触還元触媒、ディーゼル酸化触媒、煤煙フィルタ、アンモニア酸化触媒、およびリーンNOxトラップからなる群から選択される触媒製品をさらに含む。本開示は、炭化水素および/または一酸化炭素および/またはNOxを含む排気ガス流を処理する方法であって、本明細書に開示の触媒製品またはシステムに排気流を通流させる工程を含む方法も、さらに提供する。
【0018】
本開示は、限定されないが、以下の実施形態を含む。
【0019】
実施形態1.基材上に配置された触媒コーティングを含む触媒製品であって、触媒コーティングは、基材上にボトムコーティング層、およびボトムコーティング層の上にトップコーティング層を含み、ボトムコーティング層は、セリア含有モレキュラーシーブを含み、トップコーティング層は、耐火性金属酸化物支持体上の白金族金属を含むか;またはボトムコーティング層は、耐火性金属酸化物支持体上の白金族金属を含み、トップコーティング層は、セリア含有モレキュラーシーブを含む、触媒製品。
【0020】
実施形態2:セリア含有モレキュラーシーブのモレキュラーシーブは、小細孔モレキュラーシーブであり;例えば、骨格型、ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、KFI、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG、ZON、およびそれらの混合物または連晶からなる群から選択される小細孔モレキュラーシーブ;例を挙げると、骨格型、CHA、LEV、AEI、AFX、ERI、SFW、KFI、DDRおよびITEの群から選択される小細孔モレキュラーシーブである、先行の実施形態に記載の触媒製品。
【0021】
実施形態3:セリア含有モレキュラーシーブはCeCHAである、先行の実施形態のいずれかに記載の触媒製品。
【0022】
実施形態4:セリア含有モレキュラーシーブ中のセリアは、セリア含有モレキュラーシーブの質量に対して、約1質量%、約2質量%、約3質量%、約4質量%、約5質量%、約6質量%、約7質量%、約8質量%、約9質量%または約10質量%から、約12質量%、約15質量%、約18質量%、約20質量%、約24質量%、約28質量%、約32質量%、約36質量%、約40質量%、約45質量%または約50質量%まで存在する、先行の実施形態のいずれかに記載の触媒製品。
【0023】
実施形態5:セリア含有モレキュラーシーブは、基材の容積に対して、約0.05g/in3、約0.1g/in3、約0.2g/in3、約0.3g/in3から、約0.4g/in3、約0.5g/in3、約0.6g/in3、約0.7g/in3、約0.8g/in3、約0.9g/in3、約1.0g/in3、約1.2g/in3、約1.6g/in3または約2.0g/in3まで存在する、先行の実施形態のいずれかに記載の触媒製品。
【0024】
実施形態6:ボトム層は炭化水素吸着モレキュラーシーブ;例えば、H+形態モレキュラーシーブをさらに含む、先行の実施形態のいずれかに記載の触媒製品。
【0025】
実施形態7:ボトム層は、大細孔モレキュラーシーブ;
例を挙げると、骨格型、AFI、AFR、AFS、AFY、ASV、ATO、ATS、BEA、BEC、BOG、BPH、BSV、CAN、CON、CZP、DFO、EMT、EON、EZT、FAU、GME、GON、IFR、ISV、ITG、IWR、IWS、IWV、IWW、JSR、LTF、LTL、MAZ、MEI、MOR、MOZ、MSE、MTW、NPO、OFF、OKO、OSI、RON、RWY、SAF、SAO、SBE、SBS、SBT、SEW、SFE、SFO、SFS、SFV、SOF、SOS、STO、SSF、SSY、USI、UWY、VET、およびそれらの混合物または連晶からなる群から選択される大細孔モレキュラーシーブ;例を挙げると、骨格型、AFI、BEA、MAZ、MOR、およびOFFからなる群から選択される大細孔モレキュラーシーブ、からなる群から選択される炭化水素吸着に適したモレキュラーシーブをさらに含む、先行の実施形態のいずれかに記載の触媒製品。
【0026】
実施形態8:ボトム層は、炭化水素吸着向けのモレキュラーシーブを、基材の容積に対して、約0.05g/in3、約0.1g/in3、約0.2g/in3、約0.3g/in3から、約0.4g/in3、約0.5g/in3、約0.6g/in3、約0.7g/in3、約0.8g/in3、約0.9g/in3、約1.0g/in3、約1.2g/in3、約1.6g/in3、約2.0g/in3、約2.5g/in3、約3.0g/in3、約4.0g/in3、または約5.0g/in3まで、さらに含む、先行の実施形態のいずれかに記載の触媒製品。
【0027】
実施形態9:セリア含有モレキュラーシーブは、銅、鉄、マンガン、マグネシウム、コバルト、ニッケル、白金、パラジウム、およびロジウムからなる群から選択される1種または複数の触媒活性金属をさらに含有する、先行の実施形態のいずれかに記載の触媒製品。
【0028】
実施形態10:セリア含有モレキュラーシーブは、マンガン、マグネシウム、白金およびパラジウムからなる群から選択される1種または複数の触媒活性金属をさらに含有する、先行の実施形態のいずれかに記載の触媒製品。
【0029】
実施形態11:セリア含有モレキュラーシーブは、1種または複数の触媒活性金属を、基材の容積に対して、約3g/ft3、約4g/ft3、約5g/ft3、約6g/ft3、約7g/ft3、約8g/ft3、約9g/ft3、約10g/ft3から、約12g/ft3、約14g/ft3、約16g/ft3、約18g/ft3、約20g/ft3、約22g/ft3、約24g/ft3、約26g/ft3、約28g/ft3、約30g/ft3、約35g/ft3、約40g/ft3、約45g/ft3、約50g/ft3、約55g/ft3、約60g/ft3、約65g/ft3、約70g/ft3、約75g/ft3、約80g/ft3、約85g/ft3、約90g/ft3、約95g/ft3、または約100g/ft3まで、さらに含有する、先行の実施形態のいずれかに記載の触媒製品。
【0030】
実施形態12:耐火性金属酸化物支持体は、アルミナ、チタニア、ジルコニア;アルミナと、チタニア、ジルコニアおよびセリアの内の1種または複数との混合物;アルミナ上にコーティングされたセリア;アルミナ上にコーティングされたチタニア;シリカ-アルミナ;アルミノシリケート;、アルミナ-ジルコニア;アルミナ-クロミア;またはアルミナ-セリアを含む、先行の実施形態のいずれかに記載の触媒製品。
【0031】
実施形態13:耐火性金属酸化物支持体は、ガンマアルミナ、シリカ-アルミナ、アルミナ上にコーティングされたセリア;アルミナ上にコーティングされたチタニアからなる群から選択される、先行の実施形態のいずれかに記載の触媒製品。
【0032】
実施形態14:トップ触媒層は、トップ触媒層の質量に対して、アルミナを約15wt.%、約20wt.%、約25wt.%、約30wt.%または約35wt.%から、約50wt.%、約55wt.%、約60wt.%、約65wt.%、約70wt.%、約75wt.%、約80wt.%、約85wt.%、約90wt.%または約95wt.%まで含む、先行の実施形態のいずれかに記載の触媒製品。
【0033】
実施形態15:耐火性金属酸化物支持体は、基材に対して、約0.5g/in3、約0.8g/in3または約1.0g/in3から、約2.0g/in3、約3.0g/in3、約4.0g/in3、約5.0g/in3、約6.0g/in3または約7.0g/in3までの濃度で存在する、先行の実施形態のいずれかに記載の触媒製品。
【0034】
実施形態16:トップコーティング層の白金族金属は、基材に対して、約2g/ft3、約5g/ft3、約10g/ft3から、約250g/ft3まで、例えば、約20g/ft3、約30g/ft3、約40g/ft3、約50g/ft3または約60g/ft3から、約100g/ft3、約150g/ft3または約200g/ft3まで存在する、先行の実施形態のいずれかに記載の触媒製品。
【0035】
実施形態17:基材は多孔質壁流フィルタである、先行の実施形態のいずれかに記載の触媒製品。
【0036】
実施形態18:基材はフロースルーモノリスである、実施形態1から16のいずれかに記載の触媒製品。
【0037】
実施形態19:ボトムコーティング層は基材と直接接触している、先行の実施形態のいずれかに記載の触媒製品。
【0038】
実施形態20:トップコーティング層は、ボトムコーティング層と直接接触している、先行の実施形態のいずれかに記載の触媒製品。
【0039】
実施形態21:触媒コーティングはアンダーコート層を含む、実施形態1から18または20のいずれかに記載の触媒製品。
【0040】
実施形態22:触媒コーティングはオーバーコート層を含む、先行の実施形態のいずれかに記載の触媒製品。
【0041】
実施形態23:触媒コーティングは、トップコーティング層とボトムコーティング層との間に中間層を含む、実施形態1から19、21、または22のいずれかに記載の触媒製品。
【0042】
実施形態24:触媒コーティングは、アンダーコート層、オーバーコート層または中間層を含み、前記層の内の1つまたは複数は、PGM成分を実質的に含まない、先行の実施形態のいずれかに記載の触媒製品。
【0043】
実施形態25:触媒コーティングは、基材に対して、約0.3g/in3から約4.5g/in3まで;または約0.4g/in3、約0.5g/in3、約0.6g/in3、約0.7g/in3、約0.8g/in3、約0.9g/in3または約1.0g/in3から、約1.5g/in3、約2.0g/in3、約2.5g/in3、約3.0g/in3、約3.5g/in3、約4.0g/in3、約4.5g/in3、約5.0g/in3、約5.5g/in3、約6.0g/in3、約6.5g/in3、または約7.0g/in3までの担持量で存在する、先行の実施形態のいずれかに記載の触媒製品。
【0044】
実施形態26:トップコーティング層はボトムコーティング層よりも低い担持量で存在する、先行の実施形態のいずれかに記載の触媒製品。
【0045】
実施形態27:トップコーティング層は、基材に対して、約0.4g/in3、約0.5g/in3、約0.6g/in3、約0.7g/in3、約0.8g/in3、約0.9g/in3または約1.0g/in3から、約1.5g/in3、約2.0g/in3、約2.5g/in3、約3.0g/in3、約3.5g/in3までの担持量で存在する、先行の実施形態のいずれかに記載の触媒製品。
【0046】
実施形態28:ボトムコーティング層は、基材に対して、約0.4g/in3、約0.5g/in3、約0.6g/in3、約0.7g/in3、約0.8g/in3、約0.9g/in3または約1.0g/in3から、約1.5g/in3、約2.0g/in3、約2.5g/in3、約3.0g/in3、約3.5g/in3または約4.0g/in3までの担持量で存在する、先行の実施形態のいずれかに記載の触媒製品。
【0047】
実施形態29:内燃機関の下流にあり、内燃機関と流体連通している、先行の実施形態のいずれかに記載の触媒製品。
【0048】
実施形態30:トップコーティング層はボトムコーティング層全体を覆っている、先行の実施形態のいずれかに記載の触媒製品。
【0049】
実施形態31:ボトムコーティング層は基材の軸長全体に延伸している、先行の実施形態のいずれかに記載の触媒製品。
【0050】
実施形態32:トップコーティング層は基材の軸長全体に延伸している、先行の実施形態のいずれかに記載の触媒製品。
【0051】
実施形態33:ボトムコーティング層は、入口端または出口端のいずれかから、基材の軸長の、約10%、約15%、約25%、約30%、約35%、約40%または約45%から、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約85%、約90%または約95%までに延伸している、実施形態1から30および32のいずれかに記載の触媒製品。
【0052】
実施形態34:トップコーティング層は、入口端または出口端のいずれかから、基材の軸長の、約10%、約15%、約25%、約30%、約35%、約40%または約45%から、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約85%、約90%または約95%までに延伸している、実施形態1から31または33のいずれかに記載の触媒製品。
【0053】
実施形態35:先行の実施形態のいずれかに記載の触媒製品を含む排気ガス処理システム。
【0054】
実施形態36:尿素インジェクター、選択接触還元触媒、ディーゼル酸化触媒、煤煙フィルタ、アンモニア酸化触媒、およびリーンNOxトラップからなる群から選択される触媒製品をさらに含む、先行の実施形態に記載の排気ガス処理システム。
【0055】
実施形態37:内燃機関の下流にあり、内燃機関と流体連通している、先行の実施形態のいずれかに記載の排気ガス処理システム。
【0056】
実施形態38:炭化水素および/または一酸化炭素および/またはNOxを含む排気ガス流を処理する方法であって、先行の請求項のいずれかに記載の触媒製品またはシステムに排気流を通流させる工程を含む方法。
【0057】
本開示のこれらのおよび他の特徴、態様、および利点は、以下に簡潔に記載される添付の図面と併せて、以下の詳細な説明を読み解くことから明確になるだろう。本発明は、上述の実施形態の内の2つ、3つ、4つ、またはこれより多い任意の組合せを含むとともに、かかる特徴または要素が本明細書において特定の実施形態の記載において明示的に組み合わせられているか否かに関わらず、本開示に記載の任意の2つ、3つ、4つ、またはこれより多い特徴または要素の組合せを含むものである。本開示は、開示された本発明の分離可能な任意の特徴または要素が、その種々の態様および実施形態のいずれにおいても、文脈上明確に指定しない限り、組合せ可能であると意図されているとみなされるように、包括的に読み解かれることを意図するものである。本発明のその他の態様および利点については、以下から明白となるであろう。
【0058】
本発明の実施形態の理解をもたらすために、添付の図面が参照されるが、それらは必ずしも縮尺通りに描かれておらず、その図面において参照番号は本発明の例示的な実施形態の要素を指すものである。図面は、例示に過ぎず、本発明を限定するものとして解釈するべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1ab】
図1aは、本発明による触媒製品を含むことができるハニカム型基材の斜視図である。
図1bは、
図1aを拡大し、
図1aの基材の端面に平行な平面に沿った、モノリシックフロースルー基材を表す部分断面図であり、この部分断面図に
図1aに示した複数のガス流路の拡大図が示される。
【
図1cd】
図1cは、壁流フィルタ基材の斜視図を示す図である。
図1dは、壁流フィルタ基材のセクションの断面図を示す図である。
【
図2ab】可能な2種のコーティング構成を示す図である。
【
図3】実施例1(フレッシュ、既使用、硫酸化および脱硫酸化の各触媒粉末についてデータを提供する)の粉末試料のCOライトオフ性能を示す図である。エージング、硫黄曝露、および脱硫酸化後のセリア粉末上の2%Pd、試料2、のCOライトオフ性能を示す図である。
【
図4】実施例1(フレッシュ、既使用、硫酸化および脱硫酸化の各触媒粉末についてデータを提供する)の粉末試料のCOライトオフ性能を示す図である。650℃での脱硫酸化後の、Pd/セリア粉末、試料2対Pd/Ce/CHA粉末、試料3、の性能の比較を示す図である。
【
図5】実施例1(フレッシュ、既使用、硫酸化および脱硫酸化の各触媒粉末についてデータを提供する)の粉末試料のCOライトオフ性能を示す図である。650℃での脱硫酸化後の、Pd/セリア粉末、試料2対Pd/CHAの性能の比較を示す図である。
【
図6】実施例1(フレッシュ、既使用、硫酸化および脱硫酸化の各触媒粉末についてデータを提供する)の粉末試料のCOライトオフ性能を示す図である。650℃での脱硫酸化後の、Pd/セリア粉末、試料2対Pd/Ce/ZSM-5粉末、試料4の性能の比較を示す図である。
【
図7】実施例1(フレッシュ、既使用、硫酸化および脱硫酸化の各触媒粉末についてデータを提供する)の粉末試料のCOライトオフ性能を示す図である。650℃での脱硫酸化後の、Pd/セリア粉末、試料2対Pd/Ce/ベータ粉末、試料5の性能の比較を示す図である。
【
図8】実施例1(フレッシュ、既使用、硫酸化および脱硫酸化の各触媒粉末についてデータを提供する)の粉末試料のCOライトオフ性能を示す図である。650℃での脱硫酸化後の、Pd/(10%)Ce/ベータ粉末、試料5対Pd/(20%)Ce/ベータ粉末、試料6の性能の比較を示す図である。
【
図9】650℃での脱硫酸化後の、Pd/Ce/CHA粉末、試料3対Pd/Ce/CuCHA粉末、試料7の性能の比較を示す図である。
【
図10】車両とシミュレータとの間のエンジンアウトの温度トレースの比較を示す図である。
【
図11】車両トレースとシミュレータとの間のエンジンアウトのCO排出の比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
次に、本発明を以下でより完全に説明する。しかし、本発明は、多くの様々な形態で具体化することができ、本明細書に記載の実施形態に限定して解釈されるべきではなく、むしろ、それらの実施形態は、本開示を徹底的ならびに完全なものとするよう提供され、本発明の範囲を当業者に完全に伝えるものである。本明細書および特許請求の範囲で使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が明瞭に指示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0061】
本触媒組成物は、内燃機関、例えば、ガソリン、小型車両用ディーゼルおよび大型車両用ディーゼルの各エンジンの排気ガス流の処理に適している。一部の実施形態では、かかる触媒組成物を他の要素と、例えば他の触媒組成物と組み合わせて、ディーゼル酸化触媒または触媒化煤煙フィルタとしての使用に適した組成物および製品を提供することができる。触媒組成物はまた、固定型工業プロセスからの排出の処理、屋内空気からの有害物質もしくは有毒物質の除去、または化学反応プロセスにおける触媒にも適している。
【0062】
具体的には、本明細書に開示の触媒組成物は、1つまたは複数のモレキュラーシーブを含み、モレキュラーシーブは、パラジウムおよびセリアを含有する。そのような組成物は、単独で、または他の触媒組成物と、例えば、耐火性金属酸化物上の白金族金属(PGM)を含む触媒組成物と組み合わせて使用することができる。本明細書で使用する場合、用語「触媒」または「触媒組成物」とは、反応を促進する材料を指す。
【0063】
本明細書で使用する場合、用語「上流」および「下流」とは、エンジンから排気管に向かってエンジン排ガス流が流れることに応じた相対的な方向を指し、エンジンが上流の位置にあり、排気管ならびにフィルタおよび触媒などの任意の汚染削減製品がエンジンから下流に存在する状態である。
【0064】
本明細書で使用する場合、用語「流(流れ)」とは、固体または液体の粒子状物質を含有し得る流動ガスの任意の組合せを広く指す。用語「ガス流」または「排気流」または「排ガス流」とは、液滴、固体粒子等などの混入非ガス成分を含有する場合もある燃焼エンジンの排気などのガス状構成成分の流れを意味する。燃焼エンジンの排ガス流は通常には、燃焼生成物(CO2およびH2O)、不完全燃焼の生成物(一酸化炭素(CO)および炭化水素(HC))、窒素の酸化物(NOx)、可燃性および/または炭素質粒子状物質(煤煙)、ならびに未反応酸素および窒素をさらに含む。
【0065】
本明細書で使用する場合、用語「基材」とは、その上に触媒組成物が置かれるモノリシック材料を指す。
【0066】
本明細書で使用する場合、用語「支持体」とは、その上に触媒貴金属が適用される任意の高表面積材料、普通は金属酸化物材料を指す。
【0067】
本明細書で使用する場合、用語「ウォッシュコート」とは、処理されるガス流の通過を可能にするのに十分に多孔質である、ハニカム型担体部材などの、基材材料に適用される触媒材料または他の材料の薄い付着性コーティングに関する、当技術分野におけるその普通の意味を有する。ウォッシュコートは、液体ビヒクル中に、ある特定の固形分含量(例えば、20質量%~90質量%)の粒子を含有するスラリーを製造することによって形成される。次いで、このスラリーを基材上にコーティングし、乾燥してウォッシュコート層を提供する。
【0068】
本明細書で使用する場合、用語「触媒製品」とは、所望の反応を促進するために使用される要素を指す。例えば、触媒製品は、基材上に触媒組成物を含有するウォッシュコートを含むことができる。
【0069】
本明細書で使用する場合、「含浸(された)」または「含浸」とは、支持体材料の多孔質構造への触媒材料の浸透を指す。
【0070】
コーティング層に関連して用語「~上」および「~の上」は、同義に使用することができる。用語「上に直接」とは、直接の接触にあることを意味する。本開示の製品は、ある特定の実施形態では、第2のコーティング層「上」に1つのコーティング層を含むと言及されるが、このような言い回しは、介在層を伴う実施形態を包含することを意図するものであり、この場合、コーティング層間での直接の接触は必要とされない(すなわち、「上」とは「上に直接」と同等ではない)。
【0071】
「実質的にない」とは、「ほとんどないまたは全くない」または「意図的に添加されていない」ことを意味し、わずかな量および/または偶発的な量しか存在しないことも意味する。例を挙げると、ある特定の実施形態では、「実質的にない」とは、示された全組成の質量に対して、2wt.%(質量%)未満、1.5wt.%未満、1.0wt.%未満、0.5wt.%未満、0.25wt.%または0.01wt.%未満を意味する。
【0072】
D90粒度分布とは、サブミクロンサイズの粒子については、走査電子顕微鏡(SEM)または透過電子顕微鏡(TEM)で測定して;および支持体含有の粒子(ミクロンサイズ)については、粒径分析器で測定して、粒子の90%(数で)がある特定のサイズ未満のフェレット直径を有することを表す。「平均粒径」とはD50と同義で、粒子の集団の半分がこの点を超え、半分がこの点を下回る粒径を有することを意味する。粒径とは、一次粒子を指す。粒径は、例えばASTMメソッドD4464に準拠して、分散液または乾燥粉末を用いて、レーザー光散乱法によって測定可能である。
【0073】
用語「削減」とは、量の減少を意味し、任意の手段によって生じる。
【0074】
触媒材料
本開示の触媒材料は、パラジウムおよびセリアを含有するモレキュラーシーブを含む触媒組成物を含む(本明細書では「Pdおよびセリアモレキュラーシーブ組成物と呼ぶ)。一部の実施形態では、触媒材料は、耐火性金属酸化物支持体上の白金族金属(PGM)を含む触媒組成物(本明細書では「PGM組成物」と呼ぶ)をさらに含む。Pdおよびセリアモレキュラーシーブ組成物およびPGM組成物の両方を用いる実施形態では、これらの組成物は、例えば、層状構成で基材上に配置して、下に本明細書において詳細に説明するように、触媒製品を生成することができる。
【0075】
Pdおよびセリアモレキュラーシーブ組成物
Pdおよびセリアモレキュラーシーブ組成物は全体として、Pd成分(例えば、Pd)およびセリアを含有する1つまたは複数のモレキュラーシーブを含む。
【0076】
モレキュラーシーブには、小細孔、中間細孔および大細孔のモレキュラーシーブまたはそれらの組合せが含まれる。小細孔モレキュラーシーブは、最大8個の四面体原子によって規定されるチャネルを含有する。中間細孔モレキュラーシーブは、10員環によって規定されるチャネルを含有する。大細孔モレキュラーシーブは、12員環によって規定されるチャネルを含有する。
【0077】
小細孔モレキュラーシーブは、アルミノシリケートモレキュラーシーブ、金属含有アルミノシリケートモレキュラーシーブ、アルミノホスフェート(ALPO)モレキュラーシーブ、金属含有アルミノホスフェート(MeALPO)モレキュラーシーブ、シリコアルミノホスフェート(SAPO)モレキュラーシーブ、および金属含有シリコアルミノホスフェート(MeSAPO)モレキュラーシーブおよびそれらの混合物からなる群から選択される。例えば、小細孔モレキュラーシーブは、骨格型、ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、KFI、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG、ZON、およびそれらの混合物または連晶からなる群から選択される。例を挙げると、小細孔モレキュラーシーブは、骨格型、CHA、LEV、AEI、AFX、ERI、SFW、KFI、DDRおよびITEの群から選択される。
【0078】
中間細孔モレキュラーシーブは、骨格型、AEL、AFO、AHT、BOF、BOZ、CGF、CGS、CHI、DAC、EUO、FER、HEU、IMF、ITH、ITR、JRY、JSR、JST、LAU、LOV、MEL、MFI、MFS、MRE、MTT、MVY、MWW、NAB、NAT、NES、OBW、PAR、PCR、PON、PUN、RRO、RSN、SFF、SFG、STF、STI、STT、STW、SVR、SZR、TER、TON、TUN、UOS、VSV、WEI、WENおよびそれらの混合物または連晶からなる群から選択される。例を挙げると、中間細孔モレキュラーシーブは、骨格型、FER、MEL、MFIおよびSTTからなる群から選択される。
【0079】
大細孔モレキュラーシーブは、骨格型、AFI、AFR、AFS、AFY、ASV、ATO、ATS、BEA、BEC、BOG、BPH、BSV、CAN、CON、CZP、DFO、EMT、EON、EZT、FAU、GME、GON、IFR、ISV、ITG、IWR、IWS、IWV、IWW、JSR、LTF、LTL、MAZ、MEI、MOR、MOZ、MSE、MTW、NPO、OFF、OKO、OSI、RON、RWY、SAF、SAO、SBE、SBS、SBT、SEW、SFE、SFO、SFS、SFV、SOF、SOS、STO、SSF、SSY、USI、UWY、VETおよびそれらの混合物または連晶からなる群から選択される。例を挙げると、大細孔モレキュラーシーブは、骨格型、AFI、BEA、MAZ、MORおよびOFFからなる群から選択することができる。
【0080】
例えば、モレキュラーシーブは、AEI、BEA(ベータゼオライト)、CHA(チャバザイト)、FAU(ゼオライトY)、FER(フェリエライト)、MFI(ZSM-5)およびMOR(モルデナイト)からなる群から選択される骨格型を含む。これらの構造を有するゼオライトの非限定的な例としては、チャバザイト、フォージャサイト、ゼオライトY、超安定ゼオライトY、ベータゼオライト、モルデナイト、シリカライト、ゼオライトX、およびZSM-5が挙げられる。
【0081】
本発明のモレキュラーシーブは、高表面積を、例えば、DIN66131に準拠して決定されるBET表面積を、少なくとも約300m2/g、少なくとも約400m2/g、少なくとも約550m2/gまたは少なくとも約650m2/g、例えば、約400から約750m2/gまでまたは約500から約750m2/gまで、呈することができる。本発明のモレキュラーシーブは、平均結晶サイズを、SEMにより決定して、約10ナノメートルから約10ミクロンまで、約50ナノメートルから約5ミクロンまでまたは約0.1ミクロンから約0.5ミクロンまで有することができる。例を挙げると、モレキュラーシーブ微結晶は、0.1ミクロンまたは1ミクロン超および5ミクロン未満の結晶サイズを有することができる。
【0082】
有用なモレキュラーシーブは、8環の開孔および二重-6環の二次構築単位を有し、例えば、これらは、構造型AEI、AFT、AFX、CHA、EAB、ERI、KFI、LEV、SAS、SATまたはSAVを有する。同じ構造型を有するSAPO、ALPOおよびMeAPO材料などのあらゆる同位体骨格材料が含まれる。
【0083】
アルミノシリケートゼオライト構造は、リンまたは骨格内で同形置換される他の金属を含まない。すなわち、「アルミノシリケートゼオライト」は、SAPO、ALPOおよびMeAPO材料などのアルミノホスフェート材料を除外するが、より広い用語「ゼオライト」はアルミノシリケートおよびアルミノホスフェートを含む。本開示では、SAPO、ALPOおよびMeAPO材料は非ゼオライト系モレキュラーシーブとみなされる。
【0084】
8環小細孔モレキュラーシーブには、アルミノシリケート、ボロシリケート、ガロシリケート、MeAPSOおよびMeAPOが含まれる。これには、例えば、SSZ-13、SSZ-62、天然チャバザイト、ゼオライトK-G、リンデD、リンデR、LZ-218、LZ-235、LZ-236、ZK-14、SAPO-34、SAPO-44、SAPO-47、ZYT-6、CuSAPO-34、CuSAPO-44およびCuSAPO-47が含まれる。一部の実施形態では、8環小細孔モレキュラーシーブは、SSZ-13およびSSZ-62などのアルミノシリケート組成物を有するであろう。
【0085】
一または複数の実施形態では、8環小細孔モレキュラーシーブは、CHA結晶構造を有し、CHA結晶構造を有するアルミノシリケートゼオライト、SAPO、ALPO、およびMeAPOからなる群から選択される。例えば、CHA結晶構造を有する8環小細孔モレキュラーシーブは、CHA結晶構造を有するアルミノシリケートゼオライトである。一実施形態では、CHA結晶構造を有する8環小細孔モレキュラーシーブは、SSZ-13またはSSZ-62などのアルミノシリケート組成物を有するであろう。
【0086】
モレキュラーシーブは、ゼオライト系(ゼオライト)とすることができ、または非ゼオライト系であってもよい。ゼオライト系モレキュラーシーブおよび非ゼオライト系モレキュラーシーブの両方とも、国際ゼオライト学会(International Zeolite Association)によってCHA構造とも呼ばれるチャバザイト結晶構造を有することができる。ゼオライト系チャバザイトは、近似公式(Ca、Na2、K2、Mg)Al2Si4O12・6H2O(すなわち、水和ケイ酸アルミニウムカルシウム))を有するゼオライト群の天然に存在するテクトケイ酸塩鉱物を含む。ゼオライト系チャバザイトの3種の合成形態は、参照により本明細書に組み込まれる、1973年にJohn Wiley&Sonsによって公開されたD.W.Breckによる「Zeolite Molecular Sieves」に記載されている。Breckによって報告された3種の合成形態は、参照により本明細書に全て組み込まれる、J.Chem.Soc.、2822頁(1956年)、Barrerらに記載されているZeolite K-G;英国特許第868,846号(1961年)に記載されているZeolite D;および米国特許第3,030,181号に記載されているZeolite Rである。ゼオライト系チャバザイト、SSZ-13の別の合成形態の合成は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,544,538号に記載されている。チャバザイト結晶構造を有する非ゼオライト系モレキュラーシーブ、シリコアルミノホスフェート34(SAPO-34)の合成形態の合成は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,440,871号および米国特許第7,264,789号に記載されている。チャバザイト構造を有するさらに別の合成非ゼオライト系モレキュラーシーブ、SAPO-44を作製する方法は、例を挙げると、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,162,415号に記載されている。
【0087】
合成8環小細孔モレキュラーシーブ(例えばCHA構造を有する)は、アルカリ性水性条件下でシリカ源と、アルミナ源と構造指向剤とを混合することによって製造することができる。典型的なシリカ源には、種々の種類のヒュームドシリカ、沈降シリカおよびコロイド状シリカ、ならびにシリコンアルコキシドが含まれる。典型的なアルミナ源には、ベーマイト、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、亜硫酸アルミニウムまたはアルミン酸ナトリウムなどのアルミニウム塩、およびアルミニウムアルコキシドが含まれる。水酸化ナトリウムが反応混合物に典型的には添加される。この合成向けの典型的な構造指向剤はアダマンチルトリメチルアンモニウムヒドロキシドであるが、他のアミンおよび/または四級アンモニウム塩で置き換わってもよく、それらを添加してもよい。反応混合物を圧力容器中で攪拌しながら加熱して結晶性生成物を得る。典型的な反応温度は約100℃から約200℃まで、例を挙げると、約135℃から約170℃までの範囲である。典型的な反応時間は1時間から30日の間であり、一部の実施形態では、10時間から3日までである。反応の終わりに、pHを6から10の間、例えば7から7.5の間に任意に調整し、生成物を濾過し、水で洗浄する。任意の酸、例を挙げると硝酸をpH調整に使用することができる。任意に、生成物を遠心分離してもよい。有機添加物を使用して、固体生成物の取扱いおよび単離に役立ててもよい。噴霧乾燥は製品の加工における任意の工程である。固体生成物は空気中または窒素中で熱処理される。あるいは、各ガス処理を種々の順序で適用することができ、またはガスの混合物を適用することができる。典型的な焼成温度は、約400℃から約850℃までである。
【0088】
CHA構造を有するモレキュラーシーブは、例を挙げると、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,544,538号および米国特許第6,709,644号に開示の方法にしたがって製造することができる。
【0089】
Pdおよびセリアモレキュラーシーブ組成物内のモレキュラーシーブは、シリカとアルミナとの比(SAR)を、約1、約2、約5、約8、約10、約15、約20または約25から、約30、約35、約40、約45、約50、約60、約70、約80、約90、約100、約150、約200、約260、約300、約400、約500、約750または約1000まで有することができる。例を挙げると、触媒組成物内に組み込むことができる特定のモレキュラーシーブは、SARを、約5から約250まで、約10から約200まで、約2から約300まで、約5から約250まで、約10から約200まで、約10から約100まで、約10から約75まで、約10から約60まで、約10から約50まで、約15から約100まで、約15から約75まで、約15から約60まで、約15から約50まで、約20から約100まで、約20から約75まで、約20から約60までまたは約20から約50まで、有することができる。
【0090】
有利には、本発明の触媒組成物のモレキュラーシーブは、小細孔モレキュラーシーブまたは中間細孔モレキュラーシーブである。
【0091】
セリア含有モレキュラーシーブのセリウムは、モレキュラーシーブのイオン交換部位中、もしくはその表面上のいずれかに、または両方にあることができる。したがって、セリア「含有」モレキュラーシーブを含むと記載されている本開示の触媒組成物は、モレキュラーシーブのイオン交換部位中および/または表面上にセリアを含むと理解される。例えば、焼成すると、非交換型セリウム塩は、CeO2およびCe2O3を含めて(式中、セリウムは+3のまたは+4の酸化状態にある)、セリウム酸化物に分解し、本明細書では「遊離セリウム」または有利には「セリア」とも呼ばれる。遊離セリウムの量は、イオン交換型セリウムの量より少なくても、等しくても、多くてもよい。セリア含有モレキュラーシーブは、例えば、Na+含有モレキュラーシーブ(Na+形態)からのイオン交換を介して製造することが可能である。Na+形態とは一般には、いかなるイオン交換も伴わない焼成形態を指す。この形態では、モレキュラーシーブは一般には、交換部位中にNa+カチオンとH+カチオンとの混合物を含有する。Na+カチオンによって占められる部位の割合は、特定のゼオライトバッチおよびレシピに応じて異なる。任意に、アルカリ金属モレキュラーシーブはNH4
+交換型であり、NH4
+形態がイオン交換に用いられる。任意に、NH4
+交換型モレキュラーシーブをH+形態に焼成し、このH+形態をイオン交換に用いることも可能である。セリウムを、1種または複数のセリウム塩を用いて、アルカリ金属形態、NH4
+形態またはH+形態を有するモレキュラーシーブにイオン交換する。一般に、任意の水溶性セリウム塩を使用することができるが、このような塩の非限定的な例として硝酸セリウムを挙げることができる。例を挙げると、Na+形態、NH4
+形態またはH+形態のモレキュラーシーブをセリウム塩水溶液と混合し、高温で適切な時間の間攪拌する(例えば、約60~120℃で約30分~3時間の間)。スラリーを濾過し、フィルタケーキを洗浄し、乾燥する。セリウムをモレキュラーシーブ上に適用する他の方法は、初期湿潤含浸(incipient wetness impregnation)法を含む。方法の組合せを用いて、所望のセリア担持量に到達することができる。
【0092】
一部の実施形態では、本開示の触媒組成物は、パラジウムを「含有する」モレキュラーシーブを含むと記載され、かかる例において、「含有する」とは、パラジウムは、モレキュラーシーブのイオン交換部位中、もしくはその表面上のいずれかに、または両方にあることを意味すると、同様に理解される。モレキュラーシーブが「遊離セリウム」およびパラジウムの両方を含有すると記載される場合、遊離セリウムおよびパラジウムの両方は、モレキュラーシーブのイオン交換部位中および/またはその表面上にある。典型的には、本発明の触媒に使用される遊離セリウム粒子はパラジウムよりも大きく、その結果、遊離セリウムの比較的多量がまたはさらには大部分がモレキュラーシーブの表面上に位置する。しかし、本開示の触媒組成物はそのような実施形態に限定されない。ある特定の実施形態では、パラジウムはセリアによって担持されているのが有利である。
【0093】
本開示の組成物は、一部の実施形態では、初期湿潤含浸法により製造することができる。例えば、最初にセリウムをモレキュラーシーブに含浸させ、次にパラジウムを含浸させることができる。あるいは、パラジウムとセリウム塩とを一緒に混合し、混合物をモレキュラーシーブ上に含浸させてもよい。塩には、それに限定されないが、硝酸塩が含まれる。さらに、調整したコロイドが、構造指向剤と、シリカ源と、アルミナ源と金属イオン(例えばセリウム)源とを含有するように、モレキュラーシーブ合成プロセス時に触媒活性金属の少なくとも一部を含めることができる。一部の実施形態では、パラジウムと他の金属塩とを一緒に混合し、混合物をモレキュラーシーブ上に含浸させてもよい。塩に使用される金属には、それらに限定されないが、銅、鉄、マンガン、マグネシウム、コバルト、ニッケル、白金およびロジウム、およびそれらの組合せからなる群から選択される金属が含まれる。
【0094】
触媒組成物中のセリアの量は、触媒組成物の総質量に対して、例えば、約1から約50wt.%(質量パーセント)までである。触媒組成物中のセリアは、触媒組成物の総質量に対して、例えば、約1質量%、約2質量%、約3質量%、約4質量%、約5質量%、約6質量%、約7質量%、約8質量%、約9質量%または約10質量%から、約12質量%、約15質量%、約18質量%、約20質量%、約24質量%、約28質量%、約32質量%、約36質量%、約40質量%、約45質量%または約50質量%まで、存在する。
【0095】
パラジウムは、触媒組成物の総質量に対して、触媒組成物中に、例えば、約0.1質量%、約0.2質量%、約0.5質量%、約0.7質量%、約0.9質量%または約1.0質量%から、約1.5質量%、約2.0質量%、約2.5質量%、約3.0質量%、約3.5質量%、約4.0質量%、約4.5質量%または約5.0質量%まで、存在する。パラジウムの質量レベルは酸化物として測定および報告されている。モレキュラーシーブの総乾燥質量はセリウムなど任意の添加/交換型金属を含む。
【0096】
モレキュラーシーブは、焼成モレキュラーシーブの総質量に対して最大10wt.%のナトリウム含有量(揮発分フリーベースでNa2Oとして報告)を有することができる。モレキュラーシーブはそれぞれ、約0.02から約2.0までの原子のナトリウムとアルミニウムとの比を有することができる。モレキュラーシーブはそれぞれ、約0.5から約500までの原子のセリアとナトリウムとの比を有することができる。
【0097】
前述の説明は、触媒組成物のセリア、パラジウム、およびモレキュラーシーブ成分の適切ないくつかの範囲または量を提供しているが、これらの成分の内の1つについて開示された範囲または量のそれぞれは、その他の成分について開示された範囲または量と組み合わせて、新しい範囲またはサブ範囲を形成することができることに留意されたい。かかる実施形態も、本発明によって明確に企図するものである。
【0098】
Pdおよびセリアモレキュラーシーブ組成物は、一部の実施形態では、銅、鉄、マンガン、マグネシウム、コバルト、ニッケル、白金、パラジウム、ロジウムまたはそれらの組合せなどの他の触媒活性金属を含有することができる。そのような金属は、一部の実施形態では、モレキュラーシーブが、銅、鉄、マンガン、マグネシウム、コバルト、ニッケル、白金およびロジウムからなる群から選択される1種または複数の触媒活性金属をさらに含有するように、存在することができる。あるいは、Pdおよびセリアモレキュラーシーブ組成物は、これらの金属の1種または複数を実質的に含まない場合もある。
【0099】
一部の実施形態では、パラジウムは、銅、鉄、マンガン、マグネシウム、コバルト、ニッケル、白金、およびロジウムからなる群から選択される1種または複数の触媒活性金属をさらに含有する。
【0100】
PGM組成物
PGM組成物は一般に、少なくとも1つの耐熱金属支持体上に少なくとも1種のPGM成分を含む。「白金族金属成分」とは、白金族金属またはそれらの化合物、例えば、酸化物を指す。白金族金属は、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、および白金である。
【0101】
一部の実施形態では、本明細書に開示の触媒組成物とともに用いることができるPGM含有組成物に関して、PGM含有触媒組成物の組成は、様々とすることができるが、全体として、1種または複数の耐火性金属酸化物に担持された1種または複数のPGMを含む。耐火性金属酸化物は、ガソリンエンジンまたはディーゼルエンジンの排気に伴う温度などの、高温で化学的および物理的安定性を呈する多孔質の金属含有酸化物材料である。例示的な金属酸化物には、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア、プラセオジミア、酸化スズ等、ならびにそれらの物理的混合物または化学的組合せが含まれ、これには、原子的にドープされた組合せが挙げられ、活性アルミナなどの高表面積化合物または活性化合物が挙げられる。
【0102】
高表面積の耐火性金属酸化物は、アルミナ、チタニア、ジルコニア;アルミナとチタニア、ジルコニアおよびセリアの内の1種または複数との混合物;アルミナ上にコーティングされたセリアまたはアルミナ上にコーティングされたチタニアを含む。耐火性金属酸化物は、酸化物または、混合酸化物、例えばシリカ-アルミナ、非晶質であっても結晶性であってもよいアルミノシリケート、アルミナ-ジルコニア、アルミナ-クロミア、アルミナ-セリア等を含有することができる。耐火性金属酸化物は、特にガンマアルミナ、シリカ-アルミナ、アルミナ上にコーティングされたセリア、アルミナ上にコーティングされたチタニア、またはアルミナ上にコーティングされたジルコニアである。
【0103】
シリカ-アルミナ、セリア-ジルコニア、プラセオジム-セリア、アルミナ-ジルコニア、アルミナ-セリア-ジルコニア、ランタナ-アルミナ、ランタナ-ジルコニア-アルミナ、バリア-アルミナ、バリア-ランタナ-アルミナ、バリア-ランタナ-ニオディユームアルミナおよびアルミナ-セリアなどの金属酸化物の組合せが含まれる。例示的なアルミナには、大細孔ベーマイト、ガンマ-アルミナ、およびデルタ/シータアルミナが含まれる。例示的な方法で出発材料として使用される有用な市販アルミナには、高嵩密度のガンマ-アルミナ、低嵩密度または中嵩密度の大細孔ガンマ-アルミナ、ならびに低嵩密度の大細孔ベーマイトおよび大細孔ガンマ-アルミナなどの活性アルミナが含まれる。
【0104】
「ガンマアルミナ」または「活性アルミナ」とも呼ばれるアルミナ支持体材料などの高表面積の金属酸化物支持体は、通常、60m2/gを超える、多くの場合、最大約200m2/gのまたはこれより高いBET表面積を呈する。例示的な耐熱性金属酸化物は、約50~約300m2/gの比表面積を有する高表面積のγ-アルミナを含む。このような活性アルミナは普通には、アルミナのガンマ相とデルタ相との混合物であるが、実質量のイータ、カッパおよびシータのアルミナ相を含有することもできる。「BET表面積」は、N2吸着測定によって表面積を決定するブルナウアー-エメット-テラー法を指すその普通の意味を有する。表示がない限り、「表面積」とはBET表面積を指す。望ましくは、活性アルミナは、約60~約350m2/g、例えば約90から約250m2/gまでの比表面積を有する。
【0105】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示のPGM含有触媒組成物において有用な金属酸化物支持体は、ドープされたアルミナ材料、例えば、Si-ドープのアルミナ材料(これに限定されないが1~10%SiO2-Al2O3を含めて)、
ドープされたチタニア材料、例えば、Si-ドープのチタニア材料(これに限定されないが1~10%SiO2-TiO2を含めて)、または、ドープされたジルコニア材料、例えば、Si-ドープのZrO2(これに限定されないが5~30%SiO2-ZrO2を含めて)である。有利には、耐火性金属酸化物は、ランタナ、バリア、酸化ストロンチウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、またはそれらの組合せなどのさらなる1種または複数の金属酸化物ドーパントでドープされてもよい。金属酸化物ドーパントは典型的には、トップ触媒層の質量に対して、約1~約20質量%の量で存在する。ドーパント金属酸化物は、例えば、初期湿潤含浸技術を使用して、またはコロイド状の混合酸化物粒子の用法を通して導入することができる。好ましいドーパント金属酸化物には、コロイド状のバリア-アルミナ、バリア-ジルコニア、バリア-チタニア、ジルコニア-アルミナ、バリア-ジルコニア-アルミナ、ランタナ-ジルコニア等が含まれる。
【0106】
したがって、触媒層に含まれる耐火性金属酸化物または耐火性混合金属酸化物は最も典型的には、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア、セリア、例えばバルクセリア、酸化マンガン、ジルコニア-アルミナ、セリア-ジルコニア、セリア-アルミナ、ランタナ-アルミナ、バリア-アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ、およびそれらの組合せからなる群から選択される。触媒層に含まれるこれらの耐火性金属酸化物は、バリア-アルミナ、バリア-ジルコニア、バリア-チタニア、ジルコニア-アルミナ、バリア-ジルコニア-アルミナ、ランタナ-ジルコニア等などの卑金属酸化物でさらにドープされていてもよい。
【0107】
触媒層または全コーティングは、上記の耐火性金属酸化物のいずれかをそして任意の量で含むことができる。例えば、触媒層に含まれる耐火性金属酸化物は、アルミナを、少なくとも約15wt.%、少なくとも約20wt.%、少なくとも約25wt.%、少なくとも約30wt.%または少なくとも約35wt.%(質量%)含むことができ、wt.%とは、触媒層の総乾燥質量に対してである。触媒層は、例えば、アルミナを約15から約95wt.%までまたはアルミナを約20から約85wt.%まで含むことができる。
【0108】
触媒層(または全コーティング)は、アルミナを、触媒層の質量に対して、例えば、約15wt.%、約20wt.%、約25wt.%、約30wt.%または約35wt.%から、約50wt.%、約55wt.%、約60wt.%、約65wt.%または約70wt.%まで含む。耐火性金属酸化物支持体は、基材に対して、例を挙げると、約0.5g/in3、約0.8g/in3または約1.0g/in3から、約2.0g/in3、約3.0g/in3、約4.0g/in3、約5.0g/in3または約6.0g/in3までの濃度で存在してもよい。有利には、トップ触媒層は、セリア、アルミナ、およびジルコニアを含むことができる。
【0109】
PGM含有触媒組成物のPGM成分は、例えば、可溶性前駆体(例えば、硝酸パラジウム)をその上に分散させることにより、耐火性金属酸化物支持体上に分散させることができる。あるいは、成分は、支持体上に分散されているのとは対照的に、直径わずか1~15ナノメートルまたはこれ未満の微粒子などの、組成物中の粒状形態で供給される。白金族金属成分の担持量は、基材に対して、約2g/ft3、約5g/ft3、約10g/ft3から約250g/ft3まで、例えば、約20g/ft3、約30g/ft3、約40g/ft3、約50g/ft3または約60g/ft3から、約100g/ft3、約150g/ft3または約200g/ft3までの範囲とすることができる。異なるコーティング層の白金族金属成分は同一でも異なっていてもよい。同様に、異なる層の白金族金属成分の量は同一でも異なっていてもよい。
【0110】
PGM成分は、例えば、層の質量に対して、約0.1wt.%、約0.5wt.%、約1.0wt.%、約1.5wt.%または約2.0wt.%から、約3wt.%、約5wt.%、約7wt.%、約9wt.%、約10wt.%、約12wt.%または約15wt.%まで、触媒層中に存在する。PGM成分は、またこれらのレベルでトップ触媒層およびボトム触媒層中に存在してもよい。
【0111】
さらなる触媒活性金属は、基材の総容積に対して、約3g/ft3、約4g/ft3、約5g/ft3、約6g/ft3、約7g/ft3、約8g/ft3、約9g/ft3または約10g/ft3から、約12g/ft3、約14g/ft3、約16g/ft3、約18g/ft3、約20g/ft3、約22g/ft3、約24g/ft3、約26g/ft3、約28g/ft3、約30g/ft3、約35g/ft3、約40g/ft3、約50g/ft3、約60g/ft3、約70g/ft3、約80g/ft3、約90g/ft3、または約100g/ft3まで、触媒組成物のいずれかに存在してもよい。さらなる触媒活性金属には、Cu、Fe、Mn、Mg、Co、およびNiが含まれる。一部の実施形態では、PGM組成物(および/またはPdおよびセリアモレキュラーシーブ組成物)はまた、HC吸着に適したモレキュラーシーブを含有することができる。一部の実施形態では、これらのモレキュラーシーブは、ベータゼオライトなどの大細孔モレキュラーシーブのH+形態から選択される。またFeBetaも適している。他の大細孔モレキュラーシーブは上に列記のもの、またZSM-12、SAPO-37等である。HC吸着に適したモレキュラーシーブは、上に本明細書に記載のセリア含有モレキュラーシーブのモレキュラーシーブと同一でも異なっていてもよい。
【0112】
HC吸着に適したモレキュラーシーブは、例を挙げると、多孔質モレキュラーシーブ粒子であり、モレキュラーシーブ粒子の90%超が1μm超の粒径を有する。一部の実施形態では、モレキュラーシーブの粒径は80ミクロン未満のd50を有する。一または複数の実施形態では、モレキュラーシーブ粒子は、80、70、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、または10ミクロン未満のd50を有する。一部の実施形態では、モレキュラーシーブの粒径は、50ミクロン未満のd50を有する。一部の実施形態では、モレキュラーシーブ粒子の95%超が1μm超の粒径を有し、より具体的な実施形態では、モレキュラーシーブ粒子の96%超が1μm超の粒径を有し、さらにより具体的な実施形態では、モレキュラーシーブ粒子成分は、1μm超の粒子約96%および2μm超の粒子約85%を含み、非常に具体的な実施形態では、モレキュラーシーブ粒子成分は、平均粒径の5μm以内で粒子約96%含み、そして、平均粒径は約5μm超である。一または複数の実施形態では、モレキュラーシーブ粒子成分は、約1μm~10μmの範囲の粒子96%含む。HC吸着に適したモレキュラーシーブについては、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2016/0136626号および米国特許第9,321,042号に開示されている。
【0113】
任意の炭化水素吸着材料は、有利にはゼオライトである。ゼオライトは天然または合成ゼオライトとすることができ、例えば、フォージャサイト、チャバザイト、クリノプチロライト、モルデナイト、シリカライト、ゼオライトX、ゼオライトY、超安定ゼオライトY、ZSM-5ゼオライト、オフレタイト、またはベータゼオライトとすることができる。ゼオライト吸着材は、シリカとアルミナとの比が高くてもよい。ゼオライトは、少なくとも約5:1、好ましくは少なくとも約50:1からのシリカ/アルミナモル比を有することができるが、有用な範囲は、約5:1から1000:1まで、50:1から500:1まで、ならびに約25:1から300:1までである。適切なゼオライトには、ZSM、Yゼオライトおよびベータゼオライトが含まれる。HC吸着剤は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,171,556号に開示されたタイプのベータゼオライトを含むことができる。
【0114】
触媒製品
本開示は、1種または複数の触媒製品を提供し、各触媒製品は、その上に配置された1種または複数の触媒組成物(すなわち、本明細書に開示のモレキュラーシーブを含む触媒組成物)を有する基材を含む。用語「基材」とは全体として、その上に触媒コーティングが配置されるモノリシック材料を、例えば、フロースルーモノリスまたはモノリシック壁流フィルタを、指す。フロースルー基材および壁流基材はまた、例えば、参照により本明細書に組み入れられる、国際特許出願公開第WO2016/070090号にも教示されている。
【0115】
一または複数の実施形態では、基材は、ハニカム構造を有するセラミックまたは金属である。通路が流体流動に対して開いているように、基材の入口端から出口端まで延伸している微細で平行なガス流路を有するタイプのモノリシック基材など、適切な任意の基材を用いることができる。通路の流体入口から通路流体出口まで本質的に直線の経路である通路は、通路を通って流れるガスが触媒材料に接触するように、その上に触媒コーティングが配置されている壁によって規定される。モノリシック基材の流路は薄壁チャンネルであり、これは、台形、長方形、正方形、正弦形、六角形、楕円形、円形等などの、適切な任意の断面形状および大きさとすることができる。かかる構造物は、ガス入口開口部(すなわちセル)毎断面の1平方インチを、約60から約900までまたはこれより多く含有することができる。
【0116】
本発明の基材は、円柱と同様に、長さ、直径、および容積を有する3次元である。形状は円柱に一致させる必要は必ずしもない。長さは、入口端と出口端とによって規定される軸長である。本開示のコーティングは、壁面上におよび/または壁の孔内にあるとすることができ、すなわちフィルタ壁の「中」におよび/または「上」にあるとすることができる。したがって、表現「その上に触媒コーティングを有する」とは、任意の面上、例えば壁面上および/または孔の面上を意味する。
【0117】
一または複数の実施形態によれば、触媒製品の基材は、自動車用触媒を製造するのに典型的に使用される任意の材料から構築することができ、金属のまたはセラミックのモノリシックハニカム構造を典型的には含む。その上に、本明細書に記載の触媒組成物を含むウォッシュコートが適用および付着されている複数の壁面を、基材(例えば、壁流フィルタまたはフロースルー基材)が典型的には提供しており、その結果、触媒組成物向けの担体として働く。
【0118】
例示的な金属基材には、チタンおよびステンレス鋼などの耐熱性金属および金属合金、ならびに鉄が実質的成分または主成分である他の合金が含まれる。金属基材の具体例には、耐熱性の卑金属合金、特に鉄が実質的成分または主成分であるものが含まれる。そのような合金は、ニッケル、クロム、およびアルミニウムの内の1種または複数を含有することができ、これらの金属の合計は、合金を少なくとも約15wt.%(質量%)、例を挙げると、クロムを約10~約25wt.%、アルミニウムを約1~約8wt.%、およびニッケルを0から約20wt.%まで、含むのが有利とすることができる。合金はまた、マンガン、銅、バナジウム、チタン等などの、1種または複数の他の金属を少量またはわずかな量で含有することができる。壁流金属基材の表面は、例えば1000℃以上の高温で酸化して、基材の表面上に酸化物層を形成することが可能で、その結果、合金の耐食性が改善され、金属面へのウォッシュコート層の付着が促進される。金属基材は、ペレット、波形シートまたはモノリシック発泡体などの種々の形状で用いることができる。
【0119】
本開示の基材を構築するのに使用されるセラミック材料としては、適切な任意の耐火材料、例えばコーディエライト、ムライト、コーディエライト-αアルミナ、チタン酸アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコンムライト、スポジュメン、アルミナ-シリカマグネシア、ジルコンシリケート、シリマナイト、ケイ酸マグネシウム、ジルコン、ペタライト、αアルミナ、アルミノケイ酸塩等を挙げることができる。代替の実施形態では、1種または複数の触媒組成物を連続気泡発泡体の基材上に堆積させることができる。こういった基材は当技術分野においてよく知られており、そして耐火セラミック材料または耐火金属材料から典型的には形成される。通路が流体流動に対して開いているように、基材の入口面から出口面まで延伸している複数の微細で平行なガス流路を有するモノリシックのフロースルー基材など、適切な任意の基材を用いることができる。例示的なモノリシックフロースルー基材は、例えば、容積を約20in3から約1200in3まで有する。入口から出口まで本質的に直線の経路である通路は、通路を通って流れるガスが触媒材料に接触するように、その上に触媒材料がウォッシュコートとしてコーティングされている壁によって規定される。モノリシック基材の流路は薄壁チャンネルであり、これは、台形、長方形、正方形、正弦形、六角形、楕円形、円形等などの、適切な任意の断面形状とすることができる。かかる構造物は、ガス入口開口部(すなわち「セル」)毎断面の1平方インチ(cpsi)を、約60から約1200までまたはこれより多く、含有することができ、例えば、約60cpsiから約500cpsiまたは約900cpsiまで、より普通には約200から約400cpsiまでまたは約300から約600cpsiまで含有することができる。フロースルー基材の壁厚は様々とすることができ、典型的な範囲は0.002から0.1インチの間、または約50から約200ミクロンまたは約400ミクロンの間である。代表的な市販のフロースルー基材は、400cpsiで壁厚6mil、または600cpsiで壁厚4milを有するコーディエライト基材である。しかし、本発明は特定の基材タイプ、材料、または形状に限定されないことが理解されるであろう。
【0120】
図1aおよび
図1bに、本明細書に記載のウォッシュコート組成物でコーティングされたフロースルー基材の形態にある例示的な基材2を例示する。
図1aを参照すると、例示的な基材2は、円筒形状、円筒形の外表面4、上流端面6、および端面6と同一の相応する下流端面8を有する。基材2は、その中に形成されている、複数の微細で平行なガス流路10を有する。
図1bに見られるように、流路10は、壁12によって形成され、基材2を通して上流端面6から下流端面8まで延伸し、そして、流路10は遮るものがなく、したがって、流体が、例えば、ガス流が、基材2のガス流路10を介して基材2を通して縦方向に流れることを可能にしている。
図1bでより容易に分かるように、壁12は、ガス流路10が実質的に規則的な多角形の形状を有するように寸法決めされ、構成されている。示してあるように、ウォッシュコート組成物は、所望であれば、多重の異なる層で適用することができる。例示の実施形態では、ウォッシュコートは、基材部材の壁12に付着された別個の第1のウォッシュコート層14と、第1のウォッシュコート層14の上にコーティングされた第2の別個のウォッシュコート層16とからなる。本発明は、1層または複数(例えば、2、3、または4)のウォッシュコート層で実施することができ、例示の2層の実施形態に限定されない。
【0121】
例えば、一実施形態では、触媒製品は、多重の層を有する触媒材料を含み、各層は異なる組成物を有する。触媒材料の層の順序は、触媒製品の触媒活性に重大な影響を与えることができる。例えば、一部の実施形態では、第1の層(例えば、
図2の層14)は本明細書に開示の触媒組成物を含み、第2の層(例えば、
図2の層16)はPGM含有触媒組成物を含む。
【0122】
代替の実施形態では、基材は壁流基材であってもよく、各通路は基材本体の一端で非多孔質プラグによってブロックされ、交互の通路が反対側の端面でブロックされ、例えば触媒化煤煙フィルタ(CSF)を生じる。触媒コーティングを担持するのに有用な壁流フィルタ基材は、基材の縦軸に沿って延伸している複数の微細で実質的に平行なガス流路を有する。壁流基材を利用すると、結果として生じるシステムによって、ガス状汚染物質とともに粒子状物質を除去することができることになる。これには、ガスが壁流基材の多孔質壁を通って流れて出口に到達することが必要である。そのようなモノリシック基材は、約100~400cpsi、約100~300cpsi、より典型的には約200~約300cpsiなどの、最大約700のまたはそれより多いcpsiを含有することができる。セルの断面形状は、上記の通り、様々とすることができる(例えば、長方形、正方形、円、楕円、三角形、六角形である、または、その他の多角形形状である断面を有する)。壁流基材は、壁厚を0.002から0.1インチの間で典型的には有する(例えば、約50ミクロンから約500ミクロンまで、例えば約150ミクロンから約400ミクロンまでの壁厚)。壁流フィルタは全体として、触媒コーティングを配置する前に、少なくとも40%の壁空隙率を有し、少なくとも10ミクロンの平均孔径を有する。例を挙げると、壁流フィルタは、触媒コーティングを配置する前に、約50から約75%までの壁空隙率および平均孔径を約10から約30ミクロンまでの平均孔径を有することができる。
【0123】
代表的な市販の壁流基材は、多孔質コーディエライトから構成されており、その例は200cpsiで壁厚10milまたは300cpsiで壁厚8milを有し、壁空隙率45~65%の間を有する。チタン酸アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などのその他のセラミック材料も壁流フィルタ基材として使用される。しかし、本発明は特定の基材タイプ、材料、または形状に限定されないことが理解されるであろう。基材が壁流基材である場合は、触媒組成物は、壁の表面上に配置されることに加えて、多孔質壁の孔構造中に浸透することができる(すなわち、開孔を部分的にまたは完全に塞いでいる)ことに留意されたい。壁流基材上での触媒コーティングの担持量は、空隙率および壁の厚さなどの基材の特性に左右され、典型的には、フロースルー基材上への触媒担持量よりも少ないことになる。
【0124】
壁流フィルタおよび壁流フィルタセクションを、それぞれ、
図1cおよび
図1dに示す。
図1cに示された壁流フィルタは、軸長Lおよび直径Dを有する。交互のブロックされた(「閉塞された」)通路は、
図1cのチェッカーボード面のパターンで見られる。交互に塞がれた通路および開いた通路(セル)は、
図1dの壁流フィルタのセクションの断面図に見られる。ブロックされたまたは閉塞された端100は、開いた通路101と交互であり、反対側の各端はそれぞれ開いている、そしてブロックされている。フィルタは入口端102と出口端103とを有する。多孔質セル壁104を横切る矢印は、開いているセル端に入り、多孔質セル壁104を通って拡散し、開いている出口セル端を出る排気ガス流を表す。塞がれた端100は、ガス流を妨げ、細胞壁を通る拡散を促進する。各セルの壁は、入口側104aと出口側104bを有することになる。通路はセルの壁に囲まれている。
図1cの暗い四角は閉塞された端100であり、白い四角は開いている端101である。
【0125】
触媒化壁流フィルタは、例を挙げると、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,229,597号に開示されている。この文献には、コーティングが多孔質壁を浸透するように、すなわち壁全体にわたって分散されるように触媒コーティングを適用する方法が教示されている。触媒材料は、要素である壁の入口側に単独で存在しても、出口側に単独で存在しても、入口と出口側の両方に存在してもよく、または壁はそれ自体、全てがまたは部分的に触媒材料からなっていてもよい。本発明は、要素の入口壁および/または出口壁上の触媒材料の1層または複数の層を使用することを含む。
【0126】
有利には、本明細書に開示の触媒組成物は、多層触媒コーティングで存在する。例えば、Pdおよびセリアモレキュラーシーブ組成物は、基材の上のボトムコーティング層に存在するのが有利である。有利には、トップコーティング層は、ボトムコーティング層の上に存在し、トップコーティング層は、例えば、上に本明細書で参照のPGM組成物を含む。一部の実施形態では、ボトムコーティング層は、本明細書に記載のPGM組成物を含むことができる。
【0127】
触媒層は、ランタン、バリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ストロンチウム、カルシウム、マグネシウム、ニオブ、ハフニウム、ガドリニウム、マンガン、鉄、スズ、亜鉛または銅の酸化物のいずれか1種または組合せをさらに含むことができる。
【0128】
触媒コーティングは、例えば、トップ層とボトム層とを含む。コーティングは、基材上に配置され、これに付着している。全体のコーティングは、個別の「コーティング層」を含む。任意の1つの層は、基材の軸長全体を延伸してもよく、例を挙げると、ボトム層は基材の軸長全体を延伸してもよく、トップ層は、ボトム層の上で基材の軸長全体を延伸してもよい。
【0129】
あるいは、トップ層がボトム層の一部を覆ってもよい。例えば、ボトム層は、基材の全長を延伸し、トップ層は、入口端または出口端のいずれかから、基材長の約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%または約90%延伸してもよい。
【0130】
あるいは、ボトム層は、入口端または出口端のいずれかから、基材長の約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%または約95%延伸してもよく、および、トップ層は、入口端または出口端のいずれかから、基材の軸長の、約10%、約15%、約25%、約30%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%または約95%延伸してもよく、トップ層の少なくとも一部がボトム層を覆っている。この「覆われている」ゾーンは、例えば、基材長の約5%から約80%まで、例えば、基材長の、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%または約70%延伸してもよい。
【0131】
例えば、ボトムコーティング層とトップコーティング層との両方が同じ基材端から延伸してもよく、この場合、トップ層はボトム層を部分的または完全に覆い、ボトム層は基材の部分長または完全長に延伸し、トップ層は基材の部分長または完全長に延伸している。同様に、ボトムコーティング層およびトップコーティング層は、基材の反対側の端から延伸してもよく、この場合、トップ層はボトム層を部分的または完全に覆い、ボトム層は基材の部分長または完全長に延伸し、トップ層は基材の部分長または完全長に延伸している。トップ層およびボトム層のそれぞれは、入口端または出口端のいずれかから延伸してもよい。
【0132】
トップコーティング層および/またはボトムコーティング層は、基材と直接接触していてもよい。あるいは、1つまたは複数の「アンダーコート」が存在してもよく、その結果、トップコーティング層および/またはボトムコーティング層の少なくとも一部は、基材と直接接触していない(それよりもアンダーコートと接触している)。1つまたは複数の「オーバーコート」も存在してよく、その結果、トップコーティング層および/またはボトムコーティング層の少なくとも一部がガス流または大気に直接晒されない(それよりもオーバーコートと接触している)。
【0133】
トップコーティング層およびボトムコーティング層は、その間のいかなる層または「中間層」も挟まずに、互いに直接接触していてもよい。中間層が存在する場合、それにより、トップ層とボトム層とが直接接触しないようにすることができる。中間層によって、トップ層とボトム層とが直接接触しないように部分的にすることができ、それによりトップ層とボトム層との間の部分的な直接の接触が可能となる。
【0134】
アンダーコートとはコーティング層の「下」にある層であり、オーバーコートとはコーティング層の「上」にある層であり、中間層とは2つのコーティング層の「間」にある層である。コーティング層に関連して用語「~上」および「~の上」は、同義に使用することができる。用語「上に直接」とは、直接の接触にあることを意味する。中間層、アンダーコートおよびオーバーコートは、1種または複数の触媒を含有してもよく、触媒を含まなくてもよい。
【0135】
本発明の触媒コーティングは、複数の同一の層を含むことができ、例を挙げると、同一の触媒組成物を含有する複数の層を含むことができる。
【0136】
図2aおよび
図2bに、2つのコーティング層を有する可能な一部のコーティング層構成を示す。その上にコーティング層201(トップコート)および202(ボトムコート)が配置されている基材壁200を示す。これは簡略化された例示であり、多孔質壁流基材の場合では、孔および孔壁に付着するコーティングは示されておらず、閉塞された端は示されていない。
図2aでは、ボトムコーティング層202は出口から基材長の約50%延伸し、トップコーティング層201は入口から基材長の50%超で延伸し、層202の一部を覆い、上流ゾーン203、中間ゾーン205および下流ゾーン204を提供する。
図2bでは、コーティング層201および202それぞれは、基材の全長を延伸しており、トップ層201がボトム層202を覆っている。
図2bの基材はゾーンコーティング構成を含有しない。
図2aおよび
図2bは、ウオールスルー基材またはフロースルー基材上のコーティング組成物を例示するのに役立つかもしれない。
【0137】
本発明の触媒コーティング、ならびにコーティングの任意のゾーンまたは任意の層または任意のセクションは、基材に対して、例を挙げると、約0.3g/in3から約6.0g/in3まで、または約0.4g/in3、約0.5g/in3、約0.6g/in3、約0.7g/in3、約0.8g/in3、約0.9g/in3または約1.0g/in3から、約1.5g/in3、約2.0g/in3、約2.5g/in3、約3.0g/in3、約3.5g/in3、約4.0g/in3、約4.5g/in3、約5.0g/in3または約5.5g/in3までの担持量(濃度)で基材上に存在する。これは、基材の容積あたりの、例えば、ハニカムモノリスの容積あたりの、乾燥固形分質量を指す。濃度は、基材の断面にまたは基材全体に基づいている。
【0138】
一部の実施形態では、トップコーティング層はボトムコーティング層よりも低い担持量で存在する。一部の実施形態では、ボトム層は、耐火性金属酸化物支持体をほとんどまたは全く含有しない、すなわち、ボトム層は、耐火性金属酸化物支持体を実質的に含まない。一部の実施形態では、トップ層はモレキュラーシーブをほとんどまたは全く含有しない、すなわち、トップ層はモレキュラーシーブを実質的に含まない。
【0139】
本触媒組成物は、単独で、または1種または複数のさらなる触媒組成物と一緒に(例えば、混ぜ合わせで)使用することができる。
【0140】
内燃機関の排気を処理するのに使用される触媒は、エンジン運転の初期コールドスタート期間など、比較的低温の運転期間中は効果が低い。なぜなら、排気中に含まれる有害な成分を効率的に触媒転換することにとってエンジン排気が十分に高い温度にないからである。この目的のため、モレキュラーシーブとし得る、例えばゼオライトとし得る吸着材料を、ガス状汚染物質、普通は炭化水素を吸着し、初期コールドスタート期間中にこれらを保持するために、触媒組成物の一部として提供することができる。排気ガスの温度が上昇すると、吸着された炭化水素が吸着剤から追い出され、高温で触媒処理が行われる。
【0141】
本発明の触媒製品は有利には、少なくとも実質的に硫黄耐性であり、したがって、高温脱硫酸化プロセスは、触媒コーティングを損傷することなく繰り返し行うことができる。
【0142】
触媒製品の作製方法
触媒組成物は典型的には、上記のように触媒粒子の形態で製造される。こういった触媒粒子を水と混合して、ハニカム型基材などの基材をコーティングする目的でスラリーを形成することができる。触媒コーティングは、活性触媒種を含有する1種または複数の担体を含有する。触媒コーティングは典型的には、その上に触媒活性種を有する担体を含有するウォッシュコートの形態で適用することができる。ウォッシュコートは、液体ビヒクル中に、規定の固形分含量(例えば、10~60質量%)の担体を含有するスラリーを製造することによって形成される。次いで、このスラリーを基材上にコーティングし、乾燥しそして焼成してコーティング層を提供する。多重のコーティング層を適用する場合、各層を適用後におよび/または所望の多重層の数を適用後に、基材を乾燥しそして焼成する。
【0143】
触媒粒子に加えて、スラリーは、アルミナ、セリア、シリカ、酢酸Zr、コロイド状ジルコニア、またはZrヒドロキシドの形態のバインダー、会合性増粘剤、および/または界面活性剤(アニオン性、カチオン性、非イオン性または両性界面活性剤を含めて)を任意に含有することができる。例えば、モレキュラーシーブ含有コーティングは、酢酸ジルコニルなどの適切な前駆体または硝酸ジルコニルなどの他の適切な任意のジルコニウム前駆体に由来するZrO2バインダーなどのバインダーを使用して製造することができる。例えば、触媒を少なくとも約600℃、例えば約800℃以上の高温、および約10%以上の高水蒸気環境に曝露する場合、酢酸ジルコニルバインダーによって、例えば、一部の実施形態では、熱エージング後に均質で無傷のままであり得る触媒コーティングがもたらされる。アルミナバインダーには、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、およびオキシ水酸化アルミニウムが含まれる。アルミニウム塩およびアルミナのコロイド形態も使用することができる。シリカバインダーにはコロイダルシリカを含めて、種々の形態のSiO2が含まれる。バインダー組成物は、前述の任意の組合せを含むことができる。他の例示的なバインダーには、ベーマイト、ガンマ-アルミナ、またはデルタ/シータアルミナ、ならびにシリカゾルが含まれる。存在する場合、バインダーは典型的には、総ウォッシュコート担持量の約1~5wt.%の量で使用される。スラリーへ酸性種または塩基性種を添加して、適宜、pHを調整することができる。例えば、一部の実施形態では、スラリーのpHは、水酸化アンモニウムまたは硝酸水溶液の添加によって調整される。スラリーの典型的なpH範囲は約3~6である。
【0144】
スラリーを粉砕して粒径を小さくし、粒子混合を促進することができる。粉砕は、ボールミル、連続ミル、または他の類似の装置で行うことができ、スラリーの固形分含量は、例えば、約20~60wt.%、より詳細には約20~40wt.%とすることができる。一実施形態では、粉砕後のスラリーは、約10~約40ミクロン、好ましくは10~約30ミクロン、より好ましくは約10~約15ミクロンのD90粒径の特徴を有する。D90は、専用の粒度分析器を使用して決定される。装置は、2010年のSympatec社製であり、レーザー回折を使用して小容積スラリー中の粒径を測定する。通常、ミクロンの単位を有するD90とは、数で粒子の90%が引用符付きの値より小さい直径を有することを意味する。
【0145】
当技術分野で知られている任意のウォッシュコート技術を使用してスラリーを基材上にコーティングする。一実施形態では、基材をスラリーに1回または複数回浸漬するか、そうでなければスラリーでコーティングする。その後、コーティング基材を、高温(例えば、100~150℃)で一定時間(例えば、10分~約3時間)乾燥し、次いで例えば、400~600℃で、通常には約10分~約3時間の間、加熱することにより焼成する。乾燥および焼成後に、最終ウォッシュコートコーティング層は本質的に無溶媒であるとみなすことができる。
【0146】
焼成後、上記のウォッシュコート技術によって得られた触媒担持量は、基材のコーティング質量と未コーティング質量との差を計算することによって決定することができる。当業者であれば明らかなように、触媒担持量はスラリーレオロジーを変えることによって改変することができる。加えて、ウォッシュコートを生成するコーティング/乾燥/焼成プロセスは、所望の担持量レベルまたは厚さにコーティングを構築するために必要に応じて繰り返すことができ、したがって、複数のウォッシュコートが適用可能であることを意味する。触媒組成物は、上で説明したように各層が異なる組成物を有する状態で、多重の層で適用することができる(例えば、
図1aの層14および16)。
【0147】
具体的には、Pdおよびセリアモレキュラーシーブ組成物のモレキュラーシーブは、粉末の形態で提供されてもよく、または噴霧乾燥材料を適切な調整剤と混ぜ合わせるかまたはそれでコーティングする。調整剤には、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアおよび耐火性金属酸化物の各バインダー(例えば、酢酸ジルコニルなどの適切な前駆体または硝酸ジルコニルなどの他の任意の適切なジルコニウム前駆体から誘導されるZrO2バインダー)がある。任意によるが適切な調整剤による混ぜ合わせまたはコーティングの後に、粉末または噴霧材料を例えば水とともにスラリーに形成することができ、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Bullらに付与された米国特許第8,404,203号に開示の通り、このスラリーを基材上に堆積させる。
【0148】
触媒組成物は、基材の容積に対して、約0.05g/in3、約0.1g/in3、約0.2g/in3、約0.3g/in3、約0.4g/in3、約0.5g/in3、約0.6g/in3、約0.7g/in3、約0.8g/in3、約0.9g/in3、約1.0g/in3、約1.2g/in3、約1.6g/in3、約2.0g/in3、約2.2g/in3または約2.5g/in3から、約2.8g/in3、約3.0g/in3、約3.2g/in3、約3.5g/in3、約3.8g/in3、約4.0g/in3、約4.5g/in3、約5.0g/in3、約5.5g/in3、約6.0g/in3、約6.5g/in3、または約7.0g/in3まで、存在してもよい。
【0149】
排出処理システム
本発明はまた、排気ガス流を生じるエンジンと、排気ガス流で流体連通するエンジンから下流に位置決めされた本発明の触媒製品とを、概して含む排出処理システムなどの、本明細書に記載の触媒製品が組み込まれている排出処理システムも提供する。エンジンは、例えば、空気が化学量論的燃焼に必要な空気を上回っている状態、すなわち、リーン条件にある燃焼条件で運転する、ディーゼルエンジンとすることができる。他の実施形態では、エンジンは固定発生源(例えば、発電所またはポンプ場)に関連するエンジンとすることができる。一部の実施形態では、排出処理システムは、1種または複数のさらなる触媒成分をさらに含む。排出処理システム内に存在する種々の触媒成分の相対的配置については、様々とすることができる。
【0150】
本開示のシステムは、例えば、ディーゼル酸化触媒(DOC)と、還元剤インジェクター、選択接触還元触媒(SCR)、煤煙フィルタ、アンモニア酸化触媒(AMOx)またはリーンNOxトラップ(LNT)を含有する1つまたは複数の製品とを含有することができる。還元剤インジェクターを含有する製品は還元製品である。還元システムは、還元剤注入器および/またはポンプおよび/またはリザーバ等を含む。本発明の処理システムは、選択接触還元触媒および/または煤煙フィルタおよび/またはアンモニア酸化触媒をさらに含むことができる。煤煙フィルタは、触媒化されていなくても、触媒化されていてもよい(CSF)。例を挙げると、一実施形態では、本開示は、上流から下流まで、DOCを含有する製品と、CSFと、尿素インジェクターと、SCR製品とAMOxを含有する製品とを含む、排出処理システムを提供する。リーンNOxトラップ(LNT)もオプションで含めることができる。
【0151】
冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、本明細書では、文法的対象語の内の1つまたは2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指す。本明細書に記載されるいずれの範囲も、包括的である。全体を通して使用される用語「約」とは、小規模な変動を記載および説明するために使用される。例を挙げると、「約」とは、±5%、±4%、±3%、±2%、±1%、±0.5%、±0.4%、±0.3%、±0.2%、±0.1%または±0.05%だけ修飾が可能な数値を意味することができる。あらゆる数値が用語「約」によって、明示的に示されているか否かに関わらず、修飾されている。用語「約」によって修飾されている数値は、特定の指示された値を含む。例えば、「約5.0」は5.0を含む。
【0152】
特に明記しない限り、全ての部とパーセントは質量によるものである。質量パーセント(wt.%)は、特に明記しない限り、なんら揮発性物質を含まない全体の組成に基づいている、すなわち、乾燥固形分含量に基づいている。本明細書に引用される全ての米国特許出願、公開特許出願および特許は、参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0153】
実施例1:触媒粉末試料
粉末試料1:ゼオライト上のPd
標準H+形態のチャバザイトに、初期湿潤手順を使用して、硝酸Pd溶液(19.8wt.%)を含浸させた。目標のPd濃度は、Pdチャバザイトの質量に対して2質量パーセントとした。
【0154】
Pd含浸ゼオライトを脱イオン水と混合して、30質量パーセントの目標固形分含量を有するスラリーを形成した。硝酸の添加により、スラリーのpHを4~4.5に低下させた。次いで、スラリーを、ボールミルを使用して15μm未満のD90の粒径に粉砕した。粉砕したスラリーを攪拌しながら120時間乾燥し、空気中500℃で2時間焼成した。焼成試料は、室温に達するまで空気中で冷却した。焼成粉末を圧砕し、250~500μmの粒径にふるい分けした。
【0155】
粉末試料2:セリア上のPd
高表面積セリア(>100m2/g)に、標準的な初期湿潤手順を使用して、硝酸Pd溶液(19.8質量%)を含浸させた。ゼオライトの目標Pd濃度は、全組成に対して2質量パーセントとした。
【0156】
Pd含浸セリアを脱イオン水と混合して、30質量パーセントの目標固形分含量を有するスラリーを形成した。硝酸の添加により、スラリーのpHを4~4.5に低下させた。次いで、スラリーを、ボールミルを使用して15μm未満のD90の粒径に粉砕した。粉砕したスラリーを攪拌しながら120時間乾燥し、空気中500℃で2時間焼成した。焼成試料は、室温に達するまで空気中で冷却した。焼成粉末を圧砕し、250~500μmの粒径にふるい分けした。
【0157】
粉末試料3:セリア/チャバザイト上のPd
標準H+形態チャバザイトに、標準的な初期湿潤手順を使用して、10%での目標セリア担持量へと、硝酸セリウム溶液を含浸させた。500℃で1時間乾燥した後、標準的な初期湿潤手順を使用して、Pdを、コーティング支持体の2質量パーセントの目標Pd濃度に含浸させた。
【0158】
Pd含浸Ce/ゼオライトを脱イオン水と混合して、30質量パーセントの目標固形分含量を有するスラリーを形成した。硝酸の添加により、スラリーのpHを4~4.5に低下させた。次いで、スラリーを、ボールミルを使用して15μm未満のD90を有する粒径に粉砕した。粉砕したスラリーを攪拌しながら120時間乾燥し、空気中500℃で2時間焼成した。焼成試料は、室温まで空気中で冷却した。これを試料3とした。焼成粉末を圧砕し、250~500μmの粒径にふるい分けした。
【0159】
粉末試料4:セリア/ZSM-5上のPd
小開孔8員環チャバザイトから中サイズ開孔10員環H-ZSM-5にゼオライトを変更して、粉末試料3を繰り返した。
【0160】
粉末試料5:セリア/ベータ上のPd
小開孔8員環チャバザイトから大サイズ開孔12員環H-ベータにゼオライトを変更して、粉末試料3を繰り返した。
【0161】
粉末試料6:20%セリア/ベータ上のPd
粉末試料5を繰り返した、この場合、セリア担持量を10wt.%から20wt.%に増加した。
【0162】
粉末試料7:10%セリア/3%Cuチャバザイト上のPd
粉末試料3を繰り返した、この場合、チャバザイトはイオン交換型Cuを3%含有した。
【0163】
粉末試料1~7を下にまとめる(全てPdを2wt.%含有する)。
【0164】
【0165】
粉末試料の触媒活性
粉末触媒の性能は、48倍のハイスループット粉末試験ユニットを使用して測定した。粒径250~500μmを有する粉末触媒を、COを700ppm、HCを420ppm(C1比として2/1である、プロペン80ppm、デカン340ppm/トルエンの混合物)、NOを70ppm、O2を10容積%、CO2を10容積%および水を5容積%(残部N2)含有するフィードガスを使用して、そのCO酸化性能およびHC酸化性能について試験した。GHSVを45,000h-1とした。125~350℃の温度範囲での定常試験を、48の反応装置それぞれにガス混合物を通流させることによって実施した。各温度で、および各反応装置について、測定時間には、3分の平衡時間+30秒のサンプリング時間を含めた。
【0166】
フレッシュ触媒および既使用の触媒の性能の尺度として、CO(T50_CO)およびHC(T70_HC)のライトオフ温度を決定した。既使用の条件は、10%蒸気/空気中で800℃で20時間とした。
【0167】
図3は、セリア粉末上のPdによって低温CO酸化に対して良好な触媒がもたらされたことを示している。しかし、セリア粉末上のPdは、硫黄の曝露後、特にさらなる高温でのエクスカーション後に劣化した。そのような劣化を防ぐうえで、たとえあったとしても、成功したことはほとんどなかった。本発明では、チャバザイトなどの小細孔ゼオライトなどの硫黄耐性の支持体を組み込むことにより、劣化を最小限に抑える方法を開示する。
【0168】
図4は、ライトオフの結果を含有するが、Pd/Ce/CHA粉末によって、Pd/Ce化合物で観察される硫黄による被毒に対して独特の特性が提供されることを明確に示す。劣化ではなくて、脱硫手順によりCOライトオフ性能が改善された。同様に、他の小~中開孔ゼオライトによっても、そのような独特の特性が提供された。例えば、
図6のCHAとZSM-5とを比較すると、ZSM-5、10員環中開孔ゼオライトによって、CHAと同様の硫黄耐性が提供されたことがわかる。
【0169】
図5に、ライトオフの結果を含有するが、硫黄曝露前後のCOライトオフに関してセリア粉末上のPdとPd/CHA粉末との間の比較を提供した。Pd/CHA粉末およびセリア粉末上のPdの両方によって示されたことは、硫酸化および脱硫酸化後のCOライトオフ性能の不完全な回復である。
【0170】
図7には、ベータなどの大開孔ゼオライトを使用しても、硫黄は既使用の触媒の性能にたいして最小限の影響を及ぼすのだが、必要なCOライトオフ性能が得られなかったことが示されている。650℃での脱硫酸化によって、性能はさらに劣化することはかった。
【0171】
図8に示す通り、セリア含有量を10%から20%までに増加すると、フレッシュのCOライトオフ性能が改善された。しかし、これは、硫黄曝露後に低下し、脱硫酸化後に回復しなかった。
【0172】
CuCHAは非常に良好なSCR触媒であるので、この触媒をPd/Ce触媒の支持体として使用して試験を実施した。
図9に示す通り、COライトオフ結果は、Cuによってライトオフ性能が損なわれたことを指摘している。
【0173】
実施例2:触媒コーティング
コーティングされたハニカムコアを製造した。用いたハニカムコアは、約400セル毎1平方インチのセル密度を有し、長さ3“および直径1”であった。
【0174】
比較コーティング1:2層触媒コーティング組成物
PdおよびPtを含むボトムコーティング層を製造した。硝酸Pd溶液をアルミナ粉末上に含浸させた。この含浸粉末に水酸化バリウムを添加した。粉末は、水中のスラリーとして用意した。Pt-アミン溶液をスラリーに添加し、希硝酸でpHを4.5~5に調整した。スラリーを粉砕して、38~40%の固形分濃度および約20ミクロンのD90での粒度分布を有するウォッシュコートスラリーを用意した。
【0175】
ウォッシュコートスラリーをハニカムコアに適用して、ボトムコーティング層を形成した。コーティングされたコアを120℃で4時間乾燥させ、500℃で1時間焼成した。結果として得られるコアは、Pt/Pd比が約3:4で、22g/ft3の貴金属担持量を有した。
【0176】
トップコートは、Mn含有アルミナ(5wt.%のMn)を脱イオン水に添加して、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2015/0165422号に開示のスラリーを形成することにより製造した。Pt-アミン溶液をスラリーに添加した。希硝酸をスラリーに添加して、pHを4.5~5に下げた。スラリーを粉砕して、約20ミクロンのD90の粒径を有するウォッシュコートスラリーを形成した。H-ベータ粉末を粉砕したスラリーに添加した。ブレンド後、最終ウォッシュコートは約38%の固形分濃度を有した。
【0177】
ウォッシュコートを、上のボトム層-コーティングのハニカムコアに適用した。コーティングされたコアを120℃で4時間乾燥させ、500℃で1時間焼成して、Ptについてさらなる28g/ft3を含む最終触媒配合物がもたらされた。総触媒コーティング担持量は約2.5g/in3で、そのうち0.35g/in3はゼオライトベータである。コーティングは50g/ft3のPGM担持量および3/1のPt/Pd比を有した。
【0178】
比較コーティング2:3層触媒コーティング組成物
非PGMボトムコーティング層を製造した。ウォッシュコートスラリーは、Ce-Al粉末(50/50wt.%)およびアルミナで、ならびに酢酸ジルコニウムバインダーで製造した。ウォッシュコートをハニカムコアに適用した。コーティングされたコア試料を120℃で4時間乾燥し、500℃で1時間焼成して、約1.5g/in3のコーティング担持量がもたらされた。
【0179】
Pt/Pdを含む第2の層(中間コート)を製造した。硝酸PdをMnコーティングアルミナ(5wt.%のMn)上に含浸させた。含浸粉末を、水酸化バリウムで安定化し、コロイド状Pt液体に添加した。このスラリーを粉砕して、約37%の固形分濃度および約20ミクロンのD90を有するウォッシュコートスラリーを用意した。
【0180】
ウォッシュコートスラリーをコーティングされたハニカムコアに適用した。コア試料を120℃で4時間乾燥し、500℃で1時間焼成した。結果として得られるコアは、35.6g/ft3のPGM担持量を有し、20:15.6のPt/Pd分布および1.8g/in3のコーティング担持量であった。
【0181】
Pt/Pd層を含むトップコーティング層を製造した。ミドルコートと同様に、硝酸PdをMnコーティングアルミナ(5wt.%のMn)上に含浸させた。含浸粉末を、水酸化バリウムで安定化し、米国特許公開第2014/0044627号に開示のコロイド状Pt液体に添加した。このスラリーを粉砕し、ゼオライトベータを添加して、約35%の固形分濃度を有するウォッシュコートスラリーおよび15~20ミクロンの間のD90のウォッシュコートスラリーを用意した。
【0182】
ウォッシュコートを、ボトムコートとミドルコートとを有するコアに適用した。コーティングされたコアを120℃で4時間乾燥し、500℃で1時間焼成した。結果として得られるコアは、16.3g/ft3のPGM担持量を有し、14.6:1.7のPt/Pd分布、1.1g/in3のトップ触媒コーティング担持量であり、そのうち0.35g/in3はゼオライトベータであった。
【0183】
3層の総触媒コーティング担持量は、約4.4g/in3であり、52g/ft3の総PGM担持量および2/1のPt/Pd比であった。
【0184】
本発明のコーティング1:二層触媒コーティング組成物
チャバザイト上にPdおよびCeを含むボトムコートを製造した。1/1のPd/Mgモル比を有する、Pd硝酸塩/硝酸マグネシウム溶液を製造した。実施例1で製造した通りにチャバザイト粉末上の20%Ceを溶液に添加して、スラリーを用意した。よく混合した後、MnコーティングCe粉末(米国出願番号PCT/US2016/016949(WO2016130456)に記載の通り)およびゼオライトH+-ベータと一緒にアルミナ粉末を添加した。少量の酢酸セリウムバインダーを添加して、約34~38%の固形分濃度、4.5~5.0のpH、および約1700センチポアズの粘度を有するスラリーを用意した。
【0185】
ウォッシュコートスラリーをハニカムコアに適用して、ボトムコートを形成した。コアを120℃で4時間乾燥し、500℃で1時間焼成して、20g/ft3の貴金属(Pd)担持量、および、そのうち0.6g/in3はゼオライトベータである1.8g/in3の総ボトムコート担持量を有するコーティングされたコアを用意した。
【0186】
アルミナ上にPtおよびPdを含むトップコートを製造した。硝酸Ptおよび硝酸Pdを脱イオン水と混合した。レオロジー調整剤ポリマーPVP(ポリビニルピロリドン)を添加し、液体をシリカコーティングアルミナ(5wt.%のシリカ)と混合した。スラリーを粉砕して、15から20ミクロンのD90の粒径を有するウォッシュコートスラリーを用意した。アルミナバインダーを添加して、400から600センチポアズまでの粘度および28から30%までの固形分濃度を有するスラリーを用意した。
【0187】
ウォッシュコートスラリーを、コーティングされたハニカムコアに適用した。コーティングされたコアを120℃で4時間乾燥し、500℃で1時間焼成した。トップコーティング組成物は、34g/ft3の貴金属担持量を有し、32:2のPt/Pd比および、1.0g/in3のコーティング担持量であった。
【0188】
この合計2層の触媒コーティングは、2.8g/in3の担持量、54g/ft3のPGM担持量を有し、32/22のPt/Pd比であった。
【0189】
実施例3:触媒性能
コーティングされたコア試料を、フレッシュ試料および既使用の試料の両方について、動的NEDC(New European Driving Cycle)プロトコルの下で、模擬ディーゼル車の排気ガス反応装置で評価した。模擬の排気ガス流の状態を、NEDCサイクル向けのフィード組成物とともに、
図10および
図11に示す。エージングは、10%蒸気/10%酸素/残部窒素からなる流れの下で、800℃で16時間、管状炉で実施した。
【0190】
エージング後、Ce非含有比較コーティング1、Ce含有比較コーティング2、および本発明のコーティング1を、NEDCプロトコルの下でディーゼル車両シミュレータ(DVS)で評価した。下の結果は、本発明のコーティング1がHC、COおよびNO2/NOx転換に関して最高の全体的性能を呈したことを指摘している。
【0191】
【0192】
実施例4:エンジン試験
本発明のコーティング1の本発明のコーティング組成物を有するフルサイズ(直径5.66”×長さ3”)400cpsiのハニカムを、比較コーティング2に対してエンジンベンチにおいて試験した。ライトオフ試験を、触媒活性化後に、エンジンの粒子フィルタ再生モードを使用して10分間(T入口およそ650℃、リーンラムダ)実施した。COおよびHCライトオフ試験の場合、フィードガスは:CO=1200ppm;THC=150ppm;NOx=50ppm;質量流量30~40m3/hを含有し;NO2/NOx測定の場合、フィードガスは:CO 200~1000ppm;THC 50ppm;NOx 200~1000ppmを有した。
【0193】
触媒の硫酸化(SOx)は、1000ppmのSO2を2分間投与することにより300℃でエンジンベンチ上で行った。脱硫酸化(deSOx)を、エンジンの粒子フィルタ再生モードを使用して、行った(触媒の床温およそ650℃)。硫酸化/脱硫酸化サイクルを5回行った。
【0194】
硫酸化後のライトオフ試験は、上のライトオフ試験と同様とした。第1のライトオフ試験ランを、粒子フィルタ再生モードを使用して、活性化なしで実施して、触媒の硫酸化性能を評価した。
【0195】
下に示すエンジンベンチ試験の結果は、本発明のコーティング1のPd/Ce/CHA含有触媒が優れた硫黄耐性を呈したことを指摘している。
【0196】