(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】プランジャ組立体、薬液投与装置及びプランジャ組立体の駆動方法
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20220613BHJP
A61M 5/145 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
A61M5/315 516
A61M5/145 510
(21)【出願番号】P 2019545669
(86)(22)【出願日】2018-09-28
(86)【国際出願番号】 JP2018036197
(87)【国際公開番号】W WO2019065946
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】P 2017190198
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】小川 淳一
(72)【発明者】
【氏名】近藤 晃
(72)【発明者】
【氏名】飯渕 るり子
【審査官】黒田 暁子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-181869(JP,A)
【文献】特表2015-530153(JP,A)
【文献】特開2014-57886(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0326459(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
A61M 5/145
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に伸長可能であり、伸長に伴って、薬液容器の内部に摺動可能に配置されたガスケットを押圧して前記薬液容器から薬液を押し出すプランジャ組立体であって、
ロッド部を有し、前記ロッド部が、雄ねじが形成された雄ねじ部と、前記雄ねじ部の基端から基端方向に延出するとともに前記雄ねじが形成されていない延出部とを有する、送りねじと、
前記ガスケットを押圧可能なガスケット押圧部と、少なくとも前記プランジャ組立体が伸長動作を開始する前の初期状態で前記送りねじの前記雄ねじ部と螺合した第1雌ねじ部と、第1被ガイド部と、第1係合部と、第1当接部とを有する第1プランジャと、
第1ガイド部と、第2被ガイド部と、第2係合部と、第2当接部と、ナット収容部とを有する第2プランジャと、
内周に第2雌ねじ部が形成され、前記送りねじが挿入されたナット部材と、
第2ガイド部が形成されたベース部と、を備え、
前記第2プランジャの前記第1ガイド部は、前記第1プランジャの前記第1被ガイド部と係合し、前記第2プランジャに対する前記第1プランジャの回転を防止して前記第1プランジャの軸方向運動をガイドし、
前記ベース部の前記第2ガイド部は、前記第2被ガイド部と係合し、前記ベース部に対する前記第2プランジャの回転を防止して前記第2プランジャの軸方向移動をガイドし、
前記ナット収容部は、前記ナット部材を回転不可能且つ軸方向に移動可能に収容し、
前記ナット部材には、前記初期状態で前記送りねじの前記延出部が挿入されており、
前記送りねじの回転に伴い前記第1プランジャが所定長前進すると、前記第1プランジャの前記第1係合部が前記第2プランジャの前記第2係合部に当接し、前記第1プランジャが前記第2プランジャを前進させ、
前記第2プランジャの前進に伴い、前記ナット部材が前進して前記第2雌ねじ部が前記送りねじの前記雄ねじ部と螺合し、
前記第2雌ねじ部と前記雄ねじ部との螺合が開始した後、前記第2プランジャの前記第2当接部が、前記第1プランジャの前記第1当接部に当接し、前進する前記第2プランジャが前記第1プランジャを前進させる、
ことを特徴とするプランジャ組立体。
【請求項2】
請求項1記載のプランジャ組立体において、
前記ナット部材を先端方向へ付勢するナット付勢部材を備え、
前記第2プランジャの前記ナット収容部は、先端台座部と基端台座部とを有し、
前記初期状態で、前記ナット部材の先端面が前記先端台座部に当接し、前記ナット付勢部材の先端が前記ナット部材の基端面に当接し、前記ナット付勢部材の基端が前記基端台座部に当接する、
ことを特徴とするプランジャ組立体。
【請求項3】
請求項1記載のプランジャ組立体において、
前記ナット収容部の内周面には、軸方向に沿って延在し且つ周方向に間隔を置いて配置された複数のリブが形成されており、
前記複数のリブが前記ナット部材の外周面に当接する、
ことを特徴とするプランジャ組立体。
【請求項4】
請求項1記載のプランジャ組立体において、
前記第1プランジャの先端は、前記薬液容器の内周面に当接可能なフランジ部を有する、
ことを特徴とするプランジャ組立体。
【請求項5】
請求項1記載のプランジャ組立体において、
前記第2プランジャは、
前記ナット収容部と前記第1ガイド部と前記第2被ガイド部と前記第2当接部を有するプランジャ本体部と、
前記プランジャ本体部に固定され、前記第2係合部を有するキャップ部材と、を備える、
ことを特徴とするプランジャ組立体。
【請求項6】
請求項5記載のプランジャ組立体において、
前記キャップ部材は、前記薬液容器の内周面に当接可能な先端外周部を有する、
ことを特徴とするプランジャ組立体。
【請求項7】
請求項1記載のプランジャ組立体において、
前記第2プランジャの前記第1ガイド部は、軸方向に沿って延在して前記第1プランジャの前記第1被ガイド部を軸方向にガイドする軸方向ガイドと、前記軸方向ガイドの先端に連続するとともに周方向に延在して前記第1被ガイド部を周方向にガイドする回転ガイドとを有する、
ことを特徴とするプランジャ組立体。
【請求項8】
請求項7記載のプランジャ組立体において、
前記回転ガイドは、前記軸方向ガイドに連続する第1端部と、前記第1端部とは異なる第2端部とを有し、
前記第2プランジャの前記第1ガイド部は、前記回転ガイドの前記第2端部に連続するロック部を有し、
前記ロック部は、前記軸方向ガイドよりも短い長さで前記第2端部から基端方向に延出するとともに前記第1プランジャの前記第1被ガイド部を係止可能である、
ことを特徴とするプランジャ組立体。
【請求項9】
請求項1記載のプランジャ組立体において、
前記第2プランジャは、仮係止爪部が端部に設けられた仮係止弾性片を有し、
前記ベース部は、前記仮係止爪部が離脱可能に挿入された仮係止凹部を有する、
ことを特徴とするプランジャ組立体。
【請求項10】
請求項9記載のプランジャ組立体において、
前記第1プランジャは、前記仮係止爪部を内側から支持する支持突起を有する、
ことを特徴とするプランジャ組立体。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のプランジャ組立体と、
前記送りねじを回転させる駆動機構と、
前記薬液が充填された胴部を有する前記薬液容器と、
前記ガスケットと、
前記薬液容器を収容する筐体と、を備える、
ことを特徴とする薬液投与装置。
【請求項12】
請求項11記載の薬液投与装置において、
前記駆動機構は、モータと、前記モータに取り付けられた駆動歯車とを有し、
前記送りねじは、前記ロッド部に連結されるとともに前記駆動歯車によって駆動される従動歯車を有する、
ことを特徴とする薬液投与装置。
【請求項13】
請求項11記載の薬液投与装置において、
前記筐体は、前記薬液容器が挿入される第1開口部を有し、
前記薬液容器は、前記第1開口部を介して前記筐体から突出した先端部を有し、
前記薬液容器の前記先端部近傍と前記筐体との間に、リング状の防水パッキンが配置されている、
ことを特徴とする薬液投与装置。
【請求項14】
請求項13記載の薬液投与装置において、
前記筐体は、
前記薬液容器を収容した収容部と、前記収容部に設けられた第2開口部とを有する筐体本体部と、
前記第2開口部を封止する蓋体と、
前記第2開口部の縁部に取り付けられるとともに前記蓋体と密着した環状の防水部材と、を備える、
ことを特徴とする薬液投与装置。
【請求項15】
請求項14記載の薬液投与装置において、
前記薬液容器、前記駆動機構及び前記プランジャ組立体がそれぞれ所定位置に固定されたシャーシ構造を備え、
前記筐体内にシャーシ構造が配置され、
前記第2開口部は、前記シャーシ構造よりも大きく形成されている、
ことを特徴とする薬液投与装置。
【請求項16】
請求項11~15のいずれか1項に記載の薬液投与装置において、
前記第1プランジャは、前記第2プランジャの前記第1ガイド部の先端で、前記送りねじの回転に伴い前記第2プランジャに対して所定角度だけ回転可能であり、
前記ガスケットは、
弾性を有する第1材料からなるガスケット本体と、
前記第1材料よりも硬質な第2材料からなり、前記ガスケット本体の基端に装着された当接部材と、を備え、
前記当接部材は、前記ガスケット押圧部に押圧される被押圧部を有し、
前記ガスケット押圧部は、前記第1材料よりも硬質な材料からなる、
ことを特徴とする薬液投与装置。
【請求項17】
請求項16記載の薬液投与装置において、
前記当接部材は、前記ガスケット本体内に挿入される挿入部と、前記挿入部の基端に設けられた基端フランジ部とを有し、
前記基端フランジ部は、基端面に前記被押圧部を有し、
前記被押圧部は、前記基端面に間欠的に設けられるとともに、それぞれ前記基端面から基端方向に突出した複数の凸部である、
ことを特徴とする薬液投与装置。
【請求項18】
請求項17記載の薬液投与装置において、
前記複数の凸部はそれぞれ、基端に向かって膨出するドーム形状である、
ことを特徴とする薬液投与装置。
【請求項19】
請求項1記載のプランジャ組立体の駆動方法であって、
前記送りねじの回転に伴い前記第1プランジャが軸方向に沿って前進し、
前記第1プランジャの前記第1係合部が前記第2プランジャの前記第2係合部に係合し、前進する前記第1プランジャが前記第2プランジャを前進させ、
前記第2プランジャの前進に伴い前記ナット部材が前記第2プランジャに対して相対的に基端方向へ移動し、前記ナット部材の移動により当該ナット部材が前記送りねじの前記雄ねじ部と螺合し、
前記雄ねじ部と螺合した前記ナット部材が、前記送りねじの回転に伴い前進して前記第2プランジャを前進させ、前進する前記第2プランジャが前記第1プランジャを前進させる、
ことを特徴とするプランジャ組立体の駆動方法。
【請求項20】
請求項19記載のプランジャ組立体の駆動方法において、
前記ナット部材がナット付勢部材により先端方向に付勢されており、
前記ナット部材は、前記ナット付勢部材の付勢力に抗して前記第2プランジャに対して相対的に基端方向へ移動した後に、前記ナット部材の前記第2雌ねじ部が前記送りねじの前記雄ねじ部に螺合する、
ことを特徴とするプランジャ組立体の駆動方法。
【請求項21】
請求項19記載のプランジャ組立体の駆動方法において、
前記送りねじに対する回転が規制された前記第1プランジャが前記第2プランジャの先端近傍まで移動し、
前記第2プランジャの先端近傍まで移動した前記第1プランジャが前記送りねじの回転に合わせて所定角度回転し、
前記所定角度回転した前記第1プランジャは回転が再び規制されるとともに、前記第1プランジャの前記第1係合部が前記第2プランジャの前記第2係合部に係合し、
前記第1係合部が前記第2係合部に係合した前記第1プランジャが、前記第2プランジャを引き連れて前進する、
ことを特徴とするプランジャ組立体の駆動方法。
【請求項22】
請求項21記載のプランジャ組立体の駆動方法において、
前記送りねじの雄ねじ部が前記第1雌ねじ部と前記第2雌ねじ部の両方に螺合した状態で、前記送りねじが回転して、前記第1プランジャと前記第2プランジャが前進し、
前記第2プランジャが所定長前進した後に、前記第1プランジャの前記第1雌ねじ部が前記雄ねじ部から離脱し、
前記第1雌ねじ部が前記雄ねじ部から離脱し且つ前記第2雌ねじ部が前記雄ねじ部と螺合した状態で、前記第2プランジャが前記第1プランジャを前進させる、
ことを特徴とするプランジャ組立体の駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プランジャ組立体、薬液投与装置及びプランジャ組立体の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、筒体内に充填した薬液を押し子の押圧作用下に生体内に投与するシリンジポンプ型の薬液投与装置は公知である。また、例えば、国際公開第2013/148270号パンフレットに開示されているように、この種の薬液投与装置において、押し子とネジ軸とを螺合し、ネジ軸の回転作用下に押し子を前進させる機構(以下、「先行技術に係る押し子機構」という)は公知である。
【発明の概要】
【0003】
ところで、近年、薬液投与装置は小型化が進んでおり、体に貼付するタイプのものも登場している。特に、体に貼付するタイプの薬液投与装置の場合、貼付できる面積が限られていることと、ユーザビリティの観点から、薬液投与装置のサイズをできるだけ小さくすることが求められる。先行技術に係る押し子機構は、ネジ軸に対して単一の押し子が前進するだけであるため、薬液投与装置のサイズを小さくする効果が十分でない。
【0004】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、より効果的に装置の小型化を図ることができるプランジャ組立体、薬液投与装置及びプランジャ組立体の駆動方法を提供することを目的とする。
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明は、軸方向に伸長可能であり、伸長に伴って、薬液容器の内部に摺動可能に配置されたガスケットを押圧して前記薬液容器から薬液を押し出すプランジャ組立体であって、ロッド部を有し、前記ロッド部が、雄ねじが形成された雄ねじ部と、前記雄ねじ部の基端から基端方向に延出するとともに前記雄ねじが形成されていない延出部とを有する、送りねじと、前記ガスケットを押圧可能なガスケット押圧部と、少なくとも前記プランジャ組立体が伸長動作を開始する前の初期状態で前記送りねじの前記雄ねじ部と螺合した第1雌ねじ部と、第1被ガイド部と、第1係合部と、第1当接部とを有する第1プランジャと、第1ガイド部と、第2被ガイド部と、第2係合部と、第2当接部と、ナット収容部とを有する第2プランジャと、内周に第2雌ねじ部が形成され、前記送りねじが挿入されたナット部材と、第2ガイド部が形成されたベース部と、を備え、前記第2プランジャの前記第1ガイド部は、前記第1プランジャの前記第1被ガイド部と係合し、前記第2プランジャに対する前記第1プランジャの回転を防止して前記第1プランジャの軸方向運動をガイドし、前記ベース部の前記第2ガイド部は、前記第2被ガイド部と係合し、前記ベース部に対する前記第2プランジャの回転を防止して前記第2プランジャの軸方向移動をガイドし、前記ナット収容部は、前記ナット部材を回転不可能且つ軸方向に移動可能に収容し、前記ナット部材には、前記初期状態で前記送りねじの前記延出部が挿入されており、前記送りねじの回転に伴い前記第1プランジャが所定長前進すると、前記第1プランジャの前記第1係合部が前記第2プランジャの前記第2係合部に当接し、前記第1プランジャが前記第2プランジャを前進させ、前記第2プランジャの前進に伴い、前記ナット部材が前進して前記第2雌ねじ部が前記送りねじの前記雄ねじ部と螺合し、前記第2雌ねじ部と前記雄ねじ部との螺合が開始した後、前記第2プランジャの前記第2当接部が、前記第1プランジャの前記第1当接部に当接し、前進する前記第2プランジャが前記第1プランジャを前進させる。
【0006】
このように構成されたプランジャ組立体は、複数段階に亘って伸長するため、全長を短くでき、その分、プランジャ組立体が搭載される薬液投与装置の小型化を図ることができる。装置の小型化により、患者の体表面に貼付する場合における貼付に必要な面積を小さくできるため、患者の体表面に貼付する等の用途にも容易に適用することができる。また、装置の小型化により、持ち運び、保管等、ユーザビリティの向上を図ることができる。また、ナット部材が第2プランジャに対して軸方向に相対移動可能であるため、送りねじの雄ねじ部とナット部材との接触と同時に送りねじの雄ねじ部とナット部材の第2雌ねじ部とが噛み合わない場合でも、その後に雄ねじ部と第2雌ねじ部との位相が合致したときには螺合することが可能である。従って、送りねじによりナット部材を介して第2プランジャを確実に前進させることができる。
【0007】
前記プランジャ組立体において、前記ナット部材を先端方向へ付勢するナット付勢部材を備え、前記第2プランジャの前記ナット収容部は、先端台座部と基端台座部とを有し、前記初期状態で、前記ナット部材の先端面が前記先端台座部に当接し、前記ナット付勢部材の先端が前記ナット部材の基端面に当接し、前記ナット付勢部材の基端が前記基端台座部に当接してもよい。
【0008】
この構成により、ナット部材が常に先端方向に付勢されているため、送りねじの雄ねじ部とナット部材の第2雌ねじ部との位相が合ったときに、送りねじとナット部材とを確実に螺合させることができる。すなわち、雄ねじ部のピッチ分だけ第2プランジャが前進する間に、送りねじとナット部材とは必ず螺合する。
【0009】
前記ナット収容部の内周面には、軸方向に沿って延在し且つ周方向に間隔を置いて配置された複数のリブが形成されており、前記複数のリブが前記ナット部材の外周面に当接してもよい。
【0010】
この構成により、第2プランジャに対するナット部材の摺動抵抗を低減し、第2プランジャに対するナット部材の相対軸方向移動を円滑にすることができる。
【0011】
前記第1プランジャの先端は、前記薬液容器の内周面に当接可能なフランジ部を有してもよい。
【0012】
この構成により、第1プランジャの座屈を防止することができる。
【0013】
前記第2プランジャは、前記ナット収容部と前記第1ガイド部と前記第2被ガイド部と前記第2当接部を有するプランジャ本体部と、前記プランジャ本体部に固定され、前記第2係合部を有するキャップ部材と、を備えてもよい。
【0014】
この構成により、射出成形により、第1ガイド部、第2被ガイド部、第2当接部及び第2係合部を有する第2プランジャを容易に作製することができる。
【0015】
前記キャップ部材は、前記薬液容器の内周面に当接可能な先端外周部を有してもよい。
【0016】
この構成により、第2プランジャの座屈を防止することができる。
【0017】
前記第2プランジャの前記第1ガイド部は、軸方向に沿って延在して前記第1プランジャの前記第1被ガイド部を軸方向にガイドする軸方向ガイドと、前記軸方向ガイドの先端に連続するとともに周方向に延在して前記第1被ガイド部を周方向にガイドする回転ガイドとを有してもよい。
【0018】
この構成により、第1ガイド部の先端で、送りねじの回転に伴い第1プランジャを回転させることができる。
【0019】
前記回転ガイドは、前記軸方向ガイドに連続する第1端部と、前記第1端部とは異なる第2端部とを有し、前記第2プランジャの前記第1ガイド部は、前記回転ガイドの前記第2端部に連続するロック部を有し、前記ロック部は、前記軸方向ガイドよりも短い長さで前記第2端部から基端方向に延出するとともに前記第1プランジャの前記第1被ガイド部を係止可能であってもよい。
【0020】
この構成により、第1被ガイド部が第1ガイド部の軸方向ガイドに戻ることが防止される。
【0021】
前記第2プランジャは、仮係止爪部が端部に設けられた仮係止弾性片を有し、前記ベース部は、前記仮係止爪部が離脱可能に挿入された仮係止凹部を有してもよい。
【0022】
この構成により、ベース部に対して第2プランジャが仮止めされるため、送りねじがナット部材に螺合する前に第2プランジャが第1プランジャの前進につられて前進することを防止することができる。
【0023】
前記第1プランジャは、前記仮係止爪部を内側から支持する支持突起を有してもよい。
【0024】
この構成により、第1プランジャがある程度前進するまで仮係止爪部が仮係止凹部から離脱することを防止することができる。
【0025】
また、本発明の薬液投与装置は、上記プランジャ組立体と、前記送りねじを回転させる駆動機構と、前記薬液が充填された胴部を有する前記薬液容器と、前記ガスケットと、前記薬液容器を収容する筐体と、を備える。
【0026】
このように構成された薬液投与装置によれば、小型化を図ることができるとともに、送りねじにより第2プランジャを確実に前進させることができる。
【0027】
前記駆動機構は、モータと、前記モータに取り付けられた駆動歯車とを有し、前記送りねじは、前記ロッド部に連結されるとともに前記駆動歯車によって駆動される従動歯車を有してもよい。
【0028】
これにより、簡易な構成で送りねじを回転させることができる。
【0029】
前記筐体は、前記薬液容器が挿入される第1開口部を有し、前記薬液容器は、前記第1開口部を介して前記筐体から突出した先端部を有し、前記薬液容器の前記先端部近傍と前記筐体との間に、リング状の防水パッキンが配置されていてもよい。
【0030】
この構成により、第1開口部を介した筐体内への水の浸入を防止することができる。
【0031】
前記筐体は、前記薬液容器を収容した収容部と、前記収容部に設けられた第2開口部とを有する筐体本体部と、前記第2開口部を封止する蓋体と、前記第2開口部の縁部に取り付けられるとともに前記蓋体と密着した環状の防水部材と、を備えてもよい。
【0032】
この構成により、第2開口部を介した筐体内への水の浸入を防止することができる。
【0033】
前記薬液投与装置において、前記薬液容器、前記駆動機構及び前記プランジャ組立体がそれぞれ所定位置に固定されたシャーシ構造を備え、前記筐体内にシャーシ構造が配置され、前記第2開口部は、前記シャーシ構造よりも大きく形成されていてもよい。
【0034】
この構成により、第2開口部を介して、筐体からプランジャ組立体等をシャーシ構造ごと簡単に取り出すことができる。
【0035】
前記第1プランジャは、前記第2プランジャの前記第1ガイド部の先端で、前記送りねじの回転に伴い前記第2プランジャに対して所定角度だけ回転可能であり、前記ガスケットは、弾性を有する第1材料からなるガスケット本体と、前記第1材料よりも硬質な第2材料からなり、前記ガスケット本体の基端に装着された当接部材と、を備え、前記当接部材は、前記ガスケット押圧部に押圧される被押圧部を有し、前記ガスケット押圧部は、前記第1材料よりも硬質な材料からなっていてもよい。
【0036】
この構成により、ガスケットに対する第1プランジャの回転方向の摺動抵抗を小さくできる。このため、ガスケットが第1プランジャの回転を阻害することがない。
【0037】
前記当接部材は、前記ガスケット本体内に挿入される挿入部と、前記挿入部の基端に設けられた基端フランジ部とを有し、前記基端フランジ部は、基端面に前記被押圧部を有し、前記被押圧部は、前記基端面に間欠的に設けられるとともに、それぞれ前記基端面から基端方向に突出した複数の凸部であってもよい。
【0038】
この構成により、ガスケットに対する第1プランジャの回転方向の摺動抵抗を効果的に小さくすることができる。
【0039】
前記複数の凸部はそれぞれ、基端に向かって膨出するドーム形状であってもよい。
【0040】
この構成により、ガスケットに対する第1プランジャの回転方向の摺動抵抗を一層効果的に小さくすることができる。
【0041】
また本発明は、上記プランジャ組立体の駆動方法であって、前記送りねじの回転に伴い前記第1プランジャが軸方向に沿って前進し、前記第1プランジャの前記第1係合部が前記第2プランジャの前記第2係合部に係合し、前進する前記第1プランジャが前記第2プランジャを前進させ、前記第2プランジャの前進に伴い前記ナット部材が前記第2プランジャに対して相対的に基端方向へ移動し、前記ナット部材の移動により当該ナット部材が前記送りねじの前記雄ねじ部と螺合し、前記雄ねじ部と螺合した前記ナット部材が、前記送りねじの回転に伴い前進して前記第2プランジャを前進させ、前進する前記第2プランジャが前記第1プランジャを前進させる。
【0042】
これにより、送りねじの雄ねじ部とナット部材の第2雌ねじ部とを円滑に螺合させることができる。このため、送りねじによりナット部材を介して第2プランジャを確実に前進させることができる。
【0043】
前記プランジャ組立体の駆動方法において、前記ナット部材がナット付勢部材により先端方向に付勢されており、前記ナット部材は、前記ナット付勢部材の付勢力に抗して前記第2プランジャに対して相対的に基端方向へ移動した後に、前記ナット部材の前記第2雌ねじ部が前記送りねじの前記雄ねじ部に螺合してもよい。
【0044】
これにより、送りねじとナット部材とを確実に螺合させることができる。
【0045】
前記プランジャ組立体の駆動方法において、前記送りねじに対する回転が規制された前記第1プランジャが前記第2プランジャの先端近傍まで移動し、前記第2プランジャの先端近傍まで移動した前記第1プランジャが前記送りねじの回転に合わせて所定角度回転し、前記所定角度回転した前記第1プランジャは回転が再び規制されるとともに、前記第1プランジャの前記第1係合部が前記第2プランジャの前記第2係合部に係合し、前記第1係合部が前記第2係合部に係合した前記第1プランジャが、前記第2プランジャを引き連れて前進してもよい。
【0046】
これにより、送りねじの回転に伴い前進する第1プランジャンにより第2プランジャを前進させることができる。
【0047】
前記プランジャ組立体の駆動方法において、前記送りねじの雄ねじ部が前記第1雌ねじ部と前記第2雌ねじ部の両方に螺合した状態で、前記送りねじが回転して、前記第1プランジャと前記第2プランジャが前進し、前記第2プランジャが所定長前進した後に、前記第1プランジャの前記第1雌ねじ部が前記雄ねじ部から離脱し、前記第1雌ねじ部が前記雄ねじ部から離脱し且つ前記第2雌ねじ部が前記雄ねじ部と螺合した状態で、前記第2プランジャが前記第1プランジャを前進させてもよい。
【0048】
これにより、送りねじの雄ねじ部が第1雌ねじ部と第2雌ねじ部の両方に螺合したダブルねじ状態から、第2雌ねじ部と雄ねじ部のみが螺合した状態への移行が円滑に行われ、第2プランジャにより第1プランジャを前進させることができる。
【0049】
本発明のプランジャ組立体、薬液投与装置及びプランジャ組立体の駆動方法によれば、より効果的に装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】本発明の実施形態に係る薬液投与装置の概略平面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るプランジャ組立体の軸方向に沿った断面図である。
【
図4】
図1に示した薬液投与装置の筐体の第1開口部周辺の断面図である。
【
図5】
図1に示した薬液投与装置の筐体の構造を説明する斜視図である。
【
図7】
図7Aは、第2プランジャの分解斜視図である。
図7Bは、第2プランジャのプランジャ本体部の斜視断面図である。
【
図8】
図8Aは、第2プランジャのプランジャ本体部を先端側から見た斜視図である。
図8Bは、第2プランジャのプランジャ本体部を基端側から見た斜視図である。
【
図10】
図10Aは、薬液投与装置の組立方法の第1説明図である。
図10Bは、薬液投与装置の組立方法の第2説明図である。
図10Cは、薬液投与装置の組立方法の第3説明図である。
【
図11】プランジャ組立体の動作を説明する第1の図である。
【
図12】プランジャ組立体の動作を説明する第2の図である。
【
図13】
図13Aは、プランジャ組立体の動作を説明する第3の図である。
図13Bは、プランジャ組立体の動作を説明する第4の図である。
【
図14】プランジャ組立体の動作を説明する第5の図である。
【
図15】
図15Aは、プランジャ組立体の動作を説明する第6の図である。
図15Bは、プランジャ組立体の動作を説明する第7の図である。
【
図16】プランジャ組立体の動作を説明する第8の図である。
【
図17】プランジャ組立体の動作を説明する第9の図である。
【
図18】プランジャ組立体の動作を説明する第10の図である。
【
図19】プランジャ組立体の動作を説明する第11の図である。
【
図20】本発明の別の実施形態に係るプランジャ組立体の斜視図である。
【
図21】
図20におけるXXI-XXI線に沿ったプランジャ組立体の断面図である。
【
図22】
図20におけるXXII-XXII線に沿ったプランジャ組立体の断面図である。
【
図23】
図21におけるXXIII-XXIII線に沿ったプランジャ組立体の断面図である。
【
図24】別の実施形態に係るプランジャ組立体の動作を説明する第1の図である。
【
図25】別の実施形態に係るプランジャ組立体の動作を説明する第2の図である。
【
図26】別の実施形態に係るプランジャ組立体の動作を説明する第3の図である。
【
図27】別の実施形態に係るプランジャ組立体の動作を説明する第4の図である。
【
図28】別の実施形態に係るプランジャ組立体の動作を説明する第5の図である。
【
図29】別の実施形態に係るプランジャ組立体の動作を説明する第6の図である。
【
図30】別の実施形態に係るプランジャ組立体の動作を説明する第7の図である。
【
図31】別の実施形態に係るプランジャ組立体の動作を説明する第8の図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明に係るプランジャ組立体、薬液投与装置及びプランジャ組立体の駆動方法について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0052】
図1に示す本実施形態に係る薬液投与装置10は、薬液Mを生体内に投与するために使用される。薬液投与装置10は、薬液容器12内に充填された薬液Mをプランジャ組立体14Aの押圧作用下に比較的長い時間(例えば、数分~数時間程度)をかけて持続的に生体内に投与する。薬液投与装置10は、薬液Mを間欠的に生体内に投与してもよい。薬液Mとしては、例えば、タンパク質製剤、麻薬性鎮痛薬、利尿薬等が挙げられる。
【0053】
図1に示すように、薬液投与装置10の使用時において、薬液投与装置10には投与器具16として例えばパッチ式の針付きチューブ17が接続され、薬液容器12から吐出された薬液Mが針付きチューブ17を介して患者の体内に注入される。針付きチューブ17は、薬液容器12の先端部12cに接続可能なコネクタ18と、一端部がコネクタ18に接続された可撓性を有する送液チューブ19と、送液チューブ19の他端に接続され皮膚Sに貼着可能なパッチ部20と、パッチ部20から突出した穿刺針21とを備える。穿刺針21は皮膚Sに対して略垂直に穿刺される。なお、穿刺針21は皮膚Sに対して斜めに穿刺されるものであってもよい。
【0054】
なお、薬液投与装置10に接続される投与器具16は上述したパッチ式の針付きチューブ17に限られず、例えば、送液チューブ19の先端に穿刺針(翼状針等)が接続されたものであってもよい。あるいは、投与器具16は、送液チューブ19を介さずに薬液容器12の先端部12cに接続可能な屈曲した針であってもよい。この場合、屈曲した針は、例えば薬液容器12の先端部12cから下方に略90°屈曲しており、薬液投与装置10の皮膚Sへの固定(貼り付け)に伴い皮膚Sに対して垂直に穿刺される。また、薬液容器12の先端部12cと投与器具16及び針の一部は薬液容器12の内部にあり、針の先端が薬液容器12より突出している形であってもよい。この場合でも、薬液投与装置10の皮膚Sへの固定(貼り付け)に伴い、針が皮膚Sに対して垂直に穿刺される。
【0055】
図1又は
図2に示すように、薬液投与装置10は、薬液Mが充填された薬液容器12と、薬液容器12内に摺動可能に配置されたガスケット22と、軸方向(矢印X方向)に伸長可能であるとともにガスケット22を先端方向(矢印X1方向)に押圧可能なプランジャ組立体14Aと、プランジャ組立体14Aを駆動する駆動機構24と、薬液投与装置10の動作に必要な電力を供給する電池26と、駆動機構24を制御する制御部28と、薬液容器12、プランジャ組立体14A及び駆動機構24を支持するシャーシ構造30と、これらを収容する筐体31とを備える。
【0056】
図2及び
図3に示すように、薬液容器12は、内部に薬液室13を有する中空円筒状に形成されている。具体的に、薬液容器12は、その軸方向に内径及び外径が一定の胴部12aと、胴部12aの先端から縮径する肩部12bと、肩部12bから先端方向に突出した先端部12cとを有する。胴部12aの基端には基端開口12dが形成されている。薬液室13と連通する吐出口12eが先端部12cに形成されている。薬液Mは薬液容器12内に予め充填されている。薬液容器12は透明性を有する材料により構成されているとよい。
【0057】
図3において、吐出口12eは、ゴム材やエラストマー材等の弾性樹脂材料からなる封止部材29によって液密に封止されている。封止部材29は、
図1に示したコネクタ18が先端部12cに接続される際に、コネクタ18に設けられた針18aにより穿刺される。封止部材29は、先端に開口部を有する固定キャップ32によって薬液容器12の先端部12cに固定されている。封止部材29の先端面は、固定キャップ32の開口部から露出している。
【0058】
ガスケット22は、薬液室13の基端側を液密に閉じている。薬液投与装置10の初期状態で、ガスケット22は薬液容器12の基端よりも先端側に位置する。ガスケット22は、ガスケット本体34と、ガスケット本体34の基端に装着された当接部材35とを備える。ガスケット本体34は、弾性を有する第1材料からなる。第1材料は、ゴム材やエラストマー材等の弾性樹脂材料である。
【0059】
ガスケット本体34は、その外周部が薬液容器12(胴部12a)の内周面と液密に密着している。ガスケット本体34は、外周面が薬液容器12の胴部12aと液密に密着する基部34aと、基部34aから先端方向に突出するとともに先端方向に向かってテーパ状に縮径した錐部34bとを有する。
【0060】
当接部材35は、第1材料よりも硬質な第2材料からなる。当接部材35は、プランジャ組立体14Aの後述するガスケット押圧部71に押圧される被押圧部35aを有する。また、当接部材35は、ガスケット本体34内に挿入される挿入部35bと、挿入部35bの基端に設けられた基端フランジ部35cとを有する。
【0061】
挿入部35bの外周部に設けられた雄ねじ35dが、ガスケット本体34の内周部に設けられた雌ねじ34cと螺合している。基端フランジ部35cは、基端面に被押圧部35aを有する。被押圧部35aは、基端フランジ部35cの基端面に間欠的に設けられるとともに、それぞれ当該基端面から基端方向(矢印X2方向)に突出した複数の凸部35a1である。凸部35a1は、基端に向かって膨出するドーム形状を有する。
【0062】
プランジャ組立体14Aは、駆動機構24の駆動作用下に軸方向に伸長可能であり、伸長に伴ってガスケット22を薬液容器12内で前進させ、薬液容器12から薬液Mを押し出すように構成されている。薬液投与装置10の初期状態で、プランジャ組立体14Aの先端側は薬液容器12の基端側に挿入されている。なお、プランジャ組立体14Aの詳細については後述する。
【0063】
図2において、駆動機構24は、電池26を電源として制御部28の制御作用下に駆動制御されるモータ36と、モータ36の出力軸に固定された駆動歯車37とを有する。
【0064】
図1に示すように、筐体31内にシャーシ構造30が配置されている。
図2に示すように、薬液容器12、駆動機構24及びプランジャ組立体14Aは、それぞれシャーシ構造30の所定位置に固定されている。シャーシ構造30は、シャーシ本体部材38と、シャーシ本体部材38に固定されるとともにプランジャ組立体14Aの送りねじ48を回転可能に支持する支持部材39と、シャーシ本体部材38に固定されるとともにシャーシ本体部材38との間でモータ36を保持するモータ保持部材40とを備える。
【0065】
シャーシ本体部材38は、底壁部を構成するベースプレート部38a(
図10Aも参照)と、ベースプレート部38aの上面からベースプレート部38aの厚さ方向(上方)に突出するとともに薬液容器12のフランジ部12fが装着されたフランジ装着部38bとを有する。シャーシ本体部材38に、制御部28及び電池26が取り付けられた電気基板27が固定されている。
【0066】
図1において、筐体31は、上述した薬液容器12、ガスケット22、プランジャ組立体14A、駆動機構24、電池26、制御部28及びシャーシ構造30を収容するように構成された中空状部材である。薬液容器12の先端部12cが筐体31から突出し、外部に露出している。筐体31は上面31aと底面31bを有する。筐体31の上面31aには、透明性を有する材料からなる窓部31wが設けられており、窓部31wを通して薬液容器12内の残液量を確認することができる。
【0067】
薬液投与装置10は、例えば、患者の皮膚Sに貼り付けて使用するパッチタイプとして構成され得る。このようなパッチタイプの場合、筐体31の底面31bには、皮膚Sに貼着可能なシート状の貼着部(粘着部)が設けられる。薬液投与装置10の初期状態で貼着部の貼着面には剥離可能な保護シートが貼り付けられる。
【0068】
なお、薬液投与装置10は、筐体31の底面31bにフックやクリップ等の装着具が設けられ、患者の衣服(例えば、ズボンのウエスト部分等)に引っ掛ける等して取り付けるタイプとして構成されてもよい。
【0069】
図4に示すように、筐体31は、薬液容器12が挿入される第1開口部31cを有する。薬液容器12の先端部は、第1開口部31cを介して筐体31から突出している。薬液容器12の先端部近傍と筐体31との間に、リング状の防水パッキン42が配置されている。防水パッキン42は、X状の断面形状を有し、第1開口部31cに配置されている。防水パッキン42の外周部が全周に亘って第1開口部31cの内面に液密に密着し、防水パッキン42の内周部が全周に亘って薬液容器12(胴部12a)の外周面に液密に密着している。なお、防水パッキン42は、O状の断面形状を有していてもよい。
【0070】
図5に示すように、筐体31は、薬液容器12を収容した収容部45及び収容部45に設けられた第2開口部31dを有する筐体本体部44と、第2開口部31dを封止する蓋体46と、第2開口部31dの縁部に取り付けられるとともに蓋体46と密着した環状の防水部材47とを備える。筐体本体部44に、上述した第1開口部31c(
図4)が設けられている。第2開口部31dは、筐体本体部44の第1開口部31cが設けられた側と反対側の端部に設けられている。第2開口部31dは、シャーシ構造30よりも大きく形成されている。
【0071】
蓋体46は、長方形状に形成されており、薬液容器12の先端部が突出する側とは反対側の筐体31の壁部を構成している。防水部材47は、例えば、防水テープであり、第2開口部31dに設けられた枠形状の段部31eに取り付けられている。防水部材47は、長方形状の第2開口部31dに沿って長方形状に延在して環状をなしている。蓋体46が筐体本体部44の第2開口部31dに装着されることにより、防水部材47が蓋体46に液密に密着する。
【0072】
次に、プランジャ組立体14Aの構成について詳細に説明する。
【0073】
図3に示すように、プランジャ組立体14Aは、駆動機構24によって駆動される送りねじ48と、送りねじ48によって駆動される第1プランジャ50と、送りねじ48によって駆動される第2プランジャ52と、第2プランジャ52に保持されたナット部材54と、第2プランジャ52を支持するベース部56とを備える。
【0074】
送りねじ48は、ロッド部58と、ロッド部58に連結されるとともに駆動歯車37によって駆動される従動歯車60とを有する。ロッド部58は、外周に雄ねじ62aが形成された雄ねじ部62と、雄ねじ部62の基端から基端方向に延出するとともに外周に雄ねじが形成されていない延出部63とを有する。
【0075】
雄ねじ部62は、延出部63よりも長い。雄ねじ部62の先端部は、薬液容器12の内側に位置している。雄ねじ部62の外径は、延出部63の外径よりも大きい。ロッド部58はさらに、延出部63の基端に設けられた連結フランジ部64を有する。連結フランジ部64は、その基端面に断面非円形形状の連結用凹部65aを有し、従動歯車60の先端側軸部60cと相対回転不可能に連結(係合)している。
【0076】
従動歯車60は、ロッド部58と同軸上に回転可能に配置されるとともに、駆動機構24の駆動歯車37と噛み合っている(
図2参照)。従動歯車60は、外周部に歯部60aが形成された歯車部60bと、歯車部60bの先端面中央から先端方向に突出した先端側軸部60cと、歯車部60bの基端面中央から基端方向に突出した基端側軸部60dとを有する。先端側軸部60c及び基端側軸部60dが、シャーシ構造30の支持部材39によって回転可能に支持されている。
【0077】
先端側軸部60cの先端には、ロッド部58の連結フランジ部64に設けられた連結用凹部65aに挿入された断面非円形形状の連結用凸部65bが設けられている。支持部材39の支持片39aと歯車部60bとの間には、従動歯車60を先端方向に弾性的に付勢するバネ66が配置されている。
【0078】
図6に示すように、第1プランジャ50は、中空状の第1筒状胴部68と、第1筒状胴部68の先端から径方向外方に突出した環状の第1先端フランジ70と、第1筒状胴部68の基端外周面から径方向外方に突出した第1突起部72と、第1突起部72と異なる周方向位置で第1筒状胴部68の基端外周面から径方向外方に突出した支持突起74とを有する。
【0079】
図3に示すように、第1筒状胴部68の基端内周面には、少なくともプランジャ組立体14Aが伸長動作を開始する前の初期状態で第1プランジャ50の雄ねじ部62と螺合した第1雌ねじ部68aが形成されている。
【0080】
第1先端フランジ70は、薬液容器12の内周面に当接可能なフランジ部である。第1先端フランジ70の先端面は、ガスケット22を押圧可能なガスケット押圧部71である。薬液投与装置10の初期状態で、ガスケット押圧部71は、ガスケット22から若干の距離だけ離間している。
【0081】
図6において、第1突起部72は、第2プランジャ52の後述する第1ガイド部86(
図7A)によってガイドされる第1被ガイド部73を構成する。第1突起部72の先端面は、第2プランジャ52の後述する第2係合部98(
図7A)に係合可能な第1係合部75を構成する。第1突起部72の基端面は、第2プランジャ52の後述する第2当接部53(
図7B)に当接可能な第1当接部76を構成する。
【0082】
薬液投与装置10の初期状態で、支持突起74は、第2プランジャ52の後述する仮係止爪部85a(
図7A)を内側から支持する。
【0083】
図7Aに示すように、第2プランジャ52は、プランジャ本体部78と、プランジャ本体部78に固定されたキャップ部材80とを備える。プランジャ本体部78は、中空状の第2筒状胴部82と、第2筒状胴部82の先端から径方向外方に突出した一対の第2先端フランジ83と、第2筒状胴部82の外面から径方向外方に突出するとともに軸方向に延在する第2突起部84とを有する。
【0084】
第2筒状胴部82には、径方向に弾性変形可能な仮係止弾性片85が設けられている。仮係止弾性片85の端部(自由端部)には、外方に突出した仮係止爪部85aが設けられている。第2筒状胴部82には第1ガイド部86が設けられている。第1ガイド部86は、第1プランジャ50の第1被ガイド部73と係合し、第2プランジャ52に対する第1プランジャ50の回転を防止して第1プランジャ50の軸方向運動をガイドする。第2先端フランジ83は、弧状に延在している。一対の第2先端フランジ83間には、切欠き状の隙間が形成されている。
【0085】
図7Bに示すように、第1ガイド部86は、軸方向に沿って延在して第1プランジャ50の第1被ガイド部73(
図6)を軸方向にガイドする軸方向ガイド86aと、軸方向ガイド86aの先端に連続するとともに周方向に延在して第1被ガイド部73を周方向にガイドする回転ガイド86bとを有する。回転ガイド86bは、軸方向ガイド86aに連続する第1端部86b1と、第1端部86b1とは異なる第2端部86b2とを有する。
【0086】
第1ガイド部86はさらに、回転ガイド86bの第2端部86b2に連続するロック部86cを有する。ロック部86cは、軸方向ガイド86aよりも短い長さで第2端部86b2から基端方向に延出するとともに第1プランジャ50の第1被ガイド部73を係止可能である。
【0087】
本実施形態では、
図8Aに示すように、軸方向ガイド86aは、第2筒状胴部82の周壁部を壁厚方向に貫通する孔部であり、第2筒状胴部82の軸を基準に互いに反対側の位置に2つ設けられている。回転ガイド86bは、第2筒状胴部82の軸を基準に互いに反対側の位置に2つ設けられている。ロック部86cは、第2筒状胴部82の周壁部を壁厚方向に貫通する孔部であり、第2筒状胴部82の軸を基準に互いに反対側の位置に2つ設けられている。ロック部86cの基端面は、第1プランジャ50の第1当接部76(
図6)に当接可能な第2当接部53を構成する。
【0088】
図8Bに示すように、第2筒状胴部82の基端部には、ナット収容部88が設けられている。ナット収容部88は、ナット部材54を回転不可能且つ軸方向に移動可能に収容する。ナット収容部88の内周形状は、ナット部材54の外径に合わせて六角形状に形成されている。ナット収容部88の内周面88aには、軸方向に沿って延在し且つ周方向に間隔を置いて配置された複数のリブ88bが形成されており、複数のリブ88bがナット部材54の外周面に当接する。
【0089】
図3に示すように、ナット収容部88は、先端台座部89と基端台座部90とを有する。先端台座部89は、第2筒状胴部82の内側に設けられた孔部を有する内周突出壁82a(
図7Bも参照)の基端面である。基端台座部90は、第2筒状胴部82の基端内側に固定された台座部材82bの先端面である。
【0090】
ナット部材54を先端方向へ付勢するナット付勢部材92が、ナット収容部88内に配置されている。本実施形態において、ナット付勢部材92は、コイルバネである。ナット付勢部材92に、送りねじ48のロッド部58が挿入されている。
【0091】
プランジャ組立体14Aの初期状態で、ナット部材54の先端面が先端台座部89に当接し、ナット付勢部材92の先端がナット部材54の基端面に当接し、ナット付勢部材92の基端が基端台座部90に当接する。
【0092】
図8Aにおいて、第2突起部84は、ベース部56の後述する第2ガイド部100(
図9)によってガイドされる第2被ガイド部94を構成する。第2突起部84は、第2筒状胴部82の略全長に亘って軸方向に延在するとともに、第1ガイド部86の軸方向ガイド86aとロック部86cとの間に設けられている。第2突起部84の先端は、第2先端フランジ83に連続している。本実施形態では、
図8Bに示すように、第2突起部84は、第2筒状胴部82の軸を基準に互いに反対側の位置に2つ設けられている。
【0093】
図3に示すように、キャップ部材80は、プランジャ本体部78の先端に固定されている。
図7Aにおいて、キャップ部材80は、開口96aを有する先端リング部96と、先端リング部96の基端面外縁から基端方向に突出した一対の連結用アーム97とを有する。先端リング部96の開口96aに第1プランジャ50の第1筒状胴部68(
図6)が挿入されている。先端リング部96の外周部は、薬液容器12の内周面に当接可能な先端外周部である。先端リング部96の基端面は、第1プランジャ50の第1係合部75に係合可能な第2係合部98を有する。
【0094】
連結用アーム97の自由端部には、内方に向かって突出した係合用爪97aが設けられている。係合用爪97aが、仮係止弾性片85の両側に形成されたスリット85bの先端に係合することにより、キャップ部材80がプランジャ本体部78から離脱することが防止されている。
【0095】
図3に示すように、ナット部材54は、送りねじ48の雄ねじ部62に螺合可能な第2雌ねじ部54aが内周に形成されるとともに、送りねじ48が挿入されている。ナット部材54には、初期状態で送りねじ48の延出部63が挿入されている。ナット部材54は、六角形状の外形を有する。なお、ナット部材54は、他の多角形状等の非円形形状の外形を有していてもよい。
【0096】
図2に示すように、ベース部56はシャーシ構造30に固定されている。
図9に示すように、ベース部56は、中空状部材であり、軸方向に延在する溝状の第2ガイド部100を有する。本実施形態において、第2ガイド部100は、ベース部56の軸を基準に互いに反対側の位置に2つ設けられている。第2ガイド部100は、第2プランジャ52の第2被ガイド部94(
図7A等)と係合し、送りねじ48に対する第2プランジャ52の回転を防止して第2プランジャ52の軸方向移動をガイドする。
【0097】
ベース部56は、第2プランジャ52の仮係止爪部85a(
図7A等)が離脱可能に挿入された仮係止凹部102を有する。本実施形態において、仮係止凹部102は、ベース部56の周壁部を厚さ方向に貫通する孔の形態を有する。なお、仮係止凹部102は、ベース部56の内周面に設けられた溝であってもよい。ベース部56の先端には、キャップ部材80の連結用アーム97(
図7A)が挿入される切欠き56aが設けられている。
【0098】
上記のように構成された薬液投与装置10は、例えば、以下の手順で組み立てられる。
【0099】
図10Aのように、プランジャ組立体14Aと、駆動機構24と、制御部28及び電池26が取り付けられた電気基板27とを、シャーシ構造30の所定位置に組み付ける(固定する)。
【0100】
次に、
図10Bのように、プレフィルドシリンジ104をシャーシ構造30に組み付ける。プレフィルドシリンジ104は、薬液容器12の先端部に封止部材29及び固定キャップ32が装着され、薬液容器12内に薬液Mが充填され、且つ薬液容器12内にガスケット22が挿入された組立体である。
【0101】
次に、
図10Cのように、筐体本体部44の第2開口部31dを介して、プランジャ組立体14A等が組み付けられたシャーシ構造30を筐体本体部44内に挿入する。その際、筐体本体部44の第1開口部31cに配置された防水パッキン42(
図4)に薬液容器12が挿入され、薬液容器12の外周面に防水パッキン42が液密に密着する。次に、筐体本体部44の第2開口部31dを蓋体46で閉じる。その際、筐体本体部44の第2開口部31dに配置された防水部材47に蓋体46が液密に密着する。これにより、防水構造が構築される。
【0102】
次に、上記のように構成された薬液投与装置10の作用を説明する。
【0103】
図3に示す初期状態から駆動機構24(
図2)によって送りねじ48が回転すると、
図11に示すように、送りねじ48の雄ねじ部62と螺合する第1プランジャ50が前進する。この際、第1被ガイド部73(
図6)が第1ガイド部86(
図7A)にガイドされているため、第1プランジャ50は、回転が規制された状態で前進する。一方、第2プランジャ52の仮係止爪部85aはベース部56の仮係止凹部102に挿入されており、且つ送りねじ48の雄ねじ部62はナット部材54に螺合していない(送りねじ48の延出部63がナット部材54に挿入されている)ため、送りねじ48が回転しても第2プランジャ52は前進しない。
【0104】
図12に示すように、送りねじ48の回転に伴い第1プランジャ50が第2プランジャ52の先端近傍まで前進すると、第1プランジャ50が送りねじ48の回転に合わせて所定角度回転する。具体的には、
図13Aのように、第1プランジャ50の第1被ガイド部73が、第2プランジャ52の第1ガイド部86の先端に設けられた回転ガイド86bに到達する(軸方向ガイド86aから離脱する)と、第1プランジャ50は第2プランジャ52に対して回転可能となる。このため、第1被ガイド部73が回転ガイド86bに到達した第1プランジャ50は、第1被ガイド部73が回転ガイド86bの第1端部86b1から第2端部86b2に移動する間だけ、送りねじ48に連れ回る。
【0105】
そして、
図13Bのように、第1被ガイド部73が回転ガイド86bの第2端部86b2に当接すると、第1プランジャ50の第2プランジャ52に対する相対回転が再び規制される。これにより、送りねじ48の回転に伴い、第1プランジャ50が再び前進を開始し、第1プランジャ50の第1係合部75(第1突起部72の先端面)が、第2プランジャ52の第2係合部98(キャップ部材80の先端リングの基端面)(
図7A)に係合する。
【0106】
そして、第1プランジャ50の第1係合部75と第2プランジャ52の第2係合部98とが係合した状態で第1プランジャ50が前進すると、
図14に示すように、第1プランジャ50が第2プランジャ52を前進させる。すなわち、送りねじ48の回転に伴い、第1プランジャ50が第2プランジャ52を引き連れて前進する。この際、第2プランジャ52の仮係止爪部85aは、ベース部56の仮係止凹部102から外れる。第2プランジャ52の前進に伴い、送りねじ48の雄ねじ部62が、第2プランジャ52に配置されたナット部材54に螺合する。
【0107】
具体的には、第2プランジャ52が前進を開始すると、
図15Aのように、雄ねじ部62の基端がナット部材54の第2雌ねじ部54aの先端に接触する。この接触と同時に第2雌ねじ部54aが雄ねじ部62に噛み合わない場合でも、ナット部材54がナット収容部88内で軸方向に相対的にスライド可能であるため、
図15Bのように第2プランジャ52は第1プランジャ50につられて前進することができる。その際、ナット部材54は、ナット付勢部材92の付勢力に抗して、前進する第2プランジャ52に対して相対的に基端方向へ移動する。
【0108】
そして、ナット部材54がナット付勢部材92により先端方向に付勢されつつ第2プランジャ52が前進する間に、雄ねじ部62と第2雌ねじ部54aとの位相が合ったときに、送りねじ48とナット部材54とが螺合する。雄ねじ部62と第2雌ねじ部54aとの噛み合いが開始することにより、送りねじ48の雄ねじ部62が第1雌ねじ部68a及び第2雌ねじ部54aの両方に螺合したダブルねじ状態が開始する。
【0109】
そして、
図16に示すように、送りねじ48の回転に伴い、ダブルねじ状態で第1プランジャ50と第2プランジャ52が前進する。その際、ナット部材54の先端面が先端台座部89から離間しているため(
図15B)、ナット部材54が第2プランジャ52を前進させるのではなく、第1係合部75と第2係合部98との係合により、第1プランジャ50が第2プランジャ52を前進させる。なお、ナット収容部88により回転規制状態とされたナット部材54は、送りねじ48の回転に伴い、先端台座部89との距離を維持したまま前進する(第2プランジャ52と同じ速度で前進する)。
【0110】
送りねじ48の回転に伴い第1プランジャ50及び第2プランジャ52がさらに前進すると、
図17に示すように、第1プランジャ50の第1雌ねじ部68aが送りねじ48の雄ねじ部62から外れる(第1雌ねじ部68aの螺合が解除される)。第1プランジャ50と送りねじ48との螺合が解除されると、送りねじ48と螺合するナット部材54が第2プランジャ52を前進させ、前進する第2プランジャ52が、第1プランジャ50を前進させる。
【0111】
具体的には、第1プランジャ50と送りねじ48との螺合が解除されると、送りねじ48の回転に伴いナット部材54が前進して第2プランジャ52の先端台座部89に当接する。従って、前進するナット部材54が先端台座部89を先端方向に押圧することにより、第2プランジャ52が前進を開始する。その際、送りねじ48との螺合が解除された第1プランジャ50は停止しているため、第2プランジャ52の前進に伴い、
図18に示すように、第2プランジャ52の第2当接部53が、第1プランジャ50の第1当接部76に当接する。従って、前進する第2プランジャ52の第2当接部53が、第1当接部76を先端方向に押圧することにより、第1プランジャ50が再び前進し始める。これにより、ナット部材54のみが送りねじ48に螺合した状態で、第1プランジャ50及び第2プランジャ52が前進して、送液が行われる。
【0112】
そして、
図19に示すように、ガスケット22が薬液容器12の肩部12bに当接する位置まで第1プランジャ50及び第2プランジャ52が前進すると、送りねじ48の回転が停止して、送液が完了する。
【0113】
この場合、本実施形態に係るプランジャ組立体14Aを備えた薬液投与装置10は、以下の効果を奏する。
【0114】
プランジャ組立体14Aは、雄ねじ部62及び延出部63を有する送りねじ48と、第1雌ねじ部68aを有する第1プランジャ50と、第2雌ねじ部54aを有する第2プランジャ52と、第2プランジャ52に対して想定的に軸方向に移動可能なナット部材54と、ベース部56とを備える。そして、送りねじ48の回転に伴い、まず第1プランジャ50が前進し、その後、第1プランジャ50が第2プランジャ52を引き連れて前進し、その後、ナット部材54が送りねじ48と螺合し、その後、第2プランジャ52が第1プランジャ50を前進させる。
【0115】
このように構成されたプランジャ組立体14Aは、複数段階に亘って伸長するため、全長を短くでき、その分、プランジャ組立体14Aが搭載される薬液投与装置10の小型化を図ることができる。装置の小型化により、患者の体表面に貼付する場合における貼付に必要な面積を小さくできるため、患者の体表面に貼付する等の用途にも容易に適用することができる。また、装置の小型化により、持ち運び、保管等、ユーザビリティの向上を図ることができる。
【0116】
また、ナット部材54が第2プランジャ52に対して軸方向に相対移動可能であるため、送りねじ48の雄ねじ部62とナット部材54との接触と同時に送りねじ48の雄ねじ部62とナット部材54の第2雌ねじ部54aとが噛み合わない場合でも、その後に雄ねじ部62と第2雌ねじ部54aとの位相が合致したときには螺合することが可能である。従って、送りねじ48によりナット部材54を介して第2プランジャ52を確実に前進させることができる。
【0117】
プランジャ組立体14Aは、ナット部材54を先端方向へ付勢するナット付勢部材92を備え、初期状態で、ナット部材54の先端面が先端台座部89に当接し、ナット付勢部材92の先端がナット部材54の基端面に当接し、ナット付勢部材92の基端が基端台座部90に当接する。この構成により、ナット部材54が常に先端方向に付勢されているため、送りねじ48の雄ねじ部62とナット部材54の第2雌ねじ部54aとの位相が合ったときに、送りねじ48とナット部材54とを確実に螺合させることができる。すなわち、雄ねじ部62のピッチ分だけ第2プランジャ52が前進する間に、送りねじ48とナット部材54とは必ず螺合する。
【0118】
なお、ナット付勢部材92は設けられなくてもよい。この場合、第2プランジャ52が前進する間に雄ねじ部62と第2雌ねじ部54aとの噛み合わせに何回か失敗しても、ナット部材54の可動範囲内のどこかで噛み合う。従って、送りねじ48の回転により第2プランジャ52を前進させることができる。
【0119】
ナット収容部88の内周面には、軸方向に沿って延在し且つ周方向に間隔を置いて配置された複数のリブ88bが形成されており、複数のリブ88bがナット部材54の外周面に当接する。この構成により、第2プランジャ52に対するナット部材54の摺動抵抗を低減し、第2プランジャ52に対するナット部材54の相対軸方向移動を円滑にすることができる。
【0120】
第1プランジャ50の先端は、薬液容器12の内周面に当接可能なフランジ部を有する。この構成により、第1プランジャ50の座屈を防止することができる。
【0121】
第2プランジャ52は、ナット収容部88と第1ガイド部86と第2被ガイド部94と第2当接部53を有するプランジャ本体部78と、プランジャ本体部78に固定され、第2係合部98を有するキャップ部材80とを備える。この構成により、射出成形により、第1ガイド部86、第2被ガイド部94、第2当接部53及び第2係合部98を有する第2プランジャ52を容易に作製することができる。
【0122】
キャップ部材80は、薬液容器12の内周面に当接可能な先端外周部を有する。この構成により、第2プランジャ52の座屈を防止することができる。
【0123】
第2プランジャ52の第1ガイド部86は、第1プランジャ50の第1被ガイド部73を軸方向にガイドする軸方向ガイド86aと、軸方向ガイド86aの先端に連続して第1被ガイド部73を周方向にガイドする回転ガイド86bとを有する(
図7B)。この構成により、第1ガイド部86の先端で、送りねじ48の回転に伴い第1プランジャ50を回転させることができる。
【0124】
第2プランジャ52の第1ガイド部86は、回転ガイド86bの第2端部86b2に連続するロック部86cを有する(
図7B)。この構成により、第1被ガイド部73が第1ガイド部86の軸方向ガイド86aに戻ることが防止される。
【0125】
第2プランジャ52は、仮係止爪部85aが端部に設けられた仮係止弾性片85を有し、ベース部56は、仮係止爪部85aが離脱可能に挿入された仮係止凹部102を有する。この構成により、ベース部56に対して第2プランジャ52が仮止めされるため、送りねじ48がナット部材54に螺合する前に第2プランジャ52が第1プランジャ50の前進につられて前進することを防止することができる。
【0126】
第1プランジャ50は、仮係止爪部85aを内側から支持する支持突起74を有する。この構成により、第1プランジャ50がある程度前進するまで仮係止爪部85aが仮係止凹部102から離脱することを防止することができる。
【0127】
筐体31は、薬液容器12が挿入される第1開口部31cを有する(
図4)。そして、薬液容器12は、第1開口部31cを介して筐体31から突出した先端部を有し、薬液容器12の先端部近傍と筐体31との間に、リング状の防水パッキン42が配置されている。この構成により、第1開口部31cを介した筐体31内への水の浸入を防止することができる。
【0128】
筐体31は、収容部45及び第2開口部31dを有する筐体本体部44と、第2開口部31dを封止する蓋体46と、第2開口部31dに取り付けられた環状の防水部材47とを備える(
図5)。この構成により、第2開口部31dを介した筐体31内への水の浸入を防止することができる。
【0129】
薬液投与装置10は、薬液容器12、駆動機構24及びプランジャ組立体14Aがそれぞれ所定位置に固定されたシャーシ構造30を備える。そして、筐体31内にシャーシ構造30が配置され、第2開口部31dは、シャーシ構造30よりも大きく形成されている。この構成により、第2開口部31dを介して、筐体31からプランジャ組立体14A等をシャーシ構造30ごと簡単に取り出すことができる。
【0130】
第1プランジャ50は、第2プランジャ52の第1ガイド部86の先端で、送りねじ48の回転に伴い第2プランジャ52に対して所定角度だけ回転可能である(
図13A及び
図13B)。そして、ガスケット22は、弾性を有する第1材料からなるガスケット本体34と、第1材料よりも硬質な第2材料からなり、ガスケット本体34の基端に装着された当接部材35とを備える(
図3)。当接部材35は、ガスケット押圧部71に押圧される被押圧部35aを有する。ガスケット押圧部71は、第1材料よりも硬質な材料からなる。この構成により、ガスケット22に対する第1プランジャ50の回転方向の摺動抵抗を小さくできる。このため、ガスケット22が第1プランジャ50の回転を阻害することがない。
【0131】
当接部材35は、ガスケット本体34内に挿入される挿入部35bと、挿入部35bの基端に設けられた基端フランジ部35cとを有する。基端フランジ部35cは、基端面に被押圧部35aを有する。被押圧部35aは、基端面に間欠的に設けられるとともに、それぞれ基端面から基端方向に突出した複数の凸部である。この構成により、ガスケット22に対する第1プランジャ50の回転方向の摺動抵抗を効果的に小さくすることができる。
【0132】
凸部は、基端に向かって膨出するドーム形状である。この構成により、ガスケット22に対する第1プランジャ50の回転方向の摺動抵抗を一層効果的に小さくすることができる。
【0133】
プランジャ組立体14Aの駆動方法では、送りねじ48の回転に伴い第1プランジャ50が軸方向に沿って前進し(
図11)、第1プランジャ50の第1係合部75が第2プランジャ52の第2係合部98に係合し、前進する第1プランジャ50が第2プランジャ52を前進させる(
図14)。また、第2プランジャ52の前進に伴いナット部材54が第2プランジャ52に対して相対的に基端方向へ移動し(
図15B)、ナット部材54の移動により当該ナット部材54が送りねじ48の雄ねじ部62と螺合する(
図16)。そして、雄ねじ部62と螺合したナット部材54が、送りねじ48の回転に伴い前進して第2プランジャ52を前進させ、前進する第2プランジャ52が第1プランジャ50を前進させる(
図16)。これにより、送りねじ48の雄ねじ部62とナット部材54の第2雌ねじ部54aとを円滑に螺合させることができる。このため、送りねじ48によりナット部材54を介して第2プランジャ52を確実に前進させることができる。
【0134】
プランジャ組立体14Aの駆動方法では、ナット部材54がナット付勢部材92により先端方向に付勢されている。また、ナット部材54は、ナット付勢部材92の付勢力に抗して第2プランジャ52に対して相対的に基端方向へ移動した後に、ナット部材54の第2雌ねじ部54aが送りねじ48の雄ねじ部62に螺合する(
図15B及び
図16)。これにより、送りねじ48とナット部材54とを確実に螺合させることができる。
【0135】
プランジャ組立体14Aの駆動方法では、送りねじ48に対する回転が規制された第1プランジャ50が第2プランジャ52の先端近傍まで移動し(
図12)、第2プランジャ52の先端近傍まで移動した第1プランジャ50が送りねじ48の回転に合わせて所定角度回転する(
図13A及び
図13B)。また、所定角度回転した第1プランジャ50は回転が再び規制されるとともに、第1プランジャ50の第1係合部75が第2プランジャ52の第2係合部98に係合する。そして、第1係合部75が第2係合部98に係合した第1プランジャ50が、第2プランジャ52を引き連れて前進する(
図14)。これにより、送りねじ48の回転に伴い前進する第1プランジャ50ンにより第2プランジャ52を前進させることができる。
【0136】
プランジャ組立体14Aの駆動方法では、送りねじ48の雄ねじ部62が第1雌ねじ部68aと第2雌ねじ部54aの両方に螺合した状態(ダブルねじ状態)で、送りねじ48が回転して、第1プランジャ50と第2プランジャ52が前進する(
図16)。また、第2プランジャ52が所定長前進した後に、第1プランジャ50の第1雌ねじ部68aが雄ねじ部62から離脱する(
図17)。そして、第1雌ねじ部68aが雄ねじ部62から離脱し且つ第2雌ねじ部54aが雄ねじ部62と螺合した状態で、第2プランジャ52が第1プランジャ50を前進させる。これにより、送りねじ48の雄ねじ部62が第1雌ねじ部68aと第2雌ねじ部54aの両方に螺合したダブルねじ状態から、第2雌ねじ部54aと雄ねじ部62のみが螺合した状態への移行が円滑に行われ、第2プランジャ52により第1プランジャ50を前進させることができる。
【0137】
上述した薬液投与装置10において、プランジャ組立体14Aに代えて、
図20~
図31に示すプランジャ組立体14Bが採用されてもよい。なお、プランジャ組立体14Bにおいて、プランジャ組立体14Aと同一又は同様の構成要素には、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0138】
図21に示すように、プランジャ組立体14Bは、駆動機構24(
図2)によって駆動される送りねじ108と、送りねじ108によって先端方向に駆動される第1プランジャ110と、送りねじ108によって先端方向に駆動される第2プランジャ112と、第2プランジャ112に保持されたナット部材54と、第2プランジャ112を支持するベース部114と、第1プランジャ110の内部に配置された支持機構116とを備える。
【0139】
送りねじ108は、ロッド部118と、ロッド部118に連結されるとともに駆動歯車37(
図2)によって駆動される従動歯車120とを有する。ロッド部118は、雄ねじ62aが形成された雄ねじ部62と、雄ねじ部62の基端から基端方向に延出するとともに雄ねじが形成されていない延出部63とを有する。従動歯車120は、ロッド部118の延出部63の基端に相対回転不可能に固定されるとともに、駆動機構24の駆動歯車37(
図2)と噛み合っている。
【0140】
第1プランジャ110は、第2プランジャ112に支持された中空状の第1プランジャ本体122と、第1プランジャ本体122の先端に固定されたガスケット押圧部124と、第1プランジャ本体122の基端に固定されたナット部材126(以下、「第1ナット部材126」という)とを有する。
【0141】
図22に示すように、第1プランジャ本体122の周壁部123は、軸方向に垂直な断面における輪郭形状が非円形の外形を有する。具体的に、第1プランジャ110の周壁部123は、互いに対向する一対の平坦壁部123aと、互いに対向する一対の円弧状壁部123bとを有する。第1プランジャ110の周壁部123の外面が、第2プランジャ112の後述する第1ガイド部142によってガイドされる第1被ガイド部127を構成する。
【0142】
図23に示すように、第1プランジャ本体122は、第1プランジャ本体122の内外方向に弾性変形可能な係合弾性片122aが設けられている。係合弾性片122aは、第1プランジャ本体122の軸を基準に互いに反対側に2つ設けられている。係合弾性片122aの基端(自由端部)に、外方に突出した係合爪部122bが設けられている。係合爪部122bの先端面は、第2プランジャ112の後述する第2係合部150に係合可能な第1係合部128を構成する。係合爪部122bの基端面は、第2プランジャ112の後述する第2当接部152に当接可能な第1当接部130を構成する。
【0143】
ガスケット押圧部124は、ガスケット131に挿入された挿入部124aと、挿入部124aの基端から径方向外方に突出した基端フランジ部124bと、挿入部124aの先端壁部の中央から基端方向に突出した中空状の中央筒部124cとを有する。基端フランジ部124bは、ガスケット131の基端面に対向するとともに、薬液容器12の内周面に当接可能である。中央筒部124cは、基端フランジ部124bよりも基端方向に突出している。
図23に示すプランジャ組立体14Bの初期状態で、送りねじ108の雄ねじ部62は中央筒部124cに挿入されている。
【0144】
第1ナット部材126は、第1プランジャ本体122の基端内部に設けられたナット保持部132により、第1プランジャ本体122に対して回転不可能に保持(固定)されている。第1ナット部材126の内周部に、第1雌ねじ部68aが形成されている。なお、第1ナット部材126を無くし、第1雌ねじ部68aが第1プランジャ本体122に直接形成されていてもよい。
【0145】
図21に示すように、第2プランジャ112は、筒状胴部134と、筒状胴部134の先端から外方に突出した先端フランジ部136と、筒状胴部134の外面に設けられた仮係止爪部138と、筒状胴部134の基端内部に設けられたナット収容部140とを有する。仮係止爪部138は、第2プランジャ112の軸を基準に互いに反対側に2つ設けられている。仮係止爪部138は、先端方向に向かって内方に傾斜した傾斜面を有する。
【0146】
ナット収容部140にナット部材54(以下、「第2ナット部材54」という)が軸方向に相対移動可能に収容されている。なお、上述したプランジャ組立体14Aと同様に、ナット収容部140にナット付勢部材92及び台座部材82b(
図3等)が配置されてもよい。
【0147】
図22に示すように、第2プランジャ112の筒状胴部134は、軸方向に垂直な断面における輪郭形状が非円形の外形を有する。具体的には、筒状胴部134は、互いに対向する一対の平坦壁部134aと、互いに対向する一対の円弧状壁部134bとを有する。筒状胴部134の内面が、第2プランジャ112に対する第1プランジャ110の回転を防止して第1プランジャ110の軸方向運動をガイドする第1ガイド部142を構成している。筒状胴部134の外面が、ベース部114の後述する第2ガイド部164によってガイドされる第2被ガイド部144を構成している。
【0148】
図23に示すように、第2プランジャ112の筒状胴部134の先端には先端凹部146が設けられ、筒状胴部134の基端には基端凹部148が設けられている。先端凹部146及び基端凹部148は、それぞれ筒状胴部134の周壁を厚さ方向に貫通している。先端凹部146の先端面は、第1プランジャ110の第1係合部128に係合可能な第2係合部150を構成している。
【0149】
第2係合部150は、基端方向に向かって内方に傾斜している。先端凹部146の基端面は、第1プランジャ110の第1当接部130に当接可能な第2当接部152を構成している。第2当接部152は、先端方向に向かって内方に傾斜している。基端凹部148の先端面は、先端方向に向かって内方に傾斜している。
【0150】
図21に示すように、ベース部114は、中空状部材であり、薬液容器12の基端開口12dに嵌合している。ベース部114は、ベース部胴体154と、ベース部胴体154の先端から外方に突出した嵌合突起156と、ベース部胴体154の基端から外方に突出した基端フランジ158と、ベース部胴体154の基端から内方に突出した仮係止突起160を有する。基端フランジ158の先端面は、薬液容器12の基端面に当接している。仮係止突起160には、第2プランジャ112の仮係止爪部138が解除可能に係合する。
【0151】
ベース部胴体154の内面には、仮係止突起160を通過した仮係止爪部138が挿入可能な溝部162が設けられている。仮係止爪部138は、軸方向に延在している。
【0152】
図22に示すように、ベース部胴体154は、軸方向に垂直な断面において、第2プランジャ112の外形に沿った非円形形状を有する。ベース部胴体154の内面が第2ガイド部164を構成している。第2ガイド部164は、第2プランジャ112の内面である第2被ガイド部144と係合し、ベース部114に対する第2プランジャ112の回転を防止して第2プランジャ112の軸方向移動をガイドする。
【0153】
図23に示すように、支持機構116は、第1プランジャ本体122内に第1プランジャ本体122に対して相対的回転不可能且つ相対軸方向移動可能に配置された支持部材166と、支持部材166に保持された第3ナット部材168と、支持部材166を基端方向に弾性的に付勢する付勢部材170とを備える。支持部材166は、第1プランジャ本体122の内面に近接(又は接触)して設けられた一対の支持アーム167を有する。後述するように、支持アーム167は、係合弾性片122aを内側から支持可能である。
【0154】
第3ナット部材168は、支持部材166に対して回転不可能に保持されている。第3ナット部材168の内周部には、第3雌ねじ部168aが形成されている。プランジャ組立体14Bの初期状態で、第3雌ねじ部168aは、送りねじ108の雄ねじ部62に螺合している。
【0155】
付勢部材170は、第1プランジャ110のガスケット押圧部124と支持部材166との間に配置されたコイルバネである。付勢部材170の先端は、ガスケット押圧部124の挿入部124aの先端壁部に当接している。付勢部材170の基端は、支持部材166に当接している。ガスケット押圧部124の中央筒部124cが、付勢部材170に挿入されている。
【0156】
次に、薬液投与装置10においてプランジャ組立体14Bが採用された場合の作用を説明する。
【0157】
図23に示す初期状態から駆動機構24(
図2)によって送りねじ108が回転すると、
図24に示すように、送りねじ108の雄ねじ部62と螺合する第1プランジャ110が前進する。この際、第1被ガイド部127(第1プランジャ本体122の外面)が第1ガイド部142(第2プランジャ112の内面)にガイドされているため(
図22)、第1プランジャ110は、回転が規制された状態で前進する。第3ナット部材168が雄ねじ部62に螺合しているため、送りねじ108の回転に伴い、第1プランジャ110と一緒に支持部材166も前進する。
【0158】
一方、第2プランジャ112の仮係止爪部138はベース部114の仮係止突起160に挿入されており(
図21)、且つ送りねじ108の雄ねじ部62はナット部材54に螺合していない(送りねじ108の延出部63がナット部材54に挿入されている)ため、送りねじ108が回転しても第2プランジャ112は前進しない。また、
図24に示すように、第1プランジャ110が前進する際、第1プランジャ110の係合爪部122bは、係合弾性片122aのヒンジ機能(弾性変形機能)により、第2プランジャ112の基端凹部148から離脱して、第2プランジャ112内部へと引き込まれる。
【0159】
図25に示すように、送りねじ108の回転に伴い第1プランジャ110及び支持部材166がさらに前進すると、支持部材166に保持された第3ナット部材168が送りねじ108の雄ねじ部62から離脱する。このため、これ以降は、送りねじ108の回転によって第3ナット部材168及び支持部材166が前進することはない。支持部材166は、付勢部材170により基端方向に付勢されているため、送りねじ108の先端に押し付けられる。
【0160】
また、第1プランジャ110の前進に伴い、第1プランジャ110の係合弾性片122aがその弾性復元力によって外方に変位して、係合爪部122bが第2プランジャ112の先端凹部146に入り込み、第1プランジャ110の第1係合部128(係合爪部122bの先端面)が、第2プランジャ112の第2係合部150(先端凹部146の先端面)に係合する。
【0161】
従って、
図26に示すように、第1プランジャ110の第1係合部128と第2プランジャ112の第2係合部150とが係合した状態で第1プランジャ110が前進すると、第1プランジャ110が第2プランジャ112を前進させる。すなわち、送りねじ108の回転に伴い、第1プランジャ110が第2プランジャ112を引き連れて前進する。この際、第2プランジャ112の仮係止爪部138(
図21)は、ベース部114の仮係止突起160(
図21)を乗り越えて、ベース部114の内面に設けられた溝部162(
図21)へと入り込む。
【0162】
第1プランジャ110の前進に伴い、付勢部材170により基端方向に付勢された支持部材166は、第1プランジャ110に対して基端方向に相対変位する(支持部材166の位置は、第3ナット部材168と雄ねじ部62との螺合が解除されたときから変わらない)。第2プランジャ112の前進に伴い、雄ねじ部62の基端がナット部材54の第2雌ねじ部54aの先端に接触する。
【0163】
図27に示すように、第2プランジャ112の前進に伴い、送りねじ108の雄ねじ部62が、第2プランジャ112に配置された第2ナット部材54に螺合する。具体的には、第2ナット部材54が雄ねじ部62との螺合に何回か(例えば、1、2回)失敗しても、第2プランジャ112の前進に伴い、第2ナット部材54が第2プランジャ112に対して軸方向に相対移動することで、第2ナット部材54と雄ねじ部62との螺合が達成される。雄ねじ部62と第2雌ねじ部54aとの噛み合いが開始することにより、送りねじ108の雄ねじ部62が第1雌ねじ部68a及び第2雌ねじ部54aの両方に螺合したダブルねじ状態が開始する。
【0164】
そして、送りねじ108の回転に伴い、ダブルねじ状態で第1プランジャ110と第2プランジャ112が前進する。その際、ナット部材54の先端面が先端台座部89から離間している場合、ナット部材54が第2プランジャ112を前進させるのではなく、第1係合部128と第2係合部150との係合により、第1プランジャ110が第2プランジャ112を前進させる。
【0165】
送りねじ108の回転に伴い第1プランジャ110及び第2プランジャ112がさらに前進すると、
図28に示すように、第1プランジャ110の第1ナット部材126(第1雌ねじ部68a)が送りねじ108の雄ねじ部62から外れる(第1雌ねじ部68aの螺合が解除される)。第1プランジャ110の前進に伴い、第1プランジャ110のナット収容部140が支持部材166に当接する位置まで、支持部材166が第1プランジャ110に対して相対変位する。この際、支持部材166の支持アーム167は、係合弾性片122aの内方に位置する。
【0166】
第1プランジャ110と送りねじ108との螺合が解除されると、
図29に示すように、送りねじ108と螺合する第2ナット部材54が第2プランジャ112を前進させ、前進する第2プランジャ112が、第1プランジャ110を前進させる。具体的には、第1プランジャ110と送りねじ108との螺合が解除されると、送りねじ108の回転に伴い第2ナット部材54が前進して第2プランジャ112の先端台座部89に当接する。従って、前進するナット部材54が先端台座部89を先端方向に押圧することにより、第2プランジャ112が前進を開始する。
【0167】
その際、送りねじ108との螺合が解除された第1プランジャ110は停止しているため、第2プランジャ112の前進に伴い、第2プランジャ112の第2当接部152が、第1プランジャ110の第1当接部130に当接する。従って、
図30に示すように、前進する第2プランジャ112の第2当接部152が、第1当接部130を先端方向に押圧することにより、第1プランジャ110が再び前進し始める。
【0168】
これにより、第2ナット部材54のみが送りねじ108に螺合した状態で、第1プランジャ110及び第2プランジャ112が前進して、送液が行われる。第1プランジャ110の前進時、支持部材166の支持アーム167が第1プランジャ110の係合弾性片122aを内側から支持しているため、係合弾性片122aに設けられた係合爪部122bが先端凹部146から離脱することが防止される。
【0169】
そして、
図31に示すように、ガスケット131が薬液容器12の肩部12bに当接する位置まで第1プランジャ110及び第2プランジャ112が前進すると、送りねじ108の回転が停止して、送液が完了する。
【0170】
なお、プランジャ組立体14Bにおいて、プランジャ組立体14Aと同様の構成部分については、プランジャ組立体14Aと同様の効果が得られる。
【0171】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。