(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】希土類金属フッ化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01F 17/265 20200101AFI20220613BHJP
C01F 17/259 20200101ALI20220613BHJP
C01B 9/08 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
C01F17/265
C01F17/259
C01B9/08
(21)【出願番号】P 2019563704
(86)(22)【出願日】2018-02-02
(86)【国際出願番号】 IB2018050665
(87)【国際公開番号】W WO2018142337
(87)【国際公開日】2018-08-09
【審査請求日】2020-11-24
(32)【優先日】2017-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ZA
(73)【特許権者】
【識別番号】519283060
【氏名又は名称】ザ・サウス・アフリカン・ニュークリア・エナジー・コーポレイション・エスオーシー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】THE SOUTH AFRICAN NUCLEAR ENERGY CORPORATION SOC LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ムールマン
(72)【発明者】
【氏名】リノ・プレトリウス
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス・ペトルス・ル・ルー
(72)【発明者】
【氏名】ヘンドリク・フォーリー・ニーマント
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-140306(JP,A)
【文献】特開昭54-046399(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104084095(CN,A)
【文献】特開2001-064015(JP,A)
【文献】特開2018-108923(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 17/00
C01B 9/08
B01J 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素化希土類金属化合物ではない希土類金属の固体化合物、および
無水気体フッ化水素酸
を、反応領域において反応させて、固体状態のフッ素化希土類金属化合物を製造することを含み、
希土類金属の固体化合物およびフッ化水素酸の反応による反応水として該反応領域において生成される水に対して外因性の水であ
り、
該反応領域内または該反応領域の外側で気体フッ化水素酸と反応する希土類金属の固体化合物の水和形態からの結晶水、および
該反応領域においては生成されない水蒸気
の一方またはそれらの組み合わせから選択される外生水の存在下で;
並びに
300℃以下の温度で、該外生水、存在すれば該反応水、および該
気体フッ化水素酸の凝縮を回避する
圧力で、
該反応領域において該反応が起こることを特徴とする、希土類金属の固体化合物をフッ素化して、固体状態のフッ素化希土類金属化合物を製造する方法。
【請求項2】
前記フッ素化希土類金属化合物が希土類金属フッ化物である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
フッ素化の対象である前記希土類金属の固体化合物がその水和物であり、前記外生水が該水和物の結晶水を含む、請求項
1または2記載の方法。
【請求項4】
前記外生水が前記反応領域においては生成されない水蒸気を含み、
前記水蒸気が、
前記反応領域外での前記希土類金属
の化合物および
気体フッ化水素酸の反応による反応水として前記反応領域外で生成される水蒸気、および/または
該反応領域に意図的に供給される水蒸気
を含む、請求項
1~3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記フッ素化希土類金属化合物が、三フッ化ネオジム(NdF
3)である希土類金属フッ化物であり、
前記希土類金属の固体化合物が炭酸ネオジム(Nd
2(CO
3)
3)であり;
該三フッ化ネオジムが以下の反応式1:
Nd
2(CO
3)
3(固体)+6HF(気体)→2NdF
3(固体)+3CO
2(気体)+3H
2O(気体)
に従って生成される、請求項1~
4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記炭酸ネオジムが、水和炭酸ネオジム(Nd
2(CO
3)
3・xH
2O)を含む、請求項
5記載の方法。
【請求項7】
前記外生水が、前記水和炭酸ネオジムの結晶水を含む、請求項
6記載の方法。
【請求項8】
反応式1に従った前記反応が前記反応領域において起こる前記
温度および圧力は、前記水和炭酸ネオジムが少なくとも該反応が開始されるまで脱水されない
ように選択される、請求項
7記載の方法。
【請求項9】
前記反応が、20℃以上の温度で前記反応領域において起こる、請求項1~8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記反応が、大気圧並びに80℃以上および300℃未満の温度で前記反応領域において起こる、請求項
9記載の方法。
【請求項11】
前記希土類金属の固体化合物がその水和物であり、
前記反応の温度および圧力が、該水和物が少なくとも該反応が開始されるまで脱水されないように選択され
る、請求項
9記載の方法。
【請求項12】
粒状の前記希土類金属の固体化合物を前記反応領域に重力下で導入すること、および前記気体フッ化水素酸を、該希土類金属の固体化合物と向流状態で、前記反応領域に導入することを含む、請求項1~
11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
外生水として外生水蒸気を前記反応領域に供給することを含む、請求項
12記載の方法。
【請求項14】
前記希土類金属の固体化合物は、希土類金属炭酸塩、希土類金属ハロゲン化物、希土類金属硫酸塩、希土類金属酸化物、希土類金属シュウ酸塩、希土類金属水酸化物、希土類金属硝酸塩、および、希土類金属オキシフッ化物の1つ以上の形態、またはそれらの水和物形態である、請求項1~
13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記気体フッ化水素酸を、前記希土類金属の固体化合物および前記気体フッ化水素酸の先の反応により生成された二酸化炭素から回収した二酸化炭素であるキャリアガスを用いて、前記反応領域に導入することを含
み、前記希土類金属の固体化合物が希土類金属炭酸塩である、請求項1~
14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
フッ素化希土類金属化合物ではない希土類金属の固体化合物を反応容器内に供給すること、
気体フッ化水素酸を前記反応容器内に供給して、前記気体フッ化水素酸を前記希土類金属の固体化合物と接触および反応させて、固体状態のフッ素化希土類金属化合物を製造すること
を含み、
前記気体フッ化水素酸を前記希土類金属の固体化合物と接触させることは、
希土類金属の固体化合物およびフッ化水素酸の反応による反応水として該反応領域において生成される水に対して外因性の水であり、かつ
前記反応領域内または反応領域の外側で気体フッ化水素酸と反応する前記希土類金属の固体化合物の水和物形態から放出される結晶水、および
前記反応領域内で生成されていない水蒸気
の一方または組み合わせから選択される外生水の存在下で;並びに
300℃以下の温度で、該外生水、存在すれば該反応水、および該気体フッ化水素酸の凝縮を回避する圧力で、
起こる、固体状態のフッ素化希土類金属化合物の製造方法。
【請求項17】
前記気体フッ化水素酸が気体無水フッ化水素酸である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記希土類金属の固体化合物は、希土類金属炭酸塩、希土類金属ハロゲン化物、希土類金属硫酸塩、希土類金属酸化物、希土類金属シュウ酸塩、希土類金属水酸化物、希土類金属硝酸塩、および、希土類金属オキシフッ化物の1つ以上の形態である、請求項16または17記載の方法。
【請求項19】
前記反応容器は垂直カラム型反応容器であり、前記希土類金属の固体化合物は、重力下で前記反応容器内に供給される、請求項16~18のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、希土類金属フッ化物に関する。概して、本発明は、希土類金属フッ化物の製造方法を提供し、上記方法を用いて製造される希土類金属フッ化物にまで及ぶ。より具体的には、本発明は、三フッ化ネオジムを製造する方法を提供し、上記方法を用いて製造される三フッ化ネオジムにまで及ぶ。
【発明の概要】
【0002】
希土類元素とも呼ばれる希土類金属は、元素周期表の15のランタノイド、並びにスカンジウムおよびイットリウムを含む。
【0003】
本発明の第1の広い態様に従って、
希土類金属の固体化合物;および
気体フッ化水素酸
を反応領域において反応させて、固体状態のフッ素化希土類金属化合物を製造することを含み、
希土類金属の固体化合物およびフッ化水素酸の反応による反応水として該反応領域において生成される水に対して外因性の水である外生水の存在下で;および
該外生水、存在すれば該反応水、および該フッ化水素酸の凝縮を回避する温度条件および圧力条件下で、
該反応領域において該反応が起こることを特徴とする、希土類金属の固体化合物をフッ素化して、固体状態のフッ素化希土類金属化合物を製造する方法が提供される。
【0004】
なお、本明細書中で使用される意味における「フッ素化(fluorination)」は、一般に、希土類金属の固体化合物の、希土類金属のフッ化物への、または希土類金属のフッ化物のフッ素含有前駆体への変換を想定している。
【0005】
希土類金属の固体化合物および気体フッ化水素酸の反応は、外生水、存在すれば反応水、およびフッ化水素酸の凝縮を回避する温度条件および圧力条件下で起こるので、これらの条件は、上記外生水、存在すれば反応水、およびフッ化水素酸が少なくとも反応中に反応領域において気体または蒸気の形で残るようなものであるということになる。
【0006】
尚、フッ素化に供される希土類金属の固体化合物は、一般に、希土類金属のフッ化物以外の希土類金属のフッ素含有固体化合物であってもよい。この意味で、「フッ化物」は、実質的にフッ素化のための更なる能力を想定していない。例えば、フッ化物の前駆体は、フッ素化に供される希土類金属の固体化合物の可能な実施形態として含まれる。1つの実施形態では、フッ素化に供される希土類金属の固体化合物は、希土類金属のオキシフッ化物であってもよい。
【0007】
本発明の1つの実施形態では、フッ素化希土類金属化合物は希土類金属フッ化物であってもよい。本発明の別の実施形態では、フッ素化希土類金属化合物は、希土類金属フッ化物、例えば希土類金属オキシフッ化物のフッ素含有前駆体であってもよい。従って、本発明の1つの実施形態において、上記方法は、固体形態の希土類金属フッ化物の製造方法であってもよく、本発明の別の実施形態では、上記方法は、希土類金属フッ化物の前駆体を製造する方法であってもよい。従って、上記フッ素化は、部分的または完全であってもよく、ここで、「完全な(complete)」フッ素化は、上記フッ素化希土類金属化合物が希土類金属フッ化物であることを想定している。
【0008】
フッ素化に供される上記希土類金属の固体化合物は、
希土類金属炭酸塩;
希土類金属ハロゲン化物;
希土類金属硫酸塩;
希土類金属酸化物;
希土類金属シュウ酸塩;
希土類金属水酸化物;
希土類金属硝酸塩;および
フッ化物に完全にフッ素化されていないフッ素含有希土類金属化合物、例えばオキシフッ化物
のいずれか1つまたは任意の2つ以上の組み合わせから選択してもよい。
【0009】
フッ素化に供される希土類金属の固体化合物は、特に、それらの水和物形態、即ち結晶性形態であってもよい。このような場合には、上記反応が反応領域で行われる温度条件および圧力条件が、上記反応が開始するまで上記水和物形態が脱水されないようなもの、即ち、少なくとも上記反応が開始する時、より好ましくは少なくとも上記反応が少なくとも部分的に行われるまで結晶水が存在するようなものであってもよい。
【0010】
希土類金属の固体化合物がその水和物形態である場合、上記外生水は結晶水を含んでいてもよい。上記外生水は、更に、または代わりに、反応領域内で形成されていない水蒸気、例えば上記反応領域の外側で形成される水蒸気を含んでもよい。そのような水蒸気は、例えば、反応領域の外側での希土類金属化合物およびフッ化水素酸との反応による反応水として反応領域の外側に形成された水蒸気であってもよく、および/または上記外生水は、例えば、上記反応とは独立して生成され、意図的に反応領域に供給される水蒸気であってもよい。
【0011】
本発明は、概して、本発明の第1の広い態様の方法に従って製造されたフッ素化希土類金属化合物にまで及ぶ。
【0012】
本発明の第2の、より具体的な態様によれば、フッ素化希土類金属化合物として、固体状態の三フッ化ネオジム(NdF3)を製造する方法が提供され、上記方法は、反応領域において、希土類金属フッ化物ではない希土類金属の固体化合物として、固体炭酸ネオジム(Nd2(CO3)3)を気体フッ化水素酸(HF)と反応させて、以下の反応式1:
Nd2(CO3)3(固体)+6HF(気体)→2NdF3(固体)+3CO2(気体)+3H2O(気体) (式1)
に従って固体形態の三フッ化ネオジムを製造することを含み、上記反応は、
反応式1に従った反応の水として反応領域で生成される水に対して外因性である水である外生水の存在下で、および
外生水、反応水、およびフッ化水素酸の凝縮を回避する、温度条件および圧力条件下で、上記反応領域で起こる。
【0013】
本発明のこの態様の方法は、事実上、本発明の前述の態様の方法のより具体的な実施形態であることが理解されるであろう。従って、特に指示がない限り、次の記載は、本発明の前述の態様に平等に適用される。
【0014】
上記フッ化水素酸は、無水フッ化水素酸を含んでいてもよい。
【0015】
炭酸ネオジムは、水和炭酸ネオジム(Nd2(CO3)3・xH2O、xは0よりも大きい任意の数であり、整数に限定されるものではない)を含んでいてもよい。上記外生水は、更に、水和炭酸ネオジムの結晶水を含んでいてもよい。このような場合、前述のように、反応式1による上記反応が反応領域で行われる温度条件および圧力条件が、少なくとも上記反応が開始するまで、より好ましくは少なくとも上記反応が少なくとも部分的に行われるまで、上記水和炭酸ネオジムが脱水されないようなもの(即ち、少なくとも上記反応が開始する時、結晶水が存在するようなもの)であってもよい。従って、上記条件は、少なくとも上記反応が開始するまで、より好ましくは、少なくとも上記反応が少なくとも部分的に行われるまで、上記水和炭酸ネオジムが水和されたままであるようなものであってもよい。
【0016】
上記外生水は、更に、または代わりに、上記反応領域内で形成されていない水蒸気、例えば上記反応領域の外側での反応式1による炭酸ネオジムおよびフッ化水素酸の反応による反応水として上記反応領域の外側で形成される水蒸気、および/または上記反応領域に意図的に供給される水蒸気であってもよい。
【0017】
上記反応は、20℃という低い温度で、上記反応領域内で行ってもよい。より典型的には、大気圧で、上記反応は、80℃以上および300℃未満である温度で、上記反応領域内で行ってもよい。上記反応は300℃を超える温度で行われてもよいことが想定される。このような高温で、希土類金属の固体化合物がその水和物の形態である場合、水和物形態のマトリックス内の少なくともいくらかの水分の保持に応じた増加した動作圧力を選択しなければならない。即ち、上記反応が300℃以上の温度で行われる場合、上記反応が起こる圧力の条件が大気圧より高く、かつ少なくとも上記反応が開始されるまで上記水和物形態が脱水されないように選択される。
【0018】
上記方法は、希土類金属の固体化合物、例えば炭酸ネオジム、およびフッ化水素酸、並びに外生水に含まれる場合に外生水蒸気を、上記反応領域に導入することを含んでもよい。外生水に含まれる場合に外生水蒸気を、希土類金属の固体化合物、例えば炭酸ネオジム、およびフッ化水素酸の一方または両方と組み合わせて導入してもよいが、このような導入は同時であってもよい、即ち、上記希土類金属の固体化合物、例えば炭酸ネオジム、およびフッ化水素酸、並びに外生水に含まれる場合に外生水蒸気を、通常、互いに別々に上記反応領域に同時供給してもよい。
【0019】
上記希土類金属の固体化合物、例えば炭酸ネオジム、およびフッ化水素酸の上記反応領域への導入は、向流式または並流式のいずれかであってもよい。向流式が好ましい。
【0020】
上記希土類金属の固体化合物、例えば炭酸ネオジム、およびフッ化水素酸の上記反応領域への導入は、上記炭酸ネオジムの流動化条件または非流動化条件下で行ってもよい。
【0021】
希土類金属の固体化合物、例えば炭酸ネオジムの上記反応領域への導入は、重力下であってもよい。従って、希土類金属の固体化合物、例えば炭酸ネオジムおよびフッ化水素酸を反応領域に向流式で導入する場合、上記フッ化水素酸の上記反応領域への導入は、希土類金属の固体化合物、例えば炭酸ネオジムへの重力効果とは逆方向であってもよい。
【0022】
上記フッ化水素酸は、キャリアガスを用いて上記反応領域に導入してもよい。換言すれば、上記フッ化水素酸およびキャリアガスを含む混合物中で、上記フッ化水素酸を上記反応領域に導入してもよい。
【0023】
上記キャリアガスは、窒素ガスまたは二酸化炭素ガスであってもよい。好ましくは、上記キャリアガスは、二酸化炭素ガスである。
【0024】
上記キャリアガスとしての二酸化炭素ガスは、上記反応領域内で起こる希土類金属の固体化合物、例えば炭酸ネオジムおよびフッ化水素酸の反応による反応式1に従って生成された二酸化炭素生成物から回収される二酸化炭素ガスであってもよいし、またはそのような二酸化炭素ガスを含んでもよい。或いは、または更に、上記キャリアガスとしての二酸化炭素ガスは、上記反応領域の外側での、反応式1に従った希土類金属の固体化合物、例えば炭酸ネオジムおよびフッ化水素酸の先の反応および/または同時発生の反応によって生成された二酸化炭素生成ガスから回収される二酸化炭素ガスであってもよいし、またはそのような二酸化炭素ガスを含んでいてもよい。
【0025】
希土類金属の固体化合物、例えば炭酸ネオジムは、例えば顆粒またはペレットとしての粒状形態であってもよい。
【0026】
使用される例示的な語によって想定されるように、炭酸ネオジムに関連する本発明の第2の、より具体的な態様の前述の特徴は、本発明の第1の広い態様に関して確認されたものなどの他の希土類金属の固体化合物に同様に適用可能であるとみなされる。
【0027】
本発明は、本発明の第2の、より具体的な方法に従って製造された三フッ化ネオジムにまで及ぶ。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明に従った三フッ化ネオジムの製造方法を実施するプロセスを図式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
ここで、本発明に従った三フッ化ネオジムの製造方法を実施するプロセスを図式的に示す添付図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【0030】
図面を参照すると、符号100は、一般に、本発明に従って、固体形態のフッ素化希土類金属化合物として、三フッ化ネオジムの製造方法を実施するプロセスを示す。
【0031】
プロセス100は、反応式1に従って、水和炭酸ネオジムペレットを二酸化炭素であるキャリアガスの存在下で無水フッ化水素酸(HF)と反応させて、三フッ化ネオジム、二酸化炭素および水を形成する反応容器102を含む。上記反応容器102は、特に傾斜板反応器である。
【0032】
上記反応容器102は、上記ペレットが後述のように上記反応容器102の頂部に供給された時に、上記反応容器102内の炭酸ネオジムペレットの所定の滞留時間を達成するように構成された下方傾斜板を含む垂直カラム型反応容器である。
【0033】
上記プロセス100の更なる特徴は、以下の典型的な操作の説明から明らかになる。
【0034】
HFは、ライン1に沿って貯蔵容器またはそれの他の供給源(C参照)から引き出され、蒸発器104中で蒸発され、80℃に加熱され、それによって蒸発され、加熱されたHFを得る。
【0035】
上記蒸発され、加熱されたHFは、ライン15に沿って、開始時に、混合点105で二酸化炭素ガスと混合され、10%のHF質量濃度で、HFと二酸化炭素のガス混合物を得る。開始後、上記蒸発され、加熱されたHFは、ライン9に沿って、混合点107で二酸化炭素ガスと混合されて、二酸化炭素ガスは後述のように反応容器102から回収され、それにより、HFおよび二酸化炭素のガス混合物を得る。
【0036】
上記ガス混合物は、ライン2に沿って熱交換器106に供給され、ライン7に沿って上記反応容器102からの高温のオフガスで加熱され、それによって、加熱されたガス混合物を得る。
【0037】
上記加熱されたガス混合物は、本実施形態では、次いで、更に上記混合物を100℃から350℃の温度に加熱する電気ヒータ108に供給されて、それによって更に加熱されたガス混合物を得る。更に加熱されたガス混合物を加熱する温度は、好ましくは、上記反応容器102の動作温度よりも高い10℃から50℃である。一般的に、上記更に加熱されたガス混合物の温度および圧力、特に上記反応容器102への入口での上記温度および圧力は、好ましくは、その供給ライン(図中のライン3)および反応容器102において、水および/またはHFの凝縮を回避するのに寄与するような条件である。
【0038】
上記更に加熱されたガス混合物は、ライン3に沿って、上記反応容器102の底部に供給され、従って、上記反応容器102を通って上昇する。同時に、水和炭酸ネオジムペレットを、所定の速度でライン4に沿って、スクリューコンベア114によって供給ホッパ112から上記反応容器102の頂部へ供給し、従って、重力下で、上記反応容器102を通って下降する。上記炭酸ネオジムペレットは、炭酸ネオジムペレットの供給源から上記ホッパ112に供給される(A参照)。
【0039】
従って、上記HFおよび炭酸ネオジムペレットを、上記反応容器102内で向流式に接触させる。
【0040】
上記反応容器102の操作条件は、90℃~300℃、好ましくは300℃未満の温度、および上記反応容器102内の水およびHFの凝縮が回避されるような圧力を含む。温度および圧力のこれらの条件は、HFおよび水蒸気の凝縮を回避し、水和炭酸ネオジムの脱水を回避するように選択される。
【0041】
上記反応容器102中での上記HFと炭酸ネオジムとの接触によって、結果的に反応式1に従って、上記HFおよび炭酸ネオジムが反応する。上記反応は発熱反応であり、上記反応熱は、空気冷却器110を用いて空気冷却することによって除去される。上記反応により、三フッ化ネオジム、(反応水としての)水蒸気および二酸化炭素を形成する。上記水蒸気および二酸化炭素は、未反応のHFと共に、上記反応容器102の上部へ上昇して、ライン7に沿って、オフガスとして、上記反応容器102から排出されるが、上記三フッ化ネオジムは上記反応容器102の底部に集まる。
【0042】
上記反応容器102内で上記反応が起こる限り、反応領域が存在することが理解される。反応領域は、従って、HFと接触している単一の炭酸ネオジムペレット、HFと接触している複数の炭酸ネオジムペレット、または上記反応容器102内のHFと接触している炭酸ネオジムペレットのすべてでさえ含んでいてもよい。
【0043】
外生水は、各反応領域、または反応領域の少なくともいくつかの中に存在してもよく、上記外生水は、水和炭酸ネオジムの結晶水を少なくとも含む。上記反応領域は、反応容器102内のHFと接触している炭酸ネオジムペレットの全てを含むと見なされていない場合、いずれかの特定の反応領域に存在する外生水はまた、反応式1に従って、別の反応領域における反応水として生成された水蒸気を含んでもよい。
【0044】
上記三フッ化ネオジムは、ライン5に沿って、上記反応容器102の底部から除去され、ライン12に沿って向流冷却器116に供給される二酸化炭素を用いる向流冷却器116中で冷却される。このようにして、生成物容器118に供給される冷却された三フッ化ネオジムが得られる。
【0045】
上記冷却された三フッ化ネオジムを、生成物容器118中で、窒素ガスでパージして、HFの残留痕跡を除去する。上記窒素ガスは、窒素源(D参照)からライン線13に沿って生成物容器118に供給される。
【0046】
パージした後、上記三フッ化ネオジムを、更に処理するため(G参照)、ライン6に沿って生成物容器118から取り出す。
【0047】
上記反応容器102の上部に上昇する二酸化炭素、水蒸気および未反応HFのオフガスを、ライン7に沿って、オフガス混合物として反応容器102から回収する。上記混合物をフィルタ120において濾過し、熱交換器106において高温ガス混合物との熱交換によって冷却し、それによって冷却したオフガスの混合物を得る。
【0048】
上記冷却したオフガス混合物を、上記反応容器102の作動圧力も維持するコンプレッサ122において圧縮し、それにより、冷却し、圧縮したオフガス混合物を得る。上記冷却し、圧縮したオフガス混合物を、ライン8に沿って、上記コンプレッサ122から回収する。
【0049】
過剰の二酸化炭素は、ライン11(およびFを参照)に沿って、いくらかの水蒸気と未反応のHFを含む冷却し、圧縮したオフガス混合物から抜き取られる。残りの二酸化炭素から、凝縮器124内の水蒸気の凝縮によって水蒸気を取り去る。ライン10に沿って上記凝縮器を出る凝縮水は、溶解したHFおよび二酸化炭素を含有する。
【0050】
非凝縮HFと水分を含有する二酸化炭素は、ライン9に沿って凝縮器124から回収され、混合点107で、HF蒸発器からのHFを含む加熱されたガス混合物と混合される。最終的に反応容器102に供給される流れの一部を形成する、この流れの含水量は、意図的に上記反応容器102に供給される外生水の一つの可能な供給源である。
【0051】
二酸化炭素の小さな流れがライン9からライン16に沿って流れ、HFスクラバ126においてHFを除去する。上記スクラバを通した得られた二酸化炭素流を、ライン12に沿って冷却器116に供給される上記ネオジム生成物を冷却するために利用する。
【0052】
出願人は、HF、反応水および外生水の凝縮、並びに水和炭酸ネオジムの脱水を回避するように、反応容器102を操作することにより、HFおよび炭酸ネオジムの間の反応、より具体的には反応時の物質移動は、水、具体的には吸着水の存在によって促進されると考えている。従って、出願人は、依然として反応の許容される速度を示しながら、三フッ化ネオジムは、より穏やかな温度で生成することができることを見出した。一般に、本出願人の経験では、従来の知識により、このようなより高い温度でHFのより高い反応性を利用するために、比較的高い温度(大気圧で300℃以上)で反応式1などの反応を行うことを示唆している。この要求は、本発明によって不要となる。
【符号の説明】
【0053】
100 … プロセス
102 … 反応容器
104 … 蒸発器
105、107 … 混合点
106 … 熱交換器
108 … 電気ヒータ
110 … 空気冷却器
112 … 供給ホッパ
114 … スクリューコンベア
116 … 向流冷却器
118 … 生成物容器
120 … フィルタ
122 … コンプレッサ
124 … 凝縮器
126 … HFスクラバ