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特許7087038喫煙物品用香料含有シートおよびそれを含む喫煙物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】喫煙物品用香料含有シートおよびそれを含む喫煙物品
(51)【国際特許分類】
   A24B 15/30 20060101AFI20220613BHJP
【FI】
A24B15/30
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020176809
(22)【出願日】2020-10-21
(62)【分割の表示】P 2018553581の分割
【原出願日】2016-11-30
(65)【公開番号】P2021035370
(43)【公開日】2021-03-04
【審査請求日】2020-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】須堯 三晴
(72)【発明者】
【氏名】田中 康男
【審査官】西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/118034(WO,A1)
【文献】特開昭51-101176(JP,A)
【文献】特開2015-042714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24B 1/00-15/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
増粘多糖類、香料、乳化剤、および嵩増材であるデンプン加水分解物を含み、前記香料の含有量が、喫煙物品用香料含有シートに対して18質量%未満であり、前記デンプン加水分解物が、2~15の範囲に包含されるDE値を有するデンプン加水分解物であり、前記デンプン加水分解物の含有量が、前記増粘多糖類に対して100~500質量%である、喫煙物品用香料含有シート。
【請求項2】
前記デンプン加水分解物が、2~5のDE値を有するデキストリン、10~15のDE値を有する難消化性デキストリン、およびこれらの混合物からなる群より選択される請求項1に記載の喫煙物品用香料含有シート。
【請求項3】
前記デンプン加水分解物の含有量が、前記増粘多糖類に対して200~500質量%である請求項1または2に記載の喫煙物品用香料含有シート。
【請求項4】
前記喫煙物品用香料含有シートが、0.05~0.15mmの厚さを有する請求項1~3の何れか1項に記載の喫煙物品用香料含有シート。
【請求項5】
前記増粘多糖類が、ジェランガム、ジェランガムとタマリンドガムとの混合物、および寒天からなる群より選択される請求項1、2および4の何れか1項に記載の喫煙物品用香料含有シート。
【請求項6】
前記増粘多糖類の配合量が、前記喫煙物品用香料含有シートの原料中の水以外の構成成分の合計質量に対して10~35質量%である請求項1~5の何れか1項に記載の喫煙物品用香料含有シート。
【請求項7】
前記乳化剤の含有量が、前記増粘多糖類に対して0.5~5質量%である請求項1~6の何れか1項に記載の喫煙物品用香料含有シート。
【請求項8】
前記喫煙物品用香料含有シートに対して10質量%未満の水を含む請求項1~7の何れか1項に記載の喫煙物品用香料含有シート。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1項に記載の喫煙物品用香料含有シートの切断片を含む喫煙物品。
【請求項10】
たばこ刻を更に含み、前記喫煙物品用香料含有シートの切断片が前記たばこ刻と混合されている請求項9に記載の喫煙物品。
【請求項11】
前記切断片が、0.05~0.15mmの厚さを有する請求項1~8の何れか1項に記載の喫煙物品用香料含有シートの切断片であり、かつ2.0~7.0mmの長辺および0.5~2.0mmの短辺を有する請求項10に記載の喫煙物品。
【請求項12】
前記切断片が、前記たばこ刻と前記切断片との合計質量に対して4~20質量%の量で含まれる請求項10または請求項11に記載の喫煙物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、喫煙物品用香料含有シートおよびそれを含む喫煙物品に関する。
【背景技術】
【0002】
増粘多糖類を含む不揮発性ゲル化マトリックスに香料を分散させた喫煙物品用香料含有シートが知られている(特許文献1~3を参照)。かかる香料含有シートは、増粘多糖類に被覆された状態で香料を含むため、香料の高い蔵置安定性を示す。香料含有シートは、増粘多糖類および香料を含む原料スラリーを基材上に伸展させ、乾燥させることにより製造される。製造された香料含有シートは切断され、喫煙物品の充填材として使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2012/118032号
【文献】国際公開第2012/118033号
【文献】国際公開第2012/118034号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、香料含有シートの切断片が香料を低濃度で含むと、所望の香味を発現させるためには多量の切断片を喫煙物品に添加する必要があるが、切断片を喫煙物品に均一に分布させることができることに着目した。かかる喫煙物品は、切断片の均一な分布により、喫煙期間にわたって安定して香味を提供することが期待できる。
【0005】
この考えに従って、本発明者らが、香料を低濃度で含む香料含有シートを製造することを試みたところ、製造時に不具合が生じた。すなわち、公知の原料スラリーの組成をベースに、香料の配合濃度を減少させたところ、所定の厚さを有するシートを製造するために必要な原料スラリーの総量が増大し、これにより乾燥時間が増大した(後述の実施例1の試料1および2を参照)。
【0006】
この問題を解決するために、香料の配合濃度の減少分を増粘多糖類で補ったところ、原料スラリーの粘度が増大し、原料の混錬および乳化作業、並びに原料スラリーの伸展作業に支障をきたした(後述の実施例1の試料3を参照)。そこで、本発明は、香料含有シートが、香料の配合濃度が低い組成を有している場合であっても、香料含有シートを実用的な製造条件で安定して製造可能にする技術を提供し、かかる香料含有シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するために本発明者らが検討した結果、嵩増材を含む香料含有シートが、香料の配合量を減らしても実用的な製造条件で製造可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明の第一側面によると、増粘多糖類、香料、乳化剤および嵩増材を含む喫煙物品用香料含有シートが提供される。
【0009】
本発明の第二側面によると、前記喫煙物品用香料含有シートの切断片を含む喫煙物品が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、香料含有シートが、香料の配合濃度が低い組成を有している場合であっても、実用的な製造条件で安定して製造することが可能な喫煙物品用香料含有シートおよびそれを含む喫煙物品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】候補嵩増材の種類を変えた場合の原料スラリーの粘度を示すグラフ。
図2】候補嵩増材の種類を変えた場合の香料含有シートの収縮率を示すグラフ。
図3】候補嵩増材の種類を変えた場合の香料含有シートの香料保持率を示すグラフ。
図4】候補嵩増材の種類を変えた場合の原料スラリーの粘度を示すグラフ。
図5】候補嵩増材の種類を変えた場合の香料含有シートの収縮率を示すグラフ。
図6】候補嵩増材の種類を変えた場合の香料含有シートの香料保持率を示すグラフ。
図7】嵩増材の配合割合と乾燥時間との関係を示すグラフ。
図8】嵩増材の配合割合を変えた場合の原料スラリーの粘度を示すグラフ。
図9】嵩増材の配合割合を変えた場合の香料含有シートの収縮率を示すグラフ。
図10】嵩増材の配合割合を変えた場合の香料含有シートの香料保持率を示すグラフ。
図11】香料含有シートの切断片の配合割合と香料含有量の変動係数との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を説明するが、以下の説明は、本発明を詳説することを目的とし、本発明を限定することを意図しない。
【0013】
1.喫煙物品用香料含有シート
本発明の喫煙物品用香料含有シート(以下、単に香料含有シートまたはシートともいう)は、増粘多糖類、香料、乳化剤および嵩増材を含む。
【0014】
香料含有シートは、増粘多糖類、香料、乳化剤、および嵩増材を含む原料を水中で混錬して原料スラリーを調製し、原料スラリーを基材上に伸展させ、乾燥させることにより製造することができる。
【0015】
以下、香料含有シートの各構成成分について説明する。
【0016】
香料含有シートに含有される増粘多糖類は、シート中に分散した香料を固定して被覆する性質を有する。増粘多糖類は、例えば、カラギーナン、寒天、キサンタンガム、ジェランガム、サイリウムシードガム、もしくはコンニャクグルコマンナンの単成分系;またはカラギーナン、ローカストビーンガム、グアーガム、寒天、ジェランガム、タマリンドガム、キサンタンガム、タラガム、コンニャクグルコマンナン、デンプン、カシアガム、およびサイリウムシードガムからなる群より選択される2以上の成分を組み合わせた複合系である。
【0017】
好ましくは、増粘多糖類は、カラギーナン、寒天、キサンタンガム、もしくはジェランガムの単成分系;またはカラギーナン、寒天、キサンタンガム、もしくはジェランガムに、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリンドガム、タラガム、コンニャクグルコマンナン、カシアガム、およびサイリウムシードガムからなる群より選択される1以上の成分を組み合わせた複合系である。
【0018】
より好ましくは、増粘多糖類は、カラギーナン、寒天、キサンタンガム、ジェランガム、およびジェランガムとタマリンドガムの混合物からなる群より選択される。
【0019】
カラギーナン、寒天、キサンタンガムまたはジェランガムの水溶液は、特定の温度以下に冷却するとゲル化し(すなわち、流動性を失って固化し)、一旦ゲル化すると、その後、温度を上昇させてゲルに転移した温度に達しても容易にゾル化せず、ゲル化状態を維持することができるという性質(以下、「温度応答性ゾルゲル転移特性」という)を有する。このため、原料スラリーが、増粘多糖類として、カラギーナン、寒天、キサンタンガム、ジェランガムの何れかを含む場合、原料スラリーを一旦冷却してゲル化させ、ゲル化した原料を高温で乾燥させることにより短時間でシートを製造することができるという利点を有する。
【0020】
さらに好ましくは、増粘多糖類は、寒天、ジェランガム、およびジェランガムとタマリンドガムの混合物からなる群より選択される。
【0021】
増粘多糖類としてジェランガムとタマリンドガムとの混合物を使用する場合、ジェランガムとタマリンドガムの質量比は、好ましくは1:1~3:1の範囲である。
【0022】
原料スラリー中の増粘多糖類の配合量は、原料スラリー中の水以外の構成成分の合計質量(すなわち、乾物質量)に対して、好ましくは10~35質量%、より好ましくは12~25質量%である。増粘多糖類の配合量(質量%)は、原料スラリー中の水以外の各構成成分の配合量の値を用いて算出することができる。
【0023】
香料含有シートに含有される香料としては、喫煙物品に用いられる香料であれば限定されることなく任意の香料を使用することができる。主な香料としては、メンソール、葉たばこ抽出エキス、天然植物性香料(例えば、シナモン、セージ、ハーブ、カモミール、葛草、甘茶、クローブ、ラベンダー、カルダモン、チョウジ、ナツメグ、ベルガモット、ゼラニウム、蜂蜜エッセンス、ローズ油、レモン、オレンジ、ケイ皮、キャラウェー、ジャスミン、ジンジャー、コリアンダー、バニラエキス、スペアミント、ペパーミント、カシア、コーヒー、セロリー、カスカリラ、サンダルウッド、ココア、イランイラン、フェンネル、アニス、リコリス、セントジョンズブレッド、スモモエキス、ピーチエキス等)、糖類(例えば、グルコース、フルクトース、異性化糖、カラメル等)、ココア類(パウダー、エキス等)、エステル類(例えば、酢酸イソアミル、酢酸リナリル、プロピオン酸イソアミル、酪酸リナリル等)、ケトン類(例えば、メントン、イオノン、ダマセノン、エチルマルトール等)、アルコール類(例えば、ゲラニオール、リナロール、アネトール、オイゲノール等)、アルデヒド類(例えば、バニリン、ベンズアルデヒド、アニスアルデヒド等)、ラクトン類(例えば、γ-ウンデカラクトン、γ-ノナラクトン等)、動物性香料(例えば、ムスク、アンバーグリス、シベット、カストリウム等)、炭化水素類(例えば、リモネン、ピネン等)が挙げられる。これらの香料は、固体で使用されてもよいし、適切な溶媒、例えばプロピレングリコール、エチルアルコール、ベンジルアルコール、トリエチルシトレートに溶解または分散させて使用されてもよい。好ましくは、乳化剤の添加により溶媒中で分散状態が形成されやすい香料、たとえば疎水性香料や油溶性香料等を用いることができる。これらの香料は、単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。
【0024】
シート中の香料の含有量は、好ましくは、香料含有シートの総質量に対して18質量%未満である。シート中の香料の含有量は、香料含有シートの総質量に対して、より好ましくは2.5質量%以上18質量%未満、さらに好ましくは2.5~12質量%、最も好ましくは3~6質量%である。シート中の香料の含有量は、後述の実施例に記載の測定方法により求めることができる。
【0025】
香料含有シートに含有される乳化剤としては、任意の乳化剤を使用することができる。乳化剤としては、例えばレシチン、具体的にはサンレシチンA-1(太陽化学(株))を使用することができる。
【0026】
シート中の乳化剤の含有量は、シート中の増粘多糖類の質量に対して、好ましくは0.5~5質量%、より好ましくは1.0~4.5質量%である。シート中の乳化剤の含有量は、原料スラリー中の乳化剤および増粘多糖類の配合量の値を用いて算出することができる。
【0027】
香料含有シートに含有される嵩増材は、原料スラリー中の水以外の構成成分の合計質量(すなわち、乾物質量)を増加させ、最終的に香料含有シートの嵩を増やす役割を果たす。すなわち、嵩増材は、香料含有シートの嵩を増やす役割のみを果たし、香料含有シートの本来の機能に影響を及ぼさない物質である。具体的には、嵩増材は、香料含有シートの嵩を増やす役割のみを果たし、以下の(i)および(ii)の要件を満たす物質である:
(i)原料スラリーの粘度を実質的に上昇させない;
(ii)香料含有シートの香料保持機能に悪影響を及ぼさない。
【0028】
デンプン等の原料スラリーの粘度を上昇させる物質は嵩増材に含まれない(後述の実施例1の試料7を参照)。ここで「原料スラリーの粘度を実質的に上昇させない」とは、シートの製造を困難にする程度まで(すなわち、原料スラリーの混錬および乳化作業を困難にする程度まで)原料スラリーの粘度を上昇させないことを意味する。また、「香料含有シートの香料保持機能に悪影響を及ぼさない」とは、香料含有シートの本来の機能(すなわち、喫煙物品中での香味成分としての機能)を果たさない程度までシートの香料保持機能を低下させないことを意味する。
【0029】
なお、当然のことながら、嵩増材は、添加剤として喫煙物品に添加することが当該技術分野において許容される物質である。
【0030】
また、嵩増材としては、喫煙物品の香喫味に影響を及ぼさない物質が好ましい(後述の実施例1の「1-3.香喫味」を参照)。また、嵩増材としては、シートの製造工程に悪影響を及ぼさない物質が好ましく、たとえば、乾燥工程において、シートの著しい収縮を引き起こすように作用しない物質が好ましい(後述の実施例1の「1-2.シートの収縮率」を参照)。
【0031】
嵩増材は、好ましくは、デンプン加水分解物である。デンプン加水分解物とは、デンプンを加水分解する工程を含むプロセスにより得られる物質を指す。デンプン加水分解物は、例えば、デンプンを直接加水分解して得られる物質(すなわち、デキストリン)、またはデンプンを加熱処理した後に加水分解して得られる物質(すなわち、難消化性デキストリン)である。
【0032】
デンプン加水分解物は、デンプンを原料として用いて、加水分解工程を含むプロセスにより調製されてもよいし、市販されるデンプン加水分解物を使用してもよい。デンプン加水分解物を調製する場合、原料となる「デンプン」としては、天然由来のデンプンを使用することができる。一般的には、植物由来のデンプン、例えば、コーンスターチ、小麦デンプン、馬鈴薯デンプン、甘藷デンプン等を使用することができる。また、所望のDE値を有するデンプン加水分解物は、加水分解条件を制御することにより得ることができる。
【0033】
デンプン加水分解物は、一般に、2~40の範囲に包含されるDE値を有するデンプン加水分解物、好ましくは2~20の範囲に包含されるDE値を有するデンプン加水分解物である。2~20の範囲に包含されるDE値を有するデンプン加水分解物として、例えば、パインデックス#100(松谷化学工業(株))、パインファイバー(松谷化学工業(株))、TK-16(松谷化学工業(株))を使用することができる。
【0034】
DEは、dextrose equivalentの略であり、DE値は、デンプンの加水分解の程度、すなわちデンプンの糖化率を示す値である。本発明においてDE値は、ウィルシュテッター・シューデル(Willstatter-Schudel)法により測定された値である。ウィルシュテッター・シューデル(Willstatter-Schudel)法により特定の数値としてDE値が測定される。加水分解されたデンプン(デンプン加水分解物)の特性、例えば、デンプン加水分解物の分子量やデンプン加水分解物を構成する糖分子の配列などの特性は、デンプン加水分解物の分子ごとに一様ではなく、ある分布またはバリエーションをもって存在している。デンプン加水分解物の特性の分布やバリエーション、またはカットされる区間の違いなどにより、デンプン加水分解物は、その分子ごとに異なる物性特徴(例えばDE値)が発現される。このように、デンプン加水分解物は、異なる物性特徴を示す分子の集合であるが、ウィルシュテッター・シューデル(Willstatter-Schudel)法での測定結果(すなわちDE値)は、デンプンの加水分解の程度をあらわす代表値として取り扱われる。
【0035】
さらに好ましくは、デンプン加水分解物は、2~5のDE値を有するデキストリン、10~15のDE値を有する難消化性デキストリン、およびこれらの混合物からなる群より選択される。2~5のDE値を有するデキストリンとして、例えばパインデックス#100(松谷化学工業(株))を使用することができる。10~15のDE値を有する難消化性デキストリンとして、例えばパインファイバー(松谷化学工業(株))を使用することができる。
【0036】
嵩増材は、シートの嵩を増すという嵩増材の機能を発揮することができ、かつ喫煙物品の香喫味に影響を及ぼさない量で、添加することができる。シート中の嵩増材の含有量は、増粘多糖類の質量に対して、好ましくは100~500質量%、より好ましくは200~500質量%である。シート中の嵩増剤の含有量は、原料スラリー中の嵩増剤および増粘多糖類の配合量の値を用いて算出することができる。
【0037】
嵩増材を香料含有シートの原料に添加することにより、香料含有シートが、香料の配合濃度が低い組成を有している場合であっても、香料含有シートを実用的な製造条件で安定して製造することが可能である。具体的には、嵩増材は、原料スラリーの乾物質量を増加させ、シートの嵩を増やす役割を果たすため、所望の厚さを有するシートを製造するまでに必要な乾燥時間を短縮することができる。また、嵩増材は、原料スラリーの粘度を実質的に上昇させないため、原料スラリーの混錬作業および伸展作業に支障をきたすことがない。
【0038】
また、香料含有シートは、水を含んでいてもよい。すなわち、原料スラリーに含まれる水は、乾燥後の香料含有シートに残っていてもよい。香料含有シートに水が残っている場合の水分含量は、シートの総質量に対して、好ましくは10質量%未満、より好ましくは3~9質量%、さらに好ましくは3~6質量%である。シートの水分含量は、下記の通り、GC-TCDを用いて求めることができる。
【0039】
まず、香料含有シートを秤量した後、所定量のメタノール(試薬特級もしくはそれ以上)を加えて密閉し、40分間振とう(200rpm)する。これを一晩放置後、再度40分間振とう(200rpm)した後、静置する。静置後の上澄み液を測定溶液とする。
【0040】
測定溶液をGC-TCDにかけて、検量線法により定量する。GC-TCDの条件は例えば下記の条件とすることができる。
GC-TCD;Hewlett Packard社製6890ガスクロマトグラフ
Column ;HP Polapack Q (packed column) Constant Flow mode 20.0 mL/min
Injection ;1.0μL
Inlet ;EPC purge packed column inlet Heater;230℃
Gas;He Total flow;21.1 mL/min
Oven ;160℃(hold 4.5 min)→(60℃/min)→220℃(hold 4.0 min)
Detector ;TCD検出器 Reference Gas(He)流量;20 mL/min
make up gas(He)3.0 mL/min
Signal rate ;5 Hz
【0041】
香料含有シートは、必要に応じて、追加の成分を含んでいてもよい。たとえば、香料含有シートは、保湿剤を含んでいてもよい。保湿剤としては、例えば、グリセリン、ヒアルロン酸、塩化マグネシウムなどが使用され得る。また、香料含有シートは、着色剤を含んでいてもよい。着色剤としては、例えばココア、カラメル、青色2号等の食添染料、クロロゲン酸等のポリフェノール類、メラノイジンなどが使用され得る。
【0042】
香料含有シートは、例えば0.05~0.15mmの厚さ、好ましくは0.06~0.10mmの厚さを有する。
【0043】
2.香料含有シートの製造方法
香料含有シートは、公知の手法に従って、増粘多糖類、香料、乳化剤、および嵩増材を含む原料を水中で混錬して原料スラリーを調製し、原料スラリーを基材上に伸展させ、乾燥させることにより製造することができる。
【0044】
原料スラリーの組成は、たとえば、水10リットルに対して、350~500gの増粘多糖類、400~600gの香料、10~20gの乳化剤、1000~2000gの嵩増材とすることができる。原料の混練は、60~100℃に加熱しながら、ホモジナイザーを用いて公知の乳化技術により行うことができる。得られた原料スラリーは、たとえば10,000[mPa・s/60℃]以下の粘度、好ましくは1,000~10,000[mPa・s/60℃]の粘度、より好ましくは1,000~5,000[mPa・s/60℃]の粘度を有する。
【0045】
得られた原料スラリーは、たとえば、乾燥後に得られるシートの厚さが、0.05~0.15mm程度になるように基材上に伸展させることができる。その後、原料スラリーが所望の水分含量になるまで乾燥させる。
【0046】
上述のとおり、増粘多糖類として、温度応答性ゾルゲル転移特性を有する増粘多糖類を含む場合には、基材上に伸展させた原料スラリーを一旦0~40℃の試料温度に冷却してゲル化させ、その後、ゲル化した原料を70~100℃の試料温度で加熱により乾燥させることができる。この場合、増粘多糖類の水溶液は、一旦ゲル化すると、その後、温度を上昇させてゲルに転移した温度に達しても容易にゾル化しないため、高温で加熱乾燥させることができ、乾燥時間を短縮することができる。
【0047】
3.喫煙物品
本発明の香料含有シートは、たとえば、通常のたばこ刻と同等のサイズに裁刻し、得られた切断片を任意の喫煙物品に組み込むことができる。
【0048】
具体的には、香料含有シートは、たばこ充填材を燃焼させる燃焼型喫煙物品、たとえばシガレット;またはたばこ充填材を燃焼させない非燃焼型喫煙物品、たとえば加熱型吸引器などに組み込むことができる。加熱型吸引器としては、炭素熱源の燃焼熱でたばこ充填材を加熱する炭素熱源型吸引器(たとえばWO2006/073065を参照);吸引器と吸引器を電気加熱するための加熱デバイスとを備えた電気加熱型吸引器(たとえばWO2010/110226を参照);または香喫味源を含有する液状のエアロゾル源を加熱により霧化する液体霧化型吸引器(たとえばWO2015/046385を参照)などが挙げられる。
【0049】
すなわち、別の側面によれば、本発明の香料含有シートの切断片を含む喫煙物品が提供される。具体的には、たばこ刻と、当該たばこ刻と混合された本発明の香料含有シートの切断片とを含む喫煙物品が提供される。
【0050】
好ましくは、香料含有シートの切断片は、0.05~0.15mm、好ましくは0.06~0.10mmの厚さを有する香料含有シートの切断片であり、2.0~7.0mmの長辺および0.5~2.0mmの短辺を有する。
【0051】
好ましくは、香料含有シートの切断片は、たばこ刻と切断片との合計質量に対して4~20質量%の量で喫煙物品に含まれる。切断片を、たばこ刻と切断片との合計質量に対して4質量%以上の量で喫煙物品に配合すると、喫煙物品中の香料の分布のばらつきを抑えることができる。
【0052】
4.好ましい態様
好ましい態様によれば、香料含有シートは香料を低濃度で含む。香料含有シートが香料を低濃度で含む場合、香料含有シートの切断片を喫煙物品に添加して所望の香味を発現させるためには、香料含有シートの切断片を多量に喫煙物品に添加する必要がある。この場合、香料含有シートの切断片を多量に喫煙物品に添加するため、切断片を喫煙物品内に均一に分布させることができる。かかる喫煙物品は、切断片の均一な分布により、喫煙期間にわたって安定して香味を提供することができるという利点を有する。
【0053】
しかし、香料を低濃度で含む香料含有シートを、公知の原料スラリーの組成をベースに作成すると、原料スラリーの乾物質量が小さいため、所定の厚さを有するシートを製造するためには、必要な原料スラリーの総量が増大し、これにより乾燥時間が増大するという問題が生じる。好ましい態様においては、このような製造上の問題は、嵩増材を香料含有シートの原料に添加することにより解決し、その結果、所定の厚さを有し香料を低濃度で含むシートの製造を可能にする。
【0054】
以下に、香料含有シートの好ましい態様について具体的に記載する。
[1A]増粘多糖類、香料、乳化剤および嵩増材を含み、香料の含有量が、香料含有シートに対して18質量%未満である、喫煙物品用香料含有シート。
[2A]香料の含有量が、香料含有シートに対して、2.5質量%以上18質量%未満、好ましくは2.5~12質量%、より好ましくは3~6質量%である[1A]に記載の喫煙物品用香料含有シート。
[3A]嵩増材が、デンプン加水分解物である[1A]または[2A]に記載の喫煙物品用香料含有シート。
[4A]デンプン加水分解物が、2~40の範囲に包含されるDE値、好ましくは2~20の範囲に包含されるDE値を有するデンプン加水分解物である[3A]に記載の喫煙物品用香料含有シート。
[5A]デンプン加水分解物が、2~5のDE値を有するデキストリン、10~15のDE値を有する難消化性デキストリン、およびこれらの混合物からなる群より選択される[4A]に記載の喫煙物品用香料含有シート。
[6A]嵩増材の含有量が、増粘多糖類に対して、100~500質量%、好ましくは200~500質量%である[1A]~[5A]の何れか一に記載の喫煙物品用香料含有シート。
[7A]香料含有シートが、0.05~0.15mm、好ましくは0.06~0.10mmの厚さを有する[1A]~[6A]の何れか一に記載の喫煙物品用香料含有シート。
[8A]増粘多糖類が、カラギーナン、寒天、キサンタンガム、もしくはジェランガムの単成分系;またはカラギーナン、寒天、キサンタンガム、もしくはジェランガムに、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリンドガム、タラガム、コンニャクグルコマンナン、カシアガム、およびサイリウムシードガムからなる群より選択される1以上の成分を組み合わせた複合系である[1A]~[7A]の何れか一に記載の喫煙物品用香料含有シート。
[9A]増粘多糖類が、カラギーナン、寒天、キサンタンガム、ジェランガム、およびジェランガムとタマリンドガムの混合物からなる群より選択される[1A]~[7A]の何れか一に記載の喫煙物品用香料含有シート。
[10A]増粘多糖類が、ジェランガム、ジェランガムとタマリンドとの混合物、および寒天からなる群より選択される[1A]~[7A]の何れか一に記載の喫煙物品用香料含有シート。
[11A]原料中の増粘多糖類の配合量が、香料含有シートの原料中の水以外の構成成分の合計質量に対して、10~35質量%、好ましくは12~25質量%である[1A]~[10A]の何れか一に記載の喫煙物品用香料含有シート。
[12A]乳化剤の含有量が、増粘多糖類に対して、0.5~5質量%、好ましくは1.0~4.5質量%である[1A]~[11A]の何れか一に記載の喫煙物品用香料含有シート。
[13A]香料含有シートに対して、10質量%未満、好ましくは3~9質量%、より好ましくは3~6質量%の水を含む[1A]~[12A]の何れか一に記載の喫煙物品用香料含有シート。
【0055】
以下に、喫煙物品の好ましい態様について具体的に記載する。
[1B]上記[1A]~[13A]の何れか一に記載の喫煙物品用香料含有シートの切断片を含む喫煙物品。
[2B]たばこ刻を更に含み、喫煙物品用香料含有シートの切断片がたばこ刻と混合されている[1B]に記載の喫煙物品。
[3B]切断片が、0.05~0.15mm、好ましくは0.06~0.10mmの厚さを有する上記[1A]~[13A]の何れか一に記載の喫煙物品用香料含有シートの切断片であり、かつ2.0~7.0mmの長辺および0.5~2.0mmの短辺を有する[2B]に記載の喫煙物品。
[4B]切断片が、たばこ刻と切断片との合計質量に対して4~20質量%の量で含まれる[2B]または[3B]に記載の喫煙物品。
[5B]喫煙物品が、燃焼型喫煙物品、好ましくはシガレットである[1B]~[4B]の何れか一に記載の喫煙物品。
[6B]喫煙物品が、非燃焼型喫煙物品、好ましくは加熱型吸引器、より好ましくは炭素熱源型吸引器、電気加熱型吸引器、または液体霧化型吸引器である[1B]~[4B]の何れか一に記載の喫煙物品。
【0056】
以下に、香料含有シートの製造方法の好ましい態様について具体的に記載する。
[1C]増粘多糖類、香料、乳化剤、嵩増材および水を含む原料スラリーを基材上に伸展させること、および伸展させた原料を乾燥させることを含み、香料含有シート中の香料の含有量が、香料含有シートに対して18質量%未満である、喫煙物品用香料含有シートの製造方法。
[2C]カラギーナン、寒天、キサンタンガム、もしくはジェランガムの単成分系;またはカラギーナン、寒天、キサンタンガム、もしくはジェランガムに、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリンドガム、タラガム、コンニャクグルコマンナン、カシアガム、およびサイリウムシードガムからなる群より選択される1以上の成分を組み合わせた複合系である増粘多糖類、香料、乳化剤、嵩増材および水を含み、60~90℃の温度を有する原料スラリーを基材上に伸展させること、伸展させた原料スラリーを、0~40℃の試料温度に冷却してゲル化させること、およびゲル化した原料を加熱して、70~100℃の試料温度で乾燥させることを含み、香料含有シート中の香料の含有量が、香料含有シートに対して18質量%未満である、喫煙物品用香料含有シートの製造方法。
[3C]増粘多糖類が、カラギーナン、寒天、キサンタンガム、ジェランガム、およびジェランガムとタマリンドガムの混合物からなる群より選択される[2C]に記載の方法。
[4C]増粘多糖類が、ジェランガム、ジェランガムとタマリンドとの混合物、および寒天からなる群より選択される[2C]に記載の方法。
[5C]香料含有シート中の香料の含有量が、香料含有シートに対して、2.5質量%以上18質量%未満、好ましくは2.5~12質量%、より好ましくは3~6質量%である[1C]~[4C]の何れか一に記載の方法。
[6C]嵩増材が、デンプン加水分解物である[1C]~[5C]の何れか一に記載の方法。
[7C]デンプン加水分解物が、2~40の範囲に包含されるDE値、好ましくは2~20の範囲に包含されるDE値を有するデンプン加水分解物である[6C]に記載の方法。
[8C]デンプン加水分解物が、2~5のDE値を有するデキストリン、10~15のDE値を有する難消化性デキストリン、およびこれらの混合物からなる群より選択される[7C]に記載の方法。
[9C]香料含有シート中の嵩増材の含有量が、増粘多糖類に対して、100~500質量%、好ましくは200~500質量%である[1C]~[8C]の何れか一に記載の方法。
[10C]香料含有シートが、0.05~0.15mm、好ましくは0.06~0.10mmの厚さを有する[1C]~[9C]の何れか一に記載の方法。
[11C]原料中の増粘多糖類の配合量が、香料含有シートの原料中の水以外の構成成分の合計質量に対して、10~35質量%、好ましくは12~25質量%である[1C]~[10C]の何れか一に記載の方法。
[12C]香料含有シート中の乳化剤の含有量が、増粘多糖類に対して、0.5~5質量%、好ましくは1.0~4.5質量%である[1C]~[11C]の何れか一に記載の方法。
[13C]香料含有シートが、10質量%未満、好ましくは3~9質量%、より好ましくは3~6質量%の水分含量になるまで乾燥が行われる[1C]~[12C]の何れか一に記載の方法。
【実施例
【0057】
[実施例1]
本実施例では、嵩増材の候補となる物質(以下、候補嵩増材と呼ぶ)を用いて、香料含有シートを作成し、候補嵩増材が4つの評価項目に及ぼす影響、すなわち「1-1.原料スラリーの粘度」、「1-2.シートの収縮率」、「1-3.香喫味」、および「1-4.蔵置後の香料保持率」に及ぼす影響ついて評価した。実施例1では、増粘多糖類として、ジェランガムおよびタマリンドガムを1:1の質量比で使用した。
【0058】
1-1.原料スラリーの粘度
(1)原料スラリーの調製
[試料1]
試料1は、特許文献1~3に開示される実施例1に対応する。
[組成]
水 100質量部
脱アシル型ジェランガム(CP Kelco社、ケルコゲル)2.5質量部
タマリンドガム(MRCポリサッカライド(株)、TG-120)2.5質量部
レシチン(太陽化学(株)、サンレシチンA-1) 0.1質量部
l-メンソール(和光純薬工業(株)、試薬特級) 12.5質量部
【0059】
[手順]
約70℃に加熱保温した水0.3リットルに、脱アシル型ジェランガム、タマリンドガム、およびレシチンを溶解させて、多糖類水溶液を作成した。多糖類水溶液にl-メンソールを添加し、ホモジナイザー(エーテックジャパン社、DMM型)で混錬および乳化を行い、原料スラリーを調製した。
【0060】
[試料2]
試料2は、試料1の組成をベースに香料の配合量を削減した。
[組成]
水 100質量部
脱アシル型ジェランガム(CP Kelco社、ケルコゲル)2.5質量部
タマリンドガム(MRCポリサッカライド(株)、TG-120)2.5質量部
レシチン(太陽化学(株)、サンレシチンA-1) 0.1質量部
l-メンソール(和光純薬工業(株)、試薬特級) 0.13質量部
[手順]
試料1と同じ手順で原料スラリーを調製した。
【0061】
[試料3]
試料3は、試料1の組成をベースに香料の配合量を削減し、削減した香料を増粘多糖類で補填した。
[組成]
水 100質量部
脱アシル型ジェランガム(CP Kelco社、ケルコゲル)8.5質量部
タマリンドガム(MRCポリサッカライド(株)、TG-120)8.5質量部
レシチン(太陽化学(株)、サンレシチンA-1) 0.34質量部
l-メンソール(和光純薬工業(株)、試薬特級) 0.43質量部
[手順]
試料1と同じ手順で原料スラリーを調製した。
【0062】
[試料4]
試料4は、候補嵩増材として、グラニュー糖(香料グレード)を添加した。
[組成]
水 100質量部
脱アシル型ジェランガム(CP Kelco社、ケルコゲル)2.5質量部
タマリンドガム(MRCポリサッカライド(株)、TG-120)2.5質量部
レシチン(太陽化学(株)、サンレシチンA-1) 0.1質量部
候補嵩増材 12.0質量部
l-メンソール(和光純薬工業(株)、試薬特級) 0.45質量部
【0063】
[手順]
約70℃に加熱保温した水0.3リットルに、脱アシル型ジェランガム、タマリンドガム、およびレシチンを溶解させて、多糖類水溶液を作成した。多糖類水溶液に候補嵩増材を添加した後、l-メンソールを添加し、ホモジナイザー(エーテックジャパン社、DMM型)で混錬および乳化を行い、原料スラリーを調製した。
【0064】
[試料5]
試料5は、候補嵩増材としてセルロース(シグマ-アルドリッチ社、cellulose microcrystalline)を使用したこと以外は、試料4と同じ組成および手順で原料スラリーを調製した。
【0065】
[試料6]
試料6は、候補嵩増材として炭酸カルシウム(和光純薬工業(株)、試薬特級)を使用したこと以外は、試料4と同じ組成および手順で原料スラリーを調製した。
【0066】
[試料7]
試料7は、候補嵩増材としてデンプン(和光純薬工業(株)、試薬 とうもろこし由来)を使用したこと以外は、試料4と同じ組成および手順で原料スラリーを調製した。
【0067】
[試料8]
試料8は、候補嵩増材としてパインデックス#100(松谷化学工業(株)、2~5のDE値を有するデキストリン)を使用したこと以外は、試料4と同じ組成および手順で原料スラリーを調製した。
【0068】
[試料9]
試料9は、候補嵩増材としてパインファイバー(松谷化学工業(株)、10~15のDE値を有する難消化性デキストリン)を使用したこと以外は、試料4と同じ組成および手順で原料スラリーを調製した。
【0069】
(2)香料含有シートの調製
試料4~9の原料スラリーを用いて以下のとおり香料含有シートを調製した。
原料スラリーを、サランラップ(登録商標)を被覆したステンレス板上に1.0mmの厚さで伸展させた。伸展させた原料スラリーを20℃の試料温度に一旦冷却してゲル化させた。その後、熱風発生機(宮本製作所、ニューホットブラスターMS5841-6D、設定温度:約140℃)により発生させた約100℃の熱風を、ゲル化した原料に10分間程度当てて、原料を乾燥させた。これにより香料含有シート(厚さ:約0.1mm)を調製した。
【0070】
試料4~9の香料含有シートの香料含有量を後述の方法で測定したところ、それぞれ、シートに対して、0.08質量%、0.94質量%、0.04質量%、≒0質量%、≒0質量%、≒0質量%であった。
【0071】
(3)原料スラリーの粘度測定
試料1~9の原料スラリーの粘度を以下のとおりレオメータ(Thermo Haake社、RheoStrees-1)で測定した。
【0072】
原料スラリーの粘度は、複素粘度により評価した。測定条件の詳細を以下に記す。
レオメータ;Thermo Haake社、RheoStrees-1
センサー;Φ60mmプレート-プレート(ギャップ;1.0mm)
振幅条件;Control Stress mode(5Pa)1Hz
温度条件;80℃→20℃(降温)/20℃→80℃(昇温)(各3℃/分)
なお、粘度測定操作中の試料側面からの乾燥による造膜の影響を排除するため、試料側面をシリコーンオイル(信越化学工業(株)、KF-50-1000CS)によりシールした。
【0073】
(4)結果
粘度測定の結果を図1に示す。
試料2の原料スラリーは、試料1の原料スラリーの組成をベースに香料の配合量を削減したが、試料1と同様、問題なく乳化作業および伸展作業を行うことができる程度の粘度を有していた。しかしながら、試料2の原料スラリーを用いて所定の厚さを有する香料含有シートを調製しようと試みると、所定の厚さを有するシートを製造するために必要な原料スラリーの総量が増大した。これにより乾燥時間が増大するという問題が生じた。
【0074】
これらの問題を解決するために、試料3で、香料の配合濃度の減少分を増粘多糖類で補ったところ、原料スラリーの粘度が増大し、原料の混錬および乳化作業、並びに原料スラリーの伸展作業に支障をきたした。
【0075】
試料4~9では、香料の配合濃度の減少分を候補嵩増材で補った。試料4、試料5、試料6、試料8および試料9は、それぞれ、候補嵩増材としてグラニュー糖、セルロース、炭酸カルシウム、デキストリン、および難消化性デキストリンを使用したところ、原料スラリーは、問題なく乳化作業および伸展作業を行うことができる程度の粘度を有していた。また、試料4、試料5、試料6、試料7、試料8および試料9の原料スラリーを用いて香料含有シートを調製したところ、候補嵩増材は、シートの嵩を増やす役割を果たしたため、所定の厚さを有し香料を低濃度で含むシートを製造するまでに必要な乾燥時間を短縮することができた。
【0076】
1-2.シートの収縮率
(1)香料含有シートの調製
試料4~9の原料スラリーを、上述のとおり、伸展させ、乾燥させて香料含有シートを調製した。なお、試料7は、原料スラリーの粘度が増大し、原料スラリーを均一な厚さに伸展させることができなかったため、試料7をここでの評価の対象から除外した。
【0077】
(2)収縮率の測定
伸展させた原料スラリーの一辺の長さと、調製直後の香料含有シートの一辺の長さを測定した。測定値から、以下の式により収縮率を求めた。
収縮率(%)=[{(伸展させた原料スラリーの一辺の長さ)-(調製直後の香料含有シートの一辺の長さ)}/(伸展させた原料スラリーの一辺の長さ)]×100
【0078】
(3)結果
収縮率の測定結果を図2に示す。
試料4(候補嵩増材:グラニュー糖)、試料8(候補嵩増材:デキストリン)および試料9(候補嵩増材:難消化性デキストリン)は、収縮率が低く、ゆえに製造適性は高いと言える。
【0079】
試料6(候補嵩増材:炭酸カルシウム)は、収縮率が40%程度であった。これはシートの調製に悪影響を与える程の収縮率ではなく、製造適性の観点で許容範囲である。
一方、試料5(候補嵩増材:セルロース)は、収縮率が50%程度であり、最も高かった。
【0080】
1-3.香喫味
(1)香料含有シートの調製
候補嵩増材の種類により、香料の歩留まり(すなわち、香料の配合量に対する、製造されたシート中の香料の含有量の比率)に差異が生じた。このため、この実験では、香料含有シートがおよそ2.5質量%の香料を含むように、候補嵩増材ごとに香料の配合量を調整して、試料10~15の香料含有シートを作成した。
【0081】
[試料10]
試料10は候補嵩増材としてグラニュー糖(香料グレード)を使用した。
[組成]
水 100質量部
脱アシル型ジェランガム(CP Kelco社、ケルコゲル)2.5質量部
タマリンドガム(MRCポリサッカライド(株)、TG-120)2.5質量部
レシチン(太陽化学(株)、サンレシチンA-1) 0.1質量部
候補嵩増材 10.4質量部
l-メンソール(和光純薬工業(株)、試薬特級) 0.6質量部
【0082】
[手順]
約70℃に加熱保温した水0.3リットルに、脱アシル型ジェランガム、タマリンドガム、およびレシチンを溶解させて、多糖類水溶液を作成した。多糖類水溶液に候補嵩増材を添加した後、l-メンソールを添加し、ホモジナイザー(エーテックジャパン社、DMM型)で混錬および乳化を行い、原料スラリーを調製した。
【0083】
調製した原料スラリーを、サランラップ(登録商標)を被覆したステンレス板上に1.0mmの厚さで伸展させた。伸展させた原料スラリーを20℃の試料温度に一旦冷却してゲル化させた。その後、熱風発生機(宮本製作所、ニューホットブラスターMS5841-6D)により発生させた約100℃の熱風を、ゲル化した原料に10分間程度当てて、原料を乾燥させた。これにより、香料含有シート(厚さ:0.1mm)を調製した。
調製した香料含有シートの香料含有量は、シートに対して2.2質量%であった。
【0084】
[試料11]
試料11は、候補嵩増材としてセルロース(シグマ-アルドリッチ社、cellulose microcrystalline)を使用し、香料の配合量を2.7質量部としたこと以外は、試料10と同じ組成および手順で香料含有シートを調製した。調製された香料含有シートの香料含有量は、シートに対して3.7質量%であった。
【0085】
[試料12]
試料12は、候補嵩増材として炭酸カルシウム(和光純薬工業(株)、試薬特級)を使用し、香料の配合量を3.4質量部としたこと以外は、試料10と同じ組成および手順で香料含有シートを調製した。調製された香料含有シートの香料含有量は、シートに対して3.7質量%であった。
【0086】
[試料13]
試料13は、候補嵩増材としてデンプン(和光純薬工業(株)、試薬 とうもろこし由来)を使用し、香料の配合量を3.9質量部としたこと以外は、試料10と同じ組成および手順で香料含有シートを調製した。調製された香料含有シートの香料含有量は、シートに対して1.9質量%であった。
【0087】
[試料14]
試料14は、候補嵩増材としてパインデックス#100(松谷化学工業(株))を使用し、香料の配合量を3.9質量部としたこと以外は、試料10と同じ組成および手順で香料含有シートを調製した。調製された香料含有シートの香料含有量は、シートに対して2.5質量%であった。
【0088】
[試料15]
試料15は、候補嵩増材としてパインファイバー(松谷化学工業(株))を使用し、香料の配合量を16.1質量部としたこと以外は、試料10と同じ組成および手順で香料含有シートを調製した。調製された香料含有シートの香料含有量は、シートに対して3.9質量%であった。
【0089】
(2)シガレットの作成
試料10~15の香料含有シートを用いて、以下のとおりシガレットを作成した。
試料10の香料含有シート(厚さ0.1mm)を裁断し、長辺4mm、短辺1.5mmを有する切断片を得た。この切断片と、Winston Tar12mg製品(日本たばこ産業(株))(以下、「対照シガレット」という)から取り出した刻とを、5:95の質量比で混合し混合刻を得た。この混合刻を巻紙で巻装しなおし、試料10のシガレットを作成した。
【0090】
試料11~15の香料含有シートを用いて、同様に試料11~15のシガレットを作成した。
【0091】
(3)香喫味の官能評価
試料10~15のシガレットの香喫味を官能評価により評価した。具体的には、試料10~15のシガレットの香喫味が、対照シガレットの香喫味と比べてどの程度変化したかを評価した。
【0092】
香喫味評価の訓練を受けているパネラー8人が、ロット名称をブラインドして、対照シガレットおよび試料10~15のシガレットを喫煙し、対照シガレットから香喫味の変化が大きかった順に1~5の点数をつけた。
【0093】
(採点基準) 1: 香喫味が甚大に変化した
2: 香喫味がかなり変化した
3: 香喫味が変化した
4: 香喫味がやや変化した
5: 香喫味が同等で変化がなかった
8人のパネラーの点数を平均し、小数点以下一桁を四捨五入して各シガレットの評価スコアとした。
【0094】
(4)結果
評価スコアを以下の表1に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
表1に示すとおり、試料14および試料15のシガレットは、対照シガレットから香喫味の変化が全くないか、ほとんどなかった。
【0097】
試料10および試料11のシガレットは、対照シガレットから香喫味はかなり変化した。試料10のシガレットは、甘臭味があった。試料11のシガレットは、対照シガレットの香喫味が弱くなった。ただし、試料10のシガレットのこの変化は、シガレットの香喫味のコンセプトによっては悪影響ではない。
【0098】
試料12のシガレットは、対照シガレットから香喫味は甚大に変化し、対照シガレットの香喫味が弱くなった。試料13のシガレットは、試料10および試料11のシガレットよりは小さいが、対照シガレットから香喫味は変化した。
【0099】
1-4.蔵置後の香料保持率
(1)香料含有シートの調製
試料10~15の香料含有シートを上述のとおり調製した。
【0100】
(2)蔵置試験
調製した香料含有シートを1×10mmのサイズに裁刻して切断片を得た。得られた切断片を試料皿に広げ、50℃に設定した恒温器(ヤマト科学、DX600)内で所定の期間(7日、14日、および30日)蔵置した。蔵置後の各試料の香料含有量を測定した。
【0101】
(3)香料含有量の測定
調製直後の香料含有シート(蔵置日数0日)、並びに蔵置後7日、14日、および30日の香料含有シートに含まれるメンソールをメタノールで抽出して測定溶液を調製した。測定溶液中のメンソールをGC-MSDにかけて定量した。
【0102】
蔵置した香料含有シートの切断片0.1gに10mLのメタノール(試薬特級もしくはそれ以上)を50mL容量の密閉容器(スクリュー管)内で加え、40分間振とう(200rpm)を行った。これを一晩放置後、再度40分間振とう(200rpm)を行い、静置した。静置後、上澄み液をGC測定に適当な希釈濃度(ここでは×1~×10メタノール希釈)に希釈して測定溶液を調製した。なお、測定溶液の調製に使用したメタノールは、内部標準物質として1,3-ブタンジオール(和光純薬工業(株)、試薬特級)を0.05mg/mLの濃度で含む。
【0103】
上述のとおり調製した測定溶液中のメンソールを、以下のGC-MSDにかけて検量線法により定量した。
【0104】
GC-MSD;Agilent社製6890Nガスクロマトグラフ
Column; DB-1 60 m×320μm (1μm)
Constant velocity mode 30 cm/sec
Oven; 40℃ → (5℃/min) → 250℃ (hold 5min)
Injection; 1μL
Insert liner; Agilent 4711 (250℃)
Inlet; Sprit mode 10:1 14 mL/min
Agilent社製 5973inert質量分析計
Scan mode (30~300 amu・2.74 scans/sec)
検量線溶液濃度; 0、0.01、0.05、0.1、0.3、0.5、0.7、1.0 [mg-メンソール/mL]の8点。
【0105】
香料含有量の測定値から以下の式により各試料の香料保持率を算出した。
香料保持率=(蔵置後の香料含有シートの香料含有量)/(調製直後の香料含有シートの香料含有量)
【0106】
(4)結果
香料保持率の結果を図3に示す。
30日間蔵置された香料含有シートの香料保持率に基づいて、以下の採点基準で評価スコアをつけた。評価結果を以下の表に示す。
【0107】
【表2】
【0108】
(採点基準)
香料保持率0.75以上1.00以下 : 評価スコア 4
香料保持率0.50以上0.75未満 : 評価スコア 3
香料保持率0.25以上0.50未満 : 評価スコア 2
香料保持率0以上0.25未満 : 評価スコア 1
【0109】
図3および表2の結果から、30日間蔵置された香料含有シートの香料保持率は、試料10、試料11、試料13、試料14および試料15において0.5以上であった。とりわけ、試料10および試料14の香料含有シートの香料保持率は0.75以上であり、高かった。一方、試料12の香料含有シートの香料保持率は0.5に満たなかった。
【0110】
1-5.まとめ
以上の実験により、候補嵩増材が4つの評価項目に及ぼす影響、すなわち「1-1.原料スラリーの粘度」、「1-2.シートの収縮率」、「1-3.香喫味」、および「1-4.蔵置後の香料保持率」に及ぼす影響について評価した。評価結果を表3にまとめる。
【0111】
【表3】
【0112】
「原料スラリーの粘度」の評価基準は以下のとおりである。
(評価基準) ○ :問題なく乳化作業を行うことが可能な粘度
× :乳化作業を行うことが困難な粘度
【0113】
「シートの収縮率」の評価基準は以下のとおりである。
(評価基準) ◎ :収縮率が20%未満
○ :収縮率が20%以上50%未満
× :収縮率が50%以上
【0114】
「香喫味」の評価基準は以下のとおりである。
(評価基準) ◎ :評価スコア5
○ :評価スコア4
△ :評価スコア3
× :評価スコア2
××:評価スコア1
【0115】
「蔵置後の香料保持率」の評価基準は以下のとおりである。
(評価基準) ◎ :評価スコア4
○ :評価スコア3
△ :評価スコア2
× :評価スコア1
【0116】
実施例1の結果から、嵩増材としては、シートの嵩を増やす役割を果たし、かつ以下の(i)および(ii)の要件を満たす物質が有効であることが分かった:
(i)シートの製造を困難にする程度まで(すなわち、原料スラリーの混錬および乳化作業を困難にする程度まで)原料スラリーの粘度を上昇させない;
(ii)香料含有シートの本来の機能(すなわち、喫煙物品中での香味成分としての機能)を果たさない程度までシートの香料保持機能を低下させない。
【0117】
また、嵩増材としては、喫煙物品の香喫味に影響を及ぼさない物質が好ましいことが分かった。更に、嵩増材としては、シートの製造工程に悪影響を及ぼさない物質が好ましく、たとえば、乾燥工程において、シートの著しい収縮を引き起こすように作用しない物質が好ましいことが分かった。
【0118】
表3に示すとおり、候補嵩増材としてパインデックスおよびパインファイバーを使用した場合、すべての評価項目において良好な結果を示した。この結果から、デンプン加水分解物が、嵩増材として特に優れていることが分かる。また、デンプンは、原料スラリーの混錬および乳化作業を困難にする程度まで原料スラリーの粘度を上昇させたため、嵩増材として適していない。グラニュー糖、セルロース、および炭酸カルシウムは、シートの嵩を増やす役割を果たし、かつ上記(i)および(ii)の要件を満たすため、喫煙物品の香喫味に対する影響やシートの収縮に対する影響に注意しながら、配合量を調整して使用する必要がある。
【0119】
[実施例2]
本実施例では、増粘多糖類として寒天を使用した。実施例1と同様、候補嵩増材を用いて、香料含有シートを作成し、候補嵩増材が3つの評価項目に及ぼす影響、すなわち「2-1.原料スラリーの粘度」、「2-2.乾燥後の収縮」、および「2-3.蔵置後の香料保持率」に及ぼす影響について評価した。
【0120】
2-1.原料スラリーの粘度
(1)原料スラリーの調製
候補嵩増材の種類により、香料の歩留まりに差異が生じたため、この実験では、香料含有シートがおよそ2.5質量%の香料を含むように、候補嵩増材ごとに香料の配合量を調整した。
【0121】
[試料16]
試料16は、候補嵩増材としてグラニュー糖(香料グレード)を使用した。
[組成]
水 100質量部
寒天(伊那食品工業(株)、UP-37) 5.0質量部
レシチン(太陽化学(株)、サンレシチンA-1) 0.1質量部
候補嵩増材 10.4質量部
l-メンソール(和光純薬工業(株)、試薬特級) 0.6質量部
【0122】
[手順]
寒天を含む水0.3リットルを、沸騰した湯浴で湯煎させて、寒天を水に十分に溶解させて、寒天水溶液を作成した。得られた寒天水溶液にレシチン、候補嵩増材およびl-メンソールを添加し、ホモジナイザー(エーテックジャパン社、DMM型)で混錬および乳化を行い、原料スラリーを調製した。
【0123】
[試料17]
試料17は、候補嵩増材としてセルロース(シグマ-アルドリッチ社、cellulose microcrystalline)を使用したこと以外は、試料16と同じ組成および手順で原料スラリーを調製した。
【0124】
[試料18]
試料18は、候補嵩増材として炭酸カルシウム(和光純薬工業(株)、試薬特級)を使用し、l-メンソールの配合量を1.0質量部としたこと以外は、試料16と同じ組成および手順で原料スラリーを調製した。
【0125】
[試料19]
試料19は、候補嵩増材としてデンプン(和光純薬工業(株)、試薬 とうもろこし由来)を使用し、l-メンソールの配合量を1.0質量部としたこと以外は、試料16と同じ組成および手順で原料スラリーを調製した。
【0126】
[試料20]
試料20は、候補嵩増材としてパインデックス#100(松谷化学工業(株))を使用し、l-メンソールの配合量を1.3質量部としたこと以外は、試料16と同じ組成および手順で原料スラリーを調製した。
【0127】
[試料21]
試料21は、候補嵩増材としてパインファイバー(松谷化学工業(株))を使用し、l-メンソールの配合量を8.7質量部としたこと以外は、試料16と同じ組成および手順で原料スラリーを調製した。
【0128】
(2)香料含有シートの調製
試料16~21の原料スラリーを用いて実施例1と同様の方法により試料16~21の香料含有シートを調製した。また、得られた試料16~21の香料含有シートの香料含有量および水分含量を前述の測定方法により測定した。
【0129】
試料16~21の香料含有シートの香料含有量は、それぞれ、シートに対して、2.5質量%、2.5質量%、3.5質量%、2.2質量%、2.4質量%、4.5質量%であった。
【0130】
(3)原料スラリーの粘度測定
試料16~21の原料スラリーの粘度を、実施例1と同様の測定装置および測定条件を用いて測定した。
【0131】
(4)結果
粘度測定の結果を図4に示す。
いずれの試料の原料スラリーも、問題なく乳化および伸展作業を行うことができる程度の粘度を有していた。ただし、試料19(候補嵩増材:デンプン)の原料スラリーは、実施例1と同様、他の候補嵩増材と比較して高い粘度を示す傾向がみられた。
【0132】
また、試料16~21の原料スラリーを用いて香料含有シートを調製したところ、候補嵩増材は、シートの嵩を増やす役割を果たしたため、所定の厚さを有し香料を低濃度で含むシートを製造するまでに必要な乾燥時間を短縮することができた。
【0133】
2-2.シートの収縮率
(1)香料含有シートの調製
試料16~21の原料スラリーを用いて実施例1と同様の方法により試料16~21の香料含有シートを調製した。
【0134】
(2)収縮率の測定
実施例1と同様の方法および計算式により試料16~21の香料含有シートの収縮率を求めた。
【0135】
(3)結果
収縮率の測定結果を図5に示す。
試料16(候補嵩増材:グラニュー糖)は、収縮率が20%と低く、ゆえに製造適性は高いと言える。
【0136】
また、試料17~21(候補嵩増材:セルロース、炭酸カルシウム、デンプン、デキストリンおよび難消化性デキストリン)は、収縮率が30~40%程度であった。これは、シートの調製に悪影響を与える程の収縮率でなく、製造適性の観点で許容範囲である。
【0137】
2-3.蔵置後の香料保持率
(1)香料含有シートの調製
試料16~21の原料スラリーを用いて実施例1と同様の方法により試料16~21の香料含有シートを調製した。
【0138】
(2)蔵置試験および香料含有量の測定
試料16~21の香料含有シートについて、実施例1と同様の方法で蔵置試験を行った。また、実施例1と同様の方法により、調製直後の香料含有シートの香料含有量と、蔵置後の香料含有シートの香料含有量を測定し、香料保持率を算出した。
【0139】
(3)結果
香料保持率の結果を図6に示す。
30日間蔵置された香料含有シートの香料保持率に基づいて、実施例1に記載の採点基準で評価スコアをつけた。評価結果を以下の表に示す。
【0140】
【表4】
【0141】
図6および表4の結果から、すべての試料の香料含有シートの香料保持率が0.5以上であった。とりわけ、試料16、17、19および20の香料含有シートの香料保持率は0.75以上と極めて高かった。
【0142】
2-4.まとめ
実施例2では、増粘多糖類として寒天を使用して、候補嵩増材が3つの評価項目に及ぼす影響、すなわち「2-1.原料スラリーの粘度」、「2-2.シートの収縮率」、および「2-3.蔵置後の香料保持率」に及ぼす影響について評価した。評価結果を表5にまとめる。
各評価項目の評価基準は、前述のとおりである。
【0143】
【表5】
【0144】
「原料スラリーの粘度」および「シートの収縮率」の評価結果から、増粘多糖類として寒天を使用した場合も実施例1と同様、嵩増材を含む香料含有シートを製造時の不具合なく調製できることが示された。また、「蔵置後の香料保持率」の評価結果から、増粘多糖類として寒天を使用した場合も実施例1と同様、嵩増材を含む香料含有シートは、蔵置後に高い香料保持率を有していることが示された。
【0145】
これらの結果から、寒天は、ジェランガムとタマリンドガムとの混合物(実施例1)と同様、嵩増材を含む香料含有シートにおいて、増粘多糖類として使用可能であることが示された。
【0146】
[実施例3]
本実施例においては、嵩増材の配合量が5つの評価項目に及ぼす影響、すなわち「3-1.乾燥時間」、「3-2.原料スラリーの粘度」、「3-3.シートの収縮率」、「3-4.香喫味」、および「3-5.蔵置後の香料保持率」に及ぼす影響を評価した。なお、本実施例ではパインデックスとパインファイバーの混合物(7:3の質量比)を嵩増材として使用した。
【0147】
3-1.乾燥時間
嵩増材の配合量と乾燥時間との関係を調べた。この実験では、嵩増材を増粘多糖類に対して0、100、200、300、および380質量%の割合で配合した。
【0148】
(1)原料スラリーの調製
[試料22]
[組成]
水 100質量部
脱アシル型ジェランガム(CP Kelco社、ケルコゲル)3.0質量部
タマリンドガム(MRCポリサッカライド(株)、TG-120)1.3質量部
レシチン(太陽化学(株)、サンレシチンA-1) 0.2質量部
着色剤(ココアおよびカラメル) 1.0質量部
保湿剤(グリセリン) 0.6質量部
嵩増材(パインデックスおよびパインファイバー(7:3の質量比)) 0質量部
l-メンソール(和光純薬工業(株)、試薬特級) 0.5質量部
[手順]
実施例1と同じ手順で原料スラリーを調製した。
【0149】
[試料23]
嵩増材の配合量を4.3質量部(増粘多糖類に対して100質量%)としたこと以外は試料22と同じ組成および手順で原料スラリーを調製した。
【0150】
[試料24]
嵩増材の配合量を8.6質量部(増粘多糖類に対して200質量%)としたこと以外は試料22と同じ組成および手順で原料スラリーを調製した。
【0151】
[試料25]
嵩増材の配合量を12.9質量部(増粘多糖類に対して300質量%)としたこと以外は試料22と同じ組成および手順で原料スラリーを調製した。
【0152】
[試料26]
嵩増材の配合量を16.3質量部(増粘多糖類に対して380質量%)としたこと以外は試料22と同じ組成および手順で原料スラリーを調製した。
【0153】
(2)乾燥時間の測定
試料22~26の原料スラリーを、サランラップ(登録商標)を被覆したステンレス板上に、乾燥後のシートの厚さが0.1mmになるように伸展させた。乾燥後のシートの厚さを0.1mmとするためには、嵩増材の配合量に応じて、基材上の原料スラリーの厚さを試料毎に適宜変える必要があった。具体的には、基材上に伸展させた試料22~26の原料スラリーの厚さは、それぞれ、4.0mm、2.2mm、1.4mm、1.3mm、1.1mmであった。
【0154】
伸展させた原料スラリーを20℃の試料温度に一旦冷却してゲル化させた。その後、熱風発生機(宮本製作所、ニューホットブラスターMS5841-6D)により発生させた100℃の熱風を、ゲル化した原料に当てて乾燥させ、0.1mmの厚さを有するシートを調製した。各試料について、乾燥に要した時間を記録した。
【0155】
(3)結果
図7に嵩増材の配合割合と乾燥時間との関係を示す。
嵩増材を含む試料23~26では、嵩増材を含まない試料22と比較して、香料含有シートを調製するのに必要な乾燥時間を短縮することができた。とりわけ、嵩増材を増粘多糖類に対して200質量%以上の配合割合で含む試料24~26では、香料含有シートを調製するのに要した乾燥時間は10~15分程度と短かった。また、嵩増材を増粘多糖類に対して300質量%以上の配合割合で含む試料25および26では、乾燥時間は10分程度と更に短かった。
【0156】
一方、嵩増材を増粘多糖類に対して380質量%を超えて配合しても、同様に短い乾燥時間でシートを調製できることが期待される。したがって、費用対効果の観点から、嵩増材の含有量は、増粘多糖類に対して、好ましくは100~500質量%、より好ましくは200~500質量%である。
【0157】
3-2.原料スラリーの粘度
嵩増材の配合量と原料スラリーの粘度との関係を調べた。この実験では、嵩増材を増粘多糖類に対して0、100、200、300、380、500、600および700質量%の割合で配合した。なお、この実験では、全ての香料含有シートがおよそ2.5質量%の香料を含むように、香料の歩留まりを考慮して、嵩増材の配合量に応じて香料の配合量を調整した。
【0158】
(1)原料スラリーの調製
[試料27]
[組成]
水 100質量部
脱アシル型ジェランガム(CP Kelco社、ケルコゲル)3.0質量部
タマリンドガム(MRCポリサッカライド(株)、TG-120)1.3質量部
レシチン(太陽化学(株)、サンレシチンA-1) 0.2質量部
着色剤(ココアおよびカラメル) 1.0質量部
保湿剤(グリセリン) 0.6質量部
嵩増材(パインデックスおよびパインファイバー(7:3の質量比)) 0質量部
l-メンソール(和光純薬工業(株)、試薬特級) 1.4質量部
[手順]
実施例1と同じ手順で原料スラリーを調製した。
【0159】
[試料28]
嵩増材の配合量を4.3質量部(増粘多糖類に対して100質量%)とし、l-メンソールの配合量を3.7質量部としたこと以外は試料27と同じ組成および手順で原料スラリーを調製した。
【0160】
[試料29]
嵩増材の配合量を8.6質量部(増粘多糖類に対して200質量%)とし、l-メンソールの配合量を4.8質量部としたこと以外は試料27と同じ組成および手順で原料スラリーを調製した。
【0161】
[試料30]
嵩増材の配合量を12.9質量部(増粘多糖類に対して300質量%)とし、l-メンソールの配合量を5.8質量部としたこと以外は同じ組成および手順で原料スラリーを調製した。
【0162】
[試料31]
嵩増材の配合量を16.3質量部(増粘多糖類に対して380質量%)とし、l-メンソールの配合量を5.2質量部としたこと以外は同じ組成および手順で原料スラリーを調製した。
【0163】
[試料32]
嵩増材の配合量を21.5質量部(増粘多糖類に対して500質量%)とし、l-メンソールの配合量を6.5質量部としたこと以外は試料27と同じ組成および手順で原料スラリーを調製した。
【0164】
[試料33]
嵩増材の配合量を25.8質量部(増粘多糖類に対して600質量%)とし、l-メンソールの配合量を7.6質量部としたこと以外は試料27と同じ組成および手順で原料スラリーを調製した。
【0165】
[試料34]
嵩増材の配合量を30.1質量部(増粘多糖類に対して700質量%)とし、l-メンソールの配合量を7.6質量部としたこと以外は試料27と同じ組成および手順で原料スラリーを調製した。
【0166】
(2)香料含有シートの調製
試料27~34の原料スラリーを用いて実施例1と同様の方法により香料含有シートを調製した。また、得られた試料27~34の香料含有シートの香料含有量および水分含量を、前述の測定方法により測定した。
【0167】
試料27~34の香料含有シートの香料含有量は、それぞれ、シートに対して、3.5質量%、2.8質量%、3.9質量%、3.5質量%、2.3質量%、2.9質量%、2.9質量%、2.5質量%であった。
【0168】
(3)原料スラリーの粘度測定
試料27~34の原料スラリーの粘度を、実施例1と同様の測定装置および測定条件を用いて測定した。
【0169】
(4)結果
粘度測定の結果を図8に示す。
いずれの試料の原料スラリーも、問題なく乳化および伸展作業を行うことができる程度の粘度を有していた。これらの結果は、嵩増材として使用したパインデックスとパインファイバーの混合物の配合量を増粘多糖類の7倍量まで増大させても原料スラリーの粘度を顕著に上昇させないことを示す。
【0170】
3-3.シートの収縮率
(1)香料含有シートの調製
試料27~34の原料スラリーを用いて実施例1と同様の方法により試料27~34の香料含有シートを調製した。
【0171】
(2)収縮率の測定
実施例1と同様の方法および計算式により試料27~34の香料含有シートの収縮率を求めた。
【0172】
(3)結果
収縮率の測定結果を図9に示す。
いずれの試料の香料含有シートも、収縮率はおよそ10~20%であり、製造上問題ない程度であった。これらの結果は、嵩増材として使用したパインデックスとパインファイバーの混合物の配合量を増粘多糖類の7倍量まで増大させてもシートの収縮率を上昇させないことを示す。
【0173】
3-4.香喫味
試料27および試料30~34のそれぞれの香料含有シートを用いて、以下のとおりシガレットを作成した。
【0174】
(1)シガレットの作成
試料27の香料含有シート(厚さ0.1mm)を裁断し、長辺4mm、短辺1.5mmを有する切断片を得た。この切断片と、メビウス・スーパーライト Tar6mg製品(日本たばこ産業(株))から取り出したたばこ刻とを、5:95の質量比で混合し混合刻を得た。この混合刻を巻紙で巻装しなおし、試料27のシガレットを作成した。
【0175】
試料30~34の香料含有シートを用いて、同様に試料30~34のシガレットを作成した。
【0176】
(2)香喫味の官能評価
試料27および試料30~34のシガレットの香喫味を官能評価により評価した。具体的には、試料30~34のシガレットの香喫味が、試料27のシガレット(嵩増材を含まない)の香喫味と比べてどの程度変化したかを評価した。
【0177】
香喫味評価の訓練を受けているパネラー8人が、ロット名称をブラインドして、試料27および試料30~34のシガレットを喫煙し、試料27のシガレットから香喫味の変化が大きかった順に1~5の点数をつけた。
採点基準および評価スコアの算出方法は、実施例1で述べたとおりである。
【0178】
(3)結果
評価スコアを以下の表6に示す。
【0179】
【表6】
【0180】
試料30~32のシガレットは、試料27のシガレットと比較して香喫味の変化が全くないか、ほとんどなかった。また、試料33のシガレットは、試料27のシガレットから香喫味の変化が認められた。また、試料34のシガレットは、試料27のシガレットから香喫味はかなり変化した。
【0181】
これらの結果は、嵩増材の配合量が増えると、香喫味の変化が大きくなることと、嵩増材は、増粘多糖類に対して500質量%までの量で配合されれば、香喫味をほとんど変化させないことを示す。
【0182】
3-5.蔵置後の香料保持率
(1)香料含有シートの調製
試料27~34の原料スラリーを用いて実施例1と同様の方法により試料27~34の香料含有シートを調製した。
【0183】
(2)蔵置試験および香料含有量の測定
試料27~34の香料含有シートについて、実施例1と同様の方法で蔵置試験を行った。また、実施例1と同様の方法により、調製直後の香料含有シートの香料含有量と、蔵置後の香料含有シートの香料含有量を測定し、香料保持率を算出した。
【0184】
(3)結果
香料保持率の結果を図10に示す。
30日間蔵置された香料含有シートの香料保持率に基づいて、実施例1に記載の採点基準で評価スコアをつけた。評価結果を以下の表に示す。
【0185】
【表7】
【0186】
図10および表7の結果から、測定されたすべての試料の香料含有シートの香料保持率が0.5以上であった。とりわけ、試料28、29および30の香料含有シートの香料保持率は0.75以上と極めて高かった。
【0187】
3-6.まとめ
実施例3では、候補嵩増材の配合量が5つの評価項目に及ぼす影響、すなわち「3-1.乾燥時間」、「3-2.原料スラリーの粘度」、「3-3.シートの収縮率」、「3-4.香喫味」、および「3-5.蔵置後の香料保持率」に及ぼす影響について評価した。評価結果を表8にまとめる。
【0188】
【表8】
【0189】
「乾燥時間」の評価基準は以下のとおりである。
(評価基準) ◎ :20分未満
〇 :20分以上、30分未満
△ :30分以上、40分未満
× :40分以上
他の評価項目の評価基準は、実施例1に記載されるとおりである。
【0190】
表8に示すとおり、「原料スラリーの粘度」、「シートの収縮率」および「蔵置後の香料保持率」の評価項目については、嵩増材の配合量による顕著な影響は認められなかった。一方、「香喫味」の評価項目については、嵩増材の配合量が増えると、香喫味の変化が大きくなり、嵩増材の配合量の上限値は、増粘多糖類の配合量に対して、好ましくは500質量%であることが示された。また、「乾燥時間」の評価項目については、嵩増材の配合量が減少すると、乾燥時間が増大する傾向がみられ、嵩増材の配合量の下限値は、増粘多糖類の配合量に対して、好ましくは100質量%以上、より好ましくは200質量%以上であることが示された。
【0191】
これらの結果および費用対効果の観点から、シート中の嵩増材の含有量は、増粘多糖類の質量に対して、好ましくは100~500質量%、より好ましくは200~500質量%であることが分かる。
【0192】
[実施例4]
本実施例では、香料含有シートの切断片の配合量と配合均一性との関係を調べた。具体的には、香料含有シートの切断片を含むシガレットロッドを5等分してシガレットロッド断片を作成し、各シガレットロッド断片間に香料含有量のばらつきがどの程度みられるかを変動係数(%)により調べた。
【0193】
(1)シガレットの調製
試料1の香料含有シートと同じ組成および手順で香料含有シート(厚さ0.1mm)を調製した。調製した香料含有シートを裁断し、長辺4mm、短辺1.5mmを有する切断片を得た。得られた切断片をメビウス・スーパーライト刻と混合してたばこ充填材を調製した。切断片をたばこ充填材に対して2.5質量%、5質量%、7.5質量%、および10質量%のそれぞれの割合で配合し、たばこ充填材を調製した。たばこ充填材を巻紙で巻装してシガレットロッドを調製した。
【0194】
(2)香料含有量の測定
調製したシガレットロッドを5等分してシガレットロッド断片を得た。各シガレットロッド断片に含まれるメンソール量を、実施例1で述べたとおりGC-MSDにより測定した。
【0195】
(3)香料含有量のばらつきの評価
測定されたメンソール量に基づいて、各シガレットロッドについて、香料含有量の変動係数(%)を算出した。得られた変動係数に基づき、各シガレットロッド内の香料の分布のばらつきを評価した。
【0196】
(4)結果
香料含有シートの切断片の配合割合と香料含有量の変動係数との関係を図11に示す。
香料含有シートの切断片をたばこ充填材に対して5質量%、7.5質量%および10質量%の割合で含む場合、香料含有量の変動係数は低かった。図11の結果から、香料含有シートの切断片を4質量%以上配合すればシガレットロッド内に切断片を均一に配合できることが推察される。
【0197】
また、香料含有シートの切断片を7.5質量%配合した場合と10質量%配合した場合では、香料含有量の変動係数はほぼ同じであった。したがって、香料含有シートの切断片を、10質量%を超えて配合してもよいが、費用対効果の観点から、たとえば10質量%以下、多くても20質量%以下の量で配合することが好ましい。
【0198】
これらの結果から、香料含有シートの切断片は、たばこ刻と当該切断片との合計質量に対して4~20質量%の量で喫煙物品に組み込まれると、シガレットロッド内に均一に分布し、喫煙期間にわたって安定して香味を提供できることが分かる。
以下に、本願の出願当初の請求項を実施の態様として付記する。
[1] 増粘多糖類、香料、乳化剤、および嵩増材を含む喫煙物品用香料含有シート。
[2] 前記嵩増材が、デンプン加水分解物である[1]に記載の喫煙物品用香料含有シート。
[3] 前記デンプン加水分解物が、2~40の範囲に包含されるDE値、好ましくは2~20の範囲に包含されるDE値を有するデンプン加水分解物である[2]に記載の喫煙物品用香料含有シート。
[4] 前記デンプン加水分解物が、2~5のDE値を有するデキストリン、10~15のDE値を有する難消化性デキストリン、およびこれらの混合物からなる群より選択される[3]に記載の喫煙物品用香料含有シート。
[5] 前記嵩増材の含有量が、前記増粘多糖類に対して200~500質量%である[1]~[4]の何れか1に記載の喫煙物品用香料含有シート。
[6] 前記香料の含有量が、前記喫煙物品用香料含有シートに対して18質量%未満である[1]~[5]の何れか1に記載の喫煙物品用香料含有シート。
[7] 前記喫煙物品用香料含有シートが、0.05~0.15mmの厚さを有する[1]~[6]の何れか1に記載の喫煙物品用香料含有シート。
[8] 前記増粘多糖類が、ジェランガム、ジェランガムとタマリンドとの混合物、および寒天からなる群より選択される[1]~[7]の何れか1に記載の喫煙物品用香料含有シート。
[9] 前記増粘多糖類の配合量が、前記喫煙物品用香料含有シートの原料中の水以外の構成成分の合計質量に対して10~35質量%である[1]~[8]の何れか1に記載の喫煙物品用香料含有シート。
[10] 前記乳化剤の含有量が、前記増粘多糖類に対して0.5~5質量%である[1]~[9]の何れか1に記載の喫煙物品用香料含有シート。
[11] 前記喫煙物品用香料含有シートに対して10質量%未満の水を含む[1]~[10]の何れか1に記載の喫煙物品用香料含有シート。
[12] [1]~[11]の何れか1に記載の喫煙物品用香料含有シートの切断片を含む喫煙物品。
[13] たばこ刻を更に含み、前記喫煙物品用香料含有シートの切断片が前記たばこ刻と混合されている[12]に記載の喫煙物品。
[14] 前記切断片が、0.05~0.15mmの厚さを有する[1]~[11]の何れか1に記載の喫煙物品用香料含有シートの切断片であり、かつ2.0~7.0mmの長辺および0.5~2.0mmの短辺を有する[13]に記載の喫煙物品。
[15] 前記切断片が、前記たばこ刻と前記切断片との合計質量に対して4~20質量%の量で含まれる[13]または[14]に記載の喫煙物品。
図1
図2
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図7
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図9
図10
図11