(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】無停電電源システム
(51)【国際特許分類】
H02J 9/06 20060101AFI20220613BHJP
【FI】
H02J9/06 120
(21)【出願番号】P 2020508411
(86)(22)【出願日】2019-09-05
(86)【国際出願番号】 JP2019035052
(87)【国際公開番号】W WO2021044599
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2020-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中森 俊樹
【審査官】坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-228666(JP,A)
【文献】特表2013-512650(JP,A)
【文献】特開2013-219958(JP,A)
【文献】特開2009-303349(JP,A)
【文献】特開2004-173388(JP,A)
【文献】特開2005-278257(JP,A)
【文献】特開2006-320149(JP,A)
【文献】国際公開第2014/016919(WO,A1)
【文献】特開2010-172105(JP,A)
【文献】特開2019-032780(JP,A)
【文献】特開2018-182872(JP,A)
【文献】特開2017-158264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に対して並列接続される複数の無停電電源装置と、
前記複数の無停電電源装置を制御するマスタ制御部とを備え、
前記複数の無停電電源装置の各々は、
交流電源から供給される交流電力を直流電力に変換するコンバータと、
前記コンバータまたは電力貯蔵装置から供給される直流電力を交流電力に変換して前記負荷に供給するインバータと、
少なくとも前記インバータの直流入力電圧、前記インバータの交流出力電圧および前記インバータの出力電流を検出するための検出回路と、
前記マスタ制御部と通信接続され、前記コンバータおよび前記インバータを制御するスレーブ制御部とを含み、
前記マスタ制御部は、各前記複数の無停電電源装置の前記スレーブ制御部から送信される前記検出回路の検出値に基づいて、前記複数の無停電電源装置に共通する第1の電圧指令値および第2の電圧指令値を生成し、かつ、生成した前記第1の電圧指令値および前記第2の電圧指令値を各前記複数の無停電電源装置の前記スレーブ制御部に対して送信し、
前記スレーブ制御部は、受信した前記第1の電圧指令値に従って前記コンバータを制御するための第1の制御信号を生成し、かつ、受信した前記第2の電圧指令値に従って前記インバータを制御するための第2の制御信号を生成
し、
前記マスタ制御部は、前記複数の無停電電源装置における前記直流入力電圧の検出値を平均することにより第1の平均値を演算し、かつ、前記第1の平均値が第1の目標値に追従するように前記第1の電圧指令値を生成し、
前記スレーブ制御部は、自装置における前記直流入力電圧の検出値の前記第1の目標値に対する偏差に応じて前記第1の電圧指令値を補正し、かつ、補正された前記第1の電圧指令値を用いて前記第1の制御信号を生成する、無停電電源システム。
【請求項2】
前記コンバータは、互いに直列に接続され、前記第1の制御信号に従って相補的にオンオフされる第1および第2の半導体スイッチング素子を有しており、
前記スレーブ制御部は、前記第1の制御信号に対して、前記第1および第2の半導体スイッチング素子を同時にオフさせるためのデッドタイムを付与する、請求項
1に記載の無停電電源システム。
【請求項3】
前記マスタ制御部は、前記複数の無停電電源装置における前記出力電流の検出値を平均することにより第2の平均値を演算し、かつ、前記第2の平均値が第2の目標値に追従するように前記第2の電圧指令値を生成し、
前記スレーブ制御部は、自装置における前記出力電流の検出値の前記第2の目標値に対する偏差に応じて前記第2の電圧指令値を補正し、かつ、補正された前記第2の電圧指令値を用いて前記第2の制御信号を生成する、請求項
1に記載の無停電電源システム。
【請求項4】
負荷に対して並列接続される複数の無停電電源装置と、
前記複数の無停電電源装置を制御するマスタ制御部とを備え、
前記複数の無停電電源装置の各々は、
交流電源から供給される交流電力を直流電力に変換するコンバータと、
前記コンバータまたは電力貯蔵装置から供給される直流電力を交流電力に変換して前記負荷に供給するインバータと、
少なくとも前記インバータの直流入力電圧、前記インバータの交流出力電圧および前記インバータの出力電流を検出するための検出回路と、
前記マスタ制御部と通信接続され、前記コンバータおよび前記インバータを制御するスレーブ制御部とを含み、
前記マスタ制御部は、各前記複数の無停電電源装置の前記スレーブ制御部から送信される前記検出回路の検出値に基づいて、前記複数の無停電電源装置に共通する第1の電圧指令値および第2の電圧指令値を生成し、かつ、生成した前記第1の電圧指令値および前記第2の電圧指令値を各前記複数の無停電電源装置の前記スレーブ制御部に対して送信し、
前記スレーブ制御部は、受信した前記第1の電圧指令値に従って前記コンバータを制御するための第1の制御信号を生成し、かつ、受信した前記第2の電圧指令値に従って前記インバータを制御するための第2の制御信号を生成し、
前記マスタ制御部は、前記複数の無停電電源装置における前記出力電流の検出値を平均することにより第2の平均値を演算し、かつ、前記第2の平均値が第2の目標値に追従するように前記第2の電圧指令値を生成し、
前記スレーブ制御部は、自装置における前記出力電流の検出値の前記第2の目標値に対する偏差に応じて前記第2の電圧指令値を補正し、かつ、補正された前記第2の電圧指令値を用いて前記第2の制御信号を生成する
、無停電電源システム。
【請求項5】
前記インバータは、互いに直列に接続され、前記第2の制御信号に従って相補的にオンオフされる第3および第4の半導体スイッチング素子を有しており、
前記スレーブ制御部は、前記第2の制御信号に対して、前記第3および第4の半導体スイッチング素子を同時にオフさせるためのデッドタイムを付与する、請求項
3または4に記載の無停電電源システム。
【請求項6】
前記複数の無停電電源装置の各々は、
前記コンバータおよび前記インバータの間に接続された直流ラインと、
前記電力貯蔵装置および前記直流ラインの間で直流電力を授受する双方向チョッパとをさらに含み、
前記マスタ制御部は、各前記複数の無停電電源装置の前記スレーブ制御部から送信される前記検出回路の検出値に基づいて、前記複数の無停電電源装置に共通する第3の電圧指令値を生成し、かつ、生成した前記第3の電圧指令値を各前記複数の無停電電源装置の前記スレーブ制御部に対して送信し、
前記スレーブ制御部は、受信した前記第3の電圧指令値に従って前記双方向チョッパを制御するための第3の制御信号を生成する、請求項1から5のいずれか1項に記載の無停電電源システム。
【請求項7】
前記マスタ制御部は、前記複数の無停電電源装置における前記直流入力電圧の検出値を平均することにより第3の平均値を演算し、かつ、前記第3の平均値が第3の目標値に追従するように前記第3の電圧指令値を生成し、
前記スレーブ制御部は、自装置における前記直流入力電圧の検出値の前記第3の目標値に対する偏差に応じて前記第3の電圧指令値を補正し、かつ、補正された前記第3の電圧指令値を用いて前記第3の制御信号を生成する、請求項6に記載の無停電電源システム。
【請求項8】
負荷に対して並列接続される複数の無停電電源装置と、
前記複数の無停電電源装置を制御するマスタ制御部とを備え、
前記複数の無停電電源装置の各々は、
交流電源から供給される交流電力を直流電力に変換するコンバータと、
前記コンバータまたは電力貯蔵装置から供給される直流電力を交流電力に変換して前記負荷に供給するインバータと、
少なくとも前記インバータの直流入力電圧、前記インバータの交流出力電圧および前記インバータの出力電流を検出するための検出回路と、
前記マスタ制御部と通信接続され、前記コンバータおよび前記インバータを制御するスレーブ制御部とを含み、
前記マスタ制御部は、各前記複数の無停電電源装置の前記スレーブ制御部から送信される前記検出回路の検出値に基づいて、前記複数の無停電電源装置に共通する第1の電圧指令値および第2の電圧指令値を生成し、かつ、生成した前記第1の電圧指令値および前記第2の電圧指令値を各前記複数の無停電電源装置の前記スレーブ制御部に対して送信し、
前記スレーブ制御部は、受信した前記第1の電圧指令値に従って前記コンバータを制御するための第1の制御信号を生成し、かつ、受信した前記第2の電圧指令値に従って前記インバータを制御するための第2の制御信号を生成し、
前記複数の無停電電源装置の各々は、
前記コンバータおよび前記インバータの間に接続された直流ラインと、
前記電力貯蔵装置および前記直流ラインの間で直流電力を授受する双方向チョッパとをさらに含み、
前記マスタ制御部は、各前記複数の無停電電源装置の前記スレーブ制御部から送信される前記検出回路の検出値に基づいて、前記複数の無停電電源装置に共通する第3の電圧指令値を生成し、かつ、生成した前記第3の電圧指令値を各前記複数の無停電電源装置の前記スレーブ制御部に対して送信し、
前記スレーブ制御部は、受信した前記第3の電圧指令値に従って前記双方向チョッパを制御するための第3の制御信号を生成し、
前記マスタ制御部は、前記複数の無停電電源装置における前記直流入力電圧の検出値を平均することにより第3の平均値を演算し、かつ、前記第3の平均値が第3の目標値に追従するように前記第3の電圧指令値を生成し、
前記スレーブ制御部は、自装置における前記直流入力電圧の検出値の前記第3の目標値に対する偏差に応じて前記第3の電圧指令値を補正し、かつ、補正された前記第3の電圧指令値を用いて前記第3の制御信号を生成する、無停電電源システム。
【請求項9】
前記双方向チョッパは、互いに直列に接続され、前記第3の制御信号に従って相補的にオンオフされる第5および第6の半導体スイッチング素子を含み、
前記スレーブ制御部は、前記第3の制御信号に対して、前記第5および第6の半導体スイッチング素子を同時にオフさせるためのデッドタイムを付与する、請求項7
または8に記載の無停電電源システム。
【請求項10】
前記マスタ制御部および前記スレーブ制御部の各々は、シリアル通信によりデータを送受信するための通信部をさらに含む、請求項1から
9のいずれか1項に記載の無停電電源システム。
【請求項11】
前記マスタ制御部と各前記複数の無停電電源装置の前記スレーブ制御部とを互いに接続し、前記シリアル通信によりデータを伝送する通信ケーブルをさらに備える、請求項
10に記載の無停電電源システム。
【請求項12】
前記スレーブ制御部は、前記シリアル通信における通信エラーを検知するためのチェック回路をさらに含み、前記チェック回路において前記通信エラーが検知されると、前回の前記第1の電圧指令値および前記第2の電圧指令値を保持する、請求項
10または1
1に記載の無停電電源システム。
【請求項13】
前記スレーブ制御部は、前記チェック回路において前記通信エラーが所定期間継続して検知された場合には、自装置を前記無停電電源システムから解列させる、請求項1
2に記載の無停電電源システム。
【請求項14】
前記スレーブ制御部は、自装置が故障した場合に、前記コンバータおよび前記インバータの運転を停止する、請求項1から1
3のいずれか1項に記載の無停電電源システム。
【請求項15】
前記スレーブ制御部は、自装置が故障した場合に、前記コンバータおよび前記インバータの運転を停止するとともに、故障検出信号を前記マスタ制御部へ送信し、
前記マスタ制御部は、前記複数の無停電電源装置から故障した無停電電源装置を除外した他の無停電電源装置の分担電流に基づいて、前記第2の目標値を決定する、請求項
3または4に記載の無停電電源システム。
【請求項16】
前記マスタ制御部から各前記複数の無停電電源装置の前記スレーブ制御部に制御電源を供給するための電力ケーブルをさらに備える、請求項1から1
5のいずれか1項に記載の無停電電源システム。
【請求項17】
前記マスタ制御部と前記複数の無停電電源装置とは別体とされる、請求項1から1
6のいずれか1項に記載の無停電電源システム。
【請求項18】
前記マスタ制御部は、前記複数の無停電電源装置のうちのいずれか1つの無停電電源装置の前記スレーブ制御部と一体化される、請求項1から1
6のいずれか1項に記載の無停電電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無停電電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2009-142078号公報(特許文献1)には、複数の電源ユニットと、複数の電源ユニットに共通に設けられる主制御ユニットと、電源ユニットごとに個別に設けられるユニット制御装置とを備える無停電電源装置が開示される。この無停電電源装置において、主制御装置は、各電源ユニットの電力変換装置を動作させるゲートパルスを1ユニット分だけ生成するように構成される。各電源ユニットのユニット制御装置は、電源ユニットの電流情報に基づいてゲートパルスを調整することにより、電源ユニットの出力電流のアンバランスを補正するように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載される無停電電源装置によれば、高機能で高価なCPUを電源ユニットに設けることが不要となるため、コストアップを抑制しつつ、無停電電源装置の容量を変更することができる。
【0005】
しかしながら、主制御装置がゲートパルスを各電源ユニットのユニット制御装置に対して送信する際、ゲートパルスにノイズが重畳する場合がある。この場合、ユニット制御装置が、ノイズが重畳されたゲートパルスを用いて各電源ユニットの電力変換装置を動作させることにより、各電源ユニットの誤動作を引き起こす可能性が懸念される。
【0006】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、負荷に対して並列接続される複数の無停電電源装置を安定的に動作させることができる無停電電源システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある局面では、無停電電源システムは、複数の無停電電源装置と、マスタ制御部とを備える。複数の無停電電源装置は、負荷に対して並列接続される。マスタ制御部は、複数の無停電電源装置を制御する。複数の無停電電源装置の各々は、コンバータ、インバータ、検出回路およびスレーブ制御部を含む。コンバータは、交流電源から供給される交流電力を直流電力に変換する。インバータは、コンバータまたは電力貯蔵装置から供給される直流電力を交流電力に変換して負荷に供給する。検出回路は、少なくともインバータの直流入力電圧、インバータの交流出力電圧およびインバータの出力電流を検出する。スレーブ制御部は、マスタ制御部と通信接続され、コンバータおよびインバータを制御する。マスタ制御部は、各複数の無停電電源装置のスレーブ制御部から送信される検出回路の検出値に基づいて、複数の無停電電源装置に共通する第1の電圧指令値および第2の電圧指令値を生成する。マスタ制御部は、生成した第1の電圧指令値および第2の電圧指令値を各複数の無停電電源装置のスレーブ制御部に対して送信する。スレーブ制御部は、受信した第1の電圧指令値に従ってコンバータを制御するための第1の制御信号を生成する。スレーブ制御部は、受信した第2の電圧指令値に従ってインバータを制御するための第2の制御信号を生成する。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、負荷に対して並列接続される複数の無停電電源装置を安定的に動作させることができる無停電電源システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係る無停電電源システムの全体構成を示す回路ブロック図である。
【
図2】コンバータおよびインバータの構成例を示す回路図である。
【
図3】双方向チョッパの構成例を示す回路図である。
【
図4】制御装置および制御回路の制御構成の一例を説明する機能ブロック図である。
【
図5】電圧指令生成部の構成例を説明する機能ブロック図である。
【
図6】チェック回路の構成例を説明する機能ブロック図である。
【
図7】補正回路、PWM回路およびデッドタイム生成回路の構成例を説明する機能ブロック図である。
【
図8】補正回路、PWM回路およびデッドタイム生成回路の構成例を説明する機能ブロック図である。
【
図9】補正回路、PWM回路およびデッドタイム生成回路の構成例を説明する機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では、図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は原則的に繰り返さないものとする。
【0011】
<無停電電源システムの全体構成>
図1は、実施の形態に係る無停電電源システムの全体構成を示す回路ブロック図である。
図1を参照して、無停電電源システムは、複数(
図1では3つ)の無停電電源装置U1~U3、制御装置20、および複数のバッテリB1~B3を備える。以下の説明では、複数の無停電電源装置U1~U3を「無停電電源装置U」と総称し、複数のバッテリB1~B3を「バッテリB」と総称する場合がある。
【0012】
無停電電源装置U1~U3の各々は、入力端子T1、バッテリ端子T2および出力端子T3を含む。入力端子T1は、商用交流電源100から商用周波数の交流電力を受ける。無停電電源システムは、実際には商用交流電源100から三相交流電力(U相交流電力、V相交流電力、W相交流電力)を受けるが、図面および説明の簡単化のため、
図1では一相分の回路のみ示されている。
【0013】
無停電電源装置U1~U3のバッテリ端子T2は、バッテリ(電力貯蔵装置)B1~B3にそれぞれ接続される。バッテリB1~B3の各々は、直流電力を蓄える。バッテリ端子T2にはバッテリBの代わりにコンデンサが接続されていてもよい。
【0014】
出力端子T3は、負荷102に接続される。負荷102は、交流電力によって駆動される。無停電電源装置U1~U3は、負荷102に対して並列接続されている。無停電電源システムの通常運転時、無停電電源装置U1~U3が運転状態にされ、無停電電源装置U1~U3から負荷102に商用周波数の交流電力が供給される。無停電電源装置U1~U3のうちの負荷102の運転に必要な適正運転台数(たとえば2台)の無停電電源装置(たとえばU1,U2)のみが運転状態にされ、残りの無停電電源装置(この場合はU3)は待機状態にされる構成としてもよい。
【0015】
無停電電源装置U1~U3の各々は、さらに、スイッチS1~S3、コンデンサ1,5,10、リアクトル2,9、コンバータ4、直流ライン6、双方向チョッパ7、インバータ8、電流検出器12,13、および制御回路15を備える。
【0016】
スイッチS1およびリアクトル2は、入力端子T1とコンバータ4の入力ノードとの間に直列接続される。コンデンサ1は、スイッチS1およびリアクトル2の間のノードN1に接続される。スイッチS1は、対応する無停電電源装置Uが運転状態にされた場合にオン(導通)され、対応する無停電電源装置Uが待機状態にされた場合にオフ(非導通)される。ノードN1に現れる交流入力電圧Viの瞬時値は、制御回路15によって検出される。交流入力電圧Viの瞬時値に基づいて、停電の発生の有無などが判別される。電流検出器13は、入力端子T1(すなわち商用交流電源100)からスイッチS1を介してノードN1に流れる電流(以下、入力電流とも称する)Iiの瞬時値を検出し、その検出値を示す信号Iiを制御回路15に与える。
【0017】
コンデンサ1およびリアクトル2は、交流入力フィルタ3を構成する。交流入力フィルタ3は、低域通過フィルタであり、商用交流電源100からコンバータ4に商用周波数の交流電力を通過させ、コンバータ4で発生するスイッチング周波数の信号が商用交流電源100に伝達することを防止する。
【0018】
コンバータ4は、制御回路15によって制御され、商用交流電源100から交流電力が供給されている通常時は、交流電力を直流電力に変換して直流ライン6に出力する。商用交流電源100からの交流電力の供給が停止された停電時は、コンバータ4の運転は停止される。コンバータ4の出力電圧は、所望の値に制御可能になっている。
【0019】
コンデンサ5は、直流ライン6に接続され、直流ライン6の電圧を平滑化させる。直流ライン6に現れる直流電圧Vdの瞬時値は、制御回路15によって検出される。直流ライン6は、双方向チョッパ7の高電圧側ノードに接続され、双方向チョッパ7の低電圧側ノードはスイッチS2を介してバッテリ端子T2に接続される。
【0020】
スイッチS2は、対応する無停電電源装置Uの使用時はオンされ、対応する無停電電源装置Uおよび対応するバッテリBのメンテナンス時はオフされる。バッテリ端子T2に現れるバッテリBの端子間電圧Vbの瞬時値は、制御回路15によって検出される。電流検出器14は、双方向チョッパ7からスイッチS2を介してバッテリ端子T2(すなわちバッテリB)に流れる電流(以下、バッテリ電流とも称する)Ibの瞬時値を検出し、その検出値を示す信号Ibを制御回路15に与える。
【0021】
双方向チョッパ7は、制御回路15によって制御され、商用交流電源100から交流電力が供給されている通常時は、コンバータ4によって生成された直流電圧Vdを降圧してバッテリBに与える。また,双方向チョッパ7は、バッテリBの直流電力をインバータ8に供給する場合、バッテリBの端子間電圧(以下、バッテリ電圧とも称する)Vbを昇圧して直流ライン6に出力する。直流ライン6は、インバータ8の入力ノードに接続されている。
【0022】
インバータ8は、制御回路15によって制御され、コンバータ4または双方向チョッパ7から直流ライン6を介して供給される直流電力を商用周波数の交流電力に変換して出力する。すなわち、インバータ8は、通常時はコンバータ4から直流ライン6を介して供給される直流電力を交流電力に変換し、停電時はバッテリBから双方向チョッパ7を介して供給される直流電力を交流電力に変換する。インバータ8の出力電圧は、所望の値に制御可能になっている。
【0023】
インバータ8の出力ノードはリアクトル9の一方端子に接続され、リアクトル9の他方端子(ノードN2)はスイッチS3を介して出力端子T3に接続される。コンデンサ10は、ノードN2に接続される。ノードN2に現れる交流出力電圧Voの瞬時値は、制御回路15によって検出される。電流検出器12は、ノードN2からスイッチS3を介して出力端子T3(すなわち負荷102)に流れる電流(以下、出力電流とも称する)Ioの瞬時値を検出し、その検出値を示す信号Ioを制御回路15に与える。
【0024】
リアクトル9およびコンデンサ10は、交流出力フィルタ11を構成する。交流出力フィルタ11は、低域通過フィルタであり、インバータ8で生成された商用周波数の交流電力を出力端子T3に通過させ、インバータ8で発生するスイッチング周波数の信号が出力端子T3に伝達されることを防止する。スイッチS3は、制御回路15によって制御され、対応する無停電電源装置Uの使用時にオンされ、対応する無停電電源装置Uのメンテナンス時にオフされる。
【0025】
コンバータ4、双方向チョッパ7およびインバータ8は、半導体スイッチング素子により構成される。半導体スイッチング素子としては、たとえばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が適用される。半導体スイッチング素子の制御方式として、PWM(Pulse Width Modulation)制御を適用することができる。
図2は、コンバータ4およびインバータ8の構成例を示す回路図である。
【0026】
図2を参照して、コンバータ4は、IGBTQ1~Q6およびダイオードD1~D6を含む。IGBTQ1~Q3のコレクタはともに直流正母線Lpに接続され、それらのエミッタはそれぞれ入力ノード4a,4b,4cに接続される。
【0027】
入力ノード4a,4b,4cはそれぞれ図示しないリアクトル2a,2b,2cの他方端子に接続される。IGBTQ4~Q6のコレクタはそれぞれ入力ノード4a,4b,4cに接続され、それらのエミッタはともに直流負母線Lnに接続される。ダイオードD1~D6は、それぞれIGBTQ1~Q6に逆並列に接続される。
【0028】
IGBTQ1,Q4はそれぞれゲート信号A1,B1によって制御され、IGBTQ2,Q5はそれぞれゲート信号A2,B2によって制御され、IGBTQ3,Q6はそれぞれゲート信号A3,B3によって制御される。ゲート信号B1,B2,B3は、それぞれゲート信号A1,A2,A3の反転信号である。
【0029】
IGBTQ1~Q3は、それぞれゲート信号A1~A3がHレベルにされた場合にオンし、それぞれゲート信号A1~A3がLレベルにされた場合にオフする。IGBTQ4~Q6は、それぞれゲート信号B1~B3がHレベルにされた場合にオンし、それぞれゲート信号B1~B3がLレベルにされた場合にオフする。
【0030】
ゲート信号A1,B1,A2,B2,A3,B3の各々は、パルス信号列であり、PWM信号である。ゲート信号A1,B1の位相とゲート信号A2,B2の位相とゲート信号A3,B3の位相とは、基本的に120度ずつずれている。ゲート信号A1,B1,A2,B2,A3,B3は、制御回路15によって生成される。ゲート信号A1,B1,A2,B2,A3,B3によってIGBTQ1~Q6の各々を所定のタイミングでオンオフさせるとともに、IGBTQ1~Q6の各々のオン時間を調整することにより、入力ノード4a~4cに与えられた三相交流電圧を直流電圧Vdに変換することができる。
【0031】
インバータ8は、IGBTQ11~Q16およびダイオードD11~D16を含む。IGBTQ11~Q13のコレクタはともに直流正母線Lpに接続され、それらのエミッタはそれぞれ出力ノード8a,8b,8cに接続される。
【0032】
出力ノード8a,8b,8cはそれぞれ図示しないリアクトル9a,9b,9cの一方端子に接続される。IGBTQ14~Q16のコレクタはそれぞれ出力ノード8a,8b,8cに接続され、それらのエミッタはともに直流負母線Lnに接続される。ダイオードD11~D16は、それぞれIGBTQ11~Q16に逆並列に接続される。
【0033】
IGBTQ11,Q14はそれぞれゲート信号X1,Y1によって制御され、IGBTQ12,Q15はそれぞれゲート信号X2,Y2によって制御され、IGBTQ13,Q16はそれぞれゲート信号X3,Y3によって制御される。ゲート信号Y1,Y2,Y3は、それぞれゲート信号X1,X2,X3の反転信号である。
【0034】
IGBTQ11~Q13は、それぞれゲート信号X1~X3がHレベルにされた場合にオンし、それぞれゲート信号X1~X3がLレベルにされた場合にオフする。IGBTQ14~Q16は、それぞれゲート信号Y1~Y3がHレベルにされた場合にオンし、それぞれゲート信号Y1~Y3がLレベルにされた場合にオフする。
【0035】
ゲート信号X1,Y1,X2,Y2,X3,Y3の各々は、パルス信号列であり、PWM信号である。ゲート信号X1,Y1の位相とゲート信号X2,Y2の位相とゲート信号X3,Y3の位相とは、基本的に120度ずつずれている。ゲート信号X1,Y1,X2,Y2,X3,Y3は、制御回路15によって生成される。ゲート信号X1,Y1,X2,Y2,X3,Y3によってIGBTQ11~Q16の各々を所定のタイミングでオンオフさせるとともに、IGBTQ11~Q16の各々のオン時間を調整することにより、直流母線Lp,Ln間の直流電圧Vdを三相交流電圧Voに変換することができる。
【0036】
図3は、双方向チョッパ7の構成例を示す回路図である。
図3を参照して、双方向チョッパ7は、IGBTQ21,Q22、ダイオードD21,D22、リアクトル700およびコンデンサ702を含む。
【0037】
IGBTQ21のコレクタは高電圧側ノード7aに接続され、そのエミッタはリアクトル700を介して低電圧側ノード7cに接続されるとともに、IGBTQ22のコレクタに接続される。IGBTQ22のエミッタは、高電圧側ノード7bおよび低電圧側ノード7dに接続される。ダイオードD21,D22は、それぞれIGBTQ21,Q22に逆並列に接続される。コンデンサは、高電圧側ノード7a,7b間に接続され、高電圧側ノード7a,7b間の直流電圧Vdを安定化させる。
【0038】
IGBTQ21は制御回路15からのゲート信号G1によって制御される。ゲート信号G1がHレベルにされるとIGBTQ21がオンし、ゲート信号G1がLレベルにされるとIGBTQ21がオフする。IGBTQ22は制御回路15からのゲート信号G2によって制御される。ゲート信号G2がHレベルにされるとIGBTQ22がオンし、ゲート信号G2がLレベルにされるとIGBTQ22がオフする。ゲート信号G1,G2の各々は、パルス信号列であり、PWM信号である。ゲート信号G1は、ゲート信号G2の反転信号である。
【0039】
図1に戻って、制御回路15は、制御装置20からの信号、交流入力電圧Vi、直流電圧Vd、バッテリ電圧Vb、交流出力電圧Vo、入力電流Ii、バッテリ電流Ibおよび出力電流Ioなどに基づいて、対応する無停電電源装置U(以下、自装置とも称する)全体を制御する。具体的には、商用交流電源100から交流電力が供給されている通常時、制御回路15は、交流入力電圧Viの位相に同期してコンバータ4およびインバータ8を制御する。
【0040】
また制御回路15は、通常時、直流電圧Vdが直流電圧Vdの目標値である参照電圧Vdrになるようにコンバータ4を制御し、商用交流電源100からの交流電力の供給が停止されて停電時は、コンバータ4の運転を停止させる。参照電圧Vdrは「第1の目標値」または「第3の目標値」に相当する。
【0041】
さらに制御回路15は、通常時は、バッテリ電圧Vbがバッテリ電圧Vbの目標値である参照電圧Vbrになるように双方向チョッパ7を制御し、停電時は、直流電圧Vdが参照電圧Vdrになるように双方向チョッパ7を制御する。
【0042】
制御回路15は、制御装置20および他の各無停電電源装置Uの制御回路15と通信ケーブル16によって互いに接続されている。各無停電電源装置Uの制御回路15および制御装置20は、通信ケーブル16を介してデータを授受する。制御装置20および制御回路15間の通信方式として、シリアル通信方式が適用される。シリアル通信は、有線通信であっても無線通信であってもよい。制御装置20は、複数の無停電電源装置U1~U3の分担電流が等しくなるように、各無停電電源装置Uのコンバータ4およびインバータ8を制御する。
【0043】
制御装置20は、複数の無停電電源装置U1~U3からの信号などに基づいて、無停電電源システム全体を制御する。制御装置20は、複数の無停電電源装置U1~U3を統括的に制御する「マスタ制御部」の一実施例に対応する。無停電電源装置Uの制御回路15は、制御装置20から与えられる制御指令に従って、対応する無停電電源装置U(自装置)を制御する「スレーブ制御部」の一実施例に対応する。
【0044】
具体的には、制御装置20は、通信ケーブル16を介して複数の無停電電源装置U1~U3の各々から入力電流Ii、出力電流Ioおよびバッテリ電流Ibの検出値、ならびに交流入力電圧Vi、直流電圧Vd、バッテリ電圧Vbおよび交流出力電圧Voの検出値を示す信号を受信する。制御装置20は、受信した信号に基づいて各無停電電源装置Uに対する電圧指令を生成する。制御装置20は、生成した電圧指令を、通信ケーブル16を介して複数の無停電電源装置U1~U3の制御回路15に対して送信する。
【0045】
無停電電源装置Uの制御回路15は、制御装置20からの電圧指令を受信すると、対応するスイッチS1をオンさせるとともに、電圧指令に従って対応するコンバータ4、双方向チョッパ7およびインバータ8の運転を制御する。
【0046】
<無停電電源システムの制御構成>
図4は、制御装置20および制御回路15の制御構成の一例を説明する機能ブロック図である。無停電電源装置U1の制御回路15、無停電電源装置U2の制御回路15および無停電電源装置U3の制御回路15は基本的構成が同じである。
図4では、無停電電源装置U1の制御回路15が代表的に示されている。
【0047】
図4を参照して、制御装置20と複数の無停電電源装置U1~U3の制御回路15とは通信ケーブル16によって双方向の通信可能に接続されている。通信ケーブル16は、シリアル通信にて双方向にデータを転送するように構成される。
【0048】
(制御装置20の構成)
制御装置20は、シリアル通信インターフェイス(I/F)21、平均値演算部22、電圧指令生成部23、制御電源24および制御電源生成部25を備える。制御装置20を構成する各機能ブロックは、例えば、制御装置20を構成するマイクロコンピュータによる、ソフトウェア処理および/またはハードウェア処理によって実現される。
【0049】
シリアル通信I/F21は、通信ケーブル16を用いたシリアル通信により、制御装置20と制御回路15との間で各種データを遣り取りするための通信インターフェイスである。シリアル通信I/F21は、通信ケーブル16から入力されたシリアルデータを複数のパラレルデータに変換するシリアル/パラレル変換器(S/P)と、制御装置20から出力されるパラレルデータをシリアルデータに変換するパラレル/シリアル変換器(P/S)とを有する。
【0050】
図4の構成例では、シリアル通信I/F21は、通信ケーブル16を介して複数の無停電電源装置U1~U3の各々の制御回路15から電流・電圧検出値を示すシリアルデータを受信する。電流・電圧検出値を示すシリアルデータは、入力電流Ii、出力電流Ioおよびバッテリ電流Ibの検出値、ならびに交流入力電圧Vi、直流電圧Vd、バッテリ電圧Vbおよび交流出力電圧Voの検出値が時系列に一列に並べられた形態を有する。シリアル通信I/F21は、受信したシリアルデータを、電流・電圧検出値を示すパラレルデータに変換し、生成したパラレルデータを平均値演算部22に出力する。
【0051】
平均値演算部22は、複数の無停電電源装置U1~U3の間での電流・電圧検出値の平均値を算出する。具体的には、平均値演算部22は、無停電電源装置U1の交流入力電圧Vi1、無停電電源装置U2の交流入力電圧Vi2および無停電電源装置U3の交流入力電圧Vi3の平均値(以下、交流入力電圧平均値とも称する)Viaを算出する。平均値演算部22は、無停電電源装置U1の直流電圧Vd1、無停電電源装置U2の直流電圧Vd2および無停電電源装置U3の直流電圧Vd3の平均値(以下、直流電圧平均値とも称する)Vdaを算出する。平均値演算部22は、無停電電源装置U1のバッテリ電圧Vb1、無停電電源装置U2のバッテリ電圧Vb2および無停電電源装置U3のバッテリ電圧Vb3の平均値(以下、バッテリ電圧平均値とも称する)Vbaを算出する。平均値演算部22は、無停電電源装置U1の交流出力電圧Vo1、無停電電源装置U2の交流出力電圧Vo2および無停電電源装置U3の交流出力電圧Vo3の平均値(以下、交流出力電圧平均値とも称する)Voaを算出する。
【0052】
平均値演算部22は、無停電電源装置U1の入力電流Ii1、無停電電源装置U2の入力電流Ii2および無停電電源装置U3の入力電流Ii3の平均値(以下、入力電流平均値とも称する)Iiaを算出する。平均値演算部22は、無停電電源装置U1のバッテリ電流Ib1、無停電電源装置U2のバッテリ電流Ib2および無停電電源装置U3のバッテリ電流Ib3の平均値(以下、バッテリ電流平均値とも称する)Ibaを算出する。平均値演算部22は、無停電電源装置U1の出力電流Io1、無停電電源装置U2の出力電流Io2および無停電電源装置U3の出力電流Io3の平均値(以下、出力電流平均値とも称する)Ioaを算出する。
【0053】
電圧指令生成部23は、平均値演算部22により算出された平均値に基づいて、無停電電源装置Uに対する電圧指令を生成する。
図5は、電圧指令生成部23の構成例を説明する機能ブロック図である。
【0054】
図5を参照して、電圧指令生成部23は、インバータ8を制御するための電圧指令値を生成する電圧指令生成部23Aと、コンバータ4を制御するための電圧指令値を生成する電圧指令生成部23Bと、双方向チョッパ7を制御するための電圧指令値を生成する電圧指令生成部23Cとを有する。なお、図中の平均値演算部22A~22Hは、
図2の平均値演算部22を構成する。シリアル通信I/F21は、S/P210と、P/S212とを有する。
【0055】
電圧指令生成部23Aは、減算器50,53、電圧制御部51、並列制御部52および電流制御部54を含む。減算器50は、平均値演算部22Aにより算出された交流出力電圧平均値Voaの参照電圧Vorに対する偏差ΔVoを算出する(ΔVo=Vor-Voa)。参照電圧Vorは、商用交流電源100の交流出力電圧に同期した電圧である。参照電圧Vorは「第2の目標値」に相当する。
【0056】
電圧制御部51は、偏差ΔVoを小さくするための制御演算を行なうことにより、電流指令値IL*を生成する。電圧制御部51は、例えば比例積分(PI)演算によって電流指令値IL*を生成する。電流指令値IL*は、負荷102に供給される電流の指令値に相当する。
【0057】
並列制御部52は、無停電電源装置Uの制御回路15に内蔵される故障検出回路44(
図4)により生成される故障検出信号DTを受ける。故障検出信号DTは、対応する無停電電源装置Uが故障しているか否かを示す信号である。故障検出信号DT1は無停電電源装置U1が故障しているか否かを示す信号であり、故障検出信号DT2は無停電電源装置U2が故障しているか否かを示す信号であり、故障検出信号DT3は無停電電源装置U3が故障しているか否かを示す信号である。故障検出回路44の構成については後述する。
【0058】
並列制御部52は、故障検出信号DT1~DT3に基づいて、正常な無停電電源装置Uの台数を検出する。並列制御部52は、電流指令値IL*を正常な無停電電源装置Uの台数で除することにより、電流指令値Io*を生成する。電流指令値Io*は、正常な無停電電源装置Uの出力電流Ioの指令値に相当する。
【0059】
減算器53は、平均値演算部22Bにより算出された出力電流平均値Ioaの電流指令値Io*に対する偏差ΔIoを算出する(ΔIo=Io*-Ioa)。
【0060】
電流制御部54は、偏差ΔIoを小さくするための制御演算を行なうことにより、電圧指令値Vo*を生成する。電流制御部54は、例えばPI演算によって電圧指令値Vo*を生成する。電圧指令値Vo*は、インバータ8の交流出力電圧Voの指令値に相当する。電圧指令値Vo*は「第2の電圧指令値」を構成する。電流制御部54は、生成した電圧指令値Vo*をP/S212に出力する。
【0061】
電圧指令生成部23Bは、減算器55,57、電圧制御部56、電流制御部58および加算器59を含む。減算器55は、平均値演算部22Cにより算出された直流電圧平均値Vdaの参照電圧Vdr(第1の目標値)に対する偏差ΔVdを算出する(ΔVd=Vdr-Vda)。
【0062】
電圧制御部56は、偏差ΔVdを小さくするための制御演算を行なうことにより、電流指令値Ii*を生成する。電圧制御部56は、例えばPI演算によって電流指令値Ii*を生成する。電流指令値Ii*は、無停電電源装置Uの入力電流Iiの指令値に相当する。
【0063】
減算器57は、平均値演算部22Dにより算出された入力電流平均値Iiaの電流指令値Ii*に対する偏差ΔIiを算出する(ΔIi=Ii*-Iia)。
【0064】
電流制御部58は、偏差ΔIiを小さくするための制御演算を行なうことにより、電圧指令値Vi♯を生成する。電流制御部54は、例えばPI演算によって電圧指令値Vi♯を生成する。
【0065】
加算器59は、電圧指令値Vi♯に対して、平均値演算部22Eにより算出された交流入力電圧平均値Viaを加算することにより、電圧指令値Vi*を生成する。電圧指令値Vi*は、コンバータ4の交流入力電圧Viの指令値に相当する。電圧指令値Vi*は「第1の電圧指令値」を構成する。加算器59は、生成した電圧指令値Vi*をP/S212に出力する。
【0066】
電圧指令生成部23Cは、減算器60,62、電圧制御部61および、電流制御部63を含む。減算器60は、平均値演算部22Fにより算出された直流電圧平均値Vdaの参照電圧Vdr(第3の目標値)に対する偏差ΔVdを算出する(ΔVd=Vdr-Vda)。
【0067】
電圧制御部61は、偏差ΔVdを小さくするための制御演算を行なう。電圧制御部61は、制御演算結果と、平均値演算部22Gより算出されたバッテリ電圧平均値Vbaとに基づいて電流指令値Ib*を生成する。電圧制御部61は、例えばPI演算によって電流指令値Ib*を生成する。電流指令値Ib*は、無停電電源装置Uのバッテリ電流Ibの指令値に相当する。
【0068】
減算器62は、平均値演算部22Hにより算出されたバッテリ電流平均値Ibaの電流指令値Ib*に対する偏差ΔIbを算出する(ΔIb=Ib*-Iba)。
【0069】
電流制御部63は、偏差ΔIbを小さくするための制御演算を行なうことにより、電圧指令値Vd*を生成する。電流制御部63は、例えばPI演算によって電圧指令値Vd*を生成する。電圧指令値Vd*は、無停電電源装置Uの直流電圧Vdの指令値に相当する。電圧指令値Vd*は「第3の電圧指令値」を構成する。電流制御部63は、生成した電圧指令値Vd*をP/S212に出力する。
【0070】
P/S212は、電圧指令生成部23A~23Cによりそれぞれ生成された電圧指令値Vo*,Vi*,Vd*をシリアルデータに変換し、通信ケーブル16に出力する。電圧指令値Vo*,Vi*,Vd*は通信ケーブル16を介して無停電電源装置Uの制御回路15に転送される。
【0071】
図4に戻って、制御電源生成部25は、無停電電源システムの起動時、商用交流電源100から与えられる交流電圧に基づいて制御装置20全体を駆動させるための制御電源24を生成する。商用交流電源100の停電時、制御電源生成部25は、交流出力電圧に基づいて制御電源24を生成する。制御電源24は、電力ケーブル17を介して複数の無停電電源装置U1~U3の各々に内蔵される制御電源45に接続される。制御電源45は、電力ケーブル17から電力の供給を受けて、対応する無停電電源装置U全体を駆動させるように構成される。
【0072】
(制御回路15の構成)
無停電電源装置U1の制御回路15は、シリアル通信I/F30、チェック回路31、補正回路32~34、PWM回路35~37、デッドタイム生成回路38~40、検出回路41~43、故障検出回路44および、制御電源45を備える。制御回路15を構成する各機能ブロックは、例えば、制御回路15を構成するマイクロコンピュータによる、ソフトウェア処理および/またはハードウェア処理によって実現される。
【0073】
シリアル通信I/F30は、通信ケーブル16を用いたシリアル通信により、無停電電源装置U1の制御回路15と、制御装置20および他の無停電電源装置U2,U3の制御回路15との間で各種データを遣り取りするための通信インターフェイスである。シリアル通信I/F30は図示しないS/PおよびP/Sを有する。
【0074】
図4の構成例では、シリアル通信I/F30は、通信ケーブル16を介して制御装置20から電圧指令を示すシリアルデータを受信すると、受信したシリアルデータを、電圧指令を示すパラレルデータに変換してチェック回路31に出力する。
【0075】
検出回路41は、コンバータ4に対応して設けられた電流検出器および電圧検出器(図示せず)による交流入力電圧Vi1、直流電圧Vd1および入力電流Ii1の検出値を示す信号をシリアル通信I/F30および故障検出回路44に転送する。
【0076】
検出回路42は、双方向チョッパ7に対応して設けられた電流検出器および電圧検出器(図示せず)による直流電圧Vd1、バッテリ電圧Vb1およびバッテリ電流Ib1の検出値を示す信号をシリアル通信I/F30および故障検出回路44に転送する。
【0077】
検出回路43は、インバータ8に対応して設けられた電流検出器および電圧検出器(図示せず)による交流出力電圧Vo1および出力電流Io1の検出値を示す信号をシリアル通信I/F30および故障検出回路44に転送する。検出回路41~43は「検出回路」の一実施例に対応する。
【0078】
シリアル通信I/F30は、検出回路41~43から与えられる電圧・電流検出値を示すパラレルデータをシリアルデータに変換し、生成したシリアルデータを通信ケーブル16に出力する。
【0079】
故障検出回路44は、検出回路41~43から与えられる電圧・電流検出値に基づいて、無停電電源装置U1が故障しているか否かを判定する。例えば、複数の電圧検出値のうちの少なくとも1つが予め設定されている上限電圧を超えている場合、または、複数の電流検出値のうちの少なくとも1つが予め設定されている上限電流を超えている場合には、故障検出回路44は、無停電電源装置U1が故障していると判定する。故障検出回路44は、無停電電源装置U1が故障していると判定された場合、Hレベルに活性化された故障検出信号DT1を補正回路32~34およびシリアル通信I/F30に出力する。一方、無停電電源装置U1が故障していないと判定された場合には、故障検出回路44は、Lレベルの故障検出信号DT1を補正回路32~34およびシリアル通信I/F30に出力する。シリアル通信I/F30は、故障検出信号DT1をシリアルデータに変換して通信ケーブル16に出力する。故障検出信号DT1は通信ケーブル16を介して制御装置20に送信される。
【0080】
チェック回路31は、シリアル通信における通信エラーの発生の有無を確認するための回路である。チェック回路31は、パリティチェックなどの公知の手法を用いて通信エラーの発生を検知することができる。通信エラーの発生が検知されない場合、チェック回路31は、受信した電圧指令を補正回路32,33,34へ転送する。具体的には、チェック回路31は、電圧指令値Vi*を補正回路32へ転送し、電圧指令値Vd*を補正回路33へ転送し、電圧指令値Vo*を補正回路34へ転送する。
【0081】
一方、通信エラーの発生が検知された場合、例えばノイズ等に起因してシリアルデータの一部が消失している場合には、チェック回路31は、電圧指令を更新せず、電圧指令の前回値を保持するように構成される。
【0082】
またチェック回路31は、所定期間に亘って通信エラーが継続して検知された場合には、制御装置20との間でシリアル通信を実行できない異常が発生していると判断する。シリアル通信異常が発生した場合、チェック回路31は、対応する無停電電源装置UのスイッチS1をオフさせることにより、対応する無停電電源装置Uを無停電電源システムから解列させる。さらにチェック回路31は、対応する無停電電源装置Uのコンバータ4、インバータ8および双方向チョッパ7を停止状態とする。
【0083】
図6は、チェック回路31の構成例を説明する機能ブロック図である。
図6を参照して、チェック回路31は、シリアル通信チェッカ110、論理否定(NOT)回路112、論理積(AND)回路114、シフトレジスタ116と、Dフリップフロップ(D-FF)121,122,123と、RSフリップフロップ(RS-FF)124とを含む。
【0084】
シリアル通信チェッカ110は、パリティチェックなどの公知の手法を用いて通信エラーの発生の有無をチェックする。通信エラーの発生が検知された場合、シリアル通信チェッカ110は、Hレベルに活性化されたエラー信号ERRを発生する。通信エラーが発生していない正常時、エラー信号ERRはLレベルに保持される。
【0085】
NOT回路112は、シリアル通信チェッカ110からのエラー信号ERRの否定の演算結果を示す信号をAND回路114に出力する。AND回路114は、クロックCLKと、NOT回路112からの信号との論理積の演算結果を示す信号を出力する。AND回路114の出力信号は、ERR信号がLレベルのとき、すなわちシリアル通信が正常であるときには、クロックCLKに一致した信号となる。一方、ERR信号がHレベルのとき、すなわち、通信エラーが発生したときには、AND回路114の出力信号はLレベルに固定される。
【0086】
D-FF121は、入力端子Dに電圧指令値Vi*を受け、クロック端子にAND回路114の出力信号を受ける。D-FF121は、クロック入力であるAND回路114の出力信号の立上りのときに動作するように構成される。すなわち、D-FF121は、AND回路114の出力信号の立上りのときに、電圧指令値Vi*をセット出力端子Qに出力する。AND回路114の出力信号がLレベルであれば、セット出力は変わらない。
【0087】
これによると、シリアル通信が正常である場合、クロックCLKの立上りのときに、D-FF121は電圧指令値Vi*を出力する。通信エラーが発生すると、クロックCLKがLレベルに固定されるため、D-FF121が動作せず、結果的にD-FF121のセット出力は通信エラー発生直前の電圧指令値Vi*に保持される。
【0088】
D-FF122は、入力端子Dに電圧指令値Vd*を受け、クロック端子にAND回路114の出力信号を受ける。D-FF122は、AND回路114の出力信号の立上りのときに、電圧指令値Vd*をセット出力端子Qに出力する。したがって、シリアル通信が正常である場合、クロックCLKの立上りのときに、D-FF122は電圧指令値Vd*を出力する。一方、通信エラーが発生すると、クロックCLKがLレベルに固定されるため、D-FF122が動作せず、結果的にD-FF122のセット出力は通信エラー発生直前の電圧指令値Vd*に保持される。
【0089】
D-FF123は、入力端子Dに電圧指令値Vo*を受け、クロック端子にAND回路114の出力信号を受ける。D-FF123は、AND回路114の出力信号の立上りのときに、電圧指令値Vo*をセット出力端子Qに出力する。したがって、シリアル通信が正常である場合、クロックCLKの立上りのときに、D-FF123は電圧指令値Vo*を出力する。一方、通信エラーが発生すると、クロックCLKがLレベルに固定されるため、D-FF123が動作せず、結果的にD-FF123のセット出力は通信エラー発生直前の電圧指令値Vo*に保持される。
【0090】
シフトレジスタ116は、複数のD-FF118と、AND回路120とを含む。D-FF118は、クロックCLKの入力ごとに、入力されたデータを後段のD-FF118にシフトするように構成される。シフトレジスタ116は、最終段のD-FF118のセット出力とともに、各D-FF118のセット出力を出力する。AND回路120は、複数のセット出力の論理積の演算結果を示す信号を出力する。
【0091】
各D-FF118は、入力端子Dにシリアル通信チェッカ110からのエラー信号ERRを受け、クロック端子にクロックCLKを受ける。エラー信号ERRがLレベルのときには、各D-FF118のセット出力はLレベルとなるため、AND回路120の出力信号もLレベルとなる。通信エラーが発生することにより、エラー信号ERRがLレベルからHレベルに遷移すると、クロック入力のたびに、前段のD-FF118から順にセット出力もLレベルからHレベルに遷移する。最終段のD-FF118のセット出力がLレベルからHレベルに遷移したタイミングにて、全てのD-FF118のセット出力がHレベルである場合、AND回路120の出力信号はLレベルからHレベルに遷移する。
【0092】
このような構成としたことにより、シフトレジスタ116を構成するD-FF118の個数に等しい個数のクロック入力に亘って、エラー信号ERRが継続してHレベルを示した場合、シフトレジスタ116はHレベルの信号を出力することになる。すなわち、通信エラーが複数のクロック入力に対応する所定時間に亘って継続した場合、シフトレジスタ116はHレベルの信号を出力する。
【0093】
RS-FF124は、セット入力端子Sにシフトレジスタ116の出力信号を受け、クロック端子にクロックCLKを受ける。RS-FF124は、セット入力がHレベルのときにセット状態になり、セット出力端子QにHレベルの信号を出力するように構成される。すなわち、シリアル通信における通信エラーが複数のクロック入力に対応する所定時間に亘って継続した場合、RS-FF124は、Hレベルの信号を出力する。RS-FF124から出力されるHレベルの信号は、シリアル通信異常を示す信号に相当する。RS-FF124の出力信号はスイッチS1に入力されるとともに、D-FF121,122,123のクリア入力端子CLRに入力される。スイッチS1は、シリアル通信異常を示す信号を受けると、オフされる。D-FF121,122,123の各々は、Hレベルのクリア入力によってリセットされることにより、セット出力がLレベルになる。
【0094】
これによると、シリアル通信異常が発生した場合には、スイッチS1がオフされることによって、対応する無停電電源装置Uが無停電電源システムから解列される。さらに、チェック回路31から補正回路32,33,34への電圧指令の転送が停止されることによって、対応する無停電電源装置Uのコンバータ4、インバータ8および双方向チョッパ7が停止状態となる。
【0095】
図4に戻って、補正回路32は、チェック回路31から転送される電圧指令値Vi*を補正する。
図5で説明したように、電圧指令値Vi*は、複数の無停電電源装置U1~U3間の直流電圧平均値Vdaを用いて生成される。そのため、各無停電電源装置Uにおいて、電圧指令値Vi*は、直流電圧平均値Vdaと実際の直流電圧Vdとの差に起因した誤差を含む場合がある。補正回路32は、直流電圧Vdの検出値に応じて電圧指令値Vi*を補正することにより、コンバータ4により生成される直流電圧Vd1を参照電圧Vdrに一致させる。
【0096】
PWM回路35は、交流入力電圧Viを補正回路32により補正された電圧指令値Vi*に制御するためのPWM信号を生成する。PWM回路35は、電圧指令値Vi*を直流電圧Vd1で除算することで、-1~+1の範囲内の数値に規格化された電圧指令値Vi*を得る。PWM回路35は、規格化された電圧指令値Vi*と、一定周波数で-1~+1の範囲内を変化するキャリア波CWとの電圧比較に従ってゲート信号(PWM信号)A1~A3を生成する。キャリア波CWの周波数は、IGBTQ1~Q6のスイッチング周波数と一致する。
【0097】
デッドタイム生成回路38は、PWM回路35により生成されたゲート信号A1~A3を受けると、ゲート信号A1~A3の論理レベルをそれぞれ反転させたゲート信号B1~B3を生成する。デッドタイム生成回路38は、ゲート信号A1,B1の間、ゲート信号A2,B2の間、およびゲート信号A3,B3の間に、対となるゲート信号の両方がLレベルに設定されるデッドタイムTdを設ける。デッドタイムTdを設けることにより、素子ばらつきに起因して上アーム素子および下アーム素子が同時にオンすることによる短絡経路の形成を防止することができる。
【0098】
図7は、補正回路32、PWM回路35およびデッドタイム生成回路38の構成例を説明する機能ブロック図である。
【0099】
図7を参照して、補正回路32は、電圧指令値Viu*(U相電圧指令値Viu*、V相電圧指令値Viv*、W相電圧指令値Viw*)を受け、故障検出回路44から故障検出信号DT1を受ける。補正回路32は、減算器81a~81c、ゲイン演算器82a~82cおよび加算器80a~80cを有する。
【0100】
減算器81aは、参照電圧Vdrに対する直流電圧Vd1の偏差ΔVd1を算出する(ΔVd1=Vdr-Vd1)。ゲイン演算器82aは、偏差ΔVd1に補正ゲインK1を乗算し、乗算結果を加算器80aへ出力する。加算器80aは、ゲイン演算器82aの出力(ΔVd1・K1)をフィードフォワード項として、U相電圧指令値Viu*に加算する。
【0101】
減算器81bは、参照電圧Vdrに対する直流電圧Vd1の偏差ΔVd1を算出する(ΔVd1=Vdr-Vd1)。ゲイン演算器82bは、偏差ΔVd1に補正ゲインK1を乗算し、乗算結果を加算器80bへ出力する。加算器80bは、ゲイン演算器82bの出力(ΔVd1・K1)をフィードフォワード項として、V相電圧指令値Viv*に加算する。
【0102】
減算器81cは、参照電圧Vdrに対する直流電圧Vd1の偏差ΔVd1を算出する(ΔVd1=Vdr-Vd1)。ゲイン演算器82cは、偏差ΔVd1に補正ゲインK1を乗算し、乗算結果を加算器80cへ出力する。加算器80cは、ゲイン演算器82cの出力(ΔVd1・K1)をフィードフォワード項として、W相電圧指令値Viw*に加算する。
【0103】
PWM回路35は、比較器83a~83cを有する。加算器80a~80cからの電圧指令値Viu*,Viv*,Viw*の各々は、直流電圧Vd1で除されることによって、-1~+1の範囲内の数値に規格化される。
【0104】
比較器83aは、規格化されたU相電圧指令値Viu*と、一定周波数で-1~+1の範囲内を変化するキャリア波CWとの電圧比較に従ってゲート信号A1を生成する。比較器83bは、規格化されたV相電圧指令値Viv*とキャリア波CWとの電圧比較に従ってゲート信号A2を生成する。比較器83cは、規格化されたW相電圧指令値Viw*とキャリア波CWとの電圧比較に従ってゲート信号A3を生成する。
【0105】
デッドタイム生成回路38は、論理否定(NOT)回路84a~84cおよびオンディレイ回路85a~85cを有する。NOT回路84aは、ゲート信号A1の否定の演算により、ゲート信号B1を生成する。オンディレイ回路85aは、ゲート信号A1,B1に対してデッドタイムTdを付与する。具体的には、オンディレイ回路85aは、IGBTQ2(下アーム素子)がターンオフした後に、IGBTQ1(上アーム素子)がターンオンするように、ゲート信号A1に対してデッドタイムTd相当の遅延時間を付与する。またオンディレイ回路85aは、IGBTQ1(上アーム素子)がターンオフした後に、IGBTQ2(下アーム素子)がターンオンするように、ゲート信号B11に対してデッドタイムTd相当の遅延時間を付与する。オンディレイ回路85aは、デッドタイムTdが付与されたゲート信号A1,B1をそれぞれ、コンバータ4のIGBTQ1,Q4のゲートに入力する。
【0106】
NOT回路84bは、ゲート信号A2の否定の演算により、ゲート信号B2を生成する。オンディレイ回路85bは、ゲート信号A2,B2に対してデッドタイムTdを設ける。オンディレイ回路85bは、デッドタイムTdが付与されたゲート信号A2,B2をそれぞれ、コンバータ4のIGBTQ2,Q5のゲートに入力する。
【0107】
NOT回路84cは、ゲート信号A3の否定の演算により、ゲート信号B3を生成する。オンディレイ回路85cは、ゲート信号A3,B3に対してデッドタイムTdを設ける。オンディレイ回路85cは、デッドタイムTdが付与されたゲート信号A3,B3をそれぞれ、コンバータ4のIGBTQ3,Q6のゲートに入力する。
【0108】
補正回路32は、停止回路86をさらに有する。停止回路86は、故障検出回路44からHレベルの故障検出信号DT1を受けると、デッドタイム生成回路38のオンディレイ回路85a~85cの各々に対して、コンバータ4のIGBTQ1~Q6をゲート遮断するためのゲート遮断指令GBを出力する。これにより、無停電電源装置U1が故障した場合には、無停電電源装置U1のコンバータ4は停止状態とされる。
【0109】
図4に戻って、補正回路33は、チェック回路31から転送される電圧指令値Vd*を補正する。
図5で説明したように、電圧指令値Vd*は、複数の無停電電源装置U1~U3間の直流電圧平均値Vdaを用いて生成される。そのため、各無停電電源装置Uにおいて、電圧指令値Vd*は、直流電圧平均値Vdaと実際の直流電圧Vdとの差に起因した誤差を含む場合がある。補正回路33は、直流電圧Vdの検出値に応じて電圧指令値Vd*を補正することにより、双方向チョッパ7により生成される直流電圧Vd1を参照電圧Vdrに一致させる。
【0110】
PWM回路36は、直流電圧Vdを補正回路33により補正された電圧指令値Vd*に制御するためのPWM信号を生成する。PWM回路36は、電圧指令値Vd*を直流電圧Vd1で除算することで、-1~+1の範囲内の数値に規格化された電圧指令値Vd*を得る。PWM回路36は、規格化された電圧指令値Vd*と、一定周波数で-1~+1の範囲内を変化するキャリア波CWとの電圧比較に従ってゲート信号(PWM信号)G1を生成する。
【0111】
デッドタイム生成回路39は、PWM回路36により生成されたゲート信号G1を受けると、ゲート信号G1の論理レベルを反転させたゲート信号G2を生成する。デッドタイム生成回路39は、ゲート信号G1,G2の間にデッドタイムTdを設ける。
【0112】
図8は、補正回路33、PWM回路36およびデッドタイム生成回路39の構成例を説明する機能ブロック図である。
【0113】
図8を参照して、補正回路33は、電圧指令値Vd*を受け、故障検出回路44から故障検出信号DT1を受ける。補正回路33は、減算器91、ゲイン演算器92および加算器90を有する。
【0114】
減算器91は、参照電圧Vdrに対する直流電圧Vd1の偏差ΔVd1を算出する(ΔVd1=Vdr-Vd1)。ゲイン演算器92は、偏差ΔVd1に補正ゲインK2を乗算し、乗算結果を加算器90へ出力する。加算器90は、ゲイン演算器92の出力(ΔVd1・K2)をフィードフォワード項として、電圧指令値Vd*に加算する。
【0115】
PWM回路36は、比較器93を有する。加算器90からの電圧指令値Vd*は、直流電圧Vd1で除されることによって、-1~+1の範囲内の数値に規格化される。比較器93は、規格化された電圧指令値Vd*とキャリア波CWとの電圧比較に従ってゲート信号G1を生成する。
【0116】
デッドタイム生成回路39は、NOT回路94およびオンディレイ回路95を有する。NOT回路94は、ゲート信号G1の否定の演算により、ゲート信号G2を生成する。オンディレイ回路95は、ゲート信号G1,G2に対してデッドタイムTdを付与する。オンディレイ回路95は、デッドタイムTdが付与されたゲート信号G1,G2をそれぞれ、双方向チョッパ7のIGBTQ21,Q22のゲートに入力する。
【0117】
補正回路33は、停止回路96をさらに有する。停止回路96は、故障検出回路44からHレベルの故障検出信号DT1を受けると、デッドタイム生成回路39のオンディレイ回路95に対して、双方向チョッパ7のIGBTQ21,Q22をゲート遮断するためのゲート遮断指令GBを出力する。これにより、無停電電源装置U1が故障した場合には、無停電電源装置U1の双方向チョッパ7は停止状態とされる。
【0118】
図4に戻って、補正回路34、チェック回路31から転送される電圧指令値Vo*を補正する。
図5で説明したように、電圧指令値Vo*は、複数の無停電電源装置U1~U3間の出力電流平均値Ioaを用いて生成される。そのため、各無停電電源装置Uにおいて、電圧指令値Vo*は、出力電流平均値Ioaと実際の出力電流Ioとの差に起因した誤差を含む場合がある。補正回路34は、出力電流Ioの検出値に応じて電圧指令値Vo*を補正することにより、インバータ8により生成される交流出力電圧Voを商用交流電源100の交流出力電圧に同期させる。
【0119】
PWM回路37は、交流出力電圧Voを補正回路34により補正された電圧指令値Vo*に制御するためのPWM信号を生成する。PWM回路37は、電圧指令値Vo*を直流電圧Vd1で除算することで、-1~+1の範囲内の数値に規格化された電圧指令値Vo*を得る。PWM回路37は、規格化された電圧指令値Vo*とキャリア波CWとの電圧比較に従ってゲート信号(PWM信号)X1~X3を生成する。
【0120】
デッドタイム生成回路40は、PWM回路37により生成されたゲート信号X1~X3を受けると、ゲート信号X1~X3の論理レベルをそれぞれ反転させたゲート信号Y1~Y3を生成する。デッドタイム生成回路40は、ゲート信号X1,Y1の間、ゲート信号X2,Y2の間、およびゲート信号X3,Y3の間にデッドタイムTdを設ける。
【0121】
図9は、補正回路34、PWM回路37およびデッドタイム生成回路40の構成例を説明する機能ブロック図である。
【0122】
図9を参照して、補正回路34は、電圧指令値Vou*(U相電圧指令値Vou*、V相電圧指令値Vov*、W相電圧指令値Vow*)を受け、故障検出回路44から故障検出信号DT1を受ける。補正回路32は、減算器71a~71c、ゲイン演算器72a~72cおよび加算器70a~70cを有する。
【0123】
減算器71aは、U相電流指令値Iou*に対するU相出力電流Iou1の偏差ΔIou1を算出する(ΔIou1=Iou*-Iou1)。ゲイン演算器72aは、偏差ΔIou1に補正ゲインK3を乗算し、乗算結果を加算器70aへ出力する。加算器70aは、ゲイン演算器72aの出力(ΔIou1・K3)をフィードフォワード項として、U相電圧指令値Vou*に加算する。
【0124】
減算器71bは、V相電流指令値Iov*に対するV相出力電流Iovの偏差ΔIov1を算出する(ΔIov1=Iov*-Iov1)。ゲイン演算器72bは、偏差ΔIov1に補正ゲインK3を乗算し、乗算結果を加算器70bへ出力する。加算器70bは、ゲイン演算器72bの出力(ΔIov1・K3)をフィードフォワード項として、V相電圧指令値Vov*に加算する。
【0125】
減算器71cは、W相電流指令値Iow*に対するW相出力電流Iowの偏差ΔIow1を算出する(ΔIow1=Iow*-Iow1)。ゲイン演算器72cは、偏差ΔIow1に補正ゲインK3を乗算し、乗算結果を加算器70cへ出力する。加算器70cは、ゲイン演算器72cの出力(ΔIow1・K3)をフィードフォワード項として、W相電圧指令値Vow*に加算する。
【0126】
PWM回路37は、比較器73a~73cを有する。加算器70a~70cからの電圧指令値Vou*,Vov*,Vow*の各々は、直流電圧Vd1で除されることによって、-1~+1の範囲内の数値に規格化される。
【0127】
比較器73aは、規格化されたU相電圧指令値Vou*とキャリア波CWとの電圧比較に従ってゲート信号X1を生成する。比較器73bは、規格化されたV相電圧指令値Vov*とキャリア波CWとの電圧比較に従ってゲート信号X2を生成する。比較器73cは、規格化されたW相電圧指令値Vow*とキャリア波CWとの電圧比較に従ってゲート信号X3を生成する。
【0128】
デッドタイム生成回路40は、NOT回路74a~74cおよびオンディレイ回路75a~75cを有する。NOT回路74aは、ゲート信号X1の否定の演算により、ゲート信号Y1を生成する。オンディレイ回路75aは、ゲート信号X1,Y1に対してデッドタイムTdを付与する。オンディレイ回路75aは、デッドタイムTdが付与されたゲート信号X1,Y1をそれぞれ、インバータ8のIGBTQ11,Q14のゲートに入力する。
【0129】
NOT回路74bは、ゲート信号X2の否定の演算により、ゲート信号Y2を生成する。オンディレイ回路75bは、ゲート信号X2,Y2に対してデッドタイムTdを付与する。オンディレイ回路75bは、デッドタイムTdが付与されたゲート信号X2,Y2をそれぞれ、インバータ8のIGBTQ12,Q15のゲートに入力する。
【0130】
NOT回路74cは、ゲート信号X3の否定の演算により、ゲート信号Y3を生成する。オンディレイ回路75cは、ゲート信号X3,Y3に対してデッドタイムTdを付与する。オンディレイ回路75cは、デッドタイムTdが付与されたゲート信号X3,Y3をそれぞれ、インバータ8のIGBTQ13,Q16のゲートに入力する。
【0131】
補正回路34は、停止回路76をさらに有する。停止回路76は、故障検出回路44からHレベルの故障検出信号DT1を受けると、デッドタイム生成回路40のオンディレイ回路75a~75cの各々に対して、インバータ8のIGBTQ11~Q16をゲート遮断するためのゲート遮断指令GBを出力する。これにより、無停電電源装置U1が故障した場合には、無停電電源装置U1のインバータ8は停止状態とされる。
【0132】
以上説明したように、本実施の形態に係る無停電電源システムは、複数の無停電電源装置を統括的に制御するマスタ制御部(制御装置20)が複数の無停電電源装置に共通する電圧指令を生成して各無停電電源装置のスレーブ制御部(制御回路15)に送信し、各スレーブ制御部が、受信した電圧指令に従って自装置の電力変換器を制御するための制御信号(ゲート信号)を生成するように構成される。
【0133】
上記構成によると、マスタ制御部および各スレーブ制御部の間の通信にノイズ等が発生した場合においても、各スレーブ制御部は制御信号を安定的に生成することができる。したがって、マスタ制御部が電圧指令から制御信号を生成して各スレーブ制御部に送信し、各スレーブ制御部が、受信した制御信号を用いて自装置の電力変換器を制御する構成と比較して、制御信号を安定化することができる。その結果、各無停電電源装置を安定的に動作させることができる。
【0134】
また本実施の形態では、マスタ制御部から各スレーブ制御部に対してシリアル通信により電圧指令を送信する構成としたことにより、マスタ制御部および各スレーブ制御部の間に配設される通信ケーブルの本数の増大を抑制することができる。
【0135】
また本実施の形態によると、各スレーブ制御がシリアル通信における通信エラーの有無を確認し、通信エラーの発生時には前回の電圧指令値を保持する構成としたことにより、通信エラーが発生した場合にも、各スレーブ制御部は制御信号を安定的に生成することができる。
【0136】
さらに各スレーブ制御部は、シリアル通信を実行できない通信異常が発生した場合には、自装置を無停電電源システムから解列させることにより、電圧指令が受信困難となることに起因して自装置が誤動作を引き起こすことを抑制することができる。
【0137】
さらに本実施の形態では、各スレーブ制御部が自装置の故障を検出して電力変換器の運転を停止する構成としたことにより、マスタ制御部が各無停電電源装置から送信される電流・電圧検出値に基づいて故障を検出し、故障した無停電電源装置に対して運転停止指令を送信する構成と比較して、より迅速に無停電電源装置の故障を検出できるとともに、故障の無停電電源装置を速やかに停止させることができる。
【0138】
また、本実施の形態では、各スレーブ制御部が、電力変換器の制御信号に対してデッドタイムを付与する構成としたことにより、通信エラーに起因して制御信号が不安定となり、電力変換器において上アーム素子および下アーム素子が同時にオンすることによる短絡経路が形成されることを防止することができる。
【0139】
さらに本実施の形態によれば、マスタ制御部が各スレーブ制御部に対して制御電源を供給するように構成されるため、各無停電電源装置において制御電源を生成するための回路の設置が不要となる。
【0140】
(その他の構成例)
上述した実施の形態では、複数の無停電電源装置U1~U3を統括的に制御する「マスタ制御部」を構成する制御装置20を、「スレーブ制御部」を構成する無停電電源装置Uの制御回路15とを別体とする構成例について説明した。この構成例によると、無停電電源装置Uの並列接続数を増加または減少する場合において、システム全体の制御構成を容易に変更することができる。
【0141】
あるいは、上記構成例に代えて、複数の無停電電源装置U1~U3のうちのいずれか1つの無停電電源装置Uの制御回路15において、「マスタ制御部」と「スレーブ制御部」とを一体化させる構成とすることも可能である。この構成例によると、マスタ制御部を新たに設置する必要がなくなるため、無停電電源システムを簡易化させることができる。なお、マスタ制御部に設定された無停電電源装置Uが無停電電源システムから解列された場合においても、制御回路15は、残りの正常な無停電電源装置Uの制御回路15との間でデータを授受することにより、正常な無停電電源装置Uを制御することができる。
【0142】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0143】
1,5,10,702 コンデンサ、2,9,700 リアクトル、3 交流入力フィルタ、4 コンバータ、6 直流ライン、7 双方向チョッパ、8 インバータ、11 交流出力フィルタ、12,13,14 電流検出器、15 制御回路、16 通信ケーブル、17 電力ケーブル、20 制御装置、21,30 シリアル通信I/F、22,22A~22H 平均値演算部、23,23A~23C 電圧指令生成部、24,45 制御電源、25 制御電源生成部、31 チェック回路、32~34 補正回路、35~37 PWM回路、74a~74c,84a~84c,94,112 NOT回路、38~40 デッドタイム生成回路、41~43 検出回路、44 故障検出回路、50,53,55,57,60,62,71a~71c,81a~81c,91 減算器、51,56,61 電圧制御部、52 並列制御部、54,58,63 電流制御部、59,70a~70c,80a~80c,90 加算器、72a~72c,82a~82c,92 ゲイン演算器、73a~73c,83a~83c,93 比較器、75a~75c,85a~85c,95 オンディレイ回路、76,86,96 停止回路、100 商用交流電源、102 負荷、110 シリアル通信チェッカ、116 シフトレジスタ、B1~B3 バッテリ、T1 入力端子、DT1~DT3 故障検出信号、ERR エラー信号、S1~S3 スイッチ、T2 バッテリ端子、T3 出力端子、U,U1~U3 無停電電源装置。