(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】圧縮機および冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
F04C 29/00 20060101AFI20220613BHJP
H02K 3/18 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
F04C29/00 T
H02K3/18 J
(21)【出願番号】P 2020525133
(86)(22)【出願日】2018-06-19
(86)【国際出願番号】 JP2018023366
(87)【国際公開番号】W WO2019244259
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2020-10-02
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 桂一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀明
(72)【発明者】
【氏名】森嶋 明
(72)【発明者】
【氏名】杉山 裕太郎
【審査官】大屋 静男
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-266762(JP,A)
【文献】特開2008-223621(JP,A)
【文献】特開平06-090537(JP,A)
【文献】特開平11-082349(JP,A)
【文献】特開平08-193589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00-39/02
F04C 29/00
H02K 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の密閉容器と、
前記密閉容器の内部に収容され、冷媒を圧縮する圧縮機構部と、
前記圧縮機構部に対し前記密閉容器の軸方向に並ぶように前記密閉容器の内部に収容され、前記圧縮機構部を駆動する電動機部と、を具備し、
前記密閉容器の内部には、冷凍機油としてポリアルキレングリコールが貯留され、
前記電動機部は、固定子に巻線が集中巻されたブラシレスDCモータであり、
前記ブラシレスDCモータは、各相の巻線が前記固定子の各相に対応するティースに連続して巻かれて直列接続されるとともにデルタ結線され、前記各相の巻線の一方の端末と他方の端末とが前記密閉容器に固定される密封端子のピンに接続され、同じ前記ピンに接続される端末がまとめられ、前記各相の巻線が前記一方の端末から前記他方の端末まで連続した一本からな
り、
前記密閉容器は、横置きの姿勢で支持され、
前記密封端子の前記ピンは圧縮機の運転停止時の前記冷凍機油の油面よりも上方に設けられ、
前記密閉容器は、両端が開口した円筒形状の容器本体と、前記容器本体の一端の側から溶接された第1蓋部材と、前記容器本体の他端の側から溶接された第2蓋部材と、から構成され、
前記容器本体には、吐出管が取り付けられ、
前記吐出管は、前記圧縮機構部に対応した位置で前記圧縮機構部側の空間の内部に開口され、
前記圧縮機構部には、前記圧縮機構部側の前記空間と、前記電動機部側の空間とを気密に仕切る仕切部材が設けられ、
前記仕切り部材には、前記電動機部側の前記空間と前記圧縮機構部側の前記空間を連通する冷媒吐出通路が設けられ、
運転時に、前記圧縮機構部から前記電動機部側の前記空間に吐出された冷媒は、前記仕切部材の前記冷媒吐出通路を通って前記圧縮機構部側の前記空間に流入し、前記吐出管から吐出され、このとき、前記電動機部側の前記空間の圧力は、前記圧縮機構部側の前記空間の圧力よりも高くなり、この圧力差により、前記圧縮機構部側の前記空間の前記冷凍機油の油面が、前記電動機部側の前記空間の油面よりも高くなる圧縮機。
【請求項2】
前記密閉容器には、
前記吐出管が設けられる前記圧縮機構部側の空間と、前記圧縮機構部で圧縮された冷媒が吐出される前記電動機部側の空間とを仕切る仕切部が設けられ、
前記圧縮機構部には、回転軸を回転自在に支持する主軸受けと副軸受けとが前記軸方向に並ぶように設けられるとともに前記回転軸の給油通路に前記冷凍機油を供給する給油吸い込み管が連結され、
前記回転軸には、前記圧縮機構部側の端部から前記軸方向に沿い前記電動機部側に向かって伸びた非貫通の前記給油通路と、前記回転軸の外周面から前記給油通路まで貫通した複数の給油穴とが形成され、
前記冷媒は、R744からなり、
前記冷凍機油の動粘度は、40℃において80ないし120mm
2/sである請求項
1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記給油通路の内径と、前記副軸受けと接する部分の前記回転軸の外径との比率は、30ないし65%であり、
前記給油穴の内径と、前記外径との比率は、10ないし25%である請求項
2に記載の圧縮機。
【請求項4】
前記主軸受けの内周面と前記副軸受けの内周面の少なくとも一方には、前記軸方向に沿った一端から他端までスパイラル溝が形成され、
前記スパイラル溝のピッチは、100ないし200mmであり、
前記スパイラル溝の深さは、0.3ないし1.0mmである請求項
2または
3に記載の圧縮機。
【請求項5】
前記固定子の外周面の少なくとも最底部には、前記軸方向に沿った一端から他端まで凹状の切欠部が形成され、
前記切欠部と、前記密閉容器との間に空間が設けられた請求項
1ないし請求項
4のいずれか一項に記載の圧縮機。
【請求項6】
冷媒が循環するとともに、放熱器、膨張装置および吸熱器が接続された循環回路と、
前記吸熱器と前記放熱器との間で前記循環回路に接続された請求項1ないし請求項
5のいずれか一項に記載の圧縮機と、
を備えた冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、圧縮機および当該圧縮機を有する冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機は、筒状の密閉容器と、密閉容器の内部に収容され冷媒を圧縮する圧縮機構部と、密閉容器の内部に収容され回転軸を介して圧縮機構部を回転駆動する電動機部と、を具備している。
【0003】
電動機部には、回転軸を回転させるモータが設けられている。モータが例えば、固定子に巻線が集中巻されたブラシレスDCモータの場合、各相の巻線は、固定子の各相に対応するティースに巻かれている。巻線は、例えば、電気絶縁性を備えた被膜によって覆われた電線から構成されている。
【0004】
密閉容器には、回転軸等の摺動性能を維持する冷凍機油が貯留されている。巻線は、常時またはモータの回転時に冷凍機油に浸かるが、前記被膜によって電気絶縁性が保たれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、一般的に、冷凍機油は昇温すると動粘度が低下することから、回転軸等の摺動性能が低下する。
【0007】
ここで、例えば、冷凍機油として用いられるポリアルキレングリコール(PAG:polyalkylene glycol)は、ポリビニールエーテル(PVE:polyvinyl ether)やポリオールエステル(POE:polyol ester)等と比較して、昇温に伴う動粘度の低下が小さい。
【0008】
一方、ポリアルキレングリコールは、ポリビニールエーテルやポリオールエステルと比較して、体積抵抗率が小さいことから、巻線等との電気絶縁性を保つことが難しい。
【0009】
本発明の目的は、昇温に伴う摺動性能の低下を抑制しつつ、電気絶縁性を保つことができる圧縮機を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態によれば、圧縮機は、筒状の密閉容器と、前記密閉容器の内部に収容され、冷媒を圧縮する圧縮機構部と、前記圧縮機構部に対し前記密閉容器の軸方向に並ぶように前記密閉容器の内部に収容され、前記圧縮機構部を駆動する電動機部と、を具備している。
【0011】
前記密閉容器の内部には、冷凍機油としてポリアルキレングリコールが貯留されている。
【0012】
前記電動機部は、固定子に巻線が集中巻されたブラシレスDCモータである。前記ブラシレスDCモータは、各相の巻線が前記固定子の各相に対応するティースに連続して巻かれて直列接続されるとともにデルタ結線され、前記各相の巻線の一方の端末と他方の端末とが前記密閉容器に固定される密封端子のピンに接続され、同じ前記ピンに接続される端末がまとめられ、前記各相の巻線が前記一方の端末から前記他方の端末まで連続した一本からなる。前記密閉容器は、横置きの姿勢で支持されている。前記密封端子の前記ピンは圧縮機の運転停止時の前記冷凍機油の油面よりも上方に設けられている。前記密閉容器は、両端が開口した円筒形状の容器本体と、前記容器本体の一端の側から溶接された第1蓋部材と、前記容器本体の他端の側から溶接された第2蓋部材と、から構成されている。前記容器本体には、吐出管が取り付けられている。前記吐出管は、前記圧縮機構部に対応した位置で前記圧縮機構部側の空間の内部に開口されている。
前記圧縮機構部には、前記圧縮機構部側の前記空間と、前記電動機部側の空間とを気密に仕切る仕切部材が設けられている。前記仕切り部材には、前記電動機部側の前記空間と前記圧縮機構部側の前記空間を連通する冷媒吐出通路が設けられている。運転時に、前記圧縮機構部から前記電動機部側の前記空間に吐出された冷媒は、前記仕切部材の前記冷媒吐出通路を通って前記圧縮機構部側の前記空間に流入し、前記吐出管から吐出され、このとき、前記電動機部側の前記空間の圧力は、前記圧縮機構部側の前記空間の圧力よりも高くなり、この圧力差により、前記圧縮機構部側の前記空間の前記冷凍機油の油面が、前記電動機部側の前記空間の油面よりも高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態に係る冷凍サイクル装置の構成を概略的に示す回路図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る圧縮機の断面図である。
【
図4】
図4は、各相の巻線が、固定子の各相に対応するティースに連続して巻かれて直列接続によってデルタ結線され、一方の端末と他方の端末とが密封端子に接続された固定子を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態について
図1ないし
図6を参照して説明する。
【0015】
図1は、例えば冷凍サイクル装置の一例である空気調和機1の冷凍サイクル回路図である。空気調和機1は、圧縮機2、四方弁3、室外熱交換器4、膨張装置5および室内熱交換器6を主要な要素として備えている。空気調和機1を構成する複数の要素は、冷媒が循環する循環回路7を介して接続されている。
【0016】
具体的に述べると、
図1に示すように、圧縮機2の吐出側は、四方弁3の第1ポート3aに接続されている。四方弁3の第2ポート3bは、室外熱交換器4に接続されている。室外熱交換器4は、膨張装置5を介して室内熱交換器6に接続されている。室内熱交換器6は、四方弁3の第3ポート3cに接続されている。四方弁3の第4ポート3dは、アキュームレータ8を介して圧縮機2の吸入側に接続されている。
【0017】
空気調和機1が冷房モードで運転を行う場合、四方弁3は、第1ポート3aが第2ポート3bに連通し、第3ポート3cが第4ポート3dに連通するように切り替わる。冷房モードで空気調和機1の運転が開始されると、圧縮機2で圧縮された高温・高圧の気相冷媒が循環回路7に吐出される。吐出された気相冷媒は、四方弁3を経由して放熱器(凝縮器)として機能する室外熱交換器4に導かれる。
【0018】
室外熱交換器4に導かれた気相冷媒は、空気との熱交換により凝縮し、高圧の液相冷媒に変化する。高圧の液相冷媒は、膨張装置5を通過する過程で減圧されて低圧の気液二相冷媒に変化する。気液二相冷媒は、吸熱器(蒸発器)として機能する室内熱交換器6に導かれるとともに、室内熱交換器6を通過する過程で空気と熱交換する。
【0019】
この結果、気液二相冷媒は、空気から熱を奪って蒸発し、低温・低圧の気相冷媒に変化する。室内熱交換器6を通過する空気は、液相冷媒の蒸発潜熱により冷やされ、冷風となって空調(冷房)すべき場所に送られる。
【0020】
室内熱交換器6を通過した低温・低圧の気相冷媒は、四方弁3を経由してアキュームレータ8に導かれる。冷媒中に蒸発しきれなかった液相冷媒が混入している場合は、ここで液相冷媒と気相冷媒とに分離される。液相冷媒から分離された低温・低圧の気相冷媒は、アキュームレータ8から圧縮機2に吸い込まれるとともに、当該圧縮機2で再び高温・高圧の気相冷媒に圧縮されて循環回路7に吐出される。
【0021】
一方、空気調和機1が暖房モードで運転を行う場合、四方弁3は、第1ポート3aが第3ポート3cに連通し、第2ポート3bが第4ポート3dに連通するように切り替わる。暖房モードで空気調和機1の運転が開始されると、圧縮機2から吐出された高温・高圧の気相冷媒は、四方弁3を経由して室内熱交換器6に導かれ、当該室内熱交換器6を通過する空気と熱交換される。すなわち、室内熱交換器6が凝縮器として機能する。
【0022】
この結果、室内熱交換器6を通過する気相冷媒は、空気と熱交換することにより凝縮し、高圧の液相冷媒に変化する。室内熱交換器6を通過する空気は、気相冷媒との熱交換により加熱され、温風となって空調(暖房)すべき場所に送られる。
【0023】
室内熱交換器6を通過した高温の液相冷媒は、膨張装置5に導かれるとともに、当該膨張装置5を通過する過程で減圧されて低圧の気液二相冷媒に変化する。気液二相冷媒は、蒸発器として機能する室外熱交換器4に導かれるとともに、ここで空気と熱交換することにより蒸発し、低温・低圧の気相冷媒に変化する。室外熱交換器4を通過した低温・低圧の気相冷媒は、四方弁3およびアキュームレータ8を経由して圧縮機2に吸い込まれる。
【0024】
次に、空気調和機1に用いられる圧縮機2の具体的な構成について、
図1ないし
図6を参照して説明する。圧縮機2は、水平もしくは水平に近い設置面Gの上に横置きの姿勢で据え付けられるロータリーコンプレッサであって、密閉容器10、圧縮機構部11および電動機部12を主要な要素として備えている。
【0025】
密閉容器10は、横置きの姿勢で支持されている。密閉容器10は、容器本体10a、第1蓋部材10bおよび第2蓋部材10cの3つの部材から構成されている。密閉容器10は、両端が開口した円筒形状の容器本体10aに対して、軸方向に沿う一端の側から第1蓋部材10bがシールド溶接され、かつ、軸方向に沿う他端の側から第2蓋部材10cがシールド溶接されて、気密性が保たれている。密閉容器10の内部には、圧縮機構部11と電動機部12とが軸方向に並んで収容されている。
【0026】
密閉容器10の内部には、冷凍機油20としてポリアルキレングリコールが貯留されている。ポリアルキレングリコールの動粘度Vは、例えば40℃において80ないし120mm2/sである。
【0027】
圧縮機構部11は、
図2および
図3に示すように、容器本体10aの内部に収容されている。圧縮機構部11には、回転軸13のクランク軸部13cを挿通させたシリンダボディ11aが設けられている。ローラ11bが、クランク軸部13cの外周面に嵌合されている。シリンダボディ11aは、ローラ11bとの間に、アキュームレータ8から吸い込んだ気相冷媒を圧縮する圧縮室11cを有している。圧縮室11cで圧縮された気相冷媒は、吐出弁16を介して密閉容器10の内部に吐出される。冷媒は、例えば二酸化炭素であるR744からなる。
【0028】
圧縮機構部11には、
図2および
図3に示すように、回転軸13を回転自在に支持する主軸受け11dと副軸受け11eとが軸方向に並ぶように設けられている。主軸受け11dの内周面と副軸受け11eの内周面とには、軸方向に沿った一端から他端までスパイラル溝11fが形成されている。スパイラル溝11fのピッチPは、例えば100ないし200mmである。スパイラル溝11fの深さDは、例えば0.3ないし1.0mmである。
【0029】
圧縮機構部11には、
図2および
図3に示すように、圧縮機構部11側の空間Aと、電動機部12側の空間Bとを気密に仕切る仕切部材11gが設けられている。仕切部材11gは、仕切部の一例である。仕切部材11gは、シリンダボディ11aを密閉容器10の内壁に固定する部材でもある。仕切部材11gには、複数のボルト11hによって、シリンダボディ11aが固定されている。
【0030】
電動機部12は、
図2および
図3に示すように、圧縮機構部11を駆動する要素であって、回転軸13を介して圧縮機構部11に連結されている。電動機部12は、圧縮機構部11よりも第1蓋部材10bの側に偏った位置で容器本体10aの内部に収容されている。このため、圧縮機構部11および電動機部12は、密閉容器10の軸方向に並んでいる。
【0031】
電動機部12は、ブラシレスDCモータ12aであり、永久磁石を埋設し円筒形状に形成された回転子12bと、回転子12bを囲み複数のティース12dに巻線9が集中巻された固定子12cとを有している。回転子12bには、回転軸13の主軸部13aが挿入されて接合されている。
図4ないし
図6に示すように、ブラシレスDCモータ12aの各相の巻線9は、固定子12cの各相に対応するティース12dに連続して巻かれて直列接続され、各相の巻線はデルタ結線されている。また、各相の巻線9は、一方の端末9bと他方の端末9cとが密閉容器10の第1蓋部材10bに固定された密封端子12gのピン9aに接続されている。ここで、各相の巻線9は、一方の端末9bから他方の端末9cまで連続した一本からなり、絶縁被膜が存在しない接続部分を設けていない。言い換えると、実施形態では、巻線9と巻線9との結線部である接続部分を設けていない。
【0032】
図5に示すように、U相の巻線9Uは、接続部分などによって途切れることなく、固定子12cの3、6、9番目のティース12dに連続的に巻回され、一方の端末9bおよび他方の端末9cが対応する密封端子12gのピン9aに接続されている。V相の巻線9Vは、接続部分などによって途切れることなく、固定子12cの2、5、8番目のティース12dに連続的に巻回され、一方の端末9bおよび他方の端末9cが対応するピン9aに接続されている。W相の巻線9Wは、接続部分などによって途切れることなく、固定子12cの1、4、7番目のティース12dに連続的に巻回され、一方の端末9bおよび他方の端末9cが対応するピン9aに接続されている。
図6に示すように、U相の巻線9U、V相の巻線9V、およびW相の巻線9Wは、デルタ結線されている。
【0033】
図2ないし
図4に示すように、固定子12cの外周面の最底部12eには、軸方向に沿った一端から他端まで凹状の切欠部12fが形成されている。また、
図4に示すように、切欠部12fは、固定子12cの外周面の側面部にも形成されている。言い換えると、切欠部12fは、固定子12cの外周面に複数形成されている。複数の切欠部12fのうち、最底部12eに位置する切欠部12fを、相対的に大きく形成してもよい。固定子12cの各々の切欠部12fと、密閉容器10の内壁との間には、冷凍機油20が流通可能な空間が設けられている。
【0034】
図2に示すように、密封端子12gのピン9aには、各相の一方の端末9bおよび他方の端末9cが挿入固定された接続端子(クラスタ端子)12hが接続されている。密封端子12gのピン9aは、圧縮機2の運転停止時の冷凍機油20の油面Tよりも上方に設けられている。また、クラスタ端子12hは、圧縮機2の運転時の冷凍機油20の油面Tよりも上方に設けられている。
【0035】
図2および
図3に示すように、回転軸13には、円形状の給油通路13dが形成されている。給油通路13dは、圧縮機構部11側の端部から軸方向に沿って電動機部12側に向かって切削加工された非貫通の穴からなる。給油通路13dの内径d1[mm]と、副軸受け11eと接する部分である副軸部13bの回転軸13の外径d2[mm]との比率M[%]は、例えば30ないし65%である。回転軸13の給油通路13dに、密閉容器10に貯留された冷凍機油20を供給する給油吸い込み管14が、副軸受け11eに固定された固定部材11iに固定されている。給油吸い込み管14は、回転軸13の回転に従動しない。
【0036】
図2および
図3に示すように、回転軸13は、外周面から給油通路13dに向かって、給油穴13eが例えば3つ形成されている。第1の給油穴13e1は、主軸部13aの付け根の部分の外周面から給油通路13dまで貫通した穴からなる。第2の給油穴13e2は、副軸部13bの付け根の部分の外周面から給油通路13dまで貫通した穴からなる。第3の給油穴13e3は、クランク軸部13cの外周面から給油通路13dまで貫通した穴からなる。給油穴13eの内径d3[mm]と、副軸部13bの回転軸13の外径d2[mm]との比率N[%]は、例えば10ないし25%である。
【0037】
吐出管15は、
図2および
図3に示すように、容器本体10aの外周壁10dに取り付けられている。吐出管15は、圧縮機構部11に対応した位置で圧縮機構部11側の空間Aの内部に開口されているとともに、四方弁3の第1ポート3aに接続されている。また、圧縮機構部11で圧縮された冷媒は、電動機部12側の空間Bに吐出される。さらに、仕切部材11gには、電動機部12側の空間Bと圧縮機構部11側の空間Aを連通する図示しない冷媒吐出通路と、油連通路が設けられている。
【0038】
圧縮機2が運転されると、圧縮機構部11から電動機部12側の空間Bに吐出された冷媒は、仕切部材11gの冷媒吐出通路を通って圧縮機構部11側の空間Aに流入し、吐出管15から吐出される。そのため、空間Bの圧力は、空間Aの圧力よりも若干高くなり、この圧力差により、空間Aの冷凍機油20の油面Tが、空間Bの油面Tよりも高くなり、給油通路13dへの冷凍機油20の供給が容易になる。また、空間Bの油面Tが低下することから、電気絶縁性が良好になる。
【0039】
アキュームレータ8は、圧縮機構部11の脇に位置するように密閉容器10に付設されている。アキュームレータ8の一端に循環回路7の一部を構成する冷媒吸い込み管が接続されている。冷媒吸い込み管は、四方弁3の第4ポート3dに接続されている。さらに、アキュームレータ8の他端に循環回路7の一部を構成する冷媒戻し管17が接続されている。
【0040】
本実施形態によると、密閉容器10の内部には、冷凍機油20としてポリアルキレングリコールが貯留されている。ブラシレスDCモータ12aは、各相の巻線9が固定子12cの各相に対応するティース12dに連続して巻かれて直列接続されるとともに、各相の巻線9がよってデルタ結線される。巻線9の一方の端末9bと他方の端末9cとが密閉容器10に固定される密封端子12gのピン9aに接続され、巻線9が一方の端末9bから他方の端末9cまで連続した一本からなる。
【0041】
このように、圧縮機2および圧縮機2を備えた空気調和機1は、昇温に伴う動粘度の低下が比較的小さいポリアルキレングリコールを用いることによって、摺動性の低下を抑制することができる。一方、ポリアルキレングリコールは、体積抵抗率が比較的小さい。そこで、巻線9を、一方の端末9bから他方の端末9cまで連続した一本から形成することによって、密閉容器10の内部におけるリーク電流の発生を抑制している。言い換えると、巻線9は、リーク電流が発生し易い絶縁被膜が存在しない接続部分を設けていない。この結果、圧縮機2および圧縮機2を備えた空気調和機1は、昇温に伴う摺動性能の低下を抑制しつつ、電気絶縁性を保つことができる。
【0042】
さらに、圧縮機2および圧縮機2を備えた空気調和機1は、リーク電流の発生を抑制することができることから、雷サージによる異常な大電流の流入を抑制することができる。
【0043】
本実施形態によると、横置きの姿勢で支持されている密閉容器10の内部には、密封端子12gを固定するクラスタ端子12hが冷凍機油20の油面Tよりも上方に設けられている。このため、密封端子12gが、体積抵抗率が比較的小さいポリアルキレングリコールに浸かることを防止して、リーク電流の発生を抑制することができる。この結果、圧縮機2および圧縮機2を備えた空気調和機1は、電気絶縁性をより十分に保つことができる。なお、冷凍機油20の油面Tは、圧縮機2が運転を停止して相対的に上昇している時の油面を想定しているが、圧縮機2が運転を行い相対的に降下している時の油面を想定してもよい。
【0044】
本実施形態によると、密閉容器10には、圧縮機構部11側の空間と、電動機部12側の空間とを気密に仕切る仕切部材11gが設けられている。回転軸13には、給油通路13dと、第1の給油穴13e1と、第2の給油穴13e2と、第3の給油穴13e3とが形成されている。冷媒は、R744からなる。冷凍機油20の動粘度Vは、例えば40℃において80ないし120mm2/sである。このため、表1を参照して説明するように、回転軸13の摺動が良好となり、圧縮室11cにおける性能が十分に維持される。圧縮室11cにおける性能は、例えば冷媒の圧縮効率である。
【0045】
表1に、回転軸13の摺動と圧縮室11cにおける性能に関して、冷凍機油20の動粘度V[mm
2/s]を異ならせて検証した結果を示す。表1には、実施形態の検証結果と、実施形態と対比するための対比例1および対比例2の検証結果を示している。
【表1】
【0046】
実施形態のように、冷凍機油20の動粘度Vが例えば80ないし120mm2/sの場合、回転軸13と主軸受け11dとの間、および回転軸13と副軸受け11eとの間が、適量の冷凍機油20によって潤滑される。このため、実施形態では、ローラ11bの端面のクリアランスから圧縮室11cに対して適正な量の冷凍機油20の量が流入する。これにより、圧力勾配が発生して、クランク軸部13cの周りの圧力Pd2は、密閉容器10内の圧力Pd1と比較して、僅かに低くなる。圧力Pd1と圧力Pd2との差圧△Pによって、冷凍機油20は、給油吸い込み管14から給油通路13dに吸引される。冷凍機油20は、給油通路13dを介して、第1の給油穴13e1、第2の給油穴13e2、および第3の給油穴13e3から給油される。この結果、実施形態では、回転軸13の摺動が良好となり、圧縮室11cにおける性能が十分に維持される。
【0047】
特に、実施形態のように、冷媒にR744を用いる場合、冷媒に例えばR404Aを用いる場合と比較して、圧縮機2の運転中の圧力の高低差が大きくなる。このため、冷凍機油20には、40℃における動粘度Vが80mm2/s以上のポリアルキレングリコールを用いて、圧縮室11cへの過剰な流入を抑制する。
【0048】
対比例1のように、冷凍機油の動粘度Vが例えば80mm2/sより小さい場合、実施形態と比較して冷凍機油の流動性が高くなる。このため、対比例1では、ローラの端面のクリアランスから圧縮室に対して流入する冷凍機油の量が過剰となり、圧縮室に溢れた冷凍機油によって性能が低下する虞がある。なお、冷凍機油には、冷媒ガスが含まれている。この結果、対比例1では、圧縮室における性能が低下する。
【0049】
対比例2のように、冷凍機油の動粘度Vが例えば120mm2/sより大きい場合、実施形態と比較して冷凍機油の流動性が低くなる。このため、対比例2では、ローラの端面のクリアランスから圧縮室に対して流入する冷凍機油の量が不足して気密性が低下して、圧縮室における漏れによって圧力効率等の性能が低下する虞がある。なお、冷凍機油には、冷媒ガスが含まれている。圧縮室での漏れは、例えば、ローラ側部のクリアランスからの漏れ、ブレードの先端の摺動面からの漏れである。また、圧縮室の摺動部分に対する冷凍機油の供給が不足することから、摺動部分が焼き付く虞がある。この結果、対比例2では、圧縮室における性能が低下する。
【0050】
本実施形態によると、給油通路13dの内径d1[mm]と、副軸部13bの回転軸13の外径d2[mm]との比率M[%]は、例えば30ないし65%である。また、給油穴13eの内径d3[mm]と、外径d2[mm]との比率N[%]は、例えば10ないし25%である。このため、表2を参照して説明するように、回転軸13の摺動が良好となる。
【0051】
表2に、回転軸13の摺動に関して、比率M[%]および比率N[%]を異ならせて検証した結果を示す。表2には、実施形態の検証結果と、実施形態と対比するための対比例3および対比例4の検証結果を示している。
【表2】
【0052】
実施形態のように、比率Mが例えば30ないし65%、かつ、比率Nが例えば10ないし25%の場合、各々の給油穴13eに、適量の冷凍機油20が分配される。各々の給油穴13eとは、主軸部13aの付け根の部分における第1の給油穴13e1、副軸部13bの付け根の部分における第2の給油穴13e2、および主軸部13aと副軸部13bとの間のクランク軸部13cの部分における第3の給油穴13e3である。このため、実施形態では、回転軸13と主軸受け11dとの間、回転軸13と副軸受け11eとの間、および回転軸13と主軸受け11dおよび副軸受け11eとの間が、適量の冷凍機油20によって潤滑される。この結果、実施形態では、回転軸13と主軸受け11dとの摺動、回転軸13と副軸受け11eとの摺動、および回転軸13と主軸受け11dおよび副軸受け11eとの間の摺動が、良好となる。
【0053】
対比例3のように、比率Mが例えば30%より小さ場合、実施形態と比較して給油通路の内径が小さいことから、差圧によって給油通路に導入される冷凍機油に作用する遠心力が低下する。また、対比例3のように、比率Nが例えば10%より小さ場合、実施形態と比較して給油穴の内径が小さいことから、各々の給油穴を流れる冷凍機油の抵抗が増加する。すなわち、回転軸と副軸受けとの間、回転軸と主軸受けおよび副軸受けとの間、および回転軸と主軸受けとの間に供給される冷凍機油が減少する。このため、対比例3では、回転軸が冷凍機油の不足によって異常に摩擦することによって、過熱して焼き付く虞がある。この結果、対比例3では、回転軸の摺動が、不良ないし可となる。
【0054】
対比例4のように、比率Mが例えば65%より大きく、かつ、比率Nが例えば25%より大きく場合、実施形態と比較してクランク軸部の付け根の部分のいわゆる逃げ加工が、大きくなる。すなわち、対比例4では、実施形態と比較して主軸受けおよび副軸受けの剛性が低下して歪み、回転軸と主軸受けとの間、および回転軸と副軸受けとの間で、部分的に過度な圧力が掛かる。このため、対比例4では、過度な圧力によって部分的に油膜が途切れた主軸および副軸が、過度な摩擦によって焼き付く虞がある。この結果、対比例4では、回転軸の摺動が、不良ないし可となる。
【0055】
本実施形態によると、主軸受け11dと副軸受け11eに形成されているスパイラル溝11fのピッチPは、例えば100ないし200mmである。また、スパイラル溝11fの深さDは、例えば0.3ないし1.0mmである。このため、表3を参照して説明するように、回転軸13の摺動が良好となる。
【0056】
表3に、回転軸13の摺動に関して、スパイラル溝11fのピッチP[mm]および深さD[mm]を異ならせて検証した結果を示す。表3には、実施形態の検証結果と、実施形態と対比するための対比例5および対比例6の検証結果を示している。
【表3】
【0057】
実施形態のように、スパイラル溝11fのピッチPが例えば100ないし200mm、かつ、スパイラル溝11fの深さDが例えば0.3ないし1.0mmの場合、スパイラル溝11fの全長および通路断面積が好ましい範囲内となり、スパイラル溝11fを流れる冷凍機油20の量が安定する。このため、実施形態では、回転軸13と主軸受け11dとの間、および回転軸13と副軸受け11eとの間が、適量の冷凍機油20によって潤滑される。この結果、実施形態では、回転軸13と主軸受け11dとの摺動、および回転軸13と副軸受け11eとの摺動が、良好となる。
【0058】
対比例5のように、スパイラル溝のピッチPが例えば100mmより短い場合、実施形態と比較してスパイラル溝の全長が長くなる。また、対比例5のように、スパイラル溝の深さDが例えば0.3mmより浅い場合、実施形態と比較してスパイラル溝の通路断面積が小さくなる。すなわち、対比例5では、実施形態と比較してスパイラル溝が長く細いことから、スパイラル溝を流れる冷凍機油の抵抗が増加する。このため、対比例5では、回転軸と主軸受けとの間、および回転軸と副軸受けとの間を流れる冷凍機油が、減少する虞がある。この結果、対比例5では、回転軸と主軸受けとの摺動、および回転軸と副軸受けとの摺動が、不良ないし可となる。
【0059】
また、対比例5のように、実施形態と比較してスパイラル溝の全長が長い場合、スパイラル溝の加工に必要な時間が長くなり、かつ、研削用バイトの消耗が多くなる。この結果、対比例5では、主軸受けおよび副軸受けに対するスパイラル溝の形成に必要なタクトとコストが、増加する。
【0060】
対比例6のように、スパイラル溝のピッチPが例えば200mmより長い場合、実施形態と比較してスパイラル溝の間隔が広がる。すなわち、対比例6では、実施形態と比較してスパイラル溝のピッチが緩やかであることから、砥石を用いてスパイラル溝を仕上げ研磨する時に、砥石が油溝方向に沿って空滑りし易くなる。言い換えると、対比例6では、砥石が油溝方向に沿って逃げ易くなる。このため、対比例6では、主軸受けおよび副軸受けの内周面の真円度の精度が、低下する虞がある。この結果、対比例6では、回転軸と主軸受けとの摺動、および回転軸と副軸受けとの摺動が、不良ないし可となる。
【0061】
また、対比例6のように、スパイラル溝の深さDが例えば1.0mmより深い場合、実施形態と比較してスパライル溝が深くなる。すなわち、対比例6では、実施形態と比較して主軸受けおよび副軸受けの剛性が低下して歪み、回転軸と主軸受けとの間、および回転軸と副軸受けとの間で、部分的に過度な圧力が掛かる。このため、対比例6では、過度な圧力によって部分的に油膜が途切れた回転軸と主軸受けとの間、および回転軸と副軸受けとの間において、過度な摩擦による焼き付きが発生する虞がある。この結果、対比例6では、回転軸と主軸受けとの摺動、および回転軸と副軸受けとの摺動が、不良ないし可となる。
【0062】
また、対比例6のように、実施形態と比較してスパイラル溝の深さが深い場合、スパイラル溝の加工に必要な時間が長くなり、かつ、研削用バイトの消耗が大きくなる。この結果、対比例6では、主軸受けおよび副軸受けに対するスパイラル溝の形成に必要なタクトとコストが、増加する。
【0063】
本実施形態によると、固定子12cの最底部12eには、軸方向に沿った一端から他端まで切欠部12fが形成されている。このため、切欠部12fを介して、電動機部12に臨む空間と、圧縮機構部11に臨む空間との間において、冷凍機油20を十分に循環させることができる。なお、電動機部12に臨む空間は、縦置きの姿勢で配置する場合には上部の空間となる。圧縮機構部11に臨む空間は、縦置きの姿勢で配置する場合には下部の空間となる。すなわち、冷凍機油20が、電動機部12側の空間や圧縮機構部11側の空間に滞留することを防止できる。この結果、冷凍機油20が電動機部12のブラシレスDCモータ12aを過熱することなく、圧縮機2の性能を安定させることができる。
【0064】
具体的には、圧縮機2は、横置きされている場合、圧縮機構部11から吐出された冷凍機油20の一部は、電動機部12との間を循環しつつ、密閉容器10の底部に滞留する。電動機部12側の空間に存在する冷凍機油20は、仕切部材11gの左右の圧力差によって、切欠部12fを通って圧縮機構部11側の空間に流入する。一方、電動機部12側の空間に存在する冷凍機油20は、切欠部12fを通って電動機部12側の空間に流入する。
【0065】
また、切欠部12fを介して冷凍機油20が循環されることから、冷媒にR410AやR22等と比較して吐出温度が高いR744を用いる場合であっても、ブラシレスDCモータ12aの過熱を防止することができる。冷媒に二酸化炭素を用いる場合、他の材質と比較して、動作圧力を高めて、ブラシレスDCモータ12aのトルクを大きくすることができる。
【0066】
また、切欠部12fを介して冷凍機油20が循環されることから、極圧添加剤を冷凍機油20に添加している場合に、その極圧添加剤が冷凍機油20と共に過熱されることを防止できる。極圧添加剤は、回転軸13と軸受けとの摺動を良好にするために用いられる。特に、耐熱性が低いリン系の極圧添加剤を冷凍機油20に添加する場合に好ましい。この結果、過熱による極圧添加剤の消耗を抑制することができる。冷凍機油20の過熱を防止することによって、劣化を抑制することもできる。
【0067】
また、切欠部12fを介して冷凍機油20が循環されることから、冷凍機油20が電動機部12の側に滞留することを防止して、電動機部12の側と共に圧縮機構部11の側にも十分に供給することができる。
【0068】
ここで、切欠部12fを大きくする程、冷凍機油20が流れ易くなることから、冷凍機油20の滞留を防止することができる。一方、切欠部12fを小さくする程、固定子12cを構成する鉄心の体積が減少しないことから、ブラシレスDCモータ12aのトルクの低下を抑制することができる。そこで、切欠部12fを固定子12cの最底部12eのみに形成することによって、冷凍機油20の滞留を防止しつつ、ブラシレスDCモータ12aのトルクの低下を抑制している。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0070】
例えば、密閉容器10は、横置きの姿勢で配置する構成として説明したが、縦置きの姿勢で配置する構成としてもよい。圧縮機2を縦置きの姿勢で配置する場合、電動機部12を上方に位置し、圧縮機構部11を下方に位置するようにすればよい。このため、電動機部12や密封端子12gは、体積抵抗率が比較的小さいポリアルキレングリコールの油面よりも上方に設けることが容易である。このような構成であっても、気化して浮遊している状態のポリアルキレングリコールが、電動機部12の巻線9や密封端子12gに付着することから、巻線9や密封端子12gにおけるリーク電流の発生を抑制して、電気絶縁性を十分に保つことが重要である。
【符号の説明】
【0071】
1…冷凍サイクル装置(空気調和機)、2…圧縮機、4…放熱器(室外熱交換器)、5…膨張装置、6…吸熱器(室内熱交換器)、7…循環回路、9…巻線、9U…U相の巻線、9V…V相の巻線、9W…W相の巻線、9a…密封端子、9b…一方の端末、9c…他方の端末、10…密閉容器、11…圧縮機構部、11a…シリンダボディ、11b…ローラ、11c…圧縮室、11d…主軸受け、11e…副軸受け、11f…スパイラル溝、11g…仕切部(仕切部材)、11h…ボルト、12…電動機部、12a…ブラシレスDCモータ、12b…回転子、12c…固定子、12d…ティース、12e…最底部、12f…切欠部、12g…密封端子、12h…固定部材(クラスタ端子)、13…回転軸、13a…主軸部、13b…副軸部、13c…クランク軸部、13d…給油通路、13e…給油穴、13e1…第1の給油穴、13e2…第2の給油穴、13e3…第3の給油穴、20…冷凍機油、G…設置面、T…油面。