(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】可塑化スクリュ
(51)【国際特許分類】
B29B 7/42 20060101AFI20220613BHJP
B29C 45/48 20060101ALI20220613BHJP
B29C 48/53 20190101ALI20220613BHJP
B29C 48/56 20190101ALI20220613BHJP
B29C 48/62 20190101ALI20220613BHJP
B29C 48/65 20190101ALI20220613BHJP
B29C 48/67 20190101ALI20220613BHJP
【FI】
B29B7/42
B29C45/48
B29C48/53
B29C48/56
B29C48/62
B29C48/65
B29C48/67
(21)【出願番号】P 2020527108
(86)(22)【出願日】2018-10-23
(86)【国際出願番号】 AT2018050020
(87)【国際公開番号】W WO2019094996
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2021-04-07
(32)【優先日】2017-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】503433958
【氏名又は名称】エレマ エンジニアリング リサイクリング マシネン ウント アンラーゲン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトフング
(74)【代理人】
【識別番号】110000095
【氏名又は名称】弁理士法人T.S.パートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100082887
【氏名又は名称】小川 利春
(74)【代理人】
【識別番号】100181331
【氏名又は名称】金 鎭文
(74)【代理人】
【識別番号】100183597
【氏名又は名称】比企野 健
(74)【代理人】
【識別番号】100161997
【氏名又は名称】横井 大一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100090918
【氏名又は名称】泉名 謙治
(72)【発明者】
【氏名】ミースリンガー ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ルガー ハンス ユルゲン
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-193096(JP,A)
【文献】実開昭61-158417(JP,U)
【文献】特開昭49-130953(JP,A)
【文献】特開昭61-141513(JP,A)
【文献】米国特許第03687423(US,A)
【文献】中国特許出願公開第102922616(CN,A)
【文献】特開2001-062897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 7/40 - 7/42
B29C 45/48
B29C 48/00 - 48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリュコアの周囲を螺旋状に延び、ネジ山が側方の境界になっているスクリュ溝(1)、(2)を有する可塑化スクリュであって、前記スクリュ溝は、スクリュ溝の長手方向にわたって配置されスクリュ溝を横切って延びる流動要素(3)、(4)を備え、流動要素は、深い部分(5)と長手方向に半径方向に高くなる圧縮部分(6)を有し、圧縮部分(6)が、ネジ山(1)、(2)に対して傾斜した少なくとも1個の上昇面(7)を構成し、上昇面には、流動を生じさせるプラトー(8)が、長手方向につながっている可塑化スクリュにおいて、圧縮部分(6)が、向かい合うネジ山部分(1)、(2)に対して傾斜した少なくとも2個の上昇面(7)を有し、前記上昇面が、流れの方向に対向する、
固体材料床を分割し壊す楔(9)、(10)を構成していることを特徴とする可塑化スクリュ。
【請求項2】
圧縮部分(6)の上昇面(7)が、スクリュ溝の長手方向に、凹又は凸に湾曲していることを特徴とする請求項1に記載の可塑化スクリュ。
【請求項3】
流れを生じさせるプラトー(8)が、スクリュ溝の長手方向に、波状に構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の可塑化スクリュ。
【請求項4】
可塑化スクリュが、共通のネジ山(2)によって互いに隔てられた少なくとも2本のスクリュ溝を構成し、前記スクリュ溝には、互いにずらして間隔をあけた流動要素(3)、(4)が配置されることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の可塑化スクリュ。
【請求項5】
共通のネジ山(2)に、流れの方向におけるそれぞれの流動要素(3)、(4)の上流の領域において貫通口が開けられていることを特徴とする請求項4に記載の可塑化スクリュ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリュコアの周囲を螺旋状に延びネジ山が側方の境界になっているスクリュ溝を有する可塑化スクリュに関する。前記スクリュ溝は、スクリュ溝の長手方向にわたって配置されスクリュ溝を横切って延びる複数の流動要素を備えている。前記流動要素は、深い部分と、スクリュ溝の長手方向において半径方向に高くなる圧縮部分を有している。圧縮部分は、ネジ山に対して傾斜した少なくとも1個の上昇面を構成している。この上昇面には、流れを作るプラトーが、スクリュ溝の長手方向につながっている。
【背景技術】
【0002】
可塑化スクリュであって、それらのスクリュ溝に、深い部分と長手方向において半径方向に上下する圧縮部分を有する流動要素、いわゆる波状要素を構成している可塑化スクリュが公知である(米国特許明細書第6176606号、米国特許明細書第5375992号参照)。これらの波状要素には、固体材料床を分割し、それにより、固体材料を分担して表面を大きくすることを通じ、より効率的な溶融プロセスをもたらすという役割がある。波状要素による圧縮では、固体材料分担量が多すぎて、流れの横断面に詰まりを生じさせる。この場合には、搬送能力が溶融能力を上回っている。その結果、圧力のゆらぎが起こり、最終製品におけるばらつきが生じて反古となる。したがって、こうした波状要素は、生産量が比較的少ない場合のように、固体材料分担分が、ある一定の比較的少量よりも有意に少ない場合にしか使用することができない。そのため、従来のスクリュ概念と比較して、溶融性能を高めることはできるが、固体材料搬送域から溶融域においてバルク材料を固体材料床にする圧密化が行われ、前記バルク材料は、溶融体との接触面積が小さいので、不釣り合いに高いエネルギー投入をしないと又は相応に長い可塑化スクリュを用いないと溶融することができないという不都合がある。
【0003】
先行技術から、圧縮部分が、ネジ山に対して傾斜した少なくとも1個の上昇面を構成し、この上昇面には、流れを作るプラトーが長手方向につながっている可塑化スクリュも公知である(ドイツ公開公報第2542515号、ドイツ特許公報第2256902号参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明は、長さを縮めることができ、低いエネルギー投入にもかかわらず、良好な溶融作用を得ることができるように、上記の種類の可塑化スクリュを構成するという課題に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、固体材料-溶融体混合物において伸長流動プロファイルを形成するには凝集物を細かくすることが特に好ましく、向上した溶融作用につながるという知見に基づいている。こうした伸長流動は、本発明によれば、圧縮部分が、ネジ山に対して傾斜した少なくとも1個の上昇面を構成し、上昇面には、流れを作るプラトーが、長手方向につながっており、それにより、溶融体は、様々な時点において、スクリュ溝の幅にわたり、圧縮部分の傾斜した上昇面に突き当たることにより、引き起こすことができる。上昇面のネジ山に対する傾斜は、平面的な上昇面の場合には、この上昇面の法線ベクトルが、ネジ山によって広がる側面と交差することであると理解さるべきである。これに対し、従来の波状要素の場合には、上昇面の法線ベクトルは、2個の側面と平行になる。しかしながら、本発明の特徴に従って引き起こす伸長流動は、本発明によるプラトーによって達成される圧縮部分後の流動安定化がある場合にのみ十分に生じさせることができる。溶融体は、本発明の特徴によって、その幅にわたって時間遅れの圧縮も受けるので、スクリュ溝の幅に沿って異なる圧力レベルにより、前記の伸長流動に加えて二次流動が生じる。これが、全体的な相乗効果により、より優れた溶融作用につながり、そのため、追加のエネルギー投入を省くことができる。本発明による流動要素は、より効率的な固体材料床の分割を可能にするので、同じスクリュ長さで比較して、より多い固体材料分担量及び生産量に適しているため、同じ生産量及び固体材料の分担量であれば、本発明の可塑化ユニットは、設置長さをより小さくすることができる。そのため、直列に接続された幾つかの流動要素を組み合わせると、溶融プロセスに関して特に好ましい状態を得ることができる。
【0006】
流動要素の圧縮部分が、向かい合うネジ山部分に対して傾斜した少なくとも2個の上昇面を構成し、前記上昇面が、流動方向に対向する楔を構成することにより、本発明による流動要素を、より固体材料搬送域の近くに配置し、そのため、初期段階で既に溶融作用に積極的に影響を与えることを可能とすることが提案される。その結果構成される鋤形の圧縮部分は、固体材料-溶融体混合物を分割し壊すので、固体粒子が、周囲の溶融体マトリックス中に分散する。その結果、溶融プロセスにとって、固体材料のかなり大きくなった表面を得ることができ、これが、溶融作用をさらに向上させる。複数の鋤形の楔を設けて効果を高めることもでき、これらの楔は、スクリュ溝の幅にわたって連なって設けられる。特に、中央に配置された主楔と、主楔に対して対称的に配置された1個以上の側部楔を設けることが好ましい。固体材料床の分割又は細分に加えて、上昇面の楔形の構成が、既に存在する回転横断流が分割され再び合流されるという追加の技術的効果が生じることにより、固体粒子表面からの溶融物の除去を増進させる。合理化された楔形のおかげで、公知の阻流要素と比較して、流動作用はマイナスの影響を受けない。全体的に見て、本発明の特徴により、本発明の流動要素は、可塑化スクリュの溶融域においてのみならず、特に、溶融体搬送域においても、分散及び分配混合部品として好適に用いることができる。
【0007】
圧縮部分の上昇面を、スクリュ溝の長手方向に凹又は凸に湾曲させることにより、圧密化された固体材料床の分割をよりいっそう効率的にしてもよい。長手方向断面に関して凹曲率の場合には、伸長流動の発生は、圧縮部分の上昇面が初めはあまり急上昇しないので、伸長流の破壊が避けられるという点で、好ましい。反対に、上昇面の長手方向断面が凸構成である場合には、より急激に流れの向きが変わるので、流動要素は、より強く固体材料床に作用することができる。
【0008】
流れを生じさせるプラトーを、スクリュ溝の長手方向に波状に構成することにより、本発明による流動要素の助けを借りて、上述の効果に加えて剪断力及び伸縮力をさらに高めてもよい。さらに、こうしたプラトー上に波状要素を配置し、均質化をさらに向上させてもよい。
【0009】
本発明による可塑化スクリュは、共通のネジ山によって互いに隔てられた少なくとも2本のスクリュ溝を構成し、前記スクリュ溝には、互いに間隔をあけてずらした流動要素が配置されることにより、エネルギーの消散をより多くして処理量を増加させてもよい。
【0010】
スクリュ溝の共通のネジ山に、流れの方向におけるそれぞれの流動要素の上流領域において貫通口を開けることにより、本発明による可塑化スクリュの複数の実施の形態において、溶融過程の間、固体材料-溶融体混合物の向上した均質化を確保することが提案される。それにより、より複雑な流動プロファイルを生じさせることができ、そのため、本発明の可塑化ユニットの効率にとって好ましい。したがって、より効率的な溶融プロセス並びに固体材料-溶融体混合物及び/又は溶融体の向上した均質化が得られる。
【0011】
図面には、本発明の対象の例示が示されており、以下の図面が提示される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明による可塑化スクリュの2本のスクリュ溝の概略図、
【
図4】凸の上昇面を有する本発明による流動要素の
図2に対応する別の実施の形態の断面図、
【
図5】凹の上昇面を有する本発明による流動要素の
図2に対応する別の実施の形態の断面図、
【
図6】本発明による可塑化スクリュの2本のスクリュ溝の別の実施の形態における
図1に対応する図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明による可塑化スクリュは、スクリュコアの周囲を螺旋状に延びネジ山1、2が側方の境界になっているスクリュ溝を有している。スクリュ溝を横切る方向に延びる複数の流動要素3、4が、スクリュ溝の長手方向にわたって配置されている。
【0014】
特に、
図2~
図5において分かるように、これらの流動要素3、4は、深い部分5と、スクリュ溝に沿って半径方向に高くなる圧縮部分6を有し、圧縮部分は、ネジ山1、2に対して傾斜した少なくとも1個の上昇面7を構成している。圧縮部分6の次には、スクリュコア面と平行なプラトー8があり、プラトーには、深い部分5が接続され減圧が行われる。流動要素3、4の半径方向における広がりは、スクリュ溝の高さよりも小さい。
【0015】
スクリュ溝の長手方向に送られる固体材料-溶融体混合物又は溶融体の流れは、先ず、流動要素3、4の深い部分5に搬送され、次いで、圧縮部分6の上昇面7に達する。その後、この流れは、最終的に減圧されるように深い部分5に流れ込むまで、ずっとプラトー8上にある。
【0016】
圧縮部分6は、それぞれ向かい合うネジ山部分1、2に対して傾斜した少なくとも2個の上昇面7を備え、これらの上昇面は、固体材料-溶融体混合物又は溶融体の流れに対向する楔9を構成することにより、固体材料床を分割し壊してもよい。本発明によれば、複数のこうした楔9、10を設けてもよく、これらの楔は、スクリュ溝の幅にわたって均等に配置され、複数の側部楔10を有する主楔9を構成する。こうした実施の形態は、図面において、例えば流動要素3に示されている。
【0017】
先に既に述べたように、上昇面7は、
図4に示すように凸状に又は
図5に示すように凹状に構成することにより、積極的に流れのプロファイルに影響を与えてもよく、これらは、必要に応じて本発明によって設定される。
【0018】
図面において、個別に示してはいないが、プラトー8は、波状の形態を有することにより、又は、原理的には、先行技術から公知の波状要素を備えることにより、溶融体において生じる剪断力及び伸縮力を高めてもよい。
【0019】
さらに別の実施の形態によれば、本発明に係る可塑化スクリュは、長手方向に互いに平行な少なくとも2本のスクリュ溝を構成していてもよく、前記スクリュ溝は、共通のネジ山2によって互いに隔てられている。これは、
図1に示されており、特にこの図においては、一方のスクリュ溝の流動要素3が、もう一方のスクリュ溝の流動要素4からずれており、間隔をあけて配置されている。
【0020】
図1に示すスクリュ溝とは別の
図6に示す実施の形態では、流れの方向にそれぞれの流動要素3、4の上流領域に貫通口11を有していてもよい。