(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】中継装置、通信制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 28/10 20090101AFI20220613BHJP
H04W 28/18 20090101ALI20220613BHJP
H04W 16/26 20090101ALI20220613BHJP
【FI】
H04W28/10
H04W28/18 110
H04W16/26
(21)【出願番号】P 2020552510
(86)(22)【出願日】2019-05-27
(86)【国際出願番号】 JP2019020922
(87)【国際公開番号】W WO2020079880
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-05-07
(31)【優先権主張番号】P 2018195833
(32)【優先日】2018-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】野町 真規
(72)【発明者】
【氏名】南里 将彦
(72)【発明者】
【氏名】近藤 充弘
(72)【発明者】
【氏名】野口 和人
(72)【発明者】
【氏名】福元 志郎
(72)【発明者】
【氏名】阿部 達朗
(72)【発明者】
【氏名】飯田 基貴
【審査官】望月 章俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-55593(JP,A)
【文献】特開2017-11741(JP,A)
【文献】3GPP TS 36.213 V.15.3.0,2018年09月28日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W4/00-H04W99/00
H04B7/24-H04B7/26
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マクロセル基地局と端末装置との間の通信を中継可能な中継装置であって、
自装置から前記マクロセル基地局への上り方向の通信状況に基づいて前記マクロセル基地局において決定される、前記上り方向のMCS(Modulation and Coding Scheme)及びレイヤー数、並びに、前記マクロセル基地局から自装置への下り方向の通信状況に基づいて前記マクロセル基地局において決定される、前記下り方向のMCS及びレイヤー数を受信する受信部と、
受信された前記上り方向のMCS及びレイヤー数並びに前記マクロセル基地局が割り当て可能な最大リソースブロック数に基づいて、前記上り方向の最大利用可能スループットを算定するとともに、受信された前記下り方向のMCS及びレイヤー数並びに前記マクロセル基地局が割り当て可能な最大リソースブロック数に基づいて、前記下り方向の最大利用可能スループットを算定する算定部と、
算定された前記上り方向の最大利用可能スループットが第1の閾値を超える場合には、前記上り方向の最大利用可能スループットの値を前記第1の閾値に変更し、前記下り方向の最大利用可能スループットが第2の閾値を超える場合には、前記下り方向の最大利用可能スループットの値を前記第2の閾値に変更する変更部と、
を備える中継装置。
【請求項2】
特定の識別情報に対応付けられた前記マクロセル基地局との間で前記特定の識別情報に対応付けられたバックホール通信路を各々確立する複数のリレー・ノードと、
前記特定の識別情報に対応付けられた前記端末装置と前記特定の識別情報に対応付けられた特定のバックホール通信路との通信を制御する情報処理部と、
をさらに備え、
前記受信部は、前記確立されたバックホール通信路ごとに、前記上り方向のMCS及びレイヤー数並びに前記下り方向のMCS及びレイヤー数を受信し、
前記算定部は、前記確立されたバックホール通信路ごとに、前記上り方向の最大利用可能スループット及び前記下り方向の最大利用可能スループットを算定し、
前記変更部は、前記確立されたバックホール通信路ごとに、前記上り方向の最大利用可能スループットの値及び前記下り方向の最大利用可能スループットの値を変更する、
請求項1記載の中継装置。
【請求項3】
前記算定部は、受信された前記上り方向のMCSに対応するインデックスと前記最大リソースブロック数との組み合わせにより算定される値、及び受信された前記上り方向のレイヤー数に基づいて、前記上り方向において利用可能な最大スループットを算定するとともに、受信された前記下り方向のMCSに対応するインデックスと前記最大リソースブロック数との組み合わせにより算定される値、及び受信された前記下り方向のレイヤー数に基づいて、前記下り方向において利用可能な最大スループットを算定する、
請求項1又は2記載の中継装置。
【請求項4】
前記受信部は、前記マクロセル基地局と接続する際に、前記最大リソースブロック数を、さらに受信する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の中継装置。
【請求項5】
前記通信は、音声通話であり、
前記変更部は、算定された前記上り方向における前記最大利用可能スループット及び前記下り方向における前記最大利用可能スループットのうち、大きい方の値を小さい方の値に変更する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の中継装置。
【請求項6】
算定された前記最大利用可能スループットが第3の閾値未満である場合に、前記マクロセル基地局が接続するコアネットワークに対し、アラームを送信する送信部を、さらに備える、
請求項1から5のいずれか一項に記載の中継装置。
【請求項7】
算定された前記最大利用可能スループットが第4の閾値未満である場合に、接続可能な前記端末装置の最大数を制限する接続制限部を、さらに備える、
請求項1から6のいずれか一項に記載の中継装置。
【請求項8】
マクロセル基地局と端末装置との間の通信を中継可能な中継装置の通信を制御する通信制御方法であって、
前記中継装置から前記マクロセル基地局への上り方向の通信状況に基づいて前記マクロセル基地局において決定される、前記上り方向のMCS及びレイヤー数、並びに、前記マクロセル基地局から前記中継装置への下り方向の通信状況に基づいて前記マクロセル基地局において決定される、前記下り方向のMCS及びレイヤー数を受信する受信ステップと、
受信された前記上り方向のMCS及びレイヤー数並びに前記マクロセル基地局が割り当て可能な最大リソースブロック数に基づいて、前記上り方向の最大利用可能スループットを算定するとともに、受信された前記下り方向のMCS及びレイヤー数並びに前記マクロセル基地局が割り当て可能な最大リソースブロック数に基づいて、前記下り方向の最大利用可能スループットを算定する算定ステップと、
算定された前記上り方向の最大利用可能スループットが第1の閾値を超える場合には、前記上り方向の最大利用可能スループットの値を前記第1の閾値に変更し、前記下り方向の最大利用可能スループットが第2の閾値を超える場合には、前記下り方向の最大利用可能スループットの値を前記第2の閾値に変更する変更ステップと、
を含む、通信制御方法。
【請求項9】
コンピュータを、
マクロセル基地局と端末装置との間の通信を中継可能な中継装置から前記マクロセル基地局への上り方向の通信状況に基づいて前記マクロセル基地局において決定される、前記上り方向のMCS及びレイヤー数、並びに、前記マクロセル基地局から前記中継装置への下り方向の通信状況に基づいて前記マクロセル基地局において決定される、前記下り方向のMCS及びレイヤー数を受信する受信部、
受信された前記上り方向のMCS及びレイヤー数並びに前記マクロセル基地局が割り当て可能な最大リソースブロック数に基づいて、前記上り方向の最大利用可能スループットを算定するとともに、受信された前記下り方向のMCS及びレイヤー数並びに前記マクロセル基地局が割り当て可能な最大リソースブロック数に基づいて、前記下り方向の最大利用可能スループットを算定する算定部、
算定された前記上り方向の最大利用可能スループットが第1の閾値を超える場合には、前記上り方向の最大利用可能スループットの値を前記第1の閾値に変更し、前記下り方向の最大利用可能スループットが第2の閾値を超える場合には、前記下り方向の最大利用可能スループットの値を前記第2の閾値に変更する変更部、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マクロセル基地局と端末装置との間の通信を中継可能な中継装置、通信制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムの標準化規格として、第3世代移動通信システム(3G:3rd Generation)に代わり、LTE(Long Term Evolution)が普及してきている。LTEはパケット通信のみをサポートする通信規格であり、音声はVoIP(Voice over Internet Protocol)でパケットに変換されて送受信される。特にLTE規格におけるVoIPはVoLTE(Voice over LTE)と呼ばれている。
【0003】
下記特許文献1には、LTEにおいて、ベースステーションとユーザ装置との間の通信で利用できる最大利用可能スループットを算出する技術が開示されている。この特許文献1では、ベースステーションから下り方向に送信されるパイロット信号を受信したユーザ装置からベースステーションにフィードバックされるCQI(Channel Quality Indicator)レポートに基づいて、最大利用可能スループットを算出している。
【0004】
下記特許文献2には、マクロセル基地局と移動機との間でパケット通信を中継するフェムトセル基地局に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-133700号公報
【文献】特開2016-171536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1では、ベースステーションからユーザ装置への下り方向の最大利用可能スループットに基づいて、ベースステーションとユーザ装置との間の通信が制御されることとなる。したがって、例えば、下り方向の最大利用可能スループットよりも、上り方向の最大利用可能スループットが小さくなるような状況下であっても、下り方向の最大利用可能スループットに基づいて、上り方向の通信が制御されてしまうことになる。
【0007】
特許文献2に記載のフェムトセル基地局のような中継装置とマクロセル基地局との間の通信を制御する場合に、実際の最大利用可能スループットよりも大きなスループットを利用できるという前提で通信を制御しようとすると、通信品質が劣化する可能性がある。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、マクロセル基地局と端末装置との間の通信を中継可能な中継装置における通信を制御する際に、適切な最大利用可能スループットを定めることを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る中継装置は、マクロセル基地局と端末装置との間の通信を中継可能な中継装置であって、自装置から前記マクロセル基地局への上り方向の通信状況に基づいて前記マクロセル基地局において決定される、前記上り方向のMCS(Modulation and Coding Scheme)及びレイヤー数、並びに、前記マクロセル基地局から自装置への下り方向の通信状況に基づいて前記マクロセル基地局において決定される、前記下り方向のMCS及びレイヤー数を受信する受信部と、受信された前記上り方向のMCS及びレイヤー数並びに前記マクロセル基地局が割り当て可能な最大リソースブロック数に基づいて、前記上り方向の最大利用可能スループットを算定するとともに、受信された前記下り方向のMCS及びレイヤー数並びに前記マクロセル基地局が割り当て可能な最大リソースブロック数に基づいて、前記下り方向の最大利用可能スループットを算定する算定部と、算定された前記上り方向の最大利用可能スループットが第1の閾値を超える場合には、前記上り方向の最大利用可能スループットの値を前記第1の閾値に変更し、前記下り方向の最大利用可能スループットが第2の閾値を超える場合には、前記下り方向の最大利用可能スループットの値を前記第2の閾値に変更する変更部と、を備える。
【0010】
上記態様において、特定の識別情報に対応付けられた前記マクロセル基地局との間で前記特定の識別情報に対応付けられたバックホール通信路を各々確立する複数のバックホール通信部と、前記特定の識別情報に対応付けられた前記端末装置と前記特定の識別情報に対応付けられた特定のバックホール通信路との通信を制御する通信制御部と、をさらに備え、前記受信部は、前記確立されたバックホール通信路ごとに、前記上り方向のMCS及びレイヤー数並びに前記下り方向のMCS及びレイヤー数を受信し、前記算定部は、前記確立されたバックホール通信路ごとに、前記上り方向の最大利用可能スループット及び前記下り方向の最大利用可能スループットを算定し、前記変更部は、前記確立されたバックホール通信路ごとに、前記上り方向の最大利用可能スループットの値及び前記下り方向の最大利用可能スループットの値を変更することとしてもよい。
【0011】
上記態様において、前記算定部は、受信された前記上り方向のMCSに対応するインデックスと前記最大リソースブロック数との組み合わせにより算定される値、及び受信された前記上り方向のレイヤー数に基づいて、前記上り方向において利用可能な最大スループットを算定するとともに、受信された前記下り方向のMCSに対応するインデックスと前記最大リソースブロック数との組み合わせにより算定される値、及び受信された前記下り方向のレイヤー数に基づいて、前記下り方向において利用可能な最大スループットを算定することとしてもよい。
【0012】
上記態様において、前記受信部は、前記マクロセル基地局と接続する際に、前記最大リソースブロック数を、さらに受信することとしてもよい。
【0013】
上記態様において、前記通信は、音声通話であり、前記変更部は、算定された前記上り方向における前記最大利用可能スループット及び前記下り方向における前記最大利用可能スループットのうち、大きい方の値を小さい方の値に変更することとしてもよい。
【0014】
上記態様において、算定された前記最大利用可能スループットが第3の閾値未満である場合に、前記マクロセル基地局が接続するコアネットワークに対し、アラームを送信する送信部を、さらに備えることとしてもよい。
【0015】
上記態様において、算定された前記最大利用可能スループットが第4の閾値未満である場合に、接続可能な前記端末装置の最大数を制限する接続制限部を、さらに備えることとしてもよい。
【0016】
本発明の他の態様に係る通信制御方法は、マクロセル基地局と端末装置との間の通信を中継可能な中継装置の通信を制御する通信制御方法であって、前記中継装置から前記マクロセル基地局への上り方向の通信状況に基づいて前記マクロセル基地局において決定される、前記上り方向のMCS及びレイヤー数、並びに、前記マクロセル基地局から前記中継装置への下り方向の通信状況に基づいて前記マクロセル基地局において決定される、前記下り方向のMCS及びレイヤー数を受信する受信ステップと、受信された前記上り方向のMCS及びレイヤー数並びに前記マクロセル基地局が割り当て可能な最大リソースブロック数に基づいて、前記上り方向の最大利用可能スループットを算定するとともに、受信された前記下り方向のMCS及びレイヤー数並びに前記マクロセル基地局が割り当て可能な最大リソースブロック数に基づいて、前記下り方向の最大利用可能スループットを算定する算定ステップと、算定された前記上り方向の最大スループットが第1の閾値を超える場合には、前記上り方向の最大利用可能スループットの値を前記第1の閾値に変更し、前記下り方向の最大利用可能スループットが第2の閾値を超える場合には、前記下り方向の最大利用可能スループットの値を前記第2の閾値に変更する変更ステップと、を含む。
【0017】
本発明の他の態様に係るプログラムは、コンピュータを、マクロセル基地局と端末装置との間の通信を中継可能な中継装置から前記マクロセル基地局への上り方向の通信状況に基づいて前記マクロセル基地局において決定される、前記上り方向のMCS及びレイヤー数、並びに、前記マクロセル基地局から前記中継装置への下り方向の通信状況に基づいて前記マクロセル基地局において決定される、前記下り方向のMCS及びレイヤー数を受信する受信部、受信された前記上り方向のMCS及びレイヤー数並びに前記マクロセル基地局が割り当て可能な最大リソースブロック数に基づいて、前記上り方向の最大利用可能スループットを算定するとともに、受信された前記下り方向のMCS及びレイヤー数並びに前記マクロセル基地局が割り当て可能な最大リソースブロック数に基づいて、前記下り方向の最大利用可能スループットを算定する算定部、算定された前記上り方向の最大利用可能スループットが第1の閾値を超える場合には、前記上り方向の最大利用可能スループットの値を前記第1の閾値に変更し、前記下り方向の最大利用可能スループットが第2の閾値を超える場合には、前記下り方向の最大利用可能スループットの値を前記第2の閾値に変更する変更部、として機能させる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、マクロセル基地局と端末装置との間の通信を中継可能な中継装置における通信を制御する際に、適切な最大利用可能スループットを定めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態に係る中継装置を含む移動体通信システムの模式図である。
【
図2】実施形態に係る中継装置の機能構成図である。
【
図3】実施形態に係る中継装置が参照するテーブルを例示する図である。
【
図4】実施形態に係る中継装置が参照するテーブルを例示する図である。
【
図5】実施形態に係る中継装置が参照するテーブルを例示する図である。
【
図6】実施形態に係る中継装置が参照するテーブルを例示する図である。
【
図7】実施形態に係る中継装置が参照するテーブルを例示する図である。
【
図8】第1変形例に係る中継装置のハードウェア構成図である。
【
図9】第1変形例に係る中継装置の機能を説明する模式図である。
【
図10】第1変形例に係る中継装置の機能を説明するための図である。
【
図11】第2変形例に係る中継装置の機能を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明に係る実施形態を説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示であり、以下に明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、一連の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号を付して表している。
【0021】
〔移動体通信システムの構成〕
図1は、本発明の実施形態に係る中継装置を含む移動体通信システムの構成図である。移動体通信システム100は、例示的に3GPPにより規格されているLTE方式のVoLTEによる音声通話サービスを提供可能な移動体通信システムであり、無線ネットワーク(Radio Network)と、コアネットワーク(Core Network)と、を備える。無線ネットワークの構成、及び、コアネットワークの構成について、以下において順に説明する。
【0022】
(無線ネットワークの構成)
図1に示すように、移動体通信システム100は、無線ネットワークに係る構成として、端末装置10、中継装置20、及びドナー基地局(マクロセル基地局)30を備える。なお、無線ネットワークは、LTE方式では、E-UTRAN(Evolved Universal Terrestrial Radio Access Network)と呼ばれている。
【0023】
端末装置10は、例えばスマートフォン、携帯電話等の移動携帯通信端末であり、UE(User Equipment)とも呼ばれる。
図1には、中継装置20が形成するセル(通信可能範囲)に在圏し、中継装置20に接続している端末装置10aと、ドナー基地局30が形成するセルに在圏し、ドナー基地局30に接続している端末装置10bとが示されている。以下、端末装置10aと端末装置10bとを総称するときには端末装置10と表記する。
【0024】
中継装置20は、可搬設置が可能で移設もでき、屋外のみならず屋内に設置することも可能である。中継装置20は、LTE方式ではReNB(Repeater type eNodeB)とも呼ばれ、無線ネットワークにおける一つのノードを構成する。
【0025】
中継装置20は、アクセス・ノード(Access Node)22とリレー・ノード(Relay Node)24とを含んで構成される。
【0026】
アクセス・ノード22は、フェムト基地局とも呼ばれ、端末装置10aとの無線通信を確立し、端末装置10aに対しパケット通信サービス(例えば音声パケット通信サービス、マルチメディアサービス等)を提供する。アクセス・ノード22と端末装置10aとの間で確立される無線通信路を、アクセス通信路(Access Communication Path)ACとも呼ぶ。アクセス・ノード22が形成するセルは、そのセルサイズがドナー基地局30よりも小規模であり、半径数メートルから数十メートルの通信エリアを構築する。
【0027】
アクセス・ノード22は、リレー・ノード24を介してドナー基地局30との間で無線通信路を確立する。リレー・ノード24は、CPE(Customer Premises Equipment)とも呼ばれる。リレー・ノード24とドナー基地局30との間で確立される無線通信路を、バックホール通信路(Backhaull Communication Path)BHとも呼ぶ。
【0028】
なお、アクセス・ノード22とリレー・ノード24とは、別個のノードとして構成されていてもよい。別個に構成した場合、リレー・ノード24が本発明に係る中継装置としての役割を担うこととなる。
【0029】
ドナー基地局30は、LTE方式ではDonor eNB(Donor eNodeB)とも呼ばれ、リレー・ノード24との間でバックホール通信路BHを確立する。ドナー基地局30は、端末装置10bとの間でも直接、アクセス通信路ACを確立する。ドナー基地局30は、半径数百メートルから十数キロメートルの通信エリアを構築する。
【0030】
(コアネットワークの構成)
図1に示すように、移動体通信システム100は、コアネットワークに係る構成として、第1コアネットワークEPC(Evolved Packet Core)40、フェムト・コアネットワーク(Femto Core Network)50、及び第2コアネットワークEPC60を備える。なお、本実施形態では、第1コアネットワークEPC40と第2コアネットワークEPC60とを備えるものとして説明するが、コアネットワークEPCは一つで構成してもよい。
【0031】
第1コアネットワークEPC40は、例えば、ドナー基地局30に接続し、ドナー基地局30を介して個々の端末装置10b及びリレー・ノード24の移動管理、認証、パケット通信データ経路の設定処理を管理する機能、無線ネットワークにおける品質管理を実施する機能、移動通信サービスを提供するために呼の接続を制御することやサービスを制御する機能、及び、インターネット70等の外部のネットワークから無線ネットワーク内の契約加入者又は無線ネットワーク内にローミング中の加入者に対する呼を受ける交換局としての機能等を有する。
【0032】
フェムト・コアネットワーク50は、中継装置20に関する各種の管理を行うネットワークである。フェムト・コアネットワーク50は、例えば、フェムトOAM(Femto Operations Administration Maintenace)52に接続され、中継装置20の運用、管理、保守を行う機能を有する。
【0033】
第2コアネットワークEPC60は、例えば、移動通信サービスを提供するために呼の接続を制御することやサービスを制御する機能、インターネット70等の外部のネットワークから無線ネットワーク内の契約加入者、又は無線ネットワーク内にローミング中の加入者に対する呼を受ける交換局としての機能、第2コアネットワークEPC60内で個々の端末装置10aの移動管理、認証、パケット通信データ経路の設定処理を管理する機能、及び品質管理等の通信ポリシー制御や課金規約に基づく制御を実行する機能を有する。
【0034】
(中継装置の構成及び動作)
図2は、本発明の実施形態に係る中継装置の機能構成図である。
図2に示すように、中継装置20は、機能的な構成として、例えば、ドナー基地局30と中継装置20との間の通信を制御するための情報処理を行う情報処理部201と、ドナー基地局30と中継装置20との間の通信を制御する際に用いられるデータ等を記憶する情報記憶部202と、を備える。
【0035】
中継装置20は、物理的な構成として、例えば、中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)及びメモリを備えており、メモリに格納されるコンピュータソフトウェアプログラムをCPUが実行することにより、情報処理部201を機能的に実現する。情報処理部201は、例示的に、受信部205と、算定部206と、変更部207と、送信部208と、を有する。
【0036】
受信部205は、変調方式及び符号化率の組により定まるMCS(Modulation and Coding Scheme)及び同時に伝送可能なストリームの数であるレイヤー数を、ドナー基地局30から受信する。例示的に、LTE規格では、MCSを“0”~“31”まで定めることができ、レイヤー数を最大で8まで定めることができる。
【0037】
MCS及びレイヤー数は、ドナー基地局30が以下のように決定する。ドナー基地局30は、中継装置20からドナー基地局30への方向(以下、「上り方向」ともいう。)の通信状況に基づいて、上り方向のMCS及びレイヤー数を決定する。ドナー基地局30は、ドナー基地局30から中継装置20への方向(以下、「下り方向」ともいう。)の通信状況に基づいて、下り方向のMCS及びレイヤー数を決定する。
【0038】
受信部205は、ドナー基地局30と接続する際に、最大リソースブロック数をドナー基地局30から受信する。最大リソースブロック数は、ドナー基地局30が中継装置20との間の通信で使う帯域幅(以下、「システム帯域幅」ともいう。)ごとに割り当てることができる最大のリソースブロック数である。例示的に、システム帯域幅が10MHzである場合に、最大リソースブロック数は“50”となり、システム帯域幅が15MHzである場合に、最大リソースブロック数は“75”となる。
【0039】
なお、最大リソースブロック数は、必ずしもドナー基地局30から受信する必要はない。例えば、各ドナー基地局30のシステム帯域幅と最大リソースブロック数との対応関係を設定したテーブルを中継装置20が保有し、中継装置20が接続したドナー基地局30のシステム帯域幅に基づいて、上記テーブルから最大リソースブロック数を取得することとしてもよい。
【0040】
算定部206は、受信部205により受信された上り方向又は下り方向のMCS及びレイヤー数、並びに最大リソースブロック数に基づいて、上り方向又は下り方向において利用できる最大利用可能スループットを算定する。
【0041】
具体的に、算定部206は、受信部205により受信された上り方向のMCSに対応するインデックスと最大リソースブロック数との組み合わせにより算定される値、及び受信部205により受信された上り方向のレイヤー数に基づいて、上り方向において利用できる最大利用可能スループットを算定する。また、算定部206は、受信部205により受信された下り方向のMCSに対応するインデックスと最大リソースブロック数との組み合わせにより算定される値、及び受信部205により受信された下り方向のレイヤー数に基づいて、下り方向において利用できる最大利用可能スループットを算定する。
【0042】
算定部206が、上り方向又は下り方向において利用できる最大利用可能スループットを算定する際の手順の一例を、以下に説明する。この例示では、算定部206が、
図3~
図7に示すテーブルを参照して最大利用可能スループットを算定する場合について説明する。各テーブルは、情報記憶部202に記憶される。
【0043】
図3は、「3GPP TS 36.213 V10.12.0(2014-03)(以下、「非特許文献1」という。)」の「Table 7.1.7.1-1」の一部である。このTableは、「MCS Index」であるI
MCSと、「TBS(Transport Block Size) Index」であるI
TBSとの対応関係を記憶するテーブルである。本例示では、ドナー基地局30から受信するMCSの値を、I
MCSの値として用いる。TBSは、1[TTI](1[ms])で伝送可能なbit数であり、インデックスにより区分けされている。
【0044】
図4は、非特許文献1の「Table 7.1.7.2.1-1」の一部である。このTableは、I
TBSと最大リソースブロック数であるN
PRBとの組み合わせごとに、レイヤー数=1であるときのTBSの最大値を記憶するテーブルである。
【0045】
ここで、レイヤー数=2、かつN
PRB≦55である場合には、N
PRBの値を2倍して
図4のテーブルを参照し、レイヤー数=2であるときのTBSの最大値を取得する。他方、レイヤー数=2、かつN
PRB>55である場合には、
図4のテーブルから取得したレイヤー数=1であるときのTBSの最大値を、
図5のテーブルを用いて変換することで、レイヤー数=2であるときのTBSの最大値を取得する。
【0046】
また、レイヤー数=3、かつN
PRB≦36である場合には、N
PRBの値を3倍して
図4のテーブルを参照し、レイヤー数=3であるときのTBSの最大値を取得する。他方、レイヤー数=3、かつN
PRB>36である場合には、
図4のテーブルから取得したレイヤー数=1であるときのTBSの最大値を、
図6のテーブルを用いて変換することで、レイヤー数=3であるときのTBSの最大値を取得する。
【0047】
さらに、レイヤー数=4、かつN
PRB≦27である場合には、N
PRBの値を4倍して
図4のテーブルを参照し、レイヤー数=4であるときのTBSの最大値を取得する。他方、レイヤー数=4、かつN
PRB>27である場合には、
図4のテーブルから取得したレイヤー数=1であるときのTBSの最大値を、
図7のテーブルを用いて変換することで、レイヤー数=4であるときのTBSの最大値を取得する。
【0048】
ここで、3GPP規格によるデータ通信は、コードワード(codeword)単位で行われ、1つのコードワードで最大4つのレイヤーまで送信することができる。例えば、4つのレイヤーでデータを送信する場合に、1つのコードワードで4つのレイヤーを送信することや、1つのコードワードに2つのレイヤーを割り当て、2つのコードワードで4つのレイヤーを送信することができる。
【0049】
例示的に、1つのコードワードで4つのレイヤーを送信する場合には、上記レイヤー数=4であるときのTBSの最大値を取得することとなり、その取得したTBSに対応するbit数が1[ms]で伝送可能なデータ量となる。同様に、1つのコードワードに2つのレイヤーを割り当て、2つのコードワードで4つのレイヤーを送信する場合には、上記レイヤー数=2であるときのTBSの最大値をそれぞれ取得することとなり、それぞれ取得したTBSに対応するbit数の合計が1[ms]で伝送可能なデータ量となる。
【0050】
図5は、非特許文献1の「Table 7.1.7.2.2-1」の一部である。このTableは、レイヤー数=2、かつN
PRB>55である場合に参照するテーブルである。このテーブルは、
図4のテーブルから取得したレイヤー数=1であるときのTBSの最大値を、レイヤー数=2であるときのTBSの最大値に変換するための変換前後の値をそれぞれ記憶する。
【0051】
図6は、非特許文献1の「Table 7.1.7.2.4-1」の一部である。このTableは、レイヤー数=3、かつN
PRB>36である場合に参照するテーブルである。このテーブルは、
図4のテーブルから取得したレイヤー数=1であるときのTBSの最大値を、レイヤー数=3であるときのTBSの最大値に変換するための変換前後の値をそれぞれ記憶する。
【0052】
図7は、非特許文献1の「Table 7.1.7.2.5-1」の一部である。このTableは、レイヤー数=4、かつN
PRB>27である場合に参照するテーブルである。このテーブルは、
図4のテーブルから取得したレイヤー数=1であるときのTBSの最大値を、レイヤー数=4であるときのTBSの最大値に変換するための変換前後の値をそれぞれ記憶する。
【0053】
以下に例示する(1)~(5)の各条件下において、
図3~
図7に示すテーブルに基づいて最大利用可能スループットを算定する際の手順をそれぞれ説明する。最大利用可能スループットの算定は、上り方向及び下り方向とも同様に行うことができるため、以下においては、上り方向及び下り方向を特定せずに説明する。
【0054】
(1)システム帯域幅=10[MHz]、最大リソースブロック数(NPRB)=50、レイヤー数=1、MCS Index(IMCS)=15である場合;
【0055】
最初に、算定部206は、
図3のテーブルを参照し、I
MCS=15に対応するI
TBS=14を特定する。
【0056】
続いて、算定部206は、
図4のテーブルを参照し、I
TBS=14とN
PRB=50とに基づいて、レイヤー数=1であるときのTBSの最大値である14112[bit]を取得する。
【0057】
続いて、算定部206は、取得したTBSの最大値である14112[bit]に1000を乗じ、最大利用可能スループットである14112000[bps]を算出する。
【0058】
(2)システム帯域幅=10[MHz]、最大リソースブロック数(NPRB)=50、レイヤー数=2、MCS Index(IMCS)=15である場合;
【0059】
最初に、算定部206は、
図3のテーブルを参照し、I
MCS=15に対応するI
TBS=14を特定する。
【0060】
続いて、算定部206は、レイヤー数=2、かつN
PRB≦55であるため、
図4のテーブルを参照し、I
TBS=14とN
PRB=50の2倍である100とに基づいて、レイヤー数=2であるときのTBSの最大値である28336[bit]を取得する。
【0061】
続いて、算定部206は、取得したTBSの最大値である28336[bit]に1000を乗じ、最大利用可能スループットである28336000[bps]を算出する。
【0062】
(3)システム帯域幅=15[MHz]、最大リソースブロック数(NPRB)=75、レイヤー数=2、MCS Index(IMCS)=15である場合;
【0063】
最初に、算定部206は、
図3のテーブルを参照し、I
MCS=15に対応するI
TBS=14を特定する。
【0064】
続いて、算定部206は、レイヤー数=2、かつN
PRB>55であるため、
図4のテーブルを参照し、I
TBS=14とN
PRB=75とから、レイヤー数=1であるときのTBSの最大値である21384[bit]を取得する。
【0065】
続いて、算定部206は、レイヤー数=2、かつN
PRB>55であるため、
図5のテーブルを参照し、レイヤー数=1であるときのTBSの最大値である21384[bit]に対応するレイヤー数=2であるときのTBSの最大値として、42368[bit]を取得する。
【0066】
続いて、算定部206は、取得したレイヤー数=2であるときのTBSの最大値である42368[bit]に1000を乗じ、最大利用可能スループットである42368000[bps]を算出する。
【0067】
(4)システム帯域幅=10[MHz]、最大リソースブロック数(NPRB)=50、レイヤー数=3、MCS Index(IMCS)=15である場合;
【0068】
最初に、算定部206は、
図3のテーブルを参照し、I
MCS=15に対応するI
TBS=14を特定する。
【0069】
続いて、算定部206は、レイヤー数=3、かつN
PRB>36であるため、
図4のテーブルを参照し、I
TBS=14とN
PRB=50とから、レイヤー数=1であるときのTBSの最大値である14112[bit]を取得する。
【0070】
続いて、算定部206は、レイヤー数=3、かつN
PRB>36であるため、
図6のテーブルを参照し、レイヤー数=1であるときのTBSの最大値である14112[bit]に対応するレイヤー数=3であるときのTBSの最大値として、42368[bit]を取得する。
【0071】
続いて、算定部206は、取得したレイヤー数=3であるときのTBSの最大値である42368[bit]に1000を乗じ、最大利用可能スループットである42368000[bps]を算出する。
【0072】
(5)システム帯域幅=10[MHz]、最大リソースブロック数(NPRB)=50、レイヤー数=4、MCS Index(IMCS)=15である場合;
【0073】
最初に、算定部206は、
図3のテーブルを参照し、I
MCS=15に対応するI
TBS=14を特定する。
【0074】
続いて、算定部206は、レイヤー数=4、かつN
PRB>27であるため、
図4のテーブルを参照し、I
TBS=14とN
PRB=50とから、レイヤー数=1であるときのTBSの最大値である14112[bit]を取得する。
【0075】
続いて、算定部206は、レイヤー数=4、かつN
PRB>27であるため、
図7のテーブルを参照し、レイヤー数=1であるときのTBSの最大値である14112[bit]に対応するレイヤー数=4であるときのTBSの最大値として、57336[bit]を取得する。
【0076】
続いて、算定部206は、取得したレイヤー数=4であるときのTBSの最大値である57336[bit]に1000を乗じ、最大利用可能スループットである57336000[bps]を算出する。
【0077】
図2の説明に戻る。変更部207は、算定部206により算定された上り方向の最大利用可能スループットが第1の閾値を超える場合には、上り方向の最大利用可能スループットの値を第1の閾値に変更する。また、変更部207は、算定部206により算定された下り方向の最大利用可能スループットが第2の閾値を超える場合には、下り方向の最大利用可能スループットの値を第2の閾値に変更する。
【0078】
第1の閾値及び第2の閾値は、上り方向及び下り方向それぞれの通信環境に応じて適宜設定することができる。また、アプリケーションごとに異なる閾値を設定することとしてもよい。さらに、算定部206により算定された上り方向の最大利用可能スループット及び下り方向の最大利用可能スループットのうち、大きい方の値を小さい方の値に変更することとしてもよい。これにより、上下方向の最大利用可能スループットの値を小さい方の値に揃えることが可能となる。つまり、上下方向の最大利用可能スループットの値を、小さい方の値以下に抑えて通信を制御することが可能となる。これにより、例えば、前述した発明が解決しようとする課題に記載したように、実際の最大利用可能スループットよりも大きなスループットを利用できるという前提で通信が制御される事態を、確実に回避することができるようになる。これは、上下方向の通信を利用して提供する音声通話サービスにおいて特に有効となる。
【0079】
送信部208は、算定部206により算定された最大利用可能スループットが第3の閾値未満である場合に、ドナー基地局30が接続するコアネットワークに対し、注意を喚起するためのアラームを送信する。第3の閾値と比較する最大利用可能スループットは、上り方向の最大利用可能スループット及び下り方向の最大利用可能スループットのうち、値が小さい方を用いる。第3の閾値は、上記の第1の閾値又は第2の閾値の何れかと同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。
【0080】
ここで、基地局は、一般的に、可能な限り多くの端末が同時に収容されるように、つまり、端末あたりの無線リソース(周波数や時間)の占有ができる限り少なくなる(無線の利用効率が最大になる)ように、無線品質を確保できる範囲で可能な限り大きなMCS Indexやレイヤー数を端末に割り当てる。しかしながら、例えば接続直後のように、無線品質が確定しない場合には、利用効率が最大となるMCS Indexやレイヤー数を割り当てることは困難となる。また、無線品質は周辺の基地局の混雑状況により刻々と変化するため、利用効率が最大となるMCS Indexやレイヤー数も変化することになる。したがって、刻々と変化するMCS Indexやレイヤー数をある程度観測した上で、瞬間的な最大スループットではなく、定常的に得られるスループットの中から最大利用可能スループットを推測することが好ましい。
【0081】
〔効果〕
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、上り方向の通信状況に基づいてドナー基地局30において決定される上り方向のMCS及びレイヤー数、並びに下り方向の通信状況に基づいてドナー基地局30において決定される下り方向のMCS及びレイヤー数を、ドナー基地局30から受信し、受信した上り方向のMCS及びレイヤー数並びにドナー基地局30が割り当て可能な最大リソースブロック数に基づいて、上り方向の最大利用可能スループットを算定するとともに、受信した下り方向のMCS及びレイヤー数並びにドナー基地局30が割り当て可能な最大リソースブロック数に基づいて、下り方向の最大利用可能スループットを算定し、算定した上り方向の最大利用可能スループットが第1の閾値を超える場合には、上り方向の最大利用可能スループットの値を第1の閾値に変更し、算定した下り方向の最大利用可能スループットが第2の閾値を超える場合には、下り方向の最大利用可能スループットの値を第2の閾値に変更することができる。
【0082】
これにより、中継装置20とドナー基地局30との間の上下方向それぞれの最大利用可能スループットをそれぞれの閾値を超えない範囲で設定した上で、上下方向それぞれの通信を制御することが可能となる。
【0083】
それゆえ、ドナー基地局30と端末装置10との間の通信を中継可能な中継装置20における通信を制御する際に、適切な最大利用可能スループットを定めることができる。
【0084】
ここで、移動体通信システム100において、VoLTEによる音声通話サービスを提供する場合、上下方向の通信を利用して音声通話サービスを提供することとなる。したがって、上下方向それぞれの通信状況を考慮して上下方向それぞれの最大利用可能スループットを調整することは、音声通話サービスを提供する場合に格別有効な手段となる。
【0085】
〔その他の実施の形態〕
上記のように本発明を実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかになるはずである。
【0086】
〔第1変形例〕
上記の実施形態では、特定の移動体通信事業者MNO(Mobile Network Operator)が運営する一つのドナー基地局30に接続可能な中継装置20に本発明を適用した場合について説明しているが、中継装置20の構成はこれに限定されない。例えば、異なる移動体通信事業者のドナー基地局に対して同時に接続可能な中継装置にも本発明を適用することができる。以下、そのような中継装置を、第1変形例に係る中継装置20sとして詳細に説明する。
【0087】
図8に、第1変形例に係る中継装置20sのハードウェア構成を例示する。中継装置20sは、異なる移動体通信事業者が運営するシステムに同時に接続可能な中継装置である。中継装置20sは、例えば、アクセス・ノード22と、複数のリレー・ノード24と、情報処理部201と、情報記憶部202と、を含んで構成される。情報処理部201は、上記実施形態に係る中継装置20の情報処理部201と同様に、中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)2011及びメモリ2012を備え、メモリ2012に格納されるコンピュータソフトウェアプログラムをCPU2011が実行することにより、中継装置20sを機能的に実現する。
【0088】
図9を参照して、第1変形例に係る中継装置20sの機能を説明する。
図9に示すように、複数のリレー・ノード24は、それぞれが、異なるドナーセル基地局30との間でバックホール通信路BHを確立する。端末装置10、リレー・ノード24、バックホール通信路BH及びドナーセル基地局30は、それぞれ移動体通信事業者を特定する識別情報IDに対応付けて管理される。
【0089】
識別情報IDは、移動体通信事業者を特定する固有情報であり、例えば、公衆陸上移動体ネットワーク番号であるPLMN(Public Land Mobile Network)番号を用いることができる。PLMN番号は、3桁の国番号と事業者を特定する2-3桁のネットワーク番号で構成される。但し、識別情報IDはPLMN番号以外の体系で付与されてもよい。以下、表記を簡略化し、異なる移動体通信事業者をアルファベットの小文字で識別し、例えば、移動体通信事業者xの識別情報をIDxというように表記する。
【0090】
図9では、リレー・ノード24aが、移動体通信事業者aを特定する識別情報IDaに対応付けられたドナーセル基地局30aとの間でバックホール通信路BHaを確立し、アクセス・ノード22に接続した端末装置10aがドナーセル基地局30aと通信可能な状態になっている。
【0091】
また、リレー・ノード24bが、移動体通信事業者bを特定する識別情報IDbに対応付けられたドナーセル基地局30bとの間でバックホール通信路BHbを確立し、アクセス・ノード22に接続した端末装置10bがドナーセル基地局30bと通信可能な状態になっている。
【0092】
さらに、リレー・ノード24cが、移動体通信事業者cを特定する識別情報IDcに対応付けられたドナーセル基地局30cとの間でバックホール通信路BHcを確立し、アクセス・ノード22に接続した端末装置10cがドナーセル基地局30cと通信可能な状態になっている。
【0093】
このように、第1変形例に係る中継装置20sは、事業が許可されている任意の移動体通信事業者xごとにバックホール通信路BHxを確立することができる複数のリレー・ノード24xを備える。
【0094】
中継装置20sは、端末装置10xからドナーセル基地局30xに送信されるアップリンクデータを以下のように中継する。情報処理部201は、アクセス・ノード22から提供されたアップリンクデータを、当該アップリンクデータに含まれる識別情報IDxに対応付けられたバックホール通信路BHxを確立するリレー・ノード24xに供給する。具体的に、情報処理部201は、アップリンクデータに含まれる識別情報IDxを参照する。続いて、参照した識別情報IDxが付されたパケットデータのブロックを、対応するリレー・ノード24xに供給する。この動作により、統合データCDが移動体通信事業者ごとの分割データSDxに仕分けされることになる。
【0095】
上記の分割データSDxに仕分けする手順について詳細に説明する。情報処理部201は、到着順にパケットデータのブロックを情報記憶部202に書き込んでいく。続いて、情報処理部201は、情報記憶部202のFIFO(First-in First-out)機能を利用して、書き込まれた順番でパケットデータのブロックを読み出す。続いて、情報処理部201は、読み出したパケットデータのブロックを、識別情報IDxに基づいて移動体通信事業者xごとに仕分けされた分割データSDxとして、リレー・ノード24xに供給する。続いて、リレー・ノード24xは、供給された分割データSDxを、バックホール通信路BHxを介して、対応するドナーセル基地局30xに送信する。
【0096】
中継装置20sは、ドナーセル基地局30xから端末装置10xに送信されるダウンリンクデータを以下のように中継する。情報処理部201は、1つ以上のバックホール通信路BHxからのダウンリンクデータを順次アクセス・ノード22に供給する。具体的に、情報処理部201は、リレー・ノード24xにより受信されて転送されてくるパケットデータを、到着順にブロック毎に統合して統合データCDを生成する。この動作により、各移動体通信事業者から個別に送信されてきたパケットデータのブロックが統合されることになる。
【0097】
上記の統合データCDを生成する手順について詳細に説明する。各リレー・ノード24xは、到着順にパケットデータのブロックを出力する。続いて、情報処理部201は、出力された順にパケットデータのブロックを情報記憶部202に書き込む。続いて、情報処理部201は、情報記憶部204のFIFO機能を利用して、書き込まれた順番でパケットデータのブロックを読み出し、統合データCDとしてアクセス・ノード22に出力する。続いて、アクセス・ノード22は、共通する周波数帯域で順次パケットデータのブロックを各端末装置10xに送信する。
【0098】
上記のように構成されている中継装置20sは、それぞれのリレー・ノード24xにより確立されたバックホール通信路BHxごとに、中継装置20とドナー基地局30との間の上下方向それぞれの最大利用可能スループットを設定した上で、上下方向それぞれの通信を制御する。
【0099】
このような中継装置20sは、実施形態に係る中継装置20の情報処理部201が有する各機能(
図2の受信部205、算定部206、変更部207及び送信部208)と同等の機能を有し、かつこれらの各機能を、それぞれのリレー・ノード24xにより確立されたバックホール通信路BHxごとに実現する。以下に、第1変形例に係る中継装置20sの情報処理部201が有する各機能について具体的に説明する。
【0100】
受信部205は、それぞれのリレー・ノード24xにより確立されたバックホール通信路BHxごとに、上り方向のMCS及びレイヤー数並びに下り方向のMCS及びレイヤー数を受信する。また、受信部205は、ドナー基地局30xと接続する際に、最大リソースブロック数をドナー基地局30xから受信する。
【0101】
算定部206は、それぞれのリレー・ノード24xにより確立されたバックホール通信路BHxごとに、上り方向の最大利用可能スループット及び下り方向の最大利用可能スループットを算定する。
【0102】
具体的に、算定部206は、受信部205により受信された上り方向のMCSに対応するインデックスと最大リソースブロック数との組み合わせにより算定される値、及び受信部205により受信された上り方向のレイヤー数に基づいて、上り方向において利用可能な最大スループットを算定する。そして、この最大スループットの算定を、バックホール通信路BHxごとに実行する。また、算定部206は、受信部205により受信された下り方向のMCSに対応するインデックスと最大リソースブロック数との組み合わせにより算定される値、及び受信部205により受信された下り方向のレイヤー数に基づいて、下り方向において利用可能な最大スループットを算定する。そして、この最大スループットの算定を、バックホール通信路BHxごとに実行する。
【0103】
上り方向又は下り方向において利用できる最大利用可能スループットを算定する際の具体的な手順については、前述した実施形態と同様であるため、それらの説明を省略する。
【0104】
変更部207は、それぞれのリレー・ノード24xにより確立されたバックホール通信路BHxごとに、上り方向の最大利用可能スループットの値及び下り方向の最大利用可能スループットの値を変更する。
【0105】
具体的に、変更部207は、算定部206により算定された上り方向の最大利用可能スループットが第1の閾値を超える場合に、上り方向の最大利用可能スループットの値を第1の閾値に変更する。そして、この変更する処理を、バックホール通信路BHxごとに実行する。また、変更部207は、算定部206により算定された下り方向の最大利用可能スループットが第2の閾値を超える場合に、下り方向の最大利用可能スループットの値を第2の閾値に変更する。そして、この変更する処理を、バックホール通信路BHxごとに実行する。
【0106】
第1の閾値及び第2の閾値については、前述した実施形態と同様であるため、それらの説明を省略する。また、最大利用可能スループットの大きい方の値を小さい方の値に変更してもよいことは、前述した実施形態と同様であるため、その説明についても省略する。
【0107】
送信部208は、それぞれのリレー・ノード24xにより確立されたバックホール通信路BHxごとに、算定部206により算定された最大利用可能スループットと第3の閾値とを比較する。送信部208は、最大利用可能スループットが第3の閾値未満である場合に、ドナー基地局30xが接続するコアネットワークに対し、アラームを送信する。第3の閾値と比較する最大利用可能スループットは、上り方向の最大利用可能スループット及び下り方向の最大利用可能スループットのうち、値が小さい方を用いる。
【0108】
図10を参照し、アラームを送信する機能について具体的に説明する。
図10は、バックホール通信路BHxを確立した移動体通信事業者が、“a”、“b”、“c”の三つの移動体通信事業者であり、それぞれの第3の閾値が、“2Mbs”、“1.9Mbs”、“1.6Mbs”であり、それぞれの算定値である最大利用可能スループットが、“3Mbs”、“1.7Mbs”、“1.8Mbs”であることを示す。この場合、移動体通信事業者“b”の算定値が第3の閾値未満になる。したがって、移動体通信事業者“b”のバックホール通信路BHbがアラームの対象となる。
【0109】
第1変形例によれば、識別情報IDxに対応付けられたドナー基地局30xとの間で識別情報IDxに対応付けられたバックホール通信路BHxを各々確立する複数のリレー・ノード24xを有する中継装置20sにおいて、確立されたバックホール通信路BHxごとに、前述した実施形態と同様の効果を奏することができる。具体的に、確立されたバックホール通信路BHxごとに、上り方向のMCS及びレイヤー数並びに下り方向のMCS及びレイヤー数を受信し、確立されたバックホール通信路BHxごとに、上り方向の最大利用可能スループット及び下り方向の最大利用可能スループットを算定し、確立されたバックホール通信路BHxごとに、上り方向の最大利用可能スループットの値及び下り方向の最大利用可能スループットの値を変更することができる。
【0110】
また、第1変形例によれば、それぞれのリレー・ノード24xにより確立されたバックホール通信路BHxごとに、算定された最大利用可能スループットが第3の閾値未満である場合に、ドナー基地局30xが接続するコアネットワークに対し、アラームを送信することができる。
【0111】
〔第2変形例〕
前述した実施形態に係る中継装置20及び第1変形例に係る中継装置20sにおいて、情報処理部201は、接続制限部をさらに備えることとしてもよい。実施形態に係る中継装置20の接続制限部は、算定部206により算定された最大利用可能スループットが第4の閾値未満である場合に、アクセス・ノード22に接続可能な端末装置10の最大数を最大利用可能スループットに基づいて制限する。他方、第1変形例に係る中継装置20sの接続制限部は、リレー・ノード24xにより確立されたバックホール通信路BHxごとに、算定部206により算定された最大利用可能スループットと第4の閾値とを比較し、最大利用可能スループットが第4の閾値未満である場合に、アクセス・ノード22に接続可能な端末装置10の最大数を最大利用可能スループットに基づいて制限する。
【0112】
第4の閾値と比較する最大利用可能スループットは、上り方向の最大利用可能スループット及び下り方向の最大利用可能スループットのうち、値が小さい方を用いる。また、第2変形例における第4の閾値は、上記第1変形例における第3の閾値と同じ値に設定してもよいし、異なる値に設定してもよい。
【0113】
図11を参照し、第1変形例に係る中継装置20sにおいて、アクセス・ノード22に接続可能な端末装置10の最大数を制限する場合について具体的に説明する。同図の例では、移動体通信事業者ごとに設定可能な端末装置10の最大数の初期値として、それぞれ“16call”が設定され、中継装置20s全体に接続可能な端末装置10の最大数にも“16call”が設定されていることとする。
【0114】
図11は、バックホール通信路BHxを確立した移動体通信事業者が、“a”、“b”、“c”の三つの移動体通信事業者であり、それぞれの第4の閾値が、“2Mbs”、“1.9Mbs”、“1.6Mbs”であり、それぞれの算定値である最大利用可能スループットが、“3Mbs”、“1.7Mbs”、“1.8Mbs”であることを示す。この場合、移動体通信事業者“b”の算定値が第4の閾値未満になる。したがって、移動体通信事業者“b”の端末装置10bの最大数が、“16call”から“10call”に減らされて制限されている。
【0115】
第2変形例によれば、上記実施形態及び上記第1変形例と同様の効果を奏することができるうえ、それぞれのリレー・ノード24xにより確立されたバックホール通信路BHxごとに、算定された最大利用可能スループットが第4の閾値未満である場合に、アクセス・ノード22に接続可能な端末装置10の最大数を最大利用可能スループットに基づいて制限することができる。
【0116】
〔第3変形例〕
上記実施形態、第1変形例及び第2変形例では、LTE規格の移動体通信システムを例示して説明したが、これに限定されず、他の通信規格や将来的に制定される通信規格に対しても本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0117】
10…端末装置、20…中継装置、22…アクセス・ノード、24…リレー・ノード、30…ドナー基地局(マクロセル基地局)、40…第1コアネットワークEPC、50…フェムト・コアネットワーク、60…第2コアネットワークEPC、100…移動体通信システム、201…情報処理部、202…情報記憶部、205…受信部、206…算定部、207…選定部、208…送信部