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  • 特許-クロロシランの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】クロロシランの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/107 20060101AFI20220613BHJP
   B01J 8/24 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
C01B33/107 Z
B01J8/24
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020557334
(86)(22)【出願日】2018-04-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 EP2018059933
(87)【国際公開番号】W WO2019201439
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2020-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns-Seidel-Platz 4, D-81737 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リンベック,カール-ハインツ
(72)【発明者】
【氏名】ソフィーナ,ナターリア
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-170210(JP,A)
【文献】特表2013-542912(JP,A)
【文献】特表2012-501949(JP,A)
【文献】特開平02-208217(JP,A)
【文献】特開2005-298327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/107
B01J 8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動床反応器中で、塩化水素含有反応ガスと、粗粒画分及び細粒画分から構成される顆粒混合物としてシリコンを含有する接触剤との反応により、一般式HSiCl4-n及び/又はHCl6-mSi(式中、n=1~4及びm=0~4である)のクロロシランを製造する方法であって、細粒画分の平均粒径d 50、fine が5~400μmであり、粗粒画分の平均粒径d 50、coarse が125~600μmであり、ただし、d 50、fine がd 50、coarse より小さく、d 50、coarse とd 50、fine との差が1μmより大きく、d 50、fine 及びd 50、coarse が、0.02~0.9の粒径比d 50、fine /d 50、coarse で存在し、細粒画分及び粗粒画分が、0.05~20の質量比m(細)/m(粗)で存在し、前記顆粒混合物が、1~100の粒度分布d 90 -d 10 /d 50 のスパンを有する、前記方法。
【請求項2】
前記顆粒混合物が、p=1~10、好ましくはp=1~6、特に好ましくはp=1~3、特にp=1又は2である、p峰性体積加重分布密度関数を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
50、fine及びd50、coarse、0.03~0.7、特に0.04~0.6の粒径比で存在することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
細粒画分及び粗粒画分が、0.09~10、特に0.1~4の質量比m(細)/m(粗)で存在することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記顆粒混合物が、1.5~10の粒度分布d90-d10/d50のスパンを有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記シリコンが、金属シリコン及び超高純度シリコンであり、金属シリコンの割合が、接触剤の総重量に基づいて少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%、特に好ましくは少なくとも90重量%であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記超高純度シリコンが、細粒画分の構成成分であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記シリコンが金属シリコン及び超高純度シリコンであり、金属シリコンの割合が50重量%未満であり、顆粒合物が触媒を追加的に含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記超高純度シリコン及び/又は触媒が、細粒画分の構成成分であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記シリコンが超高純度シリコンであり、顆粒混合物が触媒を含み、触媒が好ましくは細粒画分の構成成分であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記細粒画分及び前記粗粒画分が、予め調製された顆粒混合物として流動床反応器に供給されることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記細粒画分及び前記粗粒画分がそれぞれ別々に流動床反応器に供給されることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
流動床の高さと反応器直径との割合が10:1~1:1、好ましくは8:1~2:1、特に好ましくは6:1~3:1であることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記クロロシランが、モノクロロシラン、ジクロロシラン、トリクロロシラン、SiCl、HSiCl及びそれらの混合物を含む群から選択されることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
多結晶シリコンを製造するための集積システムに組み込まれることを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動床反応器中で、塩化水素含有反応ガスと、粗粒画分及び細粒画分から構成される、顆粒混合物としてシリコンを含有する接触剤との反応により、一般式HSiCl4-n及び/又はHCl6-mSi(ここでn=1~4及びm=0~4である)のクロロシランを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チップ又は太陽電池の製造のための出発物質としての多結晶(polycrystalline)シリコンの製造は、典型的には、揮発性ハロゲン化合物、特にトリクロロシラン(TCS、HSiCl)のようなクロロシランの分解によって行われる。チップ又は太陽電池の製造の要件を満たすために、多結晶(polycrystalline)シリコンは少なくとも99.9%の純度を有しなければならない。純度が99.9%を超える場合、超高純度シリコンという用語が用いられる。
【0003】
クロロシラン、特にTCSの製造は、以下の反応に基づく3つの工程によって本質的に行われる(WO2010/028878A1及びWO2016/198264A1参照)。
(1) SiCl+H → SiHCl+HCl+副生成物
(2) Si+3SiCl+2H → 4SiHCl+副生成物
(3) Si+3HCl → SiHCl+H+副生成物
【0004】
生成され得る副生成物には、さらにハロシラン、例えばモノクロロシラン(HSiCl)、ジクロロシラン(HSiCl)、四塩化ケイ素(STC、SiCl)並びにジ-及びオリゴシランが含まれる。炭化水素、有機クロロシラン及び金属塩化物のような不純物もまた、副生成物の成分であり得る。したがって、高純度TCSを製造するためには、典型的には蒸留が続く。
【0005】
反応(1)による高温変換は吸熱工程であり、典型的には600~900℃の間の温度で高圧下で行われる。
【0006】
反応(2)による低温変換(LTC)は触媒(例えば銅含有触媒)の存在下で行われる。LTCは、400℃~700℃の間の温度でSimgの存在下で流動床反応器中で行うことができる。
【0007】
反応(3)による塩酸化(HC)は、流動床反応器において金属シリコン(Simg、「金属グレード」のシリコン)及び塩化水素(HCl)からクロロシランを製造することを可能にし、該反応は発熱性である。これにより一般にTCS及びSTCを一次生成物として得る。HCの方法は、例えば、US4092446Aに開示される。
【0008】
HCの性能に影響する最も重要なパラメータは、原理的にはTCS選択率、HCl変換率、シリコン変換率及び副生成物の生成である。HCは、例えばSirtlら(Z.anorg.allg.Chem.1964、332、113-216)又はHuntら(J.Electrochem.Soc.1972、119、1741-1745)によって記載されているようなクロロシランの熱平衡反応に基づく。原理的に熱平衡におけるHCは塩素含有モノシラン(n=1~4のHCl4-nSi)だけでなく、高沸点のジクロロシラン、オリゴクロロシラン及び/又はポリクロロシランも形成する。
【0009】
用語「高沸点化合物」又は「高沸点溶剤」は、シリコン、塩素、及び任意選択的に水素、酸素及び/又は炭素からなり、STC(1013hPaで57℃)より高い沸点を有する化合物を指す。ここでは一般に、ジシランHCl6-mSi(m=0~4)及びそれより高いオリゴ(クロロ)シラン又はポリ(クロロ)シランに関係している。
【0010】
WO2007/101789A1及びこれに引用された文献は、高沸点溶剤を塩素含有モノシラン、好ましくはTCSに戻し、したがってそれらを価値連鎖に戻す方法に言及している。しかし、これらの方法は、追加の技術的複雑さを伴う。したがって、製造中に直接、望ましくない高沸点溶剤の形成を最小限にするか、又は回避さえする方法が特に望ましい。
【0011】
望ましくないほど多いSTC及び高沸点溶剤の生成に加えて、方法のコストも原則的には未変換のHCl及び未変換のシリコンによって増加する。
【0012】
流動床反応器中でのクロロシランの製造において、使用されるシリコン粒子の細粒画分を特異的に除去することが知られている。例えば、Lobusevichらは、70~500μmのシリコンのための操作顆粒を記載しており、ここで70μmは最小であり、500μmは最大粒径(粒径限界又は範囲限界)であり、その値は等価直径である(Khimiya Kremniiorganich.Soed.1988、27~35)。
操作顆粒は、流動床反応器に導入された顆粒を記載する。DE3938897A1は、50~800μmのシリコンのための好ましい操作顆粒を列挙し、RU2008128297Aは、90~450μmの好ましい操作顆粒を記載する。Lobusevichらは、メチルクロロシラン、エチルクロロシラン及びTCSの合成のために接触剤粒径を選択する際に、固体とガスとの相互作用を、方法の最大の安定性及び効率を達成するために考慮しなければならないと報告している。したがって、TCSの合成(400℃で)において、2~3mmの操作顆粒は、70~500μmの操作顆粒と比較して、約25~30%の反応速度の低下をもたらした。銅含有触媒を加えると、2~3mmの操作画分のシリコン粒子との反応は既に250℃で起こる。反応速度は400℃で非触媒変形例の反応速度と一致する。どちらの場合、すなわち、触媒される変形例及び非触媒変形例の両方で、シリコン粒径が増大させると、TCS選択率が増し、ポリクロロシラン(高沸点溶剤)の生成が減少する。
【0013】
反応を促進するためにはより高い反応温度が必要であり、流動床を生成するためにはより高いガス速度が必要であるため、原理的に粒径を増大させることはより大きなエネルギーコストを伴う。Lobusevichらは、多分散粒子混合物との関連で、ある割合のより小さなシリコン粒子を使用すると、表面積の増加によりシリコンの活性が増大すると報告しているが、小さなシリコン粒子の割合を使用すると、反応器からのシリコン粒子の放出が増大し、粒子の強凝集が起こり得るため、困難な問題を伴う。したがって、エネルギーコストが高いにもかかわらず、Lobusevichらによると、採用されたシリコン粒子の粒度分布の幅を減少させ、平均粒度を増大させることが有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】国際公開第2010/028878号
【文献】国際公開第2016/198264号
【文献】米国特許第4092446号明細書
【文献】国際公開第2007/101789号
【文献】独国特許出願公開第3938897号明細書
【文献】露国特許出願公開第2008128297号明細書
【非特許文献】
【0015】
【文献】Sirtlら、Z.anorg.allg.Chem.1964、332、113-216
【文献】)Huntら、J.Electrochem.Soc.1972、119、1741-1745
【文献】Lobusevichら、Khimiya Kremniiorganich.Soed.1988、27~35
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、その目的として、クロロシラン製造のための特に経済的な方法を提供することを有する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的は、流動床反応器中で、塩化水素含有反応ガスと粗粒画分及び細粒画分から構成される、顆粒混合物としてシリコンを含む接触剤との反応により、一般式HSiCl4-n及び/又はHCl6-mSi(ここで、n=1~4及びm=0~4である)のクロロシランを製造する方法であって、細粒画分の平均粒径d50、fineが粗粒画分の平均粒径d50、coarseより小さい方法によって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明による方法を実施するための流動床反応器1を一例として示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
「顆粒」という用語は、特に、例えば、破砕及びミル工場によるチャンクシリコンの粉砕によって製造可能なシリコン粒子の混合物を意味すると理解されるべきである。チャンクシリコンは、>10mm、好ましくは>20mm、特に好ましくは>50mmの平均粒径を有することができる。顆粒は、本質的にふるい分け(sieve)及び/又はふるい分け(sift)によって画分に分級され得る。
【0020】
顆粒は、以下によって/以下から製造され得る。
- チャンクシリコンの破砕及びミル、任意選択的にふるい分け(sieve)及び/又はふるい分け(sift)(分級)が続く
- 様々なシリコンタイプ(ウエハ、多結晶(polycrystalline)/多結晶(multicrystalline)/単結晶シリコン、Simg)の加工(破砕、ミル、鋸削り)で生成され、任意選択的に分級される廃棄物、特に、粉塵の形態、標準より大きいサイズ及び/又は標準より小さいサイズの形態で、標的顆粒の外側にある画分が関与する
- 粒状Simg又は多結晶(polycrystalline)シリコンの製造方法
【0021】
異なる顆粒の混合物は顆粒混合物として説明することができ、この顆粒混合物を構成する顆粒は、顆粒画分として説明することができる。顆粒画分は、互いに比較して粗粒画分及び細粒画分に分類され得る。顆粒混合物では、原則として、複数の顆粒画分を粗粒画分及び/又は細粒画分に分類することが可能である。
【0022】
相違(d50、coarse-d50、fine)が>1μm、好ましくは>10μm、特に好ましくは>50μm、特に>100μmである場合が好ましい。相違(d50、coarse-d50、fine)が、10~700μm、好ましくは50~500μm、特に好ましくは75~450μm、特に100~350μmの範囲にある場合が好ましい。
【0023】
粗粒画分の平均粒径d50、coarseは100~800μm、好ましくは125~600μm、特に好ましくは150~500μm、特に175~400μmとすることができる。
【0024】
粗粒画分の平均粒径d50、fineは、100~500μm、好ましくは5~400μm、特に好ましくは10~300μm、特に15~175μmとすることができる。
【0025】
典型的に使用される粗粒画分と比較して、粗粒画分の発明による使用は、顆粒混合物の平均粒径のd50、mixtureのより小さな粒径へのシフトをもたらす。それと共に粒度分布はより広くなる。
【0026】
驚くべきことに、より広い粒度分布を有するこのような顆粒混合物は、少なくとも等しいTCS選択率を達成しながら、既知の方法の場合よりも少量の高沸点副生成物を生成することが見出された。このように、狭いサイズ分布を有する顆粒混合物の場合にのみ平均粒径の増加に伴って、TCS選択率が増し、高沸点溶剤の形成が減少するというLobusevichらの先入観は覆される。また、本発明による方法は、著しく高いHCl変換率を達成することを可能にすることが見出された。反応器からの比較的小さなシリコン粒子の放出の増加及び凝集効果の発生など、平均粒径を低下させる上での現在の知見に従って予想される悪影響は、驚くほど観察されなかった。実際、接触剤の改善された流動化挙動が、本発明による方法において観察された。加えて、細粒画分の存在は、顆粒混合物の流動挙動の改善というさらなる利点をもたらし、このため特にその輸送及び反応器への供給を簡単にする。
【0027】
値d50は平均粒径(ISO 13320参照)を特定する。値d50は、粒子の50%が特定された値より小さいことを意味する。粒度分布の特性を決定するためにさらに重要なパラメータは、例えば対応する画分又は顆粒混合物中のより小さい粒子の尺度としての値d10及びより大きい粒子の尺度としての値d90である。値d10及びd90はまた粒度分布の幅を説明するために使用され得る。
幅=d90-d10
【0028】
粒子径分布の相対的な幅を測定するために、いわゆる粒度分布のスパンを用いてもよい。
スパン=(d90-d10)/d50
【0029】
スパンは、原則として、平均粒径が大きく異なる粒度分布を比較する場合に用いられる。
【0030】
粒度分布の測定は、ISO 13320(レーザー回折)及び/又はISO 13322(画像解析)に従って行うことができる。粒度分布からの平均粒径/直径の計算は、DIN ISO 9276-2に従って行うことができる。
【0031】
顆粒混合物がp峰性体積加重分布密度関数を有する場合が好ましく、ここで、p=1~10、好ましくはp=1~6、特に好ましくはp=1~3、特にp=1又は2である。例えば2峰性分布密度関数は2つの最大値をもつ。
【0032】
多峰性(例えば、p=5~10)の分布密度関数を有する顆粒混合物を使用することで、ふるい分けの影響(流動床、例えば、2部流動床中の個々の粒画分の分離)を回避することが可能になる。これらの影響は、特に顆粒混合物の分布密度関数の最大値がかなり離れている場合に生じる。
【0033】
粗粒画分及び/又は細粒画分がp峰性体積加重分布密度関数を有する場合がさらに好ましい場合があり、ここでp=1~5、好ましくはp=1~3、特に好ましくはp=1又は2である。
【0034】
既に述べたように、異なる粒度分布を有するシリコンの細粒画分は、種々の方法において廃棄物として生成され得、組み合わせると多峰性(p≧2)の細粒画分をもたらし得る。このような細粒画分の購入は、典型的には安価であり、方法の経済性を改善する。このような細粒画分を用いることにより、より粗い標準操作画分を使用することがさらに可能となり、したがって、ミル工場における能力を自由にする。
【0035】
50、fine及びd50、coarseが、0.01~0.99、好ましくは0.02~0.9、特に好ましくは0.03~0.7、特に0.04~0.6の粒径比(GSR)d50、fine/d50、coarseに存在する場合が好ましい。また、GSRは粒子径比とも呼ぶことができる。
【0036】
細粒画分及び粗粒画分は、0.01~99、好ましくは0.05~20、特に好ましくは0.09~10、特に0.1~4の質量比(MR)m(細)/m(粗)で存在することが好ましい。
【0037】
顆粒混合物が、0.01~2000、好ましくは0.1~500、特に好ましくは1~100、特に1.5~10の粒度分布のスパン(d90-d10)/d50を有する場合が好ましい。
【0038】
接触剤は特に顆粒混合物である。接触剤にそれ以上の成分が含まれていない場合が好ましい。ここで好ましいのは、不純物として5重量%以下、特に好ましくは2重量%以下、特に1重量%以下の他の元素を含むシリコンである。ここで好ましいのは、典型的には98%~99.9%の純度を有するSimgである。典型的な組成は、例えば98%のシリコンを含む組成物であり、残りの2%は、一般に主として以下の元素、すなわち、Fe、Ca、Al、Ti、Cu、Mn、Cr、V、Ni、Mg、B、C、P及びOから構成される。以下の元素、すなわち、Co、W、Mo、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Zr、Ge、Sn、Pb、Zn、Cd、Sr、Ba、Y及びClも存在してもよい。しかし、75%~98%というより低い純度を有するシリコンの使用も可能である。しかし、シリコンの割合が75%を超える場合、好ましくは85%を超える場合、特に好ましくは85%を超える場合が好ましい。
【0039】
不純物としてシリコン中に存在する元素のいくつかは触媒活性を有する。したがって、触媒の添加は原則として不要である。しかし、追加の触媒の存在は、特にその選択率に関して、方法にプラスの効果を有し得る。
【0040】
一実施形態において、採用されるシリコンは、Simg及び超高純度シリコン(純度>99.9%)の混合物である。換言すると、Simg及び超高純度シリコンからなる顆粒混合物が関与している。ここで、Simgの割合が、顆粒混合物の総重量に基づいて、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%、特に好ましくは少なくとも90重量%である場合が好ましい。超高純度シリコンは特に細粒画分の構成成分である。さらに、細粒画分がもっぱら超高純度シリコンを含むことが可能である。
【0041】
さらなる実施形態では、採用されるシリコンは、Simg及び超高純度シリコンであり、Simgの割合は、顆粒混合物の総重量に基づいて50重量%未満である。ここでは顆粒混合物/接触剤が触媒を追加的に含む場合が好ましい。超高純度シリコン及び/又は触媒は、好ましくは、細粒画分の構成成分である。細粒画分が超高純度シリコンからなる場合が好ましい。
【0042】
別の実施形態では、採用されるシリコンは、もっぱら超高純度シリコンであり、接触剤/顆粒混合物は触媒を含む。ここでは、触媒が細粒画分の構成成分である場合が好ましい。
【0043】
細粒画分は、例えばシーメンス法又は顆粒法による多結晶(polycrystalline)シリコンの堆積で生成される副生成物であることができる。さらに、細粒画分は、多結晶(polycrystalline)/多結晶(multicrystalline)又は単結晶シリコン(純度>99.9%)の機械的処理で生成される副生成物であってもよい。副生成物として発生した超高純度シリコン粉塵は、所望の粒径を得るためのミル工程及び/又は所望の粒径限界を有する顆粒を得るための分級工程に供することができる。
【0044】
超高純度シリコンは、少量のコバルト、モリブデン及びタングステン(一般的には超高純度シリコン中に不純物として既に存在する)の元素の1つの存在下で、原理的にはHCによって変換されることができる。不純物として触媒活性元素を多量に含むSimgによる一般的な変換は必須ではない。しかし、クロロシラン選択率は、触媒の添加によって向上され得る。これは、特に、顆粒混合物中の超高純度シリコンの割合がSimgの割合よりも高い場合、及び/又は顆粒混合物がもっぱら超高純度シリコンを含む場合に、本方法において当てはまり得る。
【0045】
触媒は、Fe、Cr、Ni、Co、Mn、W、Mo、V、P、As、Sb、Bi、O、S、Se、Te、Ti、Zr、C、Ge、Sn、Pb、Cu、Zn、Cd、Mg、Ca、Sr、Ba、B、Al、Y、Clを含む群からの1つ以上の元素であることができる。触媒は、Fe、Al、Ca、Ni、Mn、Cu、Zn、Sn、C、V、Ti、Cr、B、P、O、Cl及びそれらの混合物を含む群から選択されることが好ましい。前述したように、これらの触媒活性元素は、不純物として、例えば、酸化形態若しくは金属形態で、ケイ化物として、又は他の金属相で、又は酸化物若しくは塩化物として、シリコン中に既にある割合で存在する。その割合は採用したシリコンの純度に依存する。
【0046】
触媒は、接触剤に、例えば金属、合金及び/又は塩様形態で添加することができる。触媒活性元素の塩化物及び/又は酸化物が特に関与する場合がある。好ましい化合物は、CuCl、CuCl、CuO又はそれらの混合物である。接触剤はさらに、促進剤、例えばZn及び/又は塩化亜鉛を含むことができる。
【0047】
採用されるシリコン及び接触剤の元素組成は、例えば、X線蛍光分析によって決定され得る。
【0048】
予め調製した顆粒混合物として、流動床反応器に細粒画分及び粗粒画分を供給する場合が好ましい。接触剤のあらゆるさらなる構成成分も、同様にその中に存在し得る。本発明による細粒画分が多いほど、予め調製された顆粒混合物の改善された流動及び運搬挙動をもたらす。
【0049】
細粒画分及び粗粒画分は、特に別々の供給材料及び容器により別々に流動床反応器に供給されることもできる。このように、混合は原則的に流動床の形成時に行われる(インサイチュー)。接触剤のあらゆるさらなる構成成分は、同様に別々に又は2つの粒子画分のうちの1つの構成成分として供給することができる。
【0050】
方法を280℃~400℃、好ましくは320℃~380℃、特に好ましくは340℃~360℃の温度で行う場合が好ましい。流動床反応器内の圧力は、好ましくは0.01~0.6MPa、好ましくは0.03~0.35MPa、特に好ましくは0.05~0.3MPaである。
【0051】
反応ガスは、好ましくは少なくとも50体積%、好ましくは少なくとも70体積%、特に好ましくは少なくとも90体積%のHClを含有する。HClに加えて、反応ガスは、H、HSiCl4-n(n=0~4)、HCl6-mSi(m=0~6)、HCl6-qSiO(q=0~4)、CH、C、CO、CO、O、Nを含む群から選択される1つ以上の成分をさらに含むことができる。これらの成分は、集積システムで回収されたHClに由来する場合がある。HCl及びシリコンは、5:1~3:1、好ましくは4:1~3:1、特に好ましくは3.6:1~3:1、特に3.4:1~3.1:1のHCl/Siモル比で存在することが好ましい。HCl及び接触剤/顆粒混合物又はそれらの粒子画分は、特に、上記の比率が確立されるように、反応中に連続的に添加される。
【0052】
流動床の高さと応器直径との割合が10:1~1:1、好ましくは8:1~2:1、特に好ましくは6:1~3:1である場合が好ましい。流動床の高さは、流動床の厚さ又は広がりである。
【0053】
本発明による方法で製造されるクロロシランは、モノクロロシラン、ジクロロシラン、TCS、SiCl及びHSiClを含む群から選択される少なくとも1種のクロロシランであることが好ましい。TCSが関与する場合が特に好ましい。
【0054】
本発明による方法は、多結晶(polycrystalline)シリコンを製造するための集積システムに組み込まれることが好ましい。集積システムは、特に以下の処理を含む。
- 記載された方法によるTCSの製造
- 半導体品質のTCSを得るために生産されたTCSの精製
- 好ましくはシーメンス法によるか、又は顆粒としての多結晶(polycrystalline)シリコンの堆積
- 得られた多結晶(polycrystalline)シリコンのさらなる加工
- 記載された方法に従う反応による多結晶(polycrystalline)シリコンの製造/さらなる加工で発生する超高純度シリコン粉塵の再利用
【0055】
図1は、本発明による方法を実施するための流動床反応器1を一例として示す。反応ガス2は、好ましくは下方から、及び任意に側方から(例えば、下方からのガス流に対して接線方向又は直交方向に)接触剤に注入され、これにより接触剤の粒子を流動化して流動床3を形成する。反応は、一般に、反応器の外部に配置された加熱装置(図示せず)によって流動床3を加熱することによって開始される。通常、連続運転中は加熱は必要ない。粒子の一部は、流動床3から流動床3の上方の自由空間4へガス流によって輸送される。自由空間4は、非常に低い固体密度を特徴とし、該密度は反応器流出物の方向に低下する。
【実施例
【0056】
例えばUS4092446に記載されているような流動床反応器で(実施)例を実施した。
【0057】
全ての(実施)例は、純度、品質及び二次元素/不純物の含有率に関して、同じシリコンタイプの細粒画分及び/又は粗粒画分を採用した。チャンクSimgの破砕及びその後のミルによりこれらの粒子画分を製造した。これに続いて、任意にふるい分けによる最終的な分級を行った。粒度分布の測定法は、ISO 13320及び/又はISO 13322に従って行った。全ての(実施)例は以下の方法を採用した。
【0058】
一般的な手順
最初に仕込んだ接触剤床を、流動床が形成されるまで、まず窒素(キャリアガス)の移動流に曝した。流動床の高さと反応器直径との割合は約5の値に設定した。反応器直径は約1mであった。流動床を外部加熱装置で約320℃の温度にした。冷却手段を用いて、実験期間全体にわたってこの温度をほぼ一定に保った。HClを添加し、全実験期間にわたり、流動床の高さが実質的に一定であり、反応体(HCl:Si)の一定モル比が3:1になるようにして、さらに接触剤を仕込んだ。反応器は実験期間全体にわたり0.1MPaの正圧で運転した。48時間及び49時間の運転時間後にそれぞれの液体及びガスサンプルを採取した。生成ガス流(クロロシランガス流)の凝縮可能な部分を-40℃のコールドトラップで凝縮し、ガスクロマトグラフィー(GC)で分析し、TCS選択率及び高沸点溶剤の割合[重量%]を決定するために用いた。検出は熱伝導度検出器により行った。生成物ガス流の凝縮されない部分を、赤外分光計で未変換HCl(体積%)について分析した。48時間後と49時間後の得られた値からそれぞれの平均値を求めた。反応器を完全に空にし、各運転後に新しい接触剤で充填した。
【0059】
[比較例1]
接触剤は、狭い粒度分布(スパン:0.09、ここでd10=631μm及びd90=694μm)を有するSimgの粗粒画分(d50=683μm、範囲限界:600~700μm)のみからなっていた。
【0060】
以下の値を得た。
- 未変換のHClの割合:32体積%
- TCS選択率:91%
- 高沸点溶剤の割合:0.7重量%
【0061】
[比較例2]
接触剤は、より広い粒度分布(スパン:1.62、ここでd10=95μm及びd90=437μm)を有するSimgの粗粒画分(d50=211μm、範囲限界:90~450μm)のみからなっていた。
【0062】
以下の値を得た。
- 未変換のHClの割合:16体積%
- TCS選択率:88%
- 高沸点溶剤の割合:0.7重量%
【0063】
[比較例3]
接触剤は、Simgの細粒画分(d50=48.6μm、範囲限界:<90μm)のみからなっていた。粒度分布のスパンは1.35(d10=18.9μm及びd90=84.3μm)であった。
【0064】
以下の値を得た。
- 未変換のHClの割合:0.7体積%
- TCS選択率:74%
- 高沸点溶剤の割合:0.6重量%
【0065】
[実施例1]
接触剤は、細粒画分及び粗粒画分を含むSimgの顆粒混合物(GM)からなっていた(GSR:0.12、ここでd50、fine=50.4μm及びd50、coarse=420μm、MR:0.43、スパン:5.22、ここでd10、GM=46.0μm及びd90、GM=840μm)。GMのd50は152μmであった。予め調製したGMを最初に床として反応器に仕込み、方法中継続的に供給した。
【0066】
以下の値を得た。
- 未変換のHClの割合:4体積%
- TCS選択率:89%
- 高沸点溶剤の割合:0.2重量%
【0067】
[実施例2]
接触剤は、細粒画分及び粗粒画分を含むSimgの顆粒混合物(GM)からなっていた(GSR:0.12、ここでd50、fine=50.4μm及びd50、coarse=420μm、MR:1.0、スパン:7.51、ここでd10、GM=34.0μm及びd90、GM=680μm)。GMのd50は86μmであった。予め調製したGMを最初に床として反応器に仕込み、方法中継続的に供給した。
【0068】
以下の値を得た。
- 未変換のHClの割合:2体積%
- TCS選択率:88%
- 高沸点溶剤の割合:0.1重量%
【0069】
この結果は、本発明による方法が高沸点溶剤の生成を回避することを示す。TCS選択率は比較例と同様に高いレベルにある。
図1