(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】カーボンブラック中でナノカーボンを共処理する方法及びそれから得られる生成物
(51)【国際特許分類】
C01B 32/168 20170101AFI20220613BHJP
C01B 32/15 20170101ALI20220613BHJP
【FI】
C01B32/168
C01B32/15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021014929
(22)【出願日】2021-02-02
(62)【分割の表示】P 2017547432の分割
【原出願日】2016-03-10
【審査請求日】2021-02-03
(32)【優先日】2015-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】593169485
【氏名又は名称】ハイピリオン カタリシス インターナショナル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、チュン
(72)【発明者】
【氏名】テネント、ハワード
(72)【発明者】
【氏名】ホック、ロバート
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-177722(JP,A)
【文献】特表2012-532085(JP,A)
【文献】特開2006-045034(JP,A)
【文献】国際公開第2010/008014(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00 - 32/991
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンブラック中のナノカーボンの分散であって、
50nm未満の最大断面又は直径を有する個々のナノカーボンを有するナノカーボン凝集体と
、カーボンブラック凝集体とを含み、
前記ナノカーボン凝集体は、個々のナノカーボンがSEMによって観察可能であるように、カーボンブラック凝集体中に分散されている、
上記カーボンブラック中のナノカーボンの分散。
【請求項2】
前記ナノカーボン凝集体が、多層カーボンナノチューブ凝集体を含む、請求項1に記載の分散。
【請求項3】
ナノカーボン凝集体とカーボンブラック凝集体とを共処理することによって、組成物を形成する方法であって、
50nm未満の最大断面又は直径を有する個々のナノカーボンを有するナノカーボン凝集体を供給する工程;
主として球体形状を有するカーボンブラック凝集体を供給する工程;及び
個々のカーボンナノチューブが前記ナノカーボン凝集体から放出されることが電子顕微鏡で確認されるように、前記ナノカーボン凝集体と前記カーボンブラック凝集体とを混合する工程、を含む、
上記方法。
【請求項4】
ナノカーボン凝集体とカーボンブラック凝集体とを共処理することによって、組成物を形成する方法であって、
ナノカーボン凝集体を供給する工程;及び
本質的に、50重量%以下のナノカーボン凝集体と50重量%以上のカーボンブラック凝集体とを有する合計100重量%のナノカーボン凝集体及びカーボンブラック凝集体
からなる、組成物を共処理する
工程を含
み、
前記共処理は、個々のカーボンナノチューブが前記ナノカーボン凝集体から放出されることが電子顕微鏡で確認されるように、前記ナノカーボン凝集体と前記カーボンブラック凝集体とを混合することによって達成される、
上記方法。
【請求項5】
前記共処理が、30重量%以下のナノカーボン凝集体と70重量%以上のカーボンブラック凝集体とを有する合計100重量%のナノカーボン凝集体及びカーボンブラック凝集体を共処理することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記共処理が、10重量%以下のナノカーボン凝集体と90重量%以上のカーボンブラック凝集体とを有する合計100重量%のナノカーボン凝集体及びカーボンブラック凝集体を共処理することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記ナノカーボン凝集体が、多層カーボンナノチューブを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
カーボンファイバーとカーボンブラックの分散であって、
カーボンファイバー凝集体とカーボンブラック凝集体とを含み、
カーボンブラック凝集体は、カーボンファイバー凝集体中にカーボンファイバーを分散させ、その分散中の
各カーボンファイバー
及び各カーボンファイバー凝集体は
、本質的に、50nm未満の断面又は直径を有するカーボンナノチューブからなる、
上記カーボンファイバーとカーボンブラックの分散。
【請求項9】
前記カーボンナノチューブが、多層カーボンナノチューブを含む、請求項8に記載の分散。
【請求項10】
カーボンファイバーとカーボンブラックの分散であって、
ナノカーボン凝集体とカーボンブラック凝集体とを含み、
カーボンブラック凝集体は、カーボンファイバー凝集体中にナノカーボン凝集体を分散させ、その分散は
50nmより大きい直径を有する連続炭素繊維を含ま
ず、
ナノカーボン凝集体は、断面又は直径において50nm未満の直径を有する多層カーボンナノチューブからなる、
上記カーボンファイバーとカーボンブラックの分散。
【請求項11】
前記ナノカーボン凝集体が、多層カーボンナノチューブからなる、請求項
10に記載の分散。
【請求項12】
前記ナノカーボン凝集体が、断面又は直径において1ミクロン未満の直径を有する多層カーボンナノチューブからなる、請求項
10に記載の分散。
【請求項13】
前記ナノカーボン凝集体が、少なくとも1つの寸法が0.5ミクロン未満である多層カーボンナノチューブからなる、請求項
10に記載の分散。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2015年3月13日に出願された米国仮出願第62/133,256号と2015年3月10日に出願された米国仮出願第62/177,212号とに基づく利益を主張し、その各々を参照により援用する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
(概要)
本明細書では、ナノカーボンをカーボンブラック中に分散させる方法を提供する。以下に記載する例では、ナノチューブ、グラフェン、バッキーボール、ナノホーン等のナノカーボンとカーボンブラックとを一緒に混合して、ナノカーボンとカーボンブラックとの一体化を容易にすることができる。ナノカーボンとカーボンブラックとの混合物は、ナノカーボンをカーボンブラック中に分散させるのを助け、さらに、ナノカーボンとカーボンブラックとの混合物をエラストマー等の媒体内に分散させるのを助けることができる。
【0003】
さらに、本明細書では、ナノカーボンとカーボンブラックを、ゴム又は熱可塑性樹脂等のポリマーに分散させる方法を提供する。この方法は、ナノカーボンとカーボンブラックとを前処理して、「緩やかな(loosened)」凝集体(aggregates)にし、その後、その緩やかな凝集体をポリマーと組合せることを含むことができる。緩やかな凝集体をポリマーと組合せることにより、ナノカーボン-カーボンブラック-ポリマーの生成物の特性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0004】
本明細書の一部に組込まれ且つ構成する添付の図面により、請求項に係る発明の実施形態の例を示す。
【0005】
【
図1】
図1A-
図1Bは、カーボンナノチューブの走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【0006】
【0007】
【
図3】
異なる条件下で共処理されたナノカーボン及びカーボンブラックのサンプル
のSEM写真である。
【
図4】
異なる条件下で共処理されたナノカーボン及びカーボンブラックのサンプル
のSEM写真である。
【
図5】
異なる条件下で共処理されたナノカーボン及びカーボンブラックのサンプル
のSEM写真である。
【
図6】
異なる条件下で共処理されたナノカーボン及びカーボンブラックのサンプル
のSEM写真である。
【
図7】
異なる条件下で共処理されたナノカーボン及びカーボンブラックのサンプル
のSEM写真である。
【
図8】
異なる条件下で共処理されたナノカーボン及びカーボンブラックのサンプル
のSEM写真である。
【
図9】
異なる条件下で共処理されたナノカーボン及びカーボンブラックのサンプル
のSEM写真である。
【
図10】
異なる条件下で共処理されたナノカーボン及びカーボンブラックのサンプ
ルのSEM写真である。
【
図11】
異なる条件下で共処理されたナノカーボン及びカーボンブラックのサンプ
ルのSEM写真である。
【
図12】
異なる条件下で共処理されたナノカーボン及びカーボンブラックのサンプ
ルのSEM写真である。
【
図13】
異なる条件下で共処理されたナノカーボン及びカーボンブラックのサンプ
ルのSEM写真である。
【
図14】
異なる条件下で共処理されたナノカーボン及びカーボンブラックのサンプ
ルのSEM写真である。
【
図15】
異なる条件下で共処理されたナノカーボン及びカーボンブラックのサンプ
ルのSEM写真である。
【
図16】
異なる条件下で共処理されたナノカーボン及びカーボンブラックのサンプ
ルのSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(詳細な説明)
以下の詳細な説明は、添付図面を参照する。異なる図面における同じ参照番号は、同一又は類似の要素を特定する場合がある。さらに、以下の詳細な説明は、本発明の実施形態を説明し、本発明を限定することを意図するものではない。
【0009】
A.概要
【0010】
いずれの理論にも拘束されることを望まないが、カーボンブラック凝集物(agglomerates)内のカーボンブラックは、ナノカーボン凝集物中の個々のナノカーボンと同じサイズ範囲の一次粒子を有し、静電気力又は機械的力(その不規則な構造のために)を介して、個々のナノカーボンにそれ自体を付着させることができると考えられる。これらの力により、個々のナノカーボンは、元のナノカーボン凝集体(aggregates)から解凝集化(deagglomerate)する。一旦、解凝集化すると、個別化されたナノカーボンは、カーボンブラックが、個々のナノカーボンを他の個々のナノカーボンから離して保持するように、個々のカーボンブラック粒子と凝集物との間の隙間の空間内に適合できる特定の大きさである。換言すると、ナノカーボンとカーボンブラックとの間の密接な接触、及び物理的共処理によってもたらされる小さな領域内で作用する剪断力により、解凝集化及び個別化されたナノカーボンの個別性の維持を引き起こすと考えられる。
【0011】
B.ナノカーボン
【0012】
「ナノカーボン」の用語は、ナノサイズのカーボンを指し、カーボンナノチューブ、ナノグラフェンカーボン、バッキーボール及びナノホーンを含むことができる。カーボンナノチューブは、ナノカーボンの好ましい形態である。
【0013】
一般に、ナノカーボン及びナノグラフェンカーボンにおいて使用される「ナノ」の接頭語の使用は、材料の少なくとも1つの寸法が、100nm未満であり、少なくとも1つの寸法のサイズスケールが、1ミクロン未満、0.5ミクロン未満、0.2ミクロン未満、100nm未満、50nm未満、20nm未満、又は5ナノメートル未満である材料を含むことができることを意味する。さらに、ナノカーボンは、一般に、表面積及び導電性が高いなどの望ましい特性を有する;例えば、カーボンナノチューブの基本特性を参照されたい。
【0014】
ナノカーボンは、様々な形態で存在することができ、金属表面における様々な炭素含有ガスの接触分解によって調製することができる。これらには、Tennentらの米国特許第6,099,965号及びMoyらの米国特許第5,569,635号に記載されているものが含まれ、これらの両方を、全体において、参照により本明細書に援用する。
【0015】
一実施形態では、ナノカーボンは、担持された又は浮遊している触媒粒子によって媒介される炭化水素又はCO等の他のガス状炭素化合物から触媒的成長によって作製することができる。
【0016】
製造される場合、ナノカーボンは、個別のナノカーボン(すなわち、分離された個々のナノカーボン)、ナノカーボンの凝集体/凝集物(aggregates/agglomerates)(すなわち、緻密で絡み合ったナノカーボン)、又はその両方の混合物の形態であり得る。ナノカーボンの凝集体は、絡み合ったナノカーボンの緻密な粒子状構造であり得る。
【0017】
凝集体は、ナノカーボンの製造の間に形成することができ、凝集体の形態は、触媒担体の選択によって影響され得る。完全にランダムな内部組織を有する多孔質担体、例えば、ヒュームドシリカ又はヒュームドアルミナは、ナノカーボンをあらゆる方向に成長させて、凝集体を形成することができる。
【0018】
本明細書で使用する場合、ナノカーボン凝集物(agglomerates)は、複数のナノカーボン凝集体(aggregates)から構成され、それらは、互いに付着しているか、あるいは多数の凝集体による単一の凝集化(agglomeration)をなす。ナノカーボン凝集体は、その構造をナノカーボン凝集物において保持することができる。
【0019】
さらに、ナノカーボンは、標準的なグラファイト及びカーボンブラック等の他の形態の炭素とは物理的及び化学的に異なる。標準的なグラファイトは、定義上、繊維状ではなく平らな形状である。カーボンブラックは、不規則な形状の非晶質構造であり、一般に、sp2及びsp3結合の両方が存在することを特徴とする。一方、ナノカーボンは、規則的なグラファイト炭素原子の1つ以上の層を有する。これらの違いにより、とりわけ、グラファイト及びカーボンブラックは、ナノカーボン-ポリマー構造の特性の予測因子とするには不十分なものとなる。
【0020】
ナノカーボンの1つの形態は、カーボンナノチューブである。「カーボンナノチューブ」、「フィブリル」、「ナノファイバー」及び「ナノチューブ」の用語は、単一層(single wall)(すなわち、ナノチューブ軸に平行な単一のグラフェン層のみ)、及び/又は多層(multi-wall)(すなわち、ナノチューブ軸にほぼ平行な2つ以上のグラフェン層)のカーボンナノチューブを指し、追加的に官能化され、又は、構造化の低い非晶質炭素の外層を有していてもよい(注:所望であれば、他の形態のナノカーボンもまた官能化され得る。)。
【0021】
カーボンナノチューブは、例えば多層カーボンナノチューブの場合、100nm未満、好ましくは50nm未満、より好ましくは20nmであり、又は例えば、単一層ナノチューブの場合、5ナノメートル未満である、断面(例えば、エッジを有する角張った繊維)又は直径(例えば、丸みを帯びた)を有する細長い構造を有する。他のタイプのカーボンナノチューブ、例えばフィッシュボーンフィブリル(例えば、グラフェンシートが、ナノチューブ軸に対してヘリンボンパターンで配置されている)、「バッキーチューブ」なども知られている。
【0022】
カーボンナノチューブの凝集体は、鳥の巣(「BN」)、綿菓子(「CC」)、コーマ糸(「CY」)、オープンネット(「ON」)の形態又は他の形態に似ている場合がある。さらに、カーボンナノチューブは、平坦な支持体上で、一方の端部によって支持体に付着し、互いに平行に成長して、「森林」構造を形成することができる。
【0023】
凝集体中の個々のカーボンナノチューブは、特定の方向に(例えば、「CC」、「CY」及び「ON」凝集体におけるように)配向することができ、又は非配向である(すなわち、例えば、「BN」凝集体におけるように、異なる方向にランダムに配向する)ことができる。例えば、「BN」構造は、米国特許第5,456,897号に開示されているように調製することができ、参照によりその全体を本明細書に援用する。「BN」凝集物は、0.08g/ccを超える、例えば0.12g/ccの典型的な密度でしっかりと詰め込まれる。透過型電子顕微鏡(「TEM」)により、「BN」凝集物として形成されたカーボンナノチューブについては真の配向を示さないことがわかる。「BN」凝集物を製造するために使用される方法及び触媒を記載している特許には、米国特許第5,707,916号及び第5,500,200号が含まれ、これらの両方は、参照によりその全体を本明細書に援用する。
【0024】
図1A及び
図1Bは、カーボンナノチューブのSEM写真である。
図1A及び
図1Bに示すように、カーボンナノチューブ(
図1AではBN型、
図1BではCC型)は、カーボンナノチューブ凝集物構造を示す。作製したままのカーボンナノチューブ凝集物は、乾燥状態では首尾よく解凝集化されていない。むしろ、この文脈における解凝集化は、かなりの数の個別化されたチューブが形成されること、又は作製したままの凝集物が本質的に完全に存在しないこと、のいずれかを示す。液相中での解凝集化さえ、超音波等の実質的なエネルギー源を使用する必要があり得る。参照により本明細書に援用され、共有されている米国特許第5,691,054号を参照されたい。
【0025】
一方、「CC」、「ON」及び「CY」の凝集物は、より低い密度、典型的に0.1g/cc未満、例えば0.08g/ccを有し、それらのTEMにより、ナノチューブの好ましい配向がわかる。米国特許第5,456,897号は、平面支持体上に担持された触媒からこれらの配向凝集物の製造を記載しており、平面支持体上に担持された触媒からのこれらの配向凝集物の製造を記載しており、その全体を参照により本明細書に援用する。さらに、「CY」は、一般的に、個々のカーボンナノチューブが配向している凝集体を指し、「CC」凝集体は、「CY」凝集体のより特異的な、低密度形態である。
【0026】
カーボンナノチューブは、市販のいわゆる「連続炭素繊維」とは区別される(すなわち、市販のナノチューブサイズの炭素繊維よりも大きい)。例えば、連続炭素繊維の直径(常に1.0ミクロンよりも大きく、典型的に5から7ミクロンである)は、通常1.0ミクロン未満であるカーボンナノチューブの直径よりも遥かに大きい。カーボンナノチューブは、そのサイズがより小さいので、ポリマーへの添加剤として同じ量で供給される場合、炭素繊維よりも導電性を高めることが多い。
【0027】
本明細書中で使用される場合、カーボンナノチューブは、その作製したままの凝集形態(as-made agglomerated form)で使用することができ、又は例えば乳鉢と乳棒、ボールミル、ロッドミル、ハンマーミル等によって前処理して、凝集物の最大サイズを小さくすることができる。追加的に、作製したままのナノチューブを、例えばリン酸等の強酸又は強塩基で洗浄して、カーボンナノチューブが成長する触媒及び担体を溶解することができる。
【0028】
ナノカーボンの別の形態は、ナノグラフェンカーボンである。「ナノグラフェンカーボン」の用語は、ナノサイズの炭素を指すことを意図し、ナノスケール及びグラフェン構造を有する炭素を含むことができる。例えば、ナノグラフェンカーボンは、微視的スケールのグラファイトを含むことができるが、巨視的スケールのグラファイトは含まない。ナノグラフェンカーボン、グラフェン又はグラファイトナノ粒子の1つのタイプは、1シート以上のグラファイトカーボンとして記載することができる。例えば、グラフェンは、1シートのグラファイトカーボン、又は数シートの炭素を有するナノプレートレットを含むことができる。グラフェンは、上述したように、カーボンナノチューブと同じ程度のサイズを有し、一方向の寸法が、1ミクロン未満、0.5ミクロン未満、0.2ミクロン未満、100nm未満、50nm未満、20nm未満、又は5ナノメーター未満である構造を有することができる。
【0029】
ナノカーボンの別の形態は、バッキーボールである。バッキーボールは、バックミンスターフラーレンとしても知られており、ボールに似た球状構造に配置された炭素である。バッキーボールは、60個の炭素原子から構成されており、1nmから2nm程度の寸法を有する。
【0030】
ナノカーボンの別の形態は、ナノホーンである。ナノホーンは、グラフェンシートのスタックのホーン形状の凝集体である。単層及び多層の両方のカーボンナノチューブは、ナノホーンのカテゴリー内に含まれるが、それらは、1つ以上のグラフェンシートから構成されているからである。さらに、ナノホーンは、一方向の寸法が、1ミクロン未満、0.5ミクロン未満、0.2ミクロン未満、100nm未満、50nm未満、20nm未満、又は5ナノメートル未満である構造を有する。
【0031】
C.カーボンブラック
【0032】
「カーボンブラック」の用語は、様々なサイズの炭素凝集体を有する炭素粉末を含むことを意図している。一般に、カーボンブラック凝集体は、隣接する粒子間の強い引力のために、分散させるのが困難であり得る。カーボンブラック粒子をカーボンブラック凝集体から分散させるのが困難なので、カーボンブラック粒子は、ナノカーボンについて上述したように、媒体内での剪断混合、乾式剪断、及び湿式剪断等の、分散のためにナノカーボンにしたのと類似の処理に供してきた。
【0033】
カーボンブラックは、すべての製造者によって使用されるASTM規格に従って命名される。さらに、カーボンブラックは、それらの多孔性により特徴付けることができる。カーボンブラックの多孔性については、Porosity in Carbons Patrick、J.W.編、Halsted Press、1995年に記載されており、これを参照により本明細書に援用する。
【0034】
カーボンブラック凝集物の分散についての検討は、例えば、文献において見出すことができる。Pomchaitawardaらの「単純剪断流における様々なサイズのカーボンブラック凝集物の分散に関する研究(Investigation of the dispersion of carbon black agglomerates of various sizes in simple-shear flows)」Chem.Eng.Sci.58巻(2003年)、1859-1865頁を参照されたい。
【0035】
図2A及び
図2Bは、異なる供給源からのカーボンブラックのSEM写真である。
図2Aは、マサチューセッツ州、ボストンのCabot Corporationから供給された、倍率100,000倍のCabot Sterling 1120 カーボンブラックである。
図2Bは、テキサス州、ヒューストンのContinental Carbon Companyから供給された、倍率200,000倍のContinental Carbon N330である。
図2A及び
図2Bに示すように、供給されたカーボンブラックは、凝集している。
【0036】
D.共処理されたナノカーボン及びカーボンブラック
【0037】
共処理されたナノカーボン及びカーボンブラックは、様々な濃度で、並びに共処理を促進するための異なる方法を用いて調製した。ナノカーボンとカーボンブラックとを共処理することにより、ナノカーボン凝集体のカーボンブラック凝集体への分散を観察することができる。具体的には、共処理によって、以下にさらに記載するように、より緩やかなナノカーボン凝集体及び個別化されたナノカーボンを得ることができる。
【0038】
以下に提供した実施形態では、ナノカーボンとカーボンブラックとの混合物の組成は、ナノカーボンが0.001重量%から99.999重量%(カーボンブラックは99.999重量%から0.001重量%)で変化し得る。例えば、ナノカーボンが2重量%から50重量%の場合、ナノカーボンは、カーボンブラック中へ、例えば、ナノカーボン凝集体50重量%以下とカーボンブラック凝集体50重量%以上、ナノカーボン凝集体30重量%以下とカーボンブラック凝集体70重量%以上、又はナノカーボン凝集体10重量%以下とカーボンブラック凝集体90wt%以上にて分散することができる。別の例として、ナノカーボンが5重量%から50重量%の場合、ナノカーボンは、カーボンブラック中で個別化することができる。
【0039】
Wuらの米国特許第8,771,630号には、グラフェン及びグラフェンの調製法が記載されており、これを参照により本明細書に援用する。この特許では、一般にグラフェンと同様に、グラフェンの分散が論じられている。
【0040】
Singhらの論文「ポリマー-グラフェンナノコンポジット:調製、特徴付け、特性及び用途(Polymer-Graphene Nanocomposites: Preparation, Characterization, Properties, and Applications)」、Nanocomposites-New Trends and Developments、Ebrahimi、F.(編)、InTech(2012年)では、Singhらは、グラファイト、ダイヤモンド、フラーレン、及びカーボンナノチューブ等の炭素同素体についてさらに論じられており、これを、参照により本明細書に援用する。Singhらは、「表面積が高いグラフェンシートは、不可逆的な凝集物とリスタックを形成して、p-pスタッキングとファンデルワールスの相互作用によってグラファイトを形成する傾向があるので、単層グラフェンの作製は、周囲温度においては困難である・・・」と論じている。38頁のパラグラフ全体の中間箇所を参照されたい。Singhらは、グラフェンを形成する方法をさらに論じている。さらに、Liらの「グラフェンナノシートの処理可能な水性分散(Processable aqueous dispersions of graphene nanosheets)」Nature Nanotechnology、3(2)巻、(2008年)101~105頁(これを、参照により本明細書に援用する。);及びParkらの「グラファイト酸化物及びグラフェン酸化物のヒドラジン還元(Hydrazine-reduction of graphite- and graphene oxide)」Carbon 49巻(2011年)3019~3023頁(これを、参照により本明細書に援用する。)を参照されたい。
【0041】
以下に記載するように、ナノカーボンをカーボンブラック中で共処理することにより、凝集体を破壊することができ、個々のナノカーボンをSEMで観察することができる。
【0042】
理論に拘束されることを望まないが、ナノカーボンとカーボンブラックとの共処理によって、最初にナノカーボン凝集体を緩めることができると考えられる。ナノカーボン凝集体の緩みは、SEMで観察可能な「雲」様の(“cloud”-like)大きな緩やかな凝集体であるように見え得る。さらに処理することによって、これらの緩やかな凝集体を、個々のナノカーボンに転化することができ、これもまた、SEMで観察することができる。これらの緩やかな凝集体は、出発物質のナノカーボンからナノカーボンの距離のものよりも大きいナノカーボンからナノカーボンの距離を有することができる。例えば、カーボンナノチューブの緩やかな凝集体では、カーボンナノチューブは、以下に記載するサンプルで観察されるように、約10ナノメートル(nanotubes)又は約100nmの距離で分離し得る。
【0043】
例えば、カーボンナノチューブ凝集体では、これらの「雲」様の共処理されたカーボンナノチューブ-カーボンブラックは、カーボンナノチューブ-カーボンブラック凝集体内で、カーボンナノチューブを他のカーボンナノチューブから分離することによって、出発時の作製したままのカーボンナノチューブ凝集体と区別することができる。
【0044】
ナノカーボンとカーボンブラックとの共処理は、乾燥状態又は湿潤状態で行うことができる。処理において、液体を添加及び除去するためのより少ない工程を必要とし得るので、乾燥状態の共処理が好ましい場合がある。一方、ナノカーボン、カーボンブラック、又はその両方が湿潤形態で提供される場合には、湿潤状態の共処理が好ましい場合がある。例えば、カーボンナノチューブ及びカーボンブラックが、湿潤形態で提供される場合、湿潤状態での共処理が、より少ない工程を必要とし得るので、好ましい場合がある。
【0045】
湿式前処理の場合、ナノカーボン及びカーボンブラックを、任意の順序で液体に添加してもよく、又は、液体を、任意の順序でナノカーボン及びカーボンブラックに再び添加してもよい。使用される液体の量は、使用される前処理装置のタイプに応じて、混合される固体1ポンド当り、0.10ポンドから100ポンドの範囲であってよい。任意の液体を使用することができるが、水が好ましい液体である。有機液体及び超臨界CO2等の超臨界媒体もまた使用することができる。前処理の後、添加された液体の大部分は、処理された固体から、例えばデカントによって容易に除去することができる。最終的な液体の除去は、好ましくは、残留液体を固体から揮発させることによってなされる。
【0046】
乾式共処理は、添加された媒体の存在の有無にかかわらず、乾燥粉末を緊密に混合するために使用される任意のタイプの装置又はそのような装置の組合せ、例えば、ボールミル、タンブリングと撹拌の両方、ロッドミル、乳鉢と乳棒、バンバリー(Banbury)ミキサー、2本及び3本のロールミル、ウォーリング(Waring)ブレンダー及び類似の攪拌装置で行うことができる。
【0047】
湿式共処理は、乾式前処理で使用される任意のタイプの装置、マイクロフルイダイザーを含むジェットミル、及び任意のタイプのインペラーを備えた任意の種類の攪拌容器を使用することができる。
【0048】
ナノカーボン-カーボンブラック混合物の意図した用途に応じて、個別化(individualization)工程は、上記の共処理工程において行うことができ、又はポリマー若しくは他の材料の存在下で次の配合工程において行うことができる。この配合工程は、二軸スクリュー押出機及び一軸スクリュー押出機、バンバリーミキサー、ブラベンダーミキサー、2本及び3本ロールミル等の押出機を含む、ポリマーへ添加剤を配合するのに使用される既知のタイプの装置のいずれかで行うことができる。
【0049】
以下に提供した実施形態においても、物理的混合等の分散方法を利用して、カーボンブラック中にナノカーボンを分散させることができる。例えば、乳鉢と乳棒(手動又はモーター付)、振とう機(添加媒体の存在下又は非存在下)、及びタンブラー(媒体の存在下又は非存在下)については、以下の実施形態で論じるが、他の機械的手段もまた使用することができる。
【0050】
表は、ナノカーボン及びカーボンブラックの共処理のいくつかの例をまとめたものである。以下の表に示すように、ナノカーボンの供給源及び形態、カーボンブラック及び形態、ナノカーボン対カーボンブラックの比、装置の種類、混合パラメータ、例えば時間、強度等は、結果として得られる共処理されたナノカーボン-カーボンブラック生成物に影響を与える可能性がある。
【0051】
【0052】
サンプル1は、受領したままの(as-received)xGnP(登録商標)グラフェンナノプレートレット(グレードM、XG Sciences社)0.30gを、カーボンブラックN330(Columbian Chemicals社)2.70gと混合して得られたN330中グラフェン10%から形成する。混合物を、モーター付乳鉢と乳棒(モデル:Retsch、Brinkmann、タイプ:RMO)を用いて30分間粉砕する。
【0053】
サンプル2は、受領したままのxGnP(登録商標)グラフェンナノプレートレット(グレードM、XG Sciences社)0.10gを、カーボンブラックN330(Columbian Chemicals社)1.90gと混合して得られたN330中グラフェン5%から形成する。混合物を、粉砕媒体としてPA12(ポリアミド12)顆粒(OD2~6mm)10gと共にバッフルを備えたスチールパイプ製のタンブラーに入れ、ローラー(モデル:Tru-Square Metal Products)を用いて120rpmにて4時間、回転させる。
【0054】
サンプル1及び2をSEMで調べたところ、グラフェンナノプレートレットは、カーボンブラック中で十分に分散していることがわかった。個々のナノプレートレットは、SEM内のサンプル1及び2の各々において観察することができる。
【0055】
サンプル3は、カーボンナノチューブ(CC形状;Fitzpatrickのハンマーミルで予め粉砕したもの、以後「粉砕CC」と言う。)0.10gとCabot Sterling1120カーボンブラック0.90gとを、ステンレススチールシリンダー中で混合して形成する。シリンダーを、高振動数にてRetsch Brinkmann Shakerを用いて、60の設定で4時間、振とうした。
【0056】
図3は、サンプル3の倍率50,000倍のSEM写真であり、多数の個々のナノチューブと緩やかな凝集体とを示している。カーボンブラックの凝集物構造は本質的に変化していないように見える。
【0057】
サンプル4は、粉砕したままのカーボンナノチューブ粉末0.10gと、Cabot Sterling NS1120カーボンブラック0.90gとを、乳鉢と乳棒とを用いて、室温にて1時間、手動で粉砕して、共処理して形成する。サンプルは、サンプル3で使用した手順に従って、SEM用に調製した。
【0058】
図4は、共処理されたカーボンナノチューブ粉末とカーボンブラックであるサンプル4の倍率100,000倍のSEM写真である。
図4に示すように、多数の個別化されたカーボンナノチューブを観察できるが、その理由は、カーボンナノチューブが、カーボンブラック中に分散しているためである。
【0059】
サンプル5は、作製したままのCCカーボンナノチューブ0.1gと、Cabot Sterling NS1120カーボンブラック0.90gとを、サンプル3と同じ条件(装置及び時間)下で、共処理して形成する。
【0060】
図5は、サンプル5の倍率100,000倍のSEM写真であり、長さが1ミクロンの半分を超え、幅が約200nmの「雲」様構造であるように見える緩やかな凝集体を示している。
【0061】
サンプル6は、作製したままのBNカーボンナノチューブ0.1gと、Cabot Sterling 1120カーボンブラック0.90gとを、不規則な球形(OD2~6mm)のPA12媒体を入れたプラスチックタンブラー中で、120rpmにて4時間、共処理することによって形成する。
【0062】
図6は、サンプル6の倍率100,000倍のSEM写真であり、多数の緩やかなカーボンナノチューブ凝集体を示している。
【0063】
サンプル7は、粉砕したままのCCカーボンナノチューブ0.1gと、Cabot Sterling 1120カーボンブラック0.90gとを、サンプル6と同じ条件下で、共処理して形成する。
【0064】
図7は、サンプル7の倍率50,000倍のSEM写真であり、長さが1ミクロンを超える「雲」様構造を有する緩やかな凝集体の存在を示している。
【0065】
サンプル8は、作製したままのCCカーボンナノチューブ0.3gと、Cabot Sterling 1120カーボンブラック0.70gとを、乳鉢と乳棒を使用して、30分間、手動で粉砕して、共処理して形成する。
【0066】
図8A~
図8Bは、サンプル8の異なる倍率のSEM写真である。
図8Aに示すように、倍率50,000倍において、多数の緩やかな凝集体が存在している。
図8Bに示すように、倍率100,000倍において、多数の個々のナノチューブが示されている。前述のように、カーボンブラック凝集体の構造は、変わらないようである。
【0067】
サンプル9は、BNカーボンナノチューブ0.05gと、Cabot Sterling 1120カーボンブラック0.95gとを共処理して形成し、サンプル10は、BNカーボンナノチューブ0.02gと、Cabot Sterling 1120カーボンブラック0.98gとを、PA12媒体を入れたプラスチックタンブラーを使用して、120rpmにて4時間、共処理して形成する。
【0068】
図9及び
図10は、それぞれサンプル9及びサンプル10のSEM写真であり、個々のナノチューブ及び緩やかな凝集体を、倍率100,000倍にて示している。
【0069】
サンプル11は、CCカーボンナノチューブ0.10gと、Continental N330カーボンブラック1.90gとを、乳鉢と乳棒を使用して、30分間、手動で粉砕して、共処理して形成する。さらに、個々のナノチューブは、
図11に示すように、倍率100,000倍で観察される。
【0070】
サンプル12は、作製したままのBNカーボンナノチューブ2.50gと、Cabot Sterling 1120カーボンブラック47.50gとを共処理して形成する。混合物を、セラミックジャーにセラミックロッドと共に入れ、60rpmにて2時間、回転させる(小さなマシュマロ様ロッドの体積は、ジャー容積の約半分である)。短くなったナノチューブが観察される(図示せず)。
【0071】
サンプル13は、バッフルを備えたスチールパイプを用いて回転させて共処理する。カーボンブラックN330(Columbian)中BN10重量%の混合物2.0gを、PA12顆粒10gと共に、パイプに装入した。タンブラーを、120rpmにて4時間、回転させた。サンプル13のSEM画像(提供せず)は、凝集物が観察されていないサンプル9及び10(
図9及び
図10)のSEM画像と同様の個々のナノチューブのセットを示した。
【0072】
サンプル14は、カーボンブラックN330中BN10重量%について2.0gを、テフロン(登録商標)ボトルに、ステンレススチールボール(OD1/8インチ)(スチールボールの体積は、ボトル容積の約50%である)と共に装入して共処理し、120rpmにて2時間、回転させた。倍率100,000倍において、個々のチューブの存在と凝集物の非存在が、
図9及び
図10と同様に観察された、したがって、顕微鏡写真は、提供していない。カーボンブラック凝集体の構造は、変わっていないように見える。
【0073】
サンプル15は、CCカーボンナノチューブ0.05gと、カーボンブラックN330(Columbian)0.95gとを、乳鉢と乳棒において30分間、一緒に混合して共処理する。
【0074】
図12は、サンプル15の倍率198,000倍のSEM写真であり、長さ1ミクロンに近づく個々のナノチューブと緩やかな凝集体の両方の構造の存在を示している。カーボンブラック凝集体の構造は、変化していないように見える。
【0075】
サンプル16は、BNカーボンナノチューブ0.3gと、カーボンブラックN330について0.7gとを、乳鉢と乳棒において30分間、手動で粉砕して共処理する。
【0076】
図13は、サンプル16の倍率200,000倍のSEM写真である。個別化されたナノチューブは、目立つが、凝集体は見られない。カーボンブラック凝集体の構造は、変化していないように見える。
【0077】
サンプル17は、作製したままのBN粉末5gと、N330カーボンブラック45gとを、ワーリングブレンダー(Waring Blender)(モデル:Blender7012G、コネチカット州のトリントンのWaring Commercial製)に添加し、最低速度にて10分間、処理して共処理する。密度は、0.39g/ccとして測定した。
【0078】
図14は、サンプル17の倍率100,000倍のSEM写真であり、カーボンブラック凝集体構造中の個別化されたカーボンナノチューブを示しており、カーボンブラック凝集体の構造は変化していないように見える。
【0079】
サンプル18は、作製したままのBN粉末5gと、N330カーボンブラック45gとを一緒に、(サンプル17で行ったように)ワーリングブレンダー中で10分間、低い速度で最初に処理して、共処理した。その後、得られた混合物を、モーター付乳鉢と乳棒に移し、10分間、20分間及び30分間、さらに処理して、共処理された材料を完成させた。タップ密度は、10分間で0.31g/ccに低下する。20分間の処理にて、サンプルを取出し、前述のように、顕微鏡検査用に調製する。
【0080】
図15は、20分間の更なる処理の後のサンプル18の倍率200,000倍のSEM写真であり、カーボンブラック凝集体の構造中の個々のナノチューブの存在を示しており、カーボンブラック凝集体の構造は変化していないように見える。
【0081】
サンプル19は、作製したままのBNナノチューブ10重量%と、N330カーボンブラック90重量%とを、スパチュラを用いて、軽く混合して共処理した。混合物19gを、バンバリー(Banbury)型ミキサーの動作に類似して設計されたブラベンダー(Brabender)ミキサー(モデル:Plasti-Corder DR-2052-K13、ニュージャージー州のサウス・ハッケンサックのC.W.Brabender Instruments社製)の二軸スクリュー混合ヘッドに移す。混合物を、100rpmにて1時間、処理する。タップ密度は、0.28g/ccに低下する。個別化されたナノチューブと緩やかな凝集体の両方が観察される。サンプル19は、サンプル18(
図14)と類似して見えるので、サンプル19のSEM写真は、提供しない。
【0082】
サンプル20は、上記サンプル19において調製した10重量%のBN/N330混合物5.0gと、脱イオン水7gとを混合して、湿潤ペースト材料を形成して調製する。湿潤ペースト材料を、3本ロールミル(モデル:Keith 27502、ニューヨーク州のリンデンハーストのKeith Machinery社製)に5回通し、薄膜を得、次に、これを真空オーブン中で100℃にて乾燥させる。
【0083】
図16は、サンプル20の倍率100,000倍のSEM写真であり、個々のナノチューブの存在を示している。
【0084】
本明細書に示すように、共処理されたナノカーボン及びカーボンブラックによって、緩やかな凝集体及び/又は個別化されたナノカーボン、例えば個別化されたカーボンナノチューブを提供することができる。これらの緩やかな凝集体及び/又は個別化されたナノカーボンは、ポリマー又は他の材料等のマトリックス中のナノカーボン及び/又はカーボンブラックの分散を改善するのに使用することができる。適切なマトリックス材料には、有機及び無機の両方のポリマー、金属、セラミック、並びにアスファルト、セメント又はガラス等の他の非ポリマーマトリックスが含まれる。ポリマーの例には、加硫性ゴム、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリイミド等の熱硬化性樹脂、又は、ポリオレフィン、アクリル、ナイロン、ポリカーボナート等の熱可塑性樹脂が含まれる。ポリマーと、共処理されたナノカーボン及びカーボンブラックとを組み合わせることによって、ポリマーの特性、例えば弾性率、伸び率等を改善することができる。
【0085】
当業者であれば、個別化されたナノチューブの存在と大きな密集した凝集体の非存在とによって、破壊伸びを犠牲にすることなく、引張弾性率、靱性、硬度、デュロメーター、爆発性剥離に対する抵抗性、引裂き抵抗性、緩和時間等の特性が改善された複合体が得られることを期待するであろう。
【0086】
さらに、マトリックス中の共処理されたナノカーボン及びカーボンブラックに加えて、不活性充填剤及び活性剤等の追加的な添加剤も供給することができる。ナノカーボン-カーボンブラックの緩やかな凝集体をマトリックスに添加する前、添加する間、又は添加した後に、例えば、ガラス、軽石等の不活性充填剤、及び/又は加硫活性剤、離型剤、酸化防止剤、インク又は他の着色剤等の活性剤を、前記マトリックス中の共処理されたナノカーボン及びカーボンブラックに添加することができる。
【0087】
本発明を、その好ましい実施形態を参照して詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、変更及び修正を加えることができ、等価物を利用できることは当業者には明らかであろう。