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▶ アビオメド オイローパ ゲーエムベーハーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】血液ポンプ
(51)【国際特許分類】
   A61M 60/117 20210101AFI20220613BHJP
   A61M 60/216 20210101ALI20220613BHJP
   A61M 60/419 20210101ALI20220613BHJP
   A61M 60/804 20210101ALI20220613BHJP
   A61M 60/825 20210101ALI20220613BHJP
   A61M 60/82 20210101ALI20220613BHJP
【FI】
A61M60/117
A61M60/216
A61M60/419
A61M60/804
A61M60/825
A61M60/82
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021065585
(22)【出願日】2021-04-08
(62)【分割の表示】P 2017549271の分割
【原出願日】2016-03-16
(65)【公開番号】P2021102128
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2021-04-28
(31)【優先権主張番号】15159677.2
(32)【優先日】2015-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507116684
【氏名又は名称】アビオメド オイローパ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジース トルステン
(72)【発明者】
【氏名】アボウルホーセン ワリド
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2003/075981(WO,A1)
【文献】特開2013-053591(JP,A)
【文献】特表2010-534080(JP,A)
【文献】国際公開第2014/109029(WO,A1)
【文献】特表2015-527138(JP,A)
【文献】米国特許第4874300(US,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0060287(KR,A)
【文献】特表2014-528771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 60/117
A61M 60/216
A61M 60/419
A61M 60/804
A61M 60/825
A61M 60/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通路(7)によって接続された血流入口(5)および血流出口(6)を有するポンプケーシング(2)と、
回転軸(9)を中心にして回転可能であるようにして、前記ポンプケーシング(2)内に配置されたインペラ(3)であって、前記通路(7)に沿って前記血流入口(5)から前記血流出口(6)まで血液を運搬するようにサイズおよび形状が決められた羽根(4)を備える、インペラ(3)とを備え、
前記インペラ(3)が、前記インペラ(3)の第1の軸方向端部にある第1の軸受(10)、および前記第1の軸受(10)から軸方向で離間した第2の軸受(20)によって、前記ポンプケーシング(2)内で回転可能に支持され、
前記第1の軸受(10)が、前記回転軸(9)に沿って延在すると共に前記インペラ(3)および前記ポンプケーシング(2)の一方に接続された突出部(11)と、前記インペラ(3)および前記ポンプケーシング(2)の他方にあるキャビティ(13)とを備え、前記突出部(11)が、前記第1の軸受(10)および前記第2の軸受(20)が同じ軸方向で軸方向力を受けるように配置されるようにして、前記キャビティ(13)を係合する拡大部分(12)を備え
前記拡大部分(12)は少なくとも部分的に球状であることを特徴とする血液ポンプ(1)。
【請求項2】
血液ポンプ(1)であって、
通路(7)によって接続された血流入口(5)および血流出口(6)を有するポンプケーシング(2)と、
回転軸(9)を中心にして回転可能であるようにして、前記ポンプケーシング(2)内に配置されたインペラ(3)であって、前記通路(7)に沿って前記血流入口(5)から前記血流出口(6)まで血液を運搬するようにサイズおよび形状が決められた羽根(4)を備える、インペラ(3)とを備え、
前記インペラ(3)が、前記インペラ(3)の第1の軸方向端部にある第1の軸受(10)、および前記第1の軸受(10)から軸方向で離間した第2の軸受(20)によって、前記ポンプケーシング(2)内で回転可能に支持され、
前記第1の軸受(10)が、前記回転軸(9)に沿って延在すると共に前記インペラ(3)および前記ポンプケーシング(2)の一方に接続された突出部(11)と、前記インペラ(3)および前記ポンプケーシング(2)の他方にあるキャビティ(13)とを備え、前記突出部(11)が、前記第1の軸受(10)および前記第2の軸受(20)が同じ軸方向で軸方向力を受けるように配置されるようにして、前記キャビティ(13)を係合する拡大部分(12)を備え、
前記血液ポンプは、前記回転軸(9)に沿って延在すると共に前記回転軸(9)を中心にして回転可能であって、前記インペラ(3)が上に装着されたシャフト(14)を更に備え、前記シャフト(14)が、前記第1の軸受(10)の一部を形成する第1の端部部分(19)と、前記第2の軸受(20)の一部を形成する第2の端部部分(24)とを有することを特徴とする血液ポンプ(1)
【請求項3】
請求項1または2に記載の血液ポンプであって、前記拡大部分(12)がキャビティ(13)内に封入されることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記キャビティ(13)のサイズおよび形状が前記拡大部分(12)に対応することを特徴とする血液ポンプ。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記拡大部分(12)が少なくとも部分的に球状であることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記拡大部分(12)が前記キャビティ(13)にスナップ嵌めされることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記第2の軸受(20)が、前記ポンプケーシング(2)の軸受表面(22)に面する前記インペラ(3)の軸受表面を備える接触型軸受であることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記第2の軸受(20)がピボット軸受であることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項9】
請求項1および3から8のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記回転軸(9)に沿って延在すると共に前記回転軸(9)を中心にして回転可能であって、前記インペラ(3)が上に装着されたシャフト(14)を更に備え、前記シャフト(14)が、前記第1の軸受(10)の一部を形成する第1の端部部分(19)と、前記第2の軸受(20)の一部を形成する第2の端部部分(24)とを有することを特徴とする血液ポンプ。
【請求項10】
請求項2または9に記載の血液ポンプであって、前記シャフト(14)の前記第1の端部部分(19)が前記拡大部分(12)を備えることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項11】
請求項10に記載の血液ポンプであって、前記シャフト(14)が、前記拡大部分(12)の外径に等しい外径を有し、前記突出部(11)が、前記拡大部分(12)と前記シャフト(14)の残りとの間に配置される首部を形成することを特徴とする血液ポンプ。
【請求項12】
請求項2および9から11のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記シャフト(14)の前記第2の端部部分(24)が前記第2の軸受(20)の軸受表面(23)を備え、前記軸受表面(23)が凹状であることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記キャビティ(13)の壁が、ギャップ(18)によって分離された少なくとも2つの区画(17)を備え、前記ギャップ(18)が、前記通路(7)と流体接続しており、血液が前記キャビティ(13)に入ることを可能にすることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記第2の軸受(20)から離れる軸方向を指す磁石(40、41)間の反発磁力が生じるように、前記拡大部分(12)が少なくとも1つの磁石(40)を備え、前記ポンプケーシング(2)が少なくとも1つの磁石(41)を備えることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記第1および第2の軸受(10、20)の少なくとも1つの前記軸受表面の少なくとも1つが、少なくとも1つのばねによって支持され、前記少なくとも1つのばねが、前記第2の軸受から前記第1の軸受に向かう軸方向の軸方向力を受けるように配置されたことを特徴とする血液ポンプ。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記血液ポンプ(1)が、軸流血液ポンプ、遠心血液ポンプ、または混合型血液ポンプであることを特徴とする血液ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の心臓を支援するため、患者に埋め込まれる血液ポンプに関する。特に、血液ポンプは、患者の心臓が十分に回復するまで一時的に支援する、「回復への橋渡しをする」デバイスとして使用されることがある。
【背景技術】
【0002】
軸流血液ポンプ、遠心血液ポンプ、または軸方向力および半径方向力の両方によって血流が生じる混合型血液ポンプなど、様々なタイプの血液ポンプが知られている。血液ポンプは、カテーテルを用いて、大動脈などの患者の血管に挿入されてもよく、または胸腔内に配置されてもよい。血液ポンプは、一般的に、通路によって接続された血流入口および血流出口を有するポンプケーシングを備える。通路に沿って血流入口から血流出口までの血流を生じさせるために、血液を運搬する羽根を備えたインペラが、ポンプケーシング内で回転可能に支持される。
【0003】
インペラは、少なくとも1つの軸受によってポンプケーシング内で支持されるが、軸受は、例えば、血液ポンプが短期間(数時間もしくは数日間)の使用のみに向けたものであるか、長期間(数週間もしくは数年間)の使用のみに向けたものであるかといった、血液ポンプの意図される用途に応じて、異なるタイプのものであってもよい。接触型軸受および非接触型軸受など、様々な軸受が知られている。非接触型軸受では、例えば、反発磁力によって軸受表面が「浮揚」する磁気軸受の場合、軸受表面は互いに接触しない。一般に、接触型軸受は、例えば、滑り軸受、ピボット軸受、動圧軸受、静圧軸受、玉軸受など、またはそれらの任意の組み合わせでは、ポンプの動作中の任意の時点で(即ち、常にもしくは断続的に)軸受表面が少なくとも部分的に接触してもよいすべてのタイプの軸受を含んでよい。特に、接触型軸受は、軸受表面が血液接触を有する「血液浸潤(blood immersed)軸受」であってもよい。ピボット軸受などの接触型軸受は、使用中に昇温することがあり、機械的摩耗を起こしやすい。機械的摩耗は、インペラを駆動するための、ポンプの電動モータとインペラとの間の磁気結合によって増大することがある。接触型軸受および磁気結合がインペラの同じ軸方向端部に配設されていると、磁気結合がインペラを引き付けることによって軸受の機械的摩耗が増大することがあり、それによって軸受表面に対する接触圧が増大する。このことは、小さい軸受表面(例えば、カテーテルポンプのピボット軸受では、例えば直径1mmの範囲)に対する高い負荷(例えば、10ニュートン)につながることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の主な目的は、軸受の機械的摩耗を低減することができる、軸受によってポンプケーシング内で支持されたインペラを有する血液ポンプを提供することである。特に、本発明の別の目的は、血液ポンプ内の軸受を過度の荷重から解放することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
主な目的は、本発明にしたがって、独立請求項1の特徴を備えた血液ポンプによって達成される。本発明の好ましい実施形態および更なる発展例は、独立請求項に従属する請求項において特定される。
【0006】
既知の血液ポンプと同じく、本発明による血液ポンプは、通路によって接続された血流入口および血流出口を有するポンプケーシングを備える。インペラまたはロータは、インペラの長手方向軸線であってもよい回転軸を中心にして回転可能であるようにして、前記ポンプケーシング内に配置され、インペラは、通路に沿って血流入口から血流出口まで血液を運搬するようにサイズおよび形状が決められた羽根を備える。インペラは、インペラの第1の軸方向端部にある第1の軸受、および第1の軸受から軸方向で離間した第2の軸受によって、ポンプケーシング内で回転可能に支持される。
【0007】
本発明によれば、第1の軸受は、回転軸に沿って延在すると共にインペラおよびポンプケーシングの一方に接続された突出部と、インペラおよびポンプケーシングの他方にあるキャビティとを備える。「キャビティ」という用語は、任意の種類のキャビティ、中空空間、陥凹部、開口部、またはボアを含んでもよい。突出部は、第1および第2の軸受が同じ軸方向の軸方向力を受けるように配置されるようにして、キャビティを係合する拡大部分を備える。例えば、拡大部分は、キャビティによって支持されるか、またはキャビティ内に含まれてもよい。換言すれば、第1の軸受は、第2の軸受の軸受表面に作用する軸方向力の少なくとも一部を保持することによって、第2の軸受を解放する。両方の軸受が同じ「軸受方向」でインペラを支持するので、軸受それぞれに対する荷重を低減することができる。それらは荷重を「共有」する。これは、インペラが第1の軸受によって特定の程度まで「懸架される」ように、拡大部分を備えた突出部の形態の単純な機械的手段、およびそれに対応するキャビティを設けることによって達成される。好ましくは、突出部および拡大部分はインペラに含まれ、キャビティは静的であると共にポンプケーシングの一部である。キャビティは、ポンプケーシングの支持構造に配設されてもよい。しかしながら、機能性に影響することなく、配置が逆にされてもよいことが理解されるであろう。
【0008】
好ましくは、キャビティのサイズおよび形状は拡大部分に対応する。これにより、キャビティおよび拡大部分のサイズおよび形状が互いに対して適合されている場合に、軸方向または径方向または両方におけるインペラの変位を低減もしくは回避できるので、軸受の特性を改善することができる。特に、2つの対向する軸方向で軸方向力を受けるように、第1の軸受を配置することができる。しかしながら、第1の軸受が第2の軸受と同じ軸方向で軸方向力を受けることができる限り、キャビティのサイズおよび形状が拡大部分に対応することは必須ではない。例えば、反対の軸方向、即ち第2の軸受から離れる方向では、キャビティが開いていてもよく、または少なくともこの方向でインペラが移動することが可能であるように十分な空間を提供してもよい。
【0009】
好ましくは、拡大部分は少なくとも部分的に球状である。例えば、拡大部分は球状のキャップであってもよい。したがって、キャビティも少なくとも部分的に球状であってもよい。しかしながら、拡大部分は、本発明の概念を達成するのに適した任意の形状を有してもよい。特に、回転対称であって軸方向力を受けるレッジ(ledge)を有する任意の形状が、第1の軸受に適していてもよい。拡大部分は、例えば円筒状または円錐状であってもよい。拡大部分は、キャビティ内にスナップ嵌めされてもよく、これは第1の軸受を装着する単純なやり方である。拡大部分またはキャビティまたは両方の材料は、スナップ嵌め接続を可能にするのに十分な弾性を有してもよい。別の実施形態では、キャビティまたは拡大部分は、例えば金属もしくはセラミック材料などから作られた既存の部品の上に成型することによって形成されてもよく、成型プラスチックの収縮を許容して動的な継手を作り出してもよい。
【0010】
一実施形態では、第2の軸受は、ポンプケーシングの軸受表面に面するインペラの軸受表面を備える接触型軸受、好ましくはピボット軸受であってもよい。ピボット軸受は、回転移動ならびに枢動移動をある程度まで可能にする。
【0011】
血液ポンプは、回転軸に沿って延在すると共に回転軸を中心にして回転可能であって、インペラがその上に装着されたシャフトを更に備えてもよく、シャフトは、第1の軸受の一部を形成する第1の端部部分と、第2の軸受の一部を形成する第2の端部部分とを有する。特に、シャフトの第1の端部部分は、球状キャップなどの拡大部分を備えてもよい。シャフトは、拡大部分の外径に実質的に等しい外径を有してもよく、突出部は、シャフトと拡大部分との間に配置される首部を形成する。これにより、コンパクトな配置が可能になり、スナップ嵌め接続に有利である。シャフトの第2の端部部分は第2の軸受の軸受表面を備えてもよく、前記軸受表面は、凹状、例えば球状であって、例えばピボット軸受の一部を形成する。シャフトは、インペラと別個に形成されるか、または一体的に形成されてもよいことが理解されるであろう。更に、周囲の血液への熱伝導を改善する目的で、シャフトの部品が血液と直接接触していてもよいことが理解されるであろう。シャフトは、好ましくは、熱伝導性材料(金属、炭化ケイ素、もしくは類似の材料)で作られるので、温度を55℃以下に制限するために、軸受の部分内で発生した熱を周囲の血液に良好に伝達することができる。
【0012】
一実施形態では、キャビティの壁は、ギャップによって分離された少なくとも2つの区画、例えば2つ、3つ、または4つの区画を備えてもよい。ギャップは、血液がキャビティに入ることができるように、通路と流体接続していてもよい。これにより、血液ポンプを通って流れる血液によって、または他の任意のすすぎ流体によって第1の軸受を洗い流すことができる。
【0013】
一実施形態では、第1の軸受の拡大部分は少なくとも1つの磁石を備えてもよく、ポンプケーシング、好ましくはキャビティも、少なくとも1つの磁石を備えてもよい。磁石は、第2の軸受から離れる軸方向で反発磁力が生じるように配置されてもよい。この配置によって、第1の軸受の磁力が第2の軸受から離れる方向でインペラを引っ張るので、第2の軸受を解放することができる。それとは別に、磁気軸受としての第1の軸受の設計により、軸方向での第1の軸受の機械的摩耗を回避することができる。
【0014】
一実施形態では、第1および第2の軸受の少なくとも一方の軸受表面の少なくとも1つは、少なくとも1つのばねによって支持されてもよく、少なくとも1つのばねは、第2の軸受から第1の軸受に向かう軸方向で軸方向力を受けるように配置される。具体的には、第2の軸受の軸受表面に作用する荷重の一部を受容し減衰する少なくとも1つのばねを設けることによって、第2の軸受を解放することができる。少なくとも1つのばねは、第1の軸受から離れる方向に面する第2の軸受の面に配設されてもよい。例えば、少なくとも1つのばねは、第2の軸受の静止した軸受表面を支持するケーシングの一部分に配設されてもよい。ばね力は、第2の軸受に対する荷重未満であるように選択されてもよい。この場合、第2の軸受に対する荷重はばね力の量に限定され、荷重の残りは第1の軸受によって支持される。別の方法として、またはそれに加えて、第1の軸受は、少なくとも1つのばね、特にキャビティを備えるポンプケーシングの部分によってばね支持されてもよく、ばねは、第2の軸受から離れる軸方向の力を生じさせる。ばねは、金属材料で構成することができ、または例えば金属のコイルばねと同じ機能を供給するOリングもしくは類似の形状で、ポリマー材料から形成されてもよいことが理解されるであろう。一実施形態では、第2の軸受の軸受表面の少なくとも1つは、屈曲させたときに既知の力を有してもよい、可撓性構造によって支持されてもよい。
【0015】
第2の軸受を解放する更なる手段を設けることができる。例えば、反発する磁石を、第2の軸受の軸受表面またはその付近、例えばその周りに設けることができる。回転をインペラに伝達する吸引磁力によって生じる軸方向力を低減または排除するために、磁気ドライブ装置が径方向で配設されてもよく、磁気ドライブはインペラの周りに円周方向で配置される。同様に、磁気ドライブがインペラに対して軸方向で配設される配置では、磁束が径方向でインペラに作用するように偏向されてもよい。更に、別の方法として、またはそれに加えて、第2の軸受の荷重の一部を保持する支持軸受が提供されてもよい。支持軸受は、第2の軸受を取り囲む、好ましくはそれぞれ整列された溝内にある、インペラの表面とハウジングの表面との間を通る複数の玉を備える玉軸受であってもよい。
【0016】
本発明によれば、インペラを心出し(to center)するのに2つの機械軸受が用いられることが理解されるであろう。両方の軸受を回転軸に沿って空間的に分布させることによって、剛直な軸受/インペラの配置が可能になる。後者によって、インペラが心拍毎に臨界速度未満から移動する、脈動ポンプ動作が可能になる。2つの機械軸受によって提供される剛直な配置により、臨界速度の間のインペラの振動を低減することができる。心臓と共に脈動し同期されたポンプ動作は、心臓の回復を達成するのに非常に有利であると考えられる。それに加えて、機械軸受は、患者の血管内部に配置することが意図される任意の小型ポンプによって要求される、小型のサイズであることが理由で用いられることが理解されるであろう。
【0017】
上述の概要、ならびに好ましい実施形態の以下の詳細な説明は、添付図面と併せ読むことによってより良く理解されるであろう。本開示を例証する目的で、図面を参照する。しかしながら、本開示の範囲は、図面に開示する特定の実施形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明による血液ポンプの断面図である。
図2】別の実施形態による血液ポンプを示す断面図である。
図3】更に別の実施形態による血液ポンプを示す断面図である。
図4A】第1の軸受の様々な実施形態を示す図である。
図4B】第1の軸受の様々な実施形態を示す図である。
図4C】第1の軸受の様々な実施形態を示す図である。
図4D】第1の軸受の様々な実施形態を示す図である。
図5】カテーテルポンプとして設計された一実施形態による血液ポンプの断面図である。
図6】血液ポンプの第1のシャフトを示す断面図である。
図7】血液ポンプの第2のシャフトを示す断面図である。
図8】第1のシャフトの支持構造を示す断面図である。
図9A】他の実施形態による第1のシャフトの支持構造を示す断面図である。
図9B】他の実施形態による第1のシャフトの支持構造を示す断面図である。
図9C】他の実施形態による第1のシャフトの支持構造を示す断面図である。
図10】別の実施形態による血液ポンプを示す断面図である。
図11図10の実施形態と接続している第1のシャフトの支持構造を示す断面図である。
図12】別の実施形態による血液ポンプを示す断面図である。
図13】別の実施形態による血液ポンプを示す断面図である。
図14】別の実施形態による血液ポンプを示す断面図である。
図15】別の実施形態による血液ポンプを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1を参照すると、血液ポンプ1の断面図が示されている。血液ポンプ1は、体外、心臓外、または管腔外用途向けに設計されており、血流入口5および血流出口6を有するポンプケーシング2を備える。動作中、ポンプケーシング2は患者の体外に位置し、血流入口5および血流出口6は、それぞれのコネクタ(特に、心臓からの流入および大動脈への流出)に接続される。血液は、血流入口5および血流出口6を接続する通路7に沿って運搬される。シャフト14を有するインペラ3は、血液を通路7に沿って運搬するために設けられ、第1の軸受10および第2の軸受20によって、ポンプケーシング2内で回転軸9を中心にして回転可能に装着される。回転軸9は、好ましくはインペラ3の長手方向軸線である。軸受10、20は両方とも、更に詳細に後述するような接触型軸受である。第2の軸受20は、回転移動ならびに枢動移動をある程度まで許容する、球状の軸受表面を有するピボット軸受である。第1の軸受10は、支持部材15内に配設されてインペラ3の回転を安定させ、支持部材15は、血流のための少なくとも1つの開口部16を有する。インペラ3が回転すると血液を運搬するように、羽根4がインペラ3上に設けられる。インペラ3の回転は、インペラ3の端部部分37に磁気結合された電動モータ8によって引き起こされる。当業者には理解されるように、他の好適な駆動メカニズムが可能である。図示される血液ポンプ1は混合型血液ポンプであり、主要なフロー方向は軸方向である。インペラ3の、特に羽根4の配置に応じて、血液ポンプ1は、純粋な軸流血液ポンプであってもよいことが理解されるであろう。
【0020】
インペラ3は、径方向外向きに延在する部分33を備える。部分33は、ヨーク、フランジ部分、または端部部分と呼ぶことができる。少なくとも1つの洗い流しチャネル30、好ましくは3つ、4つ、5つ、または6つなど、2つ以上の洗い流しチャネル30は、図1にはその1つのみが示されているが、インペラ3を通って、特に部分33を通って延在して、インペラ3と血液ポンプ1の静止部分、特にポンプケーシング2またはポンプケーシング2と関連付けられていると見なされてもよいモータ8との間の隙間31の洗い流しまたはすすぎを可能にしている。少なくとも1つの洗い流しチャネル30はまた、少なくとも部分的に、部分33を越えてインペラ3の主要部分内へと延在してもよい。洗い流しチャネル30は、第1の開口部34と第2の開口部35とを有する。第1の開口部34は、通路7と洗い流しチャネル30との間に流体接続を形成し、第2の開口部35は隙間31と流体接続している。特に、第2の開口部35は、第2の軸受20を受け入れる部分33の中央ボアまたは中央開口部32と流体接続しており、それによって第2の軸受20を洗い流し、冷却することができる。
【0021】
第2の軸受20は、第1のシャフト14の第2の端部部分24に配設された第1の軸受表面23(図6を参照)と、第2のシャフト21の端部部分、特に第2のシャフト21の中央にある陥凹部にある第2の軸受表面22(図7を参照)とを備える。軸受表面22、23は両方とも好ましくは球状である。電動モータ8と端部部分37との間の磁気結合により、インペラ3はモータ8に向かって引き付けられ、それによって第2の軸受20の軸受表面22、23間の圧力が増加する。第2の軸受20を解放するために、第1の軸受10は、第1のシャフト14の反対側の軸方向端部部分19に配置され、第2の軸受20と同じ軸方向で軸方向荷重を受けるように配置される。
【0022】
第1の軸受10は、ポンプケーシング2の、特にポンプケーシング2の一部と見なしてもよい支持構造15のキャビティ13を係合する拡大部分12を含む。特に、拡大部分12は、キャビティ13によって支持されるか、その中に封入されるか、またはその中に捕捉されてもよい。拡大部分12は、キャビティ13内にスナップ嵌めされるかまたは別の方法で装着されてもよい。より具体的には、第1の軸受10は、拡大部分12を含むシャフト14の第1の端部部分において、軸方向に延在する突起11を含む。図示される実施形態では、拡大部分12は、部分的に球状のキャップとして形成される。しかしながら、第2の軸受20と同じ方向の軸方向荷重を受けるのに適した、任意の回転対称の形状が、拡大部分12に対して選択されてもよい。突出部11は、拡大部分12よりも小さい直径を有する首部を形成する。図6に示されるように、拡大部分12はシャフト14と同じ直径を有する。拡大部分12およびシャフト14の直径は異なるものであり得る。特に、拡大部分12の直径は、シャフト14の直径よりも小径または大径であり得る。首部は省略することもできる。シャフト14はまた、インペラ3と一体的に形成されてもよい。
【0023】
図1の実施形態では、キャビティ13のサイズおよび形状は、拡大部分12に実質的に対応する。したがって、第1の軸受10は、第2の軸受20と同じ軸方向で荷重を受けるだけでなく、両方の軸方向でインペラ3を支持する。図2の実施形態では、キャビティ13’は、第2の軸受20から離れる方向に面する側に対して開いている。しかしながら、支持構造15は、首部11のサイズおよび形状に対応するようにサイズおよび形状が決められるので、インペラ3は軸方向ならびに径方向の両方で支持される。支持構造15は、第2の軸受20から離れる方向である程度の軸方向移動を可能にするため、より小さくてもよいことが理解されるであろう。図3の実施形態では、インペラ3は、第2の軸受20から離れるように軸方向で移動してもよく、それは血流中でインペラ3が回転移動することによって生じることがある。この実施形態では、キャビティ13”は、第2の軸受20から離れる方向で軸方向に拡大される。
【0024】
図4A~4Dは、第1の軸受10、特に拡大部分12およびキャビティ13の様々な実施形態を示している。図4Aでは、拡大部分は、図1~3に示される拡大部分と同様に、実質的に球状である。支持構造15のキャビティ13に接触する区画は、拡大部分12の残りの区画とは異なる直径を有してもよく、凸状であってもよい。あるいは、この区画は凹状であってもよい。図4Bの実施形態では、拡大部分12は円錐状または菱形である。図4Cおよび4Dは、拡大部分12が円錐状またはテーパー状の区画を有する、類似の実施形態を示している。これにより、軸受10の組立てが容易になる。図4Cでは、支持構造15のキャビティ13に接触する拡大部分12の区画は球状および凸状であり、図4Dでは凹状である。任意の回転対称形状が拡大部分12に使用されてもよいことが理解されるであろう。
【0025】
次に図5を参照すると、図1~3の上述の実施形態、特に図2の実施形態と類似しているが、カテーテルポンプ1’として設計されている点が異なる、一実施形態が示されている。血流入口5’は、大動脈弁などの心臓弁を通して配置された可撓性カテーテル50の端部にあり、使用中、血流出口6’は、ポンプケーシング2’の側に位置し、大動脈などの心臓血管内に位置する。血液ポンプ1’はカテーテル51に接続され、電気ワイヤ52が、ポンプ1’を駆動するためにカテーテル51を通って延在する。血液ポンプ1および1’は両方とも同じように機能する。記載する全ての特徴は、体外ポンプおよびカテーテルポンプの両方に適用可能であることが理解されるであろう。
【0026】
次に図8を参照すると、血液が支持構造15を通って流れることを可能にする開口部16を含む、支持構造15を通る断面が示されている。支持構造15は1つ以上の支柱に寄与してもよい。図9A~9Cの実施形態では、キャビティ13の壁は、ギャップ18によって分離されたセグメントまたは区画17を備える。ギャップ18によって、特に第1の軸受10を冷却するため、血液がキャビティ13に流入してキャビティ13を洗い流すことが可能になる。区画17は、第1の軸受の回転部品を支持するステータブレードと呼ばれることがある。図8および9Aでは、3つの支柱および3つの開口部16を有する支持構造15が示されている。支持構造15は、1つ(図9B)、2つ(図9C)、4つ、5つ、6つまたはそれ以上など、より少数または多数の支柱と開口部とを有してもよい。
【0027】
上述の実施形態に実質的に類似した血液ポンプ1の一実施形態が、図10に示されている。しかしながら、この実施形態では、第1の軸受10’’’は、接触型軸受の代わりに磁気軸受として設計されている。拡大部分12’は、支持構造15に配置された磁石41に対する反発磁力を生じるように配置された、少なくとも1つの磁石40を備える。拡大部分12’は、キャビティ13’’’を係合する突出部11’に配設される。反発磁力は、第2の軸受20を解放する助けとなる。図11では、第1の軸受10が磁気軸受として設計されている、血液ポンプの一実施形態を通る断面図が示されている。上述の実施形態と同様に、支持構造は3つの支柱15を備え、キャビティ13’’’の壁は、ギャップ18’によって分離された3つのセグメント17’に分割されている。壁セグメント17’では、拡大部分12’のそれぞれの磁石40(図11に図示せず)に作用する磁石41が配設される。
【0028】
図12~15は、第1の軸受10または第2の軸受20のどちらかが少なくとも1つのばねによって支持される、血液ポンプ1の実施形態を示している。図12の実施形態および図13~15のうち少なくとも1つの実施形態は、組み合わせて単一の実施形態とすることができることが理解されるであろう。図12に示されるように、コイルばねなどのばね42は、シャフト21’を支持するのに設けられ、シャフトは、軸方向で移動可能であってばね42のための余地を提供するように短い点を除いて、図7と関連して記載した第2のシャフト21に実質的に類似している。封止リング45は、血液がモータアセンブリに入るのを防ぐために提供される。ばね42は比較的弱く、特に、ばね力は、ばね42なしおよび第1の軸受10なしで第2の軸受20に作用するであろう荷重よりも小さい。したがって、第2の軸受20に対する荷重は、ばね42のばね力の量に限定される。荷重の残りは第1の軸受10によって支持される。
【0029】
別の方法として、またはそれに加えて、図13に示されるように、第1の軸受10、特にその静止部分は、ばね支持されてもよい。この実施形態では、支持構造15は、ポンプケーシング2から分離され、レッジ44によって保定されたコイルばねなどのばね43によって支持される。ばね43のばね力は、第2の軸受20を解放するために、第2の軸受20から離れる方向で作用する。同じ機能を、ばね43の代わりに、図14に示されるような、ポリマーOリングなどの可撓性リング46によって達成することができる。別の方法として、またはそれに加えて、支持構造15は、図15に示されるようなばね機能を提供する、可撓性、弾性、または伸縮性材料で作られてもよい。同様に、第2の軸受20を解放するため、ばね装置を第1のシャフト14に配設することができる。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12
図13
図14
図15