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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】判定装置
(51)【国際特許分類】
   B61L 23/00 20060101AFI20220613BHJP
   B61B 1/02 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
B61L23/00 Z
B61B1/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021078576
(22)【出願日】2021-05-06
(62)【分割の表示】P 2017014649の分割
【原出願日】2017-01-30
(65)【公開番号】P2021175662
(43)【公開日】2021-11-04
【審査請求日】2021-05-07
(73)【特許権者】
【識別番号】519341913
【氏名又は名称】東急電鉄株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 章
(72)【発明者】
【氏名】江上 司
(72)【発明者】
【氏名】笠井 貴之
(72)【発明者】
【氏名】松原 達也
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-35762(JP,A)
【文献】特開2016-212657(JP,A)
【文献】特開2005-231442(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 23/00-23/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駅のプラットホームの上面よりも上に設置された検知装置であって、列車の進行方向に沿って前記上面よりも上の一部の空間を監視し、かつ、該上面よりも下の空間、前記一部の空間よりも前記進行方向に沿って近い領域、及び、前記一部の空間よりも前記進行方向に沿って遠い領域を監視しない検知装置により検知された、プラットホーム側空間と軌道側空間の各々における物体の検知結果の組み合わせの遷移に基づき転落判定を行う判定装置。
【請求項2】
前記検知結果の組み合わせの遷移が、前記プラットホーム側空間から前記軌道側空間へと物体が移動したことを示す場合に、該物体が転落したと判定する請求項1に記載の判定装置。
【請求項3】
検知された物体の形状に基づいて該物体を識別し、該物体の移動の軌跡に基づき前記転落判定を行う請求項1又は2に記載の判定装置。
【請求項4】
列車が接近したことを示す接近情報を受取った場合に、前記転落判定を中断する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の判定装置。
【請求項5】
前記接近情報を受取った後、前記軌道側空間において列車が検知され、その後、該列車が検知されなくなった場合に、前記転落判定を再開する請求項4に記載の判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道へ物体が転落したか否かを判定するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
列車が通る軌道へ物体が転落したか否かを判定したい、というニーズがある。軌道へ物体が転落したか否かを判定するための技術を開示する文献として、例えば特許文献1乃至9がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-234085号公報
【文献】特開2014-95649号公報
【文献】特開2014-94697号公報
【文献】特開2013-100009号公報
【文献】特開2012-243177号公報
【文献】特開2012-35762号公報
【文献】特開2005-231444号公報
【文献】特開2005-231442号公報
【文献】特開2005-231437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1乃至9に記載された技術では、検知対象の一つの空間に物体が検知されたことだけをもって転落が生じていると判定するため、判定の精度が低かった。
【0005】
本発明は、軌道へ物体が転落したか否かの判定の精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため、本発明は、駅のプラットホーム側空間と軌道側空間の各々における物体の検知結果の組み合わせの遷移に基づき転落判定を行う判定装置を、第1の態様として提供する。
【0007】
第1の態様の判定装置によれば、軌道へ物体が転落したか否かの判定の精度を向上させることができる。
【0008】
第1の態様の判定装置において、前記検知結果の組み合わせの遷移が、前記プラットホーム側空間から前記軌道側空間へと物体が移動したことを示す場合に、該物体が転落したと判定する、という構成が第2の態様として採用されてもよい。
【0009】
第2の態様の判定装置によれば、検知された物体の移動に応じて転落の有無を判定することができる。
【0010】
第1の態様の判定装置において、前記軌道側空間は前記プラットホームの上面より高い位置にあり、前記プラットホーム側空間と前記軌道側空間と前記軌道側空間の下に位置する軌道上空間の各々における物体の検知結果の組み合わせの遷移が、前記プラットホーム側空間から前記軌道側空間へと該物体が移動した後、前記軌道上空間に移動していないことを示す場合に、該物体が転落していないと判定する、という構成が第3の態様として採用されてもよい。
【0011】
第3の態様の判定装置によれば、実際に軌道上空間に物体がなければ転落していないと判定することができる。
【0012】
第1乃至第3のいずれかの態様の判定装置において、検知された物体の形状に基づいて該物体を識別し、該物体の移動の軌跡に基づき前記転落判定を行う、という構成が第4の態様として採用されてもよい。
【0013】
第4の態様の判定装置によれば、注目する物体の移動の軌跡が特定される。
【0014】
第1乃至第4のいずれかの態様の判定装置において、列車が接近したことを示す接近情報を受取った場合に、前記転落判定を中断する、という構成が第5の態様として採用されてもよい。
【0015】
第5の態様の判定装置によれば、列車自体を転落物体と誤認識することがない。
【0016】
第5の態様の判定装置において、前記接近情報を受取った後、前記軌道側空間において列車が検知され、その後、該列車が検知されなくなった場合に、前記転落判定を再開する、という構成が第6の態様として採用されてもよい。
【0017】
第6の態様の判定装置によれば、列車が通り過ぎた箇所から物体が転落したか否かの判定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】判定システム9の構成の一例を示す図。
図2】空間Sを説明するための図。
図3】判定装置4の構成の一例を示す図。
図4】記憶部42に記憶されている遷移表421の一例を示す図。
図5】判定装置4の機能的構成の一例を示す図。
図6】判定装置4の動作の流れを示すフロー図。
図7】検知結果の遷移状態を示す図。
図8】変形例における空間Sを説明するための図。
図9】変形例における検知結果の遷移状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.実施形態
1-1.判定システムの全体構成
以下、図において、各構成が配置される空間をxyz右手系座標空間として表す。また、図に示す座標記号のうち、円の中に点を描いた記号は、紙面奥側から手前側に向かう矢印を表す。空間においてx軸に沿う方向をx軸方向という。また、x軸方向のうち、x成分が増加する方向を+x方向といい、x成分が減少する方向を-x方向という。y、z成分についても、上記の定義に沿ってy軸方向、+y方向、-y方向、z軸方向、+z方向、-z方向を定義する。ここで、z軸方向が重力の方向であり、+z方向は上、-z方向は下である。
【0020】
図1は、判定システム9の構成の一例を示す図である。判定システム9は、検知装置1、判定装置4、および警報装置5を有する。
【0021】
図1に示すプラットホーム2は、+x方向に進行する列車Tが-y方向の側に発着する駅のプラットホームである。プラットホーム2の縁部20は、列車Tが進入する軌道に面しており、x軸方向に沿って伸びている。例えばプラットホーム2の上面21に乗っている利用者がこの縁部20よりも-y方向に移動すると軌道に転落する。
【0022】
柵3は、縁部20から一定の距離を+y方向に進んだ位置において、x軸方向に沿って決められた間隔で複数台、設置されている。柵3は、プラットホーム2の上面21に乗っている利用者が縁部20よりも-y方向に進み、軌道に落下することを防止するための柵である。
【0023】
プラットホーム2の上面21のうち柵3と縁部20との間の領域には、x軸方向に沿って複数本の支持柱10が決められた間隔で設置されている。検知装置1は、それぞれの支持柱10の決められた高さに取り付けられ、+x方向の決められた空間Sを監視するように支持されている。検知装置1が監視する空間Sは、例えば隣り合う2つの柵3の間の空間であり、列車Tの停車時にプラットホーム2の利用者が昇降する通路に重なる空間である。
【0024】
検知装置1は、上述した空間Sに存在する物体を検知するセンサであり、例えば距離画像センサである。距離画像センサは、光飛行時間測定法に基づいて物体の空間内における位置を検知するセンサであり、例えば近赤外レーザを空間Sに照射する光源と、この近赤外レーザが空間に存在する物体において反射した反射光を受光するフォトダイオードとを有する。すなわち距離画像センサは、光源による近赤外レーザの照射方向と、その照射からフォトダイオードによる反射光の受光までの時間とによって、近赤外レーザを反射した物体の自装置から見た方向と距離とを計測するセンサである。
【0025】
距離画像センサの光源は、空間Sにおける複数の異なる方向に近赤外レーザを同時に照射してもよいし、ラスタ走査やリサージュ走査等で周期的に変化する方向に近赤外レーザを照射してもよい。
【0026】
なお、検知装置1は、距離画像センサであってもよいが、他の構成であってもよい。例えば、検知装置1は、ステレオカメラであってもよい。ステレオカメラは、CMOSイメージセンサやCCDイメージセンサ等の固体撮像素子とレンズ等の光学系との組み合わせを複数組有し、物体を複数の異なる方向から同時に撮影することにより、その物体の奥行き方向の情報も含む位置を検知するものである。
【0027】
また、検知装置1は、物体の検知に可視光および赤外光といった電磁波を用いてもよいが、超音波、音波等を用いてもよい。要するに検知装置1は空間Sに存在する物体を検知するものであればよい。
【0028】
図1に示す通り、検知装置1は、+x方向の空間Sに近赤外レーザを照射して反射光を検知することで空間Sに存在する物体を検知する。空間Sはx軸方向に沿って深さDを有し、検知装置1は、例えば計測する時間に上限および下限を設けることで、空間Sよりも近い領域、すなわち-x方向の領域や、空間Sよりも遠い領域、すなわち+x方向の領域の監視を行わない。
【0029】
図1に示す判定装置4は、検知装置1から物体の検知結果の情報を取得して、この情報にもとづいて転落判定を行う装置である。判定装置4は例えばコンピュータである。
【0030】
図1に示す警報装置5は、判定装置4からの指示に応じて事故防止の処置を行う装置である。警報装置5は、判定装置4の或る指示に応じて例えば駅構内に警報を発令してもよいし、また、判定装置4の他の指示に応じて列車Tを緊急停止する制御信号を送信してもよい。
【0031】
判定システム9は、図1に破線で示す情報提供装置6を有していてもよい。情報提供装置6は、例えば列車運行管理システムで用いられるコンピュータであり、列車Tがプラットホーム2に接近したことを示す接近情報を判定装置4に提供する。
【0032】
図2は、空間Sを説明するための図である。図2には、プラットホーム2および空間Sを-x方向に見た状態が示されている。空間Sは、プラットホーム2の上面21よりも+z方向の空間である。検知装置1は、図2に示す空間Sをプラットホーム2に近い側の空間であるプラットホーム側空間S0と、軌道に近い側の空間である軌道側空間S1とを区別する。つまり検知装置1は、プラットホーム側空間S0に存在する物体と、軌道側空間S1に存在する物体とをそれぞれ独立して検知する。なお、プラットホーム側空間S0と軌道側空間S1との境界は縁部20の位置を基準に決められていてもよい。
【0033】
1-2.判定装置の構成
図3は、判定装置4の構成の一例を示す図である。判定装置4は、制御部41と、記憶部42と、通信部43と、操作部44と、表示部45とを有する。なお、判定装置4は、操作部44および表示部45を有しなくてもよい。
【0034】
制御部41は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を有し、CPUがROMや記憶部42に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより判定装置4の各部を制御する。
【0035】
通信部43は、無線または有線により検知装置1および警報装置5と接続する通信回路である。また、通信部43は、情報提供装置6と接続してもよい。判定装置4は、通信部43により検知装置1および警報装置5と情報を遣り取りする。
【0036】
操作部44は、各種の指示をするための操作ボタン等の操作子を備えており、利用者による操作を受付けてその操作内容に応じた信号を制御部41に供給する。
【0037】
表示部45は、液晶ディスプレイを有しており、制御部41の制御の下、画像を表示する。
【0038】
記憶部42は、ハードディスクドライブ等の大容量の記憶手段であり、制御部41のCPUに読み込まれる各種のプログラムを記憶する。
【0039】
また、記憶部42は、プラットホーム側空間S0と軌道側空間S1の各々における物体の検知結果の組み合わせの遷移と、その遷移に対応する判定結果を対応付ける遷移表421を記憶する。
【0040】
図4は、記憶部42に記憶されている遷移表421の一例を示す図である。遷移表421には、A→B→C→Dという順番で到来する時系列ごとに、プラットホーム側空間S0と軌道側空間S1の各々における物体の検知結果の組み合わせが記述された複数のケースと、そのケースに対応する判定結果および警報発令の時期が対応付けられている。これによりこの時系列に沿って検知結果の組み合わせがどのように遷移するかによって、検知された物体が軌道に転落したのか否かの判定が定められる。
【0041】
1-3.判定装置の機能的構成
図5は、判定装置4の機能的構成の一例を示す図である。判定装置4の制御部41は、上述したプログラムを実行することにより、図5に示す取得部411、判定部412、および指示部413として機能する。また、制御部41は、図5に破線で示す変更部414として機能してもよい。
【0042】
取得部411は、通信部43を介して検知装置1からプラットホーム側空間S0と軌道側空間S1の各々における物体の検知結果を順次取得し、その検知結果の遷移を判定部412に伝える。
【0043】
判定部412は、記憶部42から遷移表421を読み出し、取得部411から伝えられた検知結果の組み合わせの遷移と遷移表421とを照合して、物体が軌道に転落したか否かの転落判定を行う。すなわち、判定部412は、駅のプラットホーム側空間と軌道側空間の各々における物体の検知結果の組み合わせの遷移に基づき転落判定を行う。転落判定の結果は指示部413に伝えられる。指示部413は、通信部43を介して警報装置5に対し転落判定の結果に応じた指示をする。
【0044】
なお、変更部414は、通信部43を介して情報提供装置6から列車Tがプラットホーム2に接近したことを示す接近情報を受取った場合、判定部412の動作を変更してもよい。例えば、変更部414は、接近情報を受取った場合に判定部412による転落判定を中断してもよい。変更部414により転落判定を中断された場合、判定部412は、例えばプラットホーム側空間S0のみを監視してもよい。
【0045】
1-4.判定装置の動作
図6は、判定装置4の動作の流れを示すフロー図である。判定装置4の制御部41は、検知装置1からプラットホーム側空間S0と軌道側空間S1の各々における物体の検知結果を取得すると(ステップS101)、その検知結果の遷移を記憶部42に記憶された遷移表421(図4参照)と照合する(ステップS102)。そして、制御部41は、照合の結果、検知された物体が軌道に転落したか否かを判定する(ステップS103)。
【0046】
図7は、検知結果の遷移状態を示す図である。図7の横軸は時間を示し、縦軸は検知対象となる各空間における物体の検知結果を示す。図7の縦軸に示すプラットホーム側空間S0と軌道側空間S1のそれぞれの検知結果はいずれも上下一組の線で示しており、上の線は物が検知されたことを意味し、下の線は物体が検知されないことを意味する。
【0047】
図7(a)に示した例では、時刻t1でプラットホーム側空間S0に物体が検知され、それに続く時刻t2で軌道側空間S1に物体が検知される。そしてその後、時刻t3で軌道側空間S1に物体が検知されなくなり、それに続く時刻t4でプラットホーム側空間S0に物体が検知されなくなる。
【0048】
図7(a)に示した例では、時刻t2から時刻t3までの期間P2にだけ軌道側空間S1に物体が検知されているが、時刻t1から時刻t4までの期間P1、P2、P3にわたって継続してプラットホーム側空間S0に物体が検知されている。
【0049】
これにより、プラットホーム側空間S0で検知された物体は、期間P2において一部が軌道側空間S1で検知されたが、最終的にプラットホーム側空間S0に戻り、さらにプラットホームに移動して検知対象空間から消失したと推察される。したがって、この場合、判定装置4は物体が軌道に転落していない、と判定する。
【0050】
一方、図7(b)に示した例では、時刻t1とそれに続く時刻t2までが図7(a)に示した例と同じである。しかし、その後の時刻t5でプラットホーム側空間S0に物体が検知されなくなってから、時刻t6で軌道側空間S1に物体が検知されなくなる点が図7(a)に示した例と異なる。
【0051】
図7(b)に示した例では、時刻t2から時刻t5までの期間P5においてプラットホーム側空間S0および軌道側空間S1の両方に物体が検知されており、その後、時刻t5から時刻t6までの期間P6において軌道側空間S1にだけ物体が検知され、時刻t6以降の期間P7においてはいずれの空間にも物体が検知されなくなっている。
【0052】
これにより、プラットホーム側空間S0で検知された物体は、期間P5において一部が軌道側空間S1で検知され、さらに期間P6において全体が軌道側空間S1に移動した後、期間P7に至って物体が軌道に転落したため軌道側空間S1からも消失したと推察される。つまり、図7(b)に示した例において検知結果の組み合わせの遷移は、プラットホーム側空間S0から軌道側空間S1へと物体が移動したことを示すものである。したがって、この場合、判定装置4は物体が軌道に転落した、と判定する。
【0053】
ステップS103において物体が軌道に転落していない、と判定した場合(ステップS103;NO)、制御部41は処理をステップS101に戻す。一方、ステップS103において物体が軌道に転落した、と判定した場合(ステップS103;YES)、制御部41は、通信部43を介して警報装置5に対し転落に対応する指示をする(ステップS104)。この指示とは、例えば、警報の発令や列車Tの緊急停止制御等の指示である。
【0054】
以上、説明した動作により、判定装置4はプラットホーム側空間S0と軌道側空間S1とを区別して物体を検知するので、検知された物体がプラットホーム側空間S0から軌道側空間S1に移動して軌道側へ転落したのか、軌道側空間S1からプラットホーム側空間S0に戻って転落を回避したのかを区別して推測することが可能である。これにより、軌道へ物体が転落したか否かの判定の精度が向上する。
【0055】
2.変形例
上述の実施形態は様々に変形され得る。以下に、それらの変形の例を示す。なお、以下に示す2以上の変形例が適宜組み合わされてもよい。
【0056】
2-1.変形例1
上述した実施形態において、検知装置1は、支持柱10の決められた高さに取り付けられ、+x方向の決められた空間Sを監視するように支持されていたが、監視する方向は+x方向に限られない。検知装置1は、例えば駅舎の天井に取り付けられ、-z方向の決められた空間Sを監視するように支持されてもよい。
【0057】
図8は、この変形例における空間Sを説明するための図である。図2には、この変形例におけるプラットホーム2および空間Sを-x方向に見た状態が示されている。検知装置1は、図示しない天井に取り付けられ、-z方向の空間Sを監視している。空間Sは、プラットホーム側空間S0と、軌道側空間S1と、軌道上空間S2とを含む。プラットホーム側空間S0および軌道側空間S1は、プラットホーム2の上面21より高い位置、つまり、上面21よりも+z方向の位置にある空間である。
【0058】
一方、軌道上空間S2は、プラットホーム2の縁部20よりも-y方向であって、上面21の下に位置する。検知装置1は、軌道側空間S1と、軌道上空間S2とを、自装置からの距離で区別する。
【0059】
図9は、この変形例における検知結果の遷移状態を示す図である。図9の横軸は時間を示し、縦軸は検知対象となる各空間における物体の検知結果を示す。図9の縦軸に示すプラットホーム側空間S0、軌道側空間S1および軌道上空間S2のそれぞれの検知結果はいずれも上下一組の線で示しており、上の線は物が検知されたことを意味し、下の線は物体が検知されないことを意味する。
【0060】
図9に示した例では、時刻t1でプラットホーム側空間S0に物体が検知され、それに続く時刻t2で軌道側空間S1に物体が検知される。そしてその後、時刻t5でプラットホーム側空間S0に物体が検知されなくなり、さらにその後の時刻t6で軌道側空間S1に物体が検知されなくなる。
【0061】
図9に示した例では、時刻t2から時刻t5までの期間P5においてプラットホーム側空間S0および軌道側空間S1の両方に物体が検知されており、その後、時刻t5から時刻t6までの期間P6において軌道側空間S1に物体が検知されている状態でプラットホーム側空間S0に物体が検知されなくなり、時刻t6以降の期間P7においてはいずれの空間にも物体が検知されなくなっている。
【0062】
これにより、プラットホーム側空間S0で検知された物体は、期間P5において一部が軌道側空間S1で検知され、さらに期間P6において全体が軌道側空間S1に移動した後、期間P7に至って物体が軌道に転落したため軌道側空間S1からも消失したと推察される。つまり、図9に示した例において検知結果の組み合わせの遷移は、プラットホーム側空間S0から軌道側空間S1へと物体が移動したことを示すものである。したがって、この場合、判定装置4は物体が軌道に転落した、と判定する。
【0063】
しかし、図9に示した例では、時刻t5と時刻t6と間の時刻t7において軌道上空間S2に物体が検知され、時刻t6よりも後の時刻t8において軌道上空間S2に物体が検知されなくなっている。これにより、時刻t7から時刻t8までの期間P8にわたり軌道上空間S2で検知された物体は、時刻t8以降の期間P9で軌道上空間S2から消失したと推察される。したがって、この場合、判定装置4は物体が軌道に転落していない、と判定する。
【0064】
例えば、駅員が転落した物体をトング等で回収した場合や、検知された物体が小動物等であって自力で空間Sから出ていった場合等では、既に転落物が軌道に存在しなくなっているため列車Tがプラットホーム2に到着しても衝突する危険性がない。この場合、判定装置4は、物体が軌道へ転落した旨の判定を取り消して警報装置5に通知する。警報装置5はこの通知を受けて警報を停止してもよい。
【0065】
2-2.変形例2
上述した実施形態において、検知装置1はそれぞれの空間で物体が検知されたか否かを特定していたが、その物体の形状に基づいて物体を識別してもよい。この場合、判定装置4は、検知装置1から受取る検知結果から、検知され識別された物体の軌跡を特定し、その軌跡に基づいて転落判定を行ってもよい。検知装置1は、例えば距離画像センサである場合、物体の表面で照射光を反射した位置に応じた点の集合として検知するから、距離が閾値以内の隣接する点同士を結んだ線は検知された物体の輪郭を表している。したがって、判定装置4は、検知装置1の検知結果を取得し、この検知結果に基づいて物体の輪郭(形状)を特定すればよい。そして判定装置4は、この物体の形状の遷移に基づき、物体の転落の有無を判定すればよい。
【0066】
2-3.変形例3
上述した実施形態において、変更部414が、接近情報を受取った場合に判定部412による転落判定を中断してもよいことを示したが、接近情報を受取った後、軌道側空間S1において列車Tが検知され、その後、この列車Tが検知されなくなった場合に、転落判定を再開してもよい。これにより、列車Tが発車していなくなった昇降位置から順に、軌道への物体の転落を監視することが可能となる。
【0067】
2-4.変形例4
判定装置4の制御部41によって実行されるプログラムは、磁気テープや磁気ディスクなどの磁気記録媒体、光ディスクなどの光記録媒体、光磁気記録媒体、半導体メモリなどの、コンピュータ装置が読取り可能な記録媒体に記憶された状態で提供し得る。また、このプログラムを、インターネットなどの通信回線経由でダウンロードさせることも可能である。なお、上記の制御部41によって例示した制御手段としてはCPU以外にも種々の装置が適用される場合があり、例えば、専用のプロセッサなどが用いられる。
【符号の説明】
【0068】
1…検知装置、10…支持柱、2…プラットホーム、20…縁部、21…上面、3…柵、4…判定装置、41…制御部、411…取得部、412…判定部、413…指示部、414…変更部、42…記憶部、421…遷移表、43…通信部、44…操作部、45…表示部、5…警報装置、6…情報提供装置、9…判定システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9