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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】フィステル形成のための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/11 20060101AFI20220613BHJP
   A61B 18/14 20060101ALI20220613BHJP
   A61M 1/36 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
A61B17/11
A61B18/14
A61M1/36 143
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021092176
(22)【出願日】2021-06-01
(62)【分割の表示】P 2021018006の分割
【原出願日】2013-10-11
(65)【公開番号】P2021130039
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2021-06-01
(31)【優先権主張番号】61/712,704
(32)【優先日】2012-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/785,548
(32)【優先日】2013-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513114032
【氏名又は名称】ティーブイエー メディカル, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ジーザス エム. リオス
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム イー. コーン
(72)【発明者】
【氏名】ディーラジ ケー. ラジャン
(72)【発明者】
【氏名】アダム エル. ベルマン
(72)【発明者】
【氏名】ダナ アール. メスター
(72)【発明者】
【氏名】ダミアン エー. ジェリック
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー フレージャー
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ イー. ディードン
(72)【発明者】
【氏名】リン ウォーレン ハムリック
【審査官】石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/068273(WO,A1)
【文献】特開2009-254874(JP,A)
【文献】特表2014-500072(JP,A)
【文献】国際公開第00/033908(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0119879(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 13/00-18/18
A61M 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本の血管間にフィステルを形成するための装置であって、
第1アーム、および
前記第1アームに調節可能に接続された第2アーム
を含み、
前記第1アームは、第1血管中に前進させられるように構成されており、前記第2アームは、第2血管中に前進させられるように構成されており、
前記第1アームおよび前記第2アームの少なくとも1つがフィステル形成部を含む、装置。
【請求項2】
前記フィステル形成部が、回転可能なブレードを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記回転可能なブレードが前記第1アームの遠位部分に回転可能に接続されている、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記回転可能なブレードが、電極を含む、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記フィステル形成部が、電極を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
調節用ノブをさらに含み、前記調節用ノブは、前記第1アームに対して前記第2アームを固定する第1構成と、前記第1アームに対する前記第2アームの調節を可能にする第2構成との間で動かすことができる、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記第1アームが前記第1血管中に配置されたときに前記第1アームの配置が前記第1アームの形状に前記第1血管を適合させるように、前記第1アームが第1剛体材料で形成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記第2アームが前記第2血管中に配置されたときに前記第2アームの配置が前記第2アームの形状に前記第2血管を適合させるように、前記第2アームが第2剛体材料で形成されている、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
接続部をさらに含み、前記第1アームが、前記接続部に固定して接続されており、前記第2アームが、前記接続部に調節可能に接続されている、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記第2アームが、ノブを有するコネクターを含み、前記コネクターは、前記第2アームを前記接続部に接続する、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
第1方向における前記ノブの回転が、前記接続部に対して前記コネクターを固定し、第2方向における前記ノブの回転が、前記接続部に対する前記コネクターの固定を解除する、請求項10に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2012年10月11日に出願された表題「DEVICES AND METHODS FOR FISTULA FORMATION」の米国特許仮出願第61/712,704号、および2013年3月14日に出願された表題「DEVICES AND METHODS FOR FISTULA FORMATION」の米国特許仮出願第61/785,548号の優先権を主張する。これらの内容全体は参照により本明細書中に援用される。
【0002】
本発明は、2本の血管間にフィステルを形成するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
フィステルは、概して2つの内臓間に形成される通路である。2本の血管間にフィステルを形成することは1つまたは複数の有益な機能を有し得る。例えば、動脈と静脈との間にフィステルを形成することによって、血液透析患者の血管系へのアクセスを提供することができる。特に、動脈と静脈との間にフィステルを形成することによって、毛細血管を迂回しながら血管間の迅速な血流が可能になる。次いで、針、カテーテル、または他のカニューレをフィステル付近の血管に挿入して、循環系から血液を抜き取り、透析装置に通し、かつ血液を身体に戻すことができる。フィステルによって流れを速めることで有効な血液透析を提供することができる。概して、フィステル形成は、動脈との外科的吻合のために静脈を横切開し、移動させる標的静脈の外科的切開を必要とする。これらのフィステルは、典型的には初期機能不全(患者が透析を受ける前の機能不全)の比率が約30~60%であり、フィステルが透析用として使用できるまで5~12ヶ月かかる。2本の血管間にフィステルを形成するための改善された方法を見つけることは有用であり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
いくつかのバリエーションでは、本明細書中で記載される方法は近位尺骨動脈と第1深部尺骨静脈との間に第1フィステルを形成することを含む。いくつかのバリエーションでは、本方法は、第1カテーテルの遠位部分を第1深部尺骨静脈中へと血管内で前進させることをさらに含んでもよい。これらのバリエーションのいくつかでは、第1カテーテルはフィステル形成部を含み、かつ近位尺骨動脈と第1深部尺骨静脈との間に第1フィステルを形成することは、フィステル形成部を使用して第1フィステルを形成することを含む。フィステル形成部は、例えば電極であってもよい。これらのバリエーションいくつかでは、本方法は、深部尺骨静脈の血管壁に対して第1カテーテルから遠ざける方向に電極を移動させることをさらに含み、近位尺骨動脈と第1深部尺骨静脈との間に第1フィステルを形成することは、深部尺骨静脈の血管壁および尺骨動脈の血管壁を切除することを含む。
【0005】
いくつかのバリエーションでは、本明細書中で記載される方法は、第2カテーテルの遠位部分を尺骨動脈中に前進させることをさらに含んでもよい。これらのバリエーションのいくつかでは、第1および第2カテーテルはそれぞれ1つまたは複数の磁石を含んでもよく、本方法は、第1および第2カテーテルのそれぞれの1つまたは複数の磁石を使用して第1および第2カテーテルを整列させることをさらに含んでもよい。いくつかのバリエーションでは、第2カテーテルはフィステル形成部を含んでもよく、かつ近位尺骨動脈と第1深部尺骨静脈との間に第1フィステルを形成することは、フィステル形成部を使用して第1フィステルを形成することを含む。フィステル形成部は、例えば電極であってもよい。これらのバリエーションのいくつかでは、本方法は、近位尺骨動脈の血管壁に対して第2カテーテルから電極を遠ざける方向に移動させることをさらに含んでもよく、そして近位尺骨動脈と第1深部尺骨静脈との間に第1フィステルを形成することは、近位尺骨動脈の血管壁および第1深部尺骨静脈の血管壁を切除することを含んでもよい。いくつかのバリエーションでは、第2カテーテルの遠位部分を血管内で近位尺骨動脈中に前進させることは、第2カテーテルの遠位部分を上腕動脈から近位尺骨動脈中へ血管内で前進させることを含む。これらのバリエーションのいくつかでは、本方法は、上腕動脈中にアクセス部位を作製し、かつアクセス部位を通って上腕動脈中へ第2カテーテルを前進させることをさらに含んでもよい。
【0006】
いくつかのバリエーションでは、第1カテーテルの遠位部分を第1深部尺骨静脈に血管内で前進させることは、第1カテーテルの遠位部分を第1深部尺骨静脈中に肘正中皮静脈から血管内で前進させることを含む。いくつかのバリエーションでは、本方法は、尺側皮静脈中にアクセス部位を形成することと、このアクセス部位を通って尺側皮静脈中に第1カテーテルの遠位部分を導入することと、尺側皮静脈を通って肘正中皮静脈中に第1カテーテルの遠位部分を前進させることとをさらに含んでもよい。
【0007】
いくつかのバリエーションでは、第1カテーテルの遠位部分を第1深部尺骨静脈中に血管内で前進させることは、第1カテーテルの遠位部分を橈側正中皮静脈から第1深部尺骨静脈中に血管内で前進させることを含む。いくつかのバリエーションでは、本方法は、橈側皮静脈中にアクセス部位を形成することと、このアクセス部位を通って橈側皮静脈中に第1カテーテルの遠位部分を導入することと、橈側皮静脈を通って橈側正中皮静脈中に第1カテーテルの遠位部分を前進させることとをさらに含んでもよい。いくつかのバリエーションでは、第1カテーテルの遠位部分を第1深部尺骨静脈中に血管内で前進させることは、第1カテーテルの遠位部分を第1上腕静脈から第1深部尺骨静脈中に血管内で前進させることを含む。いくつかのバリエーションでは、本方法は、第1上腕静脈中にアクセス部位を形成することと、このアクセス部位を通って第1上腕静脈中に第1カテーテルの遠位部分を導入することとをさらに含んでもよい。
【0008】
いくつかのバリエーションでは、本明細書中で記載される方法は、放射線不透過性ダイを近位尺骨動脈中に注入することを含んでもよい。付加的または代替的に、本方法は近位尺骨動脈と第2深部尺骨静脈との間に第2フィステルを形成することを含んでもよい。付加的または代替的に、本方法は橈側皮静脈および/または尺側皮静脈にカニューレ挿入して透析アクセスを提供することをさらに含んでもよい。
【0009】
他のバリエーションでは、本明細書中で記載される方法は、第1カテーテルの遠位部分を尺側皮静脈の一部、肘正中皮静脈を通って第1深部尺骨静脈中に血管内を前進させることと、第2カテーテルの遠位部分を上腕動脈の一部を通って尺骨動脈中に血管内を前進させることと、第1深部尺骨静脈と尺骨動脈との間にフィステルを形成することとを含んでもよい。さらなるバリエーションでは、本明細書中で記載される方法は、第1カテーテルの遠位部分を橈側皮静脈の一部、橈側正中皮静脈を通って第1深部尺骨静脈中に血管内を前進させることと、第2カテーテルの遠位部分を上腕動脈の一部を通り尺骨動脈中に血管内を前進させることと、第1深部尺骨静脈と尺骨動脈との間にフィステルを形成することとを含んでもよい。さらに他のバリエーションでは、本明細書中で記載される方法は、第1カテーテルの遠位部分を第1上腕静脈の一部を通り第1深部尺骨静脈中へ血管内を前進させることと、第2カテーテルの遠位部分を上腕動脈の一部を通り尺骨動脈中へ血管内を前進させることと、第1深部尺骨静脈と尺骨動脈との間にフィステルを形成することとを含んでもよい。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
患者を治療するための方法であって、
近位尺骨動脈と第1深部尺骨静脈との間に第1フィステルを形成すること
を含む、方法。
(項目2)
第1カテーテルの遠位部分を前記第1深部尺骨静脈中に血管内で前進させることをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記第1カテーテルがフィステル形成部を含み、前記近位尺骨動脈と前記第1深部尺骨静脈との間に前記第1フィステルを形成することが、前記フィステル形成部を使用して前記第1フィステルを形成することを含む、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記フィステル形成部が電極を含む、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記電極を前記深部尺骨静脈の血管壁に対して前記第1カテーテルから離れる方向に移動させることをさらに含み、前記近位尺骨動脈と前記第1深部尺骨静脈との間に前記第1フィステルを形成することが、前記深部尺骨静脈の前記血管壁および前記尺骨動脈の血管壁を切除することを含む、項目4に記載の方法。
(項目6)
第2カテーテルの遠位部分を前記尺骨動脈中に前進させることをさらに含む、項目2に記載の方法。
(項目7)
前記第1および第2カテーテルがそれぞれ1つまたは複数の磁石を含み、前記第1および第2カテーテルの各々の前記1つまたは複数の磁石を使用して前記第1および第2カテーテルを整列させることをさらに含む、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記第2カテーテルがフィステル形成部を含み、前記近位尺骨動脈と前記第1深部尺骨静脈との間の前記第1フィステルを形成することが、前記フィステル形成部を使用して前記第1フィステルを形成することを含む、項目6に記載の方法。
(項目9)
前記フィステル形成部が電極を含む、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記電極を前記近位尺骨動脈の血管壁に対して前記第2カテーテルから遠ざかる方向に移動させることをさらに含み、前記近位尺骨動脈と前記第1深部尺骨静脈との間に前記第1フィステルを形成することが、前記近位尺骨動脈の前記血管壁および前記第1深部尺骨静脈の血管壁を切除することを含む、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記第2カテーテルの前記遠位部分を前記近位尺骨動脈中に血管内で前進させることが、前記近位尺骨動脈中に上腕動脈から前記第2カテーテルの前記遠位部分を血管内で前進させることを含む、項目6に記載の方法。
(項目12)
前記上腕動脈中にアクセス部位を作製し、前記上腕動脈中に前記アクセス部位を通って前記第2カテーテルを前進させることをさらに含む、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記第1深部尺骨静脈中に前記第1カテーテルの前記遠位部分を血管内で前進させることが、肘正中皮静脈から前記第1深部尺骨静脈中に前記第1カテーテルの前記遠位部分を血管内で前進させることを含む、項目2に記載の方法。
(項目14)
尺側皮静脈中にアクセス部位を形成することと、前記アクセス部位を通って前記尺側皮静脈中に前記第1カテーテルの前記遠位部分を導入することと、前記尺側皮静脈を通って前記肘正中皮静脈中に前記第1カテーテルの前記遠位部分を前進させることとをさらに含む、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記第1深部尺骨静脈中に前記第1カテーテルの前記遠位部分を血管内で前進させることが、橈側正中皮静脈から前記第1深部尺骨静脈中に前記第1カテーテルの前記遠位部分を血管内で前進させることを含む、項目2に記載の方法。
(項目16)
橈側皮静脈中にアクセス部位を形成することと、前記アクセス部位を通って前記橈側皮静脈中に前記第1カテーテルの前記遠位部分を導入することと、前記橈側皮静脈を通って前記橈側正中皮静脈中に前記第1カテーテルの前記遠位部分を前進させることとをさらに含む、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記第1深部尺骨静脈中に前記第1カテーテルの前記遠位部分を血管内で前進させることが、第1上腕静脈から前記第1深部尺骨静脈中に前記第1カテーテルの前記遠位部分を血管内で前進させることを含む、項目2に記載の方法。
(項目18)
前記第1上腕静脈中にアクセス部位を形成することと、前記アクセス部位を通って前記第1上腕静脈中に前記第1カテーテルの前記遠位部分を導入することとをさらに含む、項目17に記載の方法。
(項目19)
放射線不透過性ダイを前記近位尺骨動脈中に注入することをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目20)
前記近位尺骨動脈と第2深部尺骨静脈との間に第2フィステルを形成することをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目21)
前記橈側皮静脈または前記尺側皮静脈にカニューレを挿入して透析アクセスを提供することをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目22)
患者を治療する方法であって、
尺側皮静脈の一部、肘正中皮静脈を通って第1深部尺骨静脈中に第1カテーテルの遠位部分を血管内で前進させることと、
上腕動脈の一部を通って尺骨動脈中に第2カテーテルの遠位部分を血管内で前進させることと、
前記第1深部尺骨静脈と前記尺骨動脈との間にフィステルを形成することと
を含む、方法。
(項目23)
患者を治療する方法であって、
橈側皮静脈の一部、橈側正中皮静脈を通って第1深部尺骨静脈中へ第1カテーテルの遠位部分を血管内で前進させることと、
上腕動脈の一部を通って尺骨動脈中に第2カテーテルの遠位部分を血管内で前進させることと、
前記第1深部尺骨静脈と前記尺骨動脈との間にフィステルを形成することと
を含む、方法。
(項目24)
患者を治療する方法であって、
上腕静脈の一部を通って第1深部尺骨静脈中に第1カテーテルの遠位部分を血管内で前進させることと、
上腕動脈の一部を通って尺骨動脈中に第2カテーテルの遠位部分を血管内で前進させることと、
前記第1深部尺骨静脈と前記尺骨動脈との間にフィステルを形成することと
を含む、方法。
(項目25)
2本の血管間にフィステルを形成するための装置であって、
ハンドル、
前記ハンドルに固定して接続された第1アーム、および
前記ハンドルに調節可能に接続された第2アーム
を含み、
前記第1および第2アームの少なくとも1つがフィステル形成部を含む、装置。
(項目26)
前記フィステル形成部が回転可能なブレードを含む、項目25に記載の装置。
(項目27)
前記回転可能なブレードが前記第1アームの遠位部分に回転可能に接続されている、項目26に記載の装置。
(項目28)
前記ハンドルが、前記回転可能なブレードを前記第1アームに対して回転させるように構成された第1コントロールを含む、項目27に記載の装置。
(項目29)
調節用ノブをさらに含み、前記調節用ノブを、前記第1アームに対して前記第2アームを固定する第1構成と、前記第1アームに対して前記第2アームの調節を可能にする第2構成との間で動かすことができる、項目25に記載の装置。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】腕の血管解剖図である。
図2】本明細書中で記載される方法の用途に適したカテーテルシステムのバリエーションを表す。
図3A】本明細書中で記載される例示的方法を表す。
図3B】本明細書中で記載される例示的方法を表す。
図3C】本明細書中で記載される例示的方法を表す。
図4A】フィステルを形成するための本明細書中で記載される装置のバリエーションを表す。
図4B】フィステルを形成するための本明細書中で記載される装置のバリエーションを表す。
図4C】フィステルを形成するための本明細書中で記載される装置のバリエーションを表す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
概して、腕の血管間に1つまたは複数のフィステルを形成するための方法が本明細書中に記載される。本明細書中で記載される方法は、以下で詳述するように、尺骨動脈と深部尺骨静脈との間にフィステルを形成することを含む。フィステルは、1つまたは複数のカテーテルを使用して形成してもよく、これは、尺骨動脈および/または深部尺骨静脈中に血管内で前進させてもよい。いくつかのバリエーションにおいて、第1カテーテルを尺骨動脈中に前進させてもよく、第2カテーテルを深部尺骨静脈中に配置させてもよく、かつ第1および第2カテーテルはそれらの間にフィステルを形成してもよい。血管部位へのアクセスは、以下でさらに詳細に記載するものなど、多くの方法で達成されてもよい。したがって、腕の血管系の解剖を手短に説明することは有用であり得る。
【0012】
図1は、肘周辺の腕の典型的な血管解剖の簡略図を示す。具体的には、図1は手のひらを上に向けて見られる右腕の前面図を示す。図で示されるように、上腕動脈(100)は表面上を上腕から遠位に伸び、肘関節付近の腕の奥まで入り込み、ここで、上腕動脈(100)は橈骨動脈(102)と尺骨動脈(104)とに分岐する。尺骨動脈(104)の上部は浅屈筋群(不図示)下で腕の内部深くにあり、前腕の尺骨側で手首へと続く。前枝尺側反回動脈(106)および後枝尺側反回動脈(108)は肘関節のすぐ下の尺骨動脈(104)から分岐し、これらの動脈は関節および周囲の筋肉に血液を供給する。さらに、腕の下方に(典型的には橈骨(不図示)の橈骨粗面直下)、骨間動脈(109)は尺骨動脈(104)から分岐し、最終的に後骨間動脈および前骨間動脈中に流れ込む。
【0013】
また、橈側皮静脈および尺側皮静脈も図1に示す。橈側皮静脈は二頭筋(不図示)の外縁に沿って続き、下方に前腕へと続く(上腕の橈側皮静脈を図1中では橈側皮静脈(110)と表示し、前腕の橈側皮静脈を橈側皮静脈(114)と表示する)。橈側正中皮静脈(116)は肘関節付近で橈側皮静脈(110)/(114)と合流する。尺側皮静脈は二頭筋の内側に沿って流れ、そして前腕へと続く(上腕の尺側皮静脈を尺側皮静脈(112)と表示し、前腕の尺側皮静脈を尺側皮静脈(120)と表示する)。肘正中皮静脈(118)(場合によっては、尺側正中皮静脈と称する)は尺側皮静脈(112)/(120)および総尺骨静脈(common ulnar vein)(120)(場合によって、この静脈部分を前腕の尺側皮静脈または前腕尺側皮静脈(basilica vein)とも称する)と合流する。肘正中皮静脈(118)および橈側正中皮静脈(116)は前腕正中皮静脈(122)(別名、正中静脈)の分岐で形成される。正中静脈(122)が肘正中皮静脈(118)と橈側正中皮静脈(116)とに分岐する付近で、貫通枝(124)はこれらの血管と腕の深静脈とを前腕筋膜(不図示)を介して接続する。図1で示すように、貫通枝(124)は第1深部尺骨静脈(126)および第2深部尺骨静脈(128)と連通する。これらの深部尺骨静脈は、上腕動脈(100)と骨間動脈(109)との間のいずれの側の尺骨動脈(104)とも実質的に平行に流れてもよく、尺骨動脈(104)から骨間動脈(109)の遠位側へ分岐してもよい。上腕動脈(100)と骨間動脈(109)との間で、深部尺骨静脈は典型的には尺骨動脈にごく接近して位置し、通常、尺骨動脈は深部尺骨静脈から2mm未満離れている。深部尺骨静脈の長さに沿って、横枝(不図示)は深部尺骨静脈を接続する場合もある。また、第1上腕静脈(130)および第2上腕静脈(132)も図1に示す。上腕静脈は概して上腕動脈(100)に沿って流れ、深部尺骨静脈は肘関節付近で上腕静脈に流れ込む。さらに、一対の橈骨静脈((144)および(146))は橈骨動脈に沿って流れてもよく、上腕静脈の一方または両方に流れ込んでもよい。第1骨間静脈(140)および第2骨間静脈(142)も図1に示されており、これらはそれぞれ第1深部尺骨静脈(126)および第2深部尺骨静脈(128)から分岐してもよく、骨間動脈(109)と実質的に平行に流れてもよい。
【0014】
上述のように、本明細書中で記載される方法は、尺骨動脈と深部尺骨静脈との間にフィステルを形成することを含む。好ましくは、フィステルを近位尺骨動脈中のある部位で形成する。本明細書中で用いられる場合、「近位尺骨動脈」という用語は、上腕動脈と骨間動脈の分枝との間の尺骨動脈を意味する。いくつかのバリエーションでは、上腕動脈と尺骨動脈との間の分枝から約6cm以内の位置で尺骨動脈と深部尺骨静脈との間にフィステルを形成してもよい。これらのバリエーションのいくつかでは、フィステルを上腕動脈と尺骨動脈との間の分枝から約4cm未満の位置で形成してもよい。それらの深い解剖学的位置のために、深部尺骨静脈は外科的にアクセスすることが困難であり、したがって通常の外科的フィステル形成技術に望ましい標的部位ではない。しかしながら、深部尺骨静脈の深い解剖学的位置は、これらの静脈が通常(例えば、針刺しまたは他の外傷によって)損傷を受けないことを意味し、このことはフィステル寿命を最適化する可能性がある。さらに、深部尺骨静脈は橈側皮静脈系および尺側皮静脈系の両方に流れ込むので、尺骨動脈と深部尺骨静脈との間にフィステルを形成することは、透析患者に複数の上腕カニューレ挿入オプションを提供する可能性がある。両深部尺骨静脈が橈側皮静脈系および尺側皮静脈系に流れ込むので、いずれの深部尺骨静脈を選択してもよく、場合によっては深部尺骨静脈の各々を利用して異なるフィステルを形成してもよい。
【0015】
概して、本明細書中で記載される方法は、第1カテーテルの遠位部分を尺骨動脈中に血管内を前進させることと、第2カテーテルの遠位部分を第1深部尺骨静脈中に血管内を前進させることと、尺骨動脈と第1深部尺骨静脈との間にフィステルを形成することとを含む。上述のように、フィステルを好ましくは近位尺骨動脈と第1深部尺骨静脈との間に形成し、したがって、この方法は、第1カテーテルの遠位部分を近位尺骨動脈中に血管内を前進させることと、第2カテーテルの遠位部分を第1深部尺骨静脈中に血管内を前進させることと、近位尺骨動脈と第1深部尺骨静脈との間にフィステルを形成することとを含んでもよい。カテーテルを尺骨動脈および/または深部尺骨静脈中に血管内で前進させる場合、さらに以下で詳述するように、これらの血管へのアクセスは任意の好適な方法によって達成されてもよい。第1および第2カテーテルを整列させて、所望のフィステル部位に対して1つまたは複数のフィステル形成部(例えば、さらに詳細に後述するような、1つまたは複数の電極、機械的切断部、化学反応機構、低温焼灼(cryogenic-cautery)装置、レーザー焼灼装置、それらの組み合わせなど)を配置できる。第1および第2カテーテルの一方または両方を、それらの各々の血管内を前進または後退させて、フィステル形成部位に対して1つまたは複数のフィステル形成部を軸方向に配置してもよい。第1および第2カテーテルの一方または両方を回転させて、フィステル形成部位に対して1つまたは複数のフィステル形成部を回転させて配置させてもよい(例えば、尺骨動脈中のフィステル形成部を深部尺骨静脈に向ける、深部尺骨静脈中のフィステル形成部を尺骨動脈に向ける、尺骨動脈中のフィステル形成部を深部尺骨静脈中のフィステル形成部に向ける、など)。本明細書中で記載される方法は、さらに以下で詳述するように、1つまたは複数の磁石、マーカー、ならびに/または第1および/もしくは第2カテーテルの位置決めを支援する他のアラインメント部を使用することを含んでもよい。一旦1つまたは複数のフィステル形成部をフィステル形成部位に対して配置すると、フィステル形成部を作動させて、尺骨動脈と深部尺骨静脈との間の組織を切断、切除、または他の方法で除去して、それらの間にフィステルを形成してもよい。
【0016】
フィステル形成部の起動後、フィステルの状態を評価する1つまたは複数のステップを実施してもよい。例えば、いくつかのバリエーションにおいて、放射線不透過性色素(または他の好適な造影剤)を尺骨動脈に導入して、フィステル形成部の起動後の尺骨動脈から深部尺骨静脈中への血流を確認してもよい。これらのバリエーションのいくつかでは、放射線不透過性色素を尺骨動脈中に導入する前に第1および/または第2カテーテルをそれらの各血管から除去してもよい。他のバリエーションでは、放射線不透過性色素を、第1カテーテルを通して尺骨動脈中に導入してもよい。いくつかのバリエーションでは、フィステルの形成は、1つまたは複数の放射線不透過剤を第1および/または第2カテーテルから放出させるように作用してもよい。例えば、いくつかのバリエーションでは、尺骨動脈中に前進させた第1カテーテルはフィステル形成部を含んでもよく、そして深部尺骨静脈中を前進させた第2カテーテルはその中に放射線不透過剤を収容するバルーンを含んでもよい。起動によって尺骨動脈と深部尺骨静脈との間にフィステルが形成され、またバルーンを破裂させて放射線不透過剤を放出するように、第1および第2カテーテルを整列させてもよい。
【0017】
本明細書中で記載される方法は、尺骨動脈と第2深部尺骨静脈との間に第2フィステルを形成することをさらに含んでもよい。例えば、ユーザーまたは医師が尺骨動脈と第1深部尺骨静脈との間の流れが不十分であると判断した場合、第2フィステルを尺骨動脈と第2深部尺骨静脈との間に形成してもよい。第2フィステルを同一の処置の間に形成してもよく、またはその後の処置の間に形成してもよい。第2フィステルは本明細書を通して記載される方法のいずれかを用いて形成してもよい。
【0018】
深部尺骨静脈は橈側皮系および尺側皮系の両方に流れ込むので、尺骨動脈と深部尺骨静脈との間にフィステルを有する患者は、いずれかの系からの血管を使用してカニューレ挿入しても透析アクセスを提供できる。いくつかのバリエーションでは、本明細書中で記載される方法は、尺骨動脈と深部尺骨静脈との間に形成されたフィステルを成熟させ(これには6ヶ月以上もかかる可能性がある)、橈側皮系および尺側皮系のいずれかにカニューレ挿入して血管アクセスを提供することを含んでもよい。本方法は、橈側皮系または尺側皮系の静脈を通る流れを評価することと、透析アクセスに好適な流量(ある例では約600ml/分であり得る)を有する静脈を選択することと、この静脈にカニューレ挿入して血管アクセスを提供することとをさらに含んでもよい。いくつかのバリエーションでは、これは、肘正中皮静脈の一部にカニューレ挿入することを含んでもよい。いくつかのバリエーションでは、これは、橈側皮静脈の一部にカニューレ挿入することを含んでもよい。他のバリエーションでは、これは、尺側皮静脈の一部にカニューレ挿入することを含んでもよい。いくつかのバリエーションでは、さらに以下で詳述するように、橈側皮静脈および尺側皮静脈の両方にカニューレ挿入してもよい。橈側皮静脈にカニューレ挿入するバリエーションでは、本方法は、肘正中皮静脈を結紮またはコイル塞栓して、フィステルから尺側皮静脈中への流れを防止または減少させることをさらに含んでもよい。反対に、尺側皮静脈にカニューレ挿入するバリエーションでは、本方法は、橈側正中皮静脈を結紮またはコイル塞栓して、フィステルから橈側皮静脈中への流れを減少させることをさらに含んでもよい。
【0019】
いくつかのバリエーションでは、本方法は、少なくとも1つの上腕静脈を結紮またはコイル塞栓することをさらに含んでもよい。これらのバリエーションでは、上腕静脈の一方または両方を結紮またはコイル塞栓してもよい。上腕静脈を通る流れを制限することで、橈側皮系および/または尺側皮系へ流れを迂回させてもよく、このことによりその中を通る流れを改善してもよい。これらのバリエーションでは、上腕静脈(複数可)を、フィステルが形成される同一の手順の間に塞いでもよい、または後の手順の間(例えば、フィステル形成後約4週間~約8週間)に塞いでもよい。いくつかのバリエーションでは、第1上腕静脈をフィステル形成処置の間に塞いでもよく、一方、第2上腕静脈をその後の処置の間に塞いでもよい。
【0020】
本明細書中で記載される方法を使用して尺骨動脈と深部尺骨静脈との間にフィステルを形成してもよく、これはフィステルの開存性を維持するためのステントまたは他の接続構造を必要としない場合があると理解されるべきである。しかしながら、いくつかのバリエーションでは、本明細書中で記載される方法は、ステント、チューブ、または他の構造を尺骨動脈と深部尺骨静脈との間に配置することをさらに含んでもよい。さらに、すぐ上に記載した方法は、カテーテルをそれぞれ尺骨動脈および深部尺骨静脈の両方に前進させることを含んでもよいが、いくつかのバリエーションでは、深部尺骨静脈中に配置された第1カテーテルのみを使用してフィステルを形成してもよく、または尺骨動脈中に配置された第1カテーテルのみを使用して形成してもよいと理解すべきである。第1カテーテルを尺骨動脈中に配置し、第2カテーテルを深部尺骨静脈中に配置する場合、いずれかのカテーテルまたは両方のカテーテルが1つまたは複数のフィステル形成部を含んでもよい。尺骨動脈中に配置された第1カテーテルがフィステル形成部を含む場合、そのフィステル形成部は尺骨動脈から深部尺骨静脈へ一方向にフィステルを形成してもよい。尺骨動脈中に配置された第2カテーテルがフィステル形成部を含む場合、そのフィステル形成部は深部尺骨静脈から尺骨動脈中へ一方向にフィステルを形成してもよい。第1および第2カテーテルがどちらもフィステル形成部を含む場合、フィステルは、深部尺骨静脈から尺骨動脈中へ一方向に、尺骨動脈から深部尺骨静脈中へ一方向に形成してもよく、または尺骨動脈および深部尺骨静脈両方から同時に形成してもよい。
【0021】
任意の好適なカテーテル(複数可)を用いて本明細書中で記載される方法を使用してフィステルを形成してもよい。本明細書中で記載される方法は、その全体が参照により援用される、2011年11月16日に出願された、表題「DEVICES AND METHODS FOR FORMING A FISTULA」の米国特許出願第13/298,169号で記載される1つまたは複数の装置を使用してもよい。いくつかのバリエーションでは、尺骨動脈中に配置された第1カテーテルおよび深部尺骨静脈中に配置された第2カテーテルを使用してフィステルを形成してもよい。図2は、尺骨動脈と深部尺骨静脈との間にフィステルを形成するために使用され得るカテーテル系(200)の1つのバリエーションを示す。図2で示されるように、系(200)は第1カテーテル(202)と第2カテーテル(203)とを含んでもよい。第1カテーテル(202)はカテーテル本体(204)と、カテーテル本体(204)の開口部(205)から突き出していてもよい電極(206)とを含んでもよい。電流を電極(206)に通して、電極(206)に接触した組織を切除または他の方法で除去することができる。いくつかのバリエーションでは、第1カテーテル(202)は、カテーテル本体内に絶縁ハウジング(208)(例えば、セラミックハウジングなど)を含んでもよく、これにより組織除去の間に電極(206)によって発生し得る熱から第1カテーテル(202)の他の部品を保護するのに役立つ可能性がある。電極(206)を、電極(206)がカテーテル本体(204)中に維持または他の方法で保持される位置から、電極(206)がカテーテル本体(204)(図2で示されるものなど)から離れる方向に伸びる位置まで選択的に動かしてもよく、かつ電極(206)はまた組織の切除後に後退/低輪郭(low-profile)位置(先の後退した位置と同一または異なる位置)まで選択的に戻してもよい。いくつかのバリエーションでは、他の方法ではカテーテル本体(204)によって拘束されない場合、電極(206)を拡張された位置に向かって傾けてもよい。電極(206)を含むフィステル形成部を図2に示すが、本明細書中で記載される方法は、その全体が参照により既に組み込まれている米国特許出願第13/298,169号でさらに詳細に記載されているものなど、任意の好適なフィステル形成部(例えば、1つまたは複数の電極/電気焼灼器機構、1つまたは複数の機械的切断機構(例えばブレード、ランセット、針など)1つまたは複数の化学的装置、低温焼灼(cryogenic-cautery)装置、レーザー焼灼装置、それらの組み合わせなど)を含むカテーテルを利用してもよく、上記参考文献に記載されている任意の方法で操作してもよいことを理解すべきである。
【0022】
図2では第1カテーテル(202)および第2カテーテル(203)の両方を有するものとして示すが、系(200)は2つのカテーテルを含む必要はない。例えば、尺骨動脈のみまたは深部尺骨静脈のみに配置されたカテーテルを用いてフィステルが形成される本明細書中で記載される方法のバリエーションでは、系(200)は第1カテーテル(202)のみを含んでもよい。第2カテーテル(203)を有するバリエーションでは、カテーテル(203)は任意の好適な部品または部品の組み合わせを有してもよい。例えば、第2カテーテル(203)は、その中に伸びる凹部(210)を有するカテーテル本体(208)を含んでもよい。凹部(210)は、絶縁材料(不図示)でコーティングしてもよく、これにより第1カテーテル(202)の1つまたは複数の構成要素を損傷することなく第1カテーテルの電極(206)を受容し、接触するためのバックストップとして機能してもよい。付加的または代替的に、第2カテーテル(203)は1つまたは複数のフィステル形成部を含んでもよく、これにより第1カテーテル(202)のフィステル形成部(複数可)と同じまたは異なっていてもよい。
【0023】
本明細書中で記載される方法は、1つまたは複数のアライメント部を含む1つまたは複数のカテーテルを利用してもよく、これは、血管系内でのカテーテルの位置決めに役立つ可能性がある。例えば、いくつかのバリエーションにおいて、本方法は、2つ以上のカテーテル(およびそれらとともに、関連する血管)をさらに近づかせることを支援するために1つまたは複数のアライメント部を使用することを含んでもよい。付加的または代替的に、本方法は、血管および/または他のカテーテルに対して特異的な回転構成に1つまたは複数のカテーテルを配置するために1つまたは複数のアライメント部を使用することを含んでもよい。付加的または代替的に、本方法は、血管(複数可)内で軸方向に1つまたは複数のカテーテルを位置決めするために1つまたは複数のアライメント部を使用することを含んでもよい。例えば、1つまたは複数のアライメント部は、フィステル形成部の起動が2本の血管間でフィステルを形成させるように、尺骨動脈および深部尺骨静脈に対してカテーテルのフィステル形成部を位置決めするような構成であってよい。
【0024】
いくつかのバリエーションでは、カテーテルは1つまたは複数の磁石のアラインメント構成要素を含んでもよい。本明細書中で記載するカテーテルでの使用のための磁石配置の例は、米国特許出願第13/298,169号で見出すことができ、その全体が参照により既に援用されている。これらの磁石アラインメント構成要素は、1つまたは複数のさらなる部品(例えば、第2カテーテルの1つまたは複数の部分、1つまたは複数の磁石または本体から外側に位置する他の構成要素)にひきつけられて、血管内のカテーテルの配置または整列を支援してもよい。例えば、本体の外側に配置された1つまたは複数の磁石はカテーテルの磁石アラインメント構成要素と相互作用して、血管系を通るカテーテルの前進の促進を支援してもよい。付加的または代替的に、第1カテーテルの1つまたは複数の磁石アラインメント部は第2カテーテルの1つまたは複数の磁石アラインメント部と相互作用して、第1および第2カテーテルを互いにひきつけ、かつ/または第1および第2カテーテルを特定の回転および/もしくは軸アラインメントに偏らせてもよい。
【0025】
例えば、図2で示される系(200)のバリエーションでは、第1カテーテル(202)および第2カテーテル(203)の各々は複数の磁石アラインメント部(212)を含んでもよい。これらの磁石アラインメント部(212)は、第1カテーテル(202)の開口部(205)が第2カテーテル(203)の凹部(210)と軸方向に整列するように第1カテーテル(202)および第2カテーテル(203)の軸方向の位置調節を偏らせるように構成されていてもよい。磁石アラインメント部(212)はまた、第1カテーテル(202)の開口部(205)が第2カテーテル(203)の凹部(210)に面するように第1カテーテル(202)および第2カテーテル(203)の回転位置調節を偏らせるように構成されていてもよい。したがって、磁石アラインメント部(212)を使用して、電極(206)が、フィステル形成の間に開口部(205)から第2カテーテル(203)の凹部(210)へと延長され得るように、各血管内の第1カテーテル(202)および第2カテーテル(203)の位置決めを支援してもよい。
【0026】
付加的または代替的に、いくつかのバリエーションでは、カテーテルは、2本以上の血管に近づけるための1つまたは複数の形状変更部を含んでもよい。これらのバリエーションでは、形状変更部は、血管系を通ってカテーテルが前進する間に第1構成を有してもよい。カテーテルが標的位置に到達すると、形状変更部を第2構成に変更してもよく、これによりカテーテルの全体的な形状を変更してもよい。カテーテルが形状を変える際に、カテーテルは血管の1つまたは複数の部分を移動または再構成してもよく、これにより血管の部分(複数可)を第2血管の1つまたは複数の部分により近づけることを支援してもよい。本明細書中で記載するカテーテル用としての形状変更部の例は、米国特許出願第13/298,169号で見出すことができ、その全体が参照により既に援用されている。
【0027】
付加的または代替的に、本方法は、前進およびその位置決定の間に1つまたは複数のカテーテルからの1つまたは複数のマーカーを可視化することを含んでもよい。いくつかのバリエーションでは、マーカーを直接可視化してもよい。他のバリエーションでは、マーカーを間接的に可視化してもよい(例えば、超音波、蛍光透視法および/またはX線可視化による)。マーカーは、例えばカテーテルの1つまたは複数の表面、カテーテルの内側といったカテーテルに関連するいずれかの場所にあってもよい。いくつかのバリエーションでは、カテーテルの1つまたは複数の部分を、エコー源性またはX線撮影材料から作製してもよい。マーカーは、任意の好適な方法、例えば、機械的取り付け(例えば、カテーテルの一部、周囲境界(circumferential circumscription)などに埋め込む)、接着、溶接、はんだ付け、それらの組み合わせなどによってカテーテルに取り付けてもよい。例えば、図2中で上に示した系(200)のバリエーションでは、第1カテーテル(202)および第2カテーテル(203)の各々は1つまたは複数のマーカー(214)を含んでもよい。これらのマーカー(214)を第1カテーテル(202)および第2カテーテル(203)の前進および/または位置決定の間に可視化して、カテーテルが血管内で適切な位置にあることを確認してもよい。例えば、本方法が第1カテーテル(202)の開口部(205)を第2カテーテル(203)の凹部(210)に対して軸方向に整列させること、および/または第1カテーテル(202)の開口部(205)を第2カテーテル(203)の凹部(210)に対して回転方向に整列させることを含むバリエーションでは、本方法は、第1カテーテル(202)および/または第2カテーテル(203)の1つまたは複数のマーカー(214)を可視化して、この位置決定を確かめることをさらに含んでもよい。
【0028】
いくつかのバリエーションでは、1つまたは複数のカテーテルは、1つまたは複数のバルーンまたは他の拡張可能な構造を含んでもよい。これらの拡張可能な構造は1つまたは複数の機能を果たしてもよい。場合によっては、拡張可能な構造は、電極表面(または他のフィステル形成部)の1つまたは複数の血管壁に対する並置を支援してもよい。この並置は、組織の一時的な平坦化または他の方法での再配置を支援してもよく、またはその区域から血液を移動させるように作用してもよい。さらに、フィステル形成の間に、拡張可能な部材は、フィステル形成部を血管壁から除去する際に、フィステル形成部を組織に対して押しつけ続けてもよい。いくつかのバリエーションでは、拡張可能な構造は、依然として血管を通して血液を流れさせつつ、カテーテルと血管壁との間の並置を支援する構成であってもよい。場合によっては、1つまたは複数の拡張可能な構造はフィステルの寸法または形状の修正または他の方法での変更を支援してもよい。さらに他の例では、拡張可能な構造を使用して、1つまたは複数の血管の一部を拡張、収縮、または他の方法で変位させてもよい。これらのバリエーションのいくつかでは、この変位は、血管の一部を皮膚表面に近づけることを支援してもよい。
【0029】
図3A~3Cは、第1深部尺骨静脈と尺骨動脈との間にフィステルを形成するために図2のカテーテル系(200)を使用し得る例示的方法を表す。図1および2のラベリングは共通の部品および解剖学的位置に使用するものである。図3Aで示すように、本方法は、第1カテーテル(202)の遠位部分を尺骨動脈(104)中に血管内で前進させることを含んでもよい。図3Aに示す方法では、第1カテーテル(202)を尺骨動脈(104)中に上腕動脈(100)から前進させてもよい。いくつかのバリエーションでは、本方法は、上腕動脈(100)中にアクセス部位(不図示)を作製することと、第1カテーテル(202)を上腕動脈(100)中にアクセス部位を通って前進させることとを含んでもよい。しかしながら、さらに以下で詳述するように、第1カテーテル(202)を尺骨動脈中に任意の好適な方法で前進させることができると理解されるべきである。
【0030】
図3Bで示されるように、本方法は第2カテーテル(203)を第1深部尺骨静脈(126)中に血管内で前進させることをさらに含んでもよい(第2カテーテル(203)を深部尺骨静脈(126)または(128)中に前進させ得ると理解すべきである)。図3Bに示す方法では、第2カテーテル(203)を第1深部尺骨静脈(126)中に貫通枝(124)から前進させてもよく、貫通枝(124)は、尺側皮静脈(112)および肘正中皮静脈(118)を通って第2カテーテル(203)を前進させることによってアクセスし得る。いくつかのバリエーションでは、本方法は、尺側皮静脈(112)中にアクセス部位(不図示)を作製することと、第2カテーテル(203)を尺側皮静脈(112)中へアクセス部位を通って前進させることとを含んでもよい。しかしながら、さらに以下で詳述するように、第2カテーテル(203)を深部尺骨静脈(126)中へ任意の好適な方法で前進させてもよいと理解すべきである。図3Aでは第2カテーテル(203)を深部尺骨静脈(126)中に前進させる前に第1カテーテル(202)を尺骨動脈(104)中に前進させるように示しているが、第1カテーテル(202)および第2カテーテル(203)を任意の順序で前進させてもよいと理解すべきである。
【0031】
一旦第1カテーテル(202)および第2カテーテル(203)の遠位端を尺骨動脈(104)および深部尺骨静脈(126)中へ前進させると、第1カテーテル(202)および第2カテーテル(203)を互いに対して軸方向に位置合わせして、図3Cで示すように、第1カテーテル(202)の開口部(205)を第2カテーテル(203)の凹部(210)と整列させてもよい。さらに、第1カテーテル(202)の開口部(205)および第2カテーテル(203)の凹部(210)が所望のフィステル形成部位と軸方向に整列するように、第1カテーテル(202)および第2カテーテル(203)を、それぞれ尺骨動脈(104)および深部尺骨静脈(126)に対して軸方向に位置合わせしてもよい。場合によっては、第1カテーテル(202)の開口部(205)および第2カテーテル(203)の凹部(210)が(例えば、尺骨動脈および深部尺骨静脈中の)所望のフィステル形成部位と軸方向に整列される場合、第1カテーテルおよび第2カテーテルの遠位端は、図3Bで示すように、骨間動脈(109)および骨間静脈(例えば第1骨間静脈(140))の分枝から遠位の尺骨動脈(104)および深部尺骨静脈(126)中に達する可能性がある。あるいは、第1カテーテル(202)の開口部(205)および第2カテーテル(203)の凹部(210)を前述のように軸方向に整列させる場合、第1カテーテル(202)の遠位端は骨間動脈(109)中に達してもよく、かつ/または第2カテーテル(203)の遠位端は骨間静脈(例えば、第1骨間静脈(140))中に達してもよい。
【0032】
さらに、開口部(205)が第2カテーテル(203)の凹部(210)に面し得るように第1カテーテル(202)および第2カテーテル(203)を回転方向に整列させてもよい。上述のように、いくつかのバリエーションでは、本方法は、1つまたは複数の磁石アラインメント部(212)を使用して第1カテーテル(202)および第2カテーテル(203)の軸方向または回転方向の位置合わせを支援することを含んでもよい。付加的または代替的に、第1カテーテル(202)および第2カテーテル(203)の位置は、第1および/または第2カテーテルの磁石(214)を可視化することによって確認してもよい。
【0033】
一旦第1カテーテル(202)および第2カテーテル(203)が互いとそれぞれの血管とに対して位置合わせされると、電極(206)を第1カテーテル(202)の開口部(205)から前進させて、電極(206)を尺骨動脈(104)の血管壁に押しつけてもよい。エネルギーを電極(206)に供給して組織を切断してもよく、これによって電極(206)を尺骨動脈(104)から深部尺骨静脈(126)の壁を通って深部尺骨静脈(126)中に前進させてもよい。いくつかのバリエーションでは、電極(206)を深部尺骨静脈(126)から尺骨動脈(104)中に前進させ得るように、電極(206)を含む第1カテーテル(202)を深部尺骨静脈(126)中に配置してもよく、かつ第2カテーテル(203)を尺骨動脈(104)中に配置してもよい。一旦フィステルが尺骨動脈(104)と深部尺骨静脈(126)との間に形成されると、さらに詳細に上述するものなどの、1つまたは複数の造影剤をフィステル中に通してもよく、かつ/または第2フィステルを形成してもよい。
【0034】
本明細書中で記載される方法の一部またはすべてで、患者の1つまたは複数の部分を本方法のステップの一部またはすべてのステップで固定してもよいと理解すべきである。例えば、フィステルが腕の2本の血管間に形成される場合、腕の1つまたは複数の部分(例えば、手首、肘など)を固定してもよい。これらのバリエーションのいくつかでは、患者の手首を固定してもよい。手首を固定する場合、1つまたは複数の血管へのアクセスを作製する前に手首を固定してもよい。これらのバリエーションのいくつかでは、手首はフィステルの形成後まで固定されたままであってよい。腕の一部が固定される場合、必要ならば、腕を一時的に解放して腕の正常な位置にしてもよいと理解すべきである。
【0035】
図4Aおよび4Bは、フィステルを形成するために用いてもよい装置(400)の斜視図を表し、図4Cは垂直断面図を表す。装置(400)を、上述のように2本以上の血管間にフィステルを形成するために使用してもよいが、本明細書およびその全体が参照により既に援用されている米国特許出願第13/298,169号で記載されているものなど、いずれか2本の血管間にフィステルを形成するために装置(400)を用いてもよい。図4Aで示すように、装置(400)は第1アーム(402)と、第2アーム(404)と、ハンドル(406)と、フィステル形成部(408)とを含んでもよい。概して、各アームが各々の血管中に配置される場合、血管がアームの形状と実質的に適合し得るように、第1アーム(402)および第2アーム(404)を1つまたは複数の剛体材料(例えば、1つまたは複数の金属、例えばステンレス鋼、1つまたは複数のプラスチック、それらの組み合わせなど)から形成してもよい。
【0036】
図4A~4Cに示すバリエーションでは、ハンドル(406)は接続部(414)およびグリップ部(416)を含んでもよい。グリップ部(416)は、ユーザーが持つことができるような寸法および構成であってもよく、任意の好適な寸法を有し得る。例えば、いくつかのバリエーションでは、グリップ部(416)は任意の好適な長さ(例えば、約8cm~約25cm、約12cm~約20cmなど)および任意の好適な直径(例えば、約3cm~約12cm、約5cm~約8cmなど)を有してもよい。接続部(414)(グリップ部(416)の遠位端に接続されていてもよい)は概して互いに対して第1アーム(402)および第2アーム(404)を位置合わせするように構成される。図で示されるように、第1アーム(402)を接続部(414)に固定して接続してもよく、第2アーム(404)を接続部(414)に調節可能に接続してもよい。具体的には、第2アーム(414)の近位端は、トラック(420)を有するコネクター(418)を含んでもよく(図4C中に垂直断面図で表されるとおり)、かつノブ(422)はコネクター(418)を接続部(414)に接続してもよい。具体的には、ノブ(422)は、トラック(420)を通って接続部(414)に達し得るピン(424)を含んでもよい。ノブ(422)を第1方向に回転させて、接続部(414)に対してコネクター(418)を固定させてもよく、かつ第2方向に回転させて、接続部(414)に対してコネクター(418)を調節してもよい。
【0037】
コネクター(418)が接続部(414)に対して調節可能である場合、トラック(420)をピン(424)に対して回転および/または摺動させてもよい。コネクター(418)の回転は、第1アーム(402)に対して第2アーム(404)を回転させてもよく、一方、コネクター(418)の摺動は第2アーム(404)と第1アーム(402)との間の距離を調節してもよい。したがって、第2アーム(404)の位置を調節して、第1アーム(402)と第2アーム(404)との間の特定の関係を設定してもよく、ノブ(422)を調節して、第1アーム(402)に対する第2アーム(404)の位置を一時的に固定してもよい。第1アーム(402)および第2アーム(404)がそれぞれ第1血管および第2血管中に配置されている場合、第1アームおよび第2アーム間の相対的位置合わせは、第1血管および第2血管間の相対的位置合わせにも影響する可能性がある。
【0038】
フィステル形成部(408)は、詳細に上述されているような任意の好適なフィステル形成部(例えば、切断機構、電極)であってよい。図4A~4Cで示されるバリエーションでは、フィステル形成部は第1アーム(402)に接続されたブレード(409)を含んでもよい。ブレード(409)は、ブレード(409)が第1アーム(402)内に収容されている低輪郭構成(図4Cに示す)と、ブレード(409)が第1アーム(402)から伸びる切断構成(図4Bに示す)との間で回転可能であり得る。ブレード(409)が第1アーム(402)から外へ回転する際に、ブレード(409)の刃先が組織を切断してもよい。いくつかのバリエーションでは、ブレード(409)は、電流を組織に供給するための電極としても作用してもよい。ブレード(409)は任意の好適な方法で回転してもよい。図4A~4Cで示される装置(400)のバリエーションでは、装置(400)はブレード制御ノブ(410)を含んでもよい。ブレード制御ノブ(410)をリンク機構(412)に接続してもよく、このリンク機構を次にブレード(409)に接続してもよい。リンク機構(412)は、制御ノブ(410)の第1方向での回転がリンク機構(412)を前進させ、これによって次にブレード(409)が低輪郭構成から回転して切断構成になるような構成であってもよい。反対に、制御ノブ(410)の第2方向の回転はリンク機構(412)を後退させ、これによって次にブレード(409)を切断構成から低輪郭構成に回転させてもよい。フィステル形成部(408)は図4Aでは第1アーム(402)に接続されるものとして示されているが、場合によってはフィステル形成部(408)を第2アーム(404)に接続してもよく、他の例では、第1アーム(402)および第2アーム(404)の両方がフィステル形成部を含んでもよいと理解されるべきである。
【0039】
上述のように、装置(400)を使用してフィステルを形成してもよい。これらのバリエーションでは、第1アーム(402)を第1血管中に導入してもよく、第2アーム(404)を第2血管中に導入してもよい。第2アーム(402)に対する第2アーム(404)の位置を調節して、第1血管に対して第2血管を再配置してもよい。血管が要望通りに配置される場合、第2アーム(404)を第1アーム(402)に対して固定してもよい(例えば、ノブ(422)を回転させることによる)。アームを固定された関係に設定して、フィステル形成部(408)を起動してフィステルを形成してもよい。例えば、これは第1アーム(402)に対してブレード(409)を回転させて、第1アーム(402)と第2アーム(404)との間に位置する第1および第2血管の組織を切断することを含んでもよい。
【0040】
尺骨動脈アクセス
【0041】
カテーテルまたは他のツールを尺骨動脈中へ血管内で前進させるバリエーションでは、尺骨動脈へのアクセスは任意の好適な方法で達成してもよい。いくつかのバリエーションでは、カテーテルを上腕動脈に沿って尺骨動脈中へ前進させてもよい。これらの方法のいくつかでは、カテーテルを、上腕アクセス部位を経て血管系に導入してもよい。これらの方法のいくつかでは、上腕動脈に、上腕動脈中で遠位方向に向けられたカニューレを挿入してもよい。カニューレは任意の好適な寸法であってよく(例えば、約5Fr、約7Fr、約5Fr~約7Fr)、任意の好適な方法で、例えばセルジンガー技術、微小穿刺セット、および/または切開処置を使用して、上腕アクセス部位中に導入してもよい。他のバリエーションでは、カテーテルを上腕動脈に沿って上腕動脈の上流のアクセス部位から前進させてもよい。例えば、カテーテルを、大腿動脈アクセス部位を経て血管系に導入してもよく、そこから上腕動脈へ前進させてもよい。いくつかのバリエーションでは、尺骨動脈に直接アクセスしてもよい。これらのバリエーションのいくつかでは、尺骨アクセス部位を尺骨動脈中で形成してもよく(例えば、尺骨動脈が表面上に位置する手首または前腕では遠位位置で)、カテーテルを、尺骨アクセス部位を通って逆行方式で前進させてもよい。これらのバリエーションでは、尺骨動脈に前述のようにカニューレ挿入してもよい。さらに他のバリエーションでは、カテーテルまたは他のツールを、橈骨動脈中のアクセス部位を通って尺骨動脈中に血管内で前進させてもよい。
【0042】
(例えば、蛍光透視法、超音波、それらの組み合わせなどを介する)1つまたは複数の可視化技術を使用して、カテーテルを尺骨動脈中に前進させてもよい。いくつかのバリエーションでは、カテーテルを、すぐ上に記載した1つまたは複数の血管アクセス部位を経て標的フィステル形成部位に配置し得るガイドワイヤ上またはガイドワイヤに沿って前進させてもよい。
【0043】
深部尺骨静脈アクセス
【0044】
カテーテルまたは他のツールを深部尺骨静脈中へ血管内で前進させるバリエーションでは、深部尺骨静脈へのアクセスを任意の好適な方法で達成してもよい。いくつかのバリエーションでは、カテーテルを、アクセス部位を経て血管部位へ導入する。カニューレが血管中に配置され得るように微小穿刺セット、アクセス針(例えば、18または19ゲージアクセス針)を使用して、かつ/または外科的切開処置を使用して、血管アクセス部位を形成してもよい。静脈アクセス部位は、尺側皮静脈、橈側皮静脈、または上腕静脈などの任意の好適な血管中にあってよい。
【0045】
いくつかのバリエーションでは、カテーテルを肘正中皮静脈に沿って深部尺骨静脈まで血管内を前進させてもよい。例えばいくつかのバリエーションでは、カテーテルを尺側皮静脈に沿って、肘正中皮静脈中へ、そして肘正中皮静脈と深部尺骨静脈との間に伸びる貫通枝を経て深部尺骨静脈の1つへと前進させてもよい。貫通枝が深部尺骨静脈と前腕正中皮静脈との間に伸びる場合では、カテーテルを肘正中皮静脈から正中静脈中へ、次いで深部尺骨静脈の1つへと前進させてもよい。
【0046】
他のバリエーションでは、カテーテルを、橈側正中皮静脈に沿って血管内を深部尺骨静脈へ前進させてもよい。例えば、いくつかのバリエーションでは、カテーテルを、橈側皮静脈中のアクセス部位を通って血管系内を、かつ橈側皮静脈から橈側正中皮静脈中に血管内で前進させてもよく、かつ深部尺骨静脈の1つに貫通枝を経由して前進させてもよい(貫通枝にアクセスするために、カテーテルを肘正中皮静脈または前腕正中皮静脈のいずれかに前進させる必要がある可能性がある)。
【0047】
さらに他のバリエーションでは、カテーテルを上腕静脈に沿って血管内を深部尺骨静脈まで前進させてもよい。例えば、いくつかのバリエーションでは、カテーテルを、上腕静脈中のアクセス部位を通って血管系内を前進させてもよく、上腕静脈から深部尺骨静脈の1つへ逆行方式で血管内を前進させてもよい。
【0048】
1つまたは複数の可視化技術(例えば、蛍光透視法、超音波、それらの組み合わせなどを介する)を用いてカテーテルを深部尺骨静脈中に前進させてもよい。いくつかのバリエーションでは、すぐ上記に記載した1つまたは複数の血管アクセス部位を経て標的フィステル形成部位に配置し得るガイドワイヤ上またはそれに沿ってカテーテルを前進させてもよい。
【0049】
透析アクセス
【0050】
上述のように、フィステル形成後に1または複数の静脈にカニューレ挿入して、透析アクセスを提供してもよい。概して、透析アクセスを提供することは、第1針および第2針で1本または複数の血管にカニューレ挿入することを含む。概して、針のうちの1つは、透析装置に血液を供給するように構成された動脈針であってよく、一方、他の針は患者に血液を戻すように構成された静脈針であってよい。いくつかのバリエーションでは、第1および第2針の両方を橈側皮静脈中に配置してもよい。他のバリエーションでは、第1および第2針の両方を尺側皮静脈中に配置してもよい。さらに他のバリエーションでは、第1および第2針を肘正中皮静脈中に配置してもよい。第1および第2針の両方を同じ静脈部分に配置する場合、動脈針および静脈針をそれらが少なくとも約5cm離れるように配置することが望ましい場合があり、これによって、静脈針により患者に戻される血液が動脈針によって取り込まれる可能性が減少され得る。
【0051】
他のバリエーションでは、第1および第2針を異なる血管中に配置してもよい。いくつかのバリエーションでは、第1針を尺側皮静脈中に配置してもよく、かつ第2針を肘正中皮静脈中に配置してもよい(例えば、動脈針を肘正中皮静脈中に配置してもよく、かつ静脈針を尺側皮静脈中に配置してもよい)。他のバリエーションでは、第1針を橈側皮静脈中に配置してもよく、かつ第2針を肘正中皮静脈中に配置してもよい(例えば、動脈針を肘正中皮静脈中に配置してもよく、静脈針を橈側皮静脈中に配置してもよい)。さらに他のバリエーションでは、第1針を橈側皮静脈中に配置してもよく、かつ第2針を尺側皮静脈中に配置してもよい(例えば、動脈針を尺側皮静脈中に配置してもよく、そして静脈針を橈側皮静脈中に配置してもよい)。これらのバリエーションでは、橈側皮静脈中に配置された針は、動脈針または静脈針のいずれかであってよい。第1針および第2針が異なる血管中に配置される場合(例えば、第1針が尺側皮静脈中に配置され、かつ第2針が前肘静脈または橈側皮静脈中に配置される場合)、静脈針(第1または第2針のいずれかであってよい)によって身体に戻される血液が動脈針によって取り込まれ得る可能性が減少し得る。
【0052】
実施例1
【0053】
合計9人の患者で各患者の腕の近位尺骨動脈と深部尺骨静脈との間にフィステルを経皮的に形成した。フィステルを形成するために、電極を有する第1カテーテルを(上腕静脈アクセスを経て)深部尺骨静脈中に経皮的に配置し、第2カテーテルを(上腕動脈アクセスを経て)近位尺骨動脈中に経皮的に配置し、電極は深部尺骨静脈と近位尺骨動脈との間の組織を切除して、血管間の組織を除去した。フィステルの形成中に腕を手首で固定した。患者の追跡調査は1ヶ月目、2ヶ月目、および3ヶ月目で行った。第1追跡調査で、一部の患者では医師の判断で1本または複数の血管をコイル塞栓した。
【0054】
表1で示すように、9人の患者のうち9人でフィステル形成に成功した。9人の患者について、透析準備(dialysis readiness)にかかる平均時間は62日であった。透析準備を、透析の開始の成功または少なくとも300ml/分の流量の物理的測定に基づいて判定した。9人の患者のうち9人が3ヶ月でフィステルおよび静脈開存性を維持した。
【表1】
【0055】
実施例2
【0056】
合計7人の患者で各患者の腕の近位尺骨動脈と深部尺骨静脈との間にフィステルを経皮的に形成した。フィステルを形成するために、電極を有する第1カテーテルを(橈側皮静脈、尺側皮静脈、または上腕静脈アクセスを経て)深部尺骨静脈中に経皮的に配置し、第2カテーテルを(上腕動脈アクセスを経て)近位尺骨動脈中に経皮的に配置し、電極で近位尺骨動脈と深部尺骨静脈との間の組織を切除して血管間の組織を除去した。腕をフィステルの形成中に固定しなかった。患者の追跡調査を1、2、および3ヶ月目に行った。追跡調査中、一部の患者では医師の判断で1本または複数の血管をコイル塞栓した。2人の患者は3ヶ月目でバルーン血管形成術を受け、1人の患者は3ヶ月目でバルーン血管形成術および修正手術を受けた。
【0057】
表2で示すように、7人の患者のうち6人でフィステル形成に成功した。フィステル形成に成功した6人の患者のうち、各々はフィステルおよび静脈開存性を3ヶ月で維持した。3ヶ月目の評価後に1人の患者が実験から離脱した。残りの5人の患者の、透析準備にかかる平均時間は108日であった。透析準備は、透析の開始の成功または少なくとも300ml/分の流量の物理的測定に基づいて判定した。
【表2】
【0058】
実施例3
【0059】
合計8人の患者で、各患者の腕の近位尺骨動脈と深部尺骨静脈との間にフィステルを経皮的に形成した。フィステルを形成するために、電極を有する第1カテーテルを(上腕静脈アクセスを経て)深部尺骨静脈中に経皮的に配置し、第2カテーテルを(上腕動脈アクセスを経て)近位尺骨動脈中に経皮的に配置し、電極で近位尺骨動脈と深部尺骨静脈との間の組織を切除して、血管間の組織を除去した。腕をフィステルの形成の間は手首で固定した。上腕静脈を処置の間、コイル塞栓した。患者の追跡調査を1、2、および3ヶ月目で行った。
【0060】
表3に示すように、フィステルは8人の患者すべてで形成に成功した。1人の患者は2ヶ月目の評価の前の処置に無関係の原因(高カリウム血症に起因する不整脈)で死亡した。第2の患者は透析準備を達成したが、3ヶ月目の評価の前に処置に無関係の原因(糖尿病性足潰瘍に由来する敗血症)で死亡した。3ヶ月目の評価を受けた6人の患者のうち、5人が3ヶ月でフィステルおよび静脈開存性を維持していた。透析準備を達成した6人の患者について、透析準備にかかる平均時間は37日であった。透析準備は、透析の開始の成功または少なくとも300ml/分の流量の物理的測定に基づいて判定した。
【表3】
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C