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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】ICカードの電磁波干渉防止シート
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/077 20060101AFI20220613BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20220613BHJP
   A45C 11/18 20060101ALN20220613BHJP
   A45C 11/00 20060101ALN20220613BHJP
【FI】
G06K19/077 248
G06K19/077 144
H05K9/00 M
A45C11/18 Z
A45C11/00 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021187037
(22)【出願日】2021-11-17
(62)【分割の表示】P 2020556984の分割
【原出願日】2020-07-27
(65)【公開番号】P2022031276
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】P 2019136516
(32)【優先日】2019-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】398044938
【氏名又は名称】株式会社コラントッテ
(74)【代理人】
【識別番号】100115510
【弁理士】
【氏名又は名称】手島 勝
(72)【発明者】
【氏名】小松 克巳
【審査官】後藤 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-98821(JP,A)
【文献】特開2009-32161(JP,A)
【文献】特開2005-11044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/077
G06K 19/00
H05K 9/00
A45C 11/00
A45C 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
TypeA/B方式のクレジットカードの干渉防止に用いられる電磁波干渉防止シートであって、
前記電磁波干渉防止シートは、軟磁性材料であるフェライトから構成された磁性素材層と導電層とが積層された多層膜から構成されており、
前記電磁波干渉防止シートにおいて、前記フェライトから構成された前記磁性素材層は、前記電磁波干渉防止シートの全面に形成されており、
前記電磁波干渉防止シートは、1層の前記磁性素材層と、1層の前記導電層とから構成されており、
前記磁性素材層の端部は、前記電磁波干渉防止シートの端部まで到達しており、
前記磁性素材層の端部には、接着剤または樹脂材料が存在している、電磁波干渉防止シート。
【請求項2】
前記電磁波干渉防止シートの寸法は、前記TypeA/B方式のクレジットカードの寸法と同一である、請求項1に記載の電磁波干渉防止シート。
【請求項3】
前記導電層は、アルミニウムまたはアルミニウム合金から構成されたアルミ箔であり、
前記電磁波干渉防止シートにおいて、前記磁性素材層と前記導電層との界面は接着面となっている、請求項1または2に記載の電磁波干渉防止シート
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICカードの電磁波干渉防止シートに関する。特に、特定の非接触ICカードを確実に認識させることができる電磁波干渉防止シートに関する。
【背景技術】
【0002】
Felica(フェリカ)(登録商標)等の非接触型ICカードの普及に伴って、複数枚のICカードを所有する人が増えてきている。その結果、複数枚のICカードをカードケースに所持した場合、どのカードが読み出されるのかリーダライタにかざすまでわからなかったり、目的のカードではないカードからお金が引き落とされたりする問題が生じていた。このような事態を防止するためには、カードを使うたびに、カードケースから取り出してリーダライタにかざす手間が必要であった(例えば、特許文献1、2など参照)。
【0003】
また、ICカードの普及に伴って、スキミング防止を目的として、パンチングメタルの金属フィルムをパウチすることによって作られたICカードプロテクタが提供されて普及している。この金属フィルムを2枚のICカードの間に挟むことにより、金属フィルムから上にあるICカードを、シールド効果で見えなくすることができる。しかしながら、金属フィルムの下(リーダライタ側)にあるICカードも、金属フィルムによる反射で見えなくなってしまうため、複数のICカード間の緩衝防止に有効な手段とはいえない。
【0004】
このような問題を解決するために、特許文献1に開示された非接触型ICカードホルダーでは、導電性の金属フィルムを磁性層で挟むことで、金属層のシールド効果に磁性層による金属遮蔽効果を加え、所望のICカードの読み出しや書き込みを可能にするともに、その際に他のICカードへ影響を与えないようにするという効果を実現している。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された非接触型ICカードホルダーの構造において、再現性良く、誤読み取りが起こらないようにする上で、効果係数を上げなければいけないが、当該効果係数は、磁性層の透過率の平方根と磁性層の厚みの積に比例するため、透過率の高い磁性体を厚く設けなければならない。それゆえに、磁性層の薄膜化・低透磁率化ができないという不都合がある。その不都合を解消する上で、特許文献2において、ICカードセパレータ及びICカードケースが提案されている。
【0006】
特許文献2に開示されたICカードセパレータ及びICカードケースを、図20に示す。図20に示したICカードセパレータ110は、カードケース120の収納部122及び126に収納された非接触型ICカード124及び128の間に配置される。
【0007】
さらに説明すると、ICカードセパレータ110は、2枚の非接触型ICカード124及び128の間に配置され、これらのICカード124及び128の間の干渉を防止する。ICカードセパレータ110は、導電性の金属層と、その金属層の両主面に設けられた一対の誘電体層と、その一対の誘電体層のICカード側の主面に設けられた一対の磁性層とから構成されている。そして、ICカードセパレータ110は、誘電体層の比誘電率が2以上であって、誘電体層の厚みが10μm以上100μm以下であることを特徴としている。このような構成をICカードセパレータ110が有していることにより、磁性層及び誘電体層による遮蔽効果が得られ、その結果、磁性層の薄膜化・低透磁率化を実現しながら、非接触型ICカード間の干渉を防止することができるという効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第3630006号公報
【文献】特開2011-13883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2に開示されたICカードセパレータ110は、非接触型ICカード(124、126)間の干渉を防止することができるかもしれないが、本願発明者の検討によると、ICカードセパレータがずれると、干渉を防止することができない事例が生じることがわかった。すなわち、ICカードセパレータの問題は、どのような磁性層や誘電体層の構造にするかどうかよりも、ICカードセパレータを挿入していたにも拘わらず、非接触型ICカード間の干渉を防止することができないことも大きな問題である。
【0010】
特に、高性能を謳っているICカードセパレータを使用する場合は、ICカードセパレータが適切な位置に配置されているときは、非接触型ICカード間の干渉を防止できるので問題がない。その一方で、その高性能のICカードセパレータがずれて配置されたときは、非接触型ICカード間の干渉を防止することができない事例が発生する。この非接触型ICカード間の干渉を防止できたり、防止できなかったりするのが、ユーザにとって一番困る問題であり、そのICカードセパレータが不良品であるかどうかの判別を行うこともとても難しく、そして、現実的な問題として、ユーザではICカードセパレータの性能を試験できない。
【0011】
また、ユーザにはいろんな人がいるのが実情で、説明書において、ICカードセパレータの配置位置をしっかり説明していたとしても、その正確な位置をおおよそに理解する人もいれば、そもそも、説明書を読まない人もいる。そして、高性能のICカードセパレータを使用した状態で、非接触型ICカードの読み込みに一度はともかく、数回失敗したとしたら、ユーザは、そのICカードセパレータの性能を疑い、それを使用しなくなる可能性が極めて高い。
【0012】
そのような中、本願発明者は、複数枚の非接触ICカードを重ねる場合において、特定の非接触ICカードを確実に認識させることができる電磁波干渉防止シートの開発に成功し、本発明に至った。本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、干渉を防止して、特定の非接触ICカードを確実に認識させることができる電磁波干渉防止シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る電磁波干渉防止シートは、TypeA/B方式のクレジットカードの干渉防止に用いられる電磁波干渉防止シートであり、前記電磁波干渉防止シートは、軟磁性材料であるフェライトから構成された磁性素材層と導電層とが積層された多層膜から構成されており、前記電磁波干渉防止シートにおいて、前記フェライトから構成された前記磁性素材層は、前記電磁波干渉防止シートの全面に形成されており、前記電磁波干渉防止シートは、1層の前記磁性素材層と、1層の前記導電層とから構成されており、前記磁性素材層の端部は、前記電磁波干渉防止シートの端部まで到達しており、 前記磁性素材層の端部には、接着剤または樹脂材料が存在している。
【0014】
ある好適な実施形態において、前記電磁波干渉防止シートの寸法は、前記TypeA/B方式のクレジットカードの寸法と同一である。
【0015】
ある好適な実施形態において、前記導電層は、アルミニウムまたはアルミニウム合金から構成されたアルミ箔であり、前記電磁波干渉防止シートにおいて、前記磁性素材層と前記導電層との界面は接着面となっている。
【0016】
本発明に係るICカードスリーブケースは、非接触型ICカードを収納する収納部と、前記収納部の一部に形成された切り欠き部とを備えている。前記収納部は、表面側に位置する第1主面部と、前記表面側に対する裏面側に位置する第2主面部とから構成されている。前記第1主面部及び前記第2主面部は、前記非接触型ICカードの寸法に対応した長方形形状を有している。前記収納部の形状を規定する前記長方形形状の長辺及び短辺のうちの一方の辺は、前記非接触型ICカードが挿入される挿入開口部となっている。前記裏面側に位置する前記第2主面部には、電磁波干渉防止シートが含まれている。前記挿入開口部となっている前記辺において、前記切り欠き部が形成されている。前記電磁波干渉防止シートは、磁性素材層と導電層とが積層された多層膜から構成されている。導電層は、前記磁性素材層よりも前記裏面側に位置している。前記第1主面部及び前記第2主面部の前記長方形形状の寸法は、前記非接触型ICカードの寸法と同一である。前記電磁波干渉防止シートにおいて、前記磁性素材層は、前記電磁波干渉防止シートの全面に形成されている。
【0017】
ある好適な実施形態において、前記電磁波干渉防止シートは、1層の前記磁性素材層と、1層の前記導電層とから構成されている。前記磁性素材層の端部は、前記電磁波干渉防止シートの端部まで到達している。
【0018】
ある好適な実施形態において、前記導電層は、アルミニウムまたはアルミニウム合金から構成されたアルミ箔である。前記電磁波干渉防止シートにおいて、前記磁性素材層と前記導電層との界面は接着面となっている。
【0019】
本発明に係る他のICカードスリーブケースは、非接触型ICカードを収納する収納部と、前記収納部の一部に形成された切り欠き部とを備えている。前記収納部は、表面側に位置する第1主面部と、前記表面側に対する裏面側に位置する第2主面部とから構成されている。前記第1主面部及び前記第2主面部は、前記非接触型ICカードの寸法に対応した長方形形状を有している。前記収納部の形状を規定する前記長方形形状の長辺及び短辺のうちの一方の辺は、前記非接触型ICカードが挿入される挿入開口部となっている。前記裏面側に位置する前記第2主面部には、電磁波干渉防止シートが含まれている。前記挿入開口部となっている前記辺において、前記切り欠き部が形成されている。
【0020】
ある好適な実施形態において、前記第1主面部は、前記収納部に収納された非接触型ICカードの電磁波を透過させる機能を有する。前記第2主面部は、前記収納部に収納された前記非接触型ICカードの電磁波を遮断する機能を有する。前記挿入開口部となっている前記辺を除く辺は塞がっている。前記切り欠き部は、前記収納部に収納された前記非接触型ICカードの一部を露出させるものである。前記切り欠き部は、前記挿入開口部となっている前記辺の中央の位置に形成されている。
【0021】
ある好適な実施形態において、前記切り欠き部は、前記収納部に収納された前記非接触型ICカードのカード情報が印字されていない領域を露出させるように形成されている。
【0022】
ある好適な実施形態において、前記切り欠き部は、前記長方形形状の前記長辺に形成されている。
【0023】
ある好適な実施形態において、前記切り欠き部は、前記挿入開口部となっている前記辺に形成された台形形状を有している。
【0024】
ある好適な実施形態において、前記切り欠き部は、前記挿入開口部となっている前記辺対して斜めに延びる傾斜線部と、前記辺に対して平行に延びる平行線部とから形成されている。
【0025】
ある好適な実施形態において、前記切り欠き部は、湾曲線部によって形成されている。
【0026】
ある好適な実施形態では、前記収納部における前記切り欠き部によって露出している領域には、文字情報および図形情報の少なくとも一方が記載されている。
【0027】
ある好適な実施形態において、前記第1主面部および前記第2主面部の少なくとも一方には、文字情報および図形情報の少なくとも一方が記載されている。
【0028】
ある好適な実施形態において、前記収納部は、一枚の展開用紙部材から構成されている。前記第2主面部は、前記電磁波干渉防止シートを挟んで収納するシート挟み部位と連続して繋がっている。
【0029】
ある好適な実施形態において、前記第1主面部は、三角形状の差し込みフラップ部と連続して繋がっている。
【0030】
ある好適な実施形態において、前記収納部に収納される前記非接触型ICカードは、クレジットカードおよび交通系ICカードの少なくとも一方である。なお、前記非接触型ICカードは、後払いの機能のカード(所謂クレジットカード)の他、デビットカード(即時払い)、プリペイドカード(先払い、チャージ式)のものであり得る。
【0031】
ある好適な実施形態において、前記非接触型ICカードは、TypeA/B方式のクレジットカードである。前記収納部は、前記非接触型ICカードのクレジットカード情報を隠すものである。
【0032】
本発明に係る収納ケースは、モバイル機器の収納ケースであり、モバイル機器を収納する収納部と、前記収納部の一部に形成された切り欠き部とを備えている。前記収納部は、表面側に位置する第1主面部と、前記表面側に対する裏面側に位置する第2主面部とから構成されている。前記第1主面部及び前記第2主面部は、前記モバイル機器の寸法に対応した長方形形状を有している。前記収納部の形状を規定する前記長方形形状の長辺及び短辺のうちの一方の辺は、前記モバイル機器が挿入される挿入開口部となっている。前記裏面側に位置する前記第2主面部には、電磁波干渉防止シートが含まれている。前記挿入開口部となっている前記辺において、前記切り欠き部が形成されている。
【0033】
ある好適な実施形態において、前記第1主面部は、前記収納部に収納された前記モバイル機器の電磁波を透過させる機能を有する。前記第2主面部は、前記収納部に収納された前記非接触型ICカードの電磁波を遮断する機能を有する。前記挿入開口部となっている前記辺を除く辺は塞がっている。前記切り欠き部は、前記収納部に収納された前記モバイル機器の一部を露出させるものである。前記切り欠き部は、前記挿入開口部となっている前記辺の中央の位置に形成されている。
【0034】
ある好適な実施形態において、電磁波を発する前記モバイル機器は、スマートフォンであり、前記収納部における前記切り欠き部によって露出している領域には、文字情報および図形情報の少なくとも一方が記載されている。
【0035】
本発明に係る製造方法は、上記のICカードスリーブケースの製造方法であり、ICカードスリーブケースの収納部を構成する展開用紙部材を用意する工程と、前記展開用紙部材を折り畳むとともに、電磁波干渉防止シートを挿入する工程とを含む。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係る電磁波干渉防止シートによれば、軟磁性材料であるフェライトから構成された磁性素材層と導電層とが積層された多層膜から構成され、そして、フェライトから構成された磁性素材層が電磁波干渉防止シートの全面に形成され、磁性素材層の端部が、電磁波干渉防止シートの端部まで到達していることによって、非接触ICカードが重なっていても確実に、非接触の決済を行うことができる。そして、フェライトから構成された磁性素材層の端部が電磁波干渉防止シートの端部まで到達するように全面に形成されている構成を有するものによれば、磁束の抜け道ができて、TypeA/B方式であっても、ICチップが交信を確実に行うことができる。換言すると、電磁波干渉防止シートにおける磁性素材層(フェライトから構成された磁性素材層)の端部が電磁波干渉防止シートの端部まで到達している構成の場合は、Felica方式よりも読み取り精度の悪いTypeA/B方式の非接触型ICカード/カードリーダに使っても、磁性素材層が介在することによる磁束の抜け道ができることによって、確実に何回でも、非接触決済を成功させることができる。加えて、磁性素材層の端部に接着剤または樹脂材料が存在していることにより、磁性素材層の端部から磁性素材が擦って落ちてしまわないようにすることができる。
【0037】
本発明に係るICカードスリーブケースによれば、非接触型ICカードを収納する収納部が、非接触型ICカードの寸法に対応した長方形形状を有する第1主面部及び第2主面部から構成されており、そして、第2主面部に電磁波干渉防止シートが含まれていることから、特定の非接触型ICカードを収納部に入れておけば、電磁波干渉防止シートが位置ずれすることなく、非接触型ICカードの干渉を抑制することができて、特定の非接触型ICカードの読み取りを確実に安心して行うことができる。また、収納部を構成する第1主面部に切り欠き部が形成されていることから、ユーザが指で非接触型ICカードを出し入れすることが容易になるとともに、第1主面部のうちの切り欠き部以外の領域で、非接触型ICカードのカード情報が見られないようにすることができて、セキュリティの面でも利点がある。加えて、電磁波干渉防止シートによって非接触型ICカードを電磁的に保護することができ、犯罪的なスキャニングから、非接触型ICカードを保護することができる効果がある。
【0038】
本発明に係るICカードスリーブケースでは、電磁波干渉防止シートが、磁性素材層と導電層とが積層された多層膜から構成されており、導電層は磁性素材層よりも裏面側に位置し、第1主面部及び第2主面部の長方形形状の寸法が非接触型ICカードの寸法と同一であり、電磁波干渉防止シートにおいて、磁性素材層は、電磁波干渉防止シートの全面に形成されている。したがって、磁性素材層が介在することで磁束の抜け道ができることにより、特定の非接触型ICカードの読み取りを確実に行うことができる。さらに、電磁波干渉防止シートにおける磁性素材層の端部が電磁波干渉防止シートの端部まで到達している構成の場合は、Felica方式よりも読み取り精度の悪いTypeA/B方式の非接触型ICカード/カードリーダに使っても、磁性素材層が介在することによる磁束の抜け道ができることによって、確実に、非接触決済を成功させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の実施形態に係るICカードスリーブケース100の構成を示す正面図である。
図2】本発明の実施形態に係るICカードスリーブケース100の構成を示す背面図である。
図3】ICカードスリーブケース100に含まれている電磁波干渉防止シート18を説明するための図である。
図4】ICカードスリーブケース100の展開図である。
図5】ICカードスリーブケース100に非接触型ICカード90(90A、90B)を挿入する様子を示す図である。
図6】ICカードスリーブケース100の改変例を示す正面図である。
図7】ICカードスリーブケース100の改変例を示す正面図である。
図8】ICカードスリーブケース100の改変例の展開図である。
図9】ICカードスリーブケース100における電磁波干渉防止シート18を配置した様子を示す図である。
図10】電磁波干渉防止シート18を説明するための平面図である。
図11】電磁波干渉防止シート18を説明するための断面図である。
図12】電磁波干渉防止シート18を説明するための分解図である。
図13】電磁波干渉防止シート18を説明するための平面図である。
図14】電磁波干渉防止シート18を説明するための断面図である。
図15】電磁波干渉防止シート18(18a、18b)の構成を模式的に示す図である。
図16】非接触型ICカード90を、カードリーダ95に近づけた様子(読み書き、通信)を示す模式図である。
図17】導電層(金属層)18bを背面に配置した非接触型ICカード90を、カードリーダ95に近づけた様子(読み書き、通信)を示す模式図である。
図18】本実施形態の電磁波干渉防止シート18(18a、18b)を背面に配置した非接触型ICカード90を、カードリーダ95に近づけた様子(読み書き、通信)を示す模式図である。
図19】非接触型ICカード90をICカードスリーブケース100に入れた状態で財布60のカード収納箇所62に収納した様子を示した図である。
図20】従来のICカードセパレータ110およびカードケース120を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本願発明者は、従来のICカードセパレータを用いて非接触型ICカードの干渉を防止する際には、ICカードセパレータがずれると誤作動が生じることをなんとかできないかを検討していた。特に、交通系の非接触型ICカードと、もう一枚の別の非接触型ICカードとを、従来のICカードセパレータを挟んで使用する場合、改札にかざす時に読み取りの誤作動が生じることがある。この場合、ICカードセパレータが不良品であるか、あるいは、他の要因が影響しているかがわからずに、ユーザをイライラさせることがあるという問題があった。
【0041】
そして、今日においては、クレジットカードも、非接触型ICカードのものが普及しており、犯罪的なスキャン(スキャナによるクレジットカード情報の読み取り)の被害も拡大している。加えて、クレジットカードの表面には氏名、有効期限、カード番号が書いてあるとともにクレジットカードの裏面にはセキュリティーコードが書いてあることから、決済時においてクレジットカードを手渡しする際にそれらの情報を覚えられてしまうと(または、機械的にスキャンされてしまうと)、そのクレジットカードは、本人以外でも使用されてしまう状況におかれてしまうため、手渡しすることは極めて危険性が高く、そしてクレジットカードの不正使用によって犯罪にも巻き込まれる可能性がでてくる。
【0042】
そのような中、本願発明者は、非接触型ICカードの干渉防止を行いながら、クレジットカードのセキュリティを高めることができ、それを簡便に、安価に行うことができる手法がないかを日々検討した結果、本発明に至った。
【0043】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態を説明する。以下の図面においては、説明の簡潔化のために、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は、必ずしも実際の寸法関係を正確に反映していない場合がある。ただし、図1から図4のように、各図において寸法関係を一致させているものもあり、その場合は、各図の寸法・位置関係から、六面図(厚さは省略)を導き出すことが可能である。
【0044】
また、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事項は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書及び図面によって開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。加えて、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0045】
図1は、本発明の実施形態に係るICカードスリーブケース100の正面構成を示している。図2は、本実施形態のICカードスリーブケース100の背面構成を示している。また、図3は、ICカードスリーブケース100に含まれている電磁波干渉防止シート18の構成を示している。
【0046】
本実施形態のICカードスリーブケース100は、ICカードを収納する収納部(または、スリーブ部、袋部)10から構成されている。本実施形態のICカードは、非接触型ICカードであり、例えば、交通系ICカード(Suica、PASMO、ICOCAなど)であり、あるいは、クレジットカード(例えば、アメリカンエキスプレス(登録商標))である。非接触型ICカードは、例えば、Felicaカード(商品名)であり、非接触型ICカードには、ICチップ(例えば、Felicaチップ(商品名))が搭載されている。非接触型ICカードは、後払いのクレジットカード、即時払いのデビットカード、先払いのプリペイドカード(又は、チャージ式のもの)のいずれであってもよく、これらのもの(後払い、即時、先払い)を便宜上、どれもクレジットカードと称してもよい。非接触型ICカードをICカードリーダ装置にかざすと、キャリアを送信して電磁誘導によって非接触型ICカードに電力を供給して、キャリアの変調によって両者の間で通信を行うことができる。また、非接触型ICカードは、交通系ICカードおよびクレジットカードが両方搭載されたものもあり、そして、電子マネー(ポイント、または、仮想通貨などを含む)を決済するもの(Tポイント、楽天ポイント、楽天Edyなど)もある。また、非接触型ICカードであれば、クレジットカードに限らず、デビットカードまたは銀行(キャッシュカード)などのカードであってもよい。本実施形態のICカードスリーブケース100に収納したい非接触型ICカードは、特に、クレジットカード、交通系ICカードである。
【0047】
なお、非接触型ICカードは、例えば、Felicaカード(商品名)でなくても、他の方式のものであっても構わない。具体的には、非接触型ICカードは、例えば、TypeA/B方式のICカード(TypeA/BのICカード)である。なお、Felicaカード(商品名)は、日本で普及している方式のものであり、TypeA/BのICカードは、世界で普及している方式のもの(NFC TypeA/B規格に対応したもの)である。近年のインバウンド需要の高まりにより、日本においても、TypeA/BのICカードに対応した読み取り端末(カードリーダ)が普及しつつある。日本でも、TypeA/B方式に対応したものとしては、三井住友カード、イオンカード、JALカード、dカード、ライフカード、ジャックスカードなどがVisaのタッチ決済を搭載したカードを発行しており、このほか、Mastercard、JCB、American Expressでも、TypeA/B方式に対応したカードを発行している。また、TypeA/Bのタッチ決済に対応している主な店舗としては、マクドナルド、ローソン、ドトールコーヒー、HUB(英国風パブ)、ゼンショーグループ(すき家、はま寿司など)、Japan Taxi、文教堂(書店)、TSUTAYA、メガネストアーなどをあげることができる。Felica方式とTypeA/B方式には通信速度に大きな違いがあり、TypeA/B方式は424kbpsという通信速度に対し、Felica方式は最大通信速度847kbpsと倍以上の速さを有しているとう利点がある。これが、迅速な決済が求められる日本の交通機関でのニーズに合致したことが、日本でFelicaが普及した一因となっている一方で、TypeA/BはFelicaと比べると読み取り端末の設置コストが安価ですむという利点がある。通信速度ではFelicaに及ばないものの、店舗での決済では、日本の通勤ラッシュに耐えるほどの通信速度は不要であるので、このような事情からTypeA/Bの国際的な普及につながっている。
【0048】
本実施形態の収納部10には、切り欠き部15が形成されている。収納部10に非接触型ICカードを収納することができ、そして、この切り欠き部15で露出している箇所によって、非接触型ICカードを簡単に指で取り出すことができる。また、本実施形態の収納部10は、表面側に位置する第1主面部10aと、表面側に対する裏面側に位置する第2主面部10bとから構成されている。そして、第1主面部10aと第2主面部10bとの間(隙間)は、カード挿入隙間(カード収納領域)15となる。
【0049】
収納部10を構成する第1主面部10a及び第2主面部10bは、非接触型ICカードの寸法に対応した長方形形状を有している。本実施形態の構成において、収納部10(すなわち、第1主面部10a及び第2主面部10b)の長辺の寸法Wは、ICカードの寸法にあわせて、87mmにしてある。そして、短辺Lの長さは、ICカードの寸法にあわせて、55mmにしてある。なお、ICカード(クレジットカード、キャッシュカード、Suicaなど)の寸法は、ISO/JIS規格により、長辺(W)85.6mmで、短辺(L)54.0mm、厚さ0.76mmである。そのICカードの寸法にあわせて、本実施形態の収納部10の寸法は決められており、具体的には、ICカードが収納部10内にスムーズに入るとともに、収納部10内でズレないような寸法にしてある。言い換えると、第1主面部10a及び第2主面部10bの長方形形状の寸法は、ICカードの寸法と同一である。厳密には、第1主面部10a及び第2主面部10bの厚さ(例えば、スリーブ素材の厚さ約0.1mm)のぶんはほんの少しだけ大きさがあるが、それを含めて、本実施形態の構成ではICカードの寸法と同一と称している。なお、第1主面部10a及び第2主面部10b(収納部10)がICカードの寸法よりも一回り大きいものや、ICカードの寸法よりも一回り大きくする領域(例えば、縫い合わせ部、融着部、いわゆる「マチ」)のようなものがないことが好ましい。すなわち、第1主面部10a及び第2主面部10bの長方形形状の寸法は、ICカードの寸法と同一であることが好ましい。
【0050】
なお、本実施形態における「長方形形状」とは、幾何学的な長方形に限らず、角が丸くなっているようなものでもよく、実質的に長方形であればよい。特に、ICカードの角は丸くなっているので、そのような形状にあわせても構わない。また、ICカードが収納部10でズレないように、ICカードを収納する収納部10の内部領域が長方形形状であれば、収納部10(第1主面部10a及び第2主面部10b)の外側のエッジは、直線でなくてもよい場合もあり得る。
【0051】
本実施形態の収納部10の形状を規定する長方形形状の長辺(12、13)の一方の辺12は、ICカードが挿入される挿入開口部となっている。挿入開口部となっている長辺12において、切り欠き部15が形成されている。本実施形態の構成では、第1主面部10aに切り欠き部15が形成されており、そして、第2主面部10bには切り欠き部15は形成されていない。また、長方形形状の長辺12は、挿入開口部となっており塞がっていないが、長方形形状の長辺13および両短辺14は塞がっている。したがって、ICカードは、収納部10の挿入開口部(長辺12)から挿入することができるとともに、長方形形状の長辺13および両短辺14は塞がっているので、収納部10から抜け出ることはない。また、収納部10に収納したICカードは、切り欠き部15に露出した部分を指で掴んで、収納部10の挿入開口部(長辺12)から外に取り出すことができる。
【0052】
図示した例の切り欠き部15は、切り込み線11によって規定されている。切り込み線11は、長方形形状の長辺12に対して斜めに延びる傾斜線部11aと、長辺12に対して平行に延びる平行線部11bとから形成されている。また、切り欠き部15は、長方形形状の長辺12の中央に位置している。本実施形態の切り欠き部15は、収納部10に収納されたICカードの一部を露出させるものである。そして、切り欠き部15は、ICカードのカード番号や氏名などの情報は表示させないような位置に形成されている。なお、本実施形態の切り欠き部15の切り欠き形状は、台形形状(または、実質的に台形形状)をしている。これは、カードを判別すると共に指でカードをつまみやすいような形状にしたことによるものである。なお、切り欠き部15の切り欠き形状は、他の形状でもよく、例えば、曲線形状(円弧形状、または、楕円の一部の湾曲線など)であってもよい。また、切り欠き部15は、カードを取りやすいように(掴みやすいように)長辺12の中央に設けることが好ましいが、中央以外の場所にずらしても構わない。
【0053】
本実施形態のICカードスリーブケース100(収納部10)は、図3に示すような、電磁波干渉防止シート18を備えている。本実施形態の構成では、裏面側に位置する第2主面部10bに、電磁波干渉防止シート18が含まれるようにしている。本実施形態の電磁波干渉防止シート18の寸法は、第2主面部10bの寸法よりも一回り小さくしている(例えば1mm(又はそれ未満)小さくしている)。具体的には、電磁波干渉防止シート18の長辺(Wa)86mmで、短辺(L)54.0mmである。また、電磁波干渉防止シート18は、防磁シールド素材からなるシート材(特に、対応周波数13.56MHzに対応する防磁シールド素材)であり、軟磁性材料を含むものである。例えば、防磁シールド素材としては、ニッケル、銅、フェライトを主成分とする軟磁性材料などを使用することができ、それと樹脂をあわせてシート状にしたものを使用することができる。ただし、他の成分の防磁シールド素材(例えば、鉄を主成分とするもの等)を使用してもよいし、電磁波干渉防止シート18はシールド特性が発揮できるものであれば、適宜好適なものを採用することができる。鉄を主成分とするものは、磁気シールドシートと称されることもあり、これも本実施形態の電磁波干渉防止シート18の一例として含まれる。本実施形態の電磁波干渉防止シート18としての磁気シールドシートは、主な素材を鉄とし、その鉄で磁力を吸収する機能を有する。吸収されて素材内部に保持された分だけ(外部の)磁力が弱まる。また、磁気シールドシートでの磁力吸収によって、クレジットカード等の磁気ストライプ機能を守る程度まで減磁させることが可能となる。
【0054】
本実施形態の収納部10は、樹脂材料を含む合成紙から構成されており、具体的には、ポリエステル系合成紙を材料して用いている。ポリエステル系合成紙(例えば、クリスパー(商品名))は、電磁波をスムーズに通すという特性に加えて、耐熱性、耐水性、耐薬品性、耐候性に優れており、破れにくいという優れた特性を有する。また、合成紙(ポリエステル系合成紙)にマットラミネート加工を施すことにより、印字の剥げを防止することがき、加えて、ボールペンによる書き込みを行うことができるようにすることができる。また、合成紙としては、ポリエステル系合成紙の他、ユポ紙(ポリプロピレンを主原料とするフィルム法合成紙)を用いることができる。さらには、収納部10を構成する材料としては、合成紙に限らず、電磁波をスムーズに透過させる材料であれば、適宜好適な材料(人工合成材料、天然材料など)を使用しても構わない。
【0055】
本実施形態の構成では、収納部10が電磁波をスムーズに透過させる材料(例えば、合成紙)から構成されているので、第1主面部10aは、収納部10に収納されたICカードの電磁波を透過させる機能(パス)を有する。一方、第2主面部10bには電磁波干渉防止シート18が設けられているので、第2主面部10bは、収納部10に収納されたICカードの電磁波を遮断する機能(ガード)を有している。なお、第1主面部10aを電磁波遮断面(ガード面)にして、第2主面部10bを電磁波透過面(パス面)にすることも可能である。
【0056】
また、本実施形態の構成では、収納部10に印刷することが容易であるので、第1主面部10aおよび第2主面部10bの少なくとも一方には、印字情報20・25(文字情報、図形情報)が記載されている。図示した例では、第1主面部(正面)10aに情報20が印字されている。具体的には、落とした時(または、救援をしてもらう時)の緊急時連絡番号の文字21、その連絡先の電話番号22、ID番号23が記載されている。また、図形情報(キャラクター、ロゴ、広告情報)24として、キャラクター(ブランド)24a、および、広告情報(広告主、主宰または協賛・後援会社など)24bが印字されている。さらに、第2主面部(裏面)10bに情報25が印字されており、具体的には、ユーザの個人的な記入事項の欄がある。ここでは、過去にかかった病気25a、治療中の病気25b、常用薬/食物・薬物アレルギー25cの欄がある。本実施形態の構成では、収納部10の表面にボールペンで書くことができる処理(マットラミネート加工)が施されているので、ユーザ(または代筆者)は、欄25a~25cを書き込み、万が一の時に適切な処理を受けることができるように予め備えておくことができる。また、署名欄26および説明文27も印字されている。
【0057】
図1及び図2に示した印字例は、緊急時の連絡についての情報が多いが、これは、ユーザに万が一の時(病気、発作、気を失う等)において、交通系ICカード(Suicaなど)や貴重品であるクレジットカードを保持している可能性が高いことに起因している。すなわち、ユーザに何かがあった時に、その周囲にいる人は、そのICカード(非接触型ICカード)を入れているICカードスリーブケース100に記載されている情報(印字情報20、24または記入情報)を見れば、すぐに緊急連絡先に連絡をとって、さらに、そのユーザの病歴などを踏まえて適切な処理を行うことができる。なお、そのような緊急時の連絡情報を主とするのではなく、広告情報などを主として記載してもよいし、印字の情報をメインとするのではなく、ボールペンなどでの書き込みの情報をメインにしたものであってもよい。また、印字や記載を一切せずに、空白のままであっても構わない。
【0058】
本実施形態のICカードスリーブケース100は、図1に示した第1主面部10aと、図2に示した第2主面部10b(電磁波干渉防止シート18を含む)とを貼り合わせること(すなわち、辺13、14を密着させること)によって作製することができる。第2主面部10bの内部に電磁波干渉防止シート18を配置するのは、電磁波干渉防止シート18を2枚のシートで挟みこんで第2主面部10bを作製する手法や、袋状の第2主面部10bの中に電磁波干渉防止シート18を挿入して封をする手法、電磁波干渉防止シート18の機能を持った第2主面部10bを使用する手法などがある。さらには、そのような手法とは別に、図4に示すような展開図を折り畳んで、ICカードスリーブケース100を作製する手法もある。
【0059】
図4は、収納部10の展開図を示している。本実施形態の収納部10は、一枚の展開用紙部材から構成されている。第2主面部10bは、電磁波干渉防止シート18を挟んで収納するシート挟み部位19と連続して繋がっている。シート挟み部位19の幅W1(84mm)は、折り畳みやすい(組立やすい)ように、図1に示した幅W(87mm)よりも少し短くしている。すなわち、シート挟み部位19は、幅Wから幅W1へ向かってテーパー形状にしている。
【0060】
また、第1主面部10aには、三角形状の差し込みフラップ部16が連続して繋がっている。この差し込みフラップ部16は、ICカードの挿入時の接着部の剥がれ防止の機能を有している。差し込みフラップ部16は、左右の一対で、長辺12の両側に設けられている。差し込みフラップ部16は、三角形状の角度θは例えば30°~45°で(図示した例では37°)、三角形上の先端は丸くされている。差し込みフラップ部16の長さL3は、例えば32mm(±5mm)である。また、切り欠き部15の寸法(幅)を規定する幅W2は、例えば30mm(±5mm)である。加えて、側面(端辺)側の貼付部(のりしろ)17は、第2主面部10bの短辺(14)から両サイドに延びており、幅L1は45mm(幅L2は55mm)である。すなわち、貼付部(のりしろ)17は折り畳みやすいようにテーパー状に形成されている。
【0061】
図4に示した展開図を組立て、第2主面部10bとシート挟み部位19とで電磁波干渉防止シート18を挟んで固定し、所定箇所(16、17)で接着を行うと、本実施形態のICカードスリーブケース100が得られる。この手法によると、一枚の展開用紙部材から、収納部(スリーブ部)10、そしてICカードスリーブケース100を作製できるので、便利である。また、図4に示した展開図を、切り抜き(打ち抜き)などで大量に用意しておけば、その後、必要な枚数のICカードスリーブケース100をその都度作製することができるメリットがある。なお、展開図は、図4に示したものに限らず、改変したものであっても構わない。
【0062】
図5は、本実施形態のICカードスリーブケース100に、特定の非接触型ICカード90A(90)を挿入するとともに、他の非接触型ICカード90B(90)をICカードスリーブケース100の裏側に配置した様子を示している。その状態で、ICカードリーダ装置(リーダライタ)に近接させると、表面側(第1主面部10a側)に位置する非接触型ICカード90Aの通信が行われて、決済処理などの手続が完了する。一方、裏面側(第2主面部10b側)に近接して配置(または重ねて配置)されていた非接触型ICカード90Bは、電磁波干渉防止シート18によってシールドされるため干渉を起こさない。特に、本実施形態の構成では、ICカードスリーブケース100に入れるだけで、電磁波干渉防止シート18の位置ずれなどが起こらずに、確実に特定の非接触型ICカード90Aを選択して処理を行うことができる。なお、他のICカード(隣接するICカード)のアンテナ部(カード内に内蔵されているコイル状に配線されたアンテナ部)がおよそ1/3以上露出していると干渉するおそれがあるが、本実施形態の構成によれば、そのような配置にならないようにすることができる。
【0063】
本実施形態のICカードスリーブケース100に非接触型ICカード90Aを入れた状態において、さらに、カードケース、定期入れ、財布などに入れても構わない。本実施形態の収納部10は、耐久性に優れた材料から構成した薄型のスリーブ部材であるので、カードケース、定期入れ、財布などに簡単に入れることができる。
【0064】
本実施形態のICカードスリーブケース100では、非接触型ICカード90を収納する収納部10が、非接触型ICカード90の寸法に対応した長方形形状を有する第1主面部10a及び第2主面部10bから構成されている。そして、第2主面部10bに電磁波干渉防止シート18が含まれていることから、特定の非接触型ICカード90A(90)を収納部10に入れておけば、電磁波干渉防止シート18が位置ずれすることなく、隣接する非接触型ICカード90B(90)の干渉を抑制することができる。その結果、特定の非接触型ICカード90Aの読み取りを確実に安心して行うことができる。
【0065】
また、収納部10を構成する第1主面部10aに切り欠き部15が形成されていることから、ユーザが指で非接触型ICカード90Aを出し入れすることが容易になる。さらに、第1主面部10aのうちの切り欠き部以外の領域で、非接触型ICカードのカード情報が見られないようにすることができて、セキュリティの面でも利点がある。具体的には、非接触型ICカード90が定期(交通系カード)の場合、氏名、年齢、乗降駅などの個人情報を、本実施形態のICカードスリーブケース100(収納部10)によって隠すことができる。
【0066】
そして、非接触型ICカード90がクレジットカードの場合、本実施形態のICカードスリーブケース100によって、氏名、有効期限、クレジットカード番号、セキュリティーコードを隠すことができる。したがって、本実施形態のICカードスリーブケース100を用いた場合、店でクレジットカード(90)を使う時は、(ICカードスリーブケース100なしでの)裸の状態のクレジットカード(90)を店員に預けるよりも、ICカードスリーブケース100内のクレジットカード90を用いて非接触で決済をする方が安全である。言い換えると、裸の状態のクレジットカード(90)を店員に預けると、クレジットカード情報(氏名、カード番号、有効期限、セキュリティーコード)が認識されてしまって悪用される危険性がある。その一方で、本実施形態のICカードスリーブケース100内にクレジットカード90を入れたまま、ICカードスリーブケース100の表面側(第1主面部10a側)をカードリーダにかざせば、決済は完了するので安全である。なお、クレジットカードを手渡しで店員に渡す店であっても決済直前までICカードスリーブケース100内に入れてもらうように指示することにより、不特定多数の人に対してクレジットカードに記載されている重要事項(カード情報)を見せないようにしてもらうことができる。そして、非接触型ICカード90のクレジットカードによる決済の時でも、一瞬の決済とはいえ、目視だけでなくカメラの撮影によってカード情報を盗む人がいる可能性があるところ、本実施形態の構成では、ICカードスリーブケース100内にクレジットカード90を入れたまま決済を行うことができるので、ICカードスリーブケース100でカード情報を十分に保護することができる。
【0067】
加えて、本実施形態のICカードスリーブケース100では、電磁波干渉防止シートによって非接触型ICカード90を電磁的に保護することができ、犯罪的なスキャニングから、非接触型ICカード90を保護することができる効果がある。すなわち、本実施形態のICカードスリーブケース100のうち裏面側(第2主面部10b)を外に向けている限りは、ICカードスリーブケース100内の非接触型ICカード90のカード情報を、悪意あるスキャニングから守ることができる。さらには、本実施形態のICカードスリーブケース100(収納部10)によって、物理的にも、非接触型ICカード90を保護することができる。すなわち、非接触型ICカード90の損傷を、ICカードスリーブケース100で守ることができる。非接触型ICカード90の損傷を防ぐ上でも、非接触型ICカード90のカード情報(クレジットカードの情報など)を保護する意味でも、切り欠き部15の面積は、第1主面部10aの例えば30%以下(または、15%以下、または、10%以下)に抑えるようにすることができる。さらには、非接触型ICカード90とクレジットカード等とを隣接させると、クレジットカード等の磁気ストライプ機能が不全になるケースが発生し得るが、本実施形態のICカードスリーブケース100を用いることで、そのような問題を解消することができる。
【0068】
また、本実施形態の構成では、ICカードスリーブケース100に、図1及び図2に示した情報を記入(印字、ボールペン書き)することができる。これにより、広告24(24a、24b)などのビジネスを立ち上げることができるとともに、緊急時の連絡(21、22、23)をスムーズに実行することができ、さらには、個人の状態(病気など:欄25の記入事項)を発見者・病院などの人に伝えることができる。同様のことを、例えば、交通系の非接触型ICカード(Suicaなど)を用いて行うとしたら(普段から身に付けているカードの代表として)、その交通系の非接触型ICカードに対して、必要事項をシールで貼り付けるしかない。交通系の非接触型ICカードはしょっちゅう出し入れして、改札にタッチしたりするので、1ヶ月から数ヶ月もすると、その必要事項を記入したシールは、汚れたり、剥がれたりしています。そうすると、万が一の肝腎な時に使えなくなってしまう。一方、本実施形態のICカードスリーブケース100の場合、シールの時のような問題を回避することができ、万が一の時にもきちんと機能するので心強い。
【0069】
図6は、本実施形態のICカードスリーブケース100の改変例を示している。図6に示したICカードスリーブケース100では、収納部10における切り欠き部15によって露出している領域29に、情報(文字情報、図形情報など)が記載されている構成にしている。この領域29は、非接触型ICカード90を抜いた時に表示される箇所であるので、インパクトを与えて、その人に対して注意喚起を促すことができる。例えば、この領域29において、「裏面をご覧ください」のような文言(または、注意喚起するマーク)を記載しおくと、裏面の個人の病歴などを参照してくれる可能性が高まる。
【0070】
図7は、本実施形態のICカードスリーブケース100の別の改変例を示している。図7に示した構成例では、切り欠き部15の切り込み線11は、曲線(円弧または湾曲線)11cである。このような切り欠き部15であってもよい。また、図7に示したICカードスリーブケース100では、図1及び図2に示したような印字(20、25など)は行っていないが、このような構成(無地、または、印刷なしの構成)であっても構わない。
【0071】
上述した実施形態では、収納部10の長方形状の長辺12側に切り欠き部15を形成した構成のものを示したが、これに限らない。収納部10の長方形状の短辺14側に切り欠き部15を形成することも可能である。さらに、短辺14側に切り欠き部15が形成された構造を有するICカードスリーブケース100を、展開図にしたものを図8に示す。この展開図は、図4に示した展開図と同様であるので重複した説明は省略する。図4に示したものは長方形状の長辺12側に切り欠き部15が形成されているのに対して、図8に示したものは、短辺12側に切り欠き部15が形成されている。ここで、シート挟み部位19の幅w1は、図1に示した幅L(55mm)とほぼ同じ(又は少し狭い)ものであり、切り欠き部15の寸法(幅)を規定する幅w2は、例えば20mm(±5mm)である。
【0072】
図9は、図4に示した収納部10の展開図(一枚の展開用紙部材)の裏側を示している。第2主面部10bは、電磁波干渉防止シート18を挟んで収納するシート挟み部位19と連続して繋がっている。図9では、シート挟み部位19の上に、電磁波干渉防止シート18を配置して、それを矢印55に示すように折り込む。本実施形態における電磁波干渉防止シート18は、磁性素材層18aと導電層18bとが積層された多層膜から構成されている。そして、導電層18bは、磁性素材層18bよりも裏面側に位置するような構成となっている。図9に示した例では、シート挟み部位19の上に磁性素材層18aが位置しており、そして、磁性素材層18aを覆うように導電層18bが位置している。このようにすると、矢印55に示すように折り込んだとき、導電層18bが裏面側になり、磁性素材層18aは導電層18bよりも表面側(または、ICカード90が挿入される側の方)に位置する。また、図9に示した例では、導電層18bは、電磁波干渉防止シート18の全面に形成されているが、磁性素材層18aを接着して固定する上で、電磁波干渉防止シート18の周縁部の糊代(余白)18cがあり、その糊代(余白)18cの領域では、導電層18bはシート挟み部位19に接着固定されている。この糊代領域は、僅かな方がよく、本実施形態の構成例では、例えば3mm以下(例えば、2.5mm、2mm、1mm、0.5mmなど)であることが好ましく、糊代(余白)18cは、無し(0mm)または実質的に無し(例えば、0.2mm以下)のようなものも好ましい。
【0073】
図10は、図3に示した平面図に相当するが、図9に示した電磁波干渉防止シート18の構成を示している。図11は、図10に示した電磁波干渉防止シート18を含むICカードスリーブケース100(収納部10)の断面構成を模式的に示している。なお、説明をわかりやすくするために、図11の各層の厚さ・寸法は正確なものではなく、加えて、図9に示した側面側の貼付部(のりしろ)17の部分は省略している。そして、図12は、図10に示した導電層18bの一部を剥がして、磁性素材層18aの一部を露出させた状態を示している。
【0074】
図11に示すように、本実施形態のICカードスリーブケース100は、裏面82側から、第2主面部10b(裏面部)、導電層18b、磁性素材層18a、シート挟み部位19、第1主面部10a(表面部)が位置している。ここでは、第1主面部10a(表面部)の上面を、表面81側としている。シート挟み部位19と第1主面部10a(表面部)との間には、ICカード90が挿入されるカード挿入隙間(カード収納領域)50が位置している。
【0075】
図11に示した構成例では、ICカードスリーブケース100の厚さは、中央部で約0.55mmで、最厚部で約0.8mmである。本実施形態の構成では、ICカードスリーブケース100の厚さは、最厚部で1mm以下であることが好ましい。すなわち、本実施形態のICカードスリーブケース100の厚さは非常に薄い。電磁波干渉防止シート18の厚さ(導電層18b、磁性素材層18aの合計の厚さ)は、約0.2mmである。本実施形態の構成では、電磁波干渉防止シート18の厚さは0.3mm以下(または0.2mm以下)であることが好ましい。スリーブ素材の厚さ(すなわち、第2主面部10b(裏面部)、シート挟み部位19、第1主面部10a(表面部)は、約0.1mmである。これらの各層の厚さは例示であるが、本実施形態の構成の薄さが容易に理解できるものと思われる。なお、図3に示した電磁波干渉防止シート18の厚さは薄いもの(例えば、0.5mm以下、または、0.3mm以下、0.2mm以下)である。図3に示した電磁波干渉防止シート18の厚さの一例は、0.7mm~1mmのものを用いても構わないが、図3に示したものでも薄いものの方が好ましい。
【0076】
本実施形態の導電層18bは、導電性を有する層(例えば金属層)であるが、この例では、アルミ箔を用いている。具体的には、導電層18bは、アルミニウムまたはアルミニウム合金から構成されたアルミ箔である。図示した例では、導電層18bのうちの、磁性素材層18a側の面(界面85側)に接着機能が付与されたもの(接着層、または、粘着層)を用いている。この構成においては、導電層18bの接着面85によって、磁性素材層18aを接着固定でき、そして、糊代(余白)18cの箇所において、導電層18bの一部(周縁固定箇所18d)をスリーブ素材(シート挟み部位19)に固定することができる。このようにして、スリーブ素材(シート挟み部位19)の上で、磁性素材層18aを覆いながら導電層18b(アルミ箔)を位置づけることができる。磁性素材層18aは、透磁率が高い材料(例えば、フェライトのような軟磁性材料)である。この例では、磁性素材の粒子がシート状になっているものを使用しているが、他の形態のものでもよい。図11に示した例では、厚さを薄くする観点・コスト低減の面などから、導電層18bが1層、磁性素材層18aが1層からなる電磁波干渉防止シート18を用いている。
【0077】
図13は、図10に示した平面図に相当するが、図10に示した電磁波干渉防止シート18の構成において糊代(余白)18cが無し(0mm)または実質的に無し(例えば、0.2mm以下)のものを示している。図14は、図13に示した電磁波干渉防止シート18を含むICカードスリーブケース100(収納部10)の断面構成を模式的に示している。この例では、磁性素材層18aの端部は、電磁波干渉防止シート18の端部まで到達している。ここでの「磁性素材層18aの端部が、電磁波干渉防止シート18の端部まで到達している」とは、磁性素材層18aの表面(側面)が必ずしも露出してなくてもよく、実質的に糊代(余白)18cがないことを意味している。例えば、磁性素材層18aの端部から磁性素材が擦って落ちてしまわないように、接着剤または樹脂材料などが存在していても構わない。なお、電磁波干渉防止シート18の端部まで到達してて磁性素材層18aの表面(側面)が露出していても、電磁波干渉防止シート18の外側にはスリーブ素材(例えば、スリーブ素材10a、17など)が位置しているので、すなわち、スリーブ素材でカバーされているので磁性素材層18aの磁性素材が擦れて落ちてしまうことは防止されている。
【0078】
さらに説明すると、図13に示した電磁波干渉防止シート18(及び、磁性素材層18a)は、ICカード90の寸法と同等サイズ(実質的に同一サイズ)であり、また、周縁に、磁性素材層18aを重ねてとめるシール部分(糊代18c、18d)も存在しない。そして、磁性素材層18aを構成する磁性素材に接着素材(接着剤)をコンパウンドすることで、1シートずつシール加工する必要がなくなるという利点があります。すなわち、図10に示した電磁波干渉防止シート18を作製する際は、磁性素材層18aを覆うように導電層18b(アルミ箔)の接着面(85)をスリーブ素材(19)貼り付ける工程(シール加工工程)が必要な場合があったが、その工程を回避することができる。また、磁性素材層18aを広い面積で成形して、後加工でカットして作製することが可能であるので、シートの加工効率も高めることができる。そして、詳細は後述するが、この構造によって、より効率的に端面から磁束を通過させることができるため、より安定した通信(交信)が可能となる。さらに補足して説明すると、ICカードスリーブケース100の寸法は、ICカード70の寸法と同じであり、磁性素材層18aの寸法は、電磁波干渉防止シート18の寸法(および導電層18bの寸法)と同じであって、ICカード70の寸法の実質的に同じであることから、電磁波干渉防止シート18(磁性素材層18a)の端面から効率良く磁束を通過させることができ、その結果、より安定した通信が可能となる。
【0079】
次に、本実施形態のICカードスリーブケース100を使用した実験例および非接触ICカード90の読み取り(交信状態)について説明する。図15は、本実施形態の電磁波干渉防止シート18(18a、18a)を模式的に示している。ICカードスリーブケース100の状態では、導電層18b(アルミ箔)が裏面82側に位置し、導電層18bに対して磁性素材層18a(透磁率が高い層)が表面81側に位置する。ICカード90は、図示した例(紙面)では、磁性素材層18aの下側(表面81側)に配置される。
【0080】
図16は、非接触ICカード90のコイル92(ICカード内コイル)と、電磁コイル97を備えたカードリーダ95との交信状態(正常状態)を模式的に示している。この正常状態の時は、カードリーダ95から発信された磁束70がICカード90のコイル92内を通過することにより、誘起電力が発生する。それによって、ICカード90内のICチップが起動して、カードリーダとの交信が開始される。
【0081】
図17は、非接触ICカード90の背面(後ろ)に、導電性素材(例えば金属シート)18bが近接している構成を示している。このときは読み取りエラーが生じやすい。具体的には、ICカード90のコイル92に導電性素材(金属シート)が近接することで、磁束70に対して発生する渦電流による反作用磁束により、磁束が減衰する(磁束「72」のイメージ参照)。それに伴って、ICカード90が起電せずに交信が開始できず(無反応)、読み取りエラーとなる。
【0082】
図18は、非接触ICカード90の背面(後ろ)に、磁性素材層18aを配置し、その後ろに導電層18bを配置したときの状態を示している。このときは、導電層18bが近接していてもエラーが生じにくく(正常状態になりやすく)、機能復帰する。具体的には、ICカード90と導電性素材(導電層18b)が近接していても、ICカード90と導電層18bとの間に磁性素材層18aが介在することにより、磁束の抜け道ができ(磁束「75」のイメージ参照)、コイル92内を磁束70が通過することにより、コイル92に誘起電力が発生し,その結果、ICチップ90が交信を開始する。言い換えると、本実施形態の電磁波干渉防止シート18(18a、18a)は、図18に示した機能を発揮するものである。
【0083】
非接触ICカード90の交信実験の前提として、Felica方式のものより、TypeA/B方式のものの方が、エラーが生じやすいことがある。いままでは、Felica方式のものが日本では大多数であったので交信の問題が少なかった場合でも、日本においてTypeA/B方式のものが普及するに従って、交信の問題は多くなる可能性があり、その可能性は年々大きくなっている。さらに説明すると、海外で主流のTypeA/B方式のものは、通信システムの反応が重い(遅い)と言われており、暗号処理の複雑さやチップの必要電力が違ったりして条件が複雑になりがちである。また、小売店やサービス業に設定されている機材のカードリーダの使用・出力に大きく影響されることが多く、例えばコンビニエンスストアなどに設定された微弱電波のカードリーダと、反応が重いICカードとの組み合わせの場合、起電力不足で反応しきれない(エラーが生じる)場合が発生する可能性が高い。そのような可能性などを考慮すると、より効率的にカードリーダと交信できる構造(ICカードスリーブケースの構造)が求められる。
【0084】
本件の実験では、財布に3枚の異なる非接触ICカード90を所定の位置に重ねて入れて、最前面に、対象ICカード(読み取って欲しいICカード)を配置した状態で、財布を閉じたまま非接触の決済を行った。非接触決済の試験は、以下のテストA~Cの端末(カードリーダ)である。
(a)テストA:大阪メトロ(大阪地下鉄)・JRの改札(Felica)
(b)テストB:イオンショッピングセンタ(Felica)
(c)テストC:ローソン(コンビニエンストア)(TypeA/B)
【0085】
事前検証として、ICカードスリーブ(100)を使用せずに、ICカード本体のみで実験した結果を示す。
(a)テストA:成功2回/9回(成功確率22%)
(b)テストB:成功1回/5回(成功確率20%)
この試験(事前検証)では、複数のICカードの重なりにより、電圧不足や認証不能でエラー(読み取りエラー・交信エラー)が頻発した。
【0086】
第1サンプルとして、磁性素材層18aなしで、導電層18bのICカードスリーブを用いて実験を行った(図17に近い例)。
(a)テストA:成功0回/3回(成功確率0%)
(b)テストB:成功0回/2回(成功確率0%)
この試験では、磁束減衰による遮断で交信(通信)が不可であった(読み取りエラー・交信エラーのみ)。
【0087】
第2サンプルとして、図10に示した電磁波干渉防止シート18を備えたICカードスリーブ100を用いて実験を行った。具体的には、磁性素材層18aありで、導電層18bありで、糊代18cが2mmの電磁波干渉防止シート18を備えたものを使用した。
(a)テストA:成功14回/15回(成功確率93%)
(b)テストB:成功4回/5回(成功確率80%)
(c)テストC:成功0回/5回(成功確率0%)
この試験では、Felica方式での成功確率が高く、これくらいの読み取りエラー・交信エラーは許容される可能性が高い。一方で、TypeA/B方式のものでは決済はできなかった。
【0088】
第3サンプルとして、図13に示した電磁波干渉防止シート18を備えたICカードスリーブ100を用いて実験を行った。具体的には、磁性素材層18aありで、導電層18bありで、糊代18cが無し(0mm)の電磁波干渉防止シート18を備えたものを使用した。
(a)テストA:成功10回/10回(成功確率100%)
(b)テストB:成功5回/5回(成功確率100%)
(c)テストC:成功5回/5回(成功確率100%)
この試験では、Felica方式およびTypeA/B方式を含めて全てのテストで問題なく決済が成功した。
【0089】
したがって、図13に示した電磁波干渉防止シート18(糊代18cが無いもの、又は、実質的にないもの)を備えたICカードスリーブ100を用いることにより、確実に、非接触ICカードが3枚重ねであっても(そのうち、最前面に、対象ICカード(読み取って欲しいICカード)をICカードスリーブ100に入れて配置)、非接触の決済を行うことができる。この実験からわかるとおり、磁性素材層18aの端部が電磁波干渉防止シート18の端部まで到達するように全面に形成されている構成のものが、図18に示した様子のように磁束の抜け道ができて(磁束「75」のイメージ参照)、TypeA/B方式のであっても、ICチップ90が交信を確実に行うことができる。
【0090】
本実施形態のICカードスリーブケース100では、電磁波干渉防止シート18が、磁性素材層18aと導電層18bとが積層された多層膜から構成されており、導電層18bは磁性素材層18aよりも裏面側に位置している。この導電層18bによって、後ろに配置される非接触ICカード90の干渉を確実に防止できるとともに、スキミングなどの被害も抑制することができる。さらに、第1主面部10a及び第2主面部10bの長方形形状の寸法が非接触型ICカード90の寸法と同一であり、電磁波干渉防止シート18において、磁性素材層18aは、電磁波干渉防止シート18の全面に形成されている。したがって、磁性素材層18aが介在することで磁束の抜け道(75)ができることにより、特定の非接触型ICカード90の読み取りを確実に行うことができる。さらに、電磁波干渉防止シート18における磁性素材層18aの端部が電磁波干渉防止シート18の端部まで到達している構成の場合は、Felica方式よりも読み取り精度の悪いTypeA/B方式の非接触型ICカード/カードリーダに使っても、磁性素材層18aが介在することによる磁束の抜け道(75)ができることによって、確実に何回でも、非接触決済を成功させることができる。
【0091】
図19は、カード収納箇所62を複数備えた財布60を示している。図19に示した財布60は、非接触型ICカード90の寸法のものしか入れることができないカード収納箇所62が設けられているものである。図示した例では、本実施形態のICカードスリーブケース100に非接触型ICカード90Aを挿入したものを、最前列のカード収納箇所62に配置している。その後ろのカード収納箇所62には、非接触型ICカード90B、非接触型ICカード90Cが配置されている。本実施形態のICカードスリーブケース100を用いることにより、そこに挿入される非接触型ICカード90(90A)の位置ずれを防止することができる(それによって近接する非接触型ICカードの干渉を適切に防止でき)。そして、本実施形態のICカードスリーブケース100は、非接触型ICカード90と同一寸法を有しているので、典型的な財布(すなわち、非接触型ICカードの寸法のものしか入れることができないカード収納箇所を有するもの)に入れることができるので、(特殊な財布でなく)財布の種類を問わず使うことができて便利である。
【0092】
なお、上述の実施形態では、ICカードスリーブケース100の収納部10によってICカード90の電磁波を遮断(又は透過)させるようにしたが、そのような形態ではなく、ICカード90に近接(隣接)するスマートフォンの方を、そのスマートフォンの寸法に合わせた収納部10から構成された収納ケースに入れるようにしてもよい。言い換えると、上述したような本実施形態の収納部10の構造を、スマートフォン(または、電磁波を発するモバイル機器)の寸法にあわせたものにして、その収納部10にスマートフォン(または、モバイル機器(例えば、携帯電話など))を収納して、電磁波を遮断(又は透過)することができる。スマートフォン(または、モバイル機器)がICカード90と隣接すると、ICカード90が認識されなくなる可能性が高まるが、本実施形態の収納部10から構成された収納ケースに、スマートフォン(モバイル機器)を入れることにより、そのような認識が悪くなる問題を解消することができる。
【0093】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である上述した実施形態または改変例の構成または手法は相互に適用可能である。例えば、図7に示した収納部10に、図1及び/又は図2に示した情報印字(20、25など)を行うことも可能である。また、切り欠き部15の形状・位置などは例示であり、上述した実施形態の構成例以外のものであっても構わない。例えば、切り欠き部15は1つあれば十分であるが、2つ設けることを禁止するものではない。一例としては、図2に示した構成の第2主面部10bにおいて、図1に示した箇所と同じようなところ(位置・形状)に切り欠き部15を形成した構造にしてもよい。また、その例において、図2に示した構成の第2主面部10bにおいて、挿入開口部のある辺12(ここでは、長辺)に切り欠き部15を形成して、その切り欠き部15の構造を、図1に示した切り欠き部15の位置、及び/又は、形状を異なるようにしてもよい。これらの改変は、縦型のICカードスリーブケース100(図8に示したもの)に適用することも可能である。
【0094】
なお、実用新案登録第3157052号公報には、磁気防御及びスキミング防止機能付きカードケースが開示されている。しかしながら、このカードケースは、側縁部(3辺)を溶着して接合しているものであるので、ポケット部12は、「非接触型ICカードの寸法」よりも大きいものであり、すなわち、「非接触型ICカードの寸法と同一」のものではない。また、実用新案登録第3157052号公報には、本発明の実施形態の構成要素である「電磁波干渉防止シート18(磁性素材層18aと導電層18bとが積層された多層膜)」は開示されていない。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明によれば、干渉を防止して、特定の非接触ICカードを確実に認識させることができる電磁波干渉防止シートを提供することができる。
【符号の説明】
【0096】
10 収納部(スリーブ部)
10a 第1主面部
10b 第2主面部
11 切り込み線
11a 傾斜線部
11b 平行線部
11c 湾曲線
15 切り欠き部
16 差し込みフラップ部
18 電磁波干渉防止シート
18a 磁性素材層
18b 導電層
19 シート挟み部位
50 カード挿入隙間(カード収納領域)
60 財布
62 カード収納箇所
90 非接触型ICカード
95 カードリーダ
100 ICカードスリーブケース
110 ICカードセパレータ
120 カードケース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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