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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】回転式変圧器
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/20 20060101AFI20220613BHJP
   H02K 24/00 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
G01D5/20 110E
H02K24/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021518842
(86)(22)【出願日】2019-06-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-07
(86)【国際出願番号】 CN2019093345
(87)【国際公開番号】W WO2020001552
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2020-12-16
(31)【優先権主張番号】201810700480.0
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201821022202.6
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520496327
【氏名又は名称】▲広▼▲東▼威▲靈▼汽▲車▼部件有限公司
【氏名又は名称原語表記】GUANGDONG WELLING AUTO PARTS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Building No.1, No.21 Gangqian Road, Beijiao Residential Council Industrial Park, Beijiao, Shunde Foshan, Guangdong 528311, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100205785
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100203297
【弁理士】
【氏名又は名称】橋口 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100135301
【弁理士】
【氏名又は名称】梶井 良訓
(72)【発明者】
【氏名】葛 笑
(72)【発明者】
【氏名】万 佳
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-164435(JP,A)
【文献】特表2012-526969(JP,A)
【文献】特開2013-099161(JP,A)
【文献】特開2018-061416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/20
H02K 24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転式変圧器であって、
ステータコアと、前記ステータコアに巻設された入力巻線及び出力巻線とを備え、前記ステータコアの内側壁に周方向に沿って複数のステータスロットが設けられ、前記ステータスロットの各々が前記ステータコアの2つの端面を連通することにより、任意の隣接する2つの前記ステータスロットの間にステータティースが形成されて、前記入力巻線及び前記出力巻線をそれぞれ巻設するステータと、
前記ステータコア内に嵌設されたロータコアを備えるロータと、を含み、
前記ステータコアの内側壁と前記ロータコアの外側壁との間にエアギャップが形成され、前記ロータが回転する時、前記エアギャップの長さδが、周方向に沿って前記ロータの機械的回転角θと3次高調波成分を含む正弦関数の関係を満たし、前記関数の関係に応じて周期的に変化して前記ロータコアの外形を規定し、
前記エアギャップの長さδは、前記ロータの機械的回転角θの1次正弦波成分分布及び3次正弦波成分分布の両方、即ちδ=f(cos(pθ)、cos(3pθ))を満たし、
ここで、pは前記回転式変圧器のロータ極対数であり、
前記エアギャップの長さδと前記ロータの機械的回転角θとは、さらに以下の式
【数1】
を満たし、
ここで、δ min は、前記エアギャップの最小長さであり、Kは、1次正弦波成分係数であり、kは、3次正弦波成分係数であり、1<K<2であり、0<k<(K-1)である回転式変圧器。
【請求項2】
前記入力巻線は、励磁巻線を含み、
前記出力巻線は、正弦巻線と余弦巻線とを含み、
前記正弦巻線と前記余弦巻線とがそれぞれ巻設されるように、任意の隣接する2つの前記励磁巻線の間に2つの前記ステータティースが間隔をおいて設けられる請求項1に記載の回転式変圧器。
【請求項3】
任意の隣接する2つの前記励磁巻線のうちの一方が、両側に前記正弦巻線が巻設され、他方が両側に前記余弦巻線が巻設される請求項2に記載の回転式変圧器。
【請求項4】
各前記ステータティースにおける前記励磁巻線のコイル巻数は同一であり、
前記正弦巻線のコイル巻数は、前記余弦巻線のコイル巻数と同一である請求項2または3に記載の回転式変圧器。
【請求項5】
δmin=0.72mm、K=1.9、k=0.09、p=2である請求項に記載の回転式変圧器。
【請求項6】
前記ロータコアの軸孔の内側壁に位置規制溝が設けられる請求項1からのいずれか1項に記載の回転式変圧器。
【請求項7】
前記ステータティースの数は、12の整数倍である請求項1からのいずれか1項に記載の回転式変圧器。
【請求項8】
前記ステータコアは、複数のケイ素鋼板を前記ロータコアの回転軸の軸方向に重ねて構成され、
前記ロータコアは、複数のケイ素鋼板を前記ロータコアの回転軸の軸方向に重ねて構成され、
前記ロータコアの両端の端面は、前記ステータコアの両端の端面から軸方向にそれぞれ突出して設けられる請求項1からのいずれか1項に記載の回転式変圧器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2018年06月29日に中国特許庁に提出された、出願番号が201810700480.0であり、発明の名称が「回転式変圧器」である中国特許出願、及び2018年06月29日に中国特許庁に提出された、出願番号が201821022202.6であり、発明の名称が「回転変圧器」である中国実用新案出願の優先権を主張し、その内容の全てを援用することにより本願に取り入れる。
【0002】
本願は、変圧器の分野に関し、具体的には、回転式変圧器に関する。
【背景技術】
【0003】
回転式変圧器は、回転している物体の回転軸の角変位と角速度を測定するための同期レゾルバーとも呼ばれている電磁式センサであり、ステータとロータで構成される。ステータ巻線は、変圧器の1次側として励磁電圧を受け、ロータ巻線は、変圧器の2次側として電磁結合により誘導電圧を得て、変圧器の1次側巻線と2次側巻線はロータの角変位に応じて相対位置が変化するように選択されるため、ロータの角変位に応じてその出力電圧の大きさが変化し、出力巻線の電圧振幅はロータの回転角に対して正弦余弦の関数となる。
【0004】
突極形の回転式変圧器は、製作しやすく、安定性が高く、耐温度性に優れるため、自動車モータなどの安全性が高く要求される場面に広く用いられる。従来技術では、図1に示すように、突極形の回転式変圧器の突極ロータは、一般的に、正弦波状のロータ外形を採用するが、ロータ誤差が大きく、位置精度が高くないという欠点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の技術的課題の少なくとも1つを解決するために、本願の1つの目的は、回転式変圧器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願の実施例は、ステータコアと、ステータコアに巻設された入力巻線及び出力巻線とを備え、ステータコアの内側壁に周方向に沿って複数のステータスロットが設けられ、ステータスロットの各々がステータコアの2つの端面を連通することにより、任意の隣接する2つのステータスロットの間にステータティースが形成されて、入力巻線及び出力巻線をそれぞれ巻設するステータと、ステータコア内に嵌設されたロータコアを備えるロータと、を含み、ステータコアの内側壁とロータコアの外側壁との間にエアギャップが形成され、ロータが回転する時、エアギャップの長さδが、周方向に沿ってロータの機械的回転角θと3次高調波成分を含む正弦関数の関係を満たし、関数の関係に応じて周期的に変化してロータコアの外形を規定する回転式変圧器を提供する。
【0007】
当該技術的手段において、回転式変圧器を磁気抵抗式回転変圧器とし、ステータコアのステータティースに入力巻線と出力巻線(正弦巻線と余弦巻線とを含む)を所定の巻線方式で巻設して、入力巻線によりステータの励起を実現し、出力巻線により変化する電位信号を出力し、エアギャップの長さδ(即ちエアギャップ長)を、周方向に沿ってロータの機械的回転角θに対して3次高調波成分を含む正弦関数の関係を満たすように設定することにより、回転式変圧器のエアギャップに3次高調波を注入して出力側の出力電位の3次高調波を減衰させる。これにより、磁気抵抗式回転変圧器の測定誤差を低減して回転式変圧器の位置測定精度を向上させる。
【0008】
回転式変圧器は、ロータが1回転する間にエアギャップ内の磁束分布が正弦則に従うように構成されているので、ロータの形状を工夫することによりエアギャップ磁界を正弦波形状に近似させ、ロータの形状を改良することにより3次正弦波成分の注入を実現し、従来技術の正弦波形状に対して3次正弦波成分の注入により最大エアギャップの長さと最小エアギャップの長さとの差を減少させることができ、測定時の3次高調波干渉を低減しつつ、同一の出力電位を実現することができる。
【0009】
以上の説明から、本願のロータ構成を採用することにより、ステータティースの数及び巻線巻数を一定にした上で、最大エアギャップの長さと最小エアギャップの長さとの差を減少させる場合、出力された電位が従来技術のロータ構成を採用して出力された電位と同様になるので、本願のロータ構成を採用しつつ、最大エアギャップの長さと最小エアギャップの長さとの差を減少させることなく、ロータの位置検出精度を向上させるとともに、出力電位の向上を図ることができ、回転式変圧器の運転効率を向上させることができることが当業者に理解される。
【0010】
また、大きな出力信号を生成するために、従来技術における変圧器のロータは、最大エアギャップと最小エアギャップとの差を増加させることで実現され、ロータの外形寸法変化率が大きく、ロータの機械的加工精度に対する要求が高いが、本願の技術的手段に係るロータは、3次高調波を注入することで、ロータの加工難易度を低下させることもできる。
【0011】
また、本願が提供する上記の技術的手段における回転式変圧器は、以下のような付加的な技術的特徴を有してもよい。
【0012】
上記技術的手段において、好ましくは、入力巻線は、励磁巻線を含み、出力巻線は、正弦巻線と余弦巻線とを含み、正弦巻線と余弦巻線とがそれぞれ巻設されるように、任意の隣接する2つの励磁巻線の間に2つのステータティースが間隔をおいて設けられる。
【0013】
当該技術的手段において、正弦巻線と余弦巻線とがそれぞれ巻設されるように、任意の隣接する2つの励磁巻線の間に2つのステータティースを、間隔をおいて設置することにより、励磁巻線、正弦巻線と余弦巻線を周方向に間隔をおいて分布させ、励磁巻線によるステータ励起と、正弦巻線と余弦巻線によるロータの機械的回転角θと特殊関数関係をなす変化信号を出力することとを組み合わせることにより、3次高調波をエアギャップに注入する際に、回転式変圧器の位置測定精度の向上を図る。
【0014】
具体的には、ステータティースは、励磁巻線を巻設するための第1のステータティースと、正弦巻線を巻設するための第2のステータティースと、余弦巻線を巻設するための第3のステータティースとを含み、任意の隣接する2つの第1のステータティースの間に1つの第2のステータティース及び1つの第3のステータティースを有する。
【0015】
上記いずれかの技術的手段において、好ましくは、任意の隣接する2つの励磁巻線のうちの一方が、両側に正弦巻線が巻設され、他方が両側に余弦巻線が巻設される。
【0016】
当該技術的手段において、周方向に分布する複数のステータティースは、異なる巻線を巻設することで、第1のステータティース、第2のステータティース及び第3のステータティースに分けることができ、第1のステータティース、第2のステータティース及び第3のステータティースの数は、信号入力のための励磁巻線と、信号出力のための正弦巻線及び余弦巻線をそれぞれ巻設するように同一であり、隣接する第1のステータティース、第2のステータティース及び第3のステータティースを1組の巻設ティースとすると、周方向に分布する複数のステータティースは、磁気抵抗式回転式変圧器の規則的な巻設を実現するために複数組の巻設ティースからなり、3次正弦波成分の注入と合わせて、測定精度の向上の目的を達成する。
【0017】
具体的には、入力巻線と出力巻線は複数の巻線ユニットに分けられ、複数の巻線ユニットが周方向に沿って首尾で繋がって巻設され、1つの巻線ユニットには、反時計回り方向に励磁巻線、正弦巻線、余弦巻線、励磁巻線、余弦巻線及び正弦巻線が順に含まれ、又は、反時計回り方向に励磁巻線、余弦巻線、正弦巻線、励磁巻線、正弦巻線及び余弦巻線が順に含まれる。
【0018】
上記いずれかの技術的手段において、好ましくは、エアギャップの長さδは、機械的回転角θの1次正弦波成分分布及び3次正弦波成分分布の両方、即ちδ=f(cos(pθ)、cos(3pθ))を満たし、ここで、pは回転式変圧器のロータの極対数である。
【0019】
当該技術的手段において、機械的回転角θの1次正弦波成分分布と3次正弦波成分分布、即ちδ=f(cos(pθ)、cos(3pθ))を同時に満たすようにエアギャップの長さδを限定することで、回転式変圧器の正弦巻線の出力電位と余弦巻線の出力電位の1次基本波の振幅を等しくすると同時に、エアギャップの長さの3次正弦波成分を注入することで、ロータの位置検出精度を向上させる。
【0020】
上記いずれかの技術的手段において、好ましくは、各第1のステータティースにおける励磁巻線のコイル巻数は同一であり、正弦巻線のコイル巻数は、余弦巻線のコイル巻数と同一である。
【0021】
当該技術的手段において、ステータの励起を均一にするように、各第1のステータティースにおける励磁巻線のコイル巻数を同一にすることで、ロータの均一な回転を実現し、正弦巻線のコイル巻数を余弦巻線のコイル巻数と同一にすることにより、正弦巻線の出力電位と余弦巻線の出力電位に位相の差のみが存在し、これにより、回転軸の角変位及び角速度の正確な測定が保証される。
【0022】
上記いずれかの技術的手段において、好ましくは、エアギャップの長さδは、ロータの機械的回転角θとは、さらに以下の式
【数1】
を満たし、ここで、δminは、エアギャップの最小長さであり、Kは、1次正弦波成分係数であり、kは、3次正弦波成分係数であり、1<K<2であり、0<k<(K-1)である。
【0023】
当該技術的手段において、機械的角度の変化に伴うエアギャップの長さの変化を実現するように具体的な関係式を限定することで、1次正弦波成分係数K、3次正弦波成分係数kの調整と合わせ、3次正弦波成分が注入されたロータの外形輪郭を得て、回転角度の測定精度を高めるという目的を達成する。
【0024】
上記いずれかの技術的手段において、好ましくは、δmin=0.72mm、K=1.9、k=0.09、p=2である。
【0025】
当該技術的手段において、好ましい実施形態として、エアギャップの長さδとロータの機械的回転角θとの間に明確な関数関係が得られるように、δmin=0.72mm、K=1.9、k=0.09、p=2を限定することで、実施が容易になる。
【0026】
具体的な一実施形態としては、P=2で、ステータティースの数が24であり、即ち4極24スロットの突極形の回転式変圧器において、隣接する3個のティースに励磁巻線、正弦巻線、余弦巻線がそれぞれ順次設けられ、これら3個のティースのコイルを円周に沿って8個配列し、即ち8個の励磁コイルを設け、1コイル当たりの巻数を25ターン、線径φ1を0.1mm、正弦巻線及び余弦巻線の1コイル当たりの巻数を55ターン、線径φ2を0.13mmとし、回転式変圧器の打ち抜き片は、DW310-35のケイ素鋼板を用い、従来技術の配置により、最大エアギャップの長さδmax=13.68mm、エアギャップの最小長さδmin=0.72mmであり、回転式変圧器がデコードされたロータの電気角度誤差は、e1=±1.05°となる。
【0027】
本願のロータ輪郭によれば、回転式変圧器の最大エアギャップの長さδmax=7.2mm、エアギャップの最小長さδmin=0.76mm、回転式変圧器がデコードされたロータの電気角度誤差e1=±0.04°、即ち、3次正弦波成分が注入されたロータ外形の突極形の回転式変圧器がデコードされたロータの電気角度誤差は、従来技術における正弦波のロータ外形の突極形の回転式変圧器がデコードされたロータの電気角度誤差の3.81%であり、それによりロータの誤差低減を実現する。
【0028】
【表1】
【0029】
表1から明らかなように、ステータの寸法が従来技術と同一である場合には、最大エアギャップの長さと最小エアギャップの長さとの差が小さくなり、回転式変圧器の正弦巻線の出力電位と余弦巻線の出力電位の1次基本波の振幅は等しくなるが、ロータの位置検出精度が向上する。
【0030】
また、ステータコアの内径を調整することで、最大エアギャップの長さと最小エアギャップの長さとの差を従来技術と同一にすることができ、出力巻線の巻数を増やすことなく、出力電位振幅の向上を図ることができるとともに、ロータの位置検出精度を向上させる。
【0031】
上記いずれかの技術的手段において、好ましくは、エアギャップの長さδが機械的回転角θに応じて周方向に変化するように、ロータコアをロータの極対数に応じて突極形の構造に構成する。
【0032】
上記いずれかの技術的手段において、好ましくは、ロータコアの軸孔の内側壁に位置規制溝が設けられ、回転軸の外側壁に位置規制溝に係合する位置規制リブが設けられる。
【0033】
上記いずれかの技術的手段において、好ましくは、ステータティースの数は、12の整数倍である。
【0034】
上記いずれかの技術的手段において、好ましくは、ステータコアは、複数のケイ素鋼板を回転軸の軸方向に重ねて構成され、ロータコアは、複数のケイ素鋼板を回転軸の軸方向に重ねて構成される。ロータコアの両端の端面は、ステータコアの両端の端面から軸方向にそれぞれ突出して設けられる。
【発明の効果】
【0035】
本願にて提供される1つ以上の技術的手段は、少なくとも以下のような技術的効果又は利点を有する。
【0036】
回転式変圧器のエアギャップに3次高調波を注入して出力側の出力電位の3次高調波を減衰させるために、エアギャップの長さδをロータの機械的回転角θと周方向に3次高調波成分を含む正弦関数の関係を満たすように設定することで、磁気抵抗式回転変圧器の測定誤差を低減し、回転式変圧器の位置測定精度を向上させることができる。
【0037】
本願の付加的な態様及び利点は、以下の説明によって明確になり、又は本発明を実施することで理解できる。
【0038】
本願の上記及び/又は付加的な態様及び利点は、以下の図面を結合した実施例の説明から明確になり、容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】従来技術における回転式変圧器のロータの断面構造を示す概略図である。
図2】本願の一実施例に係る回転式変圧器のロータの断面構造を示す概略図である。
図3】本願の一実施例に係る回転式変圧器の構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本願の上記目的、特徴及び利点をより明確に理解できるように、以下、図面及び具体的な実施形態を参照しながら本発明についてさらに詳しく説明する。なお、矛盾しない限り、本願の実施例及び実施例中の特徴を組み合せすることができる。
【0041】
本発明を十分に理解するように、以下の説明で多くの具体的な詳細を説明するが、本発明はここで説明する形態と異なる形態で実施することもできるので、本発明の保護範囲は以下で開示する具体的な実施例に限定されない。
【0042】
以下、図2及び図3を参照しながら本願のいくつかの実施例に係る回転式変圧器を説明する。
【0043】
図2及び図3に示すように、本願の実施例に係る回転式変圧器1は、ステータコア102と、ステータコア102に巻設された入力巻線及び出力巻線とを備え、ステータコア102の内側壁に周方向に沿って複数のステータスロットが設けられ、ステータスロットの各々がステータコア102の2つの端面を連通することにより、任意の隣接する2つのステータスロットの間にステータティースが形成されて、入力巻線及び出力巻線をそれぞれ巻設するステータ10と、ステータコア内に嵌設されたロータコアを備えるロータ20と、を含み、ステータコア102の内側壁とロータコアの外側壁との間にエアギャップが形成され、ロータ20が回転する時、エアギャップの長さδ(即ちエアギャップ長)が、周方向に沿ってロータ20の機械的回転角θと3次高調波成分を含む正弦関数の関係を満たし、関数の関係に応じて周期的に変化してロータコアの外形を規定する。
【0044】
当該実施例において、回転式変圧器1を磁気抵抗式回転変圧器とし、ステータコア102のステータティースに入力巻線(励磁巻線104)と出力巻線(正弦巻線106と余弦巻線108とを含む)を所定の巻線方式で巻設して、励磁巻線104によりステータ10の励起を実現し、正弦巻線106と余弦巻線108によりロータ20の機械的回転角θと特殊関数関係をなす変化信号を出力し、エアギャップの長さδを、周方向に沿ってロータ20の機械的回転角θに対して3次高調波成分を含む正弦関数の関係を満たすように設定することにより、回転式変圧器のエアギャップに3次高調波を注入して出力側の出力電位の3次高調波を減衰させる。これにより、磁気抵抗式回転変圧器の測定誤差を低減して回転式変圧器の位置測定精度を向上させる。
【0045】
回転式変圧器は、ロータ20が1回転する間にエアギャップ内の磁束分布が正弦則に従うように構成されているので、ロータ20の形状を工夫することによりエアギャップ磁界を正弦波形状に近似させ、ロータ20の形状を改良することにより3次正弦波成分の注入を実現し、従来技術の正弦波形状に対して3次正弦波成分の注入により最大エアギャップの長さと最小エアギャップの長さとの差を減少させることができ、測定時の3次高調波干渉を低減しつつ、同一の出力電位を実現することができる。
【0046】
以上の説明から、図2に示すように、本願のロータ構成を採用することにより、ステータティースの数及び巻線巻数を一定にした上で、最大エアギャップの長さと最小エアギャップの長さとの差を減少させる場合、出力された電位が図1に示す従来技術のロータ構成を採用して出力された電位と同一になるので、本願のロータ構成を採用しつつ、最大エアギャップの長さと最小エアギャップの長さとの差を減少させることなく、ロータ20の位置検出精度を向上させるとともに、出力電位の向上を図ることができ、回転式変圧器の運転効率を向上させることができることが当業者に理解される。
【0047】
また、大きな出力信号を生成するために、従来技術における変圧器のロータ20は、最大エアギャップと最小エアギャップとの差を増加させることで実現され、ロータ20の外形寸法変化率が大きく、ロータ20の機械的加工精度に対する要求が高いが、本願の技術的手段に係るロータ20は、3次高調波を注入することで、ロータ20の加工難易度を低下させることもできる。
【0048】
上記実施例において、好ましくは、入力巻線は、励磁巻線104を含み、出力巻線は、正弦巻線106と余弦巻線108とを含み、正弦巻線106と余弦巻線108とがそれぞれ巻設されるように、任意の隣接する2つの励磁巻線104の間に2つのステータティースが間隔をおいて設けられる。
【0049】
当該実施例において、正弦巻線106と余弦巻線108とがそれぞれ巻設されるように、任意の隣接する2つの励磁巻線104の間に2つのステータティースを、間隔をおいて設置することにより、励磁巻線104、正弦巻線106と余弦巻線108を周方向に間隔をおいて分布させ、励磁巻線104によるステータ励起と、正弦巻線106と余弦巻線108によるロータの機械的回転角θと特殊関数関係をなす変化信号を出力することとを組み合わせることにより、3次高調波をエアギャップに注入する際に、回転式変圧器1の位置測定精度の向上を図る。
【0050】
具体的には、ステータティースは、励磁巻線104を巻設するための第1のステータティースと、正弦巻線106を巻設するための第2のステータティースと、余弦巻線108を巻設するための第3のステータティースとを含み、任意の隣接する2つの第1のステータティースの間に1つの第2のステータティース及び1つの第3のステータティースを有する。
【0051】
上記いずれかの実施例において、好ましくは、任意の隣接する2つの励磁巻線104のうちの一方が、両側に正弦巻線106が巻設され、他方が両側に余弦巻線108が巻設される。
【0052】
当該実施例において、周方向に分布する複数のステータティースは、異なる巻線を巻設することで、第1のステータティース、第2のステータティース及び第3のステータティースに分けることができ、第1のステータティース、第2のステータティース及び第3のステータティースの数は、信号入力のための励磁巻線104と、信号出力のための正弦巻線106及び余弦巻線108をそれぞれ巻設するように同一であり、隣接する第1のステータティース、第2のステータティース及び第3のステータティースを1組の巻設ティースとすると、周方向に分布する複数のステータティースは、磁気抵抗式回転式変圧器の規則的な巻設を実現するために複数組の巻設ティースからなり、3次正弦波成分の注入と合わせて、測定精度の向上の目的を達成する。
【0053】
図3に示すように、具体的には、入力巻線と出力巻線は複数の巻線ユニットに分けられ、複数の巻線ユニットが周方向に沿って首尾で繋がって巻設され、1つの巻線ユニットには、反時計回り方向に励磁巻線104、正弦巻線106、余弦巻線108、励磁巻線104、余弦巻線108及び正弦巻線106が順に含まれ、又は、反時計回り方向に励磁巻線104、余弦巻線108、正弦巻線106、励磁巻線104、正弦巻線106及び余弦巻線108が順に含まれる。
【0054】
上記いずれかの実施例において、好ましくは、エアギャップの長さδは、機械的回転角θの1次正弦波成分分布及び3次正弦波成分分布の両方、即ちδ=f(cos(pθ)、cos(3pθ))を満たし、ここで、pは回転式変圧器1のロータ20の極対数であり、θはロータ20の機械的回転角である。
【0055】
当該実施例において、機械的回転角θの1次正弦波成分分布と3次正弦波成分分布、即ちδ=f(cos(pθ)、cos(3pθ))を同時に満たすようにエアギャップの長さδを限定することで、回転式変圧器1の正弦巻線106の出力電位と余弦巻線108の出力電位の1次基本波の振幅を等しくすると同時に、エアギャップの長さの3次正弦波成分を注入することで、ロータ20の位置検出精度を向上させる。
【0056】
上記いずれかの実施例において、好ましくは、各第1のステータティースにおける励磁巻線104のコイル巻数は同一であり、正弦巻線106のコイル巻数は、余弦巻線108のコイル巻数と同一である。
【0057】
当該実施例において、ステータ10の励起を均一にするように、各第1のステータティースにおける励磁巻線104のコイル巻数を同一にすることで、ロータ20の均一な回転を実現し、正弦巻線106のコイル巻数を余弦巻線108のコイル巻数と同一にすることにより、正弦巻線106の出力電位と余弦巻線108の出力電位に位相の差のみが存在し、これにより、回転軸の角変位及び角速度の正確な測定が保証される。
【0058】
上記いずれかの実施例において、好ましくは、エアギャップの長さδは、ロータ20の機械的回転角θとは、さらに以下の式
【数2】
を満たし、ここで、δminは、エアギャップの最小長さであり、Kは、1次正弦波成分係数であり、kは、3次正弦波成分係数であり、1<K<2であり、0<k<(K-1)である。
【0059】
当該実施例において、機械的角度の変化に伴うエアギャップの長さの変化を実現するように具体的な関係式を限定することで、1次正弦波成分係数K、3次正弦波成分係数kの調整と合わせ、3次正弦波成分が注入されたロータ20の外形輪郭を得て、回転角度の測定精度を高めるという目的を達成する。
【0060】
上記いずれかの実施例において、好ましくは、δmin=0.72mm、K=1.9、k=0.09、p=2である。
【0061】
当該実施例において、好ましい実施形態として、エアギャップの長さδとロータ20の機械的回転角θとの間に明確な関数関係が得られるように、δmin=0.72mm、K=1.9、k=0.09、p=2を限定することで、実施が容易になる。
【0062】
具体的な一実施形態としては、P=2で、ステータティースの数が24であり、即ち4極24スロットの突極形の回転式変圧器において、隣接する3個のティースに励磁巻線104、正弦巻線106、余弦巻線108がそれぞれ順次設けられ、これら3個のティースのコイルを円周に沿って8個配列し、即ち8個の励磁コイルを設け、1コイル当たりの巻数を25ターン、線径φ1を0.1mm、正弦巻線106及び余弦巻線108の1コイル当たりの巻数を55ターン、線径φ2を0.13mmとし、回転式変圧器の打ち抜き片は、DW310-35のケイ素鋼板を用いる。
【0063】
図1に示すように、従来技術の配置により、ロータコアは、最大輪郭寸法を98.56mm、最小輪郭歯車を72.64mmとし、最大エアギャップの長さδmax=13.68mm、エアギャップの最小長さδmin=0.72mm、回転式変圧器がデコードされたロータ20の電気角度誤差は、e1=±1.05°となる。
【0064】
本願のロータ輪郭によれば、ロータコアは、最大輪郭寸法を98.48mm、最小輪郭歯車を85.6mmとし、回転式変圧器の最大エアギャップの長さδmax=7.2mm、エアギャップの最小長さδmin=0.76mm、回転式変圧器がデコードされたロータ20の電気角度誤差e1=±0.04°、即ち、3次正弦波成分が注入されたロータ20外形の突極形の回転式変圧器がデコードされたロータ20の電気角度誤差は、従来技術における正弦波のロータ20外形の突極形の回転式変圧器がデコードされたロータ20の電気角度誤差の3.81%であり、それによりロータ20の誤差低減を実現する。
【0065】
図1に示すように、従来技術におけるエアギャップの長さが円周に沿って正弦分布している突極形の回転式変圧器のロータ外形は、ステータ内径φ1=0.01mm、最小エアギャップの長さδmin=0.72mmであり、エアギャップの長さの周方向に沿った式は、以下のとおりである。
【0066】
【数3】
【0067】
ここで、1<K<2であり、当該実施例において、K=1.9である。
【0068】
p:突極形ロータの極対数、当該実施例において、p=2であり、即ちロータは2対の磁極を有する。
【0069】
θ:エアギャップの長さの円周に沿って回転する機械的角度である。
【0070】
図2は、3次正弦波成分が注入された突極形の回転変圧器のロータ外形を示し、エアギャップの長さの周方向に沿った式は以下のとおりである。
【0071】
【数4】
【0072】
ここで、0<k<(K-1)であり、kは0より大きい正数であり、当該実施例において、k=0.09である。
【0073】
【表2】
【0074】
表1から明らかなように、ステータ10の寸法が従来技術と同一である場合には、最大エアギャップの長さと最小エアギャップの長さとの差が小さくなり、回転式変圧器1の正弦巻線106の出力電位と余弦巻線108の出力電位の1次基本波の振幅は等しくなるが、ロータ20の位置検出精度が向上する。
【0075】
また、ステータコア102の内径を調整することで、最大エアギャップの長さと最小エアギャップの長さとの差を従来技術と同一にすることができ、出力巻線の巻数を増やすことなく、出力電位振幅の向上を図ることができるとともに、ロータ20の位置検出精度を向上させる。
【0076】
上記いずれかの実施例において、好ましくは、エアギャップの長さδが機械的回転角θに応じて周方向に変化するように、ロータコアをロータ20の極対数に応じて突極形の構造に構成する。
【0077】
上記いずれかの実施例において、好ましくは、ロータコアの軸孔の内側壁に位置規制溝が設けられ、回転軸の外側壁に位置規制溝に係合する位置規制リブが設けられる。
【0078】
上記いずれかの実施例において、好ましくは、ステータティースの数は、12の整数倍である。
【0079】
上記いずれかの実施例において、好ましくは、ステータコア102は、複数のケイ素鋼板を回転軸の軸方向に重ねて構成され、ロータコアは、複数のケイ素鋼板を回転軸の軸方向に重ねて構成される。ロータコアの両端の端面は、ステータコア102の両端の端面から軸方向にそれぞれ突出して設けられる。
【0080】
本願の技術的手段によれば、回転式変圧器を磁気抵抗式回転変圧器とし、ステータコアのステータティースに励磁巻線と出力巻線(正弦巻線と余弦巻線とを含む)を所定の巻線方式で巻設して、励磁巻線によりステータの励起を実現し、正弦巻線と余弦巻線によりロータの機械的回転角θと特殊関数関係をなす変化信号を出力し、エアギャップの長さδを、周方向に沿ってロータの機械的回転角θに対して3次高調波成分を含む正弦関数の関係を満たすように設定することにより、回転式変圧器のエアギャップに3次高調波を注入して出力側の出力電位の3次高調波を減衰させる。これにより、磁気抵抗式回転変圧器の測定誤差を低減して回転式変圧器の位置測定精度を向上させる。
【0081】
本願において、用語「第1」、「第2」、「第3」は目的を説明するためのものであり、相対的な重要性の指示又は示唆として解釈されるべきではない。特に断らない限り、用語「複数」は2つ又は2つ以上である。「用語「取り付け」、「接続」、「接続」、「固定」などの用語はいずれも広義に理解されるべきであり、例えば、「接続」は固定的に接続されてもよいし、着脱可能に接続されてもよく、又は一体的に接続であってもよく、「連結」は、直接的に連結されてもよいし、中間媒体を介して間接的に連結されてもよい。当業者であれば、具体的な状況によって上記用語の本願における具体的な意味を理解することができる。
【0082】
本願の説明において、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」などの用語で示す方位又は位置関係は図面に示す方位又は位置関係であり、本願を説明し易い、又は説明を簡単にするだけに用いられ、示している装置またはセットは必ず特定の方向を有し、特定の方位構造と操作を有することを表す又は暗示することではないことを理解されるべきであり、そのため、本願に対する限定とみなされるべきではない。
【0083】
本明細書の説明において、用語である「一実施例」、「いくつかの実施例」、「具体的な実施例」などの説明は、該実施例又は例示に記載された具体的な特徴、構造、材料又は特長を参照して本発明の少なくとも1つの実施例又は例示に含まれることを意図する。本明細書において、上記用語の例示的記述は同一の実施例又は例示を必ずしも意味しない。さらに、記載された具体的な特徴、構造、材料又は特長はいずれかの1つ又は複数の実施例又は例示において適当な方式で組み合わせることができる。
【0084】
以上は、本願の好ましい実施例に過ぎず、本願を限定するものではない。当業者であれば、本願に様々な修正や変更が可能である。本願の精神及び原則内での全ての修正、均等置換、改善などは、本発明の範囲内に含まれる。
【0085】
図2及び図3における符号と部材名称の対応関係は、以下のとおりである。
1 回転式変圧器
10 ステータ
102 ステータコア
104 励磁巻線
106 正弦巻線
108 余弦巻線
20 ロータ
図1
図2
図3