(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】触媒装置
(51)【国際特許分類】
B01J 35/04 20060101AFI20220613BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20220613BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
B01J35/04 321A
B01J35/04 301C
B01D53/94 300
B01D53/94 ZAB
F01N3/28 311S
F01N3/28 311M
(21)【出願番号】P 2021525894
(86)(22)【出願日】2019-08-01
(86)【国際出願番号】 JP2019030216
(87)【国際公開番号】W WO2020031841
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-01-20
(31)【優先権主張番号】P 2018151735
(32)【優先日】2018-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519031896
【氏名又は名称】ヴィテスコ テクノロジーズ ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Vitesco Technologies GmbH
【住所又は居所原語表記】Siemensstrasse 12,93055 Regensburg,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】堀村 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 光作
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ ジャイヤ
(72)【発明者】
【氏名】川口 大二
(72)【発明者】
【氏名】前田 和寿
(72)【発明者】
【氏名】スヴェン ザイフェルト
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル ヴォイト
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-103664(JP,A)
【文献】特表2005-535454(JP,A)
【文献】特表平08-504917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
B01D 53/86
B01D 53/94
F01N 3/00 - 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔状の平板(52)と波板(54)とが重ねられて巻かれることにより形成され、かつ、触媒を担持する担体(42)と、
前記担体(42)を内部に収容すると共に、前記担体(42)の一端部(42a)を排気ガスの上流側に向け、前記担体(42)の他端部(42b)を排気ガスの下流側に向けて、前記担体(42)を支持する外筒(44)と、
を備える触媒装置(36)であって、
前記平板(52)および前記波板(54)は、複数の孔(64)を有し、
複数の前記孔(64)は、前記平板(52)および前記波板(54)が前記担体(42)にされる前の平坦状態において、前記担体(42)の軸線方向と平行する第1方向(D1)に沿って整列して複数の第1列(66)を形成すると共に前記第1方向(D1)と直交する第2方向(D2)に沿って整列して複数の第2列(68)を形成し、
前記平板(52)と前記波板(54)との接合箇所が、前記担体(42)の前記一端部(42a)を含む第1上流範囲(70)に設けられ、
前記担体(42)と前記外筒(44)との接合箇所が、前記担体(42)の前記一端部(42a)を含む第2上流範囲(72)に設けられる、触媒装置(36)。
【請求項2】
請求項1に記載の触媒装置(36)であって、
前記担体(42)と前記外筒(44)との接合箇所が、前記第1上流範囲(70)を含みかつ前記第1上流範囲(70)よりも前記軸線方向に広い前記第2上流範囲(72)に設けられる、触媒装置(36)。
【請求項3】
請求項1または2に記載の触媒装置(36)であって、
前記第1上流範囲(70)に、所定数の前記第2列(68)が含まれる、触媒装置(36)。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の触媒装置(36)であって、
前記平板(52)と前記波板(54)との接合箇所が、前記担体(42)の前記他端部(42b)を含む下流範囲(74)に設けられる、触媒装置(36)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、孔を有する平板と波板とが重ねられて巻かれることにより形成されかつ触媒を担持する担体を外筒に収容して支持する触媒装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関を備える車両は、内燃機関の燃焼工程で発生する排気ガスを車外へ排出させるための排気装置を備える。排気装置は、排気ガスを浄化する触媒装置を備える。特表2005-535454号公報には、自動車に設けられる内燃機関のための触媒装置が開示される。この触媒装置は、触媒を担持する孔付きハニカム体(担体)と担体を収容して支持する外被管(外筒)とを備える。担体は、孔を有する金属箔状の平形薄板(平板)と波形薄板(波板)とが重ねられて巻かれることにより形成される。
【発明の概要】
【0003】
排気ガスにより担体に熱が加えられると、担体に熱応力が発生する。担体を形成する平板および波板が大きな孔を有する場合、熱応力が不均一になり、熱ひずみが発生する。更に、孔を有する板は孔を有さない板と比較して剛性が低い。このように、孔を有する担体は、熱ひずみが発生しやすく、また、剛性が低いことから、場合によっては変形する。特に、排気ガスの流れ方向中央付近では触媒が活性化して高温になるため、大きな熱ひずみが発生しやすい。この中央付近の各部材がろう付けされて固定されると、ろう付け箇所およびその周辺箇所が破損する虞がある。
【0004】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、孔付きの担体の耐久性を向上させることができる触媒装置を提供することを目的とする。
【0005】
本発明は、
金属箔状の平板(52)と波板(54)とが重ねられて巻かれることにより形成され、かつ、触媒を担持する担体(42)と、
前記担体(42)を内部に収容すると共に、前記担体(42)の一端部(42a)を排気ガスの上流側に向け、前記担体(42)の他端部(42b)を排気ガスの下流側に向けて、前記担体(42)を支持する外筒(44)と、
を備える触媒装置(36)であって、
前記平板(52)および前記波板(54)は、複数の孔(64)を有し、
複数の前記孔(64)は、前記平板(52)および前記波板(54)が前記担体(42)にされる前の平坦状態において、前記担体(42)の軸線方向と平行する第1方向(D1)に沿って整列して複数の第1列(66)を形成すると共に前記第1方向(D1)と直交する第2方向(D2)に沿って整列して複数の第2列(68)を形成し、
前記平板(52)と前記波板(54)との接合箇所が、前記担体(42)の前記一端部(42a)を含む第1上流範囲(70)に設けられ、
前記担体(42)と前記外筒(44)との接合箇所が、前記担体(42)の前記一端部(42a)を含む第2上流範囲(72)に設けられる。
【0006】
本発明によれば、孔付きの担体の耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図4】
図4は上流側からみた触媒装置を簡略化した模式図である。
【
図5】
図5は実施例1に係る平板を簡略化した模式図である。
【
図6】
図6は実施例2に係る平板を簡略化した模式図である。
【
図7】
図7はろう付け箇所の説明に供する説明図である。
【
図8】
図8はろう付け箇所の説明に供する説明図である。
【
図9】
図9はろう付け箇所の説明に供する説明図である。
【
図11】
図11は担体の製造方法の説明に供する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る触媒装置について、好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0009】
なお、以下の説明で使用する上流、下流というのは、排気ガスの流れを対象とする。
【0010】
[1.排気装置14]
図1に示されるように、自動二輪車10は、走行のための駆動源として内燃機関12を有する。内燃機関12には、排気装置14が接続される。
【0011】
図2に示されるように、排気装置14は、フランジ16と、上流側排気管18と、触媒収納部20と、下流側排気管22(
図3)と、遮熱カバー24と、マフラ26と、を有する。上流側排気管18は、フランジ16によって内燃機関12のシリンダヘッドに接続される。触媒収納部20は、上流側排気管18の下流側端部に接続される。触媒収納部20の構成については下記[2]で説明する。下流側排気管22(
図3)は、触媒収納部20の下流側端部に接続される。遮熱カバー24は、下流側排気管22を覆うようにして触媒収納部20の下流側端部に接続される。マフラ26は、下流側排気管22および遮熱カバー24の下流側端部に接続される。排気装置14は、1以上のステー28により車体のフレームに取り付けられる。この構造により、内燃機関12から排出される排気ガスは、上流側排気管18、触媒収納部20、下流側排気管22、マフラ26を通過して外部に排出される。
【0012】
[2.触媒収納部20]
図3に示されるように、触媒収納部20は、外テーパ管30と、遮熱管32と、上流側内テーパ管34と、触媒装置36と、下流側内テーパ管38と、を有する。外テーパ管30は、上流側排気管18の下流側端部に接続される。遮熱管32は、外テーパ管30の下流側端部に接続される。上流側内テーパ管34は、外テーパ管30と上流側排気管18との接続箇所よりも下流側で上流側排気管18の下流側端部に接続され、外テーパ管30の内部に位置する。触媒装置36は、上流側内テーパ管34の下流側端部に接続され、遮熱管32の内部に位置する。触媒装置36の構成については下記[3]で説明する。下流側内テーパ管38は、触媒装置36の下流側端部に接続され、遮熱管32の内部に位置する。
【0013】
[3.触媒装置36]
図3、
図4に示されるように、触媒装置36は、担体42と、外筒44と、を有する。担体42は、ハニカム構造の略円柱形状であり、金属箔状の1以上の平板52と、金属箔状の平板52が波状に成形された1以上の波板54と、が重ねられて巻かれることにより形成される。平板52(および波板54)は、ステンレス鋼で形成されており、一方の面から他方の面に貫通する複数の孔64(
図5、
図6)を有する。孔64については下記[3.1]で説明する。
【0014】
担体42は触媒を担持する。例えば、担体42の状態で、平板52および波板54の表面は、触媒物質(白金、パラジウム、ロジウム等の白金族元素等)を含む被膜で覆われる。平板52と波板54は互いに接合される。平板52と波板54との接合については下記[3.2]で説明する。
【0015】
外筒44は、担体42の外径よりも若干大きな内径を呈する円筒である。外筒44は、平板52と同様にステンレス鋼で形成される。外筒44は、内部に担体42を収容する。外筒44は、担体42の一端部42aを排気ガスの上流側に向け、担体42の他端部42bを排気ガスの下流側に向けた状態で、担体42を支持する。外筒44が担体42を支持する状態で、外筒44の軸線と担体42の軸線は一致する。
図3に示されるように、両者の軸線を軸線Aと称する。担体42の外周面と外筒44の内周面は互いに接合される。担体42と外筒44との接合については下記[3.2]で説明する。
【0016】
[3.1.孔64を有する平板52]
[3.1.1.実施例1]
図5を用いて実施例1の平板52を説明する。
図5に示される平板52は、担体42にされる前の平坦状態である。平板52は、第1方向D1に長さLであり、第2方向D2に長さW(>L)である略矩形の金属箔状部材である。第1方向D1は、排気ガスの流れの方向、および、担体42の軸線方向(軸線Aの延伸方向)と平行する。
図5では紙面上から下に向かう方向を第1方向D1とする。第2方向D2は、第1方向D1と直交する。
図5では紙面左から右に向かう方向を第2方向D2とする。平板52の第1方向D1の長さLは担体42の軸線方向の長さとなる。平板52の第2方向D2の長さWは担体42の径に関係する。したがって、長さLおよび長さWは担体42の設計に応じて決定される。
【0017】
平板52は、孔形成部60と、孔形成部60を囲む縁部62と、を有する。平板52は、孔形成部60に、第1方向D1および第2方向D2に沿って整列する複数の孔64を有する。第1方向D1に沿う孔64の列を第1列66と称する。第2方向D2に沿う孔64の列を第2列68と称する。第1列66において、孔64の中心を繋いだ線を列の中心線66cとすると、各中心線66cが等間隔となるように各孔64は配置される。第2列68において、孔64の中心を繋いだ線を列の中心線68cとすると、各中心線68cが等間隔となるように各孔64は配置される。
【0018】
第1列66に対して、第2方向D2に向けて順に番号を付す。n番目の第1列66上の各孔64とn+1番目の第1列66上の各孔64は、第2方向D2の一方(または他方)からみて、交互に並ぶ。つまり、第2方向D2の一方(または他方)からみて、n番目の第1列66で互いに隣接する2つの孔64の間にn+1番目の第1列66の1つの孔64が配置され、n+1番目の第1列66で互いに隣接する2つの孔64の間にn番目の第1列66の1つの孔64が配置される。
【0019】
同様に、第2列68に対して、第1方向D1の一方から他方に向けて順に番号を付す。n番目の第2列68上の各孔64とn+1番目の第2列68上の各孔64は、第1方向D1の一方(または他方)からみて、交互に並ぶ。つまり、第1方向D1の一方(または他方)からみて、n番目の第2列68で互いに隣接する2つの孔64の間にn+1番目の第2列68の1つの孔64が配置され、n+1番目の第2列68で互いに隣接する2つの孔64の間にn番目の第2列68の1つの孔64が配置される。
【0020】
互いに隣接する2つ(n番目とn+1番目)の第1列66のうち、一方(n番目)の第1列66上の孔64と、他方(n+1番目)の第1列66上の孔64は、第1方向D1からみて、互いに一部64pが重なる。重なる一部64pの第2方向D2の長さは、0よりも大きく、かつ、孔64の第2方向D2の長さ(例えば直径2a)の20%以下である。対して、互いに隣接する2つ(n番目とn+1番目)の第2列68のうち、一方(n番目)の第2列68上の孔64と、他方(n+1番目)の第2列68上の孔64は、第2方向D2からみて、互いに離間する。
【0021】
ここで、実施例1の平板52の具体例を説明する。孔64の形状は円形である。孔64の半径aは4.0mm(φ8.0)である。互いに隣接する第2列68の間隔i2(すなわちn番目の第2列68とn+1番目の第2列68の間隔i2)は9.52mmである。互いに隣接する2つの孔64の端部間の距離bは3mmである。
【0022】
なお、これらの形状および数値は一例であり、他の形状または数値であってもよい。例えば、孔64の形状は楕円であってもよく、その場合は、長軸と短軸のいずれかが第1方向D1または第2方向D2と平行してもよい。
【0023】
また、一部64pの領域に配置される孔64の大きさ(例えば直径2a)が、他の領域に配置される孔64の大きさ(例えば直径2a)よりも小さくてもよい。特に、上流側、すなわち担体42の一端部42aとなる第1端部52a側から所定番目(1番目~k番目)の第2列68に含まれる孔64の大きさを小さくするとよい。具体的には、孔64が円形である場合、距離b>半径aの関係が成立するように、孔64の大きさと配置を設定するとよい。上流側の孔64の大きさを小さくすることにより、排気ガスの脈動に起因する担体42の振動(フラッタリングという)に対する耐久性が向上する。
【0024】
波板54は、平板52を第2方向D2に長くした形態の金属箔状部材を、第2方向D2に向かう波形状に加工することにより形成される。波板54は、平面視において、平板52と略同じ外形を呈する。波板54の波形状は、振幅が漸増、漸減する形状、例えば正弦波形状である。波板54は、平板52と同じ配置の孔64を有する。但し、平板52よりも第2方向D2に長い分、孔形成部60は第2方向D2に広く、孔64の数は多い。
【0025】
[3.1.2.実施例2]
図6を用いて実施例2の平板52を説明する。
図6に示される平板52は、
図5に示される平板52の各孔64の配置を、孔形成部60内で90°回転させたものに相当する。
図6に示される平板52の構成は、孔64の配置を除き、
図5に示される平板52の構成と同じである。以下では、
図6に示される平板52のうち、
図5に示される平板52と相違する部分について説明する。
【0026】
互いに隣接する2つ(n番目とn+1番目)の第1列66のうち、一方(n番目)の第1列66上の孔64と、他方(n+1番目)の第1列66上の孔64は、第1方向D1からみて、互いに離間する。対して、互いに隣接する2つ(n番目とn+1番目)の第2列68のうち、一方(n番目)の第2列68上の孔64と、他方(n+1番目)の第2列68上の孔64は、第2方向D2からみて、互いに一部64pが重なる。重なる一部64pの第1方向D1の長さは、0よりも大きく、かつ、孔64の第2方向D2の長さ(例えば直径2a)の20%以下である。
【0027】
ここで、実施例2の平板52の具体例を説明する。孔64の形状は円形である。孔64の半径aは4.0mm(φ8.0)である。互いに隣接する第1列66の間隔i1(すなわちn番目の第1列66とn+1番目の第1列66の間隔i1)は9.52mmである。互いに隣接する2つの孔64の端部間の距離bは3mmである。
【0028】
実施例1と同様に、これらの形状および数値は一例であり、他の形状または数値であってもよい。例えば、孔64の形状は楕円であってもよく、その場合は、長軸と短軸のいずれかが第1方向D1または第2方向D2と平行してもよい。
【0029】
実施例1と同様に、一部64pの領域に配置される孔64の大きさ(例えば直径2a)が、他の領域に配置される孔64の大きさ(例えば直径2a)よりも小さくてもよい。特に、上流側、すなわち担体42の一端部42aとなる第1端部52a側から所定番目(1番目~k番目)の第2列68に含まれる孔64の大きさを小さくするとよい。具体的には、孔64が円形である場合、距離b>半径aの関係が成立するように、孔64の大きさと配置を設定するとよい。上流側の孔64の大きさを小さくすることにより、排気ガスの脈動に起因する担体42の振動(フラッタリングという)に対する耐久性が向上する。
【0030】
実施例1、2のように、平板52および波板54に孔64が形成されると、担体42を流れる排気ガスに乱流(渦流)が発生しやすくなる。排気ガスに乱流が発生すると、触媒に対する排気ガスの接触機会が増えるため、排気ガスの浄化効率が向上する。更に、平板52および波板54に孔64が形成されると、排気ガスの流路が実質的に長くなる。排気ガスの流路が長くなると、触媒に対する排気ガスの接触機会が増えるため、排気ガスの浄化効率が向上する。
【0031】
[3.2.各部材の接合]
[3.2.1.上流側の接合]
図7を用いて、平板52と波板54との接合、および、担体42と外筒44との接合について説明する。
図7は、
図3に示される触媒装置36における各部材の接合範囲を示す。平板52と波板54および担体42と外筒44は、共にろう付けにより接合される。
【0032】
本実施形態では、平板52と波板54との上流側のろう付けの箇所を第1上流範囲70とし、担体42と外筒44とのろう付けの箇所を第2上流範囲72とする。第1上流範囲70は、担体42の一端部42aの位置から軸線方向に沿って下流側に長さL1だけ離れた位置まで拡がる範囲である。第2上流範囲72は、担体42の一端部42aの位置から軸線方向に沿って下流側に長さL2だけ離れた位置まで拡がる範囲である。長さL2は長さL1よりも長い。つまり、第2上流範囲72は、第1上流範囲70よりも軸線方向の下流側に広い。
【0033】
具体的には、長さL1は3mmであり、長さL2は10mmであるとよい。この範囲では排気ガスの温度が比較的低いためである。上述した実施例1、2(半径a=4.0mm、距離b=3mm)の場合、
図5、
図6に示されるように、第2上流範囲72の下流側の境界は、2番目の第2列68の孔64にかかる。
【0034】
第1上流範囲70に位置する担体42は、中心から外周にわたって平板52と波板54とが互いにろう付けされる。第1上流範囲70には、平板52と波板54のそれぞれの縁部62と、1番目~所定番目までの第2列68上の複数の孔64と、が含まれる。波板54に含まれる各波部分の略頂点部位が平板52にろう付けされる。但し、第1上流範囲70に含まれる平板52と波板54との全ての接触箇所をろう付けすることは難しい。このため、本実施形態では、全ての接触箇所をろう付けすることを必須とはしない。
【0035】
第2上流範囲72に位置する担体42と外筒44は互いにろう付けされる。具体的には、担体42の外周面と外筒44の内周面とがろう付けされる。
【0036】
触媒装置36の振動は上流側ほど大きい。本実施形態のように、平板52と波板54とを第1上流範囲70で接合し、担体42と外筒44とを第2上流範囲72で接合することにより、担体42の振動を効率的に抑制することができる。更に、各部材が担体42の全長にわたって接合されないため、各部材が熱の影響で伸縮することにより担体42が破損することを防止することができる。
【0037】
[3.2.2.下流側の接合]
前述したように平板52と波板54とが上流側でろう付けされることに加えて、平板52と波板54とが下流側でろう付けされてもよい。
図8~
図10では、平板52と波板54との下流側のろう付けの箇所を下流範囲74とする。下流範囲74は、担体42の他端部42bの位置から軸線方向に沿って上流側に長さL3だけ離れた位置まで拡がる範囲である。
【0038】
図8に示されるように、下流範囲74において、中心から径方向に離れる範囲のうち、外周側に位置する外周範囲74a、すなわち軸線Aから径方向に距離a1だけ離れた位置から外周位置までの外周範囲74aで、平板52と波板54とが互いにろう付けされてもよい。
【0039】
図9に示されるように、下流範囲74において、中心から径方向に離れる範囲のうち、中心側に位置する中心範囲74b、すなわち軸線Aから径方向に距離a2だけ離れた位置までの中心範囲74bで、平板52と波板54とが互いにろう付けされてもよい。
【0040】
図10に示されるように、下流範囲74において、平板52と波板54とがろう付けされるろう付け範囲74cとろう付けされない非ろう付け範囲74cとが、平板52と波板54とが巻かれる方向に沿って一定間隔、または、不定間隔で設けられてもよい。
【0041】
[4.触媒装置36の製造方法]
図11に示されるように、波板54の両面に平板52を重ねた積層体50の中央部分Cを支持具で支持しつつ、支持具を回転させて中央部分Cを一方向Rに回転させることにより、中心から径方向に積層体50が重ねられた担体42が形成される。この際、平板52と波板54とをろう付けし、担体42を略円柱形状にする。
【0042】
なお、積層体50は、複数の平板52と複数の波板54とが交互に積層された複数層であってもよい。また、前述した特表2005-535454号公報に示されるように、積層体50の端部を支持具で支持しつつ、支持具をR方向に回転させて担体42を形成してもよい。
【0043】
次に、略円柱形状の担体42を、外筒44に挿入し、担体42と外筒44とをろう付けする。
【0044】
次に、触媒物質を含む粘性の高い混合液を担体42の一端部42a側に配置し、他端部42b側の気圧を一端部42a側の気圧よりも低くして圧力差を発生させる。すると、混合液は、他端部42b側に吸引されるため、一端部42a側からハニカム状の担体42の内部に浸入する。混合液は、担体42の内部を通過する際に、平板52と波板54の表面に接触しつつ他端部42b側に吸引される。その結果、担体42の内表面(平板52と波板54の表面)は、触媒物質を含む被膜で覆われる。
【0045】
[5.実施形態から得られる発明]
上記実施形態から把握しうる発明について、以下に記載する。
【0046】
本発明は、
金属箔状の平板52と波板54とが重ねられて巻かれることにより形成され、かつ、触媒を担持する担体42と、
担体42を内部に収容すると共に、担体42の一端部42aを排気ガスの上流側に向け、担体42の他端部42bを排気ガスの下流側に向けて、担体42を支持する外筒44と、
を備える触媒装置36であって、
平板52および波板54は、複数の孔64を有し、
複数の孔64は、平板52および波板54が担体42にされる前の平坦状態において、担体42の軸線方向と平行する第1方向D1に沿って整列して複数の第1列66を形成すると共に第1方向D1と直交する第2方向D2に沿って整列して複数の第2列68を形成し、
平板52と波板54との接合箇所が、担体42の一端部42aを含む第1上流範囲70に設けられ、
担体42と外筒44との接合箇所が、担体42の一端部42aを含む第2上流範囲72に設けられる。
【0047】
担体42の上流側端部となる一端部42aおよびその周辺部分は、排気ガスにより加熱されるものの、触媒の活性による発熱の影響が小さい。上記構成のように、平板52と波板54との接合箇所、および、担体42と外筒44との接合箇所が、最も高温になる中央付近ではなく、上流側(第1上流範囲70、第2上流範囲72)に設けられることにより、活性化した触媒の発熱が孔付きの担体42に与える影響を少なくすることができる。結果として、孔付きの担体42の耐久性を向上させることができる。
【0048】
本発明において、
担体42と外筒44との接合箇所が、第1上流範囲70を含みかつ第1上流範囲70よりも軸線方向に広い第2上流範囲72に設けられてもよい。
【0049】
上記構成のように、第2上流範囲72を第1上流範囲70よりも広くすることにより、より好適に孔付きの担体42の耐久性を向上させることができる。
【0050】
本発明において、
第1上流範囲70に、所定数の第2列68が含まれてもよい。
【0051】
担体42の上流側端部となる一端部42aを起点に所定長さの範囲では触媒の活性による発熱の影響が小さいため、排気ガスの温度は比較的低い。特に、一端部42aを起点にして下流側10mm程度までの範囲では排気ガスの温度は低い。この範囲で各部材のろう付けを行うことが好ましい。
【0052】
本発明において、
平板52と波板54との接合箇所が、担体42の他端部42bを含む下流範囲74に設けられてもよい。
【0053】
なお、本発明に係る触媒装置は、上述の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。