(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】レーザ切断方法の自動パラメータ化
(51)【国際特許分類】
B23K 26/00 20140101AFI20220613BHJP
B23K 26/38 20140101ALI20220613BHJP
B23K 7/00 20060101ALI20220613BHJP
B23K 10/00 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
B23K26/00 M
B23K26/38 Z
B23K7/00 505E
B23K10/00 502B
(21)【出願番号】P 2021535641
(86)(22)【出願日】2019-12-16
(86)【国際出願番号】 EP2019085291
(87)【国際公開番号】W WO2020127004
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-06-24
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503168692
【氏名又は名称】バイストロニック レーザー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウイットワー ステファン
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-164801(JP,A)
【文献】特開平11-085210(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0113300(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
B23K 7/00
B23K 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピースに対するレーザ切断プロセスの決定論的プロセスモデル(M)のセルフチェックのための方法であって、
前記方法は、入力としてパラメータセット(P)を提供されると、以下のステップ、すなわち、
- レーザ切断工具を駆動するために与えられる前記パラメータセット(P)を読み込むステップ(S61)と、
- 決定論的プロセスモデル(M)にアクセスし(S62)、それによって前記読み込まれたパラメータセット(P)についての
、ワークピースが切断されることで製造される構成要素の品質項目を含む加工結果の予測データセット(E
fcst)を計算する(S63)ステップであって、前記決定論的プロセスモデル(M)は、少なくとも3つのデータ構造(P、E、PKG)を用い、それぞれのパラメータセット(P)と、物理的レーザ切断プロセスを表すプロセス特性(PKG)と、前記加工結果(E)との間の物理的な多次元関係をモデル化する、ステップと、
- 前記読み込まれたパラメータセット(P)を用いてレーザ切断を実行するステップ(S65)と、
- 加工結果(E
act)を、前記製造された構成要素の実際の
前記加工結果の値として測定するステップ(S66)と、
- 比較結果を提供することによって、前記加工結果について前記測定された実際の値(E
act)を、前記加工結果の前記予測データセット(E
fcst)と比較するステップ(S67、KOMP)とを含み、
前記方法は、入力として加工結果の目標値(E
targ)を提供されると、以下のパラメータ化ステップ、すなわち、
- 加工結果の目標値(E
targ)を読み込むステップ(S71)と、
- 前記決定論的プロセスモデル(M)にアクセスし(S72)、それによって前記目標値を満たす前記加工結果の前記読み込まれた目標値(E
targ)のための少なくとも1つのパラメータセット(P
calcd)を計算する(S73)ステップであって、前記方法は、前記パラメータ化方法のデジタル対応物であり、その数学的逆関数である、ステップと、
- 計算されたパラメータセット(P
calcd)を用いてワークピースを切断するステップ(S75)と、
- 前記切断されたワークピースにおいて前記加工結果の実際の値(E
act)を測定するステップ(S76)と、
- 前記加工結果について、前記目標値(E
targ)と前記実際の値(E
act)とを比較するステップ(S77)とを含み、
前記方法は、前記比較結果をずれとみなし、再現性のあるずれの検出時に、前記決定論的プロセスモデル(M)を適合させ、
前記切断するステップ(S75、S65)、前記測定するステップ(S76、S66)、前記比較するステップ(S77、S67)、および決定論的プロセスモデル(M)の適合は、前記切断結果の前記目標値と前記実際の値との間のずれが事前構成可能な閾値未満に降下するまで反復的に繰り返されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記方法において、前記加工結果(E)は、前記レーザ切断プロセスの品質に関する測定可能な情報、特に、溶融切断におけるバリ高さ、火炎切断におけるスラグ高さ、エッジ斜面、エッジのうねりおよび/またはエッジプロファイル高さ、表面の粗さ、細溝高さ、および/または細溝周期に関する情報を有するデータタプルであることを特徴とする、方法。
【請求項3】
プログラムコードまたはプログラム手段を有するコンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムがコンピュータまたはコンピュータベースの処理ユニット(V,ParM,ProgM)上で実行される場合、前記コンピュータプログラムは、コンピュータ可読媒体上に記憶することができ、前記プログラムコードまたは前記プログラム手段は、コンピュータに、レーザ切断プロセスおよび製造された構成要素の測定のために請求項1または2に記載の方法を実行させることを特徴とする、コンピュータプログラム。
【請求項4】
請求項1または2に記載の方法を実行するように構成されたパラメータ化モジュール(ParM)および予測モジュール(ProgM)を有するレーザ切断工具(L)。
【請求項5】
ワークピースを切断するためのレーザ切断工具(L)を動作させるためのシステムであって、
- 請求項4に記載のレーザ切断工具(L)と、
- データを入力および出力するためのユーザインタフェース(UI)と、
- 決定論的プロセスモデル(M)を記憶するためのメモリ(DB)であって、
・ 複数のパラメータセット(P)が記憶される第1のデータ構造であって、前記第1のデータ構造は、前記レーザ切断工具(L)に対するデータインタフェースを表す、第1のデータ構造と、
・ 複数の計算されたプロセス特性(PKG)が記憶される第2のデータ構造と、
・ 複数の切断結果(E)が記憶される第3のデータ構造であって、前記第3のデータ構造は、前記レーザ切断工具(L)から、切断結果を測定するための測定デバイスへのデータインタフェースを表す、第3のデータ構造と
を有する、メモリと、
- 前記決定論的プロセスモデル(M)に対し、モデルアルゴリズムのセットを実行するように構成された電子処理ユニット(V)と、
- 前記データ構造と、前記メモリ(DB)と、前記電子処理ユニット(V)と、前記レーザ切断工具(L)との間のデータ接続と、
- 入力(E
targ,P)ごとに逆モデルアルゴリズムを連続して実行し、請求項1または2に従って、連続実行の結果(E
fcst,P
calcd)が入力(E
targ,P)と同一であるか否かをチェックすることによって、前記決定論的プロセスモデル(M)の自動セルフチェックを行うように構成された比較器モジュール(KOMP)と
を備えることを特徴とする、システム。
【請求項6】
請求項5に記載のシステムであって、前記入力は、パラメータセット(P)であるか、または前記加工結果の目標値(E
targ)であることを特徴とする、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工工具の分野に関し、より詳細には、レーザ装置またはレーザ切断方法を自動的にパラメータ化し、結果データを予測する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
所望の加工に依拠して、今日、様々なタイプのレーザ加工工具を用いて、高精度かつ高性能で製造された構成要素を作製することができる。例えば、マイクロ加工半導体基板のために、Nd:YAG(1064nm)およびCO2レーザが用いられる。数キロワットの出力を有するYb:YAGファイバレーザおよびCO2レーザを用いて、数ある中でも、最大で数十ミリメートルの厚みの金属ワークピースがマクロ加工において切断される。これらのおよび他の応用例により、製造された構成要素に対しレーザ加工により生成される加工結果にとって、品質、安定性、生産性および他の変数の制御および監視が必須であることが明らかである。特定の用途では、例えば、数ある中でも、レーザビームがワークピース上に合焦する焦点位置に依拠する切断エッジの傾斜角を監視することが重要である。この例において、加工パラメータとしての焦点位置と、加工結果パラメータとしての切断エッジの傾斜角との間の物理的関係は、ここでレーザ加工のための適切なパラメータを決定する際に重要な役割を果たす。
【0003】
従来技術において、特定の加工結果(例えば、場合によってはバリおよび/またはスラグの形成、および/または切断エッジの粗さに反映され得る製造された構成要素の特定の品質尺度)を達成することが望ましい場合、経験的知識を用いて、所望のレベルの品質を達成することができるように、それぞれの技術的特性(ビーム工具タイプ、ノズル等)を用いてそれぞれのマシン上でそれぞれの加工パラメータをセットする。この手順が一方で多くの経験を必要とし、他方で再現性がなく、したがって間違いが生じやすいことが明らかである。更に、この方法は、試行錯誤による方法によって、所望の結果(加工結果)を生じる設定パラメータを決定するために少なくとも1つの試験実行(および多くの場合、試験実行の複数の反復)を実行しなくてはならないことで拡張性がなく、これを材料ごとおよび装置のタイプごとに繰り返さなくてはならないため、時間がかかる。
【0004】
再現性および拡張性を達成するために、レーザ加工工具が動作するパラメータと、関連する物理プロセス特性と、結果として得られる加工結果との間の相互作用を計算することが可能であることが一般的に望ましい。
【0005】
欧州特許第2533934号は、シミュレーションプログラムを用いて加工結果の品質を決定する方法を開示している。この文書は、計算された比較値に基づいて、動作中に、生成されたモデルをどのように調整、改善、および展開することができるかを開示していない。加えて、この文書は、加工結果の所望の目標仕様についてパラメータセットを自動的に計算するパラメータ方法を示していない。
【0006】
米国特許出願公開第2017/0113300号は、切断手順の中断後にワークピースの加工の品質が検出され、品質仕様と比較される、レーザ加工の監視のための方法を開示している。ずれがある場合、切断パラメータを調節することができる。しかしながら、この文書は、切断パラメータがどのように調節されるべきかを記載していない。当業者は、この文書から、より良好な切断結果を達成するために設定パラメータを具体的にどのように変更するべきかの命令を推論することができない。加えて、この文書はパラメータ化方法も開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】欧州特許第2533934号明細書
【文献】米国特許出願公開第2017/113300号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/174392号明細書
【文献】米国特許出願公開第2017/364058号明細書
【文献】米国特許出願公開第2018/356778号明細書
【文献】米国特許出願公開第2007/078530号明細書
【非特許文献】
【0008】
【文献】ラインハルト ポプラーウェ(Reinhart Poprawe)著、「製造のためのレーザ技術」(Lasertechnik fuer den Fertigung)、スプリンガー-バーラグ(Springer-Verlag)、2005年、455頁
【文献】ディー.シュエッカー(D. Schuocker)、レーザー切断における動的現象及び切断品質(Dynamic Phenomena in Laser Cutting and Cut Quality)、応用物理B(Appl. Phys. B) 第40巻、1986年、9~14頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明は、レーザ加工工具の動作を改善する問題に対処する。特に、動作がユーザのために単純化され、方法スループットが増大し、製造プロセスの品質が改善されるべきである。更に、加工手順の関連パラメータ、ならびに加工プロセスおよび加工結果とのその物理的関係が計算されるべきである(パラメータ化方法)。
【0010】
この問題は、添付の独立特許請求項による予測方法、パラメータ化方法、コンピュータプログラム、パラメータ化モジュール、予測モジュール、レーザ加工工具、およびシステムによって解決される。上述したオブジェクトは、少なくとも3つの異なるデータ構造(加工パラメータ、プロセス特性、加工結果)にアクセスする。有利な実施形態、更なる特徴および利点は、独立請求項および以下の説明から明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の態様によれば、本発明は、レーザ加工方法の加工結果の予測方法に関する。予測方法において、以下の方法ステップ、すなわち、
- レーザ加工工具を駆動するために与えられる加工パラメータセットを読み込むステップと、
- 決定論的プロセスモデルにアクセスし、それによって読み込まれたパラメータセットについての加工結果の予測データセットを計算するステップと、が用いられる。決定論的プロセスモデルは、少なくとも3つのデータ構造にアクセスし、それによって、
・ それぞれのパラメータセットと、
・ プロセスゾーンにおける物理的レーザ加工プロセスを表すプロセス特性と、
・ 加工結果と、
の間の物理的な多次元関係をモデル化する。
【0012】
本発明の有利な実施形態において、予測方法は、計算された予測データセットを、例えばデータベースに記憶し、かつ/またはこれを出力ユニットに(例えば、モニタ/端末上にグラフィックで)出力する更なる処理ステップを含むことができる。加えて、計算された予測データセットは、検証チェック(例えば、所定の規則を用いて妥当性をチェックする、または履歴データおよび/もしくは統計的平均と比較する等)を受けることができる。
【0013】
本発明者らは、(製造された構成要素における)加工結果(切断エッジ、粗さ等)がどのように現れるかを予測することを可能にするために、所望の加工結果に対して、レーザ、レーザ加工装置全体、作製されるワークピースの輪郭、および/またはワークピースにおける加工結果を設定するための指定されたパラメータセット(以下において、この用語は、加工パラメータセットという用語と同じものを意味するのに用いられる)を用いて、レーザプロセスを最適に制御することを可能にするために、加工ゾーンにおけるいくつかの相互作用する物理的プロセスの特定の経験的知識が必要とされる限り、レーザ加工工具を動作させるための従来の方法は不完全であることを認識している。特に、ワークピースに対するレーザ加工プロセスに関する特定の物理的関係は、これまで、経験的にしか解析されてこなかった。これらの関係および関連する変数の計算は不可能であった。この初期の状況に基づいて、レーザを設定するためのパラメータセットと、プロセスゾーンにおけるプロセス特性と、加工結果との間の物理的な複数原因による関係をモデル化する決定論的プロセスモデルが開発された。産業用途に対し調整されたモデルベースのアルゴリズムのための性能を達成することを可能にするために、レーザ加工のためのよく知られた連立方程式(例えば、「Lasertechnik fuer den Fertigung」[Laser Technology for Manufacturing]、Springer-Verlag 2005、455頁)が適切に適合され、単純化された。上述した方法ステップの全てを、集合的に、実際のレーザ加工のシミュレーションと呼ぶことができる。
【0014】
この提案によれば、従来技術において一般的に知られている工業生産のための方程式系が選択され、単純化される。モデルコアの方程式は、物理学の時間依存の保存方程式である。これらは普遍的に有効であり、したがって、レーザ加工プロセスゾーンにおける複数の物理的に関係した動作に適用可能である。モデルにおいて、プロセスゾーンに関連する質量(または粒子)、エネルギー、および運動量の保存変数の方程式が、固体、液体および気体の凝集状態において実施される。液体凝集状態(溶融)についての、安定した定式化におけるこれらの方程式は、専門的な文献(例えば、D. Schuoecker、「Dynamic Phenomena in Laser Cutting and Cut Quality」、Appl. Phys. B 40、9~14頁、1986)に頻繁に記載されている。これらは、プロセスゾーンにおける切断物理学の、数学的かつ数値的に達成可能な、更には完全なモデル化を可能にし、これにより、問題を解決するための拡張可能な数値フレームワークを形成する。有利には、モデルにおける保存方程式は、安定した定式化から、時間依存定式化に拡張される。これは、産業用途におけるプロセス特性またはパラメータセットの限られた計算能力を考慮に入れながら、最大の精度を提供する。換言すれば、モデルは、保存方程式が以下の技術的判断基準の全てを同時に満たすモデルコアに基づく。技術的判断基準は、保存方程式が物理的に有効であり、数値的に実施することができ、それによって、妥当なコストで、妥当な計算時間内でマシン上で直接オンサイトで計算されることが可能であるというものである。モデルコアは拡張可能でもある。予想加工結果と測定された実際の加工結果との間の目標/実際の比較を用いて、ずれがある場合にモデルコアの新たなバージョンを開発することができる。
【0015】
特に、ワークピースの溶融点T
mが溶融表面の温度T未満である場合に、時間領域における加工されたワークピース(加工結果を表す)の切断エッジの液体状態について、第1ステージのモデルコアの以下の結合された保存方程式を、検討することができる。
溶融の質量流量の保存方程式:
【数1】
溶融のエネルギー流量(パワーバランス)の保存方程式:
【数2】
溶融の運動量流量(力)の保存方程式:
【数3】
(ここで、pおよびBは、ベクトルサイズであり、太字で表されるべきである)。ワークピースの溶融点T
mが溶融表面の温度T未満である場合に、時間領域で第2ステージにおいて加工されたワークピースの切断エッジの液体状態について、モデルコアの以下の保存方程式を検討することができる:
溶融の平均厚み(D
m)の保存方程式:
【数4】
溶融の絶対温度、すなわち表面温度(T)の保存方程式:
【数5】
ワークピースの底側における溶融の表面の吐出速度の保存方程式:
【数6】
(ここで、vはベクトルサイズであり)、ここで、:
【数7】
であり、以下が凡例である:
B
E エネルギー流量の平衡関数(溶融エネルギーの入力流量から出力流量を減算したもの)
B
m 質量流量の平衡関数(溶融質量の入力流量から出力流量を減算したもの)
B
p 運動量流量の平衡関数(溶融運動量の入力流量から出力流量を減算したもの)、(ベクトルサイズ)
D ワークピースの厚み
<D
m> 溶融の平均厚み
E
m 溶融の熱エネルギー
T 溶融の表面温度
T
a 外気温
T
m ワークピースの溶融温度
<b
c> 平均目地幅
c
p 比熱容量
h
m 融合の比エンタルピー(潜熱)
m
m 溶融の質量
p
m 溶融の運動量、(ベクトルサイズ)
v
c 加工速度(フィード)、(ベクトルサイズ)
v
j 溶融の表面の吐出速度
t 時間
μ 溶融前面傾斜角のコサイン
ρ
m 溶融の質量密度
【0016】
プロセスモデルは、有利には、いくつかの可逆アルゴリズム(予測方法のためのアルゴリズムおよびパラメータ化方法のためのアルゴリズム)、およびアルゴリズムと外界との間のインタフェースとしての少なくとも3つの異なるデータ構造を用いるモジュール式設計を提供する。アルゴリズムの可逆性に起因して、決定論的プロセスモデルのデータフローを反転させることができ、このようにして、これらは、入力データを結果データにマッピングすること、およびその逆関数の結果データを入力データにマッピングすることの双方を行う。これは、同じ入力/結果データに対し2つのアルゴリズムを連続して実行することにより、モデルがセルフチェックを受けることができるという利点を有する。
【0017】
本発明の好ましい実施形態において、予測方法は、更に、以下のステップ、すなわち、
- (加工パラメータについて)読み込まれたパラメータセットを用いて実際のレーザ加工を実行するステップと、
- 加工結果を実際の値として(好ましくは自動的に)測定するステップと、
- 加工結果について測定された実際の値を、予測データセットと比較し、(計算された)比較値を比較結果として出力するステップと
を含むことができる。
【0018】
任意選択で、計算された比較値に基づいて、事前構成された適合手順を自動的にトリガし、計算された比較値を出力することができる。特に、プロセスモデルの適合は、その少なくとも3つのデータ構造における値を適合させることによって行うことができる。好ましくは、それぞれの適合手順を、マシン端末において直接実行することができる。また、適合手順を集中的に(例えばサーバ上で)および/またはワークステーションで実行することも可能である。この場合、それぞれのコンピュータは、予測方法が実行されかつ/または比較結果が提供されるユニットとデータ接続される。更に、ずれが識別される場合、プロセスモデルは、バージョンをインクリメントさせてアルゴリズムを適合させることによって適合させることができる。識別されたずれに基づいた適合の後、決定論的プロセスモデルは、検証済みとみなすことができる。測定装置において大きなずれおよび/または保守が介在する場合、例えば測定の不正確性が検出される場合、更なる適合プロセスを、外部的に、外界で、例えばマシン上のサービスとして行うことができる。これらの適合手順は、自動的に開始し、必要に応じて、確認信号によって検証することができる。
【0019】
このため、有利には、プロセスモデルの品質は、新たな技術的境界条件に連続的かつ動的に適合させ、拡張することができる。有利には、これは、顧客に送達した後にオンサイトで直接行うこともできる。比較結果は、好ましくは、出力ユニット(例えば、端末)上のマシン(レーザ)にローカルで出力または表示される。
【0020】
本発明の有利な展開において、決定論的プロセスモデルに対するアクセスを、アプリケーションシミュレーションアルゴリズムによって、および/または製造予測アルゴリズムによって行うことができる。
【0021】
第2の態様によれば、本発明は、レーザ加工方法のパラメータ化のためのパラメータセットの自動計算のためのパラメータ化方法に関する。パラメータ化方法は、以下の方法ステップ、すなわち、
- 加工結果の目標値を読み込むステップと、
- 決定論的プロセスモデルにアクセスし、それによって読み込まれた目標値を満たす加工結果の読み込まれた目標値のための少なくとも1つのパラメータセットを計算するステップとを含み、決定論的プロセスモデルは、少なくとも3つのデータ構造を用い、
・ 加工結果のそれぞれの目標値と、
・ プロセスゾーンにおける物理的レーザ加工プロセスを表すプロセス特性と、
・ 加工結果と、
の間の物理的な多次元関係をモデル化する。
【0022】
本発明の有利な実施形態において、レーザ加工装置の制御ユニットへの(加工パラメータについての)計算されたパラメータセットの出力、および/またはデータベースへの読み込み、および/または出力ユニットへの出力を行うことができる。
【0023】
パラメータ化方法は、いわば、予測方法のデジタル対応物であり、その数学的逆元である。2つの方法が入力ベクトルを用いて連続して実行される場合、それぞれの入力ベクトルが再び結果として得られなくてはならない。共にコンピュータで実施され、好ましくはレーザ装置の2つのモジュールにおいて共に実施される2つの方法を提供することによって、有利には、追加の検証レベルをもたらし、適用することが可能になる。このため、モデルベースの自動的な方法の信頼性を増大させることができる。
【0024】
本発明の更に好ましい実施形態において、パラメータ化方法は、
- 計算されたパラメータセットを用いて実際のワークピースを処理することと、
- 製造されたワークピースにおいて加工結果の実際の値を測定することと、
- 加工結果について、目標値と実際の値とを比較することと、
- 計算された比較値を、比較結果として出力することと
を更に含む。
【0025】
計算された比較値は、本発明の好ましい実施形態において、
- 加工結果の読み込まれた目標値を維持することができるように、決定論的プロセスモデルにアクセスすることによって、計算されたパラメータを校正(して校正されたパラメータセットを生成)すること、
のために用いることができる。
【0026】
これは、モデルを、顧客により、動作時に連続的に、動的に、およびオンサイトで改善することができるという利点を有する。
【0027】
本発明の有利な展開において、計算された比較値を用いてレーザ加工プロセスを調整することができる。例えば、米国特許出願公開第2017/0113300号に開示されているような従来技術における現場でのプロセス監視では、(現場での)加工中のプロセスゾーンに対する測定が可能である。目地幅または溶融のトレーリング効果等の測定された変数も、プロセスモデルの少なくとも3つのデータ構造のうちの1つにおいて計算されたプロセス特性として含まれる。上記で文書化したステップに類似して、プロセス特性の目標値および実際の値から比較結果を求めることができ、これを加工パラメータセットの連続した再計算のために用いることができる。この方法は、モデルベースの調整であり、ここで、プロセス監視の測定値は、決定論的プロセスモデルのための対応するアルゴリズムへの入力として用いられる。モデルベースの調整の場合、加工するステップ、測定するステップ、比較するステップ、および校正するステップは、加工結果の目標値と実際の値との間のずれが事前構成可能な閾値未満に降下するまで反復的に繰り返される。技術的利点は、実際に生成された加工結果(ワークピースにおける測定値)に基づいて調整を直接行うことができることにある。
【0028】
本発明の更なる実施形態において、決定論的プロセスモデルへのアクセスは、アプリケーション校正アルゴリズムによって、かつ/またはアプリケーション計算アルゴリズムによって行われる。これを用いて、各々がプロセスモデルに対する逆関数を有する、2つのモジュール式アプリケーションを提供することができる。
【0029】
別の有利な実施形態によれば、加工結果は事前構成される。加工結果は、レーザ加工方法の品質に関する測定可能な情報、特に、溶融切断におけるバリ高さ、火炎切断におけるスラグ高さ、エッジ斜面、エッジのうねりおよび/またはエッジプロファイル高さ、表面の粗さ、細溝高さ、および/または細溝周期を有するデータタプルである。有利には、加工結果について検討される変数も、アプリケーション中にオンサイトで構成することができる。これによってプロセスの柔軟性が非常に高くなる。
【0030】
別の有利な実施形態によれば、決定論的プロセスモデルを用いてニューラルネットワークがトレーニングされる。
【0031】
更なる態様において、本発明は、プログラムコードまたはプログラム手段を有するコンピュータプログラムに関し、コンピュータプログラムがコンピュータまたはコンピュータベースの処理ユニット上で実行される場合、コンピュータプログラムは、コンピュータ可読媒体上に記憶することができ、プログラムコードまたはプログラム手段は、コンピュータに、上記で記載したパラメータ化方法または予測方法による方法を実行させる。
【0032】
方法を用いた問題に対する解決策について上記で記載した。このように述べられた特徴、利点、または代替的な実施形態は、他の特許請求される主題にも移行され、逆もまた同様である。換言すれば、問題の装置請求項(例えば、予測モジュールまたはパラメータ化モジュールを対象とする)は、方法に関連付けて記載および/または特許請求された特徴を用いて更に展開することもでき、逆もまた同様である。したがって、本方法の対応する機能的特徴は、システムまたは装置の対応するモジュールによって、特にハードウェアモジュールまたはマイクロプロセッサモジュールによって形成され、逆もまた同様である。
【0033】
別の態様において、本発明は、レーザ加工工具のパラメータ化のためのパラメータセットの自動計算のための、レーザ加工工具のためのパラメータ化モジュールに関し、パラメータ化モジュールは、上記で記載したパラメータ化方法を実行するように設計される。
【0034】
パラメータ化モジュールは、好ましくは、インタフェース、特に、ネットワークインタフェース(例えばISO11898規格に従う、例えばCANバス)を備える。
【0035】
更なる態様において、本発明は、加工結果の予測データセットの自動計算のための、レーザ加工工具のための予測モジュールに関し、予測モジュールは、上記に記載の予測方法を実行するように設計される。
【0036】
更なる態様において、本発明は、(電子)パラメータ化モジュールおよび/または(電子)予測モジュールを用いたレーザ加工工具に関する。
【0037】
更なる態様において、本発明は、ワークピースを加工するためのレーザ加工工具を動作させるためのシステムに関する。
- レーザ加工工具と、
- データを入力および出力するためのユーザインタフェースと、
- 決定論的プロセスモデルを記憶するためのメモリであって、
・ 1組のパラメータセットが記憶される第1のデータ構造であって、第1のデータ構造は、レーザ加工工具に対するデータインタフェースを表す、第1のデータ構造と、
・ 複数の計算されたプロセス特性が記憶される第2のデータ構造と、
・ 複数の加工結果が記憶される第3のデータ構造であって、第3のデータ構造は、レーザ加工工具の加工結果を測定するための測定デバイスへのデータインタフェースを表す、第3のデータ構造と
を有する、メモリと、
- 決定論的プロセスモデルにおいて、モデルアルゴリズムのセットを実行するように設計された電子処理ユニットと、
- データ構造と、メモリと、電子処理ユニットと、レーザ加工工具との間のデータ接続と
を備えるシステムを設計することができる。
【0038】
本発明の好ましい実施形態において、電子処理ユニットは、予測モジュールおよび/またはパラメータ化モジュールを備える。
【0039】
更に好ましい実施形態において、決定論的プロセスモデルは、入力ごとに、逆モデルアルゴリズム、特に、アプリケーションシミュレーションアルゴリズムと、製造予測アルゴリズムと、アプリケーション校正アルゴリズムと、アプリケーション計算アルゴリズムとを連続して実行し、連続実行の結果が入力と同一であるか否かをチェックすることによって自動セルフチェックを受ける。
【0040】
更に好ましい実施形態において、入力は、パラメータセットであるか、または加工結果の目標値である。
【0041】
提案される方法のうちの少なくとも1つ(または双方)を用いて計算される値の重要な有利点は、関連する分析データを、顧客サイトにおけるレーザ装置の動作中に直接提供することができることである。これらを用いて、例えば更なる手段(設置値の変更等)を始動させることができる。このため、例えば、レーザ装置の実際の測定データおよび/または実際の挙動/データに基づいて、基準面およびスラグ付着を有する火炎切断エッジの高さプロファイル(例えば、15mm)をグラフィック表示し、このグラフィックにおいて、垂直方向の切断エッジプロファイル線の湾曲が平均化された、水平方向の辺の長さにわたる長方形を表示することが可能である。これは、物理的レーザ加工プロセスをオンラインで動作中に直接分析するための重要なツールを提供することができる。全体として、切断エッジの品質パラメータに関してのみでなく、スラグおよびバリ等の他の品質パラメータについてもレーザ加工の品質を改善することができ、必要な調節の効率を促進すると共に改善することができる。
【0042】
以下において、本出願において用いられる用語の意味をより詳細に説明する。
【0043】
決定論的プロセスモデルは、それぞれのパラメータセットと、プロセスゾーン内の物理的レーザ加工プロセスを表すプロセス特性との間の物理的関係、および加工結果がモデル化されるデジタルオブジェクトである。プロセスモデルは、統計的または確率的モデルではなく、レーザ加工の関連する物理的相関が様々な品質パラメータから再現され、シミュレートされるシミュレーションモデルであることを明示的に指摘しておくべきである。プロセスモデルは、アルゴリズムに加えて、少なくとも3つの別個のデータ構造を含む。品質パラメータは、第3のデータ構造において加工結果を用いて反映される。このため、プロセスモデルは、細溝およびバリが形成された切断エッジの品質に対処するのみでなく、第3のデータ構造との関連で以下に論考される他の品質特徴も含む様々な品質パラメータの完全なモデル化を含む。加えて、プロセスモデルは、それぞれの品質特徴または加工結果と、パラメータセットと、プロセス特性との間の物理的関係も含む。
【0044】
第1のデータ構造は加工パラメータを含む。これらの加工パラメータは、より簡単にパラメータとも呼ばれる。(加工)パラメータのデータレコードは、
- プロセスガス、加工ヘッド、レーザ、加工工具、ノズル、光学系、およびワークピースの仕様と、
- 加工経路(輪郭)の定義と、
- プロセスガス圧力、フィード、レーザ出力、焦点位置、ワークピースの厚み、および更に多くのもの等の、加工経路(輪郭)に沿った補間点データと
を含む。
【0045】
仕様および加工経路は、加工装置、ユーザが定義した特定の用途(切断計画)、および用いられるワークピースによって決定される。他方で、補間点データは、独立して変動することができ、したがって、予測モジュールの入力およびパラメータ化モジュールの出力の双方でなくてはならない。
【0046】
第2のデータ構造はプロセス特性を含む。プロセス特性のデータレコードは、加工経路の厳密に1つの補間点に割り当てられ、数ある中でも、以下の性質、すなわち、
- 時間平均レーザ出力、焦点長(レイリー長)、ワークピース表面におけるビーム半径等のレーザビーム工具の性質と、
- 断面積、平均切り口幅、平均円錐角等の切り口の性質と、
- 細溝角、細溝周期、粗さ値等の切断エッジの性質と、
- フィルムの厚み、吐出速度、流量特性、表面積、出口面積等の溶融の性質と、
- 圧力結合度、圧力損失(ノズルとワークピースとの間のエリアによって生じる)等のガス噴射工具の性質と、
- 拡大、出力に依存した焦点位置のシフト等の光学系の性質と、
- レーザビーム工具での切断ボリューム、加工の安定性または許容値、プロセス効率等のワークピースの性質と
を含む。
【0047】
プロセス特性は、プロセスモデルのアルゴリズムによって計算される。これに対する例外は、一方でユーザによって指定される許容値および安定性値、ならびにパラメータ化プロセス中に指定された加工結果から計算することができないプロセス特性(例えば、圧力結合の度合い、切り口の幅)である。プロセス特性は、測定データ(実際)および計算データ(目標)を含むことができる。
【0048】
加工結果は、第3のデータ構造に含めることができる。加工結果のデータレコードは、加工によって生じる加工部品の性質を含む。これらは、例えば、切断エッジのバリ高さ、スラグ高さ、プロファイル高さ、表面の粗さ、細溝周期、細溝角(トレーリング効果、ラグ)を含む。決定論的プロセスモデルにおいて、一方における加工結果は、加工結果の目標値を用いたパラメータ化方法の入力であり、他方では、目標値を用いた予測方法の計算結果の入力である。加工結果の実際の値は、適切な表面測定方法によって求められる。この目的に特に適しているのは、切り口および切断エッジ表面付近のワークピースの下側の測定であり、これは非接触式光学3D表面測定方法を用いて行われる。一方で加工結果の測定された実際の値と、他方で加工結果の予測データセットとの比較は、ソフトウェア制御されるか、または電子処理ユニットにおいて実施することができる比較器回路を介して行われる。比較は、完全に自動的に、かつ好ましくはユーザとの対話なしで行われる。同じことは、一方で加工結果の測定された実際の値と、他方でユーザによって入力された加工結果の目標仕様との比較にも適用される。
【0049】
比較結果が記録される。これは、デジタルデータレコードである。最も単純な事例では、これは、ずれを通報するバイナリフラグとすることができる。比較結果は、レーザ加工工具における出力ユニット上に出力される。比較結果は、適切な適合手段を開始するために、更なる処理のために更なるアプリケーションに転送することができる。
【0050】
アプリケーションシミュレーションアルゴリズム、製造予測アルゴリズム、アプリケーション校正アルゴリズム、およびアプリケーション計算アルゴリズムは、アプリケーションまたはコンピュータプログラムの一部とすることができる。このため、例えば、アプリケーションシミュレーションアルゴリズムは、アプリケーションシミュレーションプログラム等の一部とすることができる。更なる詳細については、図面の詳細な説明が参照される。
【0051】
「アルゴリズム」または「プログラム」は、レーザ加工との関連でコンピュータの機能を制御するためのマシン可読命令を含む任意のタイプのコンピュータプログラムを意味するように理解される。コンピュータプログラムは、実行のためにコンピュータのメインメモリにロードされる、多くの場合にマシンコードと呼ばれる実行可能プログラムファイルとしてデータキャリア上に記憶することができる。プログラムは、マシン命令、すなわち、コンピュータのプロセッサのプロセッサ命令のシーケンスとして処理および実行される。プログラムは、実行可能コード、ソースコード、またはインタプリタ型コードの形態をとることができる。
【0052】
「インタフェース」は、データを受信および送信することができるインタフェース(通信インタフェース)として理解される。通信インタフェースは、接触ベースまたは非接触とすることができる。通信インタフェースは、例えばケーブルによってまたは無線で関連デバイスに接続された内部インタフェースまたは外部インタフェースとすることができる。通信は、ネットワークを介して行うことができる。ここで、「ネットワーク」とは、通信手段、特にローカル接続またはローカルネットワーク、特にローカルエリアネットワーク(LAN)、プライベートネットワーク、特にイントラネット、および仮想プライベートネットワーク(VPN)との接続を有する任意の伝送媒体を意味する。例えば、コンピュータシステムは、WLANへの接続のための標準的な無線インタフェースを有することができる。これは、インターネット等の公衆ネットワークとすることもできる。実施形態に依拠して、通信は、モバイル無線ネットワークを介して行うこともできる。
【0053】
「メモリ」は、揮発性および不揮発性双方の電子メモリまたはデジタル記憶媒体を意味するように理解される。「不揮発性メモリ」は、データの永久記憶のための電子メモリを意味するように理解される。不揮発性メモリは、リードオンリーメモリ(ROM)とも呼ばれる非変更可能メモリ、または不揮発性メモリ(NVM)とも呼ばれる変更可能メモリとして構成することができる。特に、これは、EEPROM、例えば、短縮して「フラッシュ」と呼ばれるフラッシュEEPROMとすることができる。不揮発性メモリは、記憶されたデータが、電源をオフに切り替えた後であっても留まっていることによって特徴付けられる。ここで、「揮発性電子メモリ」は、電源をオフに切り替えた後に全てのデータが失われることを特徴とする、データの一時記憶のためのメモリである。特に、これは、ランダムアクセスメモリ(RAM)とも呼ばれる揮発性直接アクセスメモリ、またはプロセッサの揮発性メモリとすることができる。
【0054】
(電子)「処理ユニット」は、例えば、命令のコンピュータベースの自動実行のためのプロセッサとして設計することができ、プログラム命令を実行するための論理回路を含むことができる、電子モジュールを意味するように理解される。論理回路は、特にチップ上の1つまたは複数の離散構成要素において実施することができる。特に、「プロセッサ」は、マイクロプロセッサ、または複数のプロセッサコアおよび/もしくは複数のマイクロプロセッサを含むマイクロプロセッサシステムを意味するように理解される。処理ユニットは、予測モジュールおよび/またはパラメータ化モジュールを含むことができる。
【0055】
問題に対する別の解決策は、コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されると、上記でより詳細に記載した方法の全ての方法ステップを実行するためのコンピュータプログラムコードを有するコンピュータプログラム製品を提供する。また、コンピュータプログラムは、コンピュータによって読み出し可能な媒体上に記憶されることも可能である。コンピュータプログラム製品は、例えば、場合によっては更なる構成要素(ライブラリ、ドライバ等)を有する記憶された実行可能ファイルとして、またはコンピュータプログラムが既にインストールされたコンピュータとして設計することができる。
【0056】
図面の以下の詳細な説明において、図面を参照して、特徴およびその更なる利点を有する非限定的な例示的な実施形態を論考する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】本発明の好ましい実施形態による、レーザ加工工具におけるレーザ加工のパラメータ化および/または予測のためのシステムの概略図を示す。
【
図3】レーザのためのモデルベースのパラメータ化方法の概略表現を示す。
【
図4】レーザ加工に一体化されたパラメータ化モジュールの概観を示す。
【
図5】レーザ加工に一体化された予測モジュールの概観を示す。
【
図6】本発明の好ましい実施形態による予測方法のフローチャートを示す。
【
図7】本発明の好ましい実施形態によるパラメータ化方法のフローチャートを示す。
【
図8】アプリケーション校正アルゴリズムのためのフローチャートを示す。
【
図9】円錐角を示すための製造された構成要素の切り口の概略表現を示す。
【
図10】本発明の好ましい実施形態によるアプリケーション計算アルゴリズムのフローチャートを示す。
【
図11】本発明の好ましい実施形態によるアプリケーションシミュレーションアルゴリズムのためのフローチャートを示す。
【
図12】本発明の好ましい実施形態による製造予測アルゴリズムのためのフローチャートを示す。
【
図13】切断表面のプロファイル高さの平均プロファイル曲線のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0058】
本発明は、レーザ装置の動作を改善し、特に単純化する役割を果たす。レーザ装置の設定またはパラメータ化は、関連する変数間の関係の広範な物理的知識を必要とする。このため、設定されるまたは設定された装置パラメータは、加工結果に対し、多次元的に結合された相関を有する。結果として生じる複雑性により、特定の加工結果を達成するように装置パラメータを直感的に設定することが困難または不可能になる。加えて、ユーザは、部品設計の時点において加工プロセスがどのように実行されるかをほとんど知らない。ユーザはまた、加工時点においてこれをほとんど知らない。従来技術において、プロセスの特徴化およびシミュレーションの可能性が欠落していることに起因して、ユーザに理解可能なプロセス監視は、困難ないし不可能である。ユーザにとって、所望の加工結果を達成することができるように、それぞれの製造された部品について、例えば、溶融切断におけるバリ高さまたは火炎切断におけるスラグ高さの指定を用いて、加工結果について目標値を指定するときに、いずれのパラメータが設定されなくてはならないかを知ることも重要である。
【0059】
ここで提案される本方法の目的は、最適な製造をもたらすように、最小限のデータ入力でレーザ材料加工(アプリケーション)を制御することである。最小限のデータ入力は、所望の部品形状(切断計画)および所望の材料(ワークピース)、ならびに装置および材料の仕様を含む。最適な製造とは、最適な加工結果の達成を意味し、少なくとも3つのデータ構造から自律的に決定される。各々が少なくとも2つの高速アルゴリズムを有する少なくとも2つのアプリケーション事例は、少なくとも3つのデータ構造間のデータフローを定義する。データ構造、アプリケーション事例、アルゴリズム、およびデータフローが、レーザ材料加工(アプリケーション)のデジタルツインを形成する。デジタルツインはモジュール式であり、数ある中でも、経験値を用いてアルゴリズムを単純かつ高速に維持し、デジタルツインと実際のレーザ材料加工(アプリケーション)との比較可能性を確保する。モデルは、少なくとも3つのデータ構造を含む。
1. データ構造1は、パラメータセットPのデータを含む。
2. データ構造2は、プロセス特性PKGを含む。
3. データ構造3は、加工結果Eのデータを含む。
データ構造1は、レーザ材料加工のデジタルツインと、実際の加工装置Lとの間のデータインタフェースを形成する。データ構造3は、レーザ材料加工のデジタルツインと、実際のレーザ材料加工(アプリケーション)の加工結果Eとの間のデータインタフェースを形成する。最小限の3つのデータ構造は、切断計画(ユーザ入力)およびワークピース仕様(データベースからの材料、厚み、サイズ)、経験値(データベースからの様々なカテゴリの収集した測定値の平均)、ならびに/または測定変数または計算変数として初期化された(データベースからの)現在の測定値、および必要な場合、(データベースからの)初期化された更なる仕様データを含む、最小限のデータ入力に依拠する。従来技術からの既知の方法を上回る利点は、ここで、経験値をモデル(ここでは、デジタルツイン)に組み込むこともできることである。
【0060】
少なくとも3つのデータ構造のデータは、データベースシステムに(例えば、テーブル形式で)記憶される。アプリケーション事例1および2のアルゴリズムは、テーブルからデータを読み出し、またはこれをテーブルに書き込む。これを行うために、アルゴリズムは、共通データインタフェースオブジェクトを用いて、データベースシステムに対する読み出しおよび書き込み動作を実行する。アルゴリズム自体が、デジタルツインのクラスインスタンスにおけるそれぞれの計算のためにデータを記憶する。データベースシステムおよびデジタルツインのクラスは、有利には、クラス図においてオブジェクト指向となり、体系化されるように構築される。
【0061】
本発明の好ましい実施形態において、少なくとも2つのアプリケーション事例が提供される。
1. アプリケーション事例1は、
a. 加工結果E(データ構造3)の値をプロセス特性PKG(データ構造2)上にマッピングするアプリケーション校正アルゴリズム、および
b. プロセス特性PKG(データ構造2)をパラメータセットP(データ構造1)上にマッピングするアプリケーション計算アルゴリズム、
の連続実行である。
2. アプリケーション事例2は、
a. パラメータセットP(データ構造1)をプロセス特性PKG(データ構造2)マップ上にマッピングするアプリケーションシミュレーションアルゴリズム、および
b. プロセス特性PKG(データ構造2)を加工結果E(データ構造3)上にマッピングする製造予測アルゴリズム、
の連続実行である。
【0062】
以下において、3つのデータ構造がより詳細に説明される。
レーザ材料加工のためのパラメータセットPを有するデータ構造1は、定義上、レーザ材料加工(アプリケーション)の影響を及ぼす全ての変数を含むパラメータデータを含む。これは、データ構造1内のデータの全体が、部品製造の前、部品製造中、および部品製造後にデジタル化されたパラメータデータまたは加工状態を定義することを意味する。このため、データ構造1は、所与の装置において実現されたレーザ材料加工のデジタル表現である。これは、加工装置とデジタルツインとの間のデータインタフェースの機能を有する。データ構造1の影響を及ぼす変数は、更に細分化される。これらは、少なくとも、パラメータセットの以下の3つのサブデータ構造(以下で「加工状態」とも呼ばれる)を含むことができる。
【0063】
仕様:
製造装置、レーザ光源、加工ヘッド、ワークピース、および影響を及ぼす他の構成要素の仕様。
例は、フィードまたはプロセスガスの圧力の指定された最大値、およびレーザ波長またはワークピースの材料指定である。
【0064】
輪郭:
単一の部品または切断計画としての部品輪郭の幾何学的形状。例は、輪郭上の長さ、角度、曲率、回転方向または特徴点の座標である。
【0065】
ポイントデータ:
部品輪郭にわたって変化する可能性があるワークピース、装置、およびその構成要素の全てのプロセスパラメータ。例は、レーザ出力、フィード、プロセスガス圧力、ノズル間隔、焦点位置であるが、厚みまたは温度等の可変のワークピースの性質もある。
【0066】
(レーザ材料加工のデジタルツインの)データ構造2は、プロセスゾーンおよび加工プロセスの全ての本質的な幾何学的および物理的性質を含む、プロセス特性PKGを含む。データ構造2におけるデータの全体が、プロセスゾーンにおいて相互作用する動的プロセスを表し、溶融の性質および結果として生じる切り口の数を示す。これに加えて、生産性インジケータ、安全関連変数(例えば、放射損失の割合)、および安定性または許容値がある。プロセス特性は、部品輪郭にわたるアプリケーション事例1および2の対応するアルゴリズムの計算結果である。プロセス特性の最も重要な利点は、以下の通りである。
・ 純粋に数学的な変数として、これらは、測定データにおける変動の影響を伴うことなく、プロセスゾーンの固有の性質を記述し、このため、100%再現性がある、
・ プロセス特性は、直接測定のためにアクセスすることができないか、またはアクセスが困難であるが、加工結果に直接影響を及ぼす変数を含み、これは、製造結果との強力な相関を意味する、
・ プロセス特性は、パラメータセットおよび加工結果の双方について、理論的に形式的かつ非経験的関係を有する。
【0067】
プロセス特性は、少なくとも以下の6つのサブデータ構造を含む。
【0068】
ビーム工具:
ワークピースに合焦されたレーザビームについて計算された変数。これらは、例えば、レイリー長、平均レーザ出力、および/またはワークピース上縁におけるビーム半径を含む。
【0069】
切り口:
切断前面の平均傾き角および/または様々な目地幅等の切り口の幾何学的特性。
【0070】
溶融フィルム:
吐出の厚みまたはそのペクレ数等の溶融の幾何学的特性および流体力学特性のみでなく、その吐出速度、および溶融動力学に基づいた加工結果の更なる目標値。
【0071】
ノズル:
ノズルとプロセスゾーンとの間の空間の幾何学的性質を含むが、特に、圧力結合効率も含む。
【0072】
光学系:
拡大および出力に依拠した焦点シフトの計算結果。
【0073】
ワークピース:
所与の材料、例えば、必要とされる切断力、経路エネルギー、プロセス効率および/または安定性パラメータと関連する様々な特性。
【0074】
第3のデータ構造3は、加工結果を含む。加工結果は、加工の結果に属する全てのデータを含む。技術的観点から、加工結果の値または変数は、デジタル化された部品製造および実現された部品製造の双方の応答関数の結果である。これは、
・ 完成した構成要素において測定された品質(例えば、バリまたはスラグ)と、
・ 加工中に測定された測定動力学変数(効果的に駆動されたパラメータデータセットの装置内測定)と、
・ 加工中に記録されたプロセス信号と、
・ 製造予測アルゴリズムによって計算された品質予測と
を含む。
【0075】
データ構造1に類似して、データ構造3もデジタル画像、すなわち、完成した構成要素のデジタル画像、およびその品質(加工結果)である。更に、データ構造1に類似して、加工結果は、部品製造の測定値および信号とデジタルツインとの間のデータインタフェースとしても機能する。
【表1】
【0076】
本発明によれば、図において基準シンボルMによって識別され、データベースDB等のメモリ内に記憶することができる決定論的プロセスモデルが提供される。このプロセスモデルに基づいて、実際のレーザ加工または関連する物理的プロセスに、一種のデジタルツインを提供することができる。
【0077】
図面を参照し、いくつかの例示的な実施形態を用いて、本発明を以下でより詳細に説明する。
【0078】
図1は、電子処理ユニットV、例えば、制御コンピュータまたはマイクロプロセッサベースの回路(例えば、FPGAまたはASICまたは他の集積回路)を介して制御されるレーザ装置Lを示す。この処理ユニットVにおいて、プロセスモデルMが実行可能な形態で記憶される。処理ユニットVは、以下でより詳細に説明される、様々なアルゴリズムを実行するように設計することもできる。
【0079】
図3および
図1に示す第1のアプリケーションにおいて、所望の加工結果の目標値E
targがユーザによって入力されるか、または目標値はデータ構造もしくはメッセージから取得される。
図3に示すように、モデルMにアクセスすることによって、加工結果のこの目標値E
targから、パラメータデータセットP
calcdが計算される。このパラメータデータセットは、所望の値を達成することができるようにレーザ装置Lにおいて設定される。
【0080】
この第1のアプリケーションは、
図1において破線で示されている。右下から開始して、目標値E
targが検出され、モデルMに送信され、モデルMは、そこからアルゴリズムを用いてパラメータセットP
calcdを計算する。この計算されたパラメータセットP
calcdは、後続の方法における制御のためにレーザ装置Lに送信することができる。更なる関連変数(例えば、切断計画およびワークピース関連データ)が入力された後、レーザLを動作させる。その後、製造された構成要素またはワークピースにおいて加工結果が測定される。これは、測定された加工結果E
actに記録される。任意選択で、電子分析、特に、イベント制御されたおよび/または時間制御された更なる分析を行うことができる。特に、ここで、実際に測定された加工結果E
actと、ユーザによって最初に指定または入力された目標値E
targとの比較を行うことができる。比較結果VGL1が、好ましくは、レーザLのモニタもしくは端末Tに出力され、かつ/または更なるステップを開始するために用いられる。特に、比較値を用いて、レーザ加工方法を調節することができる。例えば、決定された比較値VGL1を用いて、所望の加工結果のための新たな目標値を決定することができる。
E
target,new=E
target+VGL
1
【0081】
目標値のこの適合は、VGL1の閾値によって制御することができる。
【0082】
図2に第2のアプリケーション事例が概略的に示される。ここで、反対の事例が計算されるべきである。所与のパラメータデータセットPから、モデルMにアクセスしながら、加工結果の予測データセットE
fcstが作成される。
【0083】
図1において、これは、パラメータセットPの入力から開始して表され、このパラメータセットPはモデルMに供給され、それによって、パラメータPを所与として、加工結果E
actのための予測E
fcstを生成することができる。上述した比較プロセスによれば、アプリケーション1の場合、アプリケーション2を用いる場合であっても、加工結果の測定された実際の値E
actと予測値E
fcstとの間で比較値VGL2を計算することができる。この比較値VGL2が端末Tに出力される。
【0084】
比較値VGL2に関して、技術的利点は、モデルの精緻化または校正からの再現性のあるずれを用いることができることである。好ましくは、そのような再現性のあるずれの検出時に、校正されたモデルM’を生成するためのバージョンステップが自動的に開始される。これは、
図1において、これがオプションであるが本発明の好ましい実施形態であることを示すために細い線幅で描かれた比較VGL2からモデルMまでの実線によって表されている。このため、本発明のこの好ましい実施形態において、比較値VGL2を用いて、モデルMを自動的に校正することができる。更に、レーザのいずれの加工段階においてずれが存在せず、いずれの段階にずれが識別されたかを評価するための時間的および/または統計的評価を実行することができる。例えば、初期段階において目標/実際のずれがなかったが、後段においてずれが特定された場合、これは、場合によっては、エラー、および/または集束光学系が徐々に汚れてきたこと、および/または(例えば、プロセスガスノズルの先端における)他の摩耗を示すことができる。
【0085】
図4と併せて、例示的な実施形態において、以下にパラメータ化モジュールParMの動作モードが説明される。パラメータ化モジュールParMは、電子処理ユニットVにおいて実施することができ、
図3を参照して上記で記載された第1のアプリケーション事例を実施する役割を果たす。このモジュールは、レーザ装置Lの設定およびパラメータ化中にレーザ装置Lにおいてユーザをサポートすることが意図される。この目的で、ユーザは、ユーザインタフェースUIが提供され得る接続された端末T上で、加工結果E
targのための目標仕様を入力する。このデータレコードは、対応するデータ接続を介してパラメータ化モジュールParMに転送される。次に、パラメータ化モジュールParMは、目標値E
targのためのパラメータセットP
calcdを計算するために、以下でより詳細に説明される対応するアルゴリズムを用いて、データベースDBに記憶されたモデルMにアクセスする。これは、ユーザインタフェースUIにおいて出力することができ、検証信号の検出時に、この計算されたパラメータセットP
calcdを、レーザプロセスを制御するためにレーザLに直接送信することができる。
【0086】
任意選択で、モデルMの追加のチェックを、後続の期間に行うことができる。これは、比較器モジュールKOMPによって比較により行うことができる。この目的で、パラメータセットを用いて製造された構成要素において加工結果Eactが測定され、比較器KOMPに送信される。比較器KOMPは、ユーザが入力したコマンドEtargへのアクセスも有し、これらの2つのデータレコードを比較することができる。比較結果は、例えばユーザインタフェースUI上に出力される。比較結果がずれを通報する場合、これにより、補正アクションを自動的にトリガすることができる。
【0087】
図4において湾曲した線CLによって示されるように、上述した構成要素は、レーザ装置Lにおいて必ずしも直接実施される必要がない。好ましくは、ユーザインタフェースUIは、レーザ装置Lと、分散システムとして、データベースDB内の様々なプラットフォーム上に提供することができるパラメータ化モジュールParM、比較器KOMPおよび/またはモデルM等の電子処理ユニットとに配置される。更に、全てのまたは選択された構成要素を、ネットワーク接続を介してアクセスすることができる中央サーバSまたはクラウドCLにおけるサービスとして提供することもできる。
【0088】
以下において、
図5を参照して例として、予測モジュールProgMの動作が説明される。予測モジュールProgMは、
図2を参照して上記で記載された第2のアプリケーション事例を実施する役割を果たす。予測モジュールProgMのための手順は、本質的に、
図4を参照して上記で既に説明されたものに対応する。(
図5は
図4に対して)入力(ユーザによって指定されるかまたはデータソースから読み込まれたパラメータ化P)および出力(加工結果について計算された予測E
fcst)のみが交換された。
【0089】
予測モジュールProgMは、入力されたパラメータセットPから対応するアルゴリズムにアクセスすることによって、予測Efcstを計算する。計算結果EfcstはユーザインタフェースUI上に表示される。
【0090】
上記で記載したように、ここで、パラメータ化Pを用いてレーザを実際に動作させることができる。
【0091】
後の段階において、このパラメータ化Pの加工結果を測定し、計算された予測Efcstとの比較のために比較器KOMPに供給することができる。ずれがある場合、これを、ユーザインタフェースUI上に出力して、例えば、ユーザに変更されたパラメータ化を得る機会を与えることができる。加えて、比較に基づいて更なるステップを始動させることができる。特に、再現性のあるずれの検出時に、モデルMの適合を行い、新たなバージョンとして試験し、作動させることができる。
【0092】
図5に示す例示的な実施形態に示すように、電子処理ユニットProgM、DBを中央サーバS上に設けることができる。この変形は、
図4からのパラメータ化モジュールParMにも適用される。同様に、
図4と併せて説明された変形(クラウドベースの解決策)は、予測モジュールProgMにも適用される。
【0093】
図6は、異なるフロー変形において実行することができる予測方法のフローチャートである。予測モジュールProgMにおいて実行することができる予測方法の開始後に、ステップS61において、レーザ加工工具Lを制御するのに用いられるパラメータセットPのためのデータが読み込まれる。ステップS62において、決定論的プロセスモデルMにアクセスし、ステップS63において、読み込まれたパラメータセットPについての加工結果の予測データセットE
fcstを計算する。ステップS64において、任意選択で、計算結果E
fcstをユーザインタフェースUI上に表示し、ユーザが入力を直接変更することを可能にすることができる。
【0094】
更なる展開において、ステップS65において、読み込まれ、場合によっては確認されたパラメータセットPを用いたレーザ加工を行うことができる。その後、ステップS66において、加工結果E
actを、製造された構成要素の実際の値として測定し、ステップS67において、一致およびずれについて予測データセットE
fcstと比較することができる。ずれがある場合、ステップS68において、計算された比較値を(例えば、UIに)出力することができ、かつ/または計算された比較値に基づいて適合手順を自動的に始動させることができ、特に、モデルMの適合を、再現性のあるずれの検出時に行い、新たなバージョンとして試験し、作動させることができる。ステップS64、S65、S66、S67、S68は任意選択であるため、
図6において、破線の輪郭で示される。
【0095】
図7は、異なるシーケンス変形において実行することができるパラメータ化方法のフロー図を示す。ステップS71において、方法が開始した後、加工結果のための目標値E
targが読み込まれる。ステップS72において、決定論的プロセスモデルMがアクセスされ、ステップS73において、読み込まれた目標値E
targのための少なくとも1つのパラメータセットP
calcdが計算される。任意選択で、ステップS74において、計算されたパラメータセットP
calcdを、例えばUIインタフェース上に出力することができる。
【0096】
ステップS75において、ワークピースは、任意選択で、計算されたパラメータセットP
calcdを用いて加工することができる。ステップS76において、製造されたワークピースにおいて加工結果の実際の値E
actを測定することができる。ステップS77において、目標値E
targと加工結果の実際の値E
actとの比較を計算することができる。ずれが存在する場合、ステップS78において、計算された比較値を出力することができる。代替的にまたは更に、計算された比較値に基づいて、適合手順をトリガし、実行することができる。特に、読み込まれた目標値E
targは、加工結果について測定された実際の値E
actを維持することができるように適合させることができる。
図6に従って、
図7における任意選択のステップも破線で示されている。
【0097】
本方法は、少なくとも2つのアプリケーション事例を有し、その各々が、少なくとも2つの連続して実行されるアルゴリズムである。第1のアプリケーション事例のアルゴリズムは、アプリケーション校正(アルゴリズム1)およびアプリケーション計算(アルゴリズム2)である。第2のアプリケーション事例のアルゴリズムは、アプリケーションシミュレーション(アルゴリズム3)および製造予測(アルゴリズム4)である。2つのアプリケーション事例は互いの逆を形成し、これは、アルゴリズム1~4の連続実行によりアイデンティティマッピングがもたらされ、デジタルツインのセルフチェックが可能になることを暗に意味する。
【0098】
アプリケーション事例のアルゴリズムを以下でより詳細に説明する。
アプリケーション校正は、レーザ材料加工(アプリケーション)の加工結果(データ構造3)およびプロセス特性(データ構造2)の全ての変数間の機能的関係である。この機能的関係は、加工後の時点に(現場外で)取得される測定値に基づく。アプリケーション校正は、経験的(統計的)関数または計算された(理論的)関数を含むことができる。
【0099】
図8のフローチャートにアプリケーション校正アルゴリズムが示されている。このアルゴリズムは、例えばユーザによって入力されたデータ構造3における目標加工結果から、対応するプロセス特性PKGを計算する。
【0100】
アプリケーション校正アルゴリズムのためのアプリケーション例について、
図9を参照して以下でより詳細に説明する。
【0101】
図9において、ワークピースにおける異なる焦点位置で集束された2つのレーザビームが示されている。この結果、接合壁の異なる傾斜が生じ、切断面の傾斜角の平均値<α
f>を用いて指定される。この傾斜角は、校正関数
【数8】
によって決定される。
【0102】
ここではワークピースの厚みDが指定され、接合部高さの短縮形Δαが規格において定義され、切断エッジプロファイル高さuは、(関連付けられた測定方法の実際の値としての、ユーザの目標値としての)加工結果の値である。モデル仮定において、uは、短縮された接合部高さの端部におけるビーム半径における差でもある。
u=W(Δa)-W(D-Δa)
【0103】
ビーム半径関数は、焦点半径W
0および焦点長z
Rを用いて以下によって与えられる。
【数9】
【0104】
アプリケーション校正フローチャートによれば、ここで、以下のステップが実行される。
1. ユーザは、以前の加工結果(目標値)として所望の切断エッジプロファイル高さuを与える(または、uは、アプリケーションの現在の測定値として「自動モード」においてデータ構造3から読み出される);
2. アプリケーション校正アルゴリズムは、上記の校正関数<αf>を用いてプロセス特性を計算する。
3. アルゴリズムは、プロセス特性のデータ構造2に<αf>の計算値を書き込む。
【0105】
決定論的モデルは、アプリケーション校正アルゴリズムにおいて、加工結果の追加の変数ごとに校正関数を提供する。
【0106】
図10のフローチャートにおいて、アプリケーション計算のためのアルゴリズムが示されている。結果として、まず、アプリケーション校正の以前に実行されたアルゴリズムにおいて計算された加工結果変数がロードされる。その後、切断計画およびワークピースの詳細が入力されなくてはならない。これは、通例、自動製造フローにおいてユーザによってまたはアップストリーム制御ユニットによって行われる。
【0107】
パラメータセットPは、アプリケーション計算の中央手順において計算される。特に、パラメータセットPを有するデータ構造2の大部分が、既に最小限のユーザ入力からの仕様およびデータによって与えられているため、可変加工パラメータ(例えば、フィード、出力、圧力、焦点位置)が計算される。
【0108】
アプリケーション計算が完了すると、データが表示および保存され、製造が開始または変更される。好ましい展開において、製造または現在のレーザ加工プロセスは、計算パラメータを、加工中に手動または自動で変更することによって、計算値に基づいて制御することができる。この変更は、モデルMにアクセスすることによって、目標/実際の比較に応じて行われる。
【0109】
より詳細に説明されるアプリケーション例:「切断面の傾斜角」を参照して、アプリケーション計算のためのアルゴリズムについて以下で説明する。
【0110】
アプリケーション校正アルゴリズムに関するセクションにおいて、例として、加工結果u(切断面の平坦性の尺度としてのプロファイル高さ)からプロセス特性αf(切断面の平均傾斜角)がどのように計算されるかが示された。
【0111】
ここで、アプリケーション計算は、切り口の計算された円錐角αfおよび全ての他の現在のプロセス特性をロードし、そこから、パラメータセットP、特に、製造の可変加工パラメータを計算する。切断面の平均傾斜角の例について、超越方程式は以下を与える。
【数10】
パラメータセットの変数として求められた焦点位置z_0。後に切断されたサンプルに対し、uを再び(E
actとして)測定し、チェックすることができる。
【0112】
方法のアプリケーション事例2は、アプリケーションシミュレーション、それに続く製造予測を含む。アプリケーション事例2は、アプリケーション校正、それに続くアプリケーション計算からなる、アプリケーション事例1の逆関数である。この結果、アプリケーション校正および製造予測が、アプリケーション計算およびアプリケーションシミュレーションのように、相互に逆のアルゴリズムであるということになる。
【0113】
図11を参照して、アプリケーションシミュレーションが以下でより詳細に説明される。アプリケーションシミュレーションにおいて、パラメータセットPのデータを用いて、製造されたサンプルに対し予期される加工結果Eを予測する。まず、既に固定されたデータ、例えば仕様がロードされる。その後、切断計画(輪郭)およびワークピース(幾何学的形状、材料)が入力される。これは、定義上、最小限のユーザ入力である。最終的に、可変加工パラメータ(輪郭点におけるデータ)、例えば出力、フィード、および焦点位置が入力されるか、またはデータ構造から読み込まれる。
【0114】
パラメータセットPの全てのデータが完全に利用可能である場合、アプリケーションシミュレーションは、そこからプロセス特性PKGを計算し、これらを表示し、保存する。
【0115】
パラメータセットPの可変加工パラメータは、製造が既に実行中である場合であっても変更することができる。このとき、製造およびプロセス特性の計算は、毎回自動的に更新される。
【0116】
アプリケーション例:「切断面の傾斜角」
アプリケーション計算において、焦点位置z_0は、超越方程式から数値的に決定されなくてはならなかった。ここでは、アプリケーションシミュレーションにおいて、逆の手順が用いられ、焦点位置が、パラメータセットPのデータ構造1における値として指定される。ここから、切断面の傾斜角が以下を用いて計算され、
【数11】
プロセス特性PKGの値としてデータ構造2に記憶される。
【0117】
製造予測は、アプリケーション校正の逆アルゴリズムまたは逆関数であり、
図12を参照して以下で説明される。
【0118】
第1に、アプリケーションシミュレーションを用いて計算されるプロセス特性がロードされる。次に、製造予測のためのアルゴリズムの関数が適用され、これらの計算の結果として、(予期される)加工結果について計算または予測されたデータEtargが得られる。例えば、実験またはランダムチェックの過程において、製造予測(このため、アプリケーション校正)が再測定されなくてはならないことが決定される場合、対応する測定方法が実行され、それによって加工結果の測定値Eactが得られる。
【0119】
同じパラメータセットPから開始して、計算された加工結果と測定された加工結果との比較Eact-Etargにより、実際と目標との間の相関がもたらされ、パラメータ化の2つのアルゴリズムのための補正データの決定が可能になる。
【0120】
アプリケーション例:切断面の傾斜角
傾斜角αfのプロセス特性PKGがパラメータセットPから計算され、記憶された。ここで、この値は、(プロセス特性の他の値と共に)製造予測によって、このため、以下の式を用いて読み出され、
u=(D-2Δa)・tan<αf>
プロファイル高さが計算される。計算値として、この加工結果データセットは、名目値を表し、これはここで、対応する測定を用いて決定することができる。
【0121】
以下は、インタフェースのプロファイル高さをどのように測定し、上記のアルゴリズムへの入力データセットとして供給することができるかを示す。
【0122】
表面測定デバイスを用いて、サンプル上の切断面の断面が(好ましくは非接触方式で)記録される。光検出デバイス(例えば、CCDカメラ-可変焦点面、白色光干渉計を有するマクロスコープまたはマイクロスコープ)を用いて、サンプルの画像が検出され、ここに、例えば、厚み15mmの構造用鋼の切断面が示される。切断面は、火炎切断の一般的な特性(上部における周期的細溝形成、底部におけるトレーリング効果を有する広く不規則な細溝)を有する。サンプルの上方で、高い平坦性を有する基準面がクランプ角を補償するように共にクランプされる。基本的に、表面測定デバイスの測定空間において測定されるサンプルは、サンプルホルダにおける基準面と共にクランプされる。平坦な基準面は、切断面に対し直角をなし、その向きは、基準面に属することができる。そのような測定の結果は、偽色画像の形態で表示および出力することができる。
【0123】
実際の測定範囲は、1つの画像セクションのみに影響を与えるため、切断面のより小さな矩形または多角形セクションのみが検討される。このセクションは、約13mmの長さおよび8mmの幅であり、結果として、概ね1ミリメートルのΔaが得られる。ここで、垂直方向における切断面の平均プロファイル曲線が、この矩形測定範囲にわたって記録される。平均プロファイル曲線は、
図13においてグラフで示される。ここで、プロファイル曲線において、最小値(破線)および最大値(点線)を区別することができる。最大値と最小値との間の差の結果として、加工結果E
actについて測定される変数としてプロファイル高さuが得られる。最小値の切断深さz(プロファイル曲線の水平軸)が最大値の切断深さよりも小さい場合、uの符号は正である。
【0124】
プロファイル高さuが決定された後、測定値は、加工結果Eのデータ構造3に書き込まれる。切り口の円錐角のアプリケーション例における上記のテキストセクションにおいて、この値を計算されたまたはユーザが入力した目標値と比較するのにどのように用いることができるかが記載される。
【0125】
最後に、本発明および例示的な実施形態の説明は、本発明の特定の物理的実現の観点において限定として理解されるものでないことに留意すべきである。本発明の個々の実施形態に関連して説明され示された全ての特徴は、本発明による主題において様々な組合せで提供し、それらの有利な効果を同時に実現することができる。
【0126】
特に、当業者には、本発明を、切断のためのレーザ装置Lに適用することができるのみでなく、溶接および/またはラベリングおよび/または彫刻および/または切削等の他の用途にも適用することができることが明らかであろう。更に、比較器および電子処理ユニットVの端末Tの構成要素は、ハードウェアのユニットに組み込むことができるか、または複数の物理的製品にわたって分散させて実現することもできる。加えて、上述した構成要素は、レーザ上に直接配置することができる。同様に、パラメータ化モジュールParMおよび/または予測モジュールProgMは、レーザ上に局所的に、またはレーザに形成することができる。代替的に、パラメータ化モジュールParMおよび/または予測モジュールProgMは、クラウドシステムとして、またはサーバ上に設計し、レーザLとデータ交換することもできる。
【0127】
本発明の保護範囲は、以下の特許請求の範囲によって与えられ、本明細書に説明されるかまたは図に示す特徴によって制限されるものではない。