(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】装飾部材昇降装置
(51)【国際特許分類】
A63F 7/02 20060101AFI20220614BHJP
【FI】
A63F7/02 304D
(21)【出願番号】P 2018097584
(22)【出願日】2018-05-22
【審査請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】320002913
【氏名又は名称】株式会社イチネン製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉田 義守
【審査官】福村 拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-045271(JP,A)
【文献】特開2012-016623(JP,A)
【文献】特開2013-116177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装飾部材を吊り下げるプーリーと一体に設けられた出力軸ギヤと、
モータギヤにより駆動される駆動ギヤと、この駆動ギヤに取付けられ、駆動ギヤの回転方向に付勢されるクラッチアームと、
このクラッチアームの先端に設けられ、駆動ギヤの回転を出力軸ギヤに伝達するクラッチギヤとを備えた装飾部材昇降装置であって、
モータギヤと同軸に、モータギヤが特定角度範囲にあるときにのみ、クラッチギヤが出力軸ギヤから離れる方向にクラッチアームを揺動させることを許容するギヤカムを設けるとともに、
このギヤカムにより駆動され、装飾部材を巻き上げ中はメカロック爪を出力軸ギヤと係合させて出力ギヤの逆転を阻止するメカロックレバーを設け
、
前記メカロックレバーは、ギヤカムにより駆動されるスライドレバーを介して、メカロック爪を出力軸ギヤと係合・離脱させるものであることを特徴とする装飾部材昇降装置。
【請求項2】
メカロック爪を出力軸ギヤから離脱させた状態で、クラッチギヤが出力軸ギヤから離れる方向にクラッチアームを揺動させることにより、出力軸ギヤを自由回転させて装飾部材を落下させることを特徴とする請求項1に記載の装飾部材昇降装置。
【請求項3】
メカロック爪を出力軸ギヤから離脱させた状態で、クラッチギヤが出力軸ギヤと係合する方向にクラッチアームを揺動させ、モータギヤを正逆回転させて装飾部材を小刻みに昇降させることを特徴とする請求項
2に記載の装飾部材昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコなどの遊技台に組み込まれる装飾部材昇降装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パチンコなどの遊技台の盤面に昇降する装飾部材を設け、当たり動作と関連させて昇降させ、遊技者の興趣を高めることが行われている。これらの装飾部材は盤内に組み込まれた昇降装置のモータによって駆動され、一定速度で昇降するものが普通である。しかし最近では、盤内の高い位置から昇降部材を自由落下(バンジー落下)させることが行われている。
【0003】
例えば特許文献1には、装飾部材を吊り下げたプーリーをモータにより回転させて装飾部材を所定高さまで巻き上げたうえで、モータを逆転させることによってプーリーを駆動系から切り離し、装飾部材を自由落下させる装飾部材昇降装置が開示されている。しかしこの装置は、装飾部材の巻き上げと自由落下としか行わせることができず、遊技者に自由落下を期待させる小刻みな昇降運動(あおり運動)を行わせることはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、装飾部材の巻き上げと自由落下のほかに、小刻みな昇降運動(あおり運動)を行わせることができる装飾部材昇降装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、装飾部材を吊り下げるプーリーと一体に設けられた出力軸ギヤと、モータギヤにより駆動される駆動ギヤと、この駆動ギヤに取付けられ、駆動ギヤの回転方向に付勢されるクラッチアームと、このクラッチアームの先端に設けられ、駆動ギヤの回転を出力軸ギヤに伝達するクラッチギヤとを備えた装飾部材昇降装置であって、モータギヤと同軸に、モータギヤが特定角度範囲にあるときにのみ、クラッチギヤが出力軸ギヤから離れる方向にクラッチアームを揺動させることを許容するギヤカムを設けるとともに、このギヤカムにより駆動され、装飾部材を巻き上げ中はメカロック爪を出力軸ギヤと係合させて出力ギヤの逆転を阻止するメカロックレバーを設け、前記メカロックレバーは、ギヤカムにより駆動されるスライドレバーを介して、メカロック爪を出力軸ギヤと係合・離脱させるものであることを特徴とするものである。
【0007】
【0008】
また請求項2のように、メカロック爪を出力軸ギヤから離脱させた状態で、クラッチギヤが出力軸ギヤから離れる方向にクラッチアームを揺動させることにより、出力軸ギヤを自由回転させて装飾部材を落下させることができる。
【0009】
さらに請求項3のように、メカロック爪を出力軸ギヤから離脱させた状態で、クラッチギヤが出力軸ギヤと係合する方向にクラッチアームを揺動させ、モータギヤを正逆回転させて装飾部材を小刻みに昇降させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の装飾部材昇降装置は、モータギヤを正転させれば、クラッチアームの先端に設けられたクラッチギヤが出力軸ギヤと噛み合い、モータギヤの回転は、駆動ギヤ、クラッチギヤを介して出力軸ギヤに伝達され、装飾部材を巻き上げることができる。この間はメカロックレバーがメカロック爪を出力軸ギヤと係合させて出力ギヤの逆転を阻止するので、装飾部材が落下することはない。
【0011】
またモータギヤを逆転させれば、クラッチギヤが出力軸ギヤから離れる方向にクラッチアームが揺動される。このため、モータギヤの逆転に応じてメカロックレバーによりメカロック爪を出力ギヤから離せば出力ギヤはフリーとなり、昇降部材を自重で落下させることができる。
【0012】
さらに、クラッチギヤが出力軸ギヤと噛み合った状態のまま、メカロックレバーによりメカロック爪を出力ギヤから離し、モータギヤを小角度ずつ正逆回転させれば、昇降部材を小刻みに昇降させるあおり運動が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態の装飾部材昇降装置の外観を示す斜視図である。
【
図2】実施形態の装飾部材昇降装置の内部構造を示す斜視図である。
【
図3】実施形態の装飾部材昇降装置の分解斜視図である。
【
図7】中立状態からモータギヤを時計方向に回転させた状態を示す内部構造図である。
【
図8】中立状態からモータギヤを反時計方向に回転させた状態を示す内部構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は実施形態の装飾部材昇降装置の外観を示す斜視図、
図2はその内部構造を示す斜視図、
図3は分解斜視図である。
【0015】
これらの図において、10は遊技台に取り付けられるケース、11はケースカバー、12はケースカバー11の前面に位置し、図示を略した装飾部材を吊り下げるプーリーである。装飾部材はワイヤまたはチェーンによってプーリー12から吊り下げられている。13はケース10の内部に収納された出力軸ギヤであり、ケースカバー11を貫通する出力軸14によってプーリー12と一体となっている。
【0016】
15は昇降装置を駆動するモータである。このモータ15は正逆両方向に回転させることができるステッピングモータであることが好ましい。モータ15の回転軸にはモータギヤ16と、ギヤカム17が取り付けられている。ギヤカム17はモータギヤ16と一体化されたもので、円筒の一部に切欠部18を形成した形状のカムである。その作用については後述する。
【0017】
19はモータギヤ16の上方位置でケース10に軸支された駆動ギヤである。この駆動ギヤ19はモータギヤ16と常に噛み合っている。この駆動ギヤ19にはクラッチアーム20が、クラッチばね21を介して取付けられている。クラッチばね21は駆動ギヤ19とクラッチアーム20との間に存在し、両者間に抵抗を生じさせるものであればよく、この実施形態のクラッチばね21に限定されるものではない。クラッチアーム20は駆動ギヤ19と同一方向に揺動するが、クラッチアーム20の突起22がギヤカム17と接触してそれ以上は揺動できない状態においても、駆動ギヤ19のみを強制的に回転させることも可能である。
【0018】
図3、
図4に示すように、このクラッチアーム20の先端には、駆動ギヤ19と常に噛み合うクラッチギヤ23が軸支されている。モータギヤ16が時計方向に正転したときには、駆動ギヤ19が反時計方向に回転してクラッチアーム20を反時計方向に回転させる。このクラッチアーム20の回転によりクラッチギヤ23が前記した出力軸ギヤ13と係合するので、モータギヤ16→駆動ギヤ19→クラッチギヤ23→出力軸ギヤ13の経路で回転が伝達され、出力軸ギヤ13が反時計方向に回転して装飾部材を巻き上げることができる。
【0019】
図5に示されるように、出力軸ギヤ13の左下側には、軸24によってメカロックレバー25が軸支されており、その下端にメカロック爪26が設けられている。メカロックレバー25は引張バネ27により反時計方向に付勢されているので、巻き上げ時にメカロック爪26が出力軸ギヤ13の歯の裏面(
図5の左面)に当接し、装飾部材の重量によって出力軸ギヤ13が逆転することを防止している。巻上げ時には出力軸ギヤ13の1歯ごとにメカロックレバー25がカチカチと揺動するので、メカロックレバー25の上部には光電式のセンサ50が設けられており、揺動回数をカウントして巻上げ高さを検出している。この点については後述の
図10を参照されたい。
【0020】
自由落下を行わせる際には、メカロックレバー25を時計方向に回転させてメカロック爪26を出力軸ギヤ13から離脱させる必要がある。このようにメカロックレバー25を引張バネ27に抗して時計方向に回転させるために、スライドレバー30が設けられている。スライドレバー30は横長の貫通孔31を備え、クラッチアーム20の略楕円状の突起32がその内部に嵌まっているので、左右にスライドすることができる。
【0021】
このスライドレバー30の先端には二股部33が設けられており、メカロックレバー25の突起34がその内部に嵌まっている。またスライドレバー30の基端にはリリーズレバー35が設けられている。このリリーズレバー35はケース10の軸36に軸支されたもので、その下部には爪状突起37があり、前記したギヤカム17に当接している。なお
図3に示される弦巻バネ38によって、爪状突起37は常にギヤカム17に当接する方向に付勢されている。そしてリリーズレバー35の上部の軸39がスライドレバー30の基部の孔40に嵌まっている。
【0022】
このため
図6に示すように、ギヤカム17が特定角度範囲内に回転してその切欠部18に爪状突起37が入った中立状態からモータギヤ16及びギヤカム17が時計方向に正転すると、
図7に示すようにリリーズレバー35はギヤカム17に押されながら反時計方向に揺動してスライドレバー30を左方向にスライドさせる。しかし二股部33が左方向にスライドしてもメカロックレバー25は動くことはない。一方、モータギヤ16及びギヤカム17が
図6の位置から反時計方向に逆転すると、
図8に示すようにリリーズレバー35はギヤカム17に押されながら時計方向に揺動してメカロックレバー25を右方向にスライドさせる。これにより二股部33がメカロックレバー25の突起34を押すので、メカロックレバー25は時計方向に揺動し、メカロック爪26が出力軸ギヤ13から離れる。以下にこの装置の作動を説明する。
【0023】
(巻上げ)
図10に巻上げ中の状態を示す。モータギヤ16を時計方向に正転させると、駆動ギヤ19が反時計方向に回転してクラッチアーム20を反時計方向に回転させる。そしてクラッチギヤ23が出力軸ギヤ13と係合するので、出力軸ギヤ13が反時計方向に回転して装飾部材を巻き上げる。メカロックレバー25は
図7の位置にあり、メカロック爪26は1歯ごとに歯の裏面に当接し、装飾部材の重量によって出力軸ギヤ13が逆転することを防止している。巻上げ位置は光電式のセンサ50によって検出される。モータギヤ16を正転させている間はこの状態が維持されるので、モータギヤ16を多数回回転させて任意の高さまで装飾部材を巻き上げることができる。
【0024】
(自由落下)
図11に自由落下の状態を示す。巻上げ後に任意の位置でモータギヤ16を
図9の位置まで反時計方向に逆転させると、駆動ギヤ19が時計方向に回転してクラッチアーム20を時計方向に回転させる。このときにはクラッチアーム20の突起22がギヤカム17の切欠部18に落ち込み、クラッチアーム20を大きく回転させることができるため、クラッチギヤ23が出力軸ギヤ13から離れる。また、このとき、
図11に示すように、ギヤカム17の切欠部18は右側にあるため、リリーズレバー35の爪状突起37はギヤカム17により押し出された位置にあり、リリーズレバー35は時計方向に揺動してスライドレバー30を右方向にスライドさせる。これにより二股部33がメカロックレバー25の突起34を押し、メカロックレバー25は時計方向に揺動し、メカロック爪26が出力軸ギヤ13から離れる。この結果、出力軸ギヤ13は拘束のないフリーな状態となり、装飾部材を自重により自由落下(バンジー落下)させることができる。
【0025】
(あおり)
図12と
図13にあおり運動の状態を示す。モータギヤ16を
図12の位置まで回転させた状態では、
図11の自由落下時と同様に、リリーズレバー35の爪状突起37はギヤカム17により押し出された位置にあるから、メカロック爪26が出力軸ギヤ13から離れている。しかしクラッチアーム20の突起22はギヤカム17の切欠部18に落ち込んでおらず、
図12、13のように押し出されている。このためクラッチアーム20の回転は制限され、クラッチギヤ23が出力軸ギヤ13と係合した状態となる。
【0026】
この
図12の状態からモータギヤ16を
図13の状態まで逆転させると、クラッチギヤ23が出力軸ギヤ13と係合した状態のまま逆転するので、出力軸ギヤ13は時計方向に回転し、装飾部材はわずかに降下する。そのままモータギヤ16の逆転を続けると自由落下の状態となるが、
図13の状態からモータギヤ16を
図12の位置まで正転させると、クラッチギヤ23が出力軸ギヤ13と係合した状態のまま正転するので、出力軸ギヤ13は反時計方向に回転し、装飾部材はわずかに上昇する。このように、
図12と
図13間でモータギヤ16を小刻みに逆転・正転させれば、装飾部材は小刻みな昇降運動を繰り返す。
【0027】
なお、
図12の状態からさらにモータギヤ16を反時計方向に逆転させれば、
図11の状態となって装飾部材を自重により自由落下させることができる。逆に、
図12の状態からモータギヤ16を時計方向に正転させれば、
図10の状態となって装飾部材を巻き上げることができる。このあおり運動は
図12の状態からモータギヤ16を逆転させることによって開始し、装飾部材の高さとは無関係である。このため、任意の高さであおり運動を行うことができる。
【0028】
このように、本発明の装置は装飾部材の巻き上げと自由落下の他に、任意の高さであおり運動を行わせることができるので、遊技者の興趣を高めることができる。また本発明の装置は、単一のモータ15のみにより各種の動作を行わせることができるので、装置をコンパクトに設計することができ、遊技盤内に組み込みやすい利点がある。
【符号の説明】
【0029】
10 ケース
11 ケースカバー
12 プーリー
13 出力軸ギヤ
14 出力軸
15 モータ
16 モータギヤ
17 ギヤカム
18 切欠部
19 駆動ギヤ
20 クラッチアーム
21 クラッチばね
22 突起
23 クラッチギヤ
24 軸
25 メカロックレバー
26 メカロック爪
27 引張バネ
30 スライドレバー
31 貫通孔
32 突起
33 二股部
34 突起
35 リリーズレバー
36 軸
37 爪状突起
38 弦巻バネ
39 軸
40 孔
50 センサ