(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】着色樹脂組成物、フィルムおよび医薬品包装材
(51)【国際特許分類】
C08L 23/00 20060101AFI20220614BHJP
C08L 27/06 20060101ALI20220614BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20220614BHJP
B65D 65/02 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
C08L23/00
C08L27/06
C08K5/00
B65D65/02 E
(21)【出願番号】P 2020214621
(22)【出願日】2020-12-24
【審査請求日】2021-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591183153
【氏名又は名称】トーヨーカラー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】胡 皓
(72)【発明者】
【氏名】西中 健
(72)【発明者】
【氏名】増子 啓介
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/126802(WO,A1)
【文献】特開2005-089550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,C08K,B65D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂(A)と、有機顔料(B)とを含む着色樹脂組成物であって、
有機顔料(B)は、
C.I.ピグメントイエロー93、ピグメントイエロー95、ピグメントイエロー110、ピグメントイエロー138、ピグメントイエロー150、ピグメントイエロー180、およびピグメントイエロー181からなる群から選ばれる少なくとも1種である有機顔料(B1)と、
C.I.ピグメントオレンジ64、ピグメントオレンジ71、ピグメントレッド144、ピグメントレッド149、ピグメントレッド177、ピグメントレッド207、ピグメントレッド208、ピグメントレッド242、ピグメントレッド254、およびピグメントレッド264からなる群から選ばれる少なくとも1種である有機顔料(B2)
を含み、
熱可塑性樹脂(A)は、ポリオレフィン系樹脂およびポリ塩化ビニル系樹脂の少なくともいずれかを含むことを特徴とする医薬品包装材形成用着色樹脂組成物。
【請求項2】
熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、有機顔料(B1)を0.20~30質量部と、有機顔料(B2)を0.20~30質量部含む、請求項
1記載の医薬品包装材形成用着色樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1
または2記載の着色樹脂組成物から形成してなるフィルム。
【請求項4】
厚みが30~500μmであり、波長200~480nmにおける光線透過率が1%未満である請求項
3記載のフィルム。
【請求項5】
請求項1
または2記載の着色樹脂組成物を用いてなる医薬品包装材。
【請求項6】
ブリスターパック、または点眼容器である、請求項
5記載の医薬品包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色樹脂組成物、フィルムおよび医薬品包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医薬品包装材には樹脂成形体が使用されている。医薬品の中には紫外線や可視光線に弱いものが多く、その成分を保護するために医薬品包装材に遮光機能を持たせる提案がなされている。
【0003】
保護すべき医薬品の成分にもよるものの、遮光が必要な波長領域としては、紫外線だけでは不十分である。一部の医薬品の成分は比較的エネルギーの高い短波長の可視光線によっても劣化が進むことが知られており、そのため遮光機能を持たせた医薬品包装材としては波長200~480nmまで遮光できることが望ましい。
【0004】
一方、医薬品包装材はその成分が溶出・マイグレーションするなどして内容物に影響があってはならない。そのため、例えば輸液バッグ、点眼容器、注射剤容器などの医薬品包装材については「日本薬局方-一般試験法7.02 プラスチック製医薬品容器試験法」などが定められており、各医薬品包装材はこれらの規格を満たす耐溶出性も満たす必要がある。
【0005】
医薬品包装材として、例えば特許文献1では、特定の平均粒子径を有する有機顔料と分散剤と樹脂成分からなるPTP(プレス・スルー・パック)用またはブリスターパック用シート、およびそれを形成するための樹脂組成物が開示されている。
【0006】
また、特許文献2では、熱可塑性樹脂にピグメントイエロー95および/またはピグメントイエロー147を配合してなる輸液バッグ用着色樹脂組成物が開示されている。
【0007】
また、特許文献3では、塩化ビニル系樹脂にジベンゾイルメタンと酸化チタンを配合してなる医薬品包装用樹脂シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2013-119412号公報
【文献】特開平08-193149号公報
【文献】特開2016-150033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、紫外領域から可視領域の光を吸収して外部から内容物を遮光しつつ、前述の耐溶出性の規格を満たす着色樹脂組成物および医薬品包装材とすることは困難である。そのため、従来は医薬品包装において内容物を遮光して保護する必要がある場合、遮光層とは別に溶出を防ぐ層が形成された複層(積層)構造になっていたり、無色透明の医薬品容器に遮光カバーを被せたりするなどの措置が取られていた。
【0010】
本発明は上記の課題を鑑みてなされたものであり、紫外線から可視光線を遮光して内容物が劣化することを防ぎ、かつ耐溶出性に優れているので内容物を汚染することのない医薬品包装材に用いられる着色樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、熱可塑性樹脂と特定の有機顔料少なくとも2種を用いることにより、本発明の目的を達成し得ることを見出した。
【0012】
すなわち、熱可塑性樹脂(A)と、有機顔料(B)とを含む着色樹脂組成物であって、
有機顔料(B)は、C.I.ピグメントイエロー93、ピグメントイエロー95、ピグメントイエロー110、ピグメントイエロー138、ピグメントイエロー150、ピグメントイエロー180、ピグメントイエロー181、ピグメントオレンジ64、ピグメントオレンジ71、ピグメントレッド144、ピグメントレッド149、ピグメントレッド177、ピグメントレッド207、ピグメントレッド208、ピグメントレッド242、ピグメントレッド254、およびピグメントレッド264よりなる群から選ばれる少なくとも2種を含むことを特徴とする医薬品包装材形成用着色樹脂組成物に関する。
【0013】
また、本発明の実施態様は、有機顔料(B)は、C.I.ピグメントイエロー93、ピグメントイエロー95、ピグメントイエロー110、ピグメントイエロー138、ピグメントイエロー150、ピグメントイエロー180、およびピグメントイエロー181からなる群から選ばれる少なくとも1種である有機顔料(B1)と、C.I.ピグメントオレンジ64、ピグメントオレンジ71、ピグメントレッド144、ピグメントレッド149、ピグメントレッド177、ピグメントレッド207、ピグメントレッド208、ピグメントレッド242、ピグメントレッド254、およびピグメントレッド264からなる群から選ばれる少なくとも1種である有機顔料(B2)を含むことを特徴とする前記医薬品包装材形成用着色樹脂組成物に関する。
【0014】
また、本発明の実施態様は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、有機顔料(B1)を0.2~30質量部と、有機顔料(B2)を0.2~30質量部含む、前記医薬品包装材形成用着色樹脂組成物に関する。
【0015】
また、本発明の実施態様は、熱可塑性樹脂(A)は、ポリオレフィン系樹脂およびポリ塩化ビニル系樹脂の少なくともいずれかを含むことを特徴とする前記医薬品包装材形成用着色樹脂組成物に関する。
【0016】
また、本発明の実施態様は、前記着色樹脂組成物から形成してなるフィルムに関する。
【0017】
また、本発明の実施態様は、波長200~480nmにおける光線透過率が1%未満である前記フィルムに関する。
【0018】
また、本発明の実施態様は、前記着色樹脂組成物を用いてなる医薬品包装材に関する。
【0019】
また、本発明の実施態様は、波長200~480nmにおける光線透過率が1%未満である前記医薬品包装材に関する。
【0020】
また、本発明の実施態様は、ブリスターパック、または点眼容器である、前記医薬品包装材に関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、紫外線から可視光線を遮光して内容物が劣化することを防ぎ、かつ耐溶出性に優れているので、内容物を汚染することのない医薬品包装材を形成するために用いられる着色樹脂組成物を提供することができる。
また、本発明の着色樹脂組成物から形成してなる医薬品包装材は、他の機能層を形成しなくても、単層で充分な遮光性と耐溶出性を満足することが可能である。
なかでも素材がポリ塩化ビニル樹脂である場合には、耐溶出性だけでなく、医薬品包装材に要求される材質試験の要求も満たすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値の範囲として含むものとする。
また、本明細書において「フィルム」や「シート」は、厚みによって区別されないものとする。換言すると、本明細書の「シート」は、厚みの薄いフィルム状のものも含まれ、本明細書の「フィルム」は、厚みのあるシート状のものも含まれるものとする。
なお、本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に1種単独で、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
また、以下に挙げる「C.I.」は、カラーインデックス(C.I.)を意味する。
【0023】
《着色樹脂組成物》
本発明の着色樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)と、特定の有機顔料(B)を少なくとも2種含む。この着色樹脂組成物を用いて医薬品包装材を形成することで、紫外線から可視光線を遮光して内容物が劣化することを防ぎ、かつ耐溶出性に優れており、内容物を汚染することのない医薬品包装材を提供することができる。
また、医薬品包装材は、本発明の着色樹脂組成物から形成される樹脂層以外に、他の機能層等を有していてもよいが、樹脂層単層で遮光性と耐溶出性の機能を有しているために、医療用包装材の生産工程において複層を形成する必要がなく、生産性に優れるうえ、コストの面でも有利である。また、医療現場において遮光性を有さない医薬品包装材に遮光カバーを取り付ける手間がなくなり、付け忘れといった問題を防ぐこともできる。
【0024】
着色樹脂組成物の形状は、例えば、ペレット状、粉末状、顆粒状の形状が好ましく、なかでもペレット状が好ましい。医薬品包装材を形成する際、ペレット状の着色樹脂組成物は、熱可塑性樹脂等により希釈せず、そのまま溶融させて医薬品包装材を形成することもできるが、その他の熱可塑性樹脂に希釈して溶融混合し、医薬品包装材を形成する方法を用いることが好ましい。
このときの希釈樹脂は、樹脂組成物に用いた樹脂と同じものを用いることが好ましい。
【0025】
すなわち、着色樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)に特定の有機顔料(B)を高濃度で配合したペレット状のマスターバッチとして製造することが好ましい。マスターバッチは、熱可塑性樹脂(A)と特定の有機顔料(B)を溶融混錬し、さらにペレット状に成形することで製造できる。この場合、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対し、第一の有機顔料(B1)5~30質量部と、第二の有機顔料(B2)5~30質量部を含むことが好ましく、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対し、第一の有機顔料(B1)5~25質量部と、第二の有機顔料(B2)5~25質量部を含むことがより好ましい。
【0026】
このように、マスターバッチとして熱可塑性樹脂(A)中に特定の有機顔料(B)を予備分散することで、着色樹脂組成物の分散不良に起因する顔料凝集を防ぐことができ、医薬品包装材を形成した際に良好な外観の医薬品包装材を得ることができる。さらに、希釈して用いる場合の方が、熱履歴が少ないため、形成された医療品包装材の強度低下を少なくすることができる。
このとき希釈に用いる熱可塑性樹脂は、とくに制限されないが、マスターバッチに用いた樹脂と同じ樹脂を用いることが好ましい。
【0027】
本発明の着色樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)と特定の有機顔料(B)に、さらに必要に応じて各種フィラーや添加剤等を加え、例えば単軸混練押出機、二軸混練押出機、またはタンデム式二軸混練押出機等を用いて溶融混練し、ペレット状、粉体状、顆粒状またはビーズ状等の形状の樹脂組成物を得ることができる。
【0028】
溶融混錬温度は、熱可塑性樹脂(A)の種類により異なるが通常140~300℃程度である。
【0029】
<熱可塑性樹脂(A)>
熱可塑性樹脂(A)は、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体樹脂(ABS樹脂)、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリメチルメタアクリレート樹脂およびポリエーテルイミド樹脂等が挙げられる。
これらの樹脂は、常温でゴム弾性を有するポリマーである、エラストマーである場合も含む。
これらの中でも成形性および成形体の機械強度を考慮するとポリオレフィン系樹脂およびポリ塩化ビニル系樹脂の少なくともいずれかが好ましい。
【0030】
なお、ポリオレフィン系樹脂は、ポリオレフィンワックス(C)である場合は除く。
ポリオレフィン系樹脂は、メルトフローレイト(MFR)が0.1~100g/10分であることが好ましい。
MFRはJIS K-7210に準拠して求めることができる。
【0031】
ポリオレフィン系樹脂は、例えば結晶性または非晶性ポリプロピレン、ポリブテン-1、ポリ-4-メチルペンテン、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、リニア低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン-プロピレンのランダム、ブロックあるいはグラフト共重合体、α-オレフィンとエチレンあるいはプロピレンの共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体およびエチレン-アクリル酸共重合体、ポリエチレンまたはポリプロピレン中にエチレン・プロピレン・ランダムコポリマー等のゴム成分を分散させた常温でゴム弾性を有し高温では流動性を有し軟化するポリオレフィン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらの中でも結晶性または非晶性ポリプロピレン、エチレン-プロピレンのランダム、ブロックあるいはグラフト共重合体、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、リニア低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーが好ましい。
【0032】
ポリ塩化ビニル系樹脂は、例えば、ポリ塩化ビニル(塩化ビニル単独重合体)、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル・(メタ)アクリル酸共重合体、塩化ビニル・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、塩化ビニル・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、塩化ビニル・エチレン共重合体、塩化ビニル・プロピレン共重合体、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体等が挙げられる。さらには塩素化ポリエチレン等の、化学構造がポリ塩化ビニルと類似する塩素化ポリオレフィンを用いてもよい。また、目的とする成形体や成形方法に合わせて可塑剤、滑剤、加工助剤、安定剤などを配合してもよい。
また、ポリ塩化ビニル(塩化ビニル単独重合体)は、含有される可塑剤の量によって硬質ポリ塩化ビニル、軟質ポリ塩化ビニルに分類される。これらの中でも軟質ポリ塩化ビニル(塩化ビニル単独重合体)が好ましい。
【0033】
ポリエステル樹脂は、例えば、芳香族ジカルボン酸または脂環族ジカルボン酸等の酸成分とジオール成分による重合体であり、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。また、これらの混合などによるポリマーブレンドであってもよく、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等も含まれる。
【0034】
ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、例えばポリブチレン・テレフタレート(PBT)中にポリテトラメチレン・グリコール(PTMG)やポリカプロラクトン(PCL)を分散させたもの等が挙げられる。
【0035】
芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1、4-ナフタレンジカルボン酸、1、5-ナフタレンジカルボン酸、2、6-ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。好ましくは、フタル酸、テレフタル酸および2、6-ナフタレンジカルボン酸である。
【0036】
脂環族ジカルボン酸成分としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸等を用いることができる。
【0037】
ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1、2-プロパンジオール、1、3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1、3-ブタンジオール、1、4-ブタンジオール、1、5-ペンタンジオール、1、6-ヘキサンジオール、1、2-シクロヘキサンジメタノール、1、3-シクロヘキサンジメタノール、1、4-シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコールおよび2、2’-ビス(4’-β-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等が挙げられる。好ましくは、エチレングリコール、1、4-ブタンジオール、1、4-シクロヘキサンジメタノールおよびジエチレングリコール等が挙げられる。
【0038】
<有機顔料(B)>
本発明の着色樹脂組成物は、C.I.ピグメントイエロー93、ピグメントイエロー95、ピグメントイエロー110、ピグメントイエロー138、ピグメントイエロー150、ピグメントイエロー180、ピグメントイエロー181、ピグメントオレンジ64、ピグメントオレンジ71、ピグメントレッド144、ピグメントレッド149、ピグメントレッド177、ピグメントレッド207、ピグメントレッド208、ピグメントレッド242、ピグメントレッド254、およびピグメントレッド264よりなる群から選ばれる少なくとも2種を含む。
【0039】
なかでも、有機顔料(B)は、C.I.ピグメントイエロー93、ピグメントイエロー95、ピグメントイエロー110、ピグメントイエロー138、ピグメントイエロー150、ピグメントイエロー180、およびピグメントイエロー181からなる群から選ばれる少なくとも1種である第1の有機顔料(B1)と、
C.I.ピグメントオレンジ64、ピグメントオレンジ71、ピグメントレッド144、ピグメントレッド149、ピグメントレッド177、ピグメントレッド207、ピグメントレッド208、ピグメントレッド242、ピグメントレッド254、ピグメントレッド264からなる群から選ばれる少なくとも1種である第2の有機顔料(B2)を含むことが、フィルムや医薬品包装材が薄い膜厚であった場合においてもより紫外線から可視光線を遮光して内容物が劣化することを防ぐことができるために好ましい。
【0040】
第1の有機顔料(B1)としては、C.I.ピグメントイエロー95、ピグメントイエロー180、およびピグメントイエロー181からなる群から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、ピグメントイエロー95であることが更に好ましい。
また、第2の有機顔料(B2)としては、C.I.ピグメントオレンジ71、ピグメントレッド149、ピグメントレッド177、ピグメントレッド208、ピグメントレッド242、およびピグメントレッド254から選ばれる少なくともいずれかを含むことがより好ましく、ピグメントオレンジ71、およびピグメントレッド149の少なくともいずれかを含むことが更に好ましい。第1の有機顔料(B1)として特定の黄色顔料と、第2の有機顔料(B2)として特定の赤色顔料またはオレンジ色顔料とを組み合わせることにより、フィルムや医薬品包装材を形成した場合に薄い膜厚であった場合においても波長200~480nm領域の紫外線・可視光線の透過を効果的に抑えることができる。
【0041】
有機顔料(B)は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、少なくとも2種の有機顔料(B)の合計が0.2~60質量部であることが好ましい。第1の有機顔料(B1)0.20~30質量部と、第2の顔料(B2)0.20~30質量部を含むことがより好ましく、第1の有機顔料(B1)5~30質量部と、第2の顔料(B2)5~30質量部を含むことが更に好ましく、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、第1の有機顔料(B1)5~25質量部と、第2の顔料(B2)5~25質量部を含むことが特に好ましい。これらの含有量であることにより、フィルムや医薬品包装材を形成した場合に薄い膜厚であった場合においても波長200~480nm領域の紫外線・可視光線透過を効果的に抑えることができる。
【0042】
本発明の着色樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じてさらに他の顔料を含むことができる。他の顔料としては有機顔料(B1)および有機顔料(B2)以外の有機顔料、無機顔料、カーボンブラック系顔料等が挙げられる。
【0043】
有機顔料(B)は、予めポリオレフィンワックス(C)と混合し、予備分散して分散体としてから熱可塑性樹脂(A)と溶融混錬することが好ましい。予めポリオレフィンワックス(C)と混合しておくことで着色樹脂組成物の分散不良に起因する顔料凝集を防ぐことができ、医薬品包装材を形成した際に良好な外観の成形体を得ることができる。
【0044】
分散体は、2種以上の有機顔料(B)を含む分散体としてから用いてもよく、有機顔料(B)それぞれを分散した各分散体としてから用いてもよい。
【0045】
有機顔料(B)とポリオレフィンワックス(C)の混合方法は、公知の方法を使用することができる。例えば、流体エネルギー粉砕機、衝撃粉砕機等の乾式粉砕機や、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の高速攪拌機等を用い、有機顔料(B)とポリオレフィンワックス(C)を攪拌、混合する方法、または、ニーダー、ロールミル、バンバリーミキサー等を用いて有機顔料(B)とポリオレフィンワックス(C)を溶融混練する方法等が挙げられる。
【0046】
<ポリオレフィンワックス(C)>
本発明の着色樹脂組成物は、ポリオレフィンワックス(C)を含んでもよい。
なかでも、有機顔料(B)とポリオレフィンワックス(C)をあらかじめ分散した分散体として用いる場合、顔料凝集を効果的に抑制することが可能となり、医薬品包装材の外観を優れたものとすることができるために好ましい。
【0047】
ポリオレフィンワックス(C)は、エチレン、プロピレン、ブチレンなどのオレフィンモノマーの重合体であり、ブロック、ランダムコポリマーまたはターポリマーであっても構わない。具体的には、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)のようなα-オレフィン類の重合体である。
【0048】
本発明におけるポリオレフィンワックス(C)は、メルトフローレイト(MFR)が100g/10分以上であるオレフィンモノマーの重合体であることが好ましい。
MFRはJIS K-7210に準拠して求めることができる。
【0049】
ポリオレフィンワックス(C)の数平均分子量は1,000~30,000であり、好ましくは2,000~25,000の範囲内である。
数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC法)により、標準物質としてポリスチレン、溶離液としてテトラヒドロフランを用いて測定することができる。
【0050】
ポリオレフィンワックス(C)の融点は60~150℃であり、好ましくは80~140℃の範囲内である。
融点は、セイコーインスツルメンツ社製示差走査熱量計DSC6200により、標準物質としてアルミナを用い、温度範囲40~200℃、昇温速度10℃/分にて測定し、求めることができる。
【0051】
本発明の着色組成物がポリオレフィンワックス(C)を含む場合、有機顔料(B)100質量部に対し、ポリオレフィンワックス(C)を25~400質量部を含むことが好ましく、有機顔料(B)100質量部に対し、ポリオレフィンワックス(C)を67~150質量部を含むことがより好ましい。
【0052】
<任意成分>
本発明の着色樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて有機顔料(B)以外の有機顔料、無機顔料、カーボンブラック系顔料等、重金属不活性剤や、アルカリ金属やアルカリ土類金属または亜鉛の金属石けん、ノニオン系界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤などからなる帯電防止剤、ハロゲン系、リン系または金属酸化物などの難燃剤、エチレンビスアルキルアマイド等の滑剤、酸化防止剤や紫外線吸収剤、加工助剤、充填剤、公知のポリマー用の各種添加剤を含むことができる。
【0053】
《フィルム》
本発明のフィルムは、本発明の着色樹脂組成物を用いて成形加工することにより得ることができる。
フィルムの紫外線・可視光線透過率は、波長200~480nmにおいて10%未満であることが好ましく、5%未満であることがより好ましく、1%未満であることがさらに好ましい。10%未満であることで一部の医薬品の光線による劣化を防ぐ効果が期待でき、5%未満であることで多くの医薬品の光線による劣化を防ぐ効果が期待でき、1%未満であることで特に光線に弱い医薬品や、厳密な保護が必要な医薬品の劣化を防ぐ効果が期待できる。ここで紫外線・可視光線透過率は、従来公知の紫外可視近赤外分光光度計等を用いて測定することができる。
【0054】
フィルムを得る際の成形方法は特に限定されるものではなく、インフレーション成形、押出成形、カレンダー成形、シート成形等が挙げられる。
フィルムの厚みは、特に制限されないが、30~500μmであることが好ましく、より好ましくは30~300μmである。
この範囲であれば、上記の成形方法で成形しやすく、十分な強度を得ることができるために好ましい。
【0055】
《医薬品包装材》
本発明の医薬品包装材は、本発明の着色樹脂組成物を用いて成形加工することにより得ることができる。医薬品包装材を得る際の成形方法は特に限定されるものではなく、射出成形、ブロー成形、インフレーション成形、押出成形、カレンダー成形、エンゲル成形、真空成型等、成形方法に関わらず紫外線から可視光線を遮光して内容物が劣化することを防ぎ、耐溶出性に優れているので内容物を汚染することのない医薬品包装材を得ることができる。
また、本発明の着色樹脂組成物を用いてフィルムを成形し、それを更にこれを加工することによって医薬品包装材を得ることもできる。例えば、フィルムを真空成型することによりブリスターパックを形成したり、フィルムを貼り合わせて輸液バッグを形成したりする場合が挙げられる。
とくに、本発明の医薬品包装材は、遮光性と耐溶出性を満足するため、他の機能層を形成しなくても単層で医薬品包装材とすることが可能である。
【0056】
医薬品包装材は、医薬品包装用の、プレス・スルー・パック(PTP)を含むブリスターパック、点眼容器(目薬容器ともいう)、輸液バッグ、注射剤容器等が挙げられる。この中でも医薬品包装用ブリスターパック、または点眼容器が好ましい。
【0057】
本発明の医薬品包装材は、耐溶出性に優れており、内容物の汚染を抑制することができるため、例えば輸液バッグ、点眼容器、注射剤容器などの医薬品包装材については「日本薬局方-一般試験法7.02 プラスチック製医薬品容器試験法」などで定められている溶出試験の規格を満たすことができる。
また、ブリスターパックのように、素材がポリ塩化ビニル樹脂である場合には「食品衛生法・食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)」に定められた規格を満たすことができる。
なかでも素材がポリ塩化ビニル樹脂である場合には、耐溶出性だけでなく、医薬品包装材に要求される材質試験の要求も満たすことができる。
【0058】
医薬品包装材の紫外線・可視光線透過率は、波長200~480nmにおいて10%未満であることが好ましく、5%未満であることがより好ましく、1%未満であることがさらに好ましい。10%未満であることで一部の医薬品の光線による劣化を防ぐ効果が期待でき、5%未満であることで多くの医薬品の光線による劣化を防ぐ効果が期待でき、1%未満であることで特に光線に弱い医薬品や、厳密な保護が必要な医薬品の劣化を防ぐ効果が期待できる。
【0059】
医薬品包装材の紫外線・可視光線透過率は、医薬品包装材の一部を切り取って従来公知の紫外可視近赤外分光光度計等を用いて測定することができる。医薬品包装材の膜厚が場所によって異なる場合には、通常、膜厚の最も薄いところで紫外線・可視光線透過率が測定すればよい。
なお、医薬品包装材そのものについての紫外線・可視光線透過率を求めることが難しい場合には、同じ膜厚であるフィルムを用いて、医薬品包装材の紫外線・可視光線透過率を求めることができる。
【実施例】
【0060】
次に、本発明を具体的に実施例に基づき説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下、部は質量部、%は質量%を意味する。
【0061】
ポリオレフィンワックスの数平均分子量および融点の測定方法は以下の通りである。
【0062】
<ポリオレフィンワックスの数平均分子量>
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC法)により、標準物質としてポリスチレン、溶離液としてテトラヒドロフランを用いて測定した。
【0063】
<ポリオレフィンワックスの融点>
セイコーインスツルメンツ社製示差走査熱量計DSC6200により、標準物質としてアルミナを用い、温度範囲40~200℃、昇温速度10℃/分にて測定した。
【0064】
<顔料の平均粒子径>
平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)の拡大画像(例えば500倍~1万倍)から観察できる30個程度の粒子に関する粒子径を測定し、平均値を求めて得た。
【0065】
実施例および比較例に用いた原料を以下に示す。
<熱可塑性樹脂>
(A-1)ペトロセン175K (東ソー社製低密度ポリエチレン)
(A-2)ZELAS7025 (三菱ケミカル社製ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー)
(A-3)エバフレックスEV45LX (三井・ダウ ポリケミカル社製エチレン-酢酸ビニル共重合体)
(A-4)ノバテックLL UF420 (日本ポリエチレン社製リニア低密度ポリエチレン)
(A-5)RIKEN COMPOUND (リケンテクノス社製軟質ポリ塩化ビニル)
【0066】
<有機顔料>
[有機顔料(B1)]
(B1-1)クロモフタルイエローK1210FP (C.I.ピグメントイエロー93、BASFジャパン社製)
(B1-2)クロモフタルイエローK1500FP (C.I.ピグメントイエロー95、BASFジャパン社製)
(B1-3)イルガジンイエローL2060 (C.I.ピグメントイエロー110、BASFジャパン社製)
(B1-4)パリオトールイエローK0961HD (C.I.ピグメントイエロー138、BASFジャパン社製)
(B1-5)バイプラストイエロー5GN-01 (C.I.ピグメントイエロー150、ランクセス社製)
(B1-6)PVファーストイエローHG (C.I.ピグメントイエロー180、クラリアントジャパン社製)
(B1-7)PVファーストイエローH3R (C.I.ピグメントイエロー181、クラリアントジャパン社製)
[有機顔料(B2)]
(B2-1)クロモフタルオレンジK2960 (C.I.ピグメントオレンジ64、BASFジャパン社製)
(B2-2)イルガジンオレンジK2890 (C.I.ピグメントオレンジ71、BASFジャパン社製)
(B2-3)クロモフタルレッドK3890 (C.I.ピグメントレッド144、BASFジャパン社製)
(B2-4)パリオゲンレッドK3580 (C.I.ピグメントレッド149、BASFジャパン社製)
(B2-5)パリオゲンレッドL4045 (C.I.ピグメントレッド177、BASFジャパン社製)
(B2-6)ファストゲンスーパースカーレットGK (C.I.ピグメントレッド207、クラリアントジャパン社製)
(B2-7)グラフトールレッドHF-2B (C.I.ピグメントレッド208、クラリアントジャパン社製)
(B2-8)PVファーストスカーレット4RF (C.I.ピグメントレッド242、クラリアントジャパン社製)
(B2-9)イルガジンレッドK3840 (C.I.ピグメントレッド254、BASFジャパン社製)
(B2-10)イルガジンルビンL4025 (C.I.ピグメントレッド264、BASFジャパン社製)
[その他有機顔料(B3)]
(B-18)オラセットエロー144FE (ピグメントイエロー147、BASFジャパン社製)
【0067】
<ポリオレフィンワックス>
(C-1)サンワックス131P (三洋化成工業社製ポリエチレンワックス、数平均分子量3,500、融点105℃)
(C-2)ハイワックスNL-500 (三井化学社製ポリエチレンワックス、数平均分子量2,500、融点104℃)
(C-3)ポリエチレンワックスA-C6A (Honeywell社製ポリエチレンワックス、数平均分子量2,000、融点106℃)
(C-4)サンワックス151P (三洋化成工業社製ポリエチレンワックス、数平均分子量2,500、融点104℃)
【0068】
<任意成分>
(D-1)紫外線吸収剤;ジベンゾイルメタン (東京化成社製)
(D-2)無機顔料;TTO-51(C) (石原産業社製酸化チタン、平均一次粒子径:30nm)
平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)の拡大画像(例えば500倍~1万倍)から観察できる30個程度の粒子に関する粒子径を測定し、平均値を求めて得た値である。
【0069】
[製造例1]
有機顔料(B1-1)100質量部、およびポリオレフィンワックス(C-1)100質量部を混合し、3本ロールミルを使用して140℃で混錬を行い、分散体1を製造した。
【0070】
[製造例2~20]
有機顔料(B)、およびポリオレフィンワックス(C)の種類および配合量(質量部)をそれぞれ表1に記載したように変更した以外は製造例1と同様にして分散体2~20を製造した。
【0071】
【0072】
[実施例1]
熱可塑性樹脂(A-1)100質量部と、分散体1を30質量部と、分散体8を10質量部とを混合し、スクリュー径30mmの単軸押出機(日本製鋼所製)にて200℃で溶融混錬した後、冷却し、ペレタイザーを用いてペレット状にカッティングして着色樹脂組成物1を得た。
希釈樹脂として熱可塑性樹脂(A-1)100質量部と、着色樹脂組成物1を3.5質量部混合し、次いで、T-ダイ成形機(東洋精機社製)を用いて、温度230℃で溶融混合し成形を行い厚さ250μmのフィルム1を得た。
【0073】
[実施例2~15、比較例1~4]
熱可塑性樹脂(A)、および分散体の種類および配合量(質量部)をそれぞれ表2に記載したように変更した以外は実施例1と同様にして着色樹脂組成物2~19を得た。
続いて、熱可塑性樹脂(A)、および着色樹脂組成物の種類および配合量(質量部)をそれぞれ表3に記載したように変更した以外は実施例1と同様にして厚さ250μmのフィルム2~19を得た。
【0074】
[実施例16]
熱可塑性樹脂(A-5)100質量部と、分散体1を3質量部と、分散体8を1質量部とを配合することで着色樹脂組成物20を得た。
得られた着色樹脂組成物20を用いて170℃で溶融混合しカレンダー成形を行い、厚みが80μmのフィルム20を得た。
【0075】
[実施例17~30]
熱可塑性樹脂(A)、および分散体の種類および配合量(質量部)をそれぞれ表3に記載したように変更した以外は実施例16と同様にして着色樹脂組成物21~34を得た。
続いて、着色樹脂組成物21~34を用いた以外は実施例14と同様にして厚さ80μmのフィルム21~34を得た。
【0076】
[比較例5]
熱可塑性樹脂(A-5)100質量部と、ジベンゾイルメタン(D-1)0.3質量部と、酸化チタン(D-2)0.5質量部とを配合することで着色樹脂組成物35を得た。
得られた着色樹脂組成物35を用いてカレンダー成形を行い、厚みが80μmのフィルム35を得た。
【0077】
[比較例6、7]
酸化チタン(D-2)の配合量をそれぞれ0.6質量部、0.7質量部に変更した以外は比較例5と同様にして着色樹脂組成物36、37を得た。
得られた着色樹脂組成物36、37を用いてカレンダー成形を行い、厚みが80μmのフィルム36、37を得た。
【0078】
得られたフィルムの紫外線・可視光線透過率、耐溶出性試験、および材質試験を下記の方法に従って確認した。結果を表4、5に示す。
【0079】
[紫外線・可視光線透過率]
得られたフィルムの波長200~800nmにおける透過率を、紫外可視近赤外分光光度計「UV-3150」(島津製作所社製)を用いて測定した。なお評価基準は以下の通りである。
[評価基準]
◎:波長200~480nmの光線透過率が全領域にわたって1%未満 非常に良好
〇:波長200~480nmの範囲で一部光線透過率が1%以上5%未満 良好
△:波長200~480nmの範囲で一部光線透過率が5%以上10%未満 実用域
×:波長200~480nmの範囲で一部光線透過率が10%以上 実用不可
【0080】
[耐溶出性試験1]
「日本薬局方-一般試験法7.02 プラスチック製医薬品容器試験法」の「1.2溶出物試験」に記載された方法に従って、(i)泡立ち、(ii)pH、(iii)過マンガン酸カリウム還元性物質、(iv)紫外吸収スペクトル、(v)蒸発残留物の5項目を確認し、以下の基準に沿って評価を行った。
この溶出性試験規格を満たす場合、輸液バッグ、点眼容器、注射剤容器などの医薬品包装材として好適であるといえる。
〇:5項目すべてで規格範囲内
×:5項目のうちいずれかで規格範囲を外れる
【0081】
[耐溶出性試験2]
「食品衛生法・食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)」の「D 器具若しくは容器包装又はこれらの材質別規格」の「3.ポリ塩化ビニルを主成分とする合成樹脂又は容器包装」の「b 溶出試験」に従って、(i)重金属、(ii)過マンガン酸カリウム消費量、(iii)蒸発残留物(水)、(iv)蒸発残留物(4%酢酸)、蒸発残留物(20%エタノール)、(v)蒸発残留物(ヘプタン)の6項目を確認し、以下の基準に沿って評価を行った。
この溶出性試験規格を満たす場合、ブリスターパックのように、素材がポリ塩化ビニル樹脂である場合に、医薬品包装材として好適であるといえる。
[評価基準]
〇:6項目すべてで規格範囲内
×:6項目のうちいずれかで規格範囲を外れる
【0082】
[材質試験]
「食品衛生法・食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)」の「D 器具若しくは容器包装又はこれらの材質別規格」の「3.ポリ塩化ビニルを主成分とする合成樹脂又は容器包装」の「a 材質試験」に従って、(i)鉛、(ii)カドミウム、(iii)ジブチルスズ化合物、(iv)クレゾールリン酸エステル、(v)塩化ビニル、(vi)フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)の6項目を確認し、以下の基準に沿って評価を行った。
[評価基準]
〇:6項目すべてで規格範囲内
×:6項目のうちいずれかで規格範囲を外れる
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
表4、5に示すように、本発明の着色樹脂組成物から形成してなるフィルムは、単層で充分な遮光性と耐溶出性を満足していることが確認できた。
なかでも素材がポリ塩化ビニル樹脂である場合には、耐溶出性だけでなく、医薬品包装材に要求される材質試験の要求も満たすことができていた。
これらの結果から、本発明の着色樹脂組成物を用いてなる医療品包装材は、充分な遮光性と耐溶出性を満足し、紫外線から可視光線を遮光して内容物が劣化することを防ぎ、かつ内容物の汚染を抑制することができるものであるといえる。
【要約】
【課題】
本発明は上記の課題を鑑みてなされたものであり、紫外線から可視光線を遮光して内容物が劣化することを防ぎ、かつ耐溶出性に優れているので内容物を汚染することのない医薬品包装材に用いられる着色樹脂組成物を提供する。
【解決手段】
C.I.ピグメントイエロー93、ピグメントイエロー95、ピグメントイエロー110、ピグメントイエロー138、ピグメントイエロー150、ピグメントイエロー180、ピグメントイエロー181、ピグメントオレンジ64、ピグメントオレンジ71、ピグメントレッド144、ピグメントレッド149、ピグメントレッド177、ピグメントレッド207、ピグメントレッド208、ピグメントレッド242、ピグメントレッド254、およびピグメントレッド264よりなる群から選ばれる少なくとも2種を含む有機顔料(B)と熱可塑性樹脂(A)を含有する医薬品包装材形成用着色樹脂組成物により解決される。
【選択図】なし